結論
シーイーシーは、製造業や自動車関連の企業向けにシステム開発と、クラウド・運用のサービスを提供する会社だ。純現金は時価総額の 35% に達し、自己資本比率は 68% と財務は厚い。
筆者の結論は「やや割高」。売上の 7 割ほどは技術者の工数で売る開発で、AI エージェントが設計・開発・テストの手作業を肩代わりすれば数量が縮む。クラウドサービスの比率を高める計画は筋が良いが、10 年で見ると縮みが先に来る。手元の現金と、株数を減らしてきた還元の実績が、悲観の深さを和らげている。顧客との取引が長く、急に崩れる会社ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、財務の安全性は高く評価できる。株主に残る利益は営業利益の 7 割ほどで、設備投資がほとんど要らず、現金が積み上がる。ただし、その現金が事業に生かされず、ROE が 10% 前後にとどまる点は気になる。
問いは、10 年後も工数で稼げるかだ。筆者は、開発の工数は 4 割ほど縮み、クラウドの運用は縮みが浅いと見る。現金と還元で下は支えられるが、今の値段は縮みを十分に織り込んでいない。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく二つだ。一つはシステム開発で、製造業・自動車関連・金融などの顧客向けに、設計から開発、テストまでを技術者の工数で請け負う。売上の 7 割ほどを占めると筆者は見る。
もう一つはクラウドサービスで、基盤の構築と運用、自社のサービスを継続契約で提供する。2025/01 期に売上の 27.8% で、会社は 2028/01 期に 35% へ高める計画だ。
売上は 2026/01 期に 659 億円、営業利益 73 億円。なお二つの事業の割合は開示で確かめられず、筆者の推定で置いた。顧客は製造業の大企業が中心で、2027/01 期は上方修正も出た。
優良さと弱いところ
堀は中程度だ。製造業の現場に長く入り込み、顧客の業務を知っていることは強みになる。ただし受託開発は発注先を替える費用が高くなく、同業も多い。
クラウドサービスは継続収入で安定するが、運用の人手に頼る部分が大きいと筆者は見る。
財務は優れている。営業利益率は過去 10 年で 7% から 12% へ上がり、赤字は 20 年で 2 期だけで、借入はほぼ無い。ROE は 10% 前後と高くはないが、現金が厚い分、資本効率には改善の余地が残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の受託開発は、レガシー刷新や製造業の DX 需要で底堅く、市場は名目で年 6% 前後の伸びが見込まれる。人手不足で単価も上がりやすい。
ただし、生成AIがコード作成とテストを担い始め、人の工数で売る仕事の前提が揺らぐ。大手顧客は内製と自動化を進め、発注の絞り込みが起きうる。
競合はシステナ、DTS、NSD、富士ソフトなど。クラウドの運用は継続収入だが、自動化で人手が減れば単価に響く。筆者は、需要の強さが当面は縮みを覆うが、10 年では縮みが優勢と見る。クラウド比率の上昇は、その差を縮める要素になる。
資本政策と M&A
還元は着実だ。2027/01 期の配当は配当性向 44.6% の見込みで、過去 5 年で株数も 1 割ほど減らした。中期経営計画 2025-2027 は、2028/01 期に売上 720 億円、営業利益 86 億円、ROE 14% 以上を目指す。配当性向や自社株買いの額の具体的な約束は、確かめられなかった。上位株主の持ち分は 5 割台で、支配が強いとまでは言えない。
見通しをどちらに寄せたか
開発は人月型で AI に置き換わりやすく、AI を売り物にした金額の開示もないため、下側に 35% を置いた。一方、純現金の厚さと自社株買いの実績が下を支えるので、悲観でも現金の価値は残り、深さは同業の中では浅めだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 2,788 円845 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 837 円254 億円)。 今の値に割り戻すと 2,055 円623 億円、今との差 −11.4%、 期待の年率 +4.6%(資本コスト 6.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,259 円1,291 億円 | 1,158 円351 億円 | +133.5% | +8.8% | 379 円115 億円 |
| やや楽観 | 21% | 3,706 円1,123 億円 | 1,003 円304 億円 | +103.0% | +7.3% | 989 円300 億円 |
| 中立 | 37% | 3,008 円912 億円 | 864 円262 億円 | +66.9% | +5.3% | 1,433 円434 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,066 円626 億円 | 696 円211 億円 | +19.1% | +1.8% | 691 円209 億円 |
| 悲観 | 10% | 818 円248 億円 | 518 円157 億円 | −42.4% | −5.4% | 134 円40 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,788 円845 億円 | 837 円254 億円 | +56.3% | +4.6% | 3,625 円1,099 億円 |
