結論
クロス・マーケティンググループは、企業の市場調査から広告・販売促進の実行までを支えるマーケティングサービス企業である。長く持つ株主の見方では、生活者パネルと自社媒体に一定の価値を認めても、現在の時価総額約109億円は割高と判断する。最大の理由は、調査や受託制作を人手で提供する事業がAIエージェントによって置き換えられ、売上以上に利益が傷みやすい構造にあることだ。
2026年6月期は売上高332億円と過去最高を更新したが、営業利益は18億円弱に減った。デジタルマーケティングの拡大と買収効果が増収を支えた一方、海外調査の不振と費用増加が利益を押し下げた。売上の成長とオーナー利益の成長が一致していない点を重く見る。
同社の強みは、1,640万人規模の生活者パネルネットワークと、調査から販促までを一体で提供できる顧客接点にある。2026年に取得したDIGITALIOのECナビ、PeX、デジコも、単なる受託作業とは異なる収益基盤を持つ。ただし、独自データを保有することと、顧客が値上げを受け入れることは別である。解約率や継続的な値上げの実績は十分に開示されていない。
中期経営方針では2030年6月期までに売上高500億円、営業利益50億円を目指す。さらに2035年頃の売上高1,000億円という長期構想も示している。しかし、過去の中期目標には未達成があり、足元でも売上高の拡大が利益率の改善につながっていない。今後の成長を無条件に価値へ織り込むことはできない。
純有利子負債はマイナス約55億円だが、この現金をすべて株主の余剰資産と扱うのも危険だ。DIGITALIOの連結に伴い預り金や契約負債が膨らんでいる。10年後の価値は、AI時代にも残る調査需要、独自媒体の収益、そして本社費を削減できるかに左右される。強い上振れの余地は残るものの、中立的な将来からは現在の評価額を十分に正当化できない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、会社が扱うデータの量より、10年後も顧客が喜んで代金を払う理由を考える。クロス・マーケティンググループには、消費者との接点を築いてきた長い歴史がある。特定の条件を満たす調査協力者を集め、企業が商品やサービスについて正しい判断をする手助けをする仕事は、社会から消えないだろう。
しかし、必要とされる事業であることと、株主が十分に稼げることは同じではない。顧客がAIを使って調査票を作り、集計し、報告資料をまとめられるようになれば、これまで一つの案件として請求していた仕事が小さくなる。会社がAIで効率化しても、競合や顧客にその恩恵を渡すことになれば、利益は期待ほど増えない。
筆者が比較的高く評価するのは、モラタメやDIGITALIOのように、自社の利用者との継続的な関係を持つ事業だ。ただし、独自媒体には競争相手があり、ポイントの原資や顧客獲得費用を負担し続ける必要がある。利用者数が大きいだけでは十分ではない。利用者当たりのオーナー利益が増えているかを確認したい。
資本配分では、既存事業から生まれる現金を利益率の改善、自社媒体の強化、株主還元に振り向けてほしい。AI時代に競争力を失う受託業務を買い増すことは、売上高を増やしても価値を壊す危険がある。過去の買収が増分投下資本に対して十分な利益を生んだかについては、会社別の投資資金と累積キャッシュ回収額の開示が不足している。
最後に払う値段を考える。調査パネルやポイント交換基盤に一定の堀があるとしても、会社全体の利益は本社費や買収の成果に大きく左右される。十年後の利益を高い確信度で読める会社とは言い難い。現在の時価総額に対して十分な安全域を認めるには、AIへの適応だけでなく、実際の営業利益率とキャッシュ還元が改善する証拠が必要である。
何で稼ぐ会社か
会社の事業は、リサーチ・インサイトとデジタルマーケティングの二つに大別される。2026年6月期の売上高はそれぞれ約165億円と約167億円で、ほぼ半分ずつである。しかし利益構造は大きく異なる。リサーチ・インサイトは約31億円のセグメント利益を稼いだのに対し、デジタルマーケティングの利益は約10億円にとどまった。
リサーチ・インサイトでは、クロス・マーケティング、メディリード、Kadenceなどが企業や製薬会社の調査を請け負う。国内売上高は約117億円、海外は約48億円である。アンケートの設計、モニターへの配信、回答の回収、分析、報告が基本的な仕事だ。国内では生活者の行動や購買に関する情報が重要であり、海外では多国間調査や現地市場の理解が価値になる。
調査事業の収益は、調査案件数と案件当たりの受注単価によって決まる。会社は年間2万件を超えるリサーチ実績を示しており、案件の規模に応じて単価は大きく異なる。大規模な定量調査や医療分野の特殊調査は単純なアンケートより高い価値を持つが、一般的な集計・分析は自動化しやすい。今後は案件数だけでなく、人手に依存する作業の比率が収益性を左右する。
デジタルマーケティングの最大領域は、約117億円のソーシャル&デジタルプロモーションである。エクスクリエやREECHなどがインフルエンサー施策、商品のサンプリング、IPを使った販促を提供する。ここには顧客から広告・販促業務を受託する部分と、自社媒体を使って収益を得る部分が混在している。
2026年に買収したDIGITALIOは、ECナビ、PeX、デジコを運営する。約1,200万人の会員を抱えるメディアとポイント交換の仕組みは、利用者と交換先企業の双方を集めることで価値が生まれる。発行・交換されるポイントやギフトの流通額は、そのまま売上高ではない。利用者の取引や広告・サービス利用から得る収益と、預り金などの決済関連負債を分けて評価する必要がある。
残るデジタル事業では、SI・DXコンサルティングが約24億円、マーケティングHRが約25億円を売り上げる。前者はシステムの開発・保守と業務改善支援、後者はIT人材の派遣やBPOである。いずれも人月や工数が売上の重要な基礎になり、AIによる生産性向上を顧客への成果報酬に転換できなければ、提供工数の減少が売上の減少につながる。
優良さと弱いところ
同社の最も有力な堀、つまり競争相手が簡単にはまねできない強みは、生活者データを集める仕組みにある。国内外のパネルネットワークは1,640万人規模に達し、国内のアンケートパネルには多様な属性情報が付いている。メディリードには約30万人の疾患情報パネルもある。特定の条件に該当する人を確実に集めることは、一般的な文章生成とは異なる仕事である。
