結論
Rebaseは、全国の空き会議室やスタジオを時間単位で予約できる「インスタベース」を運営する会社だ。2026年3月期には169万件の利用を仲介し、利用総額は74億円を超えた。長く持つ株主の目では、予約と決済を担う実体のある市場基盤を評価できる。利益の回復には条件が付くものの、現在の時価総額約21億円にはやや割安な余地がある。
収益のほとんどは、利用料から掲載者に請求する成果報酬で生まれる。掲載スペースの厚みと再利用の多さには価値がある。だが、2026年3月期は売上が増えたにもかかわらず、広告宣伝費と組織投資が膨らみ、営業利益が前期の5分の1に落ちた。新規集客を広告に頼り続ければ、取扱額の成長を株主の利益に変えられない。
10年後も、会議、レッスン、撮影、趣味のために実際の場所を借りる需要は残ると考える。一方、AIエージェントが検索と予約を肩代わりし、競合や掲載者の直販へ注文を振り分ける時代には、仲介手数料の守りは弱まる。中立では利用件数が増えても料率は低下し、利益率が過去の最良期まで戻るとは考えない。それでも現金の厚みと予約の積み重なりを合わせると、潜在的な株式希薄化を考慮した確率加重価値は今の時価総額をおよそ2割上回る。ただし安全域は広大ではなく、広告効率が改善しない場合の下振れは大きい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、建物を持たずに場所の利用を仲介する事業構造をまず好ましく見るだろう。予約が増えれば、掲載者への支払いを除いた手数料が残る。営業利益を現金に変えるための設備は少なく、物理的な場所を必要とする活動が続く限り、事業そのものが消えるとは考えにくい。大切なのは取扱高ではなく、広告費、決済費、システム更新費、優待を引いた後のオーナー利益である。
一方、無形の予約サイトの優位は、工場や許認可による独占ほど守りが堅くない。スペースマーケットとの競争に加え、掲載者の直販やAIエージェント経由の取引が広がると、現状の手数料を保てない。予約は増え続けても利益が減ることは、すでに直近決算が示した。株主としては、利用数の成長よりも広告費控除後の利益率と、追加投資1円が生む翌年以降の現金を追う。
筆者は、2025年までの高収益を単に復活させるだけの物語には払わない。10年後の成熟した仲介業としての稼ぎを慎重に見て、事業上必要な預り金とオフィスの固定費を純現金から切り離す。それでも約21億円の時価総額は、現実の予約基盤と適度な利益率回復の組合せを十分には反映していないように見える。結論はやや割安だが、新規事業への支出が続き、株主還元も定着しなければ安全域は消える。経営が資本配分を改められるかが最終的な評価を決める。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの起点は、空いている部屋を貸したい人と、数時間だけ使いたい人の間に入ることだ。利用者は予約時に代金を払い、Rebaseはその代金から成約手数料を引いて掲載者へ支払う。掲載料も月額固定料も原則不要で、掲載者への手数料は最大35%だ。実際の2026年3月期は、インスタベースの売上約21.13億円を利用総額74.44億円で割ると、手数料の実現率は約28.4%になる。
何が売れたかは、予約169.2万件と1件平均利用料約4,400円に表れる。予約の使い道は会議、商談、スポーツ、美容、パーティー、撮影まで広い。2026年3月末には約4.64万件のスペースを掲載し、検索、写真、口コミ、空き時間、決済、補償をまとめて提供する。供給を自社で保有しないため建物への巨額投資は要らないが、集客費と決済費は取扱高に伴って発生する。
2025年には法人向けの「instabase for Business」を始め、WeWorkや日本リージャス、スマートロックのAkerunなどとの連携を広げた。これは予約を繰り返す法人と良質な供給を確保する手立てである。また、コミュニティイベントの告知、集客、決済を担う「TOIRO」を育てている。もっとも、売上の96.9%はインスタベースであり、新事業はまだ柱と呼べない。
会社の開示はマッチングプラットフォームの単一セグメントだ。本分析では、数量と価格を見誤らないためにインスタベースと周辺・イベント関連を管理上分けた。後者の実売上と件数は開示されていないため、全社売上から差し引いた最大0.68億円を上限とする推計にすぎない。十分な証拠が得られるまでは、TOIROに大きな稼ぎを期待しない。
優良さと弱いところ
