結論
キッズスターは、子どもが企業の仕事を疑似体験できるアプリ「ごっこランド」を運営する会社である。筆者の結論は「やや割安」だ。国内の有力な子ども向け体験媒体を持ち、時価総額を上回る現金もあるが、事業の先行きと少数株主への還元には慎重な評価が必要である。
同社の収益を理解する鍵は、アプリのダウンロード数ではなく、企業が費用を払って出店し続けるかどうかにある。2025年末の国内パビリオンは96件だったが、2026年6月末には93件となった。半年間に新規出店が5件あっても、退店が8件あったためである。子どもに人気のアプリを持つことと、広告主から安定して値上げできることは別だと考えるべきだ。
一方、2025年末の自己資本は約24億円、純現金は約23億円あり、2026年6月末にも現預金は約24億円あった。この財務基盤は明らかな強みである。ただし、スポンサーから受け取った前受収益や事業運営に必要な資金まで自由に配れる現金ではない。大株主への持分集中が強く、上場以来の配当実績もないため、余剰現金が少数株主に戻る価値は額面より慎重に評価した。
2028年の会社目標は売上高25億円、営業利益5億円である。しかし、2026年上期は減収減益となり、国内出店の純減と海外事業の収益化の遅れも確認できる。中立の2035年像は、国内スポンサーの着実な拡大と体験イベントの成長を認めつつ、この計画を当然のように達成する前提にはしていない。上振れの余地は大きいが、現時点で強い価格決定力や高い継続率が実証された事業とは言い切れない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、最初に問うべきことは「このアプリが10年後も子どもに選ばれるか」ではなく、「企業が10年後も同社を通じて家庭との接点を買うか」である。アプリの流行は変わっても、企業が子どもや保護者に自社の仕事を理解してもらいたい需要は残る。問題は、その需要を同社が高い利益率で獲得し続けられるかどうかだ。
魅力は、既に利用者が集まる媒体を持ち、スポンサーのために仕事体験を企画してきた蓄積にある。利用者と広告主を結ぶ仕組みは、一から作ろうとする競合にとって負担が大きい。ゲーム内で企業の理解を深めるという商品には、単純な広告表示とは異なる価値もある。しかし、独自データの排他的な所有や規制による参入障壁はなく、顧客の契約更新時には広告予算を別の媒体に移せる。長期にわたる値上げ力を証明するには、退店率の低下と更新単価の改善が必要である。
もう一つの価値は、事業規模に比べて非常に厚い現金だ。景気の悪い時期に開発や販促を続けられるし、買収機会にも対応できる。だが、株主から見ると資金の存在と、その資金を所有者が自由に使えることは異なる。前受収益はスポンサーにサービスを提供する義務と結び付き、残る余剰現金についても還元方針が示されていない。帳簿の現金をすべて現在の株主価値に加えるのは適切ではない。
筆者は、この会社を単なる受託開発会社とは評価しない。独自の子ども向け媒体が事業の大部分を占め、その価値は簡単には消えない。一方、現金を使った海外投資と新規事業に高い成果を先取りして払うこともしない。現値には中立的な成長を超える安全域がわずかにあるが、投資先の収益化と株主還元の不確かさを考えれば、大きな余裕がある銘柄とは見ない。
何で稼ぐ会社か
主力の「ごっこランド」は、子どもが飲食店、鉄道、食品メーカー、保険などの仕事を遊びながら体験する無料アプリである。収益を払うのは利用する家庭ではなく、アプリ内に自社の体験コンテンツを設ける企業だ。スポンサーには、広告としての認知拡大だけでなく、子どもと保護者が企業の仕事を前向きに理解する機会を提供している。通常のバナー広告より深い接触が期待できる反面、効果測定と予算配分は広告主の判断に委ねられる。
2025年のデジタル事業の売上は約9.29億円で、全社の約8割を占める。国内パビリオンは期末96件で、利用指標として国内累計約850万ダウンロード、月間約2,200万回のプレイが会社資料に示されている。ただし、累計ダウンロードは現在使っている人数ではない。スポンサーの契約は原則2年から始まり、月額定額の形で対価を得る。収益の持続性を測るなら、利用回数とパビリオンの更新率を併せて見る必要がある。
第二の柱は実際の会場で仕事を体験する「ごっこランドEXPO」などのイベント事業である。2025年には約30回のイベントを開き、延べ約6.5万人が参加した。会場、運営スタッフ、企業との調整を必要とするため、アプリ事業ほど軽い費用構造ではない。それでも企業と家庭が同じ場所で接する体験には、動画や生成AIだけでは置き換えにくい価値がある。
第三は海外展開で、ベトナム、タイ、インドネシアなどに子ども向け職業体験アプリを広げている。2026年6月までの累計ダウンロードには一定の成果があるが、2025年の海外売上は約0.02億円にすぎない。利用者獲得とスポンサーからの代金回収の間には、まだ大きな距離がある。2026年には現地企業との提携を進めているものの、国内の単価をそのまま海外に当てはめることはできない。
残る収入には、企業向けの個別コンテンツ開発などが含まれる。2025年は約1.18億円あったが、大型案件の終了もあり、2026年の会社予想は縮小している。こうした受託制作は人の工数が売上に結び付くため、AIエージェントによる制作工程の自動化が利益の源泉を変えうる。主力の自社媒体とは、数量、単価、事業寿命を分けて評価する必要がある。
優良さと弱いところ
最も評価できる資産は、子どもが自ら繰り返し遊ぶ「ごっこランド」という媒体を持っていることである。広告主が新たに子ども向けアプリを作って集客するより、既存の利用者がいる場所に出店する方が合理的な場合は多い。企業ごとに仕事体験を作り、保護者にも受け入れられる形で提供してきた実績は、一定の参入障壁である。
