結論
JIG-SAWは、企業のクラウドやサーバーを24時間監視・復旧する運用会社である。継続課金の土台は優秀だが、筆者の結論は「割高」だ。AIが運用工数そのものを減らす時代に、現在の時価総額約160億円は、海外のIoTライセンスが大きな利益を生む未来まで先取りしている。10年の確率加重価値は約41億円で、今の時価総額を約74%下回る。
収益の実体は確かである。2025年の売上の約95%は月額などの継続課金であり、会社は44四半期連続で月額課金売上を伸ばしたと説明している。2026年上期の増収増益も、既存事業が直ちに崩れていないことを示す。一方、独自AIによる完全自律運用サービス「Lorel.ai」は提供を始めたばかりで、受注額や売上額は示されていない。実際に稼げることと、技術の将来像が魅力的なことは区別したい。
10年後も、止まっては困るシステムの責任を外部に委ねる需要は残る。しかし、監視・障害対応を自社のAIエージェントで処理する顧客が増えれば、運用委託の契約量や価格は圧迫される。NEQTOによる機器制御は別の成長余地を持つが、現時点ではその売上の規模さえ分離開示されていない。悲観寄りの確率は事業の消滅を予言するものではなく、株主の取り分として確認できない将来利益に高値を付けない判断である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の立場で最初に問うのは、10年後も顧客が運用責任をJIG-SAWに預けているかである。銀行の勘定系や止まれば損害の大きい設備には責任の所在が必要であり、監視の自動化が進んでもサービスは消えまい。だが同じAIによって他社も安価に運用できるなら、運用の必要性とJIG-SAWに固有の超過利益は同じではない。自社のオペレーション知識をLorel.aiに転換し、契約の成果と料金を守れるかが堀の寿命を決める。
オーナー利益も会計上の純利益をそのまま配れるわけではない。研究開発費はすでに利益から引かれているが、設備更新、クラウド利用費の前払い、拠点賃料、海外営業網の維持にも現金が必要となる。2026年上期は大幅増益でも、前払い費用の増加が営業キャッシュ・フローを抑えた。純現金は安心材料だが、成長投資を続ける経営陣がその全額を株主に返すとは限らない。
過去10年の売上拡大と黒字継続は高く評価する。ただ、直近3年間の利益に対して自己資本が増えた速さを考えると、新たな資本を高利回りで運用できるという確信は持てない。NEQTOのライセンスが広範な機器に埋め込まれ、解約率と単価、利益額まで示されれば評価を変える。今は技術の可能性を買うのではなく、確かめられる稼ぎに安全域を求める。
何で稼ぐ会社か
主力はデータコントロールと呼ぶ単一報告セグメントで、売上認識上は継続課金とスポット収入に分けられる。2025年の継続課金売上は34.34億円、初期構築などのその他売上は1.91億円だった。監視・障害対応・復旧・原因調査を提供する「JIG-SAW OPS」は、自社の自動運用基盤「puzzle」と札幌・トロントの運用拠点を組み合わせる。契約はクラウド環境、システム群、対応範囲によって異なり、単純な技術者派遣ではないが、顧客の運用作業を肩代わりする役務という本質は変わらない。
新しい柱は、機器に組み込むIoT制御エンジン「NEQTO」と、AIによる設備データ処理を行う「NEQTO.ai」である。NEQTOの公開料金には機器ライセンスの月額110円とアカウント料金があり、機器台数・処理量が増えるほど課金機会が増す。建設機械の自律走行向けソフトウェアもライセンス収益を目指している。もっとも、会社はこれらを既存の月額運用収益から切り分けていないため、採用企業数をそのまま利益に変えることはできない。
2026年4月開始の「Lorel.ai」は、障害の予兆検知から復旧までの自動化をうたう。自社内の運用工数を節約できれば粗利を押し上げる半面、他社のAI運用ツールやクラウド事業者にも同じ省力化の機会を与える。売上を伸ばす道は監視対象の新規獲得とIoTライセンス拡大だが、利益はそこから運用要員、クラウド費用、製品開発、海外営業を引いた残りである。したがって継続課金比率だけで高い収益倍率を正当化しない。
優良さと弱いところ
堀、すなわち競争相手が容易に奪えない強みは、長時間の無停止運用と蓄積した障害対応の知見にある。会社は大量のアラートを自動処理し、札幌と北米に運用拠点を持つ。金融向けにはSBIグループとの合弁を通じて勘定系システムの運用にも入った。一度現場の手順や復旧責任を任せた業者を替えるには検証が要るため、単発の開発受託より顧客関係は粘り強い。
