結論
QPSホールディングスは、昼夜や雲に左右されず地表を撮る小型SAR衛星を製造・運用し、観測データを官公庁などに売る企業だ。現在の時価総額は、2031年までの大型契約が終わった後の稼ぐ力まで先取りしており、筆者は割高と判断する。日本が独自の安全保障用観測能力を持つ必要性は10年後も消えないが、その需要のすべてが同社の株主利益になるわけではない。
2026年2月に結んだ防衛省関連の画像取得契約は約697億円に及ぶ。さらに2026年10月の決算では営業黒字へ転じ、翌5月期の営業利益予想も20億円に引き上げられた。しかし、2026年5月期の純利益は補助金と共同研究収入に大きく支えられており、営業利益は赤字だった。今回の改善を、そのまま10年の恒常的な採算と見なすのは危うい。
技術の核は、高精細な画像だけではない。小型衛星の製造、打上げ、地上局、迅速な再訪観測までを一体で供給する仕組みにある。もっとも、衛星の設計寿命は5年で、売上が伸びても更新投資が絶えない。フィンランドのICEYEや国内のSynspectiveとの競争も激しく、販売単価が物価以上に上がる証拠はまだ乏しい。
中立では2036年の売上が約412億円に達しても、経常的な営業利益は約64億円にとどまると見る。5つの筋書きを10年の資本コストで割り戻した価値は約293億円で、現在の約779億円を約62%下回る。官需と技術力を評価しながらも、長期保有の安全域は認めにくい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、衛星画像が必要かどうかよりも、その画像を売って設備を更新した後に現金が残るかどうかが核心となる。SAR観測には代替されにくい物理的な価値があり、日本の安全保障上の需要にも持続性がある。だが、5年の寿命を持つ衛星を次々と置き換える事業は、いったん投資を終えれば利益が流れ込むソフトウェアとは根本的に違う。古い衛星の減価償却額を、新しく製造する衛星の将来の更新費用と同一視してはならない。
2031年の計画にあるEBITDA200億円と営業利益30億円の大きな差は、その警告と読める。新規の増設を止めても、観測頻度を維持する限り打上げ費や衛星の交換は続く。2036年の中立では約43.5億円の会計上の純利益を見込むが、これが毎年そのまま株主へ払える現金になるとは考えない。交換投資が想定よりかさめば、オーナー利益は会計上の利益を大幅に下回る。
もう一つの問題は、顧客が少数の官公庁に偏ることである。国産の安全保障データという売り物は強いが、政府側は競争入札を行い、複数事業者を育てられる。稼働機数の拡大や海外向けの販路開拓は堀を広げる機会である反面、そのためにさらに株主資本を投入すれば、増分の資本利益率が資本コストを超えるかを毎年確かめる必要がある。
契約の実在と運用実績は高く評価する。しかし2031年以降の大型更新契約、価格決定力、設備更新後の自由現金については証拠がまだ足りない。現在の時価総額約779億円に対して、将来の5つの姿から求めた本質価値は約293億円であり、先が見えない部分に高い代金を払う安全域は見いだせない。
何で稼ぐ会社か
事業の起点は、電波を地上へ照射し、その反射を解析する合成開口レーダー(SAR)衛星だ。可視光の衛星と違って夜間や悪天候でも撮影でき、船舶、地形の変化、被災地、重要施設の継続監視に適する。九州の製造ネットワークと展開式の大型アンテナを組み合わせ、約46センチの分解能を実証している。画像の価値は単独の解像度よりも、同じ地点をどれほど短い間隔で観測して納品できるかで決まる。
会社の会計上の事業は「地球観測衛星データ事業」の単一セグメントである。ただし稼ぎ方は、軌道上の衛星で取得した画像を売る「画像データ提供」と、衛星試作や実証などを納める「開発・調査研究」に明確に分かれる。2026年5月期の売上38.03億円の内訳は前者22.21億円、後者15.82億円だった。画像1枚の平均販売額や契約ごとの採算は開示されていないため、分析上は有償観測換算の衛星機年と標準化した開発案件数を用いる。
主な買い手は防衛省、内閣府、JAXAと、衛星データ供給にかかわる国内企業だ。2026年5月期には官公庁、トライサット・コンステレーション、スカパーJSATの3先で売上の約97%を占め、海外顧客向けの売上計上はなかった。2026年4月に始まった防衛省の衛星コンステレーション向け画像取得業務が、今後5年間の成長の中心になる。契約総額約697億円は有力な受注の裏付けだが、契約終了後の継続収入を保証するものではない。
画像の納品には衛星本体の製作、ロケットによる打上げ、地上設備、通信、軌道制御、画像処理が必要だ。衛星の設計寿命が5年なので、会計上は減価償却が進み、実際の資金は次の衛星を製造・打ち上げる時に出ていく。イタリアのe-GEOSとの販売協業は海外販路を開く一歩だが、現時点の売上実績と将来の潜在需要を混同してはならない。
