結論
チームスピリットは、勤怠と工数の記録を軸にした業務ソフトを大企業へ提供する会社である。筆者は事業の必要性を認めるが、現在の時価総額約57億円にはやや割高な部分が残ると判断する。顧客の労働時間を記録する義務は消えない。しかし従業員一人ずつが画面を操作し、人数に応じて料金を払う仕組みまで10年後も保たれるとは限らない。
2026年8月期には契約ライセンスが約79万ID、年間経常収益は50億円を超えた。月次グロス解約率0.41%と、大企業向けの成長はこの会社の強みだ。半面、ID数の伸びより経常収益の伸びが小さく、顧客当たりの利用IDが増えても平均単価が下がる現象が起きている。Salesforceのセキュリティ変更が商談を遅らせた事実も、自社だけで課金条件と導入速度を支配できないことを示す。
会社は2028年8月期に売上78億円、2030年にはARR100億円を目指す。これが実現すれば利益は大幅に増えるが、2026年10月に提供を始めたAI接続機能は追加料金なしで、AIを新たな収益源にした実績はまだ示されていない。中立の10年後にはライセンス数量と導入作業が縮み、現金の蓄積と株主還元が事業の縮小を一部埋めるとみる。
一方、悲観でも現在の純現金約29.9億円をそのまま失うわけではない。2036年までに顧客の前払契約が減ることと、後半期の赤字、ソフトウェア更新投資、株主還元を区別して現金を追う必要がある。悲観時の床はこれらの流出と残る履行義務を反映した12億円とし、やや悲観では前半期の利益蓄積が残るため床を約30億円とする。確率加重の現在価値は約41億円、基準時価総額との差は約マイナス28%である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって価値があるのは、利用者が勤怠を記録し続けることそのものではない。その記録が他社に移されず、値上げ後も顧客が料金を払い続け、必要な開発費を差し引いて現金が残るかである。この会社の月次解約率の低さは第一の条件を支える。しかし席数が増えても平均単価が下がる現実は、第二の条件の弱さを示している。
大企業では就業規則の設定が複雑で、システムの入れ替えは一時的な混乱を生む。安定した顧客収入は優れた性質だが、独自のデータベースを他社が複製できないわけではない。会社はTeamSpirit MCPを通じてAIの時代にも記録の保管場所になることを目指す。しかし、利用者がAIから直接申請できる便利さは既存ID課金の縮小要因にもなる。防衛策が新たな有料サービスに転換できたかを見るまでは、将来の高成長を株主利益として先取りしたくない。
財務上の強さも吟味が必要だ。2026年8月期の現預金は約35億円で、借入を控除した純現金は約30億円ある。これは疑いなく価値のある資産であり、将来の赤字を一切想定しないまま恣意的に減額すべきではない。一方、同社はかつて利益が出ない時期を経験し、稼いだ資本の再投資利回りが資本コストを一貫して超えたとは言えない。大量の自社株買いと今後の取得プログラムは改善だが、借入を伴う還元には節度がいる。
筆者が買い付け価格より先に確かめたいのは、顧客1社当たりの生涯利益が増えているか、そして有料AI機能が売れ始めたかである。現状の予測可能性では本物の堀に払う高い値段は認めにくい。悲観時に現金が減るという予測にも具体的な使途と残高が必要であり、単に低い株価を説明するため現金を捨ててはならない。純現金と低解約率を尊重しても、適正価値と時価総額に十分な安全域がないという判断になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、企業が契約する人数に連動する月額・年額のライセンスである。TeamSpiritは勤怠、工数、経費精算、労務、人材管理をSalesforce基盤上で組み合わせる。2026年8月期のライセンス売上は約46億円で、全社売上の4分の3を占めた。初期導入よりも更新が続く顧客基盤が価値の中心だ。
注目すべきは顧客の規模である。契約ID約79万のうち大企業向けは約44万で、3年前の約18万から伸びた。エンタープライズのARRも約22億円となり、複雑な就業規則や承認経路に合わせられることが購入理由になっている。一方、残る約35万IDの中小顧客は標準化された低価格ソフトと競争する。大企業向けはID単価が低く、規模が拡大すると全社の平均単価が下がりやすい。
第二の収益源は導入・設定・運用支援である。2026年8月期には約15億円を売り上げ、前年から大きく伸びた。大企業への導入ほど設定や移行が複雑で、専門家の作業が必要になる。ただし人の工数に依存する仕事は、AIによる設定書作成や検証の自動化で人数と案件時間が減りうる。継続契約のプレミアムサポートも一部混じり、この売上をすべて高い利益率のSaaSとみなすべきではない。
2026年10月のTeamSpirit MCPは、外部AIから勤怠や工数の記録を呼び出す接続機能だ。既存の記録基盤をAI時代にも使ってもらう守りの製品であり、契約者には追加料金なく提供する。利用者が自社の操作画面を通らなくてもサービスが働く反面、追加収益なしで機能開発と維持費を負担する。記録の正本を提供する可能性はあるが、その事実だけで独占的な値上げ力が生まれるわけではない。
優良さと弱いところ