ただし、44四半期の月額課金増加は解約率の低さを数値で証明したものではない。年率解約率5%未満、法令改正を伴う移行負担、継続的な値上げ受容といった証拠は確認できず、「記録の正本」として扱う条件を満たさない。公開料金は監視で月6万円から、障害対応込みで月8万5千円からと競争比較が可能で、独占的な値決め力はない。NEQTOの特許は評価できるが、特許の存在と商業的な標準化は別問題だ。
資本効率には警戒が要る。2022年から2025年に自己資本が増えた割に純利益はほぼ横ばいで、ROEは過去の中央値18.6%から直近12.8%へ下がった。研究開発や海外展開が後から回収されれば改善するが、増分資本の利回りが資本コストを明確に超えたとはまだ言い難い。2025年の研究開発費約2.09億円と主要拠点の年額賃料約4.45億円も、収益拡大に先立つ固定的な負担である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のマネージドサービス市場は矢野経済研究所によれば2024年度3兆3,040億円で、2028年度には4兆6,940億円が予測される。この市場には保守・クラウド・セキュリティが広く含まれるため、JIG-SAWの主力運用収益を単純に割った約0.1%は参考シェアにすぎない。競合はNTTデータ、IIJ、KDDI、SCSKなどの大手に加え、クラウド自身の運用管理サービスである。個別の同一サービスに限った公開シェアは確認できないが、大手の顧客接点と調達力が強い市場であることは明らかだ。
需要の総量と、外部業者に支払われる対価は違う。クラウド移行やセキュリティ要求が市場を広げても、Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloudの自動運用機能が進めば、別会社に委ねる人手の作業は減る。DatadogやDynatraceなどの観測・自動化ツールも、顧客内製化の道具になりうる。市場全体の名目成長率をそのままJIG-SAWの受注量の増加とみなさない理由はここにある。
別の市場であるIoTは、設備台数が増えるほど制御ライセンスの需要が増える。会社の成長資料が引用する世界のIoTプラットフォーム市場は2024年115億ドル、2033年351億ドルという予測だ。ただし、この数字にはAWS IoTやAzure、産業機器メーカーの仕組みも含まれ、NEQTOの対象市場そのものではない。JIG-SAWと競合各社の狭義のシェアは非公表である。中立ではNEQTO採用は増えるが、世界標準に近づくほどのシェア獲得は認めない。
資本政策と M&A
経営陣は利益の多くを研究開発、運用拠点、海外事業に再投資してきた。設立以来、通常配当の実績はなく、2025年には約2.32億円を投じて7万株を買い戻した。これは当時の発行済株数の約1%にとどまり、継続的な総還元方針とはまだ呼べない。2025年末の上位10株主の合計保有比率は56.58%で、支配が極端に集中しているという理由だけで余剰現金を半額評価すべきでもない。
2026年3月の成長計画は、自律運用AI、NEQTO、建機向け技術と海外展開に重点を置くが、売上高・営業利益・ROEの期限付き公式数値目標、配当性向・DOE・総還元性向・自社株買い額の数字の約束はない。別に開示された株式報酬制度には2027年営業利益40億円超、2028年110億円超という達成条件があるものの、これは通期業績予想ではない。2026年上期の短信も通期予想を非開示としており、壮大な条件を本質価値の中立に織り込めない。
2024年設立のSBI JIG-SAWモダナイゼーションズは出資比率49%の持分法会社で、金融機関の新規案件を獲得する足場となる。一方、国内での大規模買収による利益の急拡大は確認できず、海外投資や製品開発の収益性を見極める必要がある。余剰現金の株主への戻り方は0.75とし、今後も配当や買い戻しが約束されていない不利益を価値に反映させる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
24時間365日のシステム運用は、AIが普及するほど監視対象が増える基盤事業である。JIG-SAWは単なる人材派遣ではなく、自社開発のpuzzleで多数のアラートを処理し、現場で磨いた復旧手順を持つ。44四半期連続で月額課金売上を伸ばした実績は、IT予算が削減された時期にも顧客接点が失われにくかった証拠だ。2026年上期の営業利益率改善も、先行投資が必ずしも収益を飲み込まないことを示している。