優良さと弱いところ
本物の強みは、軌道上で働く製品を実際に作り、顧客の注文に応じてデータを渡せる点だ。展開式アンテナの特許、実証済みの高分解能、国内の設計から運用までの一貫体制は、机上の画像解析会社にはまねしにくい。防衛省との長期契約は、安全保障で必要な納入能力や情報管理を審査された証拠でもある。観測地点と時刻の履歴が蓄積すれば、変化を測る画像の価値も増す。
ただし、技術上の優位と株主に還元される超過利益は別である。画像データの解約率、競争入札での値上げ率、契約更新率は未開示であり、価格を上げても顧客が離れないとまでは証明できない。2026年7月の会社比較では小型SAR衛星の運用数が9機に対し、フィンランドの大手は52機だった。機数だけで性能や案件の勝敗は決まらないが、観測の頻度を争う市場では生産規模が重要になる。
資本効率には慎重な見方が必要だ。2026年5月期は自己資本317億円に対し、営業利益が約8億円の赤字だった。純利益約12億円は、補助金などの営業外収益によって黒字になった面が大きい。中期計画が掲げる2031年5月期の営業利益30億円に対して、同じ年度のEBITDA目標は200億円である。この差は衛星という装置資産が重く、稼いだ現金の相当部分を更新に戻さなければならない構造を物語る。
過去の赤字と増資の長さから、再投資資本の利回りが資本コストを恒常的に超えたという実績はまだない。国産技術への政策的な需要は堀の候補だが、単価と現金創出の証拠が揃うまでは、強い堀を持つ成熟企業として扱わない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
SAR画像の市場は、安全保障と防災の双方で構造的な追い風を受けている。夜間の船舶監視や地盤変位の把握にはレーダー観測の意味があり、光学衛星や生成AIだけでは新しい実測データを代替できない。国内では独自の観測網を確保する政策的動機も強い。一方、官公庁の予算が市場を押し上げることと、特定企業の利益が長く増えることは同義ではない。
会社資料の外部調査では、国内の民生用地球観測サービス市場が2025年の約223億円から2030年の約340億円へ伸びるとされる。これは防衛需要を含まず、しかもSARだけの市場でもない。世界のSAR関連市場の約9,255億円から約1兆7,685億円という予測にも衛星機器や周辺技術が含まれるため、全額を画像販売の獲得可能市場として扱うべきではない。独立した全世界の画像販売シェアは、公開資料だけでは算定できない。官公庁向け試作受託市場についても、標準案件数と各社の受注シェアを示す統一統計は公表されていない。
競争相手はフィンランドのICEYE、米国のCapella SpaceやUmbra、国内のSynspectiveだ。2026年7月時点の会社比較では、示された5社の稼働衛星が52、9、5、9、8機で、QPSは合計83機の約11%に当たる。ただし、この分母は世界全体ではなく比較対象5社だけの運用機数であり、販売額シェアではない。ICEYEは製造能力も広げており、観測頻度と量産コストの競争は今後むしろ厳しくなる。
QPSは日本周辺や中緯度の観測頻度と国産供給網で独自の席を確保できる可能性がある。しかし政府案件は更新入札や機密要件、国際的な調達政策の影響を受ける。2026年に始まった長期契約は2031年までの時間を稼ぐが、2032年以降は海外販売と民間用途を実際の継続契約に変えられるかが焦点になる。AIによって画像の判読や帳票作成の単価が下がれば、物理観測の付加価値だけが残り、ソフト面の差別化は弱まりうる。
資本政策と M&A
経営陣の現在の資本配分は、配当よりも衛星網の建設を優先するものだ。会社の中期経営計画は2031年5月期に売上300億円、営業利益30億円、EBITDA200億円を目標とし、うち海外・民間売上130億円を見込む。製造能力は年20機を目指し、36機体制へ向けた投資は約500億円に及ぶ。ROEの数値目標や配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額については、数字の約束がない。
2026年3月にはスカパーJSATなどへの第三者割当増資で約152億円を調達した。これは必要な衛星投資を前にした合理的な資金確保だが、既存株主の持ち分を薄めたことも事実である。調達後の株数は今回の株価の基準に含め、将来の希薄化を二重計上しない。衛星画像の解析領域で提携や買収を検討する余地はあるものの、大型買収が価値を増した過去の実績はまだ示されていない。
