結論
シイエヌエスは、金融機関や大手システム会社を顧客に、クラウド、業務システム、生成AIの開発・導入を手掛ける独立系ITサービス企業である。筆者の結論は「適正」だ。事業の将来にはかなり慎重だが、現金の厚さがその弱さを相当程度補っている。
2026年5月期の売上高は約78億円、営業利益は約7億円だった。生成AI関連の実売上は4.16億円まで増え、ServiceNowや自社サービスのU-Way、OracleのERP導入支援にも事業を広げている。大手SIerから受注した開発業務をこなすだけでなく、顧客と直接契約する仕事を増やしている点は評価できる。会社が掲げる2030年5月期の売上高150億円、営業利益率12%という目標にも、進もうとする方向は明確に表れている。
ただし、10年後も技術者の作業時間を今と同じ量だけ販売できるとは考えない。AIエージェントが設計、実装、テスト、運用、資料作成を担えば、顧客が購入する工数は減る。大手顧客がAIによる効率化の利益を自社に取り込む可能性もある。中立では、実質的な請求工数の減少を単価の上昇が部分的に補うものの、2036年5月期の売上高は約67億円、営業利益は約5億円に落ち着くと考える。
一方、2026年5月期末の現金・預金は約37.87億円ある。これは現金同等物約30.26億円に、3か月超の定期預金約7.61億円を足した数字だ。借入金はほとんどなく、現在の時価総額約57.19億円に対して極めて大きい。事業に必要な運転資金を除いた現金と、今後10年で蓄積する資金を見落としてはならない。
5つの筋書きと株主還元を資本コスト7.25%で現在に割り戻した本質価値は約54.36億円となった。現在の時価総額との差は約マイナス5.0%である。会社が悪いから安く見るのではない。AIによる産業の変化を重く見ながらも、既に積み上がった現金と配当を正当に評価すると、大幅な割高にも大幅な割安にもならないという判断だ。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、最初に事業が10年後も必要かを問う。銀行の決済基盤、企業の会計システム、クラウド環境が消えることは考えにくい。したがってシイエヌエスの専門技術に需要は残る。しかし、システムが必要であることと、その構築に今と同じ人数を要することは別だ。AIが仕事の方法を変えれば、必要なシステムが増えながら受託会社の売上が減ることも起こる。
所有者として評価したいのは、顧客の難しい仕事を任される信頼と、無理な借金を抱えずに現金を積み上げた実績である。2026年5月期末の現金・預金は約37.87億円で、実質的に無借金に近い。短期金利が2%になる世界では受取利息も増える。売上が一時的に落ちても、技術者の育成と次の製品への投資を継続できる余力がある。
一方、所有者にとっての真の利益は、会計上の純利益の全額ではない。社員の技能を保つ研修費、外部人材の確保、情報セキュリティ、顧客が要求する技術更新に継続して資金が要る。研究や開発の一部が販管費として既に利益から差し引かれている利点はあるものの、ERPの立ち上げと買収にはさらに現金を投じる。新しい事業が資本コストを超える収益を得られるかを監視したい。
この会社の将来を読み切れない理由は、財務の弱さではなく事業の経済性の変化である。解約されにくい独占的なデータ基盤を持つ会社なら、10年先の利益にも成長の価値を払える。人月中心の企業にはそこまでの確信を置けない。だから、将来の利益には高い成長を永久に付けず、現金は現金として評価する。
資本配分を伴わない成長目標には慎重でありたい。M&Aで買った売上が加わっても、買収価格が高く、優秀な人材が離職すれば株主価値は増えない。逆に、成長機会が弱いと判断した時に現金を配当や適切な自社株買いへ回せるなら、株主の取り分は改善する。現在の値段には大きな安全域がないが、監視する価値のある事業と財務だと判断する。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は、企業が必要とするシステムを設計・構築し、導入後も改修や運用を支える仕事である。会計上はシステムエンジニアリングサービス事業の単一セグメントだが、会社は事業をテクノロジーソリューション、ビジネスソリューション、コンサルティングの3つに分けて説明している。2026年5月期の売上構成は、それぞれ約46%、45%、9%である。
テクノロジーソリューションでは、ServiceNowの導入・運用、クラウド基盤の構築、AI関連システムの開発、次世代決済基盤の構築を請け負う。売上高は35.80億円、売上総利益率は28.9%で、3事業の中で最も大きい成長源になっている。特にNTTデータ向けの生成AIアセット開発が拡大したことは、AIを単なる流行語でなく実際の売上につなげている証拠だ。
ビジネスソリューションは金融機関や流通企業の業務システムが土台である。Oracle Cloud Infrastructureを使った移行・運用支援のU-Way、Oracle NetSuiteなどのERP導入支援もここに含まれる。売上高は34.60億円だが、直近の売上総利益率は17.9%に低下した。案件の長期化やERP人材への先行投資が重なっており、新しいサービスを増やせば直ちに収益性が高まるわけではない。
コンサルティングは顧客の業務改革、IT戦略、AI活用の構想から実行までを支援する。売上高7.35億円と小さいが、2026年5月期の売上総利益率は34.2%に改善した。製造業、医療、建設などの顧客と直接契約する案件が増えた効果が表れている。ただし、ここも人の専門知識と作業時間を売る性質は残る。
事業の規模を支えているのは社員だけではない。2026年5月期末のエンジニア数は238人で、外部ビジネスパートナーの月間平均稼働人数は396人だった。社員と外部人材を組み合わせて案件を拡大できる反面、外注先への支払い、稼働率、顧客から得る単価の差が利益を決める。会社が開示する事業別売上と、この人的資源の規模を結び付けることが、将来の売上を考える出発点となる。
優良さと弱いところ