ただし、この強みを独占的な堀とまでは評価しない。会社が示す比較では国内の主要な類似アプリに対しパビリオン数で優位にあるものの、それは比較対象を限定した結果である。子どもの時間を奪い合う相手にはYouTube Kids、Roblox、玩具、学習アプリ、実際の体験施設もある。スポンサーにはほかの広告媒体を選ぶ自由があり、アプリの乗り換えに法的な障害もない。
値上げ力にも未確認の部分が残る。企業が原則2年間契約することは短期の売上を安定させるが、更新時の継続率が高い証拠にはならない。実際、2026年上期には出店5件に対して退店8件となった。会社資料からは、更新率が年95%以上であることや、物価上昇を上回る値上げを繰り返した実績を確認できない。したがって、強い堀を前提とする長期の超過利益は評価に織り込まない。
資本効率の数字も読み方が難しい。上場前は少ない自己資本で利益を稼いだためROEが高かったが、2024年の上場に伴う資本増強後は現金が厚くなり、2025年のROEは6.7%となった。これは営業力が突然失われたことだけを意味しない。反面、積み上がった現金を高収益の新規事業へ再投資できなければ、株主全体の資本効率は低いままである。営業利益率が2割前後と良好でも、増分の投下資本利益率が資本コストを超えるかは今後の検証が必要だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
キッズスターが参加する市場は、子ども向けゲーム市場そのものではなく、企業が家庭との接点を買う広告・販促市場である。電通が発表した2025年の国内インターネット広告費は約4兆459億円だった。同社の国内デジタル売上約9.29億円は、その約0.023%にすぎない。ただし、この比率は巨大な広告市場との比較であり、子ども向け体験広告という狭い市場での正確なシェアではない。
リアルイベントについても、広告関連のイベント・展示・映像分野には数千億円規模の支出があるが、そのすべてを獲得可能な市場とみるべきではない。学校や自治体との連携、会場の確保、保護者の移動負担によって開催数には制約がある。競合には体験施設のキッザニア、各種の企業主催イベント、広告代理店が企画する親子向け催事がある。体験の質が評価されても、企業の販促費に見合う参加者数を継続的に集める必要がある。
国内の子どもの人口減少は避けにくい構造要因である。会社資料が示す国内の対象年齢人口は約730万人で、今後も出生数の減少による下押しを受ける。一方、子ども一人に使う教育費や体験費、企業が家族層との接点を重視する度合いは人口と同じ速度で減るとは限らない。国内の数量増加は市場人口の成長ではなく、まだ出店していない企業をスポンサーとして獲得し、利用頻度を保つことから生まれる。
同社の比較資料では、2025年末の「ごっこランド」のパビリオン96件に対し、比較対象の大手玩具メーカー系アプリは14件、大手通信会社系アプリは18件と示されている。この3媒体だけなら同社はパビリオン数の約75%を占めるが、業界全体のシェア75%という意味ではない。10年後に国内スポンサーが増える余地を認める一方、実績のない総市場支配を仮定しないことが重要だ。
海外にはベトナム、タイ、インドネシアの対象年齢人口が合計約5,420万人という人口面の魅力がある。しかし、現地企業の広告予算、アプリ広告の商慣習、所得水準は日本と異なる。累計ダウンロードが伸びても広告契約が増えなければ収益にはならない。さらに生成AIで子ども向け教材やゲームの制作が安価になれば、新規参入が容易になり、既存アプリの利用時間を奪う競争が激しくなる。自社媒体を持つ強みと、その媒体への注目が移ろいやすい弱さが併存する市場である。
資本政策と M&A
2026年3月に公表された事業計画では、2028年12月期に売上高25億円、営業利益5億円、営業利益率20%を目指している。内訳は国内デジタル約13億円、イベント約5億円、海外約3億円、新規事業・M&A約4億円という構想だ。既存事業の延長だけでなく、海外展開と新規投資の成功を必要とする計画である。ROEの具体的な目標や配当性向、DOE、総還元性向、自社株買いの金額については、確認した計画に数字の約束はない。
2025年までの配当実績はなく、株式の継続的な買い戻しも確認できない。大株主上位10名の持分はおおむね8割に集中しており、少数株主が余剰現金の配分を主導しにくい。余剰現金の経済価値は高いものの、それが配当や自社株買いとして戻る見通しはまだ弱い。このため現金の株主帰属価値には慎重な調整を加えた。
筆者が注目するのは、M&Aの規模ではなく投資後の成果である。自社アプリに出店企業を増やす投資なら既存顧客との関係を利用できるが、海外子会社の拡大や新規事業の取得では収益化を検証するまで時間がかかる。2026年上期の減収減益と退店増加は、資本配分を拡大優先から継続率と利益率の改善へ向ける必要性を示している。成長のために現金を使うこと自体は悪くないが、資本コストを超える増分利益を示せなければ、還元の方が株主にとって合理的である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
「ごっこランド」の強みは、企業が子どもに自社の仕事を遊びとして体験してもらえることだ。子ども向けに適切な表現を使い、スポンサーの商品知識をゲームに落とし込み、保護者にも安心して利用してもらうには経験が要る。蓄積した運営力に加えて月間約2,200万回のプレイがあることは、新たなスポンサーへの説得材料になる。ゲームの作り込みと企業向け営業を両立できる競合は、決して多くない。
