結論
コナミグループは「eFootball」「遊戯王」「実況パワフルプロ野球」といった既存IPの運営型収益に、「METAL GEAR SOLID Δ」や「SILENT HILL」シリーズの復活という新作・リメイクが重なり、2026年3月期まで3期連続で過去最高益を更新した。デジタルエンタテインメント事業が全社利益の9割超を占める一方、北米・豪州向けカジノ機器(ゲーミング&システム)、ゲームセンター機器(アミューズメント)、フィットネスクラブ(スポーツ)という他のゲーム会社にはない非ゲーム事業を併せ持つ複合企業である点が特徴。
ここでは世界ゲーム市場×シェアでデジタルエンタテインメント事業を積み上げ、カジノ機器・アミューズメント機器は台数×1台あたり売上、スポーツは会員数×客単価で置き(市場の金額と単価は物価並みに上げた)、その時点のROEと資本コストから倍率を決めた。資本コストは基本7.5%に優良度の調整−0.25%を足した7.25%とし、ゲーム4社で物差しを揃えた。結果、今の高い株価(PER34倍前後)を正当化するには、現在のヒット作同時重複によるデジタル事業の高い利益率(36%台)がこのまま続く、あるいはさらに上がる筋書きが必要という計算になった。自己資本は「今+期間の純利益−還元」で流してROEを結果として出し(中立で10年後12%)、最後は利益で測り、事業に要らない現金2,300億円を分けて帳簿の値で足し、今の利益はそのまま残り新しく投じるお金の稼ぎだけが資本コスト7%を超える分の半分まで薄れるとした正当化PERの8割を事業の利益に当てると、中立はPER16倍前後になる。中立の筋書きでは、ヒット依存の構造上いずれ利益率がより平常的な水準に戻るとみて、10年後の本質価値は今の時価総額を半分ほど下回り、総合では割高と出た。コナミは中長期の数値目標を開示しない方針を取っており、投資家が参照できる会社自身の長期計画が他社より少ない点も見通しの不確実性を高めている。
バリュー投資の観点から
オーナー利益の観点では、コナミは開発費(研究開発費493億円、前期比+6.3%)を一定のペースで再投資しながらも、無借金・純現金2,876億円という強い現金創出力を背景に高い配当性向を維持できており、株主が実際に受け取れる利益の質は高い。ただし、再投資の多くは「次のヒットを当てる」ための開発投資であり、その成否が読みにくい点は、他の資本財企業の設備投資とは異なる不確実性を伴う。
堀の持続性については、遊戯王やeFootballのように一度当てたIPを運営型モデルへ転換して寿命を延ばす実行力を高く評価できるが、「10年後も新しいヒットを生み出し続けられるか」という一次審査では慎重にならざるを得ない。ゲーミング&システム事業という非ゲームの現金創出源を持つ点は、事業の予測可能性を補う材料として評価されるはずである。
資本配分については、2000年代前半のピープル・ハドソンの買収を最後に大型M&Aを避け、オーガニックな強化に資本を使う規律は評価できる。一方で安全域の観点では、現在の株価がここ数年の記録的な好況(3期連続最高益)を前提にした高い倍率で評価されており、ヒット作が重ならない「普通の年」が来た時の下落余地は相応に大きいとみるべきで、今払う値段に対する安全域は乏しいという判断になる。
何で稼ぐ会社か
収益の中核はデジタルエンタテインメント事業で、全社事業利益の9割超を占める。収益源は大きく2つに分かれる。1つは運営型(ライブサービス)のタイトルで、サッカーゲーム「eFootball」(2026年4月時点で累計10億ダウンロード)、スマホ・コンシューマ双方で展開する「実況パワフルプロ野球」、カードゲーム「遊戯王」のアナログ(OCG)とデジタル(マスターデュエル等)がこれにあたり、ガチャ・DLC・大会運営・ライセンスから継続的に収益を得る。もう1つはパッケージ販売型で、「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」(発売後に200万本を突破)のような新作・リメイクが該当し、発売年に売上が立つ買い替え型の需要である。
これに加えて3つの非ゲーム事業を持つ。ゲーミング&システム事業は北米・豪州を拠点に、カジノ向けスロットマシンとカジノ管理システム「SYNKROS」を世界400以上のIR・カジノ・クルーズ船に供給するB2B事業で、日本国内のカジノ機器ライセンスも申請中。アミューズメント事業はゲームセンター向けの機器開発・運営。スポーツ事業は「コナミスポーツ」として全国にフィットネスクラブを展開し、会員数×客単価で収益が決まる会員制ビジネスである。4事業の組み合わせにより、ヒット作のある年とない年で業績が振れるコンテンツ事業の循環を、会員制・B2B事業がある程度平らにする構造になっている。