2026年8月末の現金及び預金約190億円から有利子負債約63億円を引くと、表面上の純現金は約127億円になる。ただし約500億円の建設計画、顧客からの前受金、銀行の現金維持条項を考えれば、これは自由に配れる余剰資金ではない。2026年10月の短信には継続企業の前提の注記はないが、大規模な投資が続く以上、営業キャッシュフローと新株発行の関係を監視する必要がある。利益が積み上がる場合も、過去5年間に十分な配当・買い戻し実績がないため、現金の株主還元性は慎重に扱う。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
安全保障用の国産SAR衛星データには、一般の民生データと異なる戦略的価値がある。日本周辺を昼夜問わず高頻度で撮れる独自の衛星網は、政府にとって国外事業者だけに依存しないための保険となる。すでに約697億円の契約があり、単なる研究開発段階を抜けて、顧客が費用を支払う運用段階へ進んだことは大きい。軌道上で複数の衛星を運用した実績と、国産アンテナ技術は新規参入者が短期間で追いつきにくい。
2026年10月に発表した第1四半期営業利益は約6億円で、会社は翌5月期の通期営業利益予想を20億円へ上方修正した。2031年には売上300億円を目指し、そのうち海外・民間向け130億円という成長余地がある。年20機を製造できるようになれば、36機を超える衛星網も維持・拡張しやすくなる。打上げ先も米国や日本に加え欧州へ広げており、1社のロケット事業者に事業の命運を預ける状態を避けようとしている。
衛星からの一次観測画像は生成AIでは作れず、AIによる分析の自動化はむしろ使い道と顧客数を広げる可能性がある。e-GEOSとの協業、スカパーJSATを含む国内の販路、安全保障上の調達要件が重なれば、2031年の契約終了後も更新・追加案件を獲得できる。2036年に売上が800億円を超える筋書きも、製造能力と販路が予定通り整うなら排除できない。衛星の更新に資金を回しながら、後半に一定の株主還元を始められる状態まで育つ余地はある。
慎重な見方
約697億円の長期契約は巨大だが、契約満了は2031年である。2036年の企業価値を決めるのは、5年間の既存受注を消化した後に誰がいくら払い続けるかだ。2026年5月期の売上の約97%は主要3先へ集中し、海外売上はまだ計上されていない。2031年の海外・民間売上目標130億円も、今ある確約済みの受注ではない。調達政策が変われば、自社衛星を多数抱えたまま販売先を失う危険がある。
設備投資の重さも見逃せない。設計寿命5年の衛星は、造れば終わりではなく、故障や打上げ失敗を補いながら絶えず更新する必要がある。会社自身が2031年の営業利益30億円に対し、EBITDA200億円を掲げている。利益の源泉に見える巨額の償却前キャッシュフローを、そっくり株主のものと考えるのは誤りだ。物価と製造・打上げ費が上がれば、古い設備の償却費以上の更新費用がかかる。
ICEYEはすでにQPSを大きく上回る運用機数を持ち、製造能力を広げている。国内にもSynspectiveがおり、官公庁が競争を使って単価を抑える余地は大きい。AIエージェントは新しいレーダーの観測そのものは置き換えないが、画像判読、調査報告、開発設計の事務的な工程を省力化し、周辺サービスの価格を下げ得る。2026年5月期の黒字最終利益は営業外の補助金に頼る部分が大きく、増資の歴史もある。競争に遅れれば、衛星を売却して投下資金を回収することすら難しい。
どちらに重みを置いたか
契約の実在、軌道上での技術実証、国内の安全保障需要については成長側の根拠を認める。ただし10年保有では2031年の契約満了後が5年間残り、巨額の衛星更新費と海外での売上実績不足が見通しを曇らせる。上側30%に対して下側42%としたのは、この固有の契約更新・設備投資リスクによるものであり、AI代替の縮みを確率で二重計上したためではない。会計上の利益だけでなく更新後の現金を重視すると、今の時価総額には十分な安全域がない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,124 円628 億円(+ 還元の換算額還元の合計 23 円13 億円)。 今の値に割り戻すと 524 円293 億円、今との差 −61.0%、 期待の年率 −1.6%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 3,439 円1,921 億円 | 125 円70 億円 | +165.4% | +10.5% | 428 円239 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,868 円1,043 億円 | 45 円25 億円 | +42.4% | +3.6% | 344 円192 億円 |
| 中立 | 28% | 944 円527 億円 | 0 円0 億円 | −29.7% | −3.5% | 264 円148 億円 |
