結論
駅探は乗換案内から始まり、交通情報の法人提供、インターネット広告、システム開発へと収益源を広げた会社である。結論は割高である。交通データという本物の資産は持つが、それを使って株主が長期に受け取れる利益が細っているためだ。
2017年3月期には営業利益が6億円を超えたが、2026年3月期は売上高29.9億円に対して営業赤字となった。二度の大きな最終赤字は減損の影響が大きいものの、先行投資や買収の回収が進んでいない事実を消すことはできない。足元の自己資本は約12.2億円、純現金は約8.4億円あり、すぐに資金繰りが行き詰まる構図ではない。
同社の核には、25年以上蓄積した鉄道・バス時刻表と経路計算の技術がある。法人向けサービスの継続率95%も、この部分の顧客が容易には離れない証拠だ。他方、無料の経路検索やAIエージェントは消費者向け課金を侵食し、広告運用や人月で売る開発も代替する。鉄道データの堀を、買収して増やした周辺事業の全てに広げて評価することはできない。
2036年3月期の中心像では、交通データと訪日客向け送客を守りながらも、広告・受託開発の実質的な仕事量が減る。企業価値は現預金の支えを受けるが、現在の時価総額約15.7億円を正当化するほどの利益回復には届かない。中期計画の達成そのものより、2030年以降も再投資の利益率が資本コストを超えるかを見極めたい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、問うべきことは乗換案内が便利かどうかではない。2036年にも駅探に残る顧客が、他社より高い料金を払い続ける理由があるか、そこで生じた現金を経営者がどう使うかである。交通ダイヤのデータを常時更新し、多数の事業者をつないで動かす仕組みは真似しにくい。大企業のシステムに組み込まれたAPIなら、乗り換えの手間も大きい。
しかし、有料会員と広告、受託開発は別の商売だ。無料検索は利用者の支払い意思を弱め、AIは広告運用やプログラム作成の人手を減らす。メディアを持つことと媒体に強い値段を付けられることは違う。データ部分の継続率が高くても、全社売上の多くを占める周辺事業が資本コスト以上の利益を生むかは未証明である。
過去の増分投資への採点も甘くできない。新しい子会社を買った後に減損を計上し、自己資本が半分以下になる過程では、株主が自由に使える資金が事業の成長に結び付いていない。これ以上の大型買収より、保守投資を絞り、余剰現金を返す方が合理的な局面もある。月間利用者や訪日客の増加より、契約単価と現金創出の持続を優先して見たい。
純現金は下値を支えるが、解散して直ちに株主へ配られるお金ではない。赤字や固定費、優待と配当、次の買収で失われうる。したがって帳簿の純資産より、稼ぐ力と実際に回収できる資産を分けて判断する。正しい事業を持っていても、適切でない値段を払えば長期保有の安全域はない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの原点は、駅探ドットコムとアプリの乗換案内である。国内メディアには月間約1,000万の利用者が訪れ、有料会員の料金、広告表示、鉄道・旅行商品の送客から収益を得る。会社が公表する月間約5,000万件の経路検索は利用の厚さを示すが、同じ人が何度も使うため、有料会員数とは別物である。2026年3月期の消費者向けモビリティ売上は約6.14億円だった。
もう一方のモビリティは、NTTドコモや鉄道事業者、自治体、旅行会社に時刻表・経路計算のデータやAPI、出張手配、MaaS関連機能を提供する。法人向けの同年度売上は約6.96億円で、ソリューション事業のストック収益比率87%、サービス継続率95%が会社の示す強みだ。大口契約を持つ半面、ドコモ一社が連結売上の14.6%を占めるため、一つの契約終了でも利益が揺れる。
広告配信プラットフォーム事業はプラウドエンジンによる広告代理・運用と、音生の販促システムなどから成る。広告主から受け取る案件売上には媒体への支払いも含まれ、売上の大きさがそのまま手数料利益になるわけではない。生成AIによる制作・配信最適化は業務効率を上げる一方、顧客が外部代理店に払う意味を薄める。
M&A・インキュベーション事業の実体は、傘下のグロースアンドコミュニケーションズ、サイバネット、アイティジェイなどによるSES、受託開発、保守である。2026年3月期には89人の常勤就業者を擁するが、稼働人数と契約単価が売上の天井を決める。交通データの保守と違い、一般的な開発・事務作業はAIエージェントと顧客内製化にさらされる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社が容易に複製できない強みは、時刻表を集めて日々更新し、乗換と運賃を正確に計算する業務に限れば確かにある。25年余のデータ運用、全国の交通機関との関係、法人サービス継続率95%、ストック収益比率87%は、その評価を支える開示だ。法改正に応じて継続的に値上げを通した実績は確認できず、解約率も全契約一律の数字ではない。法人向けの粘着性を消費者向け媒体の値決め力と混同してはいけない。
消費者はGoogleマップ、NAVITIME、ジョルダン、交通事業者の無料アプリを行き来できる。駅探の月間利用者数が大きくても、選択肢の多さから値上げの力は弱い。広告代理には顧客の乗換費用がほとんどなく、SESも結局は人材と単価の勝負になる。これらを合わせた全社の堀は弱く、交通データにある部分的な競争力が他の売上を守ってくれるわけではない。