優良さと弱いところ
堀の中心は「遊戯王」「メタルギア」「サイレントヒル」「パワプロ」といった長寿命の自社IP群と、それを長期間にわたって運営し続けるノウハウにある。遊戯王はカードゲームとして25年以上の歴史を持ちながら安定した高利益率を保ち、eFootballも旧来のパッケージ販売(ウイニングイレブン)から運営型の無料プレイ+課金モデルへ転換したことで、単発のヒット・ミスに依存しない継続収益源に育った。この「一度当てたIPを運営型に転換して寿命を延ばす」戦略の実行力が、同業他社との差別化点になっている。
資本効率はROE17.7%(2026年3月期)、自己資本比率75.4%、純現金2,876億円という無借金かつ現金が厚い財務体質で、資本効率と財務の安全性を両立している。ゲーミング&システム事業という北米・豪州向けのB2Bカジノ機器事業を持つことも、国内ゲーム各社との比較では独自の強みであり、円安メリットと国内ゲーム市場の人口動態リスクの両方から事業を切り離す効果がある。
弱点は、利益の9割超が一つの事業(デジタルエンタテインメント)に集中しており、その中でも数本の主力IPへの依存度が高いことである。新作IPを継続的に創出する力が将来にわたって続くかどうかは実績だけでは保証されず、ヒット作がない年には全社の増益ペースが一気に鈍る構造的なリスクを抱える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界のゲーム市場はCESA基準で2025年に32兆円規模とされ、モバイルゲームが過半を占める。国内市場(2.6兆円規模)は人口動態からほぼ横ばいだが、海外のモバイル・PC市場の拡大が市場全体の数量の伸びを支えている。コナミは「大型タイトルの開発費高騰による寡占化」が進む業界の中で、カプコン・スクウェア・エニックス・バンダイナムコ・コーエーテクモ・セガサミーといった国内大手と競う一方、海外市場ではTencent・ソニー・EA・Take-Twoなど海外大手とも間接的に競合する。
循環は薄いがヒット・ミスの振れは大きく、同業のカプコンが営業利益率38.8%と業界内でも突出して高い収益性を持つのに対し、コナミは27.5%(2026年3月期)とやや劣後する。これは非ゲーム事業(カジノ機器・フィットネス)を併せ持つ分、ゲーム単体の利益率で単純比較できない面もある。技術面では生成AIがゲーム開発のコスト構造を変える最大の変数で、開発工程の効率化が追い風になる一方、海外インディー・新興スタジオの開発力が上がることで既存IPの優位性が削られるリスクも同時に存在する。
規制面では、ガチャ・景品表示法の規制強化や、Apple・Googleのアプリストア課金(売上の約30%を手数料として取られる)に関する各国の訴訟・規制の行方が、収益の取り分に直接効く。また、ゲーミング&システム事業は各国のカジノ規制・IR開業スケジュール(日本の大阪IRを含む)に業績が左右される点で、他のゲーム会社にはない固有の規制リスクを負っている。
資本政策と M&A
株主還元は配当性向50%前後を目安とする業績連動型の配当(2026年3月期は配当性向49.4%)に加え、自社株買いを組み合わせる安定高配当路線を継続する方針を掲げている。無借金かつ純現金2,876億円という財務の厚みが、ヒット作のない年にも還元方針を維持できる基盤になっている。
M&Aの歴史としては、2001年にフィットネス大手「ピープル」を友好的TOBで子会社化し現在のコナミスポーツの基盤を作った。同じく2001年にハドソンへ資本参加し、2012年の吸収合併でIP(ボンバーマン等)とスマートフォン向け開発力を取り込み、「実況パワフルプロ野球」のスマホ展開強化につながった。2011年にはアビリット(アミューズメント機器)を完全子会社化している。近年は大型M&Aを行わず、既存IPの運営力強化と新作・リメイクへの開発投資というオーガニックな資本配分が中心である。