最大の強みは、金融や大規模システムの開発を通じて築いた顧客との関係である。NTTデータの認定パートナーとして長く案件を受け、ServiceNow、Oracle、生成AIと扱う技術も広げてきた。難しい案件を任せてもらえる実績は、新規参入企業には短期間で模倣しにくい。ただし、それだけでは顧客が値上げを無条件に受け入れる強い堀とは言えない。
2026年5月期のNTTデータグループ向け売上は約34.8%、野村総合研究所グループ向けは約19.9%で、二つの顧客グループだけで過半を占める。取引先を維持する力と、売上を特定顧客に依存する弱さは表裏一体だ。顧客が自らAIエージェントを導入し、必要な開発工数を減らした場合、案件を継続できても売上の大きさまで守れる保証はない。
直接契約比率が2024年5月期の24.5%から2026年5月期の35.0%へ上がったのは良い変化である。顧客の課題を直接理解し、提案から実行まで請け負うほど、価格を決める余地は広がる。しかし残る約65%は間接的な取引であり、プライム案件への転換はまだ途中だ。過去の営業利益率もおおむね8〜10%で、顧客から大きな超過利益を継続して引き出したとは言いにくい。
資本効率と財務は良好だ。直近の自己資本は約43億円、純有利子負債は大幅なマイナスで、借金による存続リスクは小さい。ただし2026年5月期の純利益には税効果会計の見直しによる一過性の押し上げが含まれる。増分の投資収益率を考える際には、この特殊要因と資金運用益を除いた本業の稼ぎを見る必要がある。
U-Wayは自社ブランドであっても、現状はOracleの基盤上で動く導入・運用サービスである。顧客が何年もかけなければ移行できない独占的な記録の正本、解約率5%未満、法改正を伴う継続的な値上げといった証拠は確認できない。ServiceNowもプラットフォーム自体を所有するのは米国の提供会社だ。現時点では強い堀ではなく、技術力と顧客関係を持つ競争的な受託企業と評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本のITサービス市場には当面、基幹システムの刷新、クラウド移行、セキュリティ対応という需要がある。IDC Japanの定義による国内ITサービス市場は2024年に7兆205億円で、2029年には9兆6,625億円への拡大が予測されている。大手企業の古いシステムを一度に更新できない事情を考えれば、システム投資が突然なくなる可能性は小さい。
市場の大きさと受託企業の取り分は別の問題だ。IDCによる2024年の売上順位は富士通、日立製作所、NEC、NTTデータの順で、その後にIBMとアクセンチュアが続く。シイエヌエスの売上高をこの市場に単純比較するとシェアは約0.1%にすぎない。会社は大手と全面的に競合するより、大手の案件に専門人材を供給し、一部を直接契約へ切り替えてきた。顧客の投資総額が増えても、下請けとして受け取る仕事の量は減りうる。
市場調査の定義にも注意が要る。ガートナーの2024年国内ITサービス市場は約16兆円とIDCより広い範囲で、NTTデータ10.1%、NEC8.3%、富士通8.0%、日立製作所7.7%というシェアが報告されている。この数字をIDCの7兆円市場にそのまま掛けることはできない。いずれの調査でも、同社が大手とは比較にならない小規模事業者であるという結論は変わらない。
コンサルティングにも成長する市場がある。IDCは国内のビジネス・ITコンサルティング合計を2025年の1兆4,554億円から2030年に2兆2,897億円へ拡大すると見込む。デロイト、アクセンチュア、PwC、野村総合研究所などが上位に位置する中、シイエヌエスは小規模な実行支援企業として仕事を取りに行く立場だ。ERPではSAP系の大手導入会社やOracle系の専門企業との競争があり、製品の利用料と導入工事の売上を混同して市場シェアを測ることもできない。
最大の構造変化はAIエージェントである。市場全体ではAI導入という新たな支出が生まれても、プログラムを書く、試験する、運用手順をまとめるという従来の請求工数は減る。2036年までに大手顧客が開発の自動化を標準にすれば、作業人数を増やして売上を伸ばす式が崩れる。将来の競争相手は従来型SIerだけではなく、顧客企業の内製AI、海外の開発自動化サービス、生成AIを組み込んだERPや業務基盤そのものになる。
資本政策と M&A
経営計画は意欲的だ。2025年5月期から2027年5月期の中期計画では売上高100億円、営業利益率10%以上を目標とし、2030年5月期には売上高150億円、営業利益率12%を目指している。ただし2027年5月期の実際の会社予想は売上高92.78億円、営業利益9.66億円で、中期目標にはなお距離がある。2026年10月発表の第1四半期も売上は増えたが営業利益はほぼ横ばいだった。
株主還元には数字の約束がある。会社は配当性向30%以上を目安とし、普通配当を維持・増額する累進配当方針を掲げる。2025年5月期には特別配当を含む還元が厚くなったが、通常の配当性向はおおむね30%前後である。大規模な自社株買いを継続している実績はなく、利益の大部分を株主に直ちに戻す会社ではない。
2026年5月期の資料では、成長投資を優先し、M&A関連に20億円の投資枠を示した。2027年5月期からITコンサルティング企業やOracle NetSuiteの導入支援企業の取得を本格的に検討する方針である。20億円は現在の事業規模と現金保有額に照らして小さくない。買収先の人材と顧客が定着し、資本コストを超える利益を生むなら合理的だが、AIで将来の工数が減る企業を高値で買うと、余剰現金がのれんに変わり、後に減損される危険がある。
過去の利益剰余金の蓄積には節度が見られるものの、これからの資本配分が最大の試験になる。2025年の本社移転には約4.21億円を投じ、ERP人材の採用・育成にも先行費用が生じている。株主が重視すべきなのは売上高150億円の達成それ自体ではない。投じた現金がどれだけの追加利益を生み、配当または企業価値として持ち主に戻るかである。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