守りの強さは、低い解約率と大企業の設定の複雑さにある。2026年8月期末のグロス月次解約率は0.41%で、既存顧客の追加契約を加味したネット解約率はマイナス0.24%だった。勤怠の記録は監査や法令対応に使われ、労働時間や承認履歴の移し替えを避けたい顧客は多い。事業が突然消える可能性は、一般的な画面作業ソフトより低い。
しかし、この強さは自社だけが持つ独自データの優位とは異なる。記録は顧客のものであり、競合も同じ労働法制へ対応できる。大企業の導入に年単位かかるという実績や、法改正のたび値上げが通ったという独立した開示は確認できない。したがって解約率が低いという証拠だけで、10年後も価格を上げ続けられる「記録の正本」の特別な堀として扱わない。
資本効率には改善の余地が大きい。売上は伸びてきたが、2022年から2024年までは3期続けて営業赤字だった。2025年から黒字に戻り、2026年の営業利益率は7%台に改善したものの、過去10年のROE中央値は低い。Salesforceへのプラットフォーム依存と、大企業向け支援の人件費は利益率の上限を制約する。
財務では現預金約35億円がある一方、銀行借入は約5.5億円、前受の繰延収益は約23億円ある。現時点の純現金約29.9億円は実在する大きな資産だが、顧客契約が縮小する場合には先に受け取った売上代金が取り崩され、新たな入金が減る。現金残高と会計上の自己資本、顧客への履行義務を分けて考えることが長期の安全性を測るうえで重要だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の勤怠管理SaaSは、法律への対応と紙・表計算からの移行によって伸びてきた。会社が引用する富士キメラ総研の資料では、2026年度の勤怠SaaS/PaaS市場は約388億円、2030年度は約510億円となる。勤怠、工数、経費、労務、人材管理など同社が対象とする7分野のSaaS市場は2026年度に約3,094億円、2030年度に約4,526億円と見込まれる。ただし市場全体の成長率を、個々の席課金企業の10年後の成長率と同一視できない。
数量で最大の競争相手はヒューマンテクノロジーズのKING OF TIMEだ。2024年度の勤怠SaaS利用IDシェアは28.2%で、2026年には450万超の利用IDと7万超の企業を抱える。月額300円の料金が幅広い企業に浸透し、他にもジョブカン、freee、マネーフォワード、奉行クラウドなどが勤怠と人事・給与を束ねようとしている。チームスピリットの79万IDを2024年度の市場総ID約1,365万と単純比較すると約5.8%だが、基準年が違い勤怠以外の製品も含むため、実際の勤怠シェアの上限に近い参考値にすぎない。売上金額での厳密な競合別シェアは公開資料から確定できない。
将来の市場では、大企業が労働時間を保存する必要と、人数分の画面ライセンスが必要であることを分けて考えたい。前者は法規制で残る。後者はAIエージェントやERPの包括料金へ移りやすい。2030年度までの市場調査はクラウド移行という追い風を表すが、2036年まで単価の値下がりとID統合が止まる保証はない。
会社はSalesforce上の企業向け設計で差別化する一方、2026年の同社セキュリティ強化で営業活動が実際に長期化した。外部プラットフォームのルールが変わるたびに導入費が上がり、顧客の投資判断も遅れる。市場シェアが高くない同社には、法令対応の専門性を深めながら価格競争の波を避ける難しい10年になる。
資本政策と M&A
2025年に公表した中期計画を2026年10月の決算説明資料でも維持した。2028年8月期の目標は売上78億円、ARR70億円、営業利益12億円、営業利益率15%である。2030年の中長期ビジョンはARR100億円と営業利益率20%だ。2030年の東証グロース市場の時価総額基準100億円にも言及しているが、業績の目標と市場が付ける時価総額は別問題である。ROE・配当性向・DOE・総還元性向の数値目標は示されていない。
還元面では2026年1月に約6億円の自社株買いを行い、発行済株式数から自己株を除いた株数を約8%減らした。さらに2026年10月14日に上限1.5億円、45万株の買い付けを決議した。これは実施済みではなく、今後の取得枠である。配当は2027年8月期予想もゼロで、自社株買いは余裕資金が生じた時に行う方針だ。2025年に導入した株主優待は、2027年からポイント付与を半減する。年間の会社負担は従来約0.25億円から約0.125億円へ減ると推定し、10年間の株主還元に含めた。
2024年末にはワークライフログを買収し、2025年に吸収合併した。PCログの解析技術を既存製品へ組み込む小型案件だが、取得額に対する増分利益率を判断できる開示は乏しい。2026年の自社株買いを新しい銀行借入で一部賄った点も見逃せない。今後の余剰現金を株主に戻す姿勢は評価する一方、成長を補うM&Aが資本コストを超える利益を生むかは監視する。
悲観の資本配分では、過去に実行した約6億円の自社株買いを将来の支出として二重に数えない。2036年までの新たな還元だけを期間還元に入れ、前受収益の取り崩しや赤字による運転資金の流出と分けて計算する。現金を残す経営と、事業再編まで株主へ多くを戻さない経営では資産価値の帰属が違うため、悲観時の床は将来の支払いを引いた期末残高に基づく。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