さらに、商品サンプリングを行うモラタメや、DIGITALIOのECナビ、PeX、デジコには独自の利用者接点がある。こうした媒体は広告の制作業務だけでなく、利用者との継続的な関係から収益を得られる。ただし、競合するポイント経済圏には楽天、PayPay、Pontaなどの大きな企業群が存在する。交換先や利用者を維持するための費用が増えれば、規模が大きくても利益は残らない。
堀の弱点は値決め力である。リサーチではマクロミル、インテージ、GMOリサーチ&AIなどと競争する。広告・販促では電通グループ、博報堂DYグループ、サイバーエージェント系企業や専門代理店と競う。顧客が比較的容易に発注先を替えられる業務も多く、価格を継続して引き上げた実績は確認できない。
資本効率は過去に高かった。ROEは2022年6月期に27%前後となり、その後も二桁台を維持していた。しかし2026年6月期は約9.5%まで低下した。買収による売上増加、海外事業の利益変動、本社費用が重なれば、売上を増やしても増分利益が小さいことを示している。
AIエージェント代替の観点では、調査・分析、受託開発、広告運用、人材サービスは相応に厳しく見る。一方、調査対象者との実際の接点やポイント交換基盤は、生成AIだけでは再現できない。ただし、低解約率、規制による移行障壁、継続的な値上げという複数の裏付けは不足しているため、これらを全面的に『記録の正本』型の強い堀とは扱わない。会社全体では普通程度の堀があるが、広がっていると断定する段階にはない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本のマーケティングリサーチ市場は成熟段階にある。日本マーケティング・リサーチ協会による2025年度の従来型調査市場は2,775億円で、前年からの伸びは1.8%だった。物価上昇を除いた実質市場は縮小している。AIの普及によって簡単な集計や分析を企業が内製化する動きが進めば、名目の市場規模が維持されても、調査会社の受注案件は減る可能性がある。
国内リサーチ売上高約117億円をこの市場と比較すると、同社の規模は約4.2%に相当する。ただし、サービスの対象範囲や海外売上の扱いが異なるため、厳密なシェアではない。インテージグループの2026年6月期連結売上高は約671億円、マクロミルの2025年6月期は約450億円であり、両社の全事業売上をそのまま調査市場に対応させることはできない。クロス・マーケティングは有力企業だが、市場を単独で支配する立場ではない。
デジタル広告・販促市場は規模そのものが大きい。電通によれば2025年の日本のインターネット広告費は約4兆459億円、ソーシャル広告は約1兆3,067億円だった。会社の中期資料が引用するソーシャルメディアマーケティング市場の2026年予測は約1兆5,767億円である。広告費と販促支援会社の売上は定義が違うため、直接割って厳密なシェアを求めることはできない。幅広い市場の一角を担う小規模事業者として、シェア獲得の余地と競争の激しさが同時に存在する。
マーケティングHRが関わるデジタル人材サービス市場は、矢野経済研究所の2024年度推計で約1兆4,928億円だった。会社のHR売上高約25億円は、この広い市場の約0.17%に相当する。IT人材不足は需要を支えるが、10年という期間では、AIがプログラミングや事務業務の必要人員を減らす力も無視できない。
今後10年の市場の分かれ目は、実際の消費者からデータを集める必要がどれだけ残るかである。AIは過去データの分析や仮説作成には強いが、発売前の商品を現実の消費者に試してもらう仕事や、医療に関する特定の患者集団を調査する仕事には別の基盤が要る。この差が、一般的なリサーチの価格下落と専門調査の比較的高い付加価値を分ける。
AIで生産性が上がれば会社の利益率が改善する可能性もある。しかし顧客が同じAIを使えば、従来の作業に対する支払額そのものが下がる。業界全体の広告費やIT投資が増えても、人手による制作・運用・分析を販売する企業が同じ割合で成長するとは限らない。独自媒体と専門データを持つ企業へ収益が移り、一般的な工数販売の価値は薄れていくと考える。
資本政策と M&A
資本配分で最も重要なのは、買収が生み出した売上ではなく、買収後に残る利益である。同社は2021年から2025年までの4年間に12件のM&Aを実施し、事業領域を広げた。2025年の中期経営方針では、2030年6月期までに連結売上高500億円、営業利益50億円を目標とした。さらに2035年頃には売上高1,000億円、営業利益率10%以上という長期構想を示している。ROEは重要な経営指標として掲げるものの、この中期方針に具体的なROE数値目標はない。
前回の中期計画では売上高300億円、営業利益30億円、時価総額300億円を目指したが、2025年6月期の実績は売上高289億円、営業利益25億円だった。時価総額の目標も達成できなかった。売上の拡大に一定の成果があっても、目標とした収益力や株主価値には届かなかった事実を重く見る。
2026年4月にはDIGITALIOとリサーチパネルを子会社化した。DIGITALIOの2025年12月期売上高は約35億円、営業利益は約2億円で、取得価額は約12.5億円だった。利益が維持されれば魅力のある取得条件だが、ポイント関連の預り金や運転資金が大きい事業である。取得金額だけを見て割安な買収と結論付けることはできない。
株主還元では、2026年8月に連結配当性向の目安を従来の15%前後から20%前後へ引き上げた。2027年6月期の年間配当は16円を予定し、同時に取得上限50万株、総額3億円の自社株買いを決議した。これは還元を重視する前進と評価する。ただし中期経営方針にDOEや総還元性向の数値目標はなく、継続的な自社株買い額の約束もない。
長期の株主価値を高めるには、買収より既存事業の利益率改善が必要だ。特にセグメント利益から差し引かれる本社・調整費用が年間約23億円に達している。事業を拡大してもこの費用が同じように増えれば、株主が受け取る利益は伸びない。2026年1月にはプライム市場からスタンダード市場へ移行したが、これは上場廃止ではない。現時点で同社を対象とした公表済みのTOB・MBOは確認していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
