結論
SM ENTERTAINMENT JAPANは、韓国SM所属アーティストの日本公演、グッズ、ファンクラブ、映像権利を収益につなぐ会社である。結論は「やや割高」だ。2025年の国内公演動員は143万人と大きいが、営業利益は約1.7億円にとどまる。10年先の事業価値と株主還元を資本コストで割り引いた本質価値は約60億円で、基準時価総額約85億円に対する安全域は乏しい。
強みは、日本のファンを集客する入口が、親会社の保有する人気アーティストと直接つながっていることだ。2026年上期は41公演で73万人を動員し、興行の採算も改善した。コンサートで集まったファンがグッズや有料会員、旅行商品にもお金を払う構造は、独立した広告媒体よりも顧客との結び付きが濃い。ただし、収益の源泉であるアーティストの権利そのものを少数株主が独立して支配できるわけではない。
2028年の営業利益率5%超という会社目標には、経費を管理し、公演と周辺販売を組み合わせることで届く余地がある。しかし、2020~2022年の赤字と、2025年の低い営業利益率を忘れてはならない。2026年の純利益見込みにはDearU株の売却益が大きく含まれ、一時益を毎年の稼ぐ力と取り違えると価値を過大にする。筆者は公演の継続と利益率の緩やかな回復を中立に据え、権利事業の縮小と親会社への依存を下振れに織り込んだ。
純現金約37億円は損失への耐久力を与えるが、興行の制作費、権利取得、前払金のため全額が自由な資金ではない。しかも、支配株主が議決権の約66%を握る。事業が伸びることと、その価値が一般株主に届くことを分けて見る必要がある。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、アーティストの人気だけでは事業の価値を決められない。大切なのは、公演が終わった後に、制作費、会場費、権利料、在庫、次の作品への投資を払っても、いくら現金が残るかである。同社は少ない有形固定資産で多くのファンに触れられる反面、人気アーティストの活動日程と権利条件に利益を左右される。2025年に売上100億円を超えても営業利益が2億円に届かなかったことは、オーナー利益の薄さを端的に示す。
堀、つまり他社が簡単に奪えない強みは、独占的な国内販売経路とファンの忠誠心にある。ただし、その堀の所有者は上場子会社だけではない。親会社に対して価格交渉力を持つか、創出した利益を株主へ返すかが不確かなら、単なる人気IP企業の高い倍率は払えない。自社IPが育ち、既存公演から継続的に高い利益が出るまでは、成長投資の見込み利回りを控えめに見る。
資本配分にも慎重さが要る。映像資産を整理し、使わない投資有価証券を換金すること自体は合理的だが、支配株主との取引には一般株主の立場で厳しい検証が欠かせない。純現金37億円は良い保険であっても、全額が明日分配される資産ではない。営業利益を積み上げる力を最優先に評価し、使途が明確でない現金には戻ってくる確率を考える。
筆者が保有期間中に求めるのは、動員数ではなく、興行ごとの採算、映像権利の営業利益、独自IPの収益、そして還元の継続である。10年で利益率5%前後の企業になれば価値は残る。しかし、薄利のまま売上を増やすだけでは資本コストを上回れず、今の時価総額に対して十分な安全域を生まない。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、SM所属歌手の日本での興行と、その周辺の継続購買である。所属アーティストの国内活動に伴い、コンサートの企画・制作・運営、公式グッズ、ファンクラブ、オンライン販売、催事、旅行商品を手掛ける。2025年のエンターテインメント事業は売上約78.2億円で、連結のほぼ4分の3を占めた。2026年上期にはこの部門の利益が大きく改善しており、会場規模と公演本数の選び方が採算を左右する。
コンサートの売上を考える際、チケットの額面と会社の取り分を混同してはいけない。会場・主催者・制作会社・アーティストとの分配があり、同社の認識売上は観客が払ったチケット総額と等しくない。2025年の動員143万人と部門売上を出発点に、興行と周辺事業を半分ずつとする推定を採った。ファンの訪問一回から複数の販売機会を得られることが利点だが、物販の在庫や制作費も同時に膨らむ。
ライツ&メディア事業は、韓国ドラマ・音楽映像などの日本での放送権、販売権、再許諾と、韓流専門チャンネルKNTVの運営からなる。2025年の売上は約23.8億円で、作品調達と過去作品の二次販売が重要だ。KNTVは有料衛星放送やケーブル経由で視聴され、加入世帯の減少や配信サービスとの競争を受ける。会社は2025年末に放送事業の譲渡を検討したが、2026年2月に交渉を取りやめ、引き続き自ら収益改善を迫られている。
小さな成長投資には自社制作の日本向け楽曲・新人IPと、ファン旅行を扱う予約サービスがある。2026年にデビューしたGPPなどを自社IPとして育てられれば、韓国の親会社に頼る収益の一部を自前のものへ置き換えられる。一方、旅行予約の操作画面や事務処理はAIエージェントに置き換わり得る。興行や物理的なグッズと違い、旅行画面の利用者数を高成長のまま延ばすことはしない。
優良さと弱いところ
競争上の強みは、韓国SMグループの日本展開を担う立場と、現地ファンへの販売経路にある。大規模公演、公式グッズ、ファンクラブを同じアーティストの活動に連動させられるため、一人の観客から長く収益を得やすい。2025年にはSMTOWN LIVEの東京ドーム公演だけで約10万人を動員し、2026年上期の大型公演でも集客力が続いた。ただし、この結び付きはアーティスト本人と韓国本社のIPを源泉とし、上場子会社が価格や活動日程を単独で決められる力ではない。
利益の厚さは強い堀の証拠になっていない。2025年の営業利益率は約1.7%で、2020~2022年には営業赤字が続いた。公演の中止、会場費の高騰、人気アーティストの活動休止が起きれば、収入より先に制作費が残る。2026年上期の利益回復は評価するが、会場規模の最適化が増分投下資本に高い利回りをもたらしたかは、複数年の現金創出で確かめたい。