中長期の数値目標(売上・利益の長期計画)を開示しない方針を取っており、変動要因の大きい事業環境で数値目標が投資家の判断を誤らせる可能性があるという考え方による。他社にあるような中期経営計画の原文を読むことができず、将来の経営の方向性は決算説明会でのコメントや新作ラインアップの発表から推測するしかない点が、同業他社と比べた情報開示面での特徴である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
eFootballは2026年4月時点で累計10億ダウンロードに達し、パッケージ販売型から運営型への転換が完全に定着した。これによりワールドカップ等のイベント時だけでなく通期で安定した課金収益が見込め、以前のような「ヒットの谷」が浅くなっている。METAL GEAR SOLID Δは発売後に200万本を突破し、SILENT HILLシリーズは「Townfall」の新作に加え初代のリメイクも控えており、休眠していた旧IPの復活という新しい成長ドライバーが同時に立ち上がっている。遊戯王はOCG・デジタルともに25年以上の歴史を持ちながら利益率の高さが際立ち、カードゲームという枯れた収益源としての安定感がある。
ゲーミング&システム事業は北米・豪州向けのカジノ機器・SYNKROSで世界400以上のIR・カジノに導入され、日本のカジノ免許申請も進んでおり、大阪IRが開業すれば新しい収益源になる。スポーツ事業も会員数が増加に転じ黒字が定着し、かつての不採算事業というイメージから脱却した。無借金・純現金2,876億円という財務の強さを背景に、研究開発投資と株主還元を同時に拡大できる余力があり、複数のIP・事業が同時に当たる好循環が今後も続く可能性は十分にある。研究開発費も493億円と過去最高を更新しながら増益を続けており、投資と収益成長の両立ができている。
慎重な見方
3期連続の過去最高益は、eFootball・MGSΔ・プロスピといった複数のヒットが「同時に」重なった結果であり、セクター全体の経験則どおり、ヒット作の有無で営業利益が2倍以上振れる構造そのものは消えていない。デジタルエンタテインメント事業の利益率は36%台まで上昇しているが、過去の水準(2020年前後は10%台)と比べて極めて高く、新作ラインアップのいずれかが期待を下回れば、利益率は平常的な水準まで一気に戻る可能性がある。遊戯王・eFootballという「当たった」IPに利益が集中しており、次の柱となる新規IPの創出力は実績だけでは保証されない。
Apple・Google等のプラットフォーム課金(売上の約30%)への依存は業種共通のリスクだが、ガチャ・景品表示法の規制強化や各国でのプラットフォーム手数料訴訟の行方次第で、コナミの取り分がさらに削られる可能性がある。ゲーミング&システム事業は北米・豪州のカジノ投資サイクルに連動し、前期は売上横ばいながら事業利益が50%超減益となっており、ゲーム事業の好調の陰で既に業績の重荷になっている。中長期の数値目標を開示しない方針も、会社自身が数年先の事業環境を自信を持って見通せていないことの裏返しとも解釈できる。現在の株価はPER34倍前後と、同業(カプコン等)の典型的な評価レンジ(PER15〜25倍程度)を上回る水準にあり、好況の持続をかなり強く前提にした値段になっている。
どちらに重みを置いたか
事業の実行力(IPの運営型への転換、旧IPの復活、非ゲーム事業による分散)では強気の見方に説得力があるが、現在の利益率の高さがヒット作の同時重複という一時的な要因にどこまで支えられているかという論点では、慎重な見方の指摘がより的を射ている。セクター共通の特徴である「ヒットの有無で利益が2倍以上変わる」構造は、過去の実績を見ても変わっていない。本質価値の計算では、中立(ベース)シナリオで利益率がやや平常化すると置くと、10年後も今の株価には届かず、楽観に近い筋書きが続いて初めて今の株価が正当化される。これは会社の実力を否定するものではなく、今の値段がここ数年の記録的な好況の持続をかなり強く織り込んでいることを示す。確率は中立をやや重く置いた。運営型IPの息の長さと非ゲーム事業による稼ぎ口の分散は、優良度の調整−0.25%で資本コスト7%に入れた。余った現金を分け、新しく投じるお金の稼ぎだけが先で薄れるとして利益で測ると中立はPER16倍前後となり、今のPER34倍前後との差は大きい。結論は割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 24,271 円3.29 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 4,616 円6,257 億円)。 今の値に割り戻すと 15,629 円2.12 兆円、今との差 −37.9%、 期待の年率 +1.4%(資本コスト 7.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 49,817 円6.75 兆円 | 7,198 円9,758 億円 | +126.5% | +8.5% | 6,842 円9,275 億円 |