クロス・マーケティンググループは、単なる調査会社から、顧客のマーケティング活動全体を支援する企業へ変わりつつある。国内外で1,640万人規模のパネルネットワークを持ち、年間7,900社を超える企業と取引している。競合が同じ規模の消費者ネットワークを一から作るには、時間と継続的な投資が必要になる。医療分野など条件の厳しい調査では、この強みが特に生きる。
2026年のDIGITALIO買収も将来の利益源になる可能性がある。ECナビやPeXの約1,200万人の会員と、クロス・マーケティングの生活者データを組み合わせれば、調査から購買促進まで一貫したサービスを提供できる。調査への回答、ポイントの獲得、商品の購入という流れが一つのグループ内でつながれば、外部広告プラットフォームに払う費用を減らし、顧客の販促効果も高められる。
会社は2030年6月期に売上高500億円、営業利益50億円という目標を掲げる。2026年6月期の営業利益は一時的な海外不振や買収関連の費用で落ち込んだ面があり、2027年6月期には25億円への回復を予想している。買収企業の通年寄与と本社機能の合理化が進めば、売上高が大きく伸びなくても利益は改善できる。
AIは競争相手であると同時に、調査設計や分析の費用を引き下げる道具にもなる。会社は既にAIインタビューサービスを公表し、次世代AIリサーチシステムの開発にも取り組んでいる。これらが顧客の求める品質を保ちつつ調査の実施費用を下げれば、一定の利益率改善が期待できる。ただしAI関連製品の売上金額は確認できず、現時点で大きな追加収益を前提にすることはできない。
株主還元も改善している。配当性向の目安は20%前後へ上がり、自社株買いも実施している。デジタル事業の利益率が上昇し、調査事業の専門性が評価されれば、10年後に現在より大きな利益を生む可能性は十分に残る。自社媒体という実物の顧客接点を持つことが、この会社を一般的な受託企業と区別する最も強い根拠である。
慎重な見方
過去10年間の売上成長を、そのまま次の10年に延ばすことはできない。インターネットリサーチは、かつて従来型の電話調査や郵送調査を低価格で置き換えて成長した。そのインターネットリサーチ自身が、今度はAIエージェントによる調査設計、回答処理、分析、報告の自動化に直面している。技術によって生産性が上がっても、顧客がその作業に支払う金額が減れば、売上は小さくなる。
同じ問題はデジタルマーケティングにもある。広告原稿の制作、配信設定、成果分析、Webサイトの改修、一般的なプログラミングは自動化の対象になりやすい。マーケティングHRはさらに直接的で、顧客が必要とするエンジニアや運用担当者の人数が減れば、人月で請求する売上が縮む。人手不足を背景とする現在の需要が10年先も続く保証はない。
財務面では、約55億円の純現金という見かけの数字を安全域とみなすべきではない。2026年6月期末には預り金が約45億円、契約負債が約22億円あった。DIGITALIOが扱うポイントやギフト関連の資金は、株主が自由に配当として引き出せる資産ではない。現金を二重に価値へ加えると、会社の安全性を大きく見誤る。
利益構造も弱点だ。2026年6月期はセグメント利益の合計が約41億円あったにもかかわらず、本社・調整費用を引くと営業利益は約18億円になった。一般的な調査や受託作業の売上が減っても、グループの経営管理費用やオフィス費用が同じ速度で下がるとは限らない。売上が2割減るだけでも、営業利益が大きく減る構造である。
買収の実績についても慎重であるべきだ。2025年の中期目標は売上、営業利益、時価総額のいずれも未達成だった。次の目標はさらに高い水準にあるが、AI時代に小規模な受託企業を多数抱えることが規模の経済につながるとは限らない。買収企業の利益が低下した場合には、のれんの減損と本社負担が同時に生じる。事業の形が残っても、株主に帰属する稼ぐ力が長期的に薄れる可能性を重く見る。
どちらに重みを置いたか
自社パネルとDIGITALIOの媒体基盤については、強い見方に相応の根拠がある。しかし会社全体の価値では、調査・制作・開発・人材の工数販売がAIによって縮むことと、本社費が大きいことを重く見る。確率は上側27%、中立30%、下側43%とした。下に寄せる理由はAI代替だけではなく、2026年6月期に過去最高売上と大幅減益が同時に起き、買収を重ねても利益率の改善が定着していない会社固有の実績にある。数量には既にAI代替を反映しており、その影響を確率や資本コストへ繰り返し上乗せしていない。長期の安全域は乏しく、慎重な評価が優勢である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 569 円106 億円(+ 還元の換算額還元の合計 132 円25 億円)。 今の値に割り戻すと 361 円67 億円、今との差 −34.3%、 期待の年率 +2.8%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,729 円323 億円 | 268 円50 億円 | +263.7% | +15.3% | 200 円37 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,104 円206 億円 | 187 円35 億円 | +135.3% | +9.8% | 220 円41 億円 |
| 中立 | 30% | 453 円85 億円 | 145 円27 億円 | +8.8% | +1.0% | 179 円33 億円 |
| やや悲観 | 27% | 206 円38 億円 | 86 円16 億円 | −46.9% | −7.0% | 79 円15 億円 |
| 悲観 | 16% | 107 円20 億円 | 43 円8 億円 | −72.7% | −13.6% | 24 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 569 円106 億円 | 132 円25 億円 | +27.7% | +2.8% | 701 円131 億円 |
今の株価時価総額 549 円103 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 独自パネルと媒体が残り、グループ費用を吸収する 利益 22 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,729 円323 億円