借入金を差し引いた純現金が約37億円あることは明確な長所だ。大きな有利子負債を抱えて新会場を建てる会社ではなく、興行と権利の契約を管理する形なので、固定資産を大量に更新する負担は比較的小さい。しかし、前売り・制作支出・権利取得の資金需要はある。帳簿の現金すべてに株主が自由に手を付けられるとはいえない。
支配株主SMEJ Holdingsの持分は約66%で、上位の韓国SMグループとの取引が利益配分を左右する。2026年にはDearU株を最上位親会社に売却した。取引価格の決め方が説明されていても、一般株主には公演の採算や取引条件を左右する交渉力がない。独自IPの蓄積と、長期にわたる値上げ後の利益率の改善が示されるまでは、堀を「強い」とは認定しない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本のライブ興行は、入場者数だけでなく一人当たりの支払額が伸びる市場へ変わっている。ぴあ総研によれば2025年の国内ライブ・エンタメ市場は8,564億円、動員9,223万人、平均入場単価9,286円であった。2035年には市場規模1兆1億円との予測がある。SM ENTERTAINMENT JAPANの年間143万人は全国の延べ動員の約1.55%に相当するが、これは公演の観客シェアであり、売上高シェアではない。映画や舞台を含む全国市場との比較であることにも留意する。
成長余地は、国内人口の増加ではなく、K-POP人気の持続と大規模会場の稼働率、そして観客単価にある。競合するHYBE、JYP、YGの日本法人やエイベックス、国内の興行主は、同じ会場、人員、ファンの時間を奪い合う。SMグループのアーティストは知名度が高いが、若いファンの嗜好が変われば優位は永続しない。会場不足と公演技術者の人件費上昇は、価格を上げても利益が同率で増えるとは限らない理由になる。
映像の視聴市場は大きいが、同社にとっては逆風が強い。GEM Partnersは2025年の国内有料動画配信市場を6,740億円、2030年を8,953億円と推計する。NetflixやPrime Videoなどの配信先が視聴時間を集めるほど、従来型の有料専門チャンネルKNTVの加入者獲得は難しくなる。他方、韓国ドラマの国内販売・再許諾には需要が残る。ただし、配信事業者は制作への直接投資と権利の囲い込みを進めており、同社が調達する作品数を無条件に増やせない。
会社資料で示すK-POP主要レーベルの海外販売などに関するシェアの数字は、日本の音楽市場全体における同社のシェアを意味しない。数量の中立想定では、公演動員は143万人から150万人への小幅増にとどめる。周辺販売は来場しないファンへの通販・会員サービスで数量を伸ばすが、価格には物価3%の10年累計をほぼ反映させる。映像権利の調達件数と有料放送の加入者相当数は縮小させ、伸びる配信市場と同社の取り分を切り分けた。
資本政策と M&A
2026年3月公表の事業計画は、2028年12月期の連結売上高101.12億円と営業利益率5%超を目指す。2026年は売上90.89億円、2027年は85.91億円、2028年のエンターテインメント部門は90.37億円を見込む。2027年の営業利益率目標は4.5%で、計画の核心は売上の無理な拡大より採算改善にある。IP育成、旅行プラットフォーム、人材への投資配分比率は示すが、投資金額や増分ROICの数字は十分に開示されていない。
還元は2024年の実績配当総額約1.2億円から、2025年分は約2.3億円へ増えた。一方、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額、ROE目標について中期計画には数字の約束なし。継続配当をうたうものの、赤字期にも維持できる固定額の約束ではない。株主優待は1,000株以上に年1回1,000円のQUOカードで、対象者数が未開示のため評価では年間3,000人相当の仮定を用い、10年間約0.3億円を還元見込みに含めた。
2025年末にKNTV放送事業の譲渡を検討したが、2026年2月に条件面で合意できず中止した。2026年7月には保有する韓国DearU株36万株を最上位親会社へ売却し、約8.27億円の特別利益を計上する予定だ。事業再編による現金化は評価できるが、関連当事者取引と本業の利益を分けなければならない。過去の増資による希薄化もあり、今後の買収や再編で既存株主の取り分が守られるかを監視する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
コンサートの集客力は一朝一夕では築けない。2025年の143万人という動員は、SMのアーティストが日本で確かな購買層を持つ証拠である。会場規模を最適化した2026年上期には、売上増を上回る勢いで興行部門の利益が改善した。公演の前後に公式グッズ、ファンクラブ、限定イベント、旅行商品を重ねることで、一人当たりの収入を増やせる余地は大きい。特に人気グループのツアーと日本向けコンテンツ制作を一体で動かせることは、海外のレーベルが単独でまねしにくい現地基盤である。
中期計画で掲げる2028年の営業利益率5%超は、到達不能な水準ではない。既に高採算の周辺物販と会員サービスがあり、赤字を生みやすい権利・放送事業の経費を整理すれば、既存の売上でも利益は大きく増える。放送事業の譲渡が一度中止になったとしても、独立した部門の採算管理を進める選択肢は残る。自社制作の新人IPが成功すれば、韓国本社のライセンス条件に依存しない収益も育つ。
財務面では純現金が厚く、大型設備の更新を必要としない。2024年と2025年には増配も行った。売上を追うだけでなく、利益と還元の両方を高める経営へ変われば、10年後には営業利益率が過去より高い状態で安定する。K-POPを一過性の流行とみなさず、海外アーティストと日本ファンの接点を長く担う事業として評価する余地がある。