自律運用AI「Lorel.ai」は、外部AIから脅かされるだけの会社でないことを示す。大量の運用知見を学習・活用し、少人数で多くのシステムを扱えば、競合と同じ料金でも利益率を高められる。SBIとの金融合弁は厳格な稼働要件を持つ案件への入口で、海外データコントロール拠点も顧客基盤を広げる。ここではAIによる単なる効率化を越え、NEQTOが産業機械の制御に組み込まれる商機に注目したい。
IoTの国際市場は広大で、機器ライセンスは人間が画面を操作する席数に縛られない。北米で100社以上が試験参加したこと、組み込み技術の特許を各国で取得していること、建機の自律運転プロジェクトが進むことは、量産化への足場である。数百万台の機器で小さな単価を集められれば、サービス運用より追加原価の低い利益の柱になりうる。この筋書きでは、開発投資が報われて株主還元も増え、既存の稼ぎと新製品を合わせた企業価値は現在を超える。
慎重な見方
継続課金は強いが、顧客が継続して買うのは「障害に対応する責任」であり、「特定の業者の有人作業」ではない。AWSやAzureが異常検知・原因調査・復旧の自動化を深め、企業自身のエージェントが監視ツールを操作するようになれば、外部運用委託の価格と契約量を同時に削れる。JIG-SAWのLorel.aiはこの変化への防御策だが、販売実績が金額で開示されないうちから大きな新規利益を保証するものではない。自社で作るAIによって従来料金の根拠も薄れる可能性がある。
顧客が業務を切り替える負担はあっても、監視基盤の移行に法令上の独占権はない。低解約率も定性的にしか示されておらず、値上げ後の残存率を検証できない。市場の名目成長予想には価格と新しい管理領域が含まれるため、人手代行の数量をそのまま増やすとAIの変化を見落とす。NEQTOもAWS IoTなど強力な既存基盤と競争し、トライアル参加数が契約ライセンス数を意味するわけではない。
さらに、利益を内部留保しても必ず株主価値が増すとは限らない。ROEは直近で低下し、研究開発費に加えて拠点賃料という固定費を負う。2025年に自社株買いを行ったとはいえ無配は続いており、株式報酬の大きな達成条件と少数株主の現金回収が必ず一致するわけではない。新製品の収益化に失敗し、既存契約の料金が押し下げられれば、純現金が残っても今の時価総額を正当化する利益は生まれない。
どちらに重みを置いたか
既存の運用契約が直ちに消えるという慎重論は行き過ぎであり、44四半期の課金成長と金融向け運用実績には重みがある。ただ、技術の独自性を売上高の拡大に転換できるかという問いでは、現状の開示だけでは慎重な見方が優勢だ。悲観側45%、楽観側25%に寄せた理由は、Lorel.aiの売上額とNEQTO有料稼働台数が不明なまま、主力の運用委託がAIエージェントで代替されうるという会社固有の組み合わせにある。株主還元も限定的で、現時点では十分な安全域を認めない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,093 円72 億円(+ 還元の換算額還元の合計 80 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 627 円41 億円、今との差 −72.3%、 期待の年率 −6.5%(資本コスト 6.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,428 円291 億円 | 304 円20 億円 | +109.4% | +8.0% | 379 円25 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,707 円112 億円 | 182 円12 億円 | −16.4% | −1.9% | 321 円21 億円 |
| 中立 | 30% | 957 円63 億円 | 61 円4 億円 | −55.0% | −7.9% | 305 円20 億円 |
| やや悲観 | 28% | 374 円25 億円 | 23 円2 億円 | −82.5% | −16.3% | 111 円7 億円 |
| 悲観 | 17% | 334 円22 億円 | 0 円0 億円 | −85.2% | −17.4% | 57 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,093 円72 億円 | 80 円5 億円 | −48.1% | −6.5% | 1,173 円77 億円 |
今の株価時価総額 2,260 円149 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% NEQTOが海外産業機器へ広がり運用利益も改善 利益 19 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,428 円291 億円