いちばんの強みは、掲載者が多いほど利用者が集まり、予約が増えるほど掲載者が増える相互作用だ。2026年3月期の予約に占める同一用途の再利用は74%で、単発の話題作りだけではない。美容・セラピーでは85%に達しており、定期的に場所を必要とする人をつかめれば広告に頼らない予約が積み上がる。予約管理、決済、補償、スマートロックとの連携も掲載者の運営を助ける。
ただし、これは独占的な堀ではない。スペース掲載者はスペースマーケットや自社サイトにも同時掲載できる。利用者にとっても場所の条件と総額が合えば乗り換えは難しくない。手数料上限35%という料金体系は高い収益余地を示すが、実質料率の持続的な値上げ実績を意味しない。2025年の25%という営業利益率を10年後の当然の姿にしてはいけない。
2026年3月期には広告宣伝費が約6.14億円に増え、前期から約2.53億円も上積みされた。売上の増分より広告費の増分が大きく、営業利益率は約4%まで低下した。この時点で新規投資の増分利回りが資本コストを超えているとは確認できない。創業者関係の持株は6割超で意思決定は速いが、少数株主への資本配分の規律は今後の実績で測るべきだ。堀は広がり得るが、まず広告を減らしても予約が増えることを示す必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
レンタルスペースの需要は、人口よりも活動の仕方に左右される。企業が会議室を常設せず必要な時間だけ借り、個人が撮影や教室のために借りるなら、人口が減っても利用頻度は増え得る。空き家、空室、オフィスの二次空室は供給を増やす反面、場所の質が悪ければ掲載数だけ伸びても予約には結び付かない。10年の数量の中心は、掲載件数よりも1室当たりの利用回転数とリピート予約に置く。
同社は古い市場調査をもとに、2022年度の貸し会議室・レンタルスペース市場を約1,790億円、2032年度を1.7兆円と推計している。2022年度の自社利用総額約38.1億円は前者の約2.1%に相当する。ただし、この1兆円超の予測は当時の高成長を延長した見通しであり、2026年に確認された実測市場ではない。強気の市場予測をそのまま10年間の予約増加率として採用しない。
有力な直接競合はスペースマーケットである。同社の2025年12月期マーケットプレイスGMVは約64.1億円で、Rebaseの2026年3月期の74.4億円と近い。比較する年度が異なるため全国シェアは断定できないが、この2社だけを分母にすればRebaseが約54%を占める。貸会議室専業、公共施設、ホテル、施設側の直接予約も競争相手であり、2社合計を市場全体と取り違えてはいけない。
さらに、検索エンジンのAI回答が比較サイトへの訪問を奪い、エージェントがスペースを直接予約する可能性がある。RebaseはGoogleから予約画面へ直結する仕組みも進めているが、外部経由の集客に依存する限り主導権はプラットフォームの外側にもある。物価3%の世界でスペース料金は上がっても、競争で仲介料率が下がれば1予約当たり収入は物価ほど増えない。掲載者と顧客の双方に選ばれる体験を提供できるかが市場の成長以上に大切だ。
資本政策と M&A
経営は、現金を貯めるより既存サービスの集客、新規事業、提携・出資に振り向ける姿勢を強めている。2024年にLibertyship、2025年にレンタルスペース向け自社予約システムのアップナウを持分法適用関連会社とした。後者は掲載者の直接予約を助け、仲介収入を食う可能性もあるが、掲載者との接点を保つ防衛策にもなる。大型買収の実績は乏しく、のれんを増やす拡大が株主価値を高めるかは未証明だ。
2025年3月期に設立10周年の記念配当を総額約1.72億円行ったが、2026年3月期は無配へ戻り、2027年3月期予想も無配である。2026年には200株以上の株主に5,000円相当の自社ポイントを贈る優待を実施した。ただし継続実施の数字の約束はない。直近の事業計画にも、複数年の売上・利益・ROE目標や配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額の数字の約束はない。公式に示したのは2027年3月期の売上24億円、営業利益0.72億円など単年度予想である。