国内のパビリオンは2025年末時点で96件だが、潜在的なスポンサーは食品、交通、医療、物流、金融、小売、製造など幅広い。現在の出店数が国内の上限だと考える理由はない。大手企業が子ども向けのブランド理解に費用を使い続けるなら、新規出店の余地は十分にある。既存スポンサーの更新が安定し、イベントへの同時出稿が増えれば、一社当たりの契約収入も高められる。
リアルイベントは広告媒体として独自の価値を持つ。子どもと保護者が実際に集まる場では、仕事体験や企業理解が記憶に残りやすい。イベントからアプリへの利用を促し、アプリからイベントへの来場を促せば、オンラインとオフラインを行き来する顧客接点になる。イベント開催数が増えるほど運営効率も改善し、広告主に複数の商品を提案しやすくなる。
海外では国内よりはるかに多い子ども人口に接することができる。ベトナム、タイ、インドネシアで利用実績を積み、現地スポンサーとの契約が増えれば、今は小さい海外売上が新たな柱になりうる。自己資本比率の高さと現金の厚さが試行錯誤の時間を与えてくれる。国内市場が成熟しても、企業向け体験メディアという仕組みを別の市場へ広げられる可能性がある。
慎重な見方
2026年上期の数字は、広告主がいつまでも同じ媒体に出店し続けるとは限らないことを示した。新規出店5件に対して退店8件となり、国内のパビリオンは純減した。広告主の予算が厳しくなると、効果を厳密に測りにくい子ども向けブランド広告は削減対象になりやすい。無料アプリの利用回数が大きくても、その価値を企業から現金として回収できなければ株主の利益にはならない。
国内の子ども人口は減少し、競争相手は子ども向け職業体験アプリに限らない。YouTube KidsやRobloxなどの巨大サービスが家庭の利用時間を集め、生成AIによって新しい教材やゲームを作る費用も下がる。スポンサーは独自のアプリや動画を以前より安価に用意できるようになり、媒体の利用者が増えても広告料の値上げが難しくなるおそれがある。過去の高い営業利益率は将来の契約単価を保証しない。
海外の累計ダウンロードは収益の証明ではない。国内で成立したスポンサー獲得の仕組みが、所得水準や商慣習の違う国でも同じ単価で通用するとは限らない。現地の営業人員、コンテンツ制作、翻訳、提携先との分配に費用がかかれば、利用規模だけ大きくなって利益は残らない。2028年計画に含まれる海外売上やM&Aの貢献は、まだ高い確度の利益とは言えない。
最大の弱点は現金の扱いかもしれない。無借金に近い財務は安心材料だが、配当実績がなく、大株主に持分が集中している。現金があっても、少数株主はそれを直ちに受け取れるわけではない。今後の海外投資や買収が期待した利益を生まず、国内スポンサーまで減れば、現金が徐々に使われるだけの10年になりうる。帳簿の純資産をそのまま株主価値の下限とみるのは危険である。
どちらに重みを置いたか
国内に独自の体験媒体を持つことと、事業規模を上回る現金があることを重視し、長期の評価は現値をやや上回る。ただし、2026年上期に退店超過と減益が起きている以上、会社計画の達成を中立にはできない。確率は上振れ28%、中立32%、下振れ40%とした。下側を厚くしたのは同社固有の契約更新と海外収益化の不確かさによるもので、AIによる数量・単価への影響を確率で重ねて二重に引く意図ではない。結論は「やや割安」だが、値上げ力と現金の還元が確認されるまでは安全域を大きく評価しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,921 円50 億円(+ 還元の換算額還元の合計 37 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 980 円26 億円、今との差 +21.6%、 期待の年率 +9.4%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,550 円145 億円 | 153 円4 億円 | +607.5% | +22.2% | 456 円12 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,164 円83 億円 | 76 円2 億円 | +302.0% | +15.2% | 648 円17 億円 |
| 中立 | 32% | 1,558 円41 億円 | 31 円1 億円 | +97.1% | +7.1% | 508 円13 億円 |
| やや悲観 | 25% | 922 円24 億円 | 0 円0 億円 | +14.4% | +1.4% | 231 円6 億円 |
| 悲観 | 15% | 765 円20 億円 | 0 円0 億円 | −5.0% | −0.5% | 115 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,921 円50 億円 | 37 円1 億円 | +142.9% | +9.4% | 1,958 円51 億円 |
今の株価時価総額 806 円21 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 国内の体験媒体が定着し、海外も収益化 利益 8 億円 · PER 16.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,550 円145 億円
国内の「ごっこランド」が子どもと家庭への有力な広告接点として定着する。広告主は単なる認知広告ではなく、学校教育や職業理解と結び付く長期の企業活動として出店を続ける。既存スポンサーの更新が安定し、食品、物流、医療、交通、金融などから新しい企業が加わる。パビリオンは年平均195件に増え、より深い体験コンテンツを提供することで契約単価も上昇する。
