結論
日本プロセスは、鉄道の運行管理、電力網の制御、車載ソフト、危機管理、半導体記憶装置などの開発を担う技術者集団である。筆者の結論は「割高」だ。開発対象そのものは十年後も必要とされようが、必要なシステムと、外部の技術者に発注される作業量は同じではない。安全性の高い仕事で利益を伸ばしてきたことを評価しても、現在の時価総額165億円に対し、将来の還元を含む本質価値は約111億円とみる。
強みは、止めることが許されない社会インフラの仕様、検証、運用を理解している点にある。JR東日本情報システムのコアパートナー認定も信用の証しだ。一方、2026年5月期の売上の約四割は日立製作所とAstemoの二社向けだった。技術が顧客の現場に蓄積されるほど関係は続きやすいが、発注量と価格を決めるのは主として顧客側である。
第七次中期計画の目標は一年前倒しで達成し、2027年5月期も増収増益を見込む。ただし長い時間では、AIエージェントが設計補助、実装、テスト、文書作成の工数を圧縮する。会社がAIを活用して原価を下げる利益と、顧客が少ない人月しか買わなくなる損失は別問題だ。十年先の価値では後者を重く見た。
財務は健全で、配当と自社株買いには評価すべき実績がある。しかし2026年7月の約16億円の自社株買い後も、決算時点の現金をそのまま保有しているものとして値付けしてはいけない。金融資産の防波堤はあるが、成長企業並みの値段を払える独立した商品・データの堀までは確認できない。
バリュー投資の観点から
十年間の持ち主として最初に問いたいのは、この会社が売っているものの正体だ。鉄道の運行を正しく制御する技術は不可欠であり、その技術を身につけた人材にも価値がある。しかし株主が所有しているのは鉄道システムの権利でも、利用者が増えるほど利益が増える共通基盤でもない。顧客が買うのは、仕様を理解し、期限内に完成させる技術者の働きである。
この違いはAIによって大きくなる。安全確認や現場の責任はなくならないが、書くコードと必要な試験の一部が自動化されれば、これまで十人で売っていた仕事を五人で終えられる。日本プロセスが先にAIを使えば当面は粗利が厚くなる。だが顧客は遅かれ早かれ、それに見合う契約の縮小や内製化を要求するだろう。十年後にも同じ人月を売れると考えて長期成長を買うのは危うい。
一方、経営には資本配分の節度が見られる。借金を増やして大型買収を重ねるのでなく、必要な育成と配当を続け、大規模な自社株買いも実行した。財務的な破綻は想定しにくく、売れる金融資産が悲観時の支えになる。それでも資産の厚さは、事業が資本コストを超えて稼ぎ続ける証拠ではない。
再投資の対象が安全検証の独自技術、複数顧客で使える製品、成果に応じた価格契約へ変わり、それが実際の売上と利益に表れるなら見立てを改めたい。いまは顧客集中が大きく、独占的な値上げ力も立証されていない。優れた技術者集団であることは認めながら、支払う値段に十分な安全域がないというのが長期保有者の判断だ。
何で稼ぐ会社か
収益源は、自社ソフトの利用料ではなく、顧客のシステムを設計し、作り、検証する仕事である。会社は仕様決定から完成までを引き受けるT-SESを掲げるが、五つの報告セグメントはいずれも実質的には受託開発・技術支援の工数商売だ。2026年5月期には連結従業員780人を擁し、技術者と協力会社の開発力を組み合わせて、合計121億円を売り上げた。成果物に責任を持つ仕事でも、工数が売上の土台である点は変わらない。
制御システムは、電力系統や発電所の監視制御、東京圏輸送管理システムATOS、新幹線・在来線の運行管理を扱う。2026年5月期の売上は約19.5億円だった。設備は長く使われ、更新時にも既存仕様への深い理解が必要なため、五事業の中では継続性が高い。
自動車システムは約26.3億円を売り上げる。Astemoやデンソーなどに向けてADAS、車載基本ソフト、画像センサー、電池管理や車載情報を開発する。自動車がソフト中心へ移るほど開発対象は増えるが、車種の開発中止や完成車メーカーの共通基盤への統合で、下請けの仕事量が突然変わる。
特定情報システムは約20.1億円で、防災・危機管理、航空宇宙、衛星画像の処理などを手がける。組込システムは約18.4億円で、半導体記憶装置の制御ソフト、建設機械のIoT、医療機器などを支える。前者は機密性と運用知識が壁になるが、後者は半導体・建機の開発サイクルに左右される。