2026年3月末の純現金は約10.9億円あるが、掲載者の預り金約3.56億円は株主が自由に使える資金ではない。2026年6月末には本社移転支払いや借入増加で現金と純現金が減った。上位10株主の保有比率は約82.5%だが、過去5年に記念配当の実績があるため、余剰現金の株主への戻り方は50%ではなく75%と評価する。有報提出時点の新株予約権は計10万8,550株で、潜在希薄化率は発行済株式の約2.21%である。このうち2025年12月発行分は約1.02%に相当し、2028~2029年3月期の高い売上目標が行使条件となる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時間貸しスペースの利用は、一過性の在宅勤務ブームを超えて日常の活動へ広がった。美容、教室、スポーツでは同じ用途の予約が多く、利用者が繰り返し戻る。4.6万件の掲載を持つインスタベースは、用途と場所を細かく選べる国内有力の予約基盤である。日本リージャスやWeWorkなどの大型供給者との提携も、単なる小部屋の仲介から法人向け施設の予約へ広げる余地を生む。
2026年の収益悪化は、広告費の大幅な増加と本社移転、新サービスの試行に資金を費やした影響が大きい。固定費の拡大が一段落し、広告がブランド検索と再利用に置き換われば、売上が今の数倍となる時点で利益率が戻る道筋はある。2027年3月期は本社移転一時費用の影響もあり通期減益予想だが、それが終われば固定費増加の一部が収まる余地はある。アップナウとの予約管理連携は掲載者をつなぎ止め、直接予約が増えても運営基盤を握る構想につながる。
大切なのは、この強気の将来にAIによる生産性向上を無条件で足していないことだ。予約の増加は、実際に貸し出せるスペースと利用者の頻度が増えるという現実の需給に基づく。AI検索で集客が変わっても、予約確定、決済、補償の相手先として選ばれれば手数料を取り続けられる。純現金に余裕がある間に広告投資の効率を高め、継続利用を重ねれば、10年後の利益と時価総額には相当な上振れがある。
慎重な見方
最大の疑問は、成約が増えるほど株主の利益も増えると本当に言えるか、ということだ。2026年3月期には利用総額が15%増えたのに、営業利益は約8割減った。広告宣伝費だけで売上の約3割を費やし、決済手数料と人件費も増えている。ネットワークの力で安く顧客が増えるという説明と、実際の費用増加には開きがある。人を集めるために同じ金額を使い続ければ、予約が倍増しても高収益には戻らない。
掲載者は1社に縛られない。スペースマーケットの取扱高はすでに同程度で、upnowのような自社予約システムも普及する。検索エンジンがAIで直接候補を提示すれば、既存の検索結果に依存する予約サイトは集客の入り口を失う。AIエージェントは空き時間と価格を比較して安い直販へ送客できるため、仲介料率の維持は難しい。TOIROの告知・受付管理画面も、安価な汎用AIやPeatixの既存機能に置き換えられやすい。
財務の余裕も見た目どおりではない。現金には掲載者に返す預り金が含まれ、オフィス賃借の固定約束があり、2026年6月末には借入も増えた。創業者関係の持株が強く、追加の投資を少数株主が止めにくい。設立10周年の記念配当を出した翌期には無配へ戻った事実は、還元を安定した価値の源と見込めないことを示す。市場が拡大しても、取扱高を利益に変えられなければ10年後の価値は現在の現金の一部程度にとどまる。
どちらに重みを置いたか
予約の実需と掲載ネットワークには強みがあるが、値決め力と増分の資本効率はまだ証明不足である。2025年までの高収益を戻すことを既定にせず、中立の利益率を過去の頂点よりかなり低くした。それでも純現金と予約回数の成長が支えとなり、結論はやや割安となる。確率は上側29%に対して下側40%と慎重側へ寄せた。下に寄せる理由は、集客費の急増、検索エンジン依存、AIエージェントによる送客の迂回、2026年6月末の借入増加が同時に確認されたためである。AIの悪影響は数量・手数料と長期成長率に反映し、資本コストの寿命に重ねていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,132 円56 億円(+ 還元の換算額還元の合計 21 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 527 円26 億円、今との差 +26.6%、 期待の年率 +10.9%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,128 円154 億円 | 100 円5 億円 | +675.9% | +23.4% | 323 円16 億円 |
| やや楽観 | 19% | 1,991 円98 億円 | 40 円2 億円 | +388.3% | +17.5% | 386 円19 億円 |
| 中立 | 31% | 1,075 円53 億円 | 11 円1 億円 | +161.1% | +10.1% | 337 円17 億円 |
| やや悲観 | 26% | 294 円14 億円 | 1 円0 億円 | −29.1% | −3.4% | 77 円4 億円 |