大企業の勤怠記録は毎日発生し、企業は法定労働時間や休暇の記録を保管する必要がある。TeamSpiritは約44万のエンタープライズIDを抱え、月次グロス解約率も0.41%である。新規ライセンス獲得が鈍っても、今ある顧客から長く収益を得られる。2026年8月期の営業利益は前年から大きく改善し、顧客企業が増えるほど導入ノウハウが蓄積される。
勤怠や工数は単なる画面ではなく、従業員の勤務実績を残す記録の保管先だ。AIが代わりに入力するようになっても、データを保存し、規程を照合し、監査に備える基盤が必要になる。TeamSpirit MCPを無償で公開したことは、AIに顧客接点を奪われず、外部エージェントから利用される基盤へ移るための先手と評価できる。ワークライフログの解析技術も生産性の可視化に役立つ。
会社の2028年売上78億円、営業利益12億円という目標には、近年のエンタープライズARR増加と人員増を抑えた生産性改善という裏付けがある。達成すれば株主利益は現在より大幅に増える。さらに手元現金から自社株を買い戻せば、残る株主の持分価値は増す。成長が一巡したあとでも、大企業向け設定と継続利用が十分な利益率を守る可能性はある。
特に慎重に扱うべきなのは現金だ。直近の純現金約29.9億円は事業の成長によって積み上げてきたものであり、将来の競争悪化が起きなければこれを大きく減らす必要はない。高い解約抑制力を背景に既存顧客の前払契約が維持されれば、赤字と契約負債の取り崩しが同時に起こる悲観の現金流出は回避できる。その場合、株主へ戻せる価値は中立を超えて残る。
慎重な見方
勤怠の記録を残す義務は事業の需要を支えるが、人数分のSaaSライセンスが不可欠であることを保証しない。2026年に契約IDは19.2%増えたが、ARRの伸びは13.5%にとどまり、平均単価はすでに低下している。エンタープライズに移るほどID単価が低くなるなら、契約数の伸びだけを見ても儲けは増えない。低解約率は良い性質だが、10年後の料金交渉力や独占性の証明ではない。
最大の競合KING OF TIMEは月額300円で多機能なサービスを提供し、Salesforceや人事ERPがAIエージェントを軸に申請と記録を統合すれば、個別の勤怠ソフトを使う理由はさらに薄れる。会社自身もAI接続機能を追加料金なしで出しており、AIの存在が有料の売上増につながった事実はまだない。
売上の約4分の1は顧客ごとの導入・運用支援である。AIが設定、移行テスト、問い合わせ処理を自動化すると、顧客が買う工数が減る。2022年から3年間の営業赤字は、売上が伸びても人件費と開発負担のため利益が確約されないことを示した。2026年には借入を伴う自己株買いを実行しており、資本配分の安全性は現預金の額ほど強固ではない。会社の2030年目標を本質価値の前提にするには証拠が足りない。
ただし財務の床については現在の純現金約29.9億円を出発点とすべきである。構造的な敗北では、当初数年の利益が残っても、顧客前払契約が縮小することで現金の回収が細り、赤字と更新投資が後半期の現金を消費する。最終的な清算可能額が現在の純現金を下回るのは、このような具体的な現金移動が生じる場合に限られる。売上半減という理由だけで自動的に現金を半減させてはいけない。
どちらに重みを置いたか
勤怠記録の継続性と低解約率では強い見方に説得力がある。しかし席数当たり単価の低下、売上約4分の1を占める工数収入、Salesforceによる商談遅延は、会社固有の弱さとして重い。中立ですでに数量を縮めたうえで、確率は楽観側30%に対して悲観側38%と慎重側を8ポイント厚くした。
悲観の床は現在の純現金約29.9億円と2036年の期末残高を混同せず、期間利益、前受収益の減少、更新投資、株主還元、期末に残る履行義務を別々に追った。やや悲観の価値は現金の残存を重視して従来より引き上げたが、悲観では10年間に現金を消費する筋書きが成立する。確率加重現在価値は約41億円で基準時価総額より約28%低く、評価はやや割高となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 470 円72 億円(+ 還元の換算額還元の合計 81 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 267 円41 億円、今との差 −25.2%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 996 円152 億円 | 171 円26 億円 | +226.9% | +14.0% | 117 円18 億円 |
| やや楽観 | 20% | 784 円119 億円 | 125 円19 億円 | +154.7% | +10.8% | 182 円28 億円 |
| 中立 | 32% | 474 円72 億円 | 92 円14 億円 | +58.6% | +5.2% | 181 円28 億円 |
| やや悲観 | 24% | 211 円32 億円 | 30 円5 億円 | −32.7% | −4.1% | 58 円9 億円 |
| 悲観 | 14% | 79 円12 億円 | 16 円3 億円 | −73.3% | −13.2% | 13 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 470 円72 億円 | 81 円12 億円 | +54.3% | +4.8% | 551 円84 億円 |