NEQTOが北米の設備監視、建設機械、自律制御に本格採用される。試験段階の顧客が量産に移り、機器ライセンスは約150万台相当まで広がる。メーカーがNEQTOを機器の一部として組み込めば、顧客はソフトだけを容易に交換できず、運用契約とは違う切替負担が生まれる。競合するAWS IoTや産業機器メーカーの内製制御に、通信組込技術と現場運用を束ねて対抗する。
既存の運用受託も消えない。Lorel.aiの自動復旧で必要人員を抑え、対応品質を上げながら契約を守る。人月換算量は今を超えないが、付加価値の高い金融案件とセキュリティ案件が増え、利益率が上がる。SBIとの合弁や海外センターを通じた顧客獲得は進むものの、料金の大幅上昇を前提とはしない。
過去に積み上げた資本がようやく高い利益を生み、利益に応じた買い戻しも続く。IoTと運用の両輪に成長が分散した時、初めて新技術への先行投資が株主の利益になる。
- クラウド・システム監視運用(月額課金の推定部分):数量 2,500(監視対象サービス・運用契約の料金換算単位(年換算件数、実契約数ではない))× 価格 0.02(1料金換算単位当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 44 億円・営業利益 14 億円。監視換算2500件、単価10年1.34倍。自律運用による原価低減で営業利益率33%
- NEQTO・IoT組込ライセンス(推定部分):数量 1,500,000(NEQTO有料ライセンス年換算数(実稼働台数ではなく料金換算))× 価格 0.00(1ライセンス当たり年間ライセンス料金(億円、名目))→ 売上 26 億円・営業利益 17 億円。ライセンス150万件相当、単価1.30倍。量産により営業利益率65%
- 導入設定・スポット開発:数量 80.0(導入・構築案件の料金換算件数(年、推定))× 価格 0.03(1料金換算案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。初期構築80件、単価1.34倍。営業利益率18%
倍率:AIエージェント代替を10年の数量・単価およびg_long=0%に反映したため、k=6.75%に対する事業利益の正当化PERは1÷k=14.8148倍。新規投資の超過利回りを期待して倍率を上乗せせず、税後の余剰現金利息0.168億円を純利益から控除し、現金12億円に戻り方0.75を掛けた9億円を足す。IoTライセンスの価格や件数の上振れはすでに10年後の純利益に含め、10年を超えた追加の成長を倍率に重ねない。
確率:8%。北米試験参加や建機向け技術が量産契約に転じ、機器ライセンスが約150万件の料金換算規模になる可能性はある。ただし有料実績は金額非開示で、複数の契約獲得が連続する必要があるため確率は小さい。
やや楽観 17% 運用委託は残り製品の採用が着実に増える 利益 7 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,707 円112 億円
主要顧客は運用責任の外部委託を続け、障害対応まで請け負う品質は評価される。国内大手やクラウドの標準運用機能との競争で契約換算量は緩やかに減るが、金融・セキュリティ向けの高いサービス水準で名目料金を維持する。puzzleとLorel.aiの省力化が進み、必要人員を増やさずに業務を処理できる。
NEQTOは数十万台相当の有料ライセンスに達し、海外の数社で継続採用される。試験参加企業から有料契約へ進むことは条件であり、IoT市場全体の成長率をそのまま売上に使わない。NEQTO.aiの画面操作がAIエージェントに置き換えられても、機器内の接続・遠隔制御機能は残る。
東京本社と北米拠点の費用はかかるが、継続課金が支える。大規模買収に依存せず、利益の一部を買い戻しへ振り向けるため、自己資本の膨張は中立より抑えられる。
- クラウド・システム監視運用(月額課金の推定部分):数量 2,200(監視対象サービス・運用契約の料金換算単位(年換算件数、実契約数ではない))× 価格 0.02(1料金換算単位当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 39 億円・営業利益 11 億円。監視換算2200件、名目単価1.34倍。営業利益率29%
- NEQTO・IoT組込ライセンス(推定部分):数量 250,000(NEQTO有料ライセンス年換算数(実稼働台数ではなく料金換算))× 価格 0.00(1ライセンス当たり年間ライセンス料金(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。ライセンス25万件相当、単価1.25倍。営業利益率55%