| 悲観 | 14% | 224 円11 億円 | 0 円0 億円 | −46.2% | −6.0% | 31 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,132 円56 億円 | 21 円1 億円 | +177.2% | +10.9% | 1,153 円57 億円 |
今の株価時価総額 416 円20 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 法人・定期利用を取り込み成約が3倍へ 利益 11 億円 · PER 13.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,128 円154 億円
法人会議、定期レッスン、美容、スポーツの利用が根づき、主要都市の良質な供給が広がる。WeWork、日本リージャスなどとの提携が利用の密度を高め、1年間の予約は500万件となる。繁忙時間帯の単価は上がるが、競合を意識して実現手数料率は現在より下がる。それでも予約件数が増えるため取扱高と収益は大きく伸びる。
広告宣伝費の比率は再利用と法人の直接契約で徐々に低下し、営業利益率は2025年の最良期ほどでなくても2割前後に回復する。アップナウなどとの連携は掲載者の管理基盤となり、同じ掲載者が自社サイトで受注しても関係が切れにくくなる。TOIROはPeatixなどと競争するため大きな新たな収益源にはならず、既存の体験予約を助ける役割にとどまる。
M&Aでは小規模な予約技術の取得にとどめ、大型のれんは抱えない。黒字が定着した後には利益の一部を株主に戻し、創業者支配のもとでも資本配分が改善する。利用者の実需による伸びであり、AIエージェントを売った成果が開示されたと仮定するものではない。
- インスタベース(レンタルスペース成約手数料):数量 500(年間予約利用数(万件、物理的な予約件数))× 価格 0.16(予約1件当たり実現手数料(万円、スペース利用料×実効手数料率))→ 売上 79 億円・営業利益 16 億円。予約件数約3倍。平均利用料約6,280円×実効手数料率25%で1件1,570円、手数料率は現状より低下。
- TOIRO・周辺サービス等(非インスタベース推計):数量 2.0(年換算の有償イベント・周辺取引(万件、非開示の仮定))× 価格 0.37(1換算取引当たり売上(万円、イベント決済等の代理変数))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AI代替を受けるイベント系は数量を横ばいまで。価格は今の1.09倍で、成長源にはしない。
倍率:k8.25%、事業ROE10.9÷50.0=21.8%、通常の堀でRONIC=8.25+0.5×(21.8−8.25)=15.03%、AIによる仲介圧力を反映した長期g2%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)≒13.87を楽観側の上限そのものに採用。余剰現金2億円の利息税後2.8百万円相当を純利益から除き、現金の戻り75%を別に加える。
確率:実需に根ざす法人・レッスン用途での継続予約、全国の掲載拡大、広告効率回復がそろう上限側。新規領域の急成長やAI単独の利益創出は想定しない。
やや楽観 19% 予約が2倍強になり広告投資が回収期に入る 利益 7 億円 · PER 13.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,991 円98 億円
掲載スペースが増え、定期利用の法人・講師・美容業者から予約が重なる。10年後の年間予約は390万件へ伸びる。1回の予約代金は物価と利用時間の長期化で上がるが、実効手数料率は値下げ競争で現在より低い。利用者が都度会場を選び直す特徴は残り、独占的な値決め力までは持たない。
検索以外の集客が増え、広告費の伸びが取扱高を下回るようになる。新規事業の赤字は残るものの、主力の利益率が回復し、全社の営業利益は再び積み上がる。アップナウの予約管理技術やスマートロック連携が直販との共存を助け、広告媒体の変更にも少しずつ強くなる。
経営は提携と小規模な買収を優先し、かつての高利益率を無理に追うより利用者体験を磨く。資金は成長投資に厚く配るが、余剰資金から限定的な還元を再開する。TOIROについては、画面型業務のAI代替を前提に利用数が横ばい以下となり、将来価値の中心にしない。