今の株価時価総額 357 円54 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 大企業に定着し、数量を守り切る 利益 10 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 996 円152 億円
2027年から2030年にかけての大企業開拓は計画に沿って進み、その後はAIによる画面操作の減少を既存顧客の複数製品利用で補う。勤怠記録の保管と監査対応は残り、Salesforceの顧客基盤との連携を失わないため、2036年でも現在並みのライセンスIDが維持される。小規模向けでも競争が激しいが、値引きと高機能製品への移行を組み合わせて契約数を守り、導入支援の案件数も現状程度を維持する。
TeamSpirit MCPはAIエージェントと既存の記録基盤を結ぶ接続手段となり、利用継続に寄与する。ただし現在は無償提供であるため、その機能を独立した新しい有料売上として計上しない。2025年に買収したワークライフログのログ解析技術も製品内で生かし、追加の大型買収による未確認の収益は織り込まない。
既存プラットフォームの利用料を払いながらも人件費と開発費の生産性が上がり、営業利益率は歴史的な良い時期を上回る。経営陣は現金を積み上げるだけでなく自社株買いで一部を株主に返し、株主に帰属する利益と残余現金が双方残る10年になる。
- エンタープライズ向け勤怠・工数等のID課金:数量 441,000(期末有償ライセンスID数(ID))× 価格 5,214(1ID当たり年間認識売上の推定額(円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 6 億円。大企業のID維持と価格の持続:数量は2026年比1.00倍、名目価格は1.15倍。
- スモール・ミッド向け勤怠・工数等のID課金:数量 350,341(期末有償ライセンスID数(ID))× 価格 8,523(1ID当たり年間認識売上の推定額(円、名目))→ 売上 30 億円・営業利益 10 億円。中小企業のID減少と低価格競争:数量は2026年比1.00倍、名目価格は1.15倍。
- プロフェッショナルサービス・導入運用支援:数量 178(年間導入・既存顧客拡張プロジェクト換算件数(推定件))× 価格 0.11(1案件換算の年間売上(億円、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。AI代替を受ける導入・運用支援案件:数量は2026年比1.00倍、名目価格は1.34倍。
倍率:資本コストk8.25%、AIエージェント代替後の2036年以降の名目成長率g=0%。残存する競争優位は普通(超過ROEの半分が残る)で、g=0なら正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=1/k=12.121倍が上限。強気でも利益の再投資成長を倍率に二重計上しない。2036年の余剰現金44億円はその税後利息を利益から年1.4%相当除外して額面で別に加える。
確率:2026年の大企業ライセンスが堅調でもAI連携は無償で、名目値上げと企業の利用権数維持を同時に10年達成するには技術・営業・費用管理の継続的成功が必要なため10%とする。
やや楽観 20% 解約を抑え、周辺製品で単価を守る 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 784 円119 億円
大企業で積み重なった勤怠・工数データは急には移し替えられず、企業固有の就業規則に合わせたシステム設定も簡単には複製できない。新規顧客の獲得より既存顧客の継続とマルチプロダクト化が収益を支えるため、AIエージェントによって操作IDが減る局面でも企業向けの契約基盤はおおむね残る。反面、小規模顧客はKING OF TIMEや周辺人事ソフトへの切替えが増え、ID数は緩やかに落ちる。
AI連携機能は外部エージェントとの接点を守る役割を果たすが、それだけで新しい単価が生まれるとは見込まない。規制対応と企業固有の設定の難しさが料金を支え、製品群の組合せを通じて名目単価を少しだけ高められる。導入作業の一部は自動化で消えるものの、大企業の特殊な例外処理は残るため、専門家による支援需要はなお存在する。
営業利益は基幹ライセンスの比重上昇と社内生産性改善によって大きく増える。過去のような無配だけの体制から自社株買いが定着し、成長のための支出と株主への現金還元を両立できる筋書きだ。
- エンタープライズ向け勤怠・工数等のID課金:数量 423,360(期末有償ライセンスID数(ID))× 価格 5,169(1ID当たり年間認識売上の推定額(円、名目))→ 売上 22 億円・営業利益 6 億円。大企業のID維持と価格の持続:数量は2026年比0.96倍、名目価格は1.14倍。
- スモール・ミッド向け勤怠・工数等のID課金:数量 322,314(期末有償ライセンスID数(ID))× 価格 8,375(1ID当たり年間認識売上の推定額(円、名目))→ 売上 27 億円・営業利益 8 億円。中小企業のID減少と低価格競争:数量は2026年比0.92倍、名目価格は1.13倍。