- 導入設定・スポット開発:数量 64.0(導入・構築案件の料金換算件数(年、推定))× 価格 0.03(1料金換算案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。初期構築64件、単価1.34倍。営業利益率15%
倍率:AIエージェント代替を10年の数量・単価およびg_long=0%に反映したため、k=6.75%に対する事業利益の正当化PERは1÷k=14.8148倍。新規投資の超過利回りを期待して倍率を上乗せせず、税後の余剰現金利息0.168億円を純利益から控除し、現金12億円に戻り方0.75を掛けた9億円を足す。IoTライセンスの価格や件数の上振れはすでに10年後の純利益に含め、10年を超えた追加の成長を倍率に重ねない。
確率:17%。海外製品の一部量産と金融運用の獲得が起こるが、主力の運用委託にAI省力化の圧力は残る。契約継続の実績があるため楽観的な上振れを一定割合認める。
中立 30% AIの省力化と契約の粘着性がほぼ相殺 利益 4 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 957 円63 億円
止められないシステムを外部に委託する需要は残る。金融向け運用や複雑な復旧手順は、他社への切替に時間がかかるためである。しかしクラウド各社の管理機能と顧客のAIエージェントが標準的な監視・調査を引き受け、料金換算の運用数量は約3割減る。残る契約の名目料金は上がるが、物価上昇率をすべて転嫁できるほどの独占力は持たない。
IoT分野ではNEQTOの導入が進むものの、収益の主柱と呼べる規模にはまだ達しない。SBI合弁は着実な仕事を取り、海外事業は選択的に拡大する。Lorel.aiは主に内部の効率改善と既存契約防衛に役立ち、販売売上の不明な新製品で既存受託の減少を帳消しにはしない。
研究開発と人材・拠点への投資を続ける結果、営業利益は直近とおおむね同水準に戻る。配当は定着せず、限られた自社株買いだけが実現する。利益よりも自己資本が厚くなり、株主資本利回りが資本コストを下回る。
- クラウド・システム監視運用(月額課金の推定部分):数量 1,820(監視対象サービス・運用契約の料金換算単位(年換算件数、実契約数ではない))× 価格 0.02(1料金換算単位当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 30 億円・営業利益 8 億円。監視換算1820件(0.70倍)、名目単価1.27倍。営業利益率26.5%
- NEQTO・IoT組込ライセンス(推定部分):数量 90,000(NEQTO有料ライセンス年換算数(実稼働台数ではなく料金換算))× 価格 0.00(1ライセンス当たり年間ライセンス料金(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。ライセンス9万件相当、単価1.15倍。営業利益率40%
- 導入設定・スポット開発:数量 52.0(導入・構築案件の料金換算件数(年、推定))× 価格 0.03(1料金換算案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。初期構築52件(0.65倍)、名目単価1.25倍。営業利益率10%
倍率:10年後ROEは純利益3.8120億円÷自己資本69億円=約5.5%で、資本コスト6.75%に及ばない。利益を伸ばせば価値が増すとの推測は置かず、g_long=0%における稼ぐ力の上限1÷k=14.8148倍を用いる。余剰現金の税後金利0.168億円を利益から除き、保有分12億円の75%=9億円を足す。
確率:30%。継続課金は安定しているが、契約単位・有料IoT機器数を会社が開示せず、10年先の大型成長を立証できない。下に寄せる理由:既存収益が運用代行に集中し、Lorel.aiなどの製品売上金額が未公表である。
やや悲観 28% 標準運用の単価が弱まりIoTの普及も遅れる 利益 2 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 374 円25 億円
クラウドの自動化に加え、顧客企業が監視と一次障害対応の一部を内製する。JIG-SAWは高度な復旧を担い続けるが、標準監視の契約範囲が縮む。既存顧客は残るものの、料金換算の運用数量は4割減り、名目料金も物価を下回る。システム運用という必要性は消えなくても、その作業に支払われる金額は細る。