過去の資本効率も厳しい。自己資本は2019年3月期の28億円台から2026年3月期の12億円台へ縮み、営業利益率はかつての二桁から赤字に転じた。買収先の資産を評価し直した2024年と2026年の大幅損失は、増分投資から十分なリターンを得られなかったことを示す。純現金の厚さは救いだが、それ自体を優秀な事業の証拠にはしない。
2027年3月期第1四半期は売上が前年同期より7%減った一方で、営業損失が縮小した。固定費削減は実行に移っている。ただし一四半期の改善では、AIによって仕事量と委託単価が縮む10年間の壁を越えたとは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
乗換案内は利用する人の数より、誰が顧客の画面と決済を握るかで利益の配分が変わる市場である。駅探、ジョルダン、NAVITIMEは長年の経路計算技術を持つが、GoogleマップやAppleの地図、交通会社のアプリは無料で移動情報を提供する。ジョルダンの2025年の乗換案内事業売上は約23.4億円で、駅探のモビリティ売上約13.1億円を上回る。ただし提供範囲が違うため、この二社の売上比から国内シェアを確定することはできない。
国内の経路検索API市場には公的な一括統計がなく、駅探の法人市場シェアも非開示である。競争相手はヴァル研究所の駅すぱあとAPIやジョルダンの法人向け経路計算で、機能よりもデータ更新、運行障害への対応、移行の手間が選定を左右する。一方、消費者の検索結果をAIが直接返すようになれば、広告表示と有料会員への導線は減りやすい。国内人口の緩やかな減少も乗換案内の実質利用を押し下げる。
広告の市場そのものは伸びている。電通の調査では2025年の国内インターネット広告費は約4兆459億円で、駅探グループの広告配信売上はその約0.018%にすぎない。これは市場占有率の厳密な比較ではなく、同社が巨大な市場の小さな受け皿にとどまる目安だ。電通デジタル、サイバーエージェント、セプテーニなどと比べ、媒体購買量と運用技術の規模で優位ではない。
IDCによれば国内ITサービス市場は2024年に約7兆205億円で、駅探のシステム関連売上の単純比は約0.014%である。市場全体の名目支出が増えても、人月の代価はAIと内製化で削られうる。訪日旅行者の増加は地方移動、観光送客、自治体向けの新しい機会になるが、旅行需要の大きさを駅探が獲得する売上と同一視しない。2036年には交通データの価値が残っても、広告・開発の数量と単価に圧力が続くとみる。
資本政策と M&A
資本配分はこの会社の大きな減点材料である。過去10年にBTJapanやラテラ・インターナショナル、広告関連会社、複数のSES会社を傘下に収めて事業を広げたが、営業利益は増えなかった。2025年にはサークアを売却し、2026年3月期にはソフトウエアなど約3.16億円の減損を計上した。買収や開発へ投じた資金が継続的なオーナー利益に変わっていない。
2026年1月に以前の中期計画を取り下げ、新経営体制の下で2029年3月期の売上高33.7億円、営業利益1.1億円を掲げ直した。2027年3月期の営業利益予想はその後0.05億円に改善したが、最終損失の見込みは続く。計画にはDOE、すなわち株主資本に対する配当の割合を3%以上とする方針があり、株主優待も新設された。ROE目標、配当性向、総還元性向、自社株買いの金額については数字の約束がない。
過去には自己株式を相応に取得し、発行済み株式から自己株式を差し引いた株数は2021年3月期から約14%減った。この実績から余剰現金が株主へ戻る割合は1.0とするが、今後も買収を優先すれば前提は崩れる。DOEを守る配当や500株以上へのデジタルギフト優待は株主の利益になる半面、赤字期にも現金を減らす。新たな買収には増分ROICが資本コストを超える証拠を求めたい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
駅探の交通データは、一般の検索画面よりも深いところで顧客の業務を支えている。時刻表の更新、全国の鉄道・バスの経路計算、自治体ごとの交通事情を組み込むには長年の運用が要る。法人サービスの継続率95%とストック収益比率87%は、過去の減収を見ただけでは消えない継続収益の強さを物語る。顧客の画面をAIが作り直しても、正確な運行データの提供元には対価が残る。
国内月間約1,000万UUの利用者を持つ媒体は、送客先を旅行会社や航空券、訪日客向け観光商品に広げることで収益化できる。新中期計画では記事作成と広告配信の効率化、商品への送客導線の整備が進められており、2027年3月期第1四半期にも費用削減が現れた。広告運用や開発ではAIによる生産性改善を顧客単価下落より先に実現できれば、売上が伸びなくても利益率は回復する。
純現金を大きく持ち、株主数に応じた優待とDOE3%以上の方針がある。過去の自社株買いの実績を踏まえれば、買収に使わず還元する選択肢も現実的だ。2029年の計画達成後に追加の固定費削減が進み、交通APIの取引先が安定すれば、再投資の利益率は資本コストを超える。
慎重な見方