- プロフェッショナルサービス・導入運用支援:数量 151(年間導入・既存顧客拡張プロジェクト換算件数(推定件))× 価格 0.11(1案件換算の年間売上(億円、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。AI代替を受ける導入・運用支援案件:数量は2026年比0.85倍、名目価格は1.30倍。
倍率:k8.25%、g_long=名目0%、堀は普通としてRONICを計算する。g=0につき正当化PERの上限は12.121倍で、上限のまま利用する。余剰現金38億円について税後の受取利息1.4%分を純利益から控除してから、現金38億円を別途加算する。
確率:グロス月次解約率0.41%と大企業向けの高い成長実績を評価する。ただしAIエージェントで画面課金が脅かされるため、企業席数のほぼ維持は中立より強い前提で20%。
中立 32% 中立:AIが操作席を減らし大企業案件が残る 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 474 円72 億円
直近の大企業向けライセンス増加は本物であり、2027年から数年は会社計画の増収が続く。しかし2030年代には勤怠の入力・承認・経費申請をAIエージェントが代行し、人ごとに画面の利用権を売る仕組みが縮み始める。法令上の勤怠記録の保全は必要でも、その管理システムを現在と同じ会社・同じID数で使い続ける必然性はない。
大企業向けは就業規則の設定や過去データとの連続性が歯止めとなるが、旧来の中小企業向けは低価格製品との競争で契約が細る。全社ID数は現在より約2割減り、1ID当たり名目価格も10年の物価上昇には届かない。プロフェッショナルサービスは生成AIによる設定・検証自動化に押されて案件数が約3分の2となり、専門人材の単価上昇でも売上減を補えない。
会社が掲げる2030年のARR100億円、営業利益率20%は成長への意思を示すが、その達成を中立の価値に先取りしない。金利2%の環境で現金の受取利息は増えるが、銀行借入の利払いも増える。営業利益は黒字を維持し、余った現金の一部は自社株買いに回る一方、高い成長率が永続することはない。
- エンタープライズ向け勤怠・工数等のID課金:数量 388,080(期末有償ライセンスID数(ID))× 価格 5,033(1ID当たり年間認識売上の推定額(円、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 5 億円。大企業のID維持と価格の持続:数量は2026年比0.88倍、名目価格は1.11倍。
- スモール・ミッド向け勤怠・工数等のID課金:数量 245,239(期末有償ライセンスID数(ID))× 価格 8,004(1ID当たり年間認識売上の推定額(円、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 4 億円。中小企業のID減少と低価格競争:数量は2026年比0.70倍、名目価格は1.08倍。
- プロフェッショナルサービス・導入運用支援:数量 116(年間導入・既存顧客拡張プロジェクト換算件数(推定件))× 価格 0.10(1案件換算の年間売上(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。AI代替を受ける導入・運用支援案件:数量は2026年比0.65倍、名目価格は1.25倍。
倍率:k8.25%、長期g0%で席課金の成熟後の持続可能成長を見積もる。新規投下資本の利回りはROEをkへ近づけるが、g=0なので正当化PER上限は1/k=12.121倍となる。AIリスクによる数量の減少は既に利益に、寿命による成長力はgに入れたため、PERを再び裁量で圧縮しない。余剰現金30億円を利息控除後に別建て加算。
確率:2026年実績のライセンス79.1万IDと無償のTeamSpirit MCPを起点に、当面の成長と2030年代の席課金侵食を相殺する中心事象と判断して32%。
やや悲観 24% 低価格競争と導入作業の自動化が進行 利益 1 億円 · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 211 円32 億円
勤怠管理自体の必要性はなくならないが、従業員が直接ログインして日々操作する役割はAIエージェントが徐々に肩代わりする。大企業での既存の情報基盤は残るものの、システムごとのID料金は削られ、KING OF TIMEや人事ERPとの一括契約に置き換わる顧客が増える。Salesforceの設定変更やプラットフォーム利用料も利益を圧迫する。
導入支援ではAIが設定書・テスト・移行プログラムを作り、外部の専門家を雇う案件が減る。新製品を追加しても個別の小さな機能は無料の標準機能と競合し、販売と開発の固定費が残るため利益率は低くなる。経営陣は買収で成長を取り戻そうとするが、取得額以上の稼ぎを生むとは限らない。
それでも2027年から2030年前後までの既存契約は利益を生み、後半に収益性が落ちても期間全体では黒字を確保する。前受契約の残高も縮小するが、顧客基盤は半分以下に崩れるわけではない。新たな自社株買いは抑制され、株主優待など小さな還元と現金保全が続く。事業の高成長性は失われるが、株主に残る資産は現在の純現金を起点に考えた相応の金額になる。