| やや楽観 | 27% | 34,430 円4.67 兆円 | 5,736 円7,775 億円 | +59.5% | +4.8% | 10,845 円1.47 兆円 |
| 中立 | 33% | 22,053 円2.99 兆円 | 4,575 円6,202 億円 | +5.8% | +0.6% | 8,787 円1.19 兆円 |
| やや悲観 | 18% | 8,962 円1.21 兆円 | 3,134 円4,249 億円 | −52.0% | −7.1% | 2,177 円2,951 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,062 円1,440 億円 | 1,295 円1,755 億円 | −90.6% | −21.1% | 236 円320 億円 |
| 加重平均 | 100% | 24,271 円3.29 兆円 | 4,616 円6,257 億円 | +14.7% | +1.4% | 28,887 円3.92 兆円 |
今の株価時価総額 25,175 円3.41 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 複数のIPが世界で運営型として定着 利益 2,725 億円 · PER 23.9 倍 · 株価時価総額 49,817 円6.75 兆円
eFootball・遊戯王に続き、METAL GEAR・SILENT HILLの復活IPも世界で運営型コンテンツとして定着し、世界ゲーム市場は73.7兆円規模に拡大する中でコナミのシェアは1.4%まで広がる。デジタルエンタテインメントの利益率は36%の高水準を10年間維持する。ゲーミング&システムは大阪をはじめ各国のIR開業が進み事業規模が拡大、スポーツ事業も会員拡大が続く。生成AIによる開発効率化を取り込み、新規IPの創出ペースも上がる、同社にとって最も理想的な10年になる。遊戯王は30年近い歴史を重ねながらも新規ファン層の取り込みに成功し、アプリストア以外の課金導線(独自プラットフォーム)も育つ。
- デジタルエンタテインメント:数量 73.7(世界ゲーム市場(名目の兆円、CESA基準))× 価格 1.4%(コナミのシェア(%))→ 売上 10,318 億円・営業利益 3,714 億円。世界市場73.7兆円×シェア1.4%
- ゲーミング&システム(カジノ機器):数量 13,569(カジノ機器の販売・稼働の台数換算(台))× 価格 642(1台あたり年間売上(万円))→ 売上 871 億円・営業利益 157 億円。各国IR開業で拡大
- アミューズメント:数量 6.8(アミューズメント機器の年間販売台数(万台))× 価格 67(1台あたり売上(万円))→ 売上 456 億円・営業利益 137 億円。利益率30%
- スポーツ(フィットネスクラブ):数量 52.0(会員数(万人))× 価格 16(会員1人あたりの年間客単価(万円))→ 売上 836 億円・営業利益 100 億円。会員52万人
倍率:事業の純利益 2,693 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 31.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 19.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)2,300 億円。全体の PER 23.88 倍、時価総額 65,073 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年の間に新規IPの創出・既存IPの運営型転換・カジノ機器事業の拡大が同時に実現する必要があり、強いが連続成功の確度は高くない。
やや楽観 27% 主力IPが運営型として安定成長 利益 1,898 億円 · PER 23.5 倍 · 株価時価総額 34,430 円4.67 兆円