慎重な見方
人気アーティストの力は強いが、上場会社の少数株主がその力を所有しているわけではない。権利の根幹を握るのは韓国側であり、国内活動の条件、商品化、原盤、利益の分け方を子会社が自由に決められない。SMEJ Holdingsの議決権は約66%で、一般株主が望む高配当や事業売却を実現できる保証もない。関連当事者への有価証券売却が市場価格に沿っていても、資本配分の独立性に関する検証を止めるべきではない。
業績の長期記録は楽観を戒める。2020~2022年は営業赤字が続き、2025年の営業利益率はわずか約1.7%だった。興行収入は会場確保、出演者の活動、為替や制作費に左右される。ファンの熱量は一定でなく、HYBE、JYP、YGや新たな国内IPとの競争により、同じ観客を維持するために販促費が増える可能性がある。値上げできても、権利料や会場費が同時に上がれば株主に残る利益は薄い。
さらにライツ&メディアでは、有料チャンネルの加入者減少と大手配信会社の直接調達が同時に進む。市場全体で動画配信が成長しても、その中で同社が権利の仲介者として得る利益まで伸びるとは限らない。2026年の純利益には約8.27億円のDearU売却益が入り、これを再現性ある稼ぎと認識すると価値は大きく膨らむ。多額の純現金を持っても、将来の赤字や成長投資がそれを取り崩せば、利益を生まない資産に高い値段を払うことになる。
どちらに重みを置いたか
集客基盤と足元の興行採算改善は、上側の筋書きを十分に残す。ただし、独占的な人気IPがそのまま少数株主の経済的な堀になるわけではなく、利益の長期実績は弱い。会社固有の不安は親会社への依存、映像権利の収益低下、過去の赤字と希薄化である。やや悲観と悲観の合計を39%とし、上側の28%を上回らせた。これはAIの影響を確率にも二重に掛けたものではない。中立では公演動員をほぼ維持しつつ、営業利益率の回復を織り込んでいる。その上でも、現値には十分な安全域がないとの結論になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 84 円97 億円(+ 還元の換算額還元の合計 18 円21 億円)。 今の値に割り戻すと 52 円60 億円、今との差 −28.7%、 期待の年率 +3.7%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 233 円270 億円 | 44 円51 億円 | +280.0% | +16.2% | 25 円29 億円 |
| やや楽観 | 19% | 138 円160 億円 | 25 円29 億円 | +124.0% | +9.3% | 31 円36 億円 |
| 中立 | 33% | 68 円78 億円 | 15 円17 億円 | +12.9% | +1.3% | 27 円32 億円 |
| やや悲観 | 23% | 37 円43 億円 | 13 円15 億円 | −30.9% | −4.1% | 12 円13 億円 |
| 悲観 | 16% | 33 円38 億円 | 9 円11 億円 | −41.8% | −5.8% | 7 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 84 円97 億円 | 18 円21 億円 | +39.2% | +3.7% | 102 円118 億円 |
今の株価時価総額 73 円85 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 自社IPと高付加価値興行が両輪に育つ 利益 17 億円 · PER 15.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 233 円270 億円
人気アーティストの日本公演が途切れず、既存のファンが年齢を重ねても公式商品と会員サービスを買い続ける。公演の年間動員は235万人に届き、ドーム級の大型会場を無理なく埋められる。高単価席、ファン向け特典、物販の企画が定着し、円建ての収益認識単価も上がる。2026年に始めた日本発の新人IPが一つの柱となり、韓国本社の権利に依存しない楽曲・商品収益が増える。
グッズとファンクラブは会場に来ない購買者まで広がり、映像権利事業も採算性の高い作品に絞って利益を確保する。KNTVの契約者相当数は減るが、番組編成費と運営費の削減で黒字を維持する。現地IPの育成、販売網の拡充、小規模な制作投資が適切な利回りを生み、営業利益は大幅に厚くなる。
事業の拡大は大型の株式発行ではなく手元資金と事業利益で賄い、親会社との契約も一般株主に不利な方向へ改定されない。株主還元は利益の増加とともに厚くなり、累計純利益約94億円のうち約51億円を配当や自己株買い・優待に充てる。10年後の自己資本は約115億円となり、増分資本が資本コストを上回る状態が続く。
- コンサート・日本公演:数量 235(年間ライブ動員数(万人))× 価格 0.45(公演収益認識額(億円/動員1万人))→ 売上 105 億円・営業利益 13 億円。年間観客数×会社取り分としての平均認識収入。会場費・出演条件の差で利益率を変える。
- グッズ・ファンクラブ・音楽と催事:数量 120(国内向け課金・購入件数相当(万件/年、非開示につき推定))× 価格 0.83(購入・課金一件当たり認識売上(億円/1万件))→ 売上 100 億円・営業利益 20 億円。公式物販、会員、音楽・催事の購買件数相当×平均売上。会員の実際の人数の予測ではない。
- ファン旅行・予約プラットフォーム:数量 0.2(予約手数料等を伴う取引相当数(万件/年、推定))× 価格 3.00(一件当たり認識手数料等(億円/1万件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。予約手数料等の画面・事務部分。AIエージェント代替により中立数量は2025年の0.8倍、名目単価は1.1倍。