駅探が長年築いてきた乗換案内は、利用者が無料で使うのが当たり前になった。会社自身が有料会員の減少と大口顧客向け情報サービスの終了を明記しており、価格を引き上げる力が弱まっていることは予想ではなく実績である。GoogleマップやNAVITIME、ジョルダンに加え、AIエージェントが経路や観光情報を直接回答すれば、駅探のサイトを訪れない利用者が増える。広告表示機会も有料課金も同時に減る。
さらに連結売上の半分以上を占める広告代理と受託開発・SESは、AIが代替しやすい人手の仕事を売っている。広告主は自社で配信を自動化でき、顧客企業は従来ほど外注エンジニアの人数を必要としなくなる。市場全体が拡大していても、駅探グループが手掛ける案件数と契約単価は下がりうる。モビリティもドコモ一社への依存が大きく、契約の再編だけで売上が大幅に動く。
買収事業から十分な利益が生まれず、2024年と2026年に大きな減損を出した歴史は重い。自己資本は7年前の半分以下となり、DOE配当や優待は赤字の間も現金を消費する。純現金を帳簿どおりに株主の持ち分と見ることも危うい。将来の事業を生かす固定費と人件費、株主還元、場合によっては買収に現金が使われれば、見かけの資産価値は株主に戻らない。
どちらに重みを置いたか
交通データの競争力と手元資金は評価するが、全社の資本配分では慎重な見方が勝る。法人向けデータの継続率は高くても、会社自身が有料会員の減少を認め、広告運用とSESにはAIによる構造的な中抜きがある。中立の数量と単価にその侵食を織り込んだうえで、確率は上側26%、下側41%と非対称にした。下側を厚くした理由はAIの二重減点ではなく、2024年と2026年の減損、買収の回収不足、ドコモへの契約集中が同時に顕在化しているからだ。結果として、確率加重した現在価値に十分な安全域は見出せない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 300 円14 億円(+ 還元の換算額還元の合計 87 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 202 円10 億円、今との差 −39.2%、 期待の年率 +1.7%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 785 円37 億円 | 169 円8 億円 | +186.5% | +12.6% | 86 円4 億円 |
| やや楽観 | 17% | 522 円25 億円 | 140 円7 億円 | +98.5% | +8.1% | 112 円5 億円 |
| 中立 | 33% | 224 円11 億円 | 99 円5 億円 | −2.8% | −0.3% | 107 円5 億円 |
| やや悲観 | 26% | 169 円8 億円 | 53 円3 億円 | −33.3% | −4.4% | 58 円3 億円 |
| 悲観 | 15% | 152 円7 億円 | 13 円1 億円 | −50.5% | −7.0% | 25 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 300 円14 億円 | 87 円4 億円 | +16.4% | +1.7% | 388 円18 億円 |
今の株価時価総額 333 円16 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 交通データの拡販と固定費改革がともに成功 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 785 円37 億円
交通データの保守を必要とする法人顧客が残り、MaaSや出張手配の販売先が増える。新幹線チケットや訪日旅行者向けの送客も実際の手数料収益につながり、月間1,000万UUの媒体価値を維持できる。交通案内をAIが回答する時代になっても、裏側の正確な運行・運賃情報の供給者として駅探が選ばれ続ける。
広告代理とSESはAIで作業が減るため、案件件数と有償人月を現在より増やさない。その代わり、社内の広告配信効率化と開発生産性向上が売値の維持と高い利益率に結び付く。固定費改革によって本社費の増加も抑え、2036年の営業利益は4億円台まで戻る。
買収案件は絞り込み、2024年と2026年のような減損を繰り返さない。稼いだ利益の一部はDOE配当と自社株買いに回り、資本効率が再び資本コストを超える。これは強い交通データと再投資規律が同時に実を結ぶ筋書きであり、単にAI関連市場が伸びるだけでは到達しない。
- モビリティ:国内乗換メディア・有料会員:数量 120(国内月間100万UUを1か月分とする年間延べ単位)× 価格 0.07(100万UU・月当たり計上売上(億円、課金・広告・送客の混合単価))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。有料会員自然減とAI直接回答で媒体接触が変化。送客率と広告の混合単価も織り込む。
- モビリティ:法人交通データ・旅行ソリューション:数量 140(年間の500万円相当の契約売上換算口数(大口は複数口、推計))× 価格 0.07(換算契約1口当たり年商(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。交通APIの定着率と大口顧客の契約更新を中心にし、旅行制作の人月部分を含む合成数量。