今の株価時価総額 2,320 円703 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 7% AI を使いこなし、クラウドが育つ 利益 69 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 4,259 円1,291 億円
クラウドサービスが計画どおり売上の 35% まで育ち、継続収入が開発の縮みを埋める筋書きだ。技術者は AI を使いこなして単価を守る。営業利益率は 12% 台に上がり、自社株買いも続く。需要が強い間は、採用も計画どおり進む。新しい顧客も少しずつ増える。
- クラウドサービス:数量 100(契約規模の指数(今を 100))× 価格 2.13(指数 100 あたりの売上(億円))→ 売上 213 億円・営業利益 30 億円。数量 1.00 倍・価格 1.15 倍
- システム開発・その他:数量 2,210(技術者数(人))× 価格 0.24(1 人あたり売上(億円))→ 売上 540 億円・営業利益 62 億円。数量 0.85 倍・価格 1.34 倍(人月型の上限)
倍率:事業の純利益 67 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.5% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g -0.2%(g_long)から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)138 億円。
確率:AI を自社の売り物にして売上が出ている開示(金額)がなく、楽観でも数量は今以下。7% にとどめた。
やや楽観 21% クラウドが支え、開発は緩やかに縮む 利益 56 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 3,706 円1,123 億円
クラウドは小さく伸び、開発は 2 割強縮む。単価は物価に近い水準を保つので、営業利益は今とほぼ同じ水準を保つ。還元は続き、株数も減る。技術者の稼働も高いままだ。クラウドの契約も少しずつ増え、全体を下支えする。大型の買収はせず、現金は株主に戻る。
- クラウドサービス:数量 93.0(契約規模の指数(今を 100))× 価格 2.09(指数 100 あたりの売上(億円))→ 売上 194 億円・営業利益 25 億円。数量 0.93 倍・価格 1.13 倍
- システム開発・その他:数量 1,950(技術者数(人))× 価格 0.24(1 人あたり売上(億円))→ 売上 466 億円・営業利益 49 億円。数量 0.75 倍・価格 1.31 倍
倍率:事業の純利益 54 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.7% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g -0.2%(g_long)から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)138 億円。
確率:クラウドの比率を高める計画と純現金の厚さを評価。開発は縮むが、製造業の DX 需要で縮みは遅れるとみる。
中立 37% 開発は 4 割近く縮み、クラウドは小さく縮む 利益 43 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 3,008 円912 億円
製造業の DX 需要は続くが、AI エージェントが設計・開発・テストの手作業を肩代わりし、開発の工数は 4 割近く縮む。クラウドも運用の自動化で単価が物価に届かない。売上は今の 8 割台、営業利益は 2 割ほど減り、配当性向 45% 前後と自社株買いは続く。
- クラウドサービス:数量 85.0(契約規模の指数(今を 100))× 価格 2.04(指数 100 あたりの売上(億円))→ 売上 173 億円・営業利益 21 億円。数量 0.85 倍・価格 1.10 倍(席・継続型)
- システム開発・その他:数量 1,612(技術者数(人))× 価格 0.23(1 人あたり売上(億円))→ 売上 376 億円・営業利益 36 億円。数量 0.62 倍・価格 1.28 倍(人月型)
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g -0.2%(g_long)から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)138 億円。
確率:席・継続型のクラウドは中立で数量 0.85 倍・価格 1.10 倍、人月型の開発は 0.62 倍・1.28 倍。両者の落としどころ。
やや悲観 25% 内製化と値引きで、利益が削られる 利益 29 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 2,066 円626 億円
大手顧客が AI で開発を自前で回し始め、開発の発注が半分に減る。クラウドの運用も自動化で値引き圧力を受け、営業利益率は 8% 台へ下がる。還元は利益に合わせて抑えられ、現金が積み上がる。買収で補う余力も限られる。顧客の一部は海外の安い開発会社へ移る。
- クラウドサービス:数量 75.0(契約規模の指数(今を 100))× 価格 1.91(指数 100 あたりの売上(億円))→ 売上 143 億円・営業利益 14 億円。数量 0.75 倍・価格 1.03 倍
- システム開発・その他:数量 1,300(技術者数(人))× 価格 0.22(1 人あたり売上(億円))→ 売上 284 億円・営業利益 23 億円。数量 0.50 倍・価格 1.20 倍