北米でのNEQTO試験は進むが、量産契約が限定される。建設機械メーカーは自社の制御プラットフォームを優先し、JIG-SAWに大きなロイヤルティーは入らない。合弁会社の仕事は維持するが、少数の金融顧客への依存が残る。
運用人員と主要拠点の賃料は短期的に削れず、売上縮小が利益に響く。自己資本を留保しても利回りは低く、株主還元は小規模な買い戻しにとどまる。現金が残ることが価値を支えるが、事業の高成長に払う値段は正当化できない。
- クラウド・システム監視運用(月額課金の推定部分):数量 1,560(監視対象サービス・運用契約の料金換算単位(年換算件数、実契約数ではない))× 価格 0.02(1料金換算単位当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 6 億円。監視換算1560件(0.60倍)、名目単価1.15倍。営業利益率25%
- NEQTO・IoT組込ライセンス(推定部分):数量 30,000(NEQTO有料ライセンス年換算数(実稼働台数ではなく料金換算))× 価格 0.00(1ライセンス当たり年間ライセンス料金(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。ライセンス3万件相当、単価横ばい。営業利益率35%
- 導入設定・スポット開発:数量 44.0(導入・構築案件の料金換算件数(年、推定))× 価格 0.03(1料金換算案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。初期構築44件、単価1.10倍。営業利益率8%
倍率:営業利益の悪化でROEが資本コスト6.75%を大きく下回る。成長を資本コスト並みに評価する上限1÷k=14.81倍より控えめな稼ぐ力の12.0倍を用いる。余剰現金利息0.126億円を純利益から除き、保有現金9億円の75%に相当する6.75億円だけ足す。市場のPERとは無関係。
確率:28%。公開された監視料金は比較しやすく、外部AIとクラウド純正機能が競争を強める。製品の有料台数はなお小さい可能性があり、会社固有の運用集中リスクを踏まえた下側の中心とする。
悲観 17% 運用が内製AIへ移り開発投資が回収できない 利益 −2 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 334 円22 億円
顧客がAIエージェントとクラウド標準機能で障害対応を内製化し、監視契約の多くが更新されない。JIG-SAWは高難度の案件を守ろうとするが、数量と単価の両面で失い、契約の料金換算量は現状の3分の1程度に落ちる。過去に蓄えた障害ログは会社固有の競争力だったが、他社のAIが汎用的な運用を担うことで優位を失う。
NEQTOの組み込み採用は本格化せず、少数の有料機器にとどまる。北米拠点と建機向けソフト開発は収益化が遅れ、SBI合弁で得る持分利益も損失を埋めるには足りない。新しい大型買収は行わないが、既存投資の回収不足が資本効率を傷める。
売上高が大きく減る中で、家賃と人件費を即座には減らせない。営業・純損益は赤字となり、配当や追加の自社株買いを止める。ただし手元の純現金と売掛金などの回収可能資産を全て使い切る破綻は想定せず、稼ぐ力でなく換金資産の床を基準にする。
- クラウド・システム監視運用(月額課金の推定部分):数量 900(監視対象サービス・運用契約の料金換算単位(年換算件数、実契約数ではない))× 価格 0.01(1料金換算単位当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。監視換算900件、名目単価0.98倍。営業利益率12%
- NEQTO・IoT組込ライセンス(推定部分):数量 8,000(NEQTO有料ライセンス年換算数(実稼働台数ではなく料金換算))× 価格 0.00(1ライセンス当たり年間ライセンス料金(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。ライセンス8000件相当、単価0.85倍。営業利益率−15%
- 導入設定・スポット開発:数量 24.0(導入・構築案件の料金換算件数(年、推定))× 価格 0.02(1料金換算案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。初期構築24件、単価横ばい。営業利益率−25%