- 韓国映像・公演作品の権利販売:数量 26.0(年間新規獲得作品本数(本/年))× 価格 0.70(取得一本当たりの当期販売・過去作品分を含む認識売上(億円/本))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。新規作品数×過去作品販売分も含む一作品換算売上。二次販売との重複を避けるため代理指標とする。
- KNTV有料専門チャンネル:数量 2.0(定期視聴料の加入者換算数(万人、非開示推計))× 価格 4.80(加入者1万人当たり年間認識売上(億円/万人))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。実契約数ではなく放送売上の小売料金換算数。配信への移行で利用量が減る。
倍率:余剰現金20億円を控除した事業ROEは約17.53%、資本コストkは7.75%、普通の堀で超過収益残存割合1/2とすると増分ROIC代理のRONICは約12.64%。名目長期g=2.5%の正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=15.280倍。純利益から現金利息0.28億円を一度控除し現金の75%を加える。現在や同業のPERを基準にしない。
確率:日本向け新人IPの成功と人気アーティストの継続活動に加え、価格改定と会場効率の改善が十年間同時に起きる必要があるため、実現可能性は一桁台に限る。
やや楽観 19% ファン周辺収益が利益率を押し上げる 利益 11 億円 · PER 14.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 138 円160 億円
日本のK-POP需要が根強く、公演の動員は年間185万人に増える。人気グループの活動には波があるが、新人と既存スターの入れ替わりが進み、固定の会場費を吸収できる。大きな売上の増加はチケット価格だけに頼らない。公式グッズ、会員サービス、ポップアップ催事を通じて、公演参加者以外の購入機会も増える。
原盤や音楽制作の一部を日本で進め、権利料負担を管理しながら利益率を改善する。国内興行の強みは保たれるが、親会社保有のIPを独立して所有できるわけではないため、永久に高い超過利益を得られるとはみない。ライツ事業は有力作品に絞り込み、KNTVの加入者相当数は縮む。放送部門の小幅な黒字を守るため、番組調達と固定費の管理を続ける。
追加の借入を膨らませず、事業で得る現金からIP制作と少額の旅行サービス投資を行う。計画期間より先も営業利益率が改善し、連結の営業利益は約14億円まで育つ。累積の親会社株主利益約61.5億円に対して約29億円を還元し、自己資本は約105億円になる。自社IPが大当たりしなくても、事業の組み合わせを変えることで得られる上振れである。
- コンサート・日本公演:数量 185(年間ライブ動員数(万人))× 価格 0.40(公演収益認識額(億円/動員1万人))→ 売上 73 億円・営業利益 7 億円。年間観客数×会社取り分としての平均認識収入。会場費・出演条件の差で利益率を変える。
- グッズ・ファンクラブ・音楽と催事:数量 100(国内向け課金・購入件数相当(万件/年、非開示につき推定))× 価格 0.72(購入・課金一件当たり認識売上(億円/1万件))→ 売上 72 億円・営業利益 13 億円。公式物販、会員、音楽・催事の購買件数相当×平均売上。会員の実際の人数の予測ではない。
- ファン旅行・予約プラットフォーム:数量 0.2(予約手数料等を伴う取引相当数(万件/年、推定))× 価格 2.90(一件当たり認識手数料等(億円/1万件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。予約手数料等の画面・事務部分。AIエージェント代替により中立数量は2025年の0.8倍、名目単価は1.1倍。
- 韓国映像・公演作品の権利販売:数量 23.0(年間新規獲得作品本数(本/年))× 価格 0.63(取得一本当たりの当期販売・過去作品分を含む認識売上(億円/本))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。新規作品数×過去作品販売分も含む一作品換算売上。二次販売との重複を避けるため代理指標とする。
- KNTV有料専門チャンネル:数量 1.8(定期視聴料の加入者換算数(万人、非開示推計))× 価格 4.65(加入者1万人当たり年間認識売上(億円/万人))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。実契約数ではなく放送売上の小売料金換算数。配信への移行で利用量が減る。
倍率:余剰現金20億円を控除した事業ROEは約12.04%、資本コストkは7.75%、普通の堀で超過収益残存割合1/2とすると増分ROIC代理のRONICは約9.89%。名目長期g=2.5%の正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=14.235倍。純利益から現金利息0.28億円を一度控除し現金の75%を加える。現在や同業のPERを基準にしない。
確率:公演の平均規模拡大と周辺購買の定着は既存事業に道筋があるが、独自IPが大ヒットする確率までは中立に置けないため上側19%とする。
中立 33% 公演の底堅さを保ちながら利益率は緩やかに改善 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 68 円78 億円
国内ファンの基盤は残り、年間動員は150万人前後で安定する。公演の本数を増やすよりも大規模会場の稼働率と内容を重視し、販売価格には国内物価の上昇を相応に反映できる。ただし人気グループの活動間隔は一定でなく、会場費や制作スタッフの賃金も上昇するため、利益率が際限なく改善することはない。