生活者パネルの品質と専門調査への需要が維持され、同社は国内外の企業から調査案件を獲得し続ける。一般的な集計業務はAIに置き換わるが、医療、消費者テスト、多国間調査などの複雑な案件では付加価値を保つ。案件数は現在を下回るものの、単価の上昇と案件構成の改善によりリサーチ・インサイト事業の売上と利益が拡大する。
DIGITALIOではECナビ、PeX、デジコの会員基盤が拡大し、販促企業と利用者の両方に選ばれる。年間会員換算は1,600万人年へ増える。ポイント関連の交換先を広げ、広告やギフトの収益率も改善する。自社媒体を持つことで広告運用の手数料に依存しない収益が増え、競合との価格競争を一部回避できる。
SI・DXコンサルティングやHRはAIによって作業効率が上がるが、顧客企業の複雑なシステムや人の関与が必要な業務を獲得し、請求人月の大幅な減少を避ける。AI関連製品の未開示の新規売上は織り込まず、既存事業の数量と単価から利益改善を考える。本社費用は名目で増えても売上成長と合理化で吸収する。
追加の買収は独自媒体や専門データを持つ会社に集中し、既存事業との重複費用を削減する。利益を増やしながら配当と自社株買いを続け、成長投資と還元を両立できる。会社の堀は現在よりやや強まり、10年後も顧客が手放したくないマーケティング基盤として残る。
- リサーチ・インサイト(国内・海外):数量 19,000(年間リサーチ案件数(件。国内外合計の調査案件換算))× 価格 0.01(案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 210 億円・営業利益 49 億円。案件数0.95倍、単価1.34倍。医療・高付加価値調査の構成比が上昇し、利益率23.5%。
- ソーシャル&デジタルプロモーション(DIGITALIO相当分を除く):数量 5,400(年間販促案件換算数(件。推定))× 価格 0.02(販促案件当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 117 億円・営業利益 11 億円。AIに代替される広告制作・運用案件は増やさず、ブランド/IP案件の単価を1.10倍とする。
- DIGITALIO(ECナビ・PeX・デジコ):数量 16.0(年間会員換算数(百万人年。2026年は連結3か月分))× 価格 3.95(百万人年当たり連結売上換算額(億円、名目))→ 売上 63 億円・営業利益 6 億円。通年連結後の会員基盤を拡大。単価は2025年の年換算収益力の約1.34倍。
- SI・DXコンサルティング:数量 2,500(年間請求人月(人月、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。請求人月は現在と同じ。物価上昇を価格へ反映し、専門案件で利益率を改善。
- マーケティングHR・BPO:数量 3,600(年間請求人月(人月、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 34 億円・営業利益 3 億円。人月は現在と同じ。単価を物価相当まで引き上げ、業務管理を効率化。
倍率:k=7.75%、g_long=0%。ROEは22÷224=9.8%でkを上回るが、AI代替を受ける調査・人月型事業が相応に残るため、10年より先の全社名目成長は0%とする。正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)でg=0とすると上限は1÷k=12.90倍。楽観でも上限を人為的に割り引かない。継続する利益の稼ぐ力を評価し、余剰現金の二重計上を避ける。
確率:DIGITALIOの利用者基盤が拡大し、調査の高付加価値化とグループの費用効率改善が同時に進む筋書き。複数の実行条件が必要なため、低めの確率とした。
やや楽観 17% 高付加価値調査と媒体収益が減少分を補う 利益 14 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,104 円206 億円
リサーチ市場では一般的な調査がAIへ移るが、企業が直接消費者の反応を確認したいという需要は残る。医療や新商品の実地調査では品質管理が重要となり、クロス・マーケティンググループは国内外のパネルネットワークを維持する。調査案件数は現在より減るものの、高付加価値案件の構成比が高まり、リサーチ事業は一定の利益を維持できる。
デジタルマーケティングでは、通常の広告制作・運用案件が減る一方、IPを活用した販促や実店舗と結び付いたサンプリングの需要が残る。DIGITALIOのポイント媒体も比較的堅調に推移し、登録会員を維持しながら利用者当たりの収益を高める。競合する巨大ポイント経済圏への流出はあるが、独自の交換先を維持することで一定のシェアを確保する。
SI・DXコンサルティングとHRはAIによる請求工数の減少を受ける。ただし金融関連のシステム保守や顧客固有の業務支援は残り、顧客からの価格引き下げ要求を部分的に吸収する。人員の再配置とグループ会社間の重複費用削減が進むため、全社営業利益は2026年を上回る。
大型買収には慎重となり、既存の媒体・調査基盤への投資を優先する。配当性向20%前後を軸とする還元が続き、利益に余裕がある年度には自社株買いも実施する。会社は特別に強い独占企業にはならないが、顧客基盤を持つ安定したマーケティング会社として存続する。
- リサーチ・インサイト(国内・海外):数量 17,000(年間リサーチ案件数(件。国内外合計の調査案件換算))× 価格 0.01(案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 183 億円・営業利益 38 億円。案件数0.85倍、単価1.30倍。高付加価値調査が残り利益率21%。
- ソーシャル&デジタルプロモーション(DIGITALIO相当分を除く):数量 5,000(年間販促案件換算数(件。推定))× 価格 0.02(販促案件当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 104 億円・営業利益 9 億円。案件数0.91倍、単価1.05倍。IP・体験型施策が値下げ圧力を一部吸収。
- DIGITALIO(ECナビ・PeX・デジコ):数量 14.0(年間会員換算数(百万人年。2026年は連結3か月分))× 価格 3.66(百万人年当たり連結売上換算額(億円、名目))→ 売上 51 億円・営業利益 5 億円。年間会員換算1,400万人年、利用者当たり収益は年換算基準の1.24倍。