倍率:既存の運用利益は赤字でありPERによる恒久利益価値は置けない。2025年末自己資本32.6億円に対して、純現金16.8億円、外貨建MMF1.65億円と回収可能な運転資産の税後残額から求める売却可能資産22億円を下値とし、今の自己資本に対するPBR0.67485倍とする。2035年の帳簿上の自己資本43億円を床に用いず、のれん・未実現の知的財産価値も加えない。
確率:17%。AIによる業務切替、海外機器ライセンスの不発、固定費の調整遅れが同時に起きる複合的な負け筋である。倒産寸前までは想定せず、流動資産の売却可能価値を下値の床とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
クラウド・システム監視運用(月額課金の推定部分)
24時間365日の監視、障害対応、復旧、金融向けオペレーション。単一報告セグメントの継続課金からIoT向け推定分を分けた分析用の区分。
| 数量監視対象サービス・運用契約の料金換算単位(年換算件数、実契約数ではない) | 価格1料金換算単位当たり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,600 | 0.01 | 34 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1,820 | 0.02 | 30 | 8 |
取り方:有報の2025年サブスクリプション・リカーリング34.34344億円から、IoT等ライセンスに分析上0.30億円を仮配分して34.04344億円。FISCOの「数千のサービス」という規模記述と、会社のOPS公開価格の月6万〜11万円(https://ops.jig-saw.com/)を照合し、年2600料金換算単位、平均年131万円と逆算した。2600は実顧客数・実契約数の開示値ではない。AIエージェント代替のうち人月・BPO型に準じ、中立10年の運用数量は0.70倍、名目料金は1.27倍とする。営業利益の区分別配賦も推計。
NEQTO・IoT組込ライセンス(推定部分)
機器に組み込むNEQTO、NEQTO.ai、建機向け制御ソフトのライセンス・処理サービス。商用拡大途上で売上額は会社が分離していない。
| 数量NEQTO有料ライセンス年換算数(実稼働台数ではなく料金換算) | 価格1ライセンス当たり年間ライセンス料金(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 22,727 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 90,000 | 0.00 | 1 | 1 |
取り方:公式NEQTO料金(https://neqto.jig-saw.com/ja/pricing)は1ライセンス月110円、年1320円で、アカウント基本料・従量課金は別途。継続課金34.34344億円から分析用に仮配分した0.30億円を同料金で割った22727ライセンス相当であり、実際の2025年の有料機器台数や新AI売上を示さない。2026年公表の北米100社以上はテスト参加で有料契約ではない。機器組込・制御ライセンスは席課金や人月売りと異なるが、NEQTO.aiの操作画面部分にはAI代替圧力がある。IoTプラットフォーム市場全体でのシェアは極小としか言えず、案件ごとの数量拡大を不確実性として扱う。
導入設定・スポット開発
顧客サーバの自動構築、puzzleの導入・設定、クラウドの初期構築等の一時課金。
| 数量導入・構築案件の料金換算件数(年、推定) | 価格1料金換算案件当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 80.0 | 0.02 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 52.0 | 0.03 | 2 | 0 |
取り方:2025年有報の「その他」売上1.91155億円をほぼ全額導入初期費用とみなし、案件数80件・平均239万円で逆算した。実案件数・平均単価は非開示であり予測用の換算尺度にすぎない。初期導入は人月・工数型なので、AIエージェント代替の中立数量0.65倍・価格1.25倍を適用する。営業利益率は本社費控除前の推計。
リスクと懸念
AIエージェント代替
障害検知、原因調査、パッチ対応、定型復旧をクラウド標準機能や顧客自身のAIエージェントが実施できるようになると、外部監視運用への支払額が減る。中立では運用数量を約3割減らし、名目単価上昇も物価3%の10年累積より低くする。Lorel.aiの受注額が明示されない間は、自己変革の成功を先に利益化しない。
NEQTOの販売実績と競争