リアルイベントは通常のEXPOに加え、大規模催事や地域連携型の開催が広がる。年間120回の開催体制を築き、アプリと会場で同じスポンサーを獲得できるため営業効率が改善する。会場運営は人件費を要するが、協賛規模の大型化と継続開催によって利益率も高まる。
海外ではベトナムなどでの利用実績が現地企業の契約に結び付き、課金スポンサーが増える。現地の広告会社や企業との連携によって営業費用を抑え、海外が独立した利益源になる。買収を行う場合も利用者獲得や現地営業を補う小規模な案件にとどめ、手元の現金を大きく毀損しない。国内媒体、リアルイベント、海外展開が互いの集客と企業営業を助ける10年となる。
- 国内デジタル・ごっこランド:数量 195(年間平均の課金パビリオン相当数(件))× 価格 0.15(パビリオン1件当たり年間平均売上(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 11 億円。国内年平均課金パビリオン195件、年間単価1,500万円相当。更新率改善とスポンサー領域の拡大が前提。
- ごっこランドEXPO・リアルイベント:数量 120(年間開催イベント数(回))× 価格 0.07(イベント1回当たり平均売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。年間120回、1回平均700万円。大型・複合イベントへの構成転換を含む。
- 海外の職業体験アプリ:数量 140(年間課金スポンサー相当数(件))× 価格 0.07(課金スポンサー相当1件当たり年間売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。海外で課金スポンサー140件相当を獲得し、有償コンテンツが定着。
- 個別受託開発・その他:数量 4.0(年間標準受託案件相当数(件))× 価格 0.30(標準受託案件相当1件当たり平均売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。個別制作の数量は現在並み。AI効率化を利益率に反映するが、売上拡大の根拠にはしない。
倍率:資本コスト7.25%、10年後以降の名目成長率の上限1.5%、通常の堀に対応する超過収益の残存割合1/2を使う。余剰現金17.5億円と将来蓄積する非事業用現金を事業資本から外すと、高い営業利益率を維持する場合の事業ROEはおおむね30%前後となる。RONICを約19%とみた正当化PERは約16倍であり、16.2倍はこの近傍の上限評価である。現在や同業の市場PERは参照しない。現在の余剰現金に帰属する税後利息約0.245億円を純利益から外し、現金17.5億円には戻り方0.5を掛けて8.75億円を加算する。将来の留保現金の評価は所定の自動計算に委ね、ここでは二重加算しない。
確率:国内スポンサー195件相当、年間イベント120回、海外課金スポンサー140件相当という複数事業の同時成功が必要であり、可能性は認めるが低めに評価する。AIによって売上が増えることは前提にせず、自社媒体の営業力と海外の有償契約獲得が成果を生む場合である。
やや楽観 20% 国内成長とイベント拡大が続く 利益 5 億円 · PER 16.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,164 円83 億円
国内のパビリオン純減は一時的な調整で終わり、広告主への提案方法とコンテンツ更新を改善することで出店数が再び増える。食、交通、日用品、教育など従来の得意分野に加えて、子どもの生活に身近な業種が増える。年平均155件のパビリオンを運営し、企業が継続して費用を払う媒体としての地位を確かにする。
イベントは2025年の約30回から年間85回に増える。開催ノウハウの標準化が進み、自治体、商業施設、協賛企業との関係が積み上がる。開催費用の上昇を協賛規模の拡大で吸収し、リアルイベントが全社の第二の利益源になる。
海外ではアプリ利用を現地企業への営業に結び付け、いくつかの国で安定したスポンサー収入を獲得する。ただし、国内のような高い単価や利益率を直ちには実現できない。受託開発はAIによる制作の自動化で案件数がやや減る。大規模な買収には頼らず、国内で稼いだ利益をイベントと海外の営業基盤に再投資することで成長を続ける。
- 国内デジタル・ごっこランド:数量 155(年間平均の課金パビリオン相当数(件))× 価格 0.14(パビリオン1件当たり年間平均売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 7 億円。国内155件、年間実現単価1,370万円相当。国内のスポンサー開拓と一定の値上げ。
- ごっこランドEXPO・リアルイベント:数量 85.0(年間開催イベント数(回))× 価格 0.06(イベント1回当たり平均売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。85回、1回平均610万円。広域開催と大型案件の増加。
- 海外の職業体験アプリ:数量 75.0(年間課金スポンサー相当数(件))× 価格 0.06(課金スポンサー相当1件当たり年間売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。海外課金スポンサー75件相当。地域差によって収益性は国内より低い。
- 個別受託開発・その他:数量 3.4(年間標準受託案件相当数(件))× 価格 0.32(標準受託案件相当1件当たり平均売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。工数型の売上は現在を下回り、単価と案件構成で一部補う。