- インスタベース(レンタルスペース成約手数料):数量 390(年間予約利用数(万件、物理的な予約件数))× 価格 0.15(予約1件当たり実現手数料(万円、スペース利用料×実効手数料率))→ 売上 58 億円・営業利益 10 億円。年間390万件×1件1,490円。施設代金約6,100円と平均手数料率約24.4%の組合せ。
- TOIRO・周辺サービス等(非インスタベース推計):数量 1.9(年換算の有償イベント・周辺取引(万件、非開示の仮定))× 価格 0.36(1換算取引当たり売上(万円、イベント決済等の代理変数))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。催事告知画面の代替で件数横ばい未満、単価は1.05倍に制限。
倍率:ROE18.67%、k8.25%、堀の持続割合1/2からRONIC13.46%、g2%で正当化PERは13.62倍。楽観〜中立は計算上限から恣意的に割り引かない。余剰現金2億円の税後利息を純利益から除き、75%を別加算。
確率:掲載数増加と法人用途の拡張は実績で確認できるが、広告効率の改善には実行を要する。強気を実現する確度は中立より低い。
中立 31% 利用回数は増えるが成約料率は下がる 利益 4 億円 · PER 13.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,075 円53 億円
人口減少が進んでも、必要な時だけ場所を使う働き方や個人の教室運営は続く。インスタベースは掲載内容の改善と都市部での回転数向上により、年間予約が約305万件に増える。掲載スペースが増えるだけでなく、同じ利用者が予約を重ねることが数量を支える。スペース利用料自体は物価に沿って上がる。
一方、手数料は掲載者の直販やスペースマーケットとの比較にさらされ、実効料率は現在の約28%から23~24%程度へ下がる。結果として1予約当たり収入は物価ほど増えない。AIエージェントが検索と予約を代行することで、直接予約への流出も起きるが、決済・補償・豊富な掲載の価値が残るため、仲介機能そのものは消えない。
広告費は売上より緩やかに増えるようになり、営業利益率は低い二桁へ戻る。ただし2025年の25%へは戻らず、法人向けの開発費も一定額かかる。TOIROの管理画面はAIによる代替とPeatixとの競争で単独の成長力が乏しい。関連会社との連携は防衛的に機能するが、買収益やTOBによる上振れは見込まない。利益の大半は再投資し、還元は小さくとどまる。
- インスタベース(レンタルスペース成約手数料):数量 305(年間予約利用数(万件、物理的な予約件数))× 価格 0.14(予約1件当たり実現手数料(万円、スペース利用料×実効手数料率))→ 売上 42 億円・営業利益 6 億円。予約169.2万→305万件、利用代金約5,850円×料率約23.6%=1予約1,380円。物価上昇を手数料率の縮小が一部相殺。
- TOIRO・周辺サービス等(非インスタベース推計):数量 1.6(年換算の有償イベント・周辺取引(万件、非開示の仮定))× 価格 0.35(1換算取引当たり売上(万円、イベント決済等の代理変数))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。操作画面中心部分をAIエージェント代替型とし、実質数量2万件換算→1.6万件、実現単価は1.02倍。
倍率:自己資本26.8億円に対するROE14.25%、k8.25%、通常の堀の持続割合1/2からRONIC11.25%。10年より先の名目g2%とすると正当化PER=(1−0.02÷0.1125)÷(0.0825−0.02)=13.16倍。余剰現金2億円の税後利息0.028億円を純利益から控除し、現金戻り75%=1.5億円を足す。
確率:実需による緩やかな予約増と物価による代金上昇が中心。2026年の広告費急増と2027年の低利益率計画を踏まえ、最良期への全面復帰は織り込まない。
やや悲観 26% 広告依存と直接予約への流出が残る 利益 1 億円 · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 294 円14 億円
レンタルスペースの需要は残るが、利用者を増やすための広告費が下がらない。AI検索と競合への流入で、予約は10年かけても約215万件にとどまる。スペース料金は名目で上がる一方、掲載者の直販との競争が強まり、実効手数料率は低下する。予約件数の伸びと手数料単価がともに中立より弱い。
会社は法人向け施策を続けるが、新しい利用者を獲得する費用がかさみ、利益率は1桁にとどまる。リピート率の高い利用者は残っても、上位掲載者は自社の予約システムを活用する。アップナウとの資本関係は一定の防衛にはなるものの、すべての直接取引にRebaseが手数料を取れるわけではない。