- SI・DXコンサルティング:数量 2,250(年間請求人月(人月、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。請求人月0.90倍、単価1.30倍。保守・専門開発の比率を高める。
- マーケティングHR・BPO:数量 3,400(年間請求人月(人月、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。人月0.94倍、単価1.30倍。AIでは置き換えにくい人材支援が残る。
倍率:k=7.75%、g_long=0%。10年後のROEは約7.0%でkを下回るため、継続する利益の稼ぐ力を超える成長価値は認めない。正当化PERの上限は1÷k=12.90倍。自社媒体の成長可能性は既に10年後の利益に反映しており、倍率には重ねない。
確率:既存パネルを維持しながら自社媒体と専門調査を伸ばせる余地はある。ただし人手依存業務の縮小を補うには費用合理化も必要であるため、上振れの中では比較的現実的な筋書きとした。
中立 30% 調査と工数販売が縮み、DIGITALIOが一部を補う 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 453 円85 億円
2027年6月期はDIGITALIOの通年寄与や既存事業の回復によって増収する。しかし、その後はAIエージェントが一般的な調査設計、集計、分析、報告資料作成を担うようになり、リサーチ会社が請け負う案件数は減少する。クロス・マーケティンググループは専門調査や実際の消費者データを使う案件を維持するが、通常案件の縮小を完全には補えない。
デジタルマーケティングでも、広告制作・運用やシステム開発の人手作業が減少する。売上を維持するための単価引き上げは難しく、一般的な販促案件の件数と請求人月が減る。会社がAIを導入しても、その効果の相当部分は顧客への値下げや発注工数の削減として現れる。
一方、DIGITALIOのECナビ、PeX、デジコは通年連結され、ポイント交換基盤から継続的な収益を得る。2026年の3か月連結から通年連結へ移る効果は大きいが、その後は巨大ポイント経済圏との競争や検索経由の流入減少で利用者の伸びが鈍る。自社媒体の収益があっても、調査や受託業務全体の縮小を補うには至らない。
本社費用は名目で増加し、売上減少に合わせて十分には削減できない。営業利益率は現在より低下し、ROEも長期の資本コストを下回る。経営は買収を抑えて配当を継続するが、内部留保の多くが高い利回りで再投資されるわけではない。会社は存続するものの、長期の株主価値は現在の時価総額を下回る。
- リサーチ・インサイト(国内・海外):数量 14,000(年間リサーチ案件数(件。国内外合計の調査案件換算))× 価格 0.01(案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 145 億円・営業利益 27 億円。案件数0.70倍、単価1.25倍。実際の消費者データは残るが、集計・分析の自動化で数量が減る。
- ソーシャル&デジタルプロモーション(DIGITALIO相当分を除く):数量 4,125(年間販促案件換算数(件。推定))× 価格 0.02(販促案件当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 81 億円・営業利益 6 億円。広告制作・運用型の数量0.75倍、単価は名目で横ばい。
- DIGITALIO(ECナビ・PeX・デジコ):数量 11.4(年間会員換算数(百万人年。2026年は連結3か月分))× 価格 3.48(百万人年当たり連結売上換算額(億円、名目))→ 売上 40 億円・営業利益 3 億円。通年連結を反映し、登録基盤はやや縮小。単価は2025年の年換算基準の1.18倍。
- SI・DXコンサルティング:数量 1,700(年間請求人月(人月、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。請求人月0.68倍、単価1.25倍。AIによる作業工数削減が売上に反映される。
- マーケティングHR・BPO:数量 2,520(年間請求人月(人月、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。請求人月0.70倍、単価1.27倍。人手不足による価格上昇より必要工数の縮小を重く見る。
倍率:k=7.75%、g_long=0%。ROEは4.9÷153=3.2%と資本コストを下回る。新規投資の超過利益を見込まず、正当化PERは1÷k=12.90倍を上限とする。純利益4.9億円には金融収支の改善と一過性損失の平準化を考慮し、営業利益との比率は約0.62とした。自社媒体の将来成長は10年後の売上に反映済みである。
確率:2027年の会社予想では買収企業の通年寄与により増収するが、その後の10年間にはAIによる調査・制作・受託開発の工数減少が進む。独自パネルと媒体は残るものの、費用合理化が十分に追いつかない中心的な筋書きとする。
やや悲観 27% 海外調査と受託業務が縮み、本社費の削減が遅れる 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 206 円38 億円
主要顧客の調査予算が抑制され、特に海外で競争力を維持できなくなる。一般的な調査はAIによる内製化が進み、専門性のある医療調査も競合企業との競争で価格を維持できない。調査案件数は現在より大きく減り、利益率も低下する。
デジタルマーケティングでは、IPやインフルエンサー施策の案件が大手代理店と自動化ツールへ流れる。SIとHRでは顧客が少ない人員で業務を遂行するようになり、請求人月の減少が続く。案件単価には人件費上昇を一部反映できるが、数量減少を補うことはできない。
DIGITALIOは事業を維持するものの、ECナビやPeXの利用者が巨大ポイント経済圏へ移り、デジコの収益率も下がる。登録会員の規模は残るが、利用者の活性度と広告主からの収益が低下する。媒体の維持費用やポイント原資が負担となり、営業利益率は大きく改善しない。
経営は不採算拠点の整理と本社費の削減を進めるが、削減には時間がかかる。過去のM&Aで得た事業の一部が期待どおりに稼げず、収益は損益分岐点を下回る。株主還元は前半の利益が残る時期には継続されるものの、後半は抑制される。会社の時価総額は、継続事業の収益力よりも換金可能資産の価値が中心になる。