| やや悲観 | 26% | 304 円170 億円 | 0 円0 億円 | −77.4% | −13.8% | 79 円44 億円 |
| 悲観 | 16% | 198 円111 億円 | 0 円0 億円 | −85.2% | −17.4% | 32 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,124 円628 億円 | 23 円13 億円 | −14.6% | −1.6% | 1,147 円641 億円 |
今の株価時価総額 1,343 円750 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% 国産SARを海外にも常時供給 利益 139 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,439 円1,921 億円
日本の防衛契約が2031年以降も更新され、海外の政府機関と民間監視サービスへ高頻度画像を納められる場合である。46センチ級の解像度に加え、衛星間通信、観測地域に合わせた傾斜軌道、低遅延の納品が評価される。e-GEOSなどの代理店網が実際の長期販売契約に転じ、年20機の生産能力を使って50機を超える運用網を維持する。日本の政府予算に依存せず、衛星1機あたりの有償稼働も大きく増える。
ICEYEやSynspectiveとの競争は続くが、撮影時刻と国内情報管理の違いを理由に一定の値決め力を得る。大口の衛星試作契約は一巡しても、物理的な実証の価値は残り、開発受託も現在の案件相当を維持する。衛星の更新費用と製造能力増強を賄った後も高い営業利益を確保し、後半の営業資金から限定的な株主還元を始める。ただし量産効率、契約更新、海外営業の複数の成功が同時に必要であり、容易な筋書きではない。
- SAR衛星の画像データ提供:数量 145(有償観測換算の衛星機年(稼働機数×稼働期間×有償利用指数))× 価格 5.70(億円/有償観測換算の衛星機年(実勢画像単価ではない))→ 売上 827 億円・営業利益 231 億円。衛星機年換算145×販売単価5.70億円。稼働機数と有償利用の掛合せであり、開示されていない画像1枚の実売価格ではない。営業利益率28%には衛星の5年償却と更新に伴う費用を見込む。
- 衛星試作・開発・調査研究:数量 3.0(標準化した受託研究・試作案件の年換算件数(推定))× 価格 7.06(億円/標準化案件(1件あたり実売単価は非開示))→ 売上 21 億円・営業利益 3 億円。標準化案件3件×7.06億円。物理的な試作の需要が残り、価格は物価上昇の範囲内とする。AIエージェントの商用受注実績がないため、AIを理由に現在の案件数を超える伸びは認めない。
倍率:2036年のROEは16.11%、資本コスト8.25%、長期名目成長2.5%。普通の堀として超過ROEの半分が残るRONIC12.18%を用い、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=13.8217倍。楽観〜中立は上限そのものとする。衛星更新に伴う減価償却と固定費を営業利益率に含め、補助金の一過性利益を恒久化しない。余剰現金の二重加算なし。2027〜2036年の各年度の純利益推計合計616億円から累積還元70億円を引き、期首自己資本316.8億円に足すと862.8億円となる。
確率:大型防衛契約の更新と、2031年目標の海外・民間130億円を上回る国際展開の両方が実現する上限側の可能性。最新のe-GEOS提携を売上実績と混同せず、複数の海外受注が必要なので確率を高くしない。
やや楽観 18% 既存契約更新と海外販路拡大 利益 80 億円 · PER 13.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,868 円1,043 億円
2031年までの防衛省向け供給を予定通り果たし、契約満了時にも国産衛星のデータが重要な調達対象として残る。更新契約はすべて同じ条件ではないが、大部分を維持できる。海外販売は当初の計画より緩やかでも、イタリアの販売提携や国内パートナーの販路を通じて複数の継続案件を獲得する。衛星網は36機からさらに拡張し、実際の観測販売率も上がる。
高分解能と短時間の再観測で競争力を保つものの、ICEYEなどの大量生産による値下げ圧力は避けられない。収益は衛星機数と運用効率の増加が中心で、強い独占価格は前提にしない。設計寿命5年の衛星を常に更新するため、設備投資の絶対額は拡大する。試作契約ではAIが研究・設計の一部を省力化し、過去の案件数は回復しない。それでも画像事業の規模拡大が利益を押し上げ、財務に余裕ができた段階で小幅な還元が可能になる。