特許・試験参加企業数・世界のIoT設備市場の拡大だけでは、機器当たりの有料ライセンス収入は確定しない。AWS IoTやAzure IoT Operations、産業機器メーカー内製ソフトに対して優位を示せなければ、研究開発費を費やしても採用機器数は伸びない。会社が機器数・料金・解約率を別建てで示せないこと自体が評価の不確実性である。
クラウド事業者への依存
顧客システムがAWS、Microsoft Azure、Google Cloudに集中するほど、クラウド事業者は運用の入口と価格を握りやすくなる。障害対応の標準機能拡充やパートナー条件の改定は、JIG-SAWが運用成果を保証していても契約単価やサービス領域を押し下げる恐れがある。
拠点賃料と海外先行投資
主要拠点の年額賃料は2025年時点で約4.45億円に達し、営業利益との比較で小さくない。契約量が減る局面でも家賃と運用人員は直ちに減らせず、トロント拠点や海外営業、生成AI開発を継続すれば利益率が急に落ちる。新リース会計による表示変更と実際の資金負担を混同しない。
留保資金の低収益化と希薄化
利益を配当しないまま自己資本が増え、利益の増分が弱ければROEは資本コストを下回る。2025年の買い戻しは一定の評価に値するが、還元の数値約束はない。ストックオプションや業績条件付き株式報酬も、条件達成時の既存株主の取り分と経営の投資規律を確認する必要がある。
金融システム運用の責任と集中
SBIとの合弁を通じて金融向けの運用が広がれば継続課金は厚くなるが、サービス停止や誤復旧の損害は大きい。厳しいサービス水準、セキュリティ事故、顧客の委託先集約は、顧客数が少ない段階での評判と収益に大きく響く。合弁は49%持分法会社であり、その売上全額が連結売上になるわけではない。
今後の分かれ目
- 2027年までにLorel.aiの外販売上または受注残が年5億円以上と区分開示され、粗利も高いと判明したら
- 主力運用の数量減少を一部緩め、AIを販売できるという楽観側の証拠として見直す。単なる提供開始や機能発表だけでは確率を動かさない。
- NEQTOの有料稼働ライセンスが10万、続いて50万を超え、同じ定義の料金・解約率も開示されたら
- IoTライセンスの中立数量を引き上げる。機器数だけでなく継続課金の売上と原価が対応するかを確認する。
- 月額課金売上の連続増加が止まり、解約率が年5%を超えるか契約当たり料金が下がれば
- 運用受託の顧客流出とAI内製化が顕在化したと判断し、やや悲観・悲観を厚くする。売上総額だけでなく単位契約当たりの動きを追う。
- 主要拠点賃料を維持したまま継続課金売上が30億円を下回れば
- 固定費の吸収が難しくなるため、運用利益率と余剰現金の見積もりを下げ、資産床の実現可能性も再検討する。
- SBIとの合弁の持分利益が持続的に1億円規模となり金融運用の外部契約が増えたら
- 大手金融機関の継続委託が堀になる可能性を再評価する。持分法利益を連結運用サービスの売上と二重計上しない。
- 配当性向50%以上の方針または継続的な自社株買いが公表・実行されたら
- 留保現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ見直す。株式報酬による希薄化と相殺した純減株数で還元の実効性を確かめる。
見ておくもの
- 四半期ごとの月額課金売上と年次のリカーリング売上・スポット売上の構成
- Lorel.aiの有料顧客数・受注額・人員削減実績と解約率の開示
- NEQTO及びNEQTO.aiの有料ライセンス台数・年当たり単価・機器当たり粗利
- 管理クラウド取扱額と会計上のJIG-SAW売上の違い
- SBI JIG-SAWモダナイゼーションズの持分法利益と金融案件稼働
- 2027年・2028年のPSU営業利益達成条件と実績との隔たり
- 研究開発費・主要拠点賃料・営業キャッシュ・フロー、配当と自社株買い実績
倍率と資本コストの決め方
2025年の継続課金34.34344億円とその他1.91156億円を起点に、非開示の内訳のみ明示的な仮配分とした。運用件数にはAIエージェント代替を織り込み、物価上昇は単価にだけ含めた。kは6.75%、g_longは0%、楽観〜中立の正当化PERは1÷kに等しい14.81倍であり、市場の過去PERや現在の株価から逆算していない。余剰現金12億円は金融収益と価値の二重計上を避け、株主への戻り方0.75を反映する。2027年以降のリース表示変更は営業費用としての賃料負担を消さず、10年後の利益は現行の比較可能な形で揃えた。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。