- リサーチ・インサイト(国内・海外):数量 12,000(年間リサーチ案件数(件。国内外合計の調査案件換算))× 価格 0.01(案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 114 億円・営業利益 16 億円。案件数0.60倍、単価1.15倍。海外の顧客流出と国内の競争激化。
- ソーシャル&デジタルプロモーション(DIGITALIO相当分を除く):数量 3,575(年間販促案件換算数(件。推定))× 価格 0.02(販促案件当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 67 億円・営業利益 3 億円。案件数0.65倍、単価0.95倍。広告運用手数料への値下げ圧力。
- DIGITALIO(ECナビ・PeX・デジコ):数量 10.0(年間会員換算数(百万人年。2026年は連結3か月分))× 価格 3.16(百万人年当たり連結売上換算額(億円、名目))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。会員の活性度と収益率が低下。通年連結後も売上成長が鈍化。
- SI・DXコンサルティング:数量 1,500(年間請求人月(人月、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。請求人月0.60倍、単価1.20倍。顧客のAI内製化が進む。
- マーケティングHR・BPO:数量 2,160(年間請求人月(人月、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。人月0.60倍、単価1.20倍。余剰人員の再配置が遅れる。
倍率:継続利益が赤字のため、利益倍率ではなく純現金・換金可能資産の税後価値を優先する。床28億円を2026年6月期の自己資本83.6億円で割るとPBR約0.335となる。2036年の自己資本112億円に掛けて価値を引き上げない。過去のPBRの底値は使用しない。
確率:海外リサーチの収益変動と、買収企業が増えたことによる本社負担を踏まえた下振れ。AIによる数量減少は中立にも反映済みであり、ここでは顧客喪失と費用合理化の遅れを追加的な要因とする。
悲観 16% 調査の価値が汎用化し、M&A資産も傷む 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 107 円20 億円
AIエージェントが調査企画から集計・分析・報告までを一貫して行うようになり、企業が外部調査会社へ依頼する一般的な案件は大幅に減少する。クロス・マーケティンググループのパネルネットワークは残るが、競合する大手調査会社が価格を引き下げ、同社は顧客を奪われる。医療などの専門調査でも品質の差が十分な価格差にならず、リサーチ事業の利益率は低下する。
広告・販促の受託事業では、自動化された制作・運用ツールや巨大広告プラットフォームに顧客が移る。インフルエンサーやIP施策の手数料も下がり、従来型の販促案件を継続するだけでは採算が取れなくなる。SI・DXコンサルティングとHRでは必要工数が減るうえ、残った受注を確保するための値下げ競争が激しくなる。
DIGITALIOのECナビ、PeX、デジコも、大手ポイント経済圏や購買を代行するAIエージェントとの競争で利用者の活動が減る。ポイント関連の預り金は株主の自由資金ではなく、撤退時にも利用者への履行義務が残る。自社媒体の存在は一定の換金価値を持つが、かつて期待されたネットワーク効果は縮小する。
経営は海外拠点や不採算子会社を整理し、本社費用を大きく削減する。しかし売上高は現在のおよそ半分まで縮み、固定費と事業再編費用が残る。買収事業ののれんや無形資産を減損し、純利益は赤字となる。前半に実施した配当以外の還元は停止し、最終的には事業の成長価値よりも売却できる資産の価値が株主価値の中心となる。
- リサーチ・インサイト(国内・海外):数量 10,000(年間リサーチ案件数(件。国内外合計の調査案件換算))× 価格 0.01(案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 87 億円・営業利益 9 億円。案件数0.50倍、単価1.05倍。一般的な調査が大幅に代替される。
- ソーシャル&デジタルプロモーション(DIGITALIO相当分を除く):数量 2,200(年間販促案件換算数(件。推定))× 価格 0.02(販促案件当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 37 億円・営業利益 −1 億円。案件数0.40倍、単価0.85倍。既存広告制作・運用の競争力が失われる。
- DIGITALIO(ECナビ・PeX・デジコ):数量 8.0(年間会員換算数(百万人年。2026年は連結3か月分))× 価格 2.86(百万人年当たり連結売上換算額(億円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。会員の利用頻度と収益率が下落し、プラットフォームの優位が縮小。
- SI・DXコンサルティング:数量 1,250(年間請求人月(人月、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。請求人月0.50倍、単価1.10倍。顧客の内製化と価格競争で赤字化。
- マーケティングHR・BPO:数量 1,800(年間請求人月(人月、推定))× 価格 0.01(請求人月当たり売上高(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。人月0.50倍、単価1.10倍。稼働率の悪化で赤字化。
倍率:構造的な事業縮小により利益が赤字となるため、現時点の換金可能資産から将来の資金流出・再編費用を引いた床20億円を用いる。現在の自己資本83.6億円を分母とするとPBR約0.239。2036年の自己資本に倍率を掛けず、過去の市場PBRも参照しない。
確率:AIへの置き換えに加え、主要顧客の内製化、海外調査のシェア喪失、過去のM&Aの失敗、媒体の利用者減少が同時に起きる複合的な悪化。単独の業界縮小ではなく会社固有の競争力喪失を伴うため、中立とは区別する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