- SAR衛星の画像データ提供:数量 114(有償観測換算の衛星機年(稼働機数×稼働期間×有償利用指数))× 価格 5.30(億円/有償観測換算の衛星機年(実勢画像単価ではない))→ 売上 604 億円・営業利益 145 億円。衛星機年換算114×販売単価5.30億円。更新契約を維持し海外販売を加える。営業利益率24%には5年寿命の衛星の償却と運用費を含む。
- 衛星試作・開発・調査研究:数量 2.7(標準化した受託研究・試作案件の年換算件数(推定))× 価格 7.06(億円/標準化案件(1件あたり実売単価は非開示))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。標準化案件2.7件×7.06億円。物理試作は残るが、受託設計・調査の人月部分はAI省力化の影響を受ける。価格は物価3%の10年分を上限とする。
倍率:2036年のROEは11.73%、資本コスト8.25%、長期名目成長2.5%。普通の堀として超過ROEの半分が残るRONIC9.99%を用い、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=13.0399倍。楽観〜中立は上限そのものとし、今の市場倍率は使わない。2027〜2036年の純利益累計390億円から還元25億円を引き、期首自己資本316.8億円に足して681.8億円となる。
確率:国内防衛データの必要性と契約履行実績が強みであり、既存契約の相当部分が更新される可能性はある。ただし価格競争と海外販路の立上げ費を織り込み、楽観ほど大きくしない。
中立 28% 契約の一部更新と投資負担が共存 利益 44 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 944 円527 億円
防衛省の大型契約は2031年まで業績をけん引し、会社が掲げる36機体制もおおむね完成する。しかし契約更新では数量や単価が見直され、一部の画像調達は別の国産・海外事業者と分け合う。2026年にはなかった海外売上も生まれるが、会社が2031年に構想するほど急速には定着しない。2036年には実際の運用衛星を約50機と想定し、衛星機年換算の販売稼働が現在より高まっている。
観測能力が増した一方、ICEYEや国内のSynspectiveも衛星を増やし、画像販売単価には入札と競争による上限が生じる。設計寿命5年を踏まえた衛星の交換と打上げ費が増え、営業利益率は成熟した優良ソフト会社ほど高くならない。開発・調査研究では物理的な衛星試作を残すが、人の作業量で請ける研究や報告部分はAIエージェント代替により縮み、件数は今の7割となる。国内の重要インフラとして事業は続いても、残る利益の自己資本利回りは資本コストに届かない。
- SAR衛星の画像データ提供:数量 80.0(有償観測換算の衛星機年(稼働機数×稼働期間×有償利用指数))× 価格 4.96(億円/有償観測換算の衛星機年(実勢画像単価ではない))→ 売上 397 億円・営業利益 87 億円。実運用衛星約50機と有償利用の改善を合わせた衛星機年換算80×販売単価4.96億円。現在の3.702億円に対し価格は約1.34倍で物価並み。営業利益率22%には衛星の5年償却、地上局、通信・運用費を含む。
- 衛星試作・開発・調査研究:数量 2.1(標準化した受託研究・試作案件の年換算件数(推定))× 価格 7.06(億円/標準化案件(1件あたり実売単価は非開示))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。標準化案件2.1件×7.06億円。製作・実証という物理工程は維持するが、設計・報告など人月型の一部をAIエージェント代替で縮小し、数量は現在の0.70倍。価格は10年間の物価上昇分以内とする。
倍率:2036年のROEは7.78%、資本コスト8.25%、長期名目成長2.5%。ROEが資本コスト以下なので、再投資による超過価値を認めず、正当化PERの上限1/k=12.1212倍を用いる。衛星の更新に伴う減価償却と固定費は営業利益に反映し、補助金の一過性利益を恒久化しない。2027〜2036年の純利益累計242.5億円、累積還元0億円、期首自己資本316.8億円から2036年自己資本559.3億円となる。
確率:防衛契約と実機の運用実績は一定の確度がある反面、2031年以後の更新契約が未締結である。下に寄せる理由:売上の約97%が主要3先へ集中し、海外売上がまだないうえ、5年寿命の衛星更新費が現金を拘束するため。
やや悲観 26% 競争入札で利益が細る 利益 14 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 304 円170 億円