グッズとファンクラブは通販や会場外の催事を増やすが、購買件数の伸びは緩やかにとどまる。韓国ドラマと映像権利では、大手配信会社が権利を直接取得する場面が増え、年間の新規調達件数を減らす。KNTVは定期契約者に相当する利用量が減り、単価上昇だけでは固定費を吸収できず、小幅な損失を出す。2025年から2026年の採算改善は続くが、改善の中心は興行と周辺販売である。
会社は大きな買収をせず、小規模な自社IPと旅行アプリへの投資を進める。独自作品は収益になるが、既存の主要アーティストに代わるほどのヒットは出ない。2035年の営業利益は約6.2億円、純利益約5.2億円となり、資本コストを若干下回る自己資本利益率にとどまる。十年間の純利益累計約35億円のうち約17億円を株主へ還元し、残りを事業に蓄える。
- コンサート・日本公演:数量 150(年間ライブ動員数(万人))× 価格 0.35(公演収益認識額(億円/動員1万人))→ 売上 53 億円・営業利益 4 億円。年間観客数×会社取り分としての平均認識収入。会場費・出演条件の差で利益率を変える。
- グッズ・ファンクラブ・音楽と催事:数量 85.0(国内向け課金・購入件数相当(万件/年、非開示につき推定))× 価格 0.66(購入・課金一件当たり認識売上(億円/1万件))→ 売上 56 億円・営業利益 8 億円。公式物販、会員、音楽・催事の購買件数相当×平均売上。会員の実際の人数の予測ではない。
- ファン旅行・予約プラットフォーム:数量 0.2(予約手数料等を伴う取引相当数(万件/年、推定))× 価格 2.75(一件当たり認識手数料等(億円/1万件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。予約手数料等の画面・事務部分。AIエージェント代替により中立数量は2025年の0.8倍、名目単価は1.1倍。
- 韓国映像・公演作品の権利販売:数量 15.0(年間新規獲得作品本数(本/年))× 価格 0.54(取得一本当たりの当期販売・過去作品分を含む認識売上(億円/本))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。新規作品数×過去作品販売分も含む一作品換算売上。二次販売との重複を避けるため代理指標とする。
- KNTV有料専門チャンネル:数量 1.4(定期視聴料の加入者換算数(万人、非開示推計))× 価格 4.50(加入者1万人当たり年間認識売上(億円/万人))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。実契約数ではなく放送売上の小売料金換算数。配信への移行で利用量が減る。
倍率:余剰現金20億円を除いた事業ROE約6.99%はk7.75%を下回る。10年後以降の成長投資に超過収益を与えないため正当化PER上限は1/k=12.903倍。現金利息は20億円×税後1.4%を純利益から一度除き、余剰資金20億円×戻り方75%を独立して加える。
確率:2025年の143万人と2026年上期73万人の興行実績を基準に、公演動員の小幅増と値上げは認めるが、2028年の利益率目標を無条件に十年間超えるとは考えない。
やや悲観 23% ライブは維持するが利益の取り分が細る 利益 3 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 37 円43 億円
人気アーティストの公演は続くが、活動間隔が長くなり年間動員は128万人へ減る。会場を埋めるための販売促進費が増え、チケットやグッズの名目値上げに見合う利益を得られなくなる。HYBEやJYPなど競合グループとの公演日程の重なりも、ファンの支出を分散させる。会場数と固定人員を減らし、業績は黒字を保つが魅力的な成長企業ではなくなる。
映像権利を新たに仕入れる本数は14本に絞り、配信先への販売力は弱まる。KNTVの加入者相当数は約1万人相当まで落ち込み、番組編成と設備の固定費を下げても赤字が残る。旅行予約の画面や事務処理はAIエージェントに代替され、手数料の単価には弱い値上げしか通らない。公演や物販そのものの需要までAIが消すとは考えない。
収益が細るなかで大型の設備投資や買収を避け、事業を現金創出重視に縮小する。十年間の純利益累計約15億円はほぼ配当と自己株買い・優待に回り、10年後の自己資本は起点と同じ約72.4億円にとどまる。余剰現金の一部は事業立て直しに使われ、利益の伸びや自社IPによる逆転は評価しない。既存資産の価値が株式の主要な支えになる。
- コンサート・日本公演:数量 128(年間ライブ動員数(万人))× 価格 0.35(公演収益認識額(億円/動員1万人))→ 売上 44 億円・営業利益 3 億円。年間観客数×会社取り分としての平均認識収入。会場費・出演条件の差で利益率を変える。
- グッズ・ファンクラブ・音楽と催事:数量 65.0(国内向け課金・購入件数相当(万件/年、非開示につき推定))× 価格 0.68(購入・課金一件当たり認識売上(億円/1万件))→ 売上 44 億円・営業利益 6 億円。公式物販、会員、音楽・催事の購買件数相当×平均売上。会員の実際の人数の予測ではない。
- ファン旅行・予約プラットフォーム:数量 0.2(予約手数料等を伴う取引相当数(万件/年、推定))× 価格 2.65(一件当たり認識手数料等(億円/1万件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。予約手数料等の画面・事務部分。AIエージェント代替により中立数量は2025年の0.8倍、名目単価は1.1倍。
- 韓国映像・公演作品の権利販売:数量 14.0(年間新規獲得作品本数(本/年))× 価格 0.52(取得一本当たりの当期販売・過去作品分を含む認識売上(億円/本))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。新規作品数×過去作品販売分も含む一作品換算売上。二次販売との重複を避けるため代理指標とする。