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.2%、10 年より先の名目の伸び g -0.2%(g_long)から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)104 億円。
確率:大手顧客の内製化と発注の絞り込みが重なる筋書き。技術者を抱えたまま稼働が落ちると利益が削られる。
悲観 10% 人月が置き換わり、現金が主役になる 利益 13 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 818 円248 億円
AI エージェントが設計・開発・テストの手作業を置き換え、開発の数量は 4 割に満たなくなる。クラウドの運用も自動化され、営業利益率は 6% 前後へ下がる。優良な会社ではなくなり、価値の多くは手元の現金と縮んだ事業の稼ぎに戻る。配当は利益に合わせて大きく減る。
- クラウドサービス:数量 60.0(契約規模の指数(今を 100))× 価格 1.81(指数 100 あたりの売上(億円))→ 売上 109 億円・営業利益 8 億円。数量 0.60 倍・価格 0.98 倍
- システム開発・その他:数量 988(技術者数(人))× 価格 0.20(1 人あたり売上(億円))→ 売上 198 億円・営業利益 10 億円。数量 0.38 倍・価格 1.10 倍
倍率:事業の ROE 2.4% は k 6.75% 以下で、ためた利益は額面の価値に届かない。10 年より先の名目の伸び g -0.2%(g_long)で稼ぐ力の値 1÷(k−g) = 14.4 倍を上限に置き、事業の純利益 12 億円 × 14.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)69 億円。AI エージェント代替は 10 年の数量・価格と g_long に入れ済みで、倍率の上に割引は重ねない。
確率:AI エージェントが設計・開発・テストの工数を大きく置き換え、クラウドの運用も自動化される。売上が半分近くまで縮む構造的な負け。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
クラウドサービス
クラウド基盤の構築・運用と自社サービスを継続契約で提供する。席・継続型。
| 数量契約規模の指数(今を 100) | 価格指数 100 あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 100 | 1.85 | 185 | 24 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 2.04 | 173 | 21 |
取り方:2025/01 期で売上の 27.8%(中期計画の資料)。2026/01 期も約 28% と推定して約 185 億円(筆者の推定)。営業利益率 13% は推定。数量は契約規模の指数、価格は単価の指数。【AI エージェント代替】席・継続型として中立で数量 0.85 倍・価格 1.10 倍。
システム開発・その他
製造業・自動車関連・金融向けの設計・開発・テストを技術者の工数で提供する。人月型。
| 数量技術者数(人) | 価格1 人あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 2,600 | 0.18 | 474 | 49 |
| 10 年後 中立 | 1,612 | 0.23 | 376 | 36 |
取り方:売上の残り約 72% と推定。技術者 2,600 人は筆者の推定(1 人あたり売上 1,820 万円)。営業利益率 10.3% は推定。【AI エージェント代替】人月型として中立で数量 0.62 倍・価格 1.28 倍。
リスクと懸念
AI エージェントによる工数の置き換え
開発は技術者の数と単価の積で稼ぐ。AI が設計・開発・テストを担えば数量が縮む。中立で開発の工数が 4 割近く縮むと置いた。
大手顧客の内製化
製造業や自動車関連の大手が AI を使って開発を内製すると、発注が絞られる。受託は発注先を替える費用が低く、値引き圧力も強い。
現金の使い道
純現金が時価総額の 35% あるが、買収で使えば価値を損なう恐れがある。還元の具体的な約束が確かめられず、現金が眠れば ROE も上がらない。
技術者の採用難
人手不足で採用費と人件費が上がる。単価に転嫁できないと、10% 台前半の営業利益率が削られる。
今後の分かれ目
- 開発の1人あたり売上が物価を下回って下がり始めたら
- やや悲観・悲観の筋書きに確率を移す。人月型の縮みが想定より速い合図とみる。
- クラウドサービスの売上比率が 35% に近づき、解約率の低さも確かめられたら
- クラウドの数量・価格の置き方を見直し、楽観側の確率を引き上げる。
- 総還元性向を含む数字の約束と自社株買いの追加が出たら
- 余った現金の戻り方への確信が強まり、安全域が厚くなる。
見ておくもの
- 中期計画の 2028/01 期目標(売上 720 億円・営業利益 86 億円・ROE 14% 以上)の進み具合
- クラウドサービスの売上比率(35% 目標)
- 開発の1人あたり売上と稼働
- 自社株買いの実績と総還元の方針
倍率と資本コストの決め方
クラウドサービスと開発に分け、AI エージェント代替の型(席・継続型と人月型)で 10 年を置いた。倍率は式の上限そのもので、今の株価や同業の値付けは見ていない。形はリースを含まず今と同じ。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。