倍率:k7.25%、g_long1.5%、通常の堀による超過収益の残存1/2を使用。2035年に残る事業資本から現在と将来の非事業用現金を除くと、事業ROEは20%台半ば、RONICは約16%になる。正当化PERは約16倍で、事業収益の継続性に対応した上限そのものとする。現金の利息0.245億円を外した利益に倍率を適用し、現在の余剰現金は8.75億円だけ加算する。
確率:国内での新規スポンサー獲得が再び退店を上回り、イベントが定着する可能性は十分にある。ただし海外を含む収益拡大には実績の積み重ねが必要なため、楽観よりは確率を高めつつ、計画の全面達成を当然視しない。
中立 32% 国内は緩やかに拡大するが、海外の利益貢献は限定的 利益 2 億円 · PER 15.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,558 円41 億円
「ごっこランド」は子ども向けの企業体験アプリとして残り、食品、交通、生活関連企業が広告を出す場所であり続ける。ただし、すべてのスポンサーが契約を更新するわけではない。新規出店で退店を補いながら、年平均118件の課金パビリオンを維持する。企業側の広告効果に対する説明責任が強まり、単価は物価の累積上昇ほどには伸びない。
イベント事業は2025年の30回から年間62回へ増える。地方自治体や商業施設との協業は広がるが、会場費と人件費も上昇するため、利益率の上昇は限定的である。アプリの集客と組み合わせることで開催を継続できるものの、国内デジタル事業と同じ高い利益率にはならない。
海外では累計ダウンロードの増加を有償スポンサーの契約につなげるが、現地単価と営業費用の制約が大きい。課金スポンサー40件相当まで進み、売上規模は拡大するものの、全社の利益への貢献は小さい。受託開発はAIエージェント代替で標準的な案件数が現在の約6割に縮む。M&Aによる一時的な売上の上乗せは見込まず、国内媒体とイベントで稼ぎながら現金を大きく減らさない10年となる。
- 国内デジタル・ごっこランド:数量 118(年間平均の課金パビリオン相当数(件))× 価格 0.12(パビリオン1件当たり年間平均売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 4 億円。国内平均118件、年間実現単価1,240万円相当。値上げは10年間の物価上昇率を下回る。
- ごっこランドEXPO・リアルイベント:数量 62.0(年間開催イベント数(回))× 価格 0.05(イベント1回当たり平均売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。年62回、1回平均510万円。開催数は増えるが会場費・人件費の負担も残る。
- 海外の職業体験アプリ:数量 40.0(年間課金スポンサー相当数(件))× 価格 0.05(課金スポンサー相当1件当たり年間売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。海外有償スポンサー40件相当。利用者獲得後の収益化は緩やか。
- 個別受託開発・その他:数量 2.4(年間標準受託案件相当数(件))× 価格 0.31(標準受託案件相当1件当たり平均売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。工数型の標準案件数は現在の0.60倍、単価は約1.05倍。AIエージェント代替の圧力を反映。
倍率:2035年の自己資本37.99億円のうち、現在の余剰現金17.5億円と10年間に蓄積する非事業用現金を除いた資本で事業ROEを測る。事業ROEは10%台後半、RONICは約12%と見込み、k7.25%、g_long1.5%、通常の堀の超過収益残存率1/2から、正当化PERは約15倍となる。成熟後に名目3%の値上げが永続すると仮定しないため、gは1.5%に制限する。現在の現金に帰属する税後利息0.245億円を除いた利益に15.15倍を適用し、余剰現金の株主帰属価値8.75億円を加える。今の株価・過去の市場PERを倍率の根拠にしていない。
確率:国内の媒体価値と営業基盤は残る一方、2026年に確認された退店と減益を踏まえ、2028年計画の達成をそのまま延長しない。子ども人口の減少と広告予算の競争を受けながら、スポンサー数は10年で緩やかに増えると考える。
やや悲観 25% 国内の出店停滞と海外投資負担が長引く 利益 1 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 922 円24 億円
国内の「ごっこランド」は一定の利用者を保つものの、スポンサー企業の予算配分が厳しくなる。契約更新時に広告効果の説明を求められ、出店を減らす企業が増える。新規獲得は退店を十分に補えず、課金パビリオンは年平均85件へ減少する。単価も物価上昇に追いつかず、国内の売上は名目でも大きくは増えない。
イベント事業は開催を続けるが、会場と運営スタッフの費用が重い。イベント数は年40回程度にとどまり、企業の協賛金額も大型化しない。海外ではアプリ利用者の獲得が有償契約につながりにくく、売上が伸びても販促費を回収する段階まで届かない。国内の減益を海外が埋めることはできない。
受託開発はAIエージェントによる制作工程の置き換えで案件数が減る。会社は人員を抑制し、開発委託費と販促費を絞って営業黒字を維持する。配当を始める余裕は乏しく、既存の現金を安全資金として保有し続ける。主力媒体の価値は残るが、新しい投資から得る利益が資本コストを下回る10年となる。
- 国内デジタル・ごっこランド:数量 85.0(年間平均の課金パビリオン相当数(件))× 価格 0.11(パビリオン1件当たり年間平均売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 3 億円。国内85件、年間単価1,140万円。既存媒体の利益率は一定程度残るが、スポンサー数が減る。