2031年の防衛契約満了後、国は画像データを複数企業から競争調達する。QPSは国産供給者として残るが、更新契約の範囲は縮小し、観測の単価も競合との比較で抑えられる。ICEYEの多数の稼働衛星に加えSynspectiveなど国内勢の増設が進み、高頻度観測の優位は徐々に薄くなる。海外販売網の拡大も販売量の増加より先に営業費用を増やす。
設備は過去の投資で存在していても、設計寿命5年の衛星を更新しなければサービスの信頼性を失う。減価償却が経営上の重荷となり、古い衛星の償却費より新しい機体の購入・打上げ費が高くなる。研究・開発の委託案件は大型試作案件の終了に加え、AIによる設計・報告の内製化で現在の半分程度へ減る。観測サービス自体は黒字を保つが、固定費の負担が増し、全社では資本コストを下回る小幅な純利益しか生まれない。
- SAR衛星の画像データ提供:数量 55.0(有償観測換算の衛星機年(稼働機数×稼働期間×有償利用指数))× 価格 4.55(億円/有償観測換算の衛星機年(実勢画像単価ではない))→ 売上 250 億円・営業利益 45 億円。衛星機年換算55×販売単価4.55億円。2031年の政府契約終了後に受注が減り、販売単価の伸びも物価を下回る。営業利益率18%には設備償却と運用費を織り込む。
- 衛星試作・開発・調査研究:数量 1.5(標準化した受託研究・試作案件の年換算件数(推定))× 価格 6.33(億円/標準化案件(1件あたり実売単価は非開示))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。標準化案件1.5件×6.33億円。主要な衛星試作案件が満了し、AIエージェント代替と顧客内製化で研究・報告の受託量が縮む。案件単価も物価上昇を十分に転嫁できない。
倍率:2036年のROEは3.54%で資本コスト8.25%を下回る。純利益の成長に超過価値を認めず、稼ぐ力の目安1/k=12.1212倍を使う。やや悲観の構造的な単価・数量の損失はすでに営業利益21.045億円、純利益14億円に反映した。2027〜2036年の純利益累計79億円、累積還元0億円、期首自己資本316.8億円から2036年自己資本395.8億円となる。
確率:下に寄せる理由:2031年の防衛省契約終了、民間海外売上ゼロの現状、競合増産が同時に重なることは現実的な懸念である。衛星の高い固定資産比率のため、販売額の減速が利益を大きく削る。
悲観 16% 長期契約の不更新と資産縮小 利益 −19 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 198 円111 億円
2031年の主要防衛契約は大部分が更新されず、政府は他の国産事業者や海外事業者にも撮影を分散する。ICEYEなどの量産に押され、QPSの相対的な観測頻度と価格競争力が低下する。新たな衛星を投入しても十分な顧客が確保できず、一部の老朽衛星は更新を見送る。2036年の有償撮影量は現在を上回るものの、構想していた大規模コンステレーションを維持できなくなる。
官公庁向けの試作契約も満了し、委託調査のうち人月や報告書で売っていた部分はAIエージェントと顧客の内製化で失われる。保有する衛星と専用設備の流動性は低く、売却額で投下資金を回収することは難しい。政府の補助金は定常的な利益にはならず、縮小した売上では通信費、人員、地上局などの固定費を吸収できない。損失を出しながら事業規模を整理し、資産価値と換価可能な現金が残存価値の中心となる。この状況では追加増資が必要になる危険もあるが、未公表の増資条件は株式数に織り込まず、企業収益と清算可能資産を厳しく評価する。
- SAR衛星の画像データ提供:数量 24.0(有償観測換算の衛星機年(稼働機数×稼働期間×有償利用指数))× 価格 3.80(億円/有償観測換算の衛星機年(実勢画像単価ではない))→ 売上 91 億円・営業利益 3 億円。衛星機年換算24×販売単価3.80億円。機体数が減り顧客との契約更新が失敗する。物価上昇をほとんど価格に転嫁できず、減価償却と固定費で利益率は3%に落ちる。
- 衛星試作・開発・調査研究:数量 0.9(標準化した受託研究・試作案件の年換算件数(推定))× 価格 5.80(億円/標準化案件(1件あたり実売単価は非開示))→ 売上 5 億円・営業利益 −1 億円。標準化案件0.9件×5.80億円。受託試作が一巡し、人月・報告書型の仕事はAIエージェント代替と内製化で失われる。残る試作の固定費を吸収できず赤字となる。
倍率:2036年は営業赤字・純損失のためPERで永続損失を資本化しない。現在の実績自己資本316.8億円に対し、回収しにくい専用衛星を大きく控除した回収可能資産中心のPBR0.35倍を使用し、10年後の増減した自己資本125.8億円に掛け直さない。未履行契約分を除いた換価可能現預金の床94.3億円を上回り、余剰分約17億円だけを残存事業の価値と見込む。10年間の純利益合計−191億円、還元0億円、期首自己資本316.8億円から2036年自己資本125.8億円となる。