- エンタープライズ向け勤怠・工数等のID課金:数量 317,520(期末有償ライセンスID数(ID))× 価格 4,715(1ID当たり年間認識売上の推定額(円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。大企業のID維持と価格の持続:数量は2026年比0.72倍、名目価格は1.04倍。
- スモール・ミッド向け勤怠・工数等のID課金:数量 224,218(期末有償ライセンスID数(ID))× 価格 7,560(1ID当たり年間認識売上の推定額(円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 3 億円。中小企業のID減少と低価格競争:数量は2026年比0.64倍、名目価格は1.02倍。
- プロフェッショナルサービス・導入運用支援:数量 97.9(年間導入・既存顧客拡張プロジェクト換算件数(推定件))× 価格 0.10(1案件換算の年間売上(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。AI代替を受ける導入・運用支援案件:数量は2026年比0.55倍、名目価格は1.18倍。
倍率:2036年の自己資本ROEは約2.2%でk8.25%を下回る。成熟後の稼ぐ力のPER上限1/k=12.12倍を超えない9倍とし、営業基盤の再建・追加投資の負担が残る弱い事業価値を表す。現在価値の床に利用するのは2036年までの税後現金と履行義務の残りであり、今の純現金を無条件に差し引くわけではない。期末の自由な現金30億円は税後利息を純利益から控除して別に加算する。
確率:下に寄せる理由:主力が人単位のライセンスであり、売上約4分の1が工数依存の導入支援で、Salesforceの一方的な仕様変更が実際に商談を遅らせた。中立で数量縮小を入れたうえで、会社固有の集中リスクとして24%。
悲観 14% 構造的敗北:席数半減と営業赤字 利益 −3 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 79 円12 億円
Salesforceを核とする人事・勤怠管理と外部AIエージェントの連携が標準化し、個社別の画面・申請機能に独立した料金を支払う企業が減っていく。KING OF TIMEを含む低価格の勤怠基盤や給与・ERP大手が必要な記録保全をまとめて提供し、チームスピリットは操作席数と案件数の両方でほぼ半分を失う。顧客企業の内部でAIが設定や運用を行うようになれば、従来の導入支援も縮小する。
2027年から2030年には既存の年間契約が利益を生み、4年間の純利益は累計で約10億円に達する。しかし2031年以降にはシェアの低下とID単価の悪化が重なり、2036年までの6年間では約9億円の累積純損失となる。収益は期間全体でわずかな黒字を残すだけで、2036年時点では恒常的に赤字となる。これは一時的な景気の谷ではなく、課金の仕組みと価格決定力が失われた状態である。
同時に、かつて先払いで受け取っていた年間契約の新規入金が細り、繰延収益の残高も低下する。これによる現金の流出は会計上の純損失と別に起こる。さらに最低限のソフトウェア更新投資は続けなければならず、赤字になったからといって支出をすべて停止することはできない。追加の大型買収は行わず、株主還元は大幅に縮小する。
2036年には一定の現金が残るものの、その全額を株主が直ちに取り出せるわけではない。年間契約で先受けしたサービスを提供するためのクラウド利用料や支援費用を払う必要がある。のれんや税効果を売却可能な資産として数えず、残る純現金から期末時点の履行費用を控除した価値が、構造的に負けた場合の下支えになる。
- エンタープライズ向け勤怠・工数等のID課金:数量 220,500(期末有償ライセンスID数(ID))× 価格 4,534(1ID当たり年間認識売上の推定額(円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。大企業のID維持と価格の持続:数量は2026年比0.50倍、名目価格は1.00倍。
- スモール・ミッド向け勤怠・工数等のID課金:数量 182,177(期末有償ライセンスID数(ID))× 価格 7,041(1ID当たり年間認識売上の推定額(円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。中小企業のID減少と低価格競争:数量は2026年比0.52倍、名目価格は0.95倍。
- プロフェッショナルサービス・導入運用支援:数量 89.0(年間導入・既存顧客拡張プロジェクト換算件数(推定件))× 価格 0.08(1案件換算の年間売上(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 −1 億円。AI代替を受ける導入・運用支援案件:数量は2026年比0.50倍、名目価格は1.00倍。
倍率:2036年には営業赤字となるため利益倍率を使わない。2036年自己資本12.00億円にPBR1.00倍を掛け、時価総額12.00億円とする。根拠は帳簿のPBR底値ではなく、2026年の純現金29.89億円から2036年までの会計上の累積利益、前受契約の減少、現金投資、還元、償却費の戻し、2036年末に残る履行費用を一つずつ通した清算可能な現金約12.00億円である。現金が減ることを説明せず今の純現金29.89億円を切り下げる扱いはしない。