リサーチ・インサイト(国内・海外)
国内のクロス・マーケティングとメディリード、海外のKadence等による定量・定性調査、データ収集、分析、コンサルティング。AIエージェント代替では情報・調査サービスと人月・工数型に分類する。特殊な医療・患者パネルに部分的な独自性があるが、全体を記録の正本型とは扱わない。
| 数量年間リサーチ案件数(件。国内外合計の調査案件換算) | 価格案件当たり売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 20,000 | 0.01 | 165 | 31 |
| 10 年後 中立 | 14,000 | 0.01 | 145 | 27 |
取り方:2026年6月期の会社開示にある国内117.11億円と海外48.23億円を合算した。年間2万件超のリサーチ実績を会社サイトから取得し、代表値として2万件を使う。165.34億円÷2万件で平均約82.7万円とした。国内外の件数別内訳、案件別単価は非開示であり、平均単価は分析上の換算値である。調査案件の難度や医療分野の構成変化を単価に反映する。JMRAの2025年度国内調査市場2,775億円に対して国内売上高117.11億円は約4.2%に相当するが、事業範囲が一致しないため厳密な市場シェアではない。
ソーシャル&デジタルプロモーション(DIGITALIO相当分を除く)
インフルエンサー施策、IPプロモーション、商品サンプリング、広告制作・運用、販促支援。モラタメなどの自社媒体を含むが、開示上その収益を分離できないため、主として広告制作・運用型に分類する。
| 数量年間販促案件換算数(件。推定) | 価格販促案件当たり平均売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 5,500 | 0.02 | 108 | 8 |
| 10 年後 中立 | 4,125 | 0.02 | 81 | 6 |
取り方:会社開示のソーシャル&デジタルプロモーション売上高117.31億円から、DIGITALIOの2025年12月期売上高35.39億円を四半期換算した約8.85億円を分析上の代理値として控除した。残り108.46億円を年間5,500案件換算とすると平均約197万円となる。実際の案件数は非開示であり、グループ年間取引企業7,908社、IP販促、サンプリング、広告施策が混在することを踏まえた概算である。DIGITALIOの2026年4~6月実売上と四半期換算値は一致するとは限らない。セグメント利益の配賦も分析上の推定であり、会社公表値ではない。広告制作・運用部分の中立数量は10年0.75倍とする。
DIGITALIO(ECナビ・PeX・デジコ)
ポイントメディア、交換基盤、デジタルギフトを持つ自社プラットフォーム。AIエージェントによる広告運用代替とは異なり、利用者数、取引頻度、交換先との関係が価値の基礎になる。AIによる検索流入減少やポイント競争は別途織り込む。
| 数量年間会員換算数(百万人年。2026年は連結3か月分) | 価格百万人年当たり連結売上換算額(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 3.0 | 2.95 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 11.4 | 3.48 | 40 | 3 |
取り方:DIGITALIOの2025年12月期売上高35.39億円と約1,200万人の会員数を利用した。2026年6月期の連結対象は約3か月なので、1,200万人×3か月÷12か月で300万人年とする。年間35.39億円を12百万人年で割ると約2.95億円となり、2026年の分析上の3か月売上は8.85億円となる。会員数は累計登録規模であり月間稼働人数ではない。将来数量に通年連結の効果が入るため、2026年の3から2036年の12前後への増加を純粋な顧客成長と誤認しない。デジコの発行・交換流通額や預り金は売上高に足さない。
SI・DXコンサルティング
クロス・コミュニケーションやCoumなどのシステム開発・保守、アプリ開発、DX支援。AIエージェント代替では人月・工数で売る受託開発・コンサル型に分類する。
| 数量年間請求人月(人月、推定) | 価格請求人月当たり売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 2,500 | 0.01 | 24 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,700 | 0.01 | 21 | 1 |
取り方:2026年6月期の会社開示売上高24.21億円を基礎にした。請求人月数と契約単価は非開示のため、月間約97万円の案件単価を仮定すると年間約2,500人月になる。金融機関向けの高い信頼性が求められる開発もあるが、売上構成や長期契約の解約率は開示されていないため記録の正本型にはしない。中立の10年後人月は1,700で、現在の0.68倍とする。
マーケティングHR・BPO
オルタナエクスやクリエイティブリソースインスティチュートによるIT人材支援、派遣、BPO。AIエージェント代替では人月・工数型に分類する。
| 数量年間請求人月(人月、推定) | 価格請求人月当たり売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 3,600 | 0.01 | 25 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2,520 | 0.01 | 22 | 1 |
取り方:2026年6月期の会社開示売上高25.19億円を基礎とした。請求人月と単価は非開示であり、1人月約70万円を仮定すると約3,600人月となる。矢野経済研究所が推計する2024年度デジタル人材採用・活用支援サービス市場1兆4,928億円との比較では約0.17%の規模だが、市場定義は完全には一致しない。中立の10年後人月は2,520で現在の0.70倍とし、単価は人件費上昇を一部反映する。
リスクと懸念
AIエージェント代替