- KNTV有料専門チャンネル:数量 1.0(定期視聴料の加入者換算数(万人、非開示推計))× 価格 4.15(加入者1万人当たり年間認識売上(億円/万人))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。実契約数ではなく放送売上の小売料金換算数。配信への移行で利用量が減る。
倍率:構造的な伸び悩みのもとで全社純利益2.8億円から現金利息0.21億円を控除した稼ぐ力の上限は2.59÷7.75%+余剰現金15億円×75%=約44.67億円。現在自己資本72.4億円の0.60倍=43.44億円で、この上限を超えない。十年間の累計利益15億円と還元15億円が相殺する仮定であり、将来に蓄積する自己資本へ安易にPBRを掛けない。
確率:下に寄せる理由:過去に2020~2022年の連続営業赤字があり、権利事業は2026年上期の採算が低迷した。親会社と競合IPの都合を一般株主が制御できないため。
悲観 16% アーティスト依存が顕在化し、資産価値が最後の支え 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 33 円38 億円
主力グループの国内活動が大幅に減り、公演動員は年間95万人まで落ち込む。興行を続けるため値上げを抑え、制作・会場費の負担が利益を食う。公式グッズとファンクラブも新規の若年層を取り込めず、年間の購買件数相当が半減する。競争が激しくなるなか、海外の親会社は有力IPの収益化を別の販路で進め、上場子会社の利益の取り分は細る。
映像権利事業では作品調達の採算が崩れ、年間新規取得は6作品に減る。KNTVは定額動画配信サービスに視聴時間を奪われ、固定費を賄えなくなる。旅行アプリの予約事務は自動化され、画面を経由した手数料収入はさらに小さくなる。日本の事業を整理して会社の存続は保つが、再び高成長へ向かうための独自IPやブランド資産は十分に育たない。
抜本的な事業縮小と保有資産の売却で赤字を食い止め、十年後にはわずかな黒字を残す。この過程の利益累計は約11億円を配当・優待などに回し、自己資本の起点からの積み上がりはない。利益の価値は小さいため、今ある現金と売却可能な金融資産の税後見込額を最後の床にする。ただし売却を必ず実行できるとの保証はなく、支配株主による資産の使途次第で回収時期は大きくずれる。
- コンサート・日本公演:数量 95.0(年間ライブ動員数(万人))× 価格 0.28(公演収益認識額(億円/動員1万人))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。年間観客数×会社取り分としての平均認識収入。会場費・出演条件の差で利益率を変える。
- グッズ・ファンクラブ・音楽と催事:数量 39.0(国内向け課金・購入件数相当(万件/年、非開示につき推定))× 価格 0.57(購入・課金一件当たり認識売上(億円/1万件))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。公式物販、会員、音楽・催事の購買件数相当×平均売上。会員の実際の人数の予測ではない。
- ファン旅行・予約プラットフォーム:数量 0.1(予約手数料等を伴う取引相当数(万件/年、推定))× 価格 2.05(一件当たり認識手数料等(億円/1万件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。予約手数料等の画面・事務部分。AIエージェント代替により中立数量は2025年の0.8倍、名目単価は1.1倍。
- 韓国映像・公演作品の権利販売:数量 6.0(年間新規獲得作品本数(本/年))× 価格 0.32(取得一本当たりの当期販売・過去作品分を含む認識売上(億円/本))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。新規作品数×過去作品販売分も含む一作品換算売上。二次販売との重複を避けるため代理指標とする。
- KNTV有料専門チャンネル:数量 0.5(定期視聴料の加入者換算数(万人、非開示推計))× 価格 3.60(加入者1万人当たり年間認識売上(億円/万人))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。実契約数ではなく放送売上の小売料金換算数。配信への移行で利用量が減る。
倍率:将来利益0.4億円の稼ぐ力は低く、現金10億円を別にみても利益価値は資産床に届かない。2026年6月の現金32.60億円と換金可能な投資有価証券7.998億円の税後70%相当5.60億円を合計した38.20億円を床とする。起点自己資本72.4億円×PBR0.52762=38.20億円。のれん等の非換金資産や将来留保を床へ足さず、金融資産が全額株主に返る保証はない。
確率:主力グループの活動減少、権利条件悪化、放送契約の縮小が重なる場合で、過去の赤字実績と少数株主の交渉力の弱さから低確率の極端例にとどめない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンサート・日本公演
SM所属アーティストの日本公演の企画・開催と売上認識。チケット額面を会社の売上と誤認しない。
| 数量年間ライブ動員数(万人) | 価格公演収益認識額(億円/動員1万人) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 143 | 0.27 | 39 | 1 |
| 10 年後 中立 | 150 | 0.35 | 53 | 4 |