TOIROはAIによる告知・受付作業の自動化で使われにくくなり、費用負担が続く。M&Aは資金を使う割に収益貢献が弱く、還元は優待相当のごく小額に限られる。事業は存続するが、再投資が資本コストを上回らないため、10年後も高い利益倍率を正当化しない。
- インスタベース(レンタルスペース成約手数料):数量 215(年間予約利用数(万件、物理的な予約件数))× 価格 0.12(予約1件当たり実現手数料(万円、スペース利用料×実効手数料率))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。年間215万件。物価上昇後の施設代金に対する料率低下で、1予約収入はほぼ今並み。
- TOIRO・周辺サービス等(非インスタベース推計):数量 1.4(年換算の有償イベント・周辺取引(万件、非開示の仮定))× 価格 0.34(1換算取引当たり売上(万円、イベント決済等の代理変数))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIによるイベント管理画面代替で換算件数は3割減り、単価は名目横ばい。
倍率:ROE1.28÷17=7.5%はk8.25%以下で、新たな成長投資に超過利益はない。稼ぐ力の上限1÷k=12.12倍を超えず、競争と費用負担が残るため10倍を採用。やや悲観の余剰現金は2億円×0.75=1.5億円、その75%を価値に足す。
確率:検索経由の成約獲得費が高止まりし、掲載者の自社予約が増える筋書き。足元のマーケティング費用増加はすでに確認された事実である。
悲観 14% 予約流出と先行投資の失敗で構造的に負ける 利益 −1 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 224 円11 億円
掲載者は複数のサービスを併用し、予約回数の多い顧客を自社サイトへ誘導する。AIエージェントは仲介サイトを表示せず、空室と価格を集めて直接予約する。インスタベースの予約は約108万件まで減り、実現手数料も1件1,000円程度に低下する。予約できるスペースは残るが、成約の多くを取れず、ネットワーク効果は弱まる。
既に増やした広告費、人件費、オフィス費用は簡単に削れない。TOIROのイベント告知・受付画面も安価なAI機能や既存プラットフォームに代替される。減収に見合う費用圧縮が遅れ、営業赤字が常態化する。関連会社への投資は成果を生まず、新規買収もしない。無配が続き、株主優待は縮小または廃止される。
それでも、倒産と資産流出が直ちに重なるとまでは想定しない。純現金の大きさを出発点とする床に近い価値だけが残る。株主が現金を自由に引き出せるわけではなく、掲載者の預り金と賃借義務が先に守られるため、高収益企業としての評価は完全に失う。
- インスタベース(レンタルスペース成約手数料):数量 108(年間予約利用数(万件、物理的な予約件数))× 価格 0.10(予約1件当たり実現手数料(万円、スペース利用料×実効手数料率))→ 売上 11 億円・営業利益 −1 億円。予約が約36%減、1件収入は約20%減。集客・運営費の下方硬直性で営業赤字。
- TOIRO・周辺サービス等(非インスタベース推計):数量 1.0(年換算の有償イベント・周辺取引(万件、非開示の仮定))× 価格 0.30(1換算取引当たり売上(万円、イベント決済等の代理変数))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。管理画面のAI代替により件数半減、単価も低下し赤字。
倍率:営業赤字が定着するため負の純利益にPERを掛けない。悲観のPBRは将来留保後の自己資本でなく、今の12.8億円を分母にして0.86倍、時価総額約11.0億円とする。これは現時点の純現金10.9億円も下回らず、売れる資産と利益の床を優先する資産価値である。掲載者預り金を含む全現預金を株主の自由資金とみなさない点はfloor_assets_whyで別途調整する。
確率:大手の直接販売、AIエージェントによる中抜き、広告媒体への依存が同時に悪化する複合シナリオ。構造的な負けを十分に見込むが、現金の床で企業価値がゼロになるとはみない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
インスタベース(レンタルスペース成約手数料)
場所の予約・決済・掲載者への送金・補償を担う主力の取引市場。個別スペースを直接借りる実需が土台であり、席課金SaaSではない。