- 広告配信:代理販売・制作運用・販促ASP:数量 700(年間の標準広告案件相当件数(推計))× 価格 0.01(案件当たり計上売上(億円、媒体費等を含み得る))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替で制作・運用案件数を削る。案件単価には媒体費の通過分もある。
- M&A・インキュベーション:SES・開発保守:数量 900(年間の有償エンジニア人月(推計))× 価格 0.01(有償1人月当たり計上売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替で有償人月を削る。名目の人月単価は人件費高騰の一部を反映。
倍率:長期名目g_long0%、k7.75%なので正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=12.903倍。余剰現金3.5億円の税後利息0.049億円を全社純利益2.61億円から控除し、事業価値(2.61−0.049)×12.903+株主へ戻る余剰現金3.5=36.55億円。全社ROEは2.61÷21.6=12.1%と資本コストを上回るが、AIによる長期成長ゼロを緩めない。10年の累積利益17.4、累積還元8.0から自己資本21.6億円。
確率:95%の法人継続率と交通データの独自性が効き、訪日旅行送客も採算化する最上位の展開。ただし広告・SIがAIで数量を伸ばせない制約があり、実現確率を一桁台にとどめる。
やや楽観 17% B2B基盤を守って利益が緩やかに回復 利益 2 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 522 円25 億円
法人向け経路検索APIと出張手配の継続収益を維持し、交通・旅行事業者との連携で契約単価を少しずつ改善する。自社メディアの閲覧者は減るが、旅行商品や交通チケットへの送客率を高めて単価で補う。2029年の計画で示した収益回復の土台が、2030年代前半にも残る。
広告代理はAIを使った運用内製化によって受注件数が減る。開発子会社でも人月請求が縮むものの、残る保守・運用案件の契約単価上昇と作業効率の改善で部門利益は増える。大きな新規買収ではなく、既存顧客への追加販売と本社費の管理が成長の中心になる。
経営陣が減損後の投資基準を厳格化し、増えた利益を配当や自社株買いに振り向ける。事業の堀は依然として交通データが中心だが、そこから生じる利益が過去より確かになる。
- モビリティ:国内乗換メディア・有料会員:数量 110(国内月間100万UUを1か月分とする年間延べ単位)× 価格 0.06(100万UU・月当たり計上売上(億円、課金・広告・送客の混合単価))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。有料会員自然減とAI直接回答で媒体接触が変化。送客率と広告の混合単価も織り込む。
- モビリティ:法人交通データ・旅行ソリューション:数量 133(年間の500万円相当の契約売上換算口数(大口は複数口、推計))× 価格 0.07(換算契約1口当たり年商(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。交通APIの定着率と大口顧客の契約更新を中心にし、旅行制作の人月部分を含む合成数量。
- 広告配信:代理販売・制作運用・販促ASP:数量 630(年間の標準広告案件相当件数(推計))× 価格 0.01(案件当たり計上売上(億円、媒体費等を含み得る))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替で制作・運用案件数を削る。案件単価には媒体費の通過分もある。
- M&A・インキュベーション:SES・開発保守:数量 765(年間の有償エンジニア人月(推計))× 価格 0.01(有償1人月当たり計上売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替で有償人月を削る。名目の人月単価は人件費高騰の一部を反映。
倍率:事業ROEは1.69÷18.2=9.3%、k7.75%を上回る。AI代替のため長期gを0%に制限し、RONICによらず正当化PERの上限は1÷0.0775=12.903倍。余剰現金3.5億円の税後受取利息0.049億円を純利益から除き、(1.69−0.049)×12.903+3.5=24.67億円。10年累積純利益12.6、還元6.6で自己資本は18.2億円となる。
確率:法人サービスの定着率、2027年1Qで確認できた費用削減、2029年計画が支える。広告とSESの数量減少が避けられず、全社高成長になる可能性は限定する。
中立 33% 交通APIは残るが広告と人月の仕事が細る 利益 1 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 224 円11 億円
乗換案内の利用者はまだ多いが、GoogleマップやAIによる直接回答への移行で媒体への実質来訪は10年で約3割減る。旅行商品への送客改善が一人当たりの収益を補う一方、古い有料会員の減少は止まらない。交通APIと法人向けの契約は、正確なデータ更新や乗換の面倒さに支えられて比較的粘り強く残る。