シイエヌエスを単なる技術者派遣の会社と見るのは正しくない。2026年5月期には生成AI関連だけで4.16億円の売上を計上し、ServiceNowが8.01億円、U-Wayが6.74億円、ERPが1.89億円へ広がった。AIを使う顧客が増えるほど、既存システムとの接続、セキュリティ設計、運用ルールの作成という新しい仕事が発生する。NTTデータの生成AI案件に入り込めていることは、時代の変化に置いていかれるだけの企業ではない証拠である。
上流工程へ移る動きも数字に表れている。直接契約比率は2024年5月期の24.5%から2026年5月期の35.0%に上昇した。コンサルティング事業では売上高がほぼ横ばいでも粗利益が26.5%増えた。顧客の課題を直接聞いて設計から導入までを担えば、単純な作業量ではなく解決した価値に対して対価を得る余地が生まれる。ERPの導入経験を業界別の共通部品にして再利用できれば、売上が技術者数だけで決まる状態からも脱却できる。
財務にも余裕がある。現金・預金は現在の時価総額の約3分の2に相当し、過去に営業赤字を繰り返してきたわけでもない。20億円のM&A投資枠を上手に使えば、高度なコンサルタントやOracleの導入専門家を取得して成長を加速できる。会社が掲げる2030年の目標は野心的だが、単なる人員増ではなく案件構成の改善によって達成する可能性がある。
AIによって開発工数が減るのは避けられないとしても、その分だけ新しい顧客課題が発生する。開発の自動化を使いこなし、顧客に成果を提供する側へ回れれば、従来の人月単価を前提としない利益率を築ける。現在の保有現金を守りながら、技術者の量より質で稼ぐ会社へ進化することが最も価値のある筋書きだ。
慎重な見方
この会社の利益を守る権利は、思われているほど強くない。NTTデータグループと野村総合研究所グループへの売上が合わせて過半を占め、間接的な取引が全社売上の約65%ある。大手顧客がAIによる工数削減の効果を価格交渉に反映すれば、開発案件そのものが継続しても下請け企業が請求できる時間は減る。顧客との良好な関係は、削減される工数を守る権利ではない。
特に注意したいのは、企業のIT投資額が増えてもシイエヌエスの取り分は必ずしも増えないことだ。大手SIerがAIエージェントを使って設計、プログラミング、試験を内製化すれば、外部へ発注する仕事は減る。海外の自動開発サービスや、Oracle、ServiceNow自体に搭載されるAI機能も競争相手になる。会社がAIツールを開発している事実は評価できるが、独自のAIエージェント製品が継続収入を独占しているという証拠にはならない。
ビジネスソリューション事業の2026年5月期の粗利益率低下は、成長投資の難しさを示す。ERP人材の教育、案件の長期化、顧客都合の規模縮小で利益が圧迫された。2027年5月期には同事業の粗利益が大きく改善する計画だが、実行できるかはまだ分からない。社員エンジニア数が直近で減少する一方、外部パートナーへの依存が高まっていることも、競争力をすべて社内に蓄積できるわけではないことを示している。
さらに20億円の買収枠は、現金の豊富さをそのまま株主の安全域と考える際の落とし穴となる。人材と顧客関係が主な資産の会社を買収しても、技術の陳腐化や主要社員の離職によって価値が薄れる。買収に使った現金がのれんに変わってしまえば、悲観時には帳簿どおりの価値で売れない。業界が成長するという予測に、個別企業の利益まで連動させるべきではない。
どちらに重みを置いたか
現時点では事業の先行きに慎重な見方をやや優先する。ただし、その理由はAIによる工数削減を二重に悲観するためではない。AIの影響は中立の請求数量と10年より先の成長率に既に反映した。下側の確率を39%、上側を30%とした追加の理由は、大口顧客への依存、ERP事業の収益改善の未達リスク、20億円のM&Aに伴う資本配分の不確実性である。
一方、実際にAI関連売上が出ており、直接契約比率も改善しているため、構造転換に成功する余地は認める。最終的には事業の評価を厳しくすることと、厚い現金を正当に評価することを両立させた。その結果、10年の本質価値は現在の時価総額を約5%下回り、判定は「適正」となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,949 円86 億円(+ 還元の換算額還元の合計 576 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 1,871 円54 億円、今との差 +4.2%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 5,967 円173 億円 | 1,067 円31 億円 | +291.7% | +16.5% | 774 円22 億円 |
| やや楽観 | 19% | 4,581 円133 億円 | 791 円23 億円 | +199.1% | +12.9% | 1,021 円30 億円 |
| 中立 | 31% | 3,029 円88 億円 | 619 円18 億円 | +103.2% | +8.2% | 1,131 円33 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,341 円39 億円 | 379 円11 億円 | −4.3% | −0.5% | 413 円12 億円 |
| 悲観 | 15% | 1,073 円31 億円 | 172 円5 億円 | −30.7% | −3.8% | 187 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,949 円86 億円 | 576 円17 億円 | +96.3% | +7.7% | 3,525 円102 億円 |
今の株価時価総額 1,796 円52 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% AIの実装力を自社の強みに変える 利益 10 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,967 円173 億円
AIを利用した開発の自動化が進んでも、シイエヌエスはその仕組みを金融機関や大手企業の現場に安全に導入できる専門家として選ばれ続ける。NTTデータ向けの生成AI開発で培った経験を横展開し、ServiceNow、決済、クラウド刷新の案件を維持する。テクノロジーソリューションの実質請求工数は現在と同じ規模を保ち、他の2事業でも工数の落ち込みを限定的に抑える。