最大の産業・ICTソリューションは約36.9億円で、ガバメントクラウド、業務・公共システム、駅務機器、クラウド構築を担う。各セグメントの報告利益は合計約28億円だが、そこには配賦されない本社費約13億円があり、連結営業利益は約15億円になる。したがって顧客先での高い採算を、そのまま会社全体の収益力と見ることはできない。
優良さと弱いところ
最も確かな強みは、顧客のシステムが壊れたときの損失が大きい仕事を長く任されてきたことだ。1960年代から制御を手がけ、鉄道、電力、防災、車載の複雑な仕様を知る技術者を育ててきた。鉄道の更新では過去の障害対応や試験手順を理解する人材が必要となり、競合への乗り換えには検証と教育の手間がかかる。これは安価な汎用開発会社にはまねしにくい。
収益性も改善している。営業利益率は2016年5月期の約7.6%から2026年5月期には約12.4%へ上がった。社員の離職率が約3%にとどまり、技能を社内に蓄えられている点は有利だ。一方、平均年収が約885万円に達する中で、賃上げ分を持続して契約価格へ転嫁できるかを確かめる必要がある。会社が直接の値上げ率や解約率を継続開示しているわけではなく、実績だけで強い価格決定力を認定することはできない。
競争上の地位には限界がある。日立製作所向けが売上の29.0%、Astemo向けが10.9%を占め、メーカーと大手SIerが仕様、調達、契約形態を主導する。自社が管理する顧客共通の基盤、独占データ、法改正ごとに値上げできる業務の正本は確認できない。安全性と顧客固有知識による参入障壁はあるが、全社を強い堀の企業と呼ぶには足りない。
再投資の利回りは過去の改善ぶりだけでは判定できない。人材育成に投じた資金が少額の設備投資で大きな増益を生んだように見えるが、現金の積み上がりや株数変化が資本利益率を動かしている。2026年5月期は純利益約11.4億円に対し営業キャッシュフローが約1.9億円にとどまった。債権の回収状況を含むオーナー利益を点検し、ROEの高さを永久の増分投資利回りだと決めつけない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のITサービス需要は足元で拡大している。IDC Japanによる2024年の市場は約7.02兆円で、2029年には約9.66兆円への成長が予測される。2025年の概算市場7.5兆円に2026年5月期の全社売上を対比すると、日本プロセスは約0.16%にすぎない。ただし組込・車載の製品開発は統計の境界をまたぐため、これは市場での正確な占有率ではなく規模感の物差しだ。
車載ソフトだけは比較的明瞭な分母がある。矢野経済研究所は外部開発会社や半導体・マイコン事業者を含む国内市場を2025年に6,790億円、2030年に約1兆円と見積もった。自動車システムの売上約26億円は前者の約0.39%に当たるが、年度と集計範囲が異なるので参考比率である。競合はSCSK、富士ソフト、車載専業会社、さらに完成車メーカーとデンソーなどの内製部隊だ。市場が伸びても、SDVの共通基盤が普及すれば独立した受託業者の取り分はむしろ縮む。
制御システムでは日立製作所、三菱電機、NECなどの鉄道・電力関連企業が競争相手にも発注者にもなる。特定情報システムではNECや日立などの防災・宇宙関連開発部隊、組込ではシステナやDTS、産業・ICTでは富士通、NTTデータ、NEC、SCSKなどが重なる。狭い分野ごとの外注開発市場と競合の占有率は公開統計で切り出せず、正確な数値を主張しない。代わりに有報の受注実績と実際の請求工数の推移から、自社の取り分が拡大しているかを判定する。
広義の国内ITサービス市場については、別定義のガートナー調査でNTTデータが10.1%、NECが8.3%、富士通が8.0%、日立製作所が7.7%とされる。これはIDCの7兆円市場とは分母が違い、これらの数字を混ぜて日本プロセスのシェアを計算してはいけない。大手の発注を受ける中堅という地位を考える際の参考にとどめる。
今後の分岐は市場全体の成長率ではなく、一件の開発を終えるのに顧客が何人月を買うかだ。AIエージェントはコード生成、テスト、要件の整理を速くし、発注側の内製を助ける。交通・危機管理の最終承認、現物試験、責任分界は残るが、その手前の手作業は減る。実質の請求工数は中立でも全事業で今の55〜75%程度まで減る方向を重視し、十年を超えた名目成長もゼロとみる。
資本政策と M&A
資本政策はこの会社の明確な長所だ。第七次中期経営計画は2027年5月期に売上高120億円以上、営業利益12億円以上、ROE8%以上を掲げ、2026年5月期に一年前倒しで達成した。株主還元には累進配当と連結配当性向66%の目標があり、2025年から2029年までの特別配当も約束している。2027年5月期の配当予定は現在の株数に換算すると年約8億円規模に相当する。