広告代理は案件が35%減り、売値は名目でほぼ横ばいにとどまる。SES・受託開発の有償人月も3割減るが、残る仕事の単価は人件費の上昇を一部反映する。会社は固定費削減を続けても、物価上昇分を完全に吸収できず、本社費は今より増える。2036年の売上高は25億円台、営業利益は約0.9億円となる。
2029年計画の営業利益1.1億円は回復期の到達点として尊重するが、その数字が以後毎年伸び続けるとは考えない。10年累積の利益約5.5億円から配当と優待など約4.7億円を戻すため、自己資本は13億円程度で大きくは増えない。
- モビリティ:国内乗換メディア・有料会員:数量 84.0(国内月間100万UUを1か月分とする年間延べ単位)× 価格 0.06(100万UU・月当たり計上売上(億円、課金・広告・送客の混合単価))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。有料会員自然減とAI直接回答で媒体接触が変化。送客率と広告の混合単価も織り込む。
- モビリティ:法人交通データ・旅行ソリューション:数量 119(年間の500万円相当の契約売上換算口数(大口は複数口、推計))× 価格 0.06(換算契約1口当たり年商(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。交通APIの定着率と大口顧客の契約更新を中心にし、旅行制作の人月部分を含む合成数量。
- 広告配信:代理販売・制作運用・販促ASP:数量 455(年間の標準広告案件相当件数(推計))× 価格 0.01(案件当たり計上売上(億円、媒体費等を含み得る))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で制作・運用案件数を削る。案件単価には媒体費の通過分もある。
- M&A・インキュベーション:SES・開発保守:数量 630(年間の有償エンジニア人月(推計))× 価格 0.01(有償1人月当たり計上売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替で有償人月を削る。名目の人月単価は人件費高騰の一部を反映。
倍率:2036年のROEは0.60÷13.0=4.6%でk7.75%に届かないため、PERは1÷k=12.903倍が厳格な上限となる。AI代替で10年後も名目g0%なので定常成長のプレミアムはない。現金利息0.049億円を利益から外して(0.60−0.049)×12.903+余剰現金3.5=10.61億円。累積純利益5.5、還元4.7、期首自己資本12.2から期末13.0。
確率:法人交通データに解約しにくさがあり、2027年に費用を削る動きも実際にある。ただし有料会員の減少が継続し、広告代理・SESがAIによる仕事量減を受けるため、高収益への完全回復を中心にしない。
やや悲観 26% 大口契約減と広告縮小で利益が再び赤字 利益 0 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 169 円8 億円
大口顧客が交通データの調達先を見直し、法人向け売上が目に見えて落ちる。交通情報の更新技術は残るが、低価格のAPIと顧客システムへの内製化によって新規契約の平均価格も伸びない。検索の無料化とAIの直接回答が進み、駅探メディアの実質的な利用機会は約4割減る。
広告代理の受注件数は4割減り、制作・運用手数料にも値下げ圧力がかかる。開発子会社は請求できる人月を4割失い、契約単価の上昇だけでは人件費や本社費を支えられない。会社は買収先を整理し、新規事業も収益化する前に投資を絞るため、2036年は小幅な営業赤字に陥る。
期間前半の累積利益は配当などに回したものの、期末には持続的な利益の評価が難しくなる。会社は存続し純現金と売掛金の価値が残るが、株主が直ちに換金できるわけではない。資産の回収可能額を下値の物差しとする。
- モビリティ:国内乗換メディア・有料会員:数量 72.0(国内月間100万UUを1か月分とする年間延べ単位)× 価格 0.06(100万UU・月当たり計上売上(億円、課金・広告・送客の混合単価))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。有料会員自然減とAI直接回答で媒体接触が変化。送客率と広告の混合単価も織り込む。
- モビリティ:法人交通データ・旅行ソリューション:数量 105(年間の500万円相当の契約売上換算口数(大口は複数口、推計))× 価格 0.06(換算契約1口当たり年商(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。交通APIの定着率と大口顧客の契約更新を中心にし、旅行制作の人月部分を含む合成数量。
- 広告配信:代理販売・制作運用・販促ASP:数量 420(年間の標準広告案件相当件数(推計))× 価格 0.01(案件当たり計上売上(億円、媒体費等を含み得る))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で制作・運用案件数を削る。案件単価には媒体費の通過分もある。