Oracle NetSuiteの導入経験を業界別の共通部品にして再利用し、プライム案件も増やす。AIやERPの技術を持つ企業の買収では、主要技術者の残留と顧客の継続取引を確保し、事業に投じた資金に十分な収益が生まれる。低採算の下請け案件を減らすことで、全社売上高は約104億円、営業利益は約14億円まで高まる。
この成功でも10年後の仕事が現在より大幅に増えるとは考えない。物価に沿った単価上昇と案件構成の改善によって利益を伸ばす筋書きである。利益の約3分の1を株主へ戻しつつ、今後の成長投資を賄った後にも多くの現金が残る。大手顧客との取引関係は維持され、直接契約の増加によって価格交渉の力も現在より強くなる。
- テクノロジーソリューション事業:数量 292(顧客へ請求できる技術者換算人年。自社技術者と外部パートナーを合わせた実質稼働人数の推計)× 価格 0.16(請求可能技術者換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 48 億円・営業利益 7 億円。AIを顧客向けに実装する需要で実質工数を現在の1.00倍に維持。単価は1.34倍。開発成果の再利用と直接契約比率改善で営業利益率15%。
- ビジネスソリューション事業:数量 292(顧客へ請求できる技術者換算人年。ERP・金融システム開発・クラウド移行の実質稼働人数の推計)× 価格 0.16(請求可能技術者換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 46 億円・営業利益 5 億円。金融基盤の保守・更新とOracle ERPの導入が続き、実質工数1.00倍、単価1.34倍。低採算案件の撤退で営業利益率10%。
- コンサルティング事業:数量 47.5(顧客へ請求できるコンサルタント換算人年。直接契約と上流工程の実質稼働人数の推計)× 価格 0.20(コンサルタント換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。コンサルタント換算47.5人年、現在の0.95倍。単価1.34倍。直接契約と上流案件の比率上昇で営業利益率18%。
倍率:資本コストk=7.25%、2036年以降の名目成長率g_long=0%。弱い堀の残存割合1/3を採用しても、g=0なら正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=1/k=13.7931倍となる。事業の純利益は10.15億円から余剰現金60億円の税後利息0.84億円を除いた9.31億円。これに13.7931倍を掛け、余剰現金60億円×戻り方0.75を加える。現在の余剰現金25億円と10年間の留保利益57億円から、事業拡張・成長投資など22億円を振り向け、余剰現金60億円が残ると想定する。市場のPERを根拠にしない。
確率:生成AI関連の実売上4.16億円、直接契約比率の上昇、コンサルティングの粗利益率改善は上振れを支える実績である。ただし独占的なAIエージェント製品による継続課金の実績は未確認で、全事業の実質請求工数を現在以上には増やさない。複数の変革を成功させる必要があるため11%とする。
やや楽観 19% 上流案件が増え、工数減を収益性で補う 利益 7 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,581 円133 億円
AIエージェントの普及でプログラミングや試験に要する人数は減るが、シイエヌエスは上流の設計、複雑な移行、顧客ごとの統制に仕事を寄せていく。ServiceNowとAI関連の案件は残り、社員と外部パートナーの実質請求工数は緩やかに減少する。顧客が効率化の利益を一部受け取るため単価には上限があるものの、技術の高度化によって物価に近い引き上げは実現する。
ビジネスソリューションでは、Oracle NetSuiteの導入とU-Way関連の保守を組み合わせる。金融システムの開発工数は減るが、ERP案件の採算管理が改善し、低利益率の状態からは回復する。コンサルティングでは直接契約を維持し、AIが資料作成を代替しても、顧客の業務変更に責任を負う仕事を引き受ける。
2036年の売上高は約88億円、営業利益は約10億円となる。中期計画の売上高150億円には届かなくても、会社が過去に達成してきた収益力より高い水準を保つ。成長投資には選別を利かせ、現金の大部分を傷つけずに株主還元を続ける。
- テクノロジーソリューション事業:数量 263(顧客へ請求できる技術者換算人年。自社技術者と外部パートナーを合わせた実質稼働人数の推計)× 価格 0.16(請求可能技術者換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 43 億円・営業利益 6 億円。実質工数0.90倍、単価1.32倍。顧客向けAI実装と設計比率の上昇により利益率13%。
- ビジネスソリューション事業:数量 242(顧客へ請求できる技術者換算人年。ERP・金融システム開発・クラウド移行の実質稼働人数の推計)× 価格 0.16(請求可能技術者換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 38 億円・営業利益 3 億円。実質工数0.83倍、単価1.32倍。ERP導入の標準化と低採算案件の整理で利益率8%。
- コンサルティング事業:数量 41.5(顧客へ請求できるコンサルタント換算人年。直接契約と上流工程の実質稼働人数の推計)× 価格 0.19(コンサルタント換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。実質工数0.83倍、単価1.29倍。上流の直接契約を維持し営業利益率15%。
倍率:k=7.25%、g_long=0%の正当化PER上限13.7931倍。事業の純利益は7.35億円から余剰現金57億円の税後運用益0.798億円を控除した6.552億円とする。事業利益にPERを掛け、余剰現金57億円の75%を加える。現時点の余剰現金25億円に10年累計の留保利益47億円を足し、成長投資や追加運転資本15億円を除いて57億円とした。