確率:構造的な失注と料金体系の破壊には時間を要する一方、2022〜24年の営業赤字の実績があり、高い固定費を抱えるため14%。現在の純現金を起点とし、前半期に得る利益、後半期の赤字、契約前受金の減少と現金投資を明示的に追う。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エンタープライズ向け勤怠・工数等のID課金
従業員1,000人以上の大企業向け、Salesforce基盤上の勤怠・工数・申請・関連製品のライセンス。会社開示の事業セグメントではなく契約属性別に切り分けた分析上の収益単位。
| 数量期末有償ライセンスID数(ID) | 価格1ID当たり年間認識売上の推定額(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 441,000 | 4,534 | 20 | 4 |
| 10 年後 中立 | 388,080 | 5,033 | 20 | 5 |
取り方:2026年8月期の会社開示は全社791,341ID、エンタープライズ約44.1万ID、エンタープライズARR約21.8億円、全社ARR50.11億円、実現ライセンス売上45.96億円。19.99億円は年間ライセンス売上を期末ARR構成比21.8/50.11で按分した分析上の推定。IDは期末残高なので年間の平均認識額と一致せず、実際の大企業向け売上・利益は非開示。営業利益3.60億円も全社営業利益4.63億円との調整用に仮配賦。AIエージェント代替の型は席課金であり、月次グロス解約率0.41%という証拠はあるが、規制改正ごとの値上げ実績や年単位の移行期間の独立した立証がなく、「記録の正本」の高成長型にはしない。
スモール・ミッド向け勤怠・工数等のID課金
従業員1,000人未満を主対象とする既存TeamSpiritサービス群と関連モジュールのライセンス。エンタープライズと同じ席数課金だが、単価と競争圧力を別に見る。
| 数量期末有償ライセンスID数(ID) | 価格1ID当たり年間認識売上の推定額(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 350,341 | 7,411 | 26 | 5 |
| 10 年後 中立 | 245,239 | 8,004 | 20 | 4 |
取り方:全社ID791,341から会社開示のエンタープライズ約441,000IDを控除して350,341IDと推定。実現ライセンス売上45.96億円から大企業向け推定19.99億円を差し引いた25.97億円を使用。契約企業別売上の原開示はないため、2グループの単価差は2026年8月期ARR比率による近似であり、価格表上の料金とは異なる。営業利益4.68億円は仮配賦。KING OF TIMEは月額300円/IDで大規模に競合し、AIエージェント代替区分は席課金。
プロフェッショナルサービス・導入運用支援
大企業への導入設定、勤怠・工数の制度別カスタマイズ、機能拡張、運用支援。年間契約のプレミアムサポートも一部含むが、多くは担当者の工数に依存する。
| 数量年間導入・既存顧客拡張プロジェクト換算件数(推定件) | 価格1案件換算の年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 178 | 0.08 | 15 | 0 |
| 10 年後 中立 | 116 | 0.10 | 12 | 1 |
取り方:2026年8月期の会社開示プロフェッショナルサービス売上14.82億円、契約企業純増78社。既存2,257社への拡張・設定案件を年100件と仮定し、新規78件と合わせ178件換算。実案件数と平均単価の開示はなく、混在するプレミアムサポートの概算約2.1億円(全社売上60.79億円×継続収益比率79.1%−ライセンス売上45.96億円)も含む案件換算である。1案件約833万円は実際の見積価格を主張する値ではない。営業利益0.44億円も仮配賦。AIエージェント代替の型は人月・工数型とし、中立件数を10年0.55〜0.75倍、単価上昇は1.34倍以下とする。
リスクと懸念
AIエージェント代替と席数の減少
勤怠の記録は残っても、従業員が画面へ入力する役割はAIに置き換わりうる。TeamSpirit MCPはその変化に備えるが、現在は追加料金を取らない。人単位で売るライセンスIDと導入設定の人月がともに減れば、単価と粗利の両方に下押しがかかる。
Salesforceプラットフォームへの依存
2026年6月のSalesforceセキュリティ強制適用は既存設定の変更を要し、新規商談を長期化させた。今後もAPI制限、ライセンス料金、認証仕様、Agentforceとの競合条件を自社だけでは決められず、想定外の原価上昇や顧客離脱が起こりうる。
競合との単価競争と顧客構成
大企業IDが増えた一方、全社ARRの伸びはID数の伸びを下回っている。KING OF TIMEは一律月額300円を掲げ、freeeやマネーフォワードも人事・給与との一体契約を進める。多くのIDを売っても平均収入が減る構図が続けば、売上成長率より営業利益が早く鈍る。
プロフェッショナルサービスの人月減少