- M&A・インキュベーション:SES・開発保守:数量 540(年間の有償エンジニア人月(推計))× 価格 0.01(有償1人月当たり計上売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替で有償人月を削る。名目の人月単価は人件費高騰の一部を反映。
倍率:継続利益は営業赤字に落ち込むためPERでは測らない。簿価を将来積み上げず、2026年3月期の現在自己資本約12.2億円に床から導いたPBR0.65574を掛け、8.0億円とする。10年間の累積純利益と配当・優待等の還元を各約2.5億円と想定し、期末自己資本は期首12.2億円のまま。余剰現金を別途加算せず資産価値と二重計上しない。
確率:大口顧客向け交通情報サービスがすでに一部終了し、有料会員も減少中。買収済みの広告・SI事業には値決め力がなく、費用削減が追い付かないケースの確率を高くする。下に寄せる理由:減損と売上減少の具体的実績があり、単なるAI代替の二重の確率罰ではない。
悲観 15% 検索接点と人月の両方を失い事業の堀が消える 利益 −2 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 152 円7 億円
検索の入り口が地図アプリとAIエージェントへ移り、駅探が持つ国内メディアの利用機会は10年で6割減る。有料会員の自然減も続き、媒体広告だけでは維持費を賄えない。法人向け交通APIも大口顧客の自社開発や他社エンジンへの移行によって失注し、残る契約は値下げを迫られる。
広告制作と運用の大半は広告主や自動化基盤に内製化され、SESの有償人月も約半減する。受託事業の固定人件費、データ更新、セキュリティー保守の費用はすぐには消えず、赤字が広がる。経営陣は大幅な人員整理と子会社整理を迫られ、減損によって帳簿にあった技術の価値も失われる。
株主還元は初期に限られて停止する。期中に小幅の利益が出ても後半の損失に相殺され、10年累積の純利益と還元はそれぞれ約0.6億円にとどまる。会社をただちに破産させる想定ではなく、短期債権と残存現金を回収した税後・撤退費用控除後の価値だけを床に残す。
- モビリティ:国内乗換メディア・有料会員:数量 48.0(国内月間100万UUを1か月分とする年間延べ単位)× 価格 0.05(100万UU・月当たり計上売上(億円、課金・広告・送客の混合単価))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。有料会員自然減とAI直接回答で媒体接触が変化。送客率と広告の混合単価も織り込む。
- モビリティ:法人交通データ・旅行ソリューション:数量 90.0(年間の500万円相当の契約売上換算口数(大口は複数口、推計))× 価格 0.05(換算契約1口当たり年商(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。交通APIの定着率と大口顧客の契約更新を中心にし、旅行制作の人月部分を含む合成数量。
- 広告配信:代理販売・制作運用・販促ASP:数量 385(年間の標準広告案件相当件数(推計))× 価格 0.01(案件当たり計上売上(億円、媒体費等を含み得る))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で制作・運用案件数を削る。案件単価には媒体費の通過分もある。
- M&A・インキュベーション:SES・開発保守:数量 495(年間の有償エンジニア人月(推計))× 価格 0.01(有償1人月当たり計上売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で有償人月を削る。名目の人月単価は人件費高騰の一部を反映。
倍率:10年後の事業は2億円規模の最終赤字で継続利益価値がない。現在の自己資本12.2億円(積み上げない)に実体ある床7.2億円を反映するPBR0.59016を掛ける。残存する現預金と回収できる売掛債権だけを財産価値として扱い、将来の余剰現金や売上倍率は足さない。10年累積純利益0.6億円、早期還元0.6億円で期末自己資本12.2億円。
確率:広告運用とSESの半減、交通APIの主要顧客流出、有料会員の消滅が重なる構造的失敗。既に二度の大きな減損があり無視できないが、法人データの継続率95%と保有現金があるため破綻同然の高確率にはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
モビリティ:国内乗換メディア・有料会員
駅探ドットコムとアプリの有料会員、広告表示、チケット・旅行送客。自社媒体広告枠は利用者数が数量の源泉。
| 数量国内月間100万UUを1か月分とする年間延べ単位 | 価格100万UU・月当たり計上売上(億円、課金・広告・送客の混合単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 0.05 | 6 | 2 |
| 10 年後 中立 | 84.0 | 0.06 | 5 | 1 |