確率:下に寄せる理由:画像契約の2031年満了、補助金の期限、専用衛星の換金難が重なる場合である。過去には打上げ失敗と衛星減損の経験があり、単なる景気後退ではない構造的敗北を無視しない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
SAR衛星の画像データ提供
国産小型SAR衛星の実測画像を、主に防衛省や画像データの提供事業者へ納品する。会社の開示する2つの売上区分のうち画像データに対応する。
| 数量有償観測換算の衛星機年(稼働機数×稼働期間×有償利用指数) | 価格億円/有償観測換算の衛星機年(実勢画像単価ではない) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 6.0 | 3.70 | 22 | 6 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 4.96 | 397 | 87 |
取り方:2026/05の会社開示「画像データ提供」売上2,221百万円を正とする。1枚当たり販売価格・実際の年間有償撮影数は非開示。年度中の稼働立上げを考慮し有償観測換算の衛星機年を仮に6とし、22.21億÷6=3.702億円/機年と逆算した数量・価格の代理変数である。1機当たり最大日160画像は撮影能力の目安で販売枚数ではない。衛星寿命5年、国産衛星の撮影とデータ納品が物理的な価値。営業寄与6.2億円も非開示の試算で、R&D寄与0.5億と本社・共同費−15.03億を合わせて実績の営業損失−8.33億に一致させる。正式な報告セグメントは単一である。
衛星試作・開発・調査研究
防衛省、JAXAなどへ試作衛星、設計・軌道上実証の成果や調査研究を納める。物理的な衛星製造とAIが省力化し得る受託設計・報告業務が混在する。
| 数量標準化した受託研究・試作案件の年換算件数(推定) | 価格億円/標準化案件(1件あたり実売単価は非開示) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 3.0 | 5.27 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2.1 | 7.06 | 15 | 1 |
取り方:会社開示の2026/05「開発・調査研究」売上1,582百万円。主力の防衛省向け試作衛星2機とJAXAなどの研究群を標準案件1件相当とみなし、合計3件を推計。15.82億÷3=5.273億円/標準案件。受託案件ごとの原価・値段・件数は未公表でありこの単価は比較用の代理変数。営業寄与0.5億円は仮配分。AIエージェント代替の判定は、衛星製作2案件相当は現場の体で代替されず、報告・設計を含む約1案件相当が工数単価に近いものとする。2036年中立の数量2.1件=現在3件の0.70倍、価格7.06億円=現状の1.34倍以下。これは業務のAI省力化と2028年ごろまでの試作契約一巡を織り込む。生成AI商用売上の金額開示がないため楽観でも現在数量を超えない。
リスクと懸念
防衛省契約の2031年満了
2026年に締結した約697億円の画像データ取得契約は、2031年までの重要な収入を具体化した。しかし、2032年以降の発注枠、競争入札の条件、契約更新単価はまだ決まっていない。現在の売上の大部分が政府関連の少数先に集中するため、契約満了は単なる成長率鈍化でなく衛星網の過剰設備化につながりうる。
衛星の5年寿命と更新費
自社の衛星は5年の設計寿命を前提とする。36機の体制を作った後も、平均して毎年相当数を入れ替えなければ撮影頻度を維持できない。新しい製造・打上げ費は物価上昇や宇宙輸送の供給制約で増える一方、既存機の減価償却額は過去の取得原価で計上される。会計上の営業利益が増えても自由現金が生まれない可能性がある。
海外勢の大量生産と国内競争
ICEYEは2026年7月時点でQPSの数倍の衛星を運用し、生産能力拡大を進める。国内のSynspectiveも打上げを継続しており、官公庁が複数の画像取得先を育てる動機は強い。国産であることだけで高い単価が保証されるわけではなく、再訪時間、納品速度、信頼性、顧客の地理的要件で優位を示し続けなければならない。
打上げ失敗・軌道上故障・許認可
2022年のイプシロンロケット失敗で衛星2機の軌道投入ができず、その後も個別衛星の減損が発生した。今後の打上げ遅延、電波干渉、宇宙ごみとの衝突、地上局の事故、電波やリモートセンシングの規制変更が重なると、販売画像を予定どおり納められない。契約上の信頼性を損なうことは次期入札にも波及する。