- ごっこランドEXPO・リアルイベント:数量 40.0(年間開催イベント数(回))× 価格 0.05(イベント1回当たり平均売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。年間40回、平均490万円。固定費負担で採算が改善しにくい。
- 海外の職業体験アプリ:数量 15.0(年間課金スポンサー相当数(件))× 価格 0.05(課金スポンサー相当1件当たり年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。海外の有償契約は限定的で、初期投資の回収が遅れる。
- 個別受託開発・その他:数量 1.6(年間標準受託案件相当数(件))× 価格 0.29(標準受託案件相当1件当たり平均売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。標準案件数は現在の4割となり、縮小した案件の費用管理で小幅黒字を保つ。
倍率:国内の契約減少と海外投資の回収遅れで事業の超過収益が乏しくなった状態として評価する。資本コスト7.25%に対する稼ぐ力の上限1÷k=13.79倍を使用し、将来の高成長価値を加えない。純利益から現在の余剰現金の税後利息0.245億円を除いた部分に倍率を適用し、現金の株主帰属価値8.75億円を加える。資本の帳簿額そのものが少数株主へ戻るとは仮定しない。さらに、10年間に必要事業資本を超えて蓄積する現金については、所定の自動計算による株主帰属価値を加え、対応する受取利息の資本還元との重複を除く。この効果を加えた時価総額は約22億円となる。
確率:2026年上期の退店超過、デジタル需要の伸び悩み、イベント拡大に伴う費用増が継続する場合。下に寄せる理由:主力のパビリオン数がすでに純減し、2026年会社予想も利益の減少を示しているため、競争激化は抽象的な懸念ではない。
悲観 15% 広告主が離れ、事業の堀が崩れる 利益 −1 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 765 円20 億円
生成AIで子ども向けの学習コンテンツやゲームを安く作れるようになり、巨大な動画・ゲーム媒体が利用時間をさらに集める。スポンサー企業は独自アプリ、動画配信、別の体験施設へ予算を振り向ける。国内のパビリオンは年平均42件まで縮み、企業向けの単価も下がる。残った利用者の満足度を保つには更新費用がかかり、かつての高い営業利益率は維持できない。
リアルイベントも協賛が集まらず、開催回数を絞る。少ない開催数では会場と運営人員の費用を十分に回収できず、損失が出る。海外では有償スポンサーの獲得が進まないまま現地事業を縮小する。受託開発もAIエージェント代替と価格競争によって採算を失い、全社は営業赤字となる。
会社は新規投資を取りやめ、不採算事業を閉じる。アプリのソフトウェア資産には減損が生じ、過去に蓄えた現金の一部も撤退費用に充てられる。株主還元は行われない。事業の将来利益からは十分な価値を見いだせないため、残存する現金のうちスポンサーへの履行義務と撤退費用を控除した換金可能額を価値の中心とする。これは単なる景気の谷ではなく、媒体としての優位が失われる10年である。
- 国内デジタル・ごっこランド:数量 42.0(年間平均の課金パビリオン相当数(件))× 価格 0.10(パビリオン1件当たり年間平均売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。国内42件、年間単価1,000万円。スポンサー離脱と価格競争で収益が大幅に縮む。
- ごっこランドEXPO・リアルイベント:数量 15.0(年間開催イベント数(回))× 価格 0.04(イベント1回当たり平均売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。開催15回、平均350万円。少ない催事数では人員・会場費を回収できない。
- 海外の職業体験アプリ:数量 2.0(年間課金スポンサー相当数(件))× 価格 0.02(課金スポンサー相当1件当たり年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。海外の有償展開を事実上縮小し、残務費用が残る。
- 個別受託開発・その他:数量 1.0(年間標準受託案件相当数(件))× 価格 0.20(標準受託案件相当1件当たり平均売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。受託制作がAIで代替され、低単価の残存案件も赤字になる。
倍率:営業赤字が残るためPERではなく現在の自己資本23.6億円に対する資産価値で評価する。0.85倍は現在自己資本の約20.06億円に相当し、2026年6月末の現預金24.46億円から前受収益約3.88億円と撤退・決済費用約0.58億円を控除した換金可能額約20.0億円をわずかに上回る。2025年末のソフトウェア等の無形資産約3.0億円は売却できる床として加算しない。将来10年の留保利益や余剰現金を別途加算しないため、現金の二重計上はない。
確率:子ども向けアプリの競争、広告予算の縮小、海外投資の不振が重なる構造的な敗北の筋書き。既存利用者と現金があるため直ちに倒産するとは考えないが、事業の稼ぐ力が失われる可能性は無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内デジタル・ごっこランド
企業がアプリ内の仕事体験パビリオンに出店する自社媒体型の広告事業。スポンサーの継続件数と契約単価が収益の中心になる。