取り方:会社公表の2025年185公演・年間動員143万人と、エンターテインメント部門売上78.16億円を使用。同部門売上の約半分を興行とする分析上の推定で39.08億円、認識収入は一人当たり約2,733円。これは市場の平均チケット価格9,286円ではなく、権利配分・総額純額表示を含む会計売上の逆算である。ぴあ総研の2025年全国動員9,223万人に対する数量シェアは約1.55%(音楽以外の舞台も含むため参考比率)。競合HYBE・JYP・YGとのシェアは会社別動員未開示で確定できない。2035年中立の一人当たり認識単価は現状の約1.30倍とし、CPIの1.34倍を少し下回るのは権利料や制作費による取り分低下の仮定である。2026年上期は41公演・73万人と照合。
グッズ・ファンクラブ・音楽と催事
公式MD、会員サービス、原盤・音楽販売、ポップアップ催事などのファン周辺消費。
| 数量国内向け課金・購入件数相当(万件/年、非開示につき推定) | 価格購入・課金一件当たり認識売上(億円/1万件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 80.0 | 0.48 | 39 | 4 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 0.66 | 56 | 8 |
取り方:2025年度エンターテインメント部門78.16億円から推定興行39.08億円と旅行0.50億円を控除。残差38.58億円をファン物販・FC・音楽等とする。購買件数は会社非開示のため年間80万件相当と仮定し平均認識単価約4,823円と逆算した。会員は年会費があり購買件数との単位統一は分析上の換算、実測契約数ではない。営業利益は同部門計5.45億円と整合する推定配賦。ライツ&メディア計1.39億円と合わせた報告セグメント利益6.84億円から本社費など約5.11億円を控除して連結約1.73億円となる。
ファン旅行・予約プラットフォーム
コンサート連動ツアーと予約サービスCONCONTOWNなど。旅行現場と予約操作画面を区別する。
| 数量予約手数料等を伴う取引相当数(万件/年、推定) | 価格一件当たり認識手数料等(億円/1万件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.2 | 2.50 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 2.75 | 0 | 0 |
取り方:旅行事業の独立した売上・予約件数・平均手数料の開示はない。全社部門売上のうち0.50億円を便宜的に仮配賦し、2,000件×認識売上2万5千円/件相当という検証不能な代理変数を用いる。操作画面・予約事務が価値の一部でありAIエージェント代替の「席・画面中心」型を適用する。中立数量0.80倍・手数料価格1.10倍・長期g0%以下。AIサービス自社売上の金額がなく楽観の数量も1.0倍を超えない。
韓国映像・公演作品の権利販売
韓国ドラマ・公演映像等の日本向け権利仕入れ、二次配信・再許諾、過去作品販売。
| 数量年間新規獲得作品本数(本/年) | 価格取得一本当たりの当期販売・過去作品分を含む認識売上(億円/本) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 26.0 | 0.46 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 15.0 | 0.54 | 8 | 1 |
取り方:2025年のライツ&メディア部門23.78億円から、ライツ11.94億円、KNTV11.84億円と便宜的に二分。開示された新規獲得26作品で11.94億円を割り、約0.459億円/本は過年度アーカイブ販売分も含めた代理売上であり、作品単価の実測ではない。2026年上期の新作18本と、ライツ&メディア営業利益ほぼゼロの事実から下振れを設定した。競争相手はNetflix等の直接調達と国内映像権利会社で、動画配信消費市場6,740億円は権利卸売と取引段階が異なるため売上をそのまま割った市場シェアとはしない。
KNTV有料専門チャンネル
韓流専門放送の加入プラットフォーム向け収入と関連編成。OTTの普及で数量が圧迫される。
| 数量定期視聴料の加入者換算数(万人、非開示推計) | 価格加入者1万人当たり年間認識売上(億円/万人) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.0 | 3.96 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 4.50 | 6 | 0 |
取り方:KNTV単独の加入者数・売上内訳は公表されていない。部門推定売上11.84億円を、KNTVの一般的な月額3,300円×12か月の小売料金に換算すると約2.99万人相当となる。これは実加入者数ではない。プラットフォーム分配や番組ライセンス等も含み得るため、数量・単価とも代理指標と明記する。国内の多チャンネル契約市場は縮小し、スカパー契約は約240万件規模だが、同社の契約換算数とは集計対象が異なりシェアの実測には使えない。
リスクと懸念
韓国親会社へのIP・利益配分依存
同社の集客を支える主要アーティストの原盤や活動方針は、上場子会社から独立した韓国のSM側にある。SMEJ Holdingsが議決権約66%を握るため、国内公演の権利条件、出演料、海外と日本の収益配分を一般株主が決めることは難しい。アーティストの契約や活動拠点が変わると、売上だけでなく、同じ売上から残る利益率が変わる。
興行の固定費とアーティスト活動の不連続
大規模公演には会場確保、機材、設営、人件費、前払制作費が必要で、客席が埋まらなくても費用が残る。2020~2022年の赤字実績は、出演日程や外部環境が悪化すると採算が急変することを示した。2035年の観客数が増えていても、会場費と権利料の上昇をチケットの取り分で相殺できなければ、売上高の伸びはオーナー利益の伸びにならない。
有料放送KNTVの構造的な縮小