確率:AI関連案件とプライム案件の実績から、開発工数の一部を失っても売上総利益率を維持する余地がある。ERPの専門組織や業界別テンプレートへの投資が実る可能性を評価するが、全社を高収益の成果報酬型へ移すには時間がかかるため19%とする。
中立 31% AIで開発工数が減り、現金が価値を支える 利益 4 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,029 円88 億円
2027年頃までは生成AI案件、ServiceNow、ERP導入支援が売上を押し上げる。しかし、その先では顧客側の開発自動化が進み、従来の人数と工数に基づく請求額が減り始める。プログラムを書くことだけでなく、テストや資料作成もAIが担う。NTTデータなど主要顧客との取引は続くが、顧客が購入する実質作業量は10年間で目に見えて縮小する。
テクノロジーソリューションの実質請求工数は現在の70%、ビジネスソリューションは64%、コンサルティングは60%となる。単価は物価上昇と技術者不足を背景に上がるが、AIで仕事を速く終えられる分は顧客への値下げ圧力となる。これらの価格上昇は、工数の減少を完全には補わない。
会社は低採算案件からの撤退と直接契約への転換を続ける。ただしOracleやServiceNowの基盤を所有しているわけではなく、独自の価格支配力を築くには至らない。ERPの利益率も多少改善するにとどまり、2036年の売上高は約66.6億円、営業利益は約5.1億円、純利益は約4億円となる。
稼いだ利益の約30%を配当などに回し、残りは積み上がる。大型買収を無制限には実行せず、成長投資と運転資金に必要な額を除いた現金が価値の重要な部分を占める。事業の成長が鈍っても、資本配分を大きく誤らなければ株主価値は急激には失われない。
- テクノロジーソリューション事業:数量 204(顧客へ請求できる技術者換算人年。自社技術者と外部パートナーを合わせた実質稼働人数の推計)× 価格 0.16(請求可能技術者換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。AIエージェント代替により実質請求工数0.70倍、単価1.29倍。技術の高度化は続くが価格への転嫁に限界があり、営業利益率10%。
- ビジネスソリューション事業:数量 187(顧客へ請求できる技術者換算人年。ERP・金融システム開発・クラウド移行の実質稼働人数の推計)× 価格 0.15(請求可能技術者換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。実質請求工数0.64倍、単価1.30倍。銀行システムの更新は残るが、ERP構築作業の自動化が進み、営業利益率4.5%。
- コンサルティング事業:数量 30.0(顧客へ請求できるコンサルタント換算人年。直接契約と上流工程の実質稼働人数の推計)× 価格 0.18(コンサルタント換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。実質請求工数0.60倍、単価1.25倍。顧客との関係は続くがAIによる調査・資料作成の代替で請求可能工数が減り、営業利益率10%。
倍率:資本コスト7.25%、長期名目成長率0%により正当化PERは13.7931倍。純利益4.0億円から余剰現金59億円の税後運用益0.826億円を外し、事業純利益3.174億円に倍率を掛ける。余剰現金59億円は戻り方0.75で別に加算する。今の余剰現金25億円と10年累計の留保利益42億円から、ERP・運転資金・選別した買収などへの追加投入8億円を差し引いた。2036年のROE低下は、事業利益の縮小と現金を含む自己資本の蓄積が同時に起きるためである。現在の株価や市場PERから倍率を逆算していない。
確率:現時点の業績成長と生成AI関連の実売上を評価しつつ、2036年には技術者の工数を売る方式そのものが縮むと考える。既存事業の実質工数の縮小と緩やかな名目単価上昇を組み合わせた中心の筋書きであり、31%とする。
やや悲観 24% 大口顧客の内製化とERPの採算悪化 利益 2 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,341 円39 億円
NTTデータをはじめとする主要顧客が、自社のAI基盤を使って開発工程を内製化する。シイエヌエスへの発注が完全に途絶えるわけではないが、従来より少ない人数で契約できる仕事が増え、外部パートナーへの発注も縮小する。新しいAI案件を得ても、失う従来型案件を十分には補えない。
Oracle NetSuiteの導入支援では競合との価格競争が強まり、U-WayもOracleの技術や販売条件に左右される。社員を育成する費用が残る一方、案件が予定どおりに稼働せず、ビジネスソリューションの利益率は低いままとなる。コンサルティングでも顧客の予算削減が進み、直接契約で得ていた粗利益率の優位が薄れる。
2036年の売上高は約49.7億円、営業利益は約2.1億円となる。それでも大幅な借入金を抱えていないため、直ちに資金繰りに窮する筋書きではない。配当は利益に応じて抑制され、買収投資には慎重になる。事業価値が下がる局面でも、既に保有する現金・預金が資産面の床を支える。ただし低収益の事業を続ける以上、帳簿の自己資本がすべて高い収益を生むわけではない。
- テクノロジーソリューション事業:数量 161(顧客へ請求できる技術者換算人年。自社技術者と外部パートナーを合わせた実質稼働人数の推計)× 価格 0.15(請求可能技術者換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。実質請求工数0.55倍、単価1.20倍。大手顧客の内製化と稼働率低下で利益率6%。
- ビジネスソリューション事業:数量 152(顧客へ請求できる技術者換算人年。ERP・金融システム開発・クラウド移行の実質稼働人数の推計)× 価格 0.14(請求可能技術者換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。実質請求工数0.52倍、単価1.22倍。ERP案件の長期化と価格競争により利益率2%。