| 数量年間平均の課金パビリオン相当数(件) | 価格パビリオン1件当たり年間平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 92.0 | 0.10 | 9 | 3 |
| 10 年後 中立 | 118 | 0.12 | 15 | 4 |
取り方:2025年の国内デジタル売上9.29億円は会社の事業計画資料。期末パビリオンは2024年88件、2025年96件なので、年度平均を92件と近似した。9.29億円÷92件で年間実現単価約1,010万円を推計する。企業ごとの契約開始日、個別価格、値引き、制作費配分は非開示であり、単価は確定した料金表ではない。国内累計約850万ダウンロード、月間約2,200万回のプレイは課金件数とは別の利用指標。営業利益3.05億円は全社利益を費用特性から配賦した分析上の推計で、会社が開示したセグメント利益ではない。広告市場シェアは国内ネット広告費4兆459億円に対して売上の約0.023%だが、子ども向け体験広告という狭い領域のシェアは不明。AIの型は自社利用者を持つ媒体広告枠であり、席課金SaaSではない。
ごっこランドEXPO・リアルイベント
企業と協賛し、会場で子どもの仕事体験を提供する催事。開催回数、参加者数、協賛・出展単価が収益を決める。
| 数量年間開催イベント数(回) | 価格イベント1回当たり平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 30.0 | 0.04 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 62.0 | 0.05 | 3 | 0 |
取り方:会社資料の2025年イベント関連売上1.06億円と年間約30回、延べ約6.5万人参加から、1回当たり売上を約353万円と推計した。大型イベントと通常イベントでは規模が異なるため平均値であり、契約単価の開示ではない。2026年計画には通常型EXPO35回などの目標が示されている。営業利益0.13億円は会場費と運営人員の負担を考慮した推計で会社開示の区分利益ではない。イベント・展示等の広い広告市場に対する同社の割合は小さいが、子どもの職業体験イベント市場に限定したシェアは公表資料から確定できない。AIは事前の企画・制作費を下げうるが、実際の会場での体験と安全管理は代替しにくい。
海外の職業体験アプリ
ベトナム、タイ、インドネシアなどで現地企業にデジタル体験コンテンツのスポンサー参加を提案する事業。
| 数量年間課金スポンサー相当数(件) | 価格課金スポンサー相当1件当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.0 | 0.02 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 0.05 | 2 | 0 |
取り方:2025年の海外事業売上約0.02億円は会社の事業計画資料による。スポンサー別の契約件数と単価は非開示のため、初期の有償実証収入を課金スポンサー1件相当として逆算した分析用の単位であり、実際の契約企業が厳密に1社という主張ではない。2026年6月末の累計ダウンロードはベトナム約300万、タイ約42万、インドネシア約83万で、利用者獲得に対して収益化が初期段階にある。営業損失0.15億円は現地営業・制作費の先行負担を想定した推計。対象年齢人口合計約5,420万人は人口面の市場上限の目安だが、有償広告の市場規模や同社シェアは開示されていない。
個別受託開発・その他
企業向けの個別デジタルコンテンツ制作など、案件ごとに開発・制作工数を提供する収入。
| 数量年間標準受託案件相当数(件) | 価格標準受託案件相当1件当たり平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.0 | 0.30 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 0.31 | 1 | 0 |
取り方:会社の2025年事業別資料にあるその他・個別開発関連売上約1.18億円を使用。実際の案件数と単価の開示がないため、約2,950万円の標準案件4件相当という分析用の単位に分けたもので、実際に4件受注したという意味ではない。大型案件の終了により2026年会社予想では同区分の収入が縮小する。営業利益0.15億円は人件費配分に基づく推計。AIエージェント代替の型は人月・工数による受託制作であり、中立の10年後数量は現在の0.60倍、価格は約1.05倍とする。成果報酬型への移行実績がないため、AIで案件が増えるとは仮定しない。
リスクと懸念
スポンサーの退店と価格決定力の不足
2026年上期には新規出店5件に対し退店8件となった。原則2年契約は短期の売上を支えるが、更新時に企業が広告費を見直す自由は残る。契約更新率や同一スポンサー単価の実績が十分に開示されなければ、パビリオン数の増加を永続的な高収益に結び付けて評価することはできない。
AIエージェント代替と子どもの利用時間の争奪
個別のコンテンツ制作はAIエージェントに置き換わりやすく、中立では受託制作の案件数量が10年で約4割減ると評価した。主力の自社媒体は直接的な人月事業ではないが、生成AIによってスポンサーや競合が独自の子ども向けコンテンツを安く作れるようになる。アプリへの来訪減少と広告料への圧力を、媒体側の数量と単価にも反映している。
海外の利用者数が売上に変わらない
東南アジアでは累計ダウンロードの実績があるものの、2025年の海外売上は約0.02億円にすぎない。現地の広告単価、企業の教育広告への予算、営業体制には大きな不確かさがある。利用者の拡大に合わせて制作・営業費用が増えれば、売上が伸びても利益が残らない。