eFootball・遊戯王を中心に主力IPの運営型収益が安定成長を続け、世界市場は67兆円規模に拡大する中でシェアは1.2%に改善する。デジタルエンタテインメントの利益率は33%を維持し、ゲーミング&システム・アミューズメント・スポーツも緩やかな増収増益を続ける。復活IPの一部は定着するが、全てが世界的ヒットには至らない、現実的に強い10年になる。研究開発費も着実に増え続け、新規IPへの再投資と株主還元の両立が続く。ゲーミング&システムも北米・豪州に加えアジアのIR開業で裾野が広がり、ゲーム事業の循環を和らげる役割を10年通じて果たす。
- デジタルエンタテインメント:数量 67.0(世界ゲーム市場(名目の兆円、CESA基準))× 価格 1.2%(コナミのシェア(%))→ 売上 8,040 億円・営業利益 2,653 億円。世界市場67兆円×シェア1.2%
- ゲーミング&システム(カジノ機器):数量 12,108(カジノ機器の販売・稼働の台数換算(台))× 価格 642(1台あたり年間売上(万円))→ 売上 777 億円・営業利益 117 億円。利益率15%
- アミューズメント:数量 6.2(アミューズメント機器の年間販売台数(万台))× 価格 67(1台あたり売上(万円))→ 売上 415 億円・営業利益 108 億円。利益率26%
- スポーツ(フィットネスクラブ):数量 50.0(会員数(万人))× 価格 16(会員1人あたりの年間客単価(万円))→ 売上 784 億円・営業利益 71 億円。会員50万人
倍率:事業の純利益 1,866 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)2,300 億円。全体の PER 23.45 倍、時価総額 44,508 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:既存の主力IPが安定して成長を続け、復活IPの一部も定着するという、現実的な強気シナリオ。
中立 33% 中立:市場は構造的に拡大するが利益率は平常化 利益 1,238 億円 · PER 22.7 倍 · 株価時価総額 22,053 円2.99 兆円
世界ゲーム市場は10年で61.6兆円規模まで構造的に拡大するが、コナミのシェアは1.05%と現状からの改善は小幅にとどまる。デジタルエンタテインメントの利益率はヒット・ミスの入れ替わりの中で28%程度に平常化し、過去ほど極端な高利益率は維持できない。ゲーミング&システム・アミューズメント・スポーツも緩やかな成長を続けるが、特別な超過成長は一巡し、会社の優良さ(長寿命IP・非ゲーム事業の分散)は維持されるものの「普通に強い優良企業」としての評価に収まる10年になる。新規IPは年に数本生まれるが、世界的な大ヒットに育つのはそのうち一部にとどまる。
- デジタルエンタテインメント:数量 61.6(世界ゲーム市場(名目の兆円、CESA基準))× 価格 1.1%(コナミのシェア(%))→ 売上 6,472 億円・営業利益 1,812 億円。利益率28%に平常化
- ゲーミング&システム(カジノ機器):数量 10,855(カジノ機器の販売・稼働の台数換算(台))× 価格 642(1台あたり年間売上(万円))→ 売上 697 億円・営業利益 77 億円。利益率11%
- アミューズメント:数量 5.6(アミューズメント機器の年間販売台数(万台))× 価格 67(1台あたり売上(万円))→ 売上 375 億円・営業利益 83 億円。利益率22%
- スポーツ(フィットネスクラブ):数量 47.0(会員数(万人))× 価格 15(会員1人あたりの年間客単価(万円))→ 売上 712 億円・営業利益 50 億円。会員47万人
倍率:事業の純利益 1,206 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)2,300 億円。全体の PER 22.66 倍、時価総額 28,053 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:世界ゲーム市場自体の拡大と、ヒット依存度の高い業界構造を踏まえた利益率の平常化を組み合わせた中心シナリオ。
やや悲観 18% 新規IPの創出力が鈍り、競争に侵食される 利益 576 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 8,962 円1.21 兆円