導入・運用サービスは2026年に全社売上の約24%を占め、大企業案件の好調さが増収を支えた。しかし設定書、テスト、移行手順、一次サポートはAIで自動化しやすい。工数削減の便益が顧客へ還元されるとサービス料金を維持できず、人件費の固定部分だけが残りやすい。
資本政策・M&Aと前受金の扱い
2026年の自社株買いは大きかったが、その期に銀行借入も増えた。現預金は約35億円あっても、年間契約の繰延収益約23億円に見合うサービスを提供する責務がある。前受収益の残高が減ると、会計上の利益が残る場合でも現金は減る。株主還元やソフトウェア投資とこの運転資本変化を一緒くたにせず、将来の純現金残高を継続して確認する必要がある。
中期計画の未達と上場維持基準
2028年の売上78億円・営業利益12億円、2030年のARR100億円という計画は野心的だ。2030年からのグロース市場の時価総額基準100億円への対応も会社は説明している。現時点で上場廃止が決まったわけではないが、計画未達が続くと事業再編・M&A・資本政策の選択が迫られ、少数株主の利益と一致しない可能性がある。
今後の分かれ目
- エンタープライズID数とARRが今後も並行して増え、月次グロス解約率が0.4%前後で安定したら
- 大企業向けの長期契約基盤を再評価し、ライセンス数量を減らす中立の仮定を見直す。ただしARPUの低下が続くなら値決め力は高く評価しない。
- TeamSpirit MCPまたは後継AI製品で追加の有料契約・売上高が明示されたら
- AIを守りの機能ではなく独立した収益源として評価する。その金額の継続性が証明できれば、席課金以外の数量と長期成長率を再検討する。
- 2028年8月期の営業利益12億円とARR70億円が実際に達成されたら
- 高い利益率が再現できるかを次年度も確かめて上側の利益を引き上げる。計画達成が買収売上や税効果だけによる場合は恒常利益として扱わない。
- Salesforceの仕様・料金変更で契約遅延や顧客の移行が四半期をまたいで増えたら
- ライセンスの稼働IDと価格の双方を引き下げ、やや悲観の重みを増やす。クラウド基盤への依存は解約率だけでは測れないため別途追跡する。
- 勤怠管理の平均月額料金とTeamSpiritのARPUの差が広がり続けたら
- SMBの価格・顧客維持率を一段引き下げる。大企業の安定性を全ユーザーへ外挿せず、規模別に数量の前提を改める。
- 純現金が減る一方、繰延収益の縮小が進み自社株買いも継続されたら
- 事業から生じる現金と前払契約の減少による現金流出、株主還元を分けて確認する。10年後の残余現金を再計算し、悲観の床を引き下げる必要があるか判断する。
見ておくもの
- 期末契約ID:大企業向け・中小向けと全社ARRの増減率
- 月次グロス解約率0.41%とネット解約率マイナス0.24%の推移
- 契約ID当たり月次ARPU528円の推移と大企業比率
- プロフェッショナルサービス売上、導入案件数、粗利の開示
- TeamSpirit MCPの有償化、売上・受注の金額開示
- Salesforceの利用条件・利用料金および認証仕様変更
- 2028年売上78億円・営業利益12億円の達成、株主還元と現預金残高
- 純現金と繰延収益残高の差額、営業キャッシュフローと純利益の差
- ソフトウェア更新投資と減価償却、自己株式取得による現金支出
倍率と資本コストの決め方
株価372円と株数15,223,935株は、シナリオと割引価値を積み上げ終わるまで倍率の計算に用いなかった。基準時価総額は約56.63億円である。2026年8月期の確定実績は売上60.79億円、営業利益4.63億円、純利益3.51億円、自己資本13.71億円を起点とし、2025年8月期を起点とする添付の旧予測より新しい短信を優先した。
数量は大企業約44.1万ID、中小約35.0万ID、導入拡張案件推定178件に分けた。10年の物価上昇をID数に混ぜず、AIエージェント代替を数量・価格と長期gの2か所だけに入れた。k8.25%、長期名目g0%から中立・楽観の正当化PERは1/k=約12.12倍となり、市場の過去PERも経営陣の時価総額シミュレーションも根拠には使っていない。2028年8月期以降の新リース基準による貸借対照表表示の変化は、従来の家賃を営業費用に入れる形と揃え、儲けの価値へ別途二重計上しない。
悲観の時価総額12億円が現在の純現金29.89億円を下回る点は、時間を経た純現金の減少を立証しない限り不合理である。そこで2027〜2036年の累計純利益0.79億円、繰延収益減少による現金減9.00億円、資産計上する更新投資2.05億円、非現金償却費戻し0.87億円、期間株主還元2.50億円を別々に扱った。その結果2036年の純現金は18.00億円となり、同年末に残る年間契約の将来履行費用6.00億円を控除した売却可能資産が12.00億円となる。やや悲観についても前半期の利益蓄積を反映して床を29.90億円へ見直し、10年後の時価総額を32.07億円へ修正した。現時点の純現金を機械的に半分へ切る方法、履行原価と損益に含まれる費用を重ねて控除する方法は用いていない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、循環・値決め力・純現金の合計0.75%を加える。単なる小型株上乗せやβは使用しない。