- コンサルティング事業:数量 24.0(顧客へ請求できるコンサルタント換算人年。直接契約と上流工程の実質稼働人数の推計)× 価格 0.17(コンサルタント換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。実質請求工数0.48倍、単価1.18倍。AIによる調査・資料作成の代替と顧客の予算削減で利益率6%。
倍率:稼ぐ力が弱くなった場合は、将来の自己資本69.3億円に倍率を掛けず、2026年5月期末の自己資本43.3億円を基準にする。PBR0.90倍による時価総額38.97億円は、同時点の現金・預金37.87億円から少額のリース債務を引いた約37.8億円の資産の床を上回る。余剰現金は自己資本に既に含まれているため二重加算しない。稼ぐ力による価値も純利益1.65億円÷資本コスト7.25%で約22.8億円にとどまる。
確率:NTTデータグループと野村総合研究所グループで売上の過半を占め、ERP事業は2026年5月期に粗利益率が悪化した。AIの数量減少自体は中立でも反映済みであり、追加の下振れは顧客の発注条件悪化と会社自身の案件採算管理が予定どおり改善しないことに求める。
悲観 15% 工数商売の競争力を失い、買収も失敗 利益 0 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,073 円31 億円
主要顧客は生成AIと業務ソフトに組み込まれたエージェントを用い、従来の設計、開発、試験、運用の相当部分を社内で完結させる。シイエヌエスは新しい技術を習得しても、顧客が必要とする工数の減少を補えない。大手SIerとの長年の関係は残るものの、それが以前と同じ売上を保証するものではなくなる。
ERP事業では採用と教育の先行投資が回収できず、導入案件の採算も悪化する。買収した企業から主要技術者が離れ、取得した顧客基盤も縮小する。事業の一部を閉鎖し、オフィスや人員を整理する費用が発生する。自社ブランドのU-WayもOracle基盤との競争関係やサービス仕様の変化を受け、独自の価格決定力を確立できない。
2036年の売上高は約34.8億円と現在の半分以下になり、営業赤字へ転落する。配当は途中までの累計で限定的に残るが、その後は縮小または停止する。過去に稼いだ現金が全額残るという前提も採らない。失敗した買収と撤退費用によって約9.8億円の資産価値を失うため、売却可能な資金の床は約28億円へ低下する。
事業が破綻に至らなくても、技術者の人的な価値を帳簿どおりに換金することはできない。こうした10年後には、稼ぐ力への高い評価は付かず、残っている現金と売却可能な資産が価値の中心になる。
- テクノロジーソリューション事業:数量 111(顧客へ請求できる技術者換算人年。自社技術者と外部パートナーを合わせた実質稼働人数の推計)× 価格 0.14(請求可能技術者換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。実質請求工数0.38倍、単価1.15倍。AIエージェント代替と大口顧客の発注喪失で採算ぎりぎり。
- ビジネスソリューション事業:数量 123(顧客へ請求できる技術者換算人年。ERP・金融システム開発・クラウド移行の実質稼働人数の推計)× 価格 0.13(請求可能技術者換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。実質請求工数0.42倍、単価1.12倍。ERP撤退・低採算案件・維持費用が残り営業利益率マイナス2%。
- コンサルティング事業:数量 18.0(顧客へ請求できるコンサルタント換算人年。直接契約と上流工程の実質稼働人数の推計)× 価格 0.16(コンサルタント換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目)→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。実質請求工数0.36倍、単価1.10倍。顧客の直接発注が減り営業利益率マイナス5%。
倍率:営業赤字で持続的な稼ぐ力を見込めないためPERを使わない。現在の自己資本43.3億円にPBR0.72倍を掛け、時価総額31.18億円とする。10年間で現金を買収に7.0億円投じ、その価値が失われるうえ、撤退・解約・人員整理などに2.8億円を使う悲観を想定し、現在の純現金約37.8億円から資産の床を28億円へ引き下げる。将来の自己資本48.3億円に0.72倍を掛けた値は採用しない。
確率:AIによる代替だけでなく、主要顧客からの受注喪失、ERP投資の失敗、買収先の重要人材の流出という複数の悪材料が重なる構造的敗北を想定する。無借金に近い財務があるため倒産の確率としては扱わないが、事業の収益性を失う15%の確率を認める。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
テクノロジーソリューション事業
ServiceNowの導入・運用、クラウド基盤、生成AIツール、決済プラットフォームなどを開発する。会社開示上の事業別売上は全社の約46%。AI関連の受注を既に獲得しているが、専有的なAIエージェント製品の継続課金収入が主力になったとの証拠はないため、評価上は人月・工数型に分類する。
| 数量顧客へ請求できる技術者換算人年。自社技術者と外部パートナーを合わせた実質稼働人数の推計 | 価格請求可能技術者換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 292 | 0.12 | 36 | 5 |
| 10 年後 中立 | 204 | 0.16 | 32 | 3 |