新規IPの創出力が鈍り、既存の主力IPも生成AIを活用した海外新興スタジオとの競争で徐々にシェアを奪われ、コナミのシェアは0.85%まで低下する。世界市場自体も56.3兆円にとどまり、デジタルエンタテインメントの利益率は20%まで低下する。ゲーミング&システムも各国の規制強化で伸びが鈍り、スポーツ・アミューズメントは下支えとなるが成長の勢いは過去10年ほど強くない、じわりと優位性が侵食される10年になる。遊戯王・eFootballといった看板IPの地位自体は保つが、新しい柱が育たないまま10年が過ぎる展開になる。
- デジタルエンタテインメント:数量 56.3(世界ゲーム市場(名目の兆円、CESA基準))× 価格 0.9%(コナミのシェア(%))→ 売上 4,784 億円・営業利益 957 億円。シェア低下で利益率20%
- ゲーミング&システム(カジノ機器):数量 8,768(カジノ機器の販売・稼働の台数換算(台))× 価格 642(1台あたり年間売上(万円))→ 売上 563 億円・営業利益 34 億円。規制強化で伸び鈍化
- アミューズメント:数量 4.6(アミューズメント機器の年間販売台数(万台))× 価格 67(1台あたり売上(万円))→ 売上 308 億円・営業利益 43 億円。利益率14%
- スポーツ(フィットネスクラブ):数量 43.0(会員数(万人))× 価格 14(会員1人あたりの年間客単価(万円))→ 売上 622 億円・営業利益 19 億円。会員43万人
倍率:事業に要らない現金1,725億円(戻り方1.0)を分けると、事業の純利益552億円(現金の税後利息を除く)・事業のROE7.3%。RONIC=k7%+残る割合1/2×(ROE7.3%−k7%)=7.3%、長期の成長率g3.7%から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.9倍。堀は並み。上限は事業552億円×13.9倍+余った現金1,725億円=9,371億円。成長と堀の持ちを低く見るので、上限を下回らせる。やや悲観は上限の9.5割に置き、時価総額10,652億円、全体のPERに直して15.5倍。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 18.49 倍・時価総額 10,652 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:新規IPの創出力が10年の間に鈍り、海外大手・生成AIを活用した新興スタジオとの競争でシェアを失う想定。ゲーム市場の伸びが弱いレンジに相当する。
悲観 10% 構造的に優良さを失う 利益 −34 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,062 円1,440 億円
新規IPの創出が止まり、eFootball・遊戯王といった既存の主力IPも海外大手・生成AIを駆使した新興勢力との競争で価値が削られ、コナミのシェアは0.55%まで低下する。ゲーミング&システムも各国の規制強化と投資縮小で赤字化し、スポーツ・アミューズメントも会員・来店の減少に見舞われる。デジタルエンタテインメントの利益率は8%まで落ち込み、全社でほぼ収支が成り立たない状態になる。遊戯王のブランド自体は残るが、かつての「ヒットを生み出す会社」という評価は市場から外れ、普通のコンテンツ企業として評価されるようになる10年になる。配当は保有する現金・有価証券の売却も含めて維持する方針を取るが、自社株買いは停止する。
- デジタルエンタテインメント:数量 50.9(世界ゲーム市場(名目の兆円、CESA基準))× 価格 0.5%(コナミのシェア(%))→ 売上 2,801 億円・営業利益 224 億円。新規IP創出停止で利益率8%
- ゲーミング&システム(カジノ機器):数量 6,263(カジノ機器の販売・稼働の台数換算(台))× 価格 642(1台あたり年間売上(万円))→ 売上 402 億円・営業利益 −20 億円。規制強化・投資縮小で赤字化
- アミューズメント:数量 3.4(アミューズメント機器の年間販売台数(万台))× 価格 67(1台あたり売上(万円))→ 売上 228 億円・営業利益 0 億円。収支ゼロ
- スポーツ(フィットネスクラブ):数量 38.0(会員数(万人))× 価格 13(会員1人あたりの年間客単価(万円))→ 売上 509 億円・営業利益 −26 億円。会員減少で赤字化