取り方:2026年3月期有報の収益認識注記でモビリティのコンシューマ向け6.14332億円を確認。会社採用情報では国内月間1,000万UU、年間延べ100万UU・月の単位は10×12=120。従って混合単価は6.14332÷120=0.051194億円(利用者1人1か月当たり約5.12円)。広告単価と有料会員単価が混在し、真の月額課金単価ではない。モビリティのセグメント利益合計1.91718億円からの配賦1.50億円は非開示の分析上の推計。型は自社メディア広告枠であり、検索回答をAIが直接返すことを中立数量0.70倍、単価1.18倍に反映。市場全体UUとシェアの統一統計はない。
モビリティ:法人交通データ・旅行ソリューション
時刻表・経路計算API、法人向け出張手配、自治体MaaS、旅行関連コンテンツを企業・自治体へ継続提供。
| 数量年間の500万円相当の契約売上換算口数(大口は複数口、推計) | 価格換算契約1口当たり年商(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 140 | 0.05 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 119 | 0.06 | 7 | 1 |
取り方:2026年3月期有報のモビリティ法人向け売上6.95673億円。契約社数は非開示なので、交通APIや旅行向け提供の小口年間料金を約500万円相当と仮定し、売上換算約140口とする。これは140社という意味ではなく、ドコモ売上4.37753億円だけで約88口相当となる。継続率95%、ストック売上比率87%、25年以上の独自交通DBを根拠に、核のAPIは「記録の正本・独自データ」の型とみる。一方、旅行ガイド制作や受託開発部分は人月の型。売上内訳は非開示なのでAPI相当5.2億円、受託等1.76億円と仮置きし、中立の合成数量を約0.85倍、単価を約1.23倍とした。営業利益配賦0.41718億円も分析上の推計。国内API市場とそのシェアは確定的な公開統計がない。
広告配信:代理販売・制作運用・販促ASP
プラウドエンジンのネット広告代理業務と音生のマーケティング・販促ツール。人の運用と操作画面の価値はAIエージェント代替の対象。
| 数量年間の標準広告案件相当件数(推計) | 価格案件当たり計上売上(億円、媒体費等を含み得る) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 0.01 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 455 | 0.01 | 5 | 0 |
取り方:2026年3月期の外部売上7.34234億円、セグメント利益0.10442億円が開示値。広告部門の従業員23人に対して一人年約30件を担当すると推定し約700案件とした。案件数・手数料率は未開示で、逆算される案件当たり約105万円は媒体費と運用受注を含む売上であって純粋な代理店報酬ではない。市場は電通の2025年インターネット広告費4兆459億円、売上単純比約0.018%で、厳密な市場シェアではない。AIエージェント代替の「広告制作・運用」型、音生の画面型ASPは「席・画面」型。中立案件数0.65倍、名目価格据え置き、g_long0を採用。
M&A・インキュベーション:SES・開発保守
グロースアンドコミュニケーションズ、サイバネット、アイティジェイ等が行うSES・受託開発・保守、人材派遣。
| 数量年間の有償エンジニア人月(推計) | 価格有償1人月当たり計上売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 900 | 0.01 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 630 | 0.01 | 8 | 1 |
取り方:2026年3月期のM&A・インキュベーション外部売上9.48555億円、セグメント利益0.68801億円。部門の就業者89人×12か月×稼働率約84%=約900人月と組み立て、月当たり約105万円を請求売上換算単価とする。開示に人数89人はあるが稼働率と単価は非開示の推計。IDCの国内ITサービス市場2024年7兆205億円に対し単純比約0.014%、大手SIに比べ小規模。AIエージェント代替の「人月・工数」型で中立数量0.70倍、名目単価約1.25倍、g_long0を採用。
リスクと懸念
AIエージェント代替
広告運用や広告文制作、システム開発・保守の人月、販促ツールの操作画面は、AIエージェントが工程そのものを代替しうる。2026年3月期には広告とSIで売上の約56%を占め、影響が全社に及ぶ。中立では広告案件数を35%、有償開発人月を30%減らし、10年以降の名目成長率を0%とした。資本コストの寿命には重ねていない。
有料会員と検索流入の構造減
同社自身が乗換案内の有料会員減少を継続的な減収要因と明記した。Googleマップ、NAVITIME、ジョルダンとの競争に加え、AIの直接回答で駅探サイトの訪問が減れば、有料課金と媒体広告が同時に痛む。月間1,000万UUが維持されるかより、課金への転換率と広告収入の質を追う必要がある。
NTTドコモなど大口顧客への依存
2026年3月期のNTTドコモ向け売上は4.38億円で連結の14.6%に上る。過去に大手向け交通情報サービスの終了が減収要因になった事実があり、法人向けの高い継続率と顧客集中は表裏一体である。契約の更新や内製化次第で法人データ事業の数量と価格の両方が変わりうる。