取り方:会社の2026年5月期決算説明資料で売上高3,579.977百万円、売上総利益1,034.587百万円、粗利益率28.9%を確認。会社開示の社員エンジニア238人と外部BP月間平均396人の合計634人を、3事業の売上構成と技術難度で按分した推計である。テクノロジー292人年、ビジネス292人年、コンサル50人年とし、単価は実績売上を人数で割って求めた。社員数は期末、BPは年間月平均であり、事業別人数も非開示なので数量と単価は分析上の推計である。会社の売上・粗利益は実績で、営業利益4.74億円は全社販管費約12.18億円を売上比で按分した推計値。生成AI関連売上4.16億円は会社が実績を開示しているが、独立したエージェント製品収入と同一視しない。出典:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4076/tdnet/2850693/00.pdf
ビジネスソリューション事業
銀行・流通業の業務システム開発、Oracle Cloud Infrastructureを活用するU-Way、Oracle NetSuiteなどのERP導入支援が中心。U-Wayは自社サービスだが、現在の収益は導入・移行・運用支援の人的作業が中心と判断し、人月・工数型に分類する。
| 数量顧客へ請求できる技術者換算人年。ERP・金融システム開発・クラウド移行の実質稼働人数の推計 | 価格請求可能技術者換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 292 | 0.12 | 35 | 1 |
| 10 年後 中立 | 187 | 0.15 | 29 | 1 |
取り方:会社の事業別実績は売上高3,459.593百万円、売上総利益617.620百万円、粗利益率17.9%。会社開示の人員構成に基づき、全体634人年のうち292人年が金融・ERP・U-Wayの案件に対応すると推計し、売上をその人数で割って平均単価を得た。事業別の実人数・工数単価は非開示であり、U-Way売上6.74億円やERP売上1.89億円は当事業内の注力領域として把握し、二重計上しない。営業利益0.75億円は全社の販管費を売上比で按分した推計であり、会社公表の事業別営業利益ではない。出典:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4076/tdnet/2850693/00.pdf
コンサルティング事業
企業のIT戦略・業務改革の構想、AI活用の計画、医療・製造・建設向け基幹システムの上流設計と実行支援。顧客との直接契約が収益性を改善しているが、成果連動の継続収入ではなく人の工数を主に販売するため、人月・工数型に分類する。
| 数量顧客へ請求できるコンサルタント換算人年。直接契約と上流工程の実質稼働人数の推計 | 価格コンサルタント換算1人年当たりの平均売上高。単位は億円/人年、名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 50.0 | 0.15 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 0.18 | 6 | 1 |
取り方:会社開示の売上高734.738百万円、売上総利益250.941百万円、粗利益率34.2%を採用。上流工程の単価が他の2事業より高いことと、全社の社員・BP合わせた634人年という人員規模を踏まえ、コンサルティングの担当を約50人年と仮定した。平均単価は年間約1,469万円、月間約122万円に相当するが、実際の契約単価ではなく売上を推計工数で割った値である。営業利益1.36445億円は全社販管費の売上比按分による推計。IDCの国内ビジネス・ITコンサルティング合計市場は2025年1兆4,554億円で、同社売上の規模は約0.05%に相当する。出典:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4076/tdnet/2850693/00.pdf および https://www.idc.com/resource-center/blog/japan-business-consulting-market-ai-growth-2030/
リスクと懸念
AIエージェント代替による請求工数の消失
同社の3事業は、いずれも大部分が技術者やコンサルタントの作業を対価にする構造である。AIエージェントが実装、試験、運用、資料作成を代替すると、顧客のIT支出が増えても購入する工数は減りうる。生成AI関連の実売上があっても、自社が継続的な利用料を独占する製品とは限らない。中立の実質工数は事業別に現在の60〜70%まで縮む想定とした。
NTTデータグループと野村総合研究所グループへの集中
2026年5月期の売上高に占めるNTTデータグループ向けは34.8%、野村総合研究所グループ向けは19.9%である。大手顧客からの信頼は受注の強みだが、仕様の標準化、外注先の集約、AI内製化の方針変更があれば同社の売上を一度に押し下げる。顧客が交渉力を持つため、案件を継続しても単価を十分に上げられない危険がある。
20億円のM&A投資枠と資本配分の失敗
会社はITコンサルティングとERP導入支援の企業を主な対象とし、M&A関連に20億円の投資枠を掲げている。人的な技能を主な価値とする会社は、買収後の離職やAIによる受注減で利益が変わりやすい。高い取得価格を払ってのれんが生じても、将来売れる資産になるとは限らない。余剰現金の厚さが株主の安全域であり続けるには、投資回収の規律が不可欠だ。
ERP立ち上げとOracle基盤への依存
ビジネスソリューションは2026年5月期に売上高がほぼ横ばいで、粗利益は減少した。人材育成費、案件の長期化、顧客都合の案件縮小が原因である。2027年5月期にはERP事業の拡大による大幅な採算改善を計画するが、Oracle製品の価格、機能、販売制度は同社が決められない。U-WayやNetSuiteの導入実績が増えても独自の恒久的な価格支配力につながるとは限らない。
外部パートナーの稼働率と専門人材の確保
2026年5月期の社員エンジニア238人に対し、外部ビジネスパートナーの月間平均稼働人数は396人だった。必要な技術を機動的に確保できる反面、人材単価の上昇やパートナー企業の撤退は粗利益を圧迫する。直近では社員エンジニア数が減少しており、技術の蓄積と採用の難しさが課題だ。AI導入が進む際には、人員を維持する費用と受注工数の減少が同時に発生しうる。