2026年7月には約15.9億円を投じて88.3万株を取得した。取得規模は実施前の自己株控除後株式の約9%と大きく、少数株主にとって資本の滞留を防ぐ行動である。同時に、2026年5月期末の自己資本約116億円と純現金約56億円を、そのまま買付け後の残高として使うのは誤りだ。2026年8月末の自己資本約99億円と現預金・有価証券を評価の起点とする。
過去十年の大きな企業買収は目立たず、2018年のアルゴリズム研究所子会社化、2021年の吸収合併は専門人材の獲得が主眼だった。2014年のアドソル日進との提携は解消し、2025年には大株主SCSKと資本業務提携した。SCSKの持分は約二割で、協業による受注増と、発注・経営両面での依存を見極めたい。将来のTOBを価値の前提にはしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
社会インフラは、短く安いコードが書けるだけでは動かせない。鉄道の運行管理、電力系統、航空宇宙、防災、車両の安全機能には長期にわたる試験、監査、障害対応の知識が必要だ。日本プロセスは半世紀を超える開発の経験があり、JR東日本情報システムのコアパートナーにも認定された。大規模な更新では仕様の記憶と顧客の信頼が受注を呼び、乗り換えに要する時間と失敗の危険が参入障壁となる。
2026年5月期は売上も営業利益も過去最高を更新した。鉄道・電力の更新、航空宇宙・危機管理、半導体記憶装置、行政のクラウド移行が重なり、五事業すべてが増収だった。車載のソフトウェア化によって新しい開発範囲が生まれ、SCSKとの連携も大きな案件を受ける足場になる。会社はすでにAI駆動開発を社内へ広げ、利益率の上昇に生産性改善が寄与している。工程の短縮が必ずしも売上減につながるとは限らず、上流の設計から検証まで一括で請け負えば、価値を価格に転嫁できる余地がある。
財務の余力も魅力だ。借入負担が小さく、累進配当と自社株買いの実行によって経営者は株主に資金を返している。景気が悪い時期にも技能者を確保できれば、競合が撤退した後の大型案件を取り込める。顧客固有の検証ノウハウが十年後も不可欠であれば、現在の市場で疑われているほど開発の仕事量は減らず、名目の売上と利益を維持できる。
慎重な見方
受託開発の歴史が長いことと、独立した値決め力を持つことは違う。日本プロセスは日立製作所とAstemoの二社で売上の約四割を占める。大手の設計部門がAIエージェントを使って実装やテストを内製し、外注先へは安全確認と例外対応だけを任せる形になれば、システムの重要性が増しても日本プロセスの請求可能な人月は減る。顧客固有の知識は契約を守る武器だが、発注者の交渉力を逆転する武器ではない。
市場の成長を根拠に工数を増やすのも危険だ。自動車ではSDVの共通基盤化が進み、車種ごとの個別実装が統合される。実際に会社の2027年5月期第1四半期では、自動車システムが減収となり、利益の減少も大きかった。完成車メーカーが電動化投資を変更するたびに協力会社の人員配置が揺れ、半導体関連も同じ循環を免れない。ガバメントクラウドでは外国製の大規模基盤と国内の巨大SIerが元請けとなり、小規模な受託会社の取り分は限定される。
AIは単に競争相手が一社増える話ではない。発注者自身が従来の外注工程を必要としなくなる変化であり、過去十年の売上成長を延長する前提を壊す。安全性を理由に残る試験やレビューにも自動化は波及するだろう。特定情報や制御の仕事が残っても、工数の大きい産業・ICTや組込が減れば本社費は重くなる。足元の高い営業利益率を十年後まで固定するのは楽観にすぎない。
金融資産は下値を支えるが、少数株主は自由に清算できない。配当性向が高いことは評価できても、将来の利益が細れば配当原資も減る。自社株買い後の現金を買付け前と同じ額で見れば価値を二重に数えてしまう。技術者の腕と株主に帰属する将来の利益は分けて考える必要がある。
どちらに重みを置いたか
社会インフラの安全性、鉄道・電力の更新需要、株主還元の実績では前向きな見方に説得力がある。それでも、全事業が工数を売る仕組みで、収益の約四割を二社に依存するという事実は重い。AIエージェントによる工数減少は中立の数量に織り込んだため、確率でもう一度同じ損失を重ねない。