M&Aと開発投資の回収不足
広告代理やSESの買収は売上の見た目を広げたが、2019年の高い営業利益を回復させられていない。2024年と2026年に大きな最終赤字を出し、2026年はソフトウエア等3.16億円を減損した。買収が再開されれば純現金は将来の損失を吸収する余力ではなく、新たな投資失敗の原資になる危険がある。
固定費と人材の採算
2026年3月期のセグメント利益合計2.71億円に対し、本社・消去の負担は約2.88億円だった。売上が縮んでも交通データ更新、セキュリティー、人材確保、事務所家賃の負担はすぐに落ちない。2027年3月期第1四半期の赤字縮小が一時的な採用抑制ではなく、継続的な費用構造の改革かを確認したい。
余剰現金の株主への帰属と優待費用
純現金約8.4億円は時価総額に比べ厚いが、その全額を自由に分配できるわけではない。DOE3%以上の配当と500株以上の長期保有者向け優待は現金を要し、収益回復前の還元は事業の余力を削る。買収や前受金の決済、リースの固定的支払も考慮し、余剰分3.5億円だけを別建てにした。
訪日客市場への期待先行
訪日客が増えれば地方周遊やチケット販売の市場も広がるが、検索から購買までを駅探が押さえられる保証はない。航空会社や旅行代理店、Googleなどは既に強い送客経路を持つ。訪日客向けメディアを開設しただけで大きな利益を想定せず、契約数と手数料の継続収益が開示されるまでは楽観側に限定する。
今後の分かれ目
- 交通API・ソリューションの契約継続率が95%付近を維持し、法人売上が再び増加したら
- 法人データの堀を再評価する。値上げを伴う増収と解約率5%未満の持続が確かめられれば、法人の数量・価格と長期成長率を引き上げる。
- NTTドコモ向け売上がさらに大きく減るか、契約見直しが公表されたら
- 法人売上の見通しを引き下げ、やや悲観の重みを増す。契約売上の代替先獲得が同時に確認できる場合だけ減点を和らげる。
- 2029年3月期に売上高33.7億円・営業利益1.1億円を達成し、営業キャッシュも増えたら
- 費用削減と送客事業の実効性が確認できるため、中立の営業利益率と確率を見直す。ただし単年度の改善だけで10年以降の成長率は上げない。
- 国内メディアの月間1,000万UUが急減し、課金会員の減少も加速したら
- 自社媒体の収益機会と広告単価の前提を引き下げる。AIの要約・直接回答による流入減が原因なら、旧来型の集客手法への回帰は期待しない。
- 広告とSESの請求案件数・稼働人月が減っても、利益率と実際の受注単価が上がり続けたら
- AIを使った生産性改善が価格下落を相殺している証拠になる。やや楽観側の収益率を上げる一方、数量が回復したとまではみなさない。
- 利益が出る前に大型買収や新株発行を行い、現金・株主の持分が希薄化したら
- 手元現金の還元可能性を引き下げ、増分ROICの実績を再点検する。買収代金だけでなく、後に必要となるシステム投資と減損の可能性も織り込む。
- 配当DOE3%と優待が継続される一方、純現金が数期連続で減り始めたら
- 見かけの利回りより財務の減少を重視する。還元を維持するために借入が増えれば、悲観側の回収可能資産の床も引き下げる。
見ておくもの
- 2029年3月期中期経営計画の売上高33.7億円、営業利益1.1億円とその達成状況
- B2B交通データ・ソリューションの継続率95%とストック収益比率87%の推移
- NTTドコモ向け売上高の推移と主要契約の更新・終了
- 国内メディアの月間1,000万UU、乗換検索件数、有料会員収入と送客収入の内訳
- 広告部門の運用案件数・手数料、SES子会社の稼働人月・契約単価・粗利率
- 連結セグメント利益と本社費・調整額、減損の再発、営業キャッシュフロー
- 純現金の残高、DOE3%以上の実施、株主優待の実利用費用と新規M&Aの有無
倍率と資本コストの決め方
株価332円、実質株数472万9,547株、時価総額約15.7億円は最後の比較にだけ使用した。数量は交通メディアの月間UU、法人の売上換算契約口数、広告案件、SESの人月とし、名目物価分は各契約単価の側に含めて二重計上しない。B2B契約口数や広告案件数、SES稼働率は未開示で、開示売上・人数・継続率からの推計である。
資本コスト7.75%、10年以降の名目成長率0%の下で、上側3筋書きの正当化PERは1÷k=12.90倍とする。余剰現金3.5億円は利息を利益から除いて別に加え、利益と資産を重複評価しない。悲観側は現在の自己資本12.2億円に対して、現預金・回収可能な債権から全負債と撤退費用を引いた床のPBRを用いる。のれん0.85億円や現金化困難なソフトウェア資産を床に含めない。悲観の価値は稼ぐ力と床の大きい方を超えず、床を下回らない。
利益と還元の累計から各筋書きの自己資本をつなぎ、強い成長を仮定した場合でも2036年以降の伸びをAI利用だけで水増ししない。新リース会計基準で貸借対照表の表示が変わる影響は、営業費用に家賃を含める現在の形式にそろえて比較している。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に事業の価格決定力と純現金を反映した質の調整+0.25%を加える。減損の一過性損失は直ちに存続の疑義を意味しないため、経営危機上乗せは設けず筋書きで扱う。