倍率:優良さを失い利益がほぼ消えた筋書きなので、稼ぐ力では測れない。床は純現金と売れる資産の税後(約1440億円・floor_assets_oku。内訳は floor_assets_why)で、これを今の自己資本5645億円に掛けた形(PBR0.26)で置く。帳簿の自己資本は価値の根拠にしない。
確率:新規IPの創出が完全に止まり、既存の主力IPも生成AI時代の競争で価値を失う構造的な負け筋と、循環の谷が同時に来る複合シナリオ。技術・creativeの優位喪失は一度始まると10年で後退しやすいため低頻度だが無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
デジタルエンタテインメント
eFootball・遊戯王・実況パワフルプロ野球などの運営型タイトルと、METAL GEAR・SILENT HILLなどのパッケージ・リメイク新作。
| 数量世界ゲーム市場(名目の兆円、CESA基準) | 価格コナミのシェア(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 35.0 | 1.1% | 3,710 | 1,360 |
| 10 年後 中立 | 61.6 | 1.1% | 6,472 | 1,812 |
取り方:世界ゲーム市場を35兆円(CESA基準、2025年32兆円から拡大)とし、デジタルエンタテインメント事業売上3,710億円のシェアを約1.06%として逆算した。筋書きでは市場の金額を物価並み(10年で1.34倍)に膨らませ、その上に実質の伸び・縮みを掛けた。
ゲーミング&システム(カジノ機器)
北米・豪州向けのカジノ用スロットマシンとカジノ管理システム「SYNKROS」の開発・製造・販売。
| 数量カジノ機器の販売・稼働の台数換算(台) | 価格1台あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9,000 | 479 | 431 | 36 |
| 10 年後 中立 | 10,855 | 642 | 697 | 77 |
取り方:北米・豪州のカジノ機器(スロットマシン販売・参加型の稼働収入・カジノマネジメントシステム)の売上431億円を、販売・稼働の台数換算(推定約9,000台)で割った1台あたり年間売上約479万円とした。台数・単価は非開示のため推定。単価は物価並みに上げ、台数は各筋書きのカジノ投資の強弱で動かした。
アミューズメント
ゲームセンター向け業務用機器の開発・製造・運営。
| 数量アミューズメント機器の年間販売台数(万台) | 価格1台あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.3 | 50 | 264 | 68 |
| 10 年後 中立 | 5.6 | 67 | 375 | 83 |
取り方:ゲームセンター向けメダル機・ビデオゲーム機・パチスロ機等の売上264億円を、1台あたり売上の目安約50万円(大型メダル機から小型機までの平均の推定)で割り、年間販売台数を約5.3万台と逆算した。台数・単価は非開示のため推定。単価は物価並みに上げた。
スポーツ(フィットネスクラブ)
「コナミスポーツ」として展開するフィットネスクラブの会員制運営。
| 数量会員数(万人) | 価格会員1人あたりの年間客単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 44.2 | 11 | 495 | 34 |
| 10 年後 中立 | 47.0 | 15 | 712 | 50 |
取り方:期末会員数44.2万人×1人あたり年間客単価約11.2万円で売上495億円を算出した。会員数は国内の人口に結びつくので中立でほぼ横ばい、客単価は物価並みに上がる(会費の改定)と置いた。
リスクと懸念
ヒット依存の利益率
デジタルエンタテインメント事業の利益率は36%台まで上昇しているが、これはeFootball・MGSΔなど複数のヒットが同時に重なった結果で、新作のいずれかが期待を下回れば利益率はより平常的な水準まで一気に戻る可能性がある。過去の水準(2020年前後は10%台)との差は大きく、現在の高さが一時的な現象である可能性を意識しておく必要がある。
新規IP創出力への依存