| 数量年間予約利用数(万件、物理的な予約件数) | 価格予約1件当たり実現手数料(万円、スペース利用料×実効手数料率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 169 | 0.12 | 21 | 1 |
| 10 年後 中立 | 305 | 0.14 | 42 | 6 |
取り方:2026年有報のインスタベース売上構成96.9%×全社売上21.8105億円=21.1344億円。決算説明資料の年間利用169.2万件、利用総額74.44億円、平均予約料約4,400円から、1予約の実現手数料約1,249円、利用総額比28.39%を逆算。掲載数4.64万件は予約可能供給の目安であり、予約利用件数と混ぜない。単独サービスの営業利益は非開示なので全社営業利益0.9717億円から本社費とTOIRO投資を仮配賦し1.20億円とした。過去の公開料金は最大35%、実際の値上げ継続実績は未確認。2025年12月期の競合スペースマーケットGMV64.08億円も比較。出典:https://regfis.com/reports/20260622_S100YGUZ_E38171_null_010_030000_120 、https://www2.jpx.co.jp/disc/51380/140120260622575979.pdf 、https://regfis.com/reports/20260327_S100XUYI_E35330_null_010_030000_120
TOIRO・周辺サービス等(非インスタベース推計)
イベント告知・受付・決済など。その他収益も混ざるため会社開示上の独立セグメントではなく、AI代替感応度を測るための上限的な管理区分。
| 数量年換算の有償イベント・周辺取引(万件、非開示の仮定) | 価格1換算取引当たり売上(万円、イベント決済等の代理変数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 0.34 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 0.35 | 1 | 0 |
取り方:会社はマッチング事業の単一セグメントでTOIROの取引件数・売上を開示しない。全社売上21.8105億円からインスタベース構成96.9%を除いた0.6761億円はTOIROに限らない非主力部分の上限である。数量2万件は実績ではなく、Peatixが年約560万人のイベント参加と有料チケットの料金4.9%+99円を公表している競争市場で、TOIROは3.6%のチケット決済料を案内していることを踏まえた、感応度計算用の換算取引件数。差額を1件当たり約3,381円の売上相当としたもので、確認済みのTOIRO単価ではない。価格表:https://services.peatix.com/ja/pricing 、https://corp.rebase.co.jp/news-posts/20250307 。操作画面とイベント発見を価値の中心とするためAIエージェント代替の「画面中心SaaS」に準じ、中立の実質数量を0.8倍、単価を約1.02倍、10年より先の成長を0%以下とする。配賦営業損益も推計。
リスクと懸念
AI エージェント代替による送客の中抜き
空き時間、距離、料金、レビューをAIエージェントが横断比較し、掲載者の直販ページや競合に注文を流せば、インスタベースの検索流入と実現手数料がともに落ちる。物理スペースの仲介そのものは人月・席課金SaaSと異なるが、TOIROのイベント告知・受付管理画面は代替されやすい。会社も有報でAI検索による集客低下をリスクとして明記している。
広告費の増大と利益率の鈍化
2026年3月期の広告宣伝費は前期から約2.53億円増え、売上高の増分を上回った。予約が伸びても新規顧客獲得費が同じ速度で上がれば、取扱額は株主の利益にならない。法人・リピート比率を高めて広告に依存しない集客を作れるかが、10年の営業利益率を左右する。
競合・直販の拡大と料率の低下
スペースマーケットも取扱高が同程度に育ち、掲載者は複数のサイトに載せられる。upnowのような自社予約サービスは掲載者を便利にする一方、仲介を通さない取引を増やし得る。最大35%という公表手数料を10年後も実現できるとは限らず、予約件数が増えても1件当たりの収入が低下する。
純現金と預り金・賃借義務の取り違え
2026年3月末の現預金約11.93億円には掲載者への預り金約3.56億円が含まれる。加えて解約不能のオフィス賃借料約3.67億円と移転関係の支払いがあり、2026年6月末には短期借入が増えた。純現金10.9億円を全額株主への自由な分配可能額とみなすと、悲観の床と余剰現金を過大評価する。