AIエージェント代替
衛星が取得する新しい地表の実測データそのものはAIエージェントには代替できない。しかし画像の判読、報告書作成、受託の一部設計業務は顧客側が自動化でき、分析サービスや人月型研究の販売数量・単価が縮む可能性がある。研究・試作区分の中立数量を今の0.70倍、長期成長を名目0%相当に抑え、この影響を資本コストの寿命項に重ねていない。
補助金・資金調達・株式希薄化
2026年5月期の最終黒字は補助金と共同研究収入に大きく依存していた。政策基金の採択期間が終わった後に収入が続くとは限らない。2026年3月の第三者割当増資は必要な資金を確保した反面、従来株主の取り分を薄めた。約500億円の建設計画と銀行の財務制限条項の下で、資金繰りが悪化すれば追加借入や増資が必要になりうる。
画像の売価と案件別採算の非開示
1枚当たりの画像売価、契約別利益率、観測の有償稼働率、衛星1機の実質的な保守・更新費は公開されていない。会社は会計上単一セグメントであり、画像提供と開発受託の利益内訳も開示しない。このため衛星機年や標準案件数は代理変数にとどまり、想定した値決め力や固定費の下がり方が異なれば長期価値は大きく変わる。
今後の分かれ目
- 2031年3月の契約満了前に、防衛省の次期画像調達契約が長期かつ現契約に近い採算で締結されたら
- 2036年の販売衛星機年と価格の確度が上がるため、中立からやや楽観へ確率を移す。契約額だけでなく衛星更新費を負担した後の利益率を確認する。
- 2030年までに36機を実運用し、年20機の製造能力を安定確保したら
- 観測間隔と故障時の冗長性が改善する。売上と同時に増設投資・衛星入替えを差し引いた自由現金が増える場合に限り、楽観側の価値を引き上げる。
- 海外・民間顧客への売上が2031年に130億円に近づき、複数年更新契約が確認できたら
- 現在ほぼ国内顧客に偏る集中リスクが下がるので、販売単価の仮定と画像データの長期数量を上方修正する。単発の販売代理店契約では見通しを変えない。
- 稼働衛星の5年後の更新費用が、古い衛星の償却額を恒常的に上回り始めたら
- 減価償却では表れない再投資の現金負担を大きく見直す。会計利益が計画を達成しても、還元原資が減るので全シナリオの価値を下げる。
- ICEYEやSynspectiveの衛星増設により次期入札で平均画像販売単価が下がったら
- 撮影需要の数量成長だけでは利益を補いきれないとして、やや悲観と悲観を厚くする。衛星1機当たりの有償売上と顧客更新率を合わせて検証する。
- 補助金終了後も営業キャッシュフローが恒常的な更新投資を上回り、無増資で純現金を維持できたら
- オーナー利益と増分ROICの裏付けが強まる。資本の株主還元方針も確認したうえで、余剰現金の切り出しと本質価値の上方修正を検討する。
見ておくもの
- 防衛省約697億円の契約の年度別売上認識と2031年以降の次期調達公募・受注
- 実運用・商用運用の衛星機数、打上げ失敗率、5年後の置換機数と再訪時間
- 2030年36機・年20機の製造計画の達成率と製造・打上げの実際の単価
- 画像データ提供と開発・調査研究の売上内訳、実際の1機当たり有償観測収入
- 海外・民間売上の計上額と長期契約比率、e-GEOS等を通じた継続案件
- 減価償却額、維持更新投資、補助金を除いた営業キャッシュフロー、定期預金・有利子負債
- ICEYE・Synspectiveの稼働衛星数と防衛・商用案件の受注状況
- 借入コベナンツ、追加増資、新株予約権行使、配当・自社株買いの実績
倍率と資本コストの決め方
分析の順番は、画像データの稼働衛星換算機年と受託開発の標準案件数から2036年の数量・単価を組み立て、更新投資に伴う償却と固定費を差し引いた純利益を先に計算した。倍率は資本コスト8.25%と長期の名目成長2.5%、その時点のROEから得る正当化PERの上限で決め、現在や競合の市場PERを使っていない。中立のROEは資本コストを下回るのでPERは1÷8.25%の12.12倍とした。2026年3月の増資は既存株数に含み、追加希薄化を重ねていない。現預金には定期預金が既に含まれるため二重加算を避け、建設計画で使う資金を余剰資産に数えない。2031年以後の更新投資の現金流出を会計純利益と同一視しない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3%と株式リスクプレミアム4.5%を合わせた7.5%に、循環・価格決定力・純現金を踏まえた品質0.75%を加算する。赤字の実績はあるが2027年1Qは営業黒字で資金余力もあり、継続企業の前提の注記がないので特別上乗せはしない。同領域のSynspectiveよりも資金手当と大型契約が具体的である。