利益の9割超が遊戯王・eFootball等の既存IPに集中しており、次の柱となる新規IPを継続的に創出できるかは実績だけでは保証されない。METAL GEAR・SILENT HILLの復活は過去のIPの再活用であり、完全に新しいIPの創出力とは別の論点として、新規IPの枯渇は10年規模の構造的な負け筋になる。
プラットフォーム手数料・規制
Apple・Googleのアプリストア課金(売上の約30%)への依存に加え、ガチャ・景品表示法の規制強化や各国のプラットフォーム手数料訴訟の行方次第で、収益の取り分がさらに削られる可能性がある。未成年の課金規制が各国で強化される流れも、運営型タイトルのARPUに直接効いてくる。
ゲーミング&システムの循環性
北米・豪州向けカジノ機器事業は前期、売上横ばいながら事業利益が50%超減益となっており、カジノ投資の循環次第でゲーム事業の好調を相殺する重荷になり得る。日本のカジノ免許申請も大阪IRの開業スケジュールが遅れれば収益化の時期が後ずれする。
中長期計画の非開示
コナミは中長期の数値目標を開示しない方針を取っており、他社のように中期経営計画の原文から将来の方向性を確認できず、投資家が参照できる情報が決算説明会のコメントや新作発表に限られる点が、同業他社と比べた情報の非対称性になっている。
生成AIによる競争構造の変化
生成AIはゲーム開発のコスト構造を変える最大の変数で、開発効率化の追い風になる一方、海外インディー・新興スタジオの開発力向上により既存IPの優位性が削られるリスクも同時に存在する。開発コストの優位性がどちらに働くかは業界全体でまだ見通せていない。
今後の分かれ目
- SILENT HILL Townfallや初代リメイクが世界的な大ヒットになったら
- 楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。ただし1作のヒットだけで利益率の高さが持続すると決めつけず、次作以降の継続力を確認する。
- デジタルエンタテインメントの利益率が3期連続で32%を下回ったら
- 中立の筋書きの前提どおり利益率の平常化が始まったとみて、価値を下方修正する。
- 大阪IR等のカジノ開業が具体化しゲーミング&システムの受注が増えたら
- 同事業の前提を上方修正し、やや楽観側に重みを移す。
- プラットフォーム手数料訴訟・規制でApple/Googleの取り分が下がったら
- デジタルエンタテインメントの利益率前提を上方修正してよい。逆に規制がガチャ側に強く向かえば下方修正する。
- 2〜3年連続で新規IPの発表・ヒットがないままだったら
- 新規IP創出力の枯渇が進んでいるとみて、やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移す。
- 海外の生成AI活用スタジオが既存IPに近い完成度のタイトルを低コストで出し始めたら
- 10年の悲観(構造的に優良さを失う)の確率を上げ、倍率の圧縮も合わせて想定する。
見ておくもの
- デジタルエンタテインメント事業の事業利益率の推移(36%台が続くか平常化するか)
- 新作IP(SILENT HILL・METAL GEAR復活作)の発売後の販売本数・評価
- ゲーミング&システム事業の受注・大阪IR等の開業スケジュール
- Apple・Googleのプラットフォーム課金に関する規制・訴訟の動向
- コナミスポーツの会員数・客単価の推移
倍率と資本コストの決め方
デジタルエンタテインメント・ゲーミング・アミューズメント・スポーツに分けて積んだ。純現金のうち運転に要る分を引いた2,300億円を余った現金とし、戻り方1.0で足した。倍率は式の上限(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k7%、堀は並みで残る割合1/2)に対する位置で置いた。楽観は上限の9割、やや楽観8.5割、中立8割、やや悲観9.5割、悲観は事業の純利益÷kの稼ぐ力(と純現金)の(赤字のため資産の床で別に置いた)割。今のPERや同業の倍率、谷の倍率は見ていない。悲観は赤字なので資産の床や稼ぐ力では測らず、従来どおり自己資本の評価で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 19.67→23.88 倍・やや楽観 PER 17.96→23.45 倍・中立 PER 16.06→22.66 倍・やや悲観 PER 15.45→18.49 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。