新本社の固定費と新リース会計
本社移転などにより、2026年5月期末の解約不能のオペレーティング・リースに係る未経過リース料は約7.27億円となった。オフィス賃料は受注が減っても簡単には削減できない。新リース会計基準の適用後は使用権資産とリース負債が貸借対照表に計上され、見かけの純有利子負債や自己資本比率の比較が変わる。価値計算では既に費用化した賃料を二重に控除しない。
開発品質・情報漏えい・顧客のシステム停止
金融や決済基盤の案件では、システム停止、個人情報漏えい、納期の大幅な遅延が顧客との関係を傷つける。AIが生成したコードを利用するほど、検証と責任分担の仕組みも必要になる。損害賠償や修復費用だけでなく、大手顧客が発注先を変更した場合の売上減少の方が長期の株主価値に大きく影響しうる。
今後の分かれ目
- 生成AI・AIエージェント関連の売上が継続して増え、既存開発案件の縮小を上回ったら
- テクノロジーソリューションの実質請求工数の下落を緩め、やや楽観の確率を引き上げる。ただし、その売上が顧客の新規投資による一時的な受託なのか、自社で継続的に利用料を得られる製品なのかを分けて評価する。
- 直接契約比率が35%から50%を超え、事業全体の粗利益率も継続して改善したら
- 大手SIerへの下請け依存が下がり、値決め力が改善した証拠と判断する。コンサルティングとERPの利益率を上方修正し、将来の事業利益を見直す。
- 2027年5月期のビジネスソリューションの粗利益率が会社計画の23%に届かなかったら
- Oracle ERPの立ち上げ投資が予想以上に重いとみて中立の利益率を引き下げ、やや悲観の確率を高める。翌期の案件採算まで確認して一時的な費用か構造問題かを判断する。
- NTTデータグループまたは野村総合研究所グループ向けの受注が大幅に減少したら
- AIによる効率化、顧客の内製化、発注先集約のどれが原因かを調べる。受注減が構造的であれば、テクノロジーとビジネス両事業の実質数量を下方修正する。
- 20億円のM&A枠から大型買収が実行されたら
- 買収価格、のれん、純現金の減少、取得した技術者の人数、顧客維持率、買収後ROICを検証する。資本コストを下回る買収なら現金の評価を引き下げ、実際の利益増加が確認できれば事業価値を上方修正する。
- 配当性向が50%以上で定着するか、大規模な自社株買いにより株数が5%以上減ったら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ見直す根拠になる。事業の将来利益が変わらなくても、使い道の不確かな現金が所有者に帰属する確実性が高まり、本質価値は上昇する。
- U-Wayで解約率5%未満、複数年の移行障壁、独自データによる継続課金が開示されたら
- その売上に限って人月型から記録・基盤型へ分類変更できるかを検討する。実際に二つ以上の堀の証拠が揃えば、該当部分の数量減少と2036年以降の成長率を見直す。
見ておくもの
- 四半期ごとの3事業の売上高と粗利益率。特にビジネスソリューションの粗利益率23%目標の達成状況
- 生成AI、ServiceNow、U-Way、ERPのそれぞれの実売上高と受注残高の推移
- プライム売上比率が35%から50%、さらに60%へ近づくか
- NTTデータグループおよび野村総合研究所グループへの売上依存度と主要案件の継続
- 社員エンジニア数、外部ビジネスパートナーの平均稼働人数、外注単価、稼働率
- M&A投資枠20億円の使用額、買収した企業の利益、のれん残高、買収後の資本収益率
- 現金・預金と3か月超の定期預金の合計、営業キャッシュフロー、配当・自社株買いによる還元額
- AIを利用する案件での成果報酬・固定料金・継続課金の比率と、従来の人月契約からの転換実績
- 2027年5月期の売上高92.78億円・営業利益9.66億円と、2030年5月期の売上高150億円・営業利益率12%に対する進捗
倍率と資本コストの決め方
売上は会社が公表する3事業の実績に合わせ、社員エンジニア238人と外部BP月間平均396人を基礎に、請求可能な技術者換算人年と年単価へ分解した。事業別人数は非開示なので推計である。10年後の数量はAIエージェントによる工数削減を反映し、物価上昇は価格だけに含めて二重計上していない。倍率は現在のPERや同業株価を使わず、資本コスト7.25%と2036年以降の名目成長率0%から導いた。現金のうち3か月超の定期預金7.61億円を落とさず、運転資金を除いた余剰額と10年間に積み上がる現金を別に評価した。悲観のPBRは将来の積み上がった自己資本ではなく現在の自己資本を基準にし、床を検算した。現行の賃料は営業費用に含め、新リース会計による表示変更で利益や負債を二重に調整しない。直近の減価償却費約0.78億円を一律に物価で増やさず、将来の設備更新や本社投資の追加償却のみ考慮した。最後に現在の時価総額57.19億円と比較した結果が、本質価値54.36億円、差約マイナス5.0%である。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。10年国債3.0%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%から、業績変動、値決め力、純現金、事業寿命の評価による0.25ポイントを差し引いた。個別の買収失敗や顧客集中は数量、利益率、確率に反映し、資本コストには重複して上乗せしない。
同じ業種(情報・通信業)の AI 分析
読んだ資料
- シイエヌエス 2026年5月期決算説明資料(2026年7月13日。3事業の売上・粗利益、AI関連売上、社員・BP、2030年計画、M&A投資枠、配当方針)
- シイエヌエス 2026年5月期有価証券報告書(2026年8月提出。現金・定期預金、主要顧客、リース、株主構成)
- シイエヌエス 2027年5月期第1四半期決算短信(2026年10月14日)
- IDC Japan 国内ITサービス市場予測(2024年市場規模と2029年予測)
- IDC 国内ビジネス・ITコンサルティング市場予測(2026年6月18日)
- ガートナー調査に基づく2024年国内ITサービスの主要事業者別シェア(IDCとは市場定義が異なる)