子ども人口の減少と競合媒体への移行
国内の対象年齢人口は長期的に減少する。企業が家庭への接点を重視し続けても、YouTube Kids、Roblox、教育アプリ、実際の体験施設との競争がある。累計ダウンロード数が積み上がっていても、月間プレイ数や現在利用している家庭が減れば、スポンサーへの媒体価値は低下する。
イベント拡大に伴う固定費と採算
イベントはAIが置き換えにくい現場体験という強みを持つ半面、会場費、人件費、輸送費、安全管理費が必要である。回数を増やしても参加者数や協賛単価が追い付かなければ、売上増加が利益増加につながらない。新しいリース会計で負債の表示が変わる場合も、実際に払う固定的な費用を重視する。
余剰現金の配分と大株主への持分集中
純現金は時価総額を上回るが、前受収益や運転資金を除いたすべてが少数株主に分配されるわけではない。上位株主に持分が集中し、配当・大規模自社株買いの実績が乏しいため、海外展開や買収で現金を使う判断を少数株主が制約しにくい。投資の増分利益が資本コストを下回れば、現金の厚さは株主価値の増加に結び付かない。
中期計画と足元の収益の距離
会社は2028年売上高25億円、営業利益5億円を掲げる一方、2026年上期には減収減益となり、通期営業利益予想も2025年実績を下回る。計画には海外と新規事業・M&Aの寄与が含まれており、既存アプリの契約件数だけから達成を確信できない。進捗の遅れを新たな投資で埋めようとすれば、資本効率が下がる可能性がある。
今後の分かれ目
- 国内パビリオンの純増が複数四半期続き、退店率の低下も数字で確認できたら
- 国内の継続率とスポンサー獲得力に対する確信度を上げる。中立の課金パビリオン数と営業利益率を引き上げ、やや楽観の確率を高める。
- 既存スポンサーの契約単価が物価上昇を上回り、更新率も高いと開示されたら
- 媒体の値決め力が示されたと評価する。長期の価格前提と通常の堀という判定を見直す余地が生じる。単なる新規大型案件の増加と、既存契約の値上げは区別する。
- 2028年に向け海外売上と営業利益がともに増え、現地スポンサーの件数・単価が開示されたら
- 海外アプリのダウンロード数を収益に結び付ける仕組みが証明されたとみる。海外の課金スポンサー数量と利益率を上げ、上振れ側の確率を引き上げる。
- 国内の退店超過が続き、月間プレイ数も減少したら
- 広告主と家庭の双方に対する媒体価値が低下していると判断する。国内パビリオン数量を減らし、やや悲観・悲観への確率配分を増やす。
- イベント開催数が増えても、参加者数当たりの収益や利益率が改善しなかったら
- イベントの成長に必要な現場費用が予想以上に重いとみる。イベント単価・営業利益率を下方修正し、開催数の拡大だけを評価しない。
- 配当方針や自社株買いの具体的な数値目標が公表され、実行も確認できたら
- 余剰現金が少数株主へ戻る確度を再評価する。継続した還元実績が条件を満たせば、現金の戻り方を0.5から0.75、さらに1.0へ引き上げる余地がある。
- 大型買収によって現金が大きく減少し、買収先の利益や投資回収が開示されなかったら
- 財務上の安全域が失われると考える。余剰現金と悲観の換金可能資産を減らし、資本配分の失敗を下振れシナリオへ織り込む。
見ておくもの
- 四半期末の国内パビリオン数、新規出店数、退店数、更新率
- 国内アプリの月間プレイ回数と実際の継続利用者数
- 既存スポンサーの平均年間契約単価と契約更新時の値上げ率
- リアルイベントの開催数、参加者数、協賛金額、事業利益
- 海外の国別課金スポンサー件数、契約単価、売上、営業損益
- 2028年計画の国内13億円、イベント5億円、海外3億円、新規事業・M&A4億円への進捗
- 現預金、前受収益、ソフトウェア資産、営業キャッシュフローの推移
- 配当、自社株買い、M&Aの投資額と買収後利益の開示
- AIによる内製制作の普及と受託開発案件の数量・単価
倍率と資本コストの決め方
2026年10月23日の株価805円、発行済株式262万1,000株による時価総額は約21.10億円である。現在の株価や同業のPERから将来倍率を決めず、国内の課金パビリオン、イベント開催数、海外の課金スポンサー、受託案件という実物の数量と単価から2035年の売上を積み上げた。2025年の事業別売上9.29億円、1.06億円、0.02億円、1.18億円は会社資料に基づくが、個別単価と事業別営業利益には開示不足があるため推計と明記した。倍率はk7.25%、通常の堀、10年超のg1.5%、将来の事業ROEから求める正当化PERを使い、現在の余剰現金は戻り方0.5で評価する。2025年末の純現金23.4億円を全額株主価値に加えず、前受収益と運転資金を分けた。悲観の換金可能額約20億円と2035年の悲観時価総額20.06億円の整合も確認した。新リース会計による表示変更があっても、家賃・会場費を実際の費用として比較する。5筋書きの時価総額と還元を資本コスト7.25%で現在価値に直した基礎評価は約24.29億円で、現時価総額に対して約15%上回る。将来蓄積する非事業用現金は所定の計算で別途評価するため、この基礎評価へ手作業で二重加算していない。株価への迎合ではなく、事業の持続性と還元の弱さを織り込んでも「やや割安」と判断する。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。長期国債利回り3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%から、純現金の厚さによる質の調整-0.25%だけを反映した。海外展開、退店、支配株主、AIエージェント代替の固有リスクは、資本コストに上乗せせず事業の数量、利益率、確率に反映する。