投資先・買収の失敗と新サービスの固定費
Libertyshipやアップナウへの投資は、主力サービスとの連携を深める狙いがあるが、投資利回りが確定したわけではない。TOIROの予約・集客機能も先行開発を要する。取扱高と利益が伸びないまま他領域の企業を買えば、残った現金と経営陣の集中力が失われる。大型M&Aには特に厳しい投資収益率を求めたい。
創業者の議決権集中と潜在希薄化
創業者2人と関連資産管理会社の合計持株は約63%で、上位10株主の合計は82.5%である。迅速な意思決定は長所だが、少数株主は広告投資や配当方針を変えにくい。また、既存のストック・オプション全体で発行済株式の約2.21%の潜在的希薄化があり、うち2025年12月決議分は約1.02%だ。条件を達成した場合には株主の取り分を改めて確認する。
利用者の事故・法規制・システム障害
イベントやパーティーの利用に伴う騒音、火災、施設破損、違法な用途が増えれば、掲載者の離脱や補償費用の増加を招く。個人情報漏えいや決済障害も予約の信頼を直接損なう。不動産関連法令や旅行業・旅館業関連法令などの規制が強まれば、管理コストと利用可能施設数が変わり得る。
今後の分かれ目
- 四半期の予約利用数が前年同期比2桁で伸び、広告宣伝費率が2年間連続して下がったら
- 予約ネットワーク自体の集客力が証明され、中立の予約数量と利益率の前提を上げる。継続投資1円当たりの増分利益も点検する。
- 掲載スペース数は伸びるのに1スペース当たり予約総額が下がり続けたら
- 供給の量だけが先行しネットワーク効果が薄れている可能性が高い。中立の利用件数と利益率を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 実現手数料率が2026年の約28.4%から23%を下回り続けたら
- 掲載者の交渉力、直販、AI送客の影響が大きいと判断し、全筋書きの1予約当たり手数料と10年後の利益を下方修正する。
- 2027年3月期の本社移転一時費用が終わっても営業利益率が5%に届かなかったら
- 2026年の低採算は一時的でないとみなし、広告と人件費の固定化を反映する。中立の利益回復を遅らせ、やや悲観への重みを増やす。
- 法人向け利用が伸び、外部広告に頼らない予約比率とリピート予約が上がったら
- 同社を単なる集客仲介でなく継続利用の予約基盤と見直せる。広告費控除後の増分ROICを確認してから堀と長期成長率を再評価する。
- アップナウなどの買収・追加出資が発表され、利益・現金の回収見通しが開示されなかったら
- 買収による取引数量の加算をしない。余剰現金の利用可能額を下げ、資本配分上の慎重筋書きを厚くする。
- 2028~2029年3月期の売上がストック・オプションの行使条件に届いたら
- 直近の権利分約1.02%と既存権利を含む総潜在希薄化率約2.21%、払込金を確認し、既存株主への帰属時価総額を薄める一方、事業成長による利益増を別に評価する。
見ておくもの
- インスタベースの四半期利用数、掲載スペース数、1件平均利用料、利用総額
- 有報のインスタベース売上構成比、利用総額に対する実効手数料率
- 広告宣伝費/売上、決済手数料/利用総額、売上高営業利益率
- 同一用途のリピート予約比率と1掲載スペース当たり年間予約数
- スペースマーケットのマーケットプレイスGMVと掲載数、施設の直接予約比率
- 現預金・短期借入・掲載者預り金・未払金・解約不能リース料
- TOIROとアップナウの有償売上、投資利回り、株主還元と新株予約権の行使
倍率と資本コストの決め方
予約件数169.2万件と実際の手数料収入から出発し、10年後の数量は実際の予約件数、価格は平均利用料と実効仲介料率の積として見積もった。物価3%は平均利用料だけに入れ、件数に重ねていない。営業利益率は広告費の固定化を踏まえ、中立を2025年の高収益期より低くした。倍率は現在・過去の株価倍率を参照せず、k8.25%と長期g2%、追加投資のRONICから導いた。2028年3月期からの新リース会計で負債と資産が両建てになるが、比較は賃借費を営業費用に入れた現在の採算ベースで統一した。純現金には掲載者預り金が混ざり、10年後の利益の事業価値には余剰現金利息を重ねていない。潜在的な株式希薄化も筋書きごとの行使条件に応じて別に反映した。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、事業の循環・値決め力・純現金による質の調整+0.75%を足す。