KNTVは韓国コンテンツに特化した有料チャンネルだが、NetflixやPrime Videoなどの配信サービスに視聴時間を奪われやすい。広告や販売代理の条件が変われば、加入者数の減少以上に利益が落ち得る。放送事業の譲渡協議は2026年2月に不成立となり、固定費を下げながら収益を守る難しい課題が社内に残った。別の配信先が伸びても同社の放送料金には直結しない。
原盤・作品投資の回収難と競争激化
日本の音楽・映像需要は伸びる余地があるが、人気作品への権利料も高くなる。国内K-POP市場ではHYBE、JYP、YGが競い、Netflix等は韓国ドラマを直接調達する。作品の取得数を増やしても販路が確保できなければ回収期間が長期化する。自社IPのGPPなどは育成段階であり、制作費を継続投入しても安定したロイヤルティが得られるかは未確認である。
AI エージェント代替と旅行予約事務の収益圧迫
ライブという現実の体験や公式グッズの製造・配送はAIエージェントが直接代替できない。一方、旅行予約の検索、予約画面、問い合わせ、事務手数料の仕事は、外部AIが利用者の代わりに操作して画面への来訪と人手の工数を減らし得る。旅行部門の売上は独立開示されていないため規模の確信度も低い。中立ではこの部分だけ数量0.8倍、単価1.1倍、10年より先の成長ゼロ以下とした。
関連当事者取引・特別利益と株式希薄化
DearU株を2026年7月に最上位親会社へ譲渡し、約8.27億円の特別利益が見込まれる。市場終値を用いた取引であっても、支配株主との資産売買では一般株主の長期利益が守られているか監視が必要だ。この利益は翌年以降の営業利益ではない。過去には2016年や2020年に大きな希薄化があり、将来の資金調達や買収で既存株主の取り分が変わる可能性もある。
現金の換金性・金利と税負担の見積もり
2025年末の純現金は約37億円だが、興行の制作前払金と権利取得に必要な流動性を引けば全額が余剰資本ではない。2026年6月末の現金と有価証券を用いた悲観の床も、支配株主が売却と分配を実行し、その他の債権者や運転資金を損なわないことを保証しない。総借入・預金の固定変動金利や満期別の契約が未検証なので、金利上昇益を純現金に単純乗算して利益へ足さない。
今後の分かれ目
- 2027~2028年に連結営業利益率5%超が実現し、その後も会場費と権利料控除後に維持できたら
- 中立の営業利益率と増分資本利益率を引き上げる。売上だけでなく継続的な営業現金収支と配当原資が改善していることを条件に、やや楽観の重みを増やす。
- 日本公演の年間動員が180万人を超え、グッズ・FCの購入者数と認識単価も同時に伸びたら
- 強みが集客から周辺消費の現金創出に広がった証拠になる。興行と物販を別々に増額し、出演料や制作費の比率が上がっていないかを検証する。
- 国内制作の新人アーティストIPが権利料控除後で高い営業利益を継続して生んだら
- 親会社に依存しない資産の価値として評価を引き上げる。ただしヒット作品数と継続年数、初期制作・宣伝費の回収を確認するまで、強い堀とは認定しない。
- KNTVの有料視聴者換算数やライツ事業の作品販売が想定以上に減り、固定費の削減も遅れたら
- 映像・放送部門の利益率と利益の存続期間を下げ、やや悲観・悲観へ確率を移す。放送事業の再売却や整理では実際の受取金と税費用を確認する。
- 韓国親会社との契約条件や利益配分が一般株主に不利な方向へ改定されたら
- 同じ動員数でも国内子会社に残る利益が減るため、営業利益率を下方修正する。財務だけでは救えない構造的な下振れとして資本配分と少数株主保護を再評価する。
- 配当を継続しながら自社株買い・資産売却代金の還元実績が積み上がったら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ見直す余地がある。反対に増資や採算の不明な関連会社投資が増えれば、取り分と余剰資金評価を下げる。
- 旅行サービスの予約手数料がAIエージェント経由で減少し、自社の画面を利用しない予約が増えたら
- 旅行部門の数量と単価をさらに縮小する。公演・物販・ファンクラブへ影響を機械的に拡張せず、契約ごとの販売形態を確認する。
見ておくもの
- 四半期の国内公演数・年間延べ動員数・一公演当たり観客数と会場別の採算
- エンターテインメント部門の営業利益率と、興行以外のグッズ・FC売上構成比
- ライツ&メディア部門の新規獲得作品数、権利売上、KNTV利用量と同部門営業損益
- 2028年計画の売上101.12億円・営業利益率5%超への進捗と計画改定
- 日本向け独自IPの営業収益と制作・宣伝投資の回収額
- 親会社・関係会社とのライセンス・資産売却取引、支配株主持分と有価証券残高
- 実際の配当総額、自己株買いによる株数減少、予約権の再付与と株主優待費用
- ぴあ総研の日本ライブ市場の動員・単価、主要K-POP競合の大型公演数
- 旅行プラットフォームの契約・手数料開示、AIエージェント経由販売の影響
倍率と資本コストの決め方
現在の株価73と基準株数115,894,931株は、最後に約84.60億円という比較対象を得るためだけに使用した。2025年のセグメント売上を興行・周辺消費・旅行・権利・KNTVに分け、観客・購入・作品・契約換算数量と名目価格から2035年の利益を先に作った。楽観から中立はk7.75%、長期g2.5%、事業ROEと普通の堀のRONICで正当化PERを決定し、ROEがk未満の中立は1/kを上限とする。悲観側は過去の市場PBRでなく、低い事業利益と今売れる金融資産の税後回収額を制約として評価した。純利益に混じる新株予約権戻入益とDearU売却益を将来利益として延長していない。2026年6月末の発行済み控除後株数と添付の基準には約60株の差があるが、依頼の指定値を優先する。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式リスクプレミアム4.5%を基礎とし、業績循環+0.5%、十分な純現金−0.25%、その他0%を加えた7.75%。個別の親会社ガバナンス問題は確率と収益に反映する。