同社の事業には、調査票の作成、データ収集・分析、報告資料の制作、広告運用、受託開発、IT人材派遣など、人の作業時間を基礎にする業務が広く含まれる。AIエージェントがこれらを代替すると、同じ顧客を維持しても販売できる工数や案件数が減る。中立の10年後数量は調査0.70倍、広告・販促0.75倍、SI0.68倍、HR0.70倍とした。自社媒体を持つDIGITALIOには別の数量前提を使い、同じ縮小率を一律に適用していない。
データの品質とパネル競争
パネルの登録者数は大きいが、登録者が多いことと回答が正確であることは異なる。短時間回答や重複登録、AIを使った回答が増えれば、顧客がデータの品質を疑う可能性がある。マクロミル、インテージ、GMOリサーチ&AIなども大規模パネルやデータ処理技術を持つため、顧客を維持するには回答品質、属性の正確性、希少な対象者の確保が必要となる。
DIGITALIOの預り金と現金評価
2026年6月期末の現金・預金は約115億円あるが、借入金約60億円のほかに預り金約45億円、契約負債約22億円が存在する。ポイント・デジタルギフトに関連する利用者や顧客への義務を無視すると、株主に帰属する余剰現金を過大評価する。ポイント失効率の変化や交換需要の集中も、キャッシュフローに影響する。
重い本社費と利益率の低下
2026年6月期は二つの報告セグメントで約41億円の営業利益を稼いだが、全社の営業利益は約18億円だった。本社機能、グループ経営管理、共通システムなどに係る調整費用が大きい。一般的な調査や受託業務の売上が減っても、この費用が同じ割合では減らなければ、営業利益率は急速に低下する。
M&Aの資本配分
同社は事業領域を広げるために多数の買収を実施してきた。DIGITALIOの取得は自社媒体の強化として合理性がある一方、AIで代替されやすい工数販売企業を買い増すと、将来の利益が縮む危険がある。買収後ののれん償却、減損、経営管理費用を含めた増分投下資本利益率が資本コストを上回らなければ、売上高の拡大は株主価値の増加につながらない。
海外リサーチと地政学
海外リサーチの売上は約48億円あり、Kadenceを中心として複数国で事業を営む。2026年6月期は米国の通商政策や中東情勢、英国・インド・インドネシアの苦戦などの影響を受けた。調査予算は企業の景気見通しや新製品投資に左右されるため、特定国での不振が長期化すれば固定費を吸収できなくなる。前提為替は1ドル150円で固定し、為替変動ではなく現地案件数と利益率でリスクを表現した。
今後の分かれ目
- リサーチ・インサイトの国内売上が増加し、専門調査の比率上昇によってセグメント利益率が20%以上で定着したら
- 一般調査のAI代替を専門性の高い案件で補える証拠となる。中立の調査案件数と利益率を見直し、やや楽観側の確率を高める。
- DIGITALIOの通年連結後、利用者当たり売上と営業利益がともに増え、預り金を差し引いた営業キャッシュフローも改善したら
- 自社媒体のネットワーク効果が収益へ結び付いていると判断できる。長期のプラットフォーム利益を引き上げ、純現金と自由資金の評価を再検討する。
- 2030年6月期までに売上高500億円と営業利益50億円を達成し、買収後の本社費率も低下したら
- 買収による成長と収益性改善が両立した実績となる。利益率と増分投下資本利益率を検証したうえで、強い筋書きの重みを増やす。ただし売上目標だけの達成では価値を引き上げない。
- リサーチ案件の単価が下落し、受注件数も複数年度にわたり減少したら
- AIエージェント代替と競争激化が実際の収益に現れたと判断する。中立の利益率を引き下げ、やや悲観・悲観側の重みを高める。
- ソーシャル&デジタルプロモーションの売上が増えても、セグメント利益率が5%未満に低下したら
- 成長市場でシェアを獲得しても利益を取り込めていないことを意味する。売上成長率より粗利益と販管費を優先し、10年後の利益予想を引き下げる。
- 買収後ののれん減損が続き、自己資本と営業キャッシュフローが減少し始めたら
- 過去の資本配分が十分な投資利益率を生んでいない可能性が高まる。追加買収を成長材料とみなさず、資産の床と悲観の確率を見直す。
見ておくもの
- リサーチ・インサイト事業の国内・海外別売上高とセグメント利益率
- 年間リサーチ案件数、案件当たり売上、医療・専門調査の構成比
- AIインタビューなどAI関連サービスの実際の売上高と有料顧客数
- ソーシャル&デジタルプロモーションの既存事業成長率と買収寄与額
- DIGITALIOの利用者数、稼働率、ポイント交換流通額、交換先数、売上総利益
- 預り金・契約負債を控除した自由資金と営業キャッシュフロー
- セグメント利益合計から控除される本社・調整費用の推移
- 2030年6月期の売上高500億円・営業利益50億円に対する達成度
- M&A取得価額、のれん残高、買収後利益、減損と投下資本回収の状況
- 自社株買いによる発行済株式数の純減と連結配当性向
倍率と資本コストの決め方
株価583円と時価総額約109億円は最後の比較にだけ使い、各事業の10年後の数量・単価・利益率を先に考えた。2026年6月期の二つの報告セグメントを、開示のある事業内訳に沿って五つの数量モデルに分けた。DIGITALIOは2026年4月からの3か月連結であるため、通年化を通常の数量成長と混同しない。リサーチ案件数とSI・HRの人月には推定が含まれ、会社開示値と区別している。
資本コストは7.75%、10年より先の全社名目成長は0%とした。楽観から中立の正当化PERは1÷k=12.90倍であり、現在や過去、同業の市場PERから決めていない。やや悲観と悲観は現在の自己資本ではなく、預り金や契約負債を差し引いた売却可能資産の税後価値を基礎としている。のれん約15億円とソフトウェア約4.5億円は悲観の換金価値から除外した。
保有現金のうち自由な余剰現金は確認できないため、期首の余剰資産を別途上乗せしていない。期間中に蓄積される現金については必要運転資本と還元可能性を区別する。日本基準の新リース会計基準によって将来の負債表示が変わる場合も、営業上の家賃負担を二重計上しない。時価総額が変わっても、事業上の前提が同じなら本質価値の数字を動かさない。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%を合わせた基本7.5%に、事業の品質による上乗せ0.25%を加えた。個別のM&AやAI代替リスクは資本コストに追加せず、筋書きの利益と確率で評価する。