上下の確率は楽観側28%、慎重側38%とした。下に寄せる理由は車載OEMの開発計画変更と、大口顧客が契約方式を切り替える固有の不確実性である。純現金と還元が極端な悪化を和らげるが、期待価値は今の時価総額を約33%下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,494 円132 億円(+ 還元の換算額還元の合計 668 円59 億円)。 今の値に割り戻すと 1,259 円111 億円、今との差 −30.8%、 期待の年率 +2.1%(資本コスト 6.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,152 円278 億円 | 1,192 円105 億円 | +138.7% | +11.0% | 348 円31 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,421 円213 億円 | 931 円82 億円 | +84.1% | +7.5% | 670 円59 億円 |
| 中立 | 34% | 1,543 円136 億円 | 726 円64 億円 | +24.7% | +2.7% | 772 円68 億円 |
| やや悲観 | 25% | 636 円56 億円 | 454 円40 億円 | −40.1% | −6.1% | 272 円24 億円 |
| 悲観 | 13% | 567 円50 億円 | 204 円18 億円 | −57.6% | −9.2% | 100 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,494 円132 億円 | 668 円59 億円 | +18.8% | +2.1% | 2,162 円191 億円 |
今の株価時価総額 1,820 円160 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 社会インフラの深い知識で収入を守る 利益 16 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,152 円278 億円
十年後も社会インフラの更新案件を取り続け、制御・防災・車載の深い仕様知識が請負範囲の拡大につながる。ATOSと電力グリッドの更新が重なり、航空宇宙・危機管理の案件も増える。SCSKとの連携は元請け案件への参加機会を広げるが、資本の主導権を譲るような大型再編は起きない。自動車では共通ソフトの開発体制に入り込み、電動化の波が弱くても先進運転支援の仕事を守る。
AI駆動開発は設計者の生産性を高めるが、顧客は安全性と結果責任に対価を払い、単価には物価上昇分を反映できる。顧客が外注する有償人月は全社でなお減るものの、制御や特定情報はほぼ維持し、薄利の量産実装から品質保証へ技術者を移す。専門性の高い仕事が増えるためセグメント利益率は上向き、会社全体で本社費を増やしながらも増益を保つ。現時点で自社AI製品の定量売上がないため、新しいAI商品で工数が元の水準を超える成長までは期待しない。
配当性向の高い政策を続け、必要に応じ自社株買いを加える。過大な買収はせず、十年後の余剰資金も株主に帰属する状態を維持する。
- 制御システム:数量 1,911(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 26 億円・営業利益 7 億円。鉄道・電力の安全検証需要が強い
- 自動車システム:数量 2,392(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 32 億円・営業利益 8 億円。SDV共通基盤にも参加
- 特定情報システム:数量 1,960(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 26 億円・営業利益 7 億円。危機管理の長期案件を保持
- 組込システム:数量 1,800(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 22 億円・営業利益 5 億円。SSD・建機の検証工程を確保
- 産業・ICTソリューション:数量 3,240(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 44 億円・営業利益 10 億円。ガバメントクラウドで上流案件を獲得
倍率:AIエージェント代替を十年の有償工数縮小とg_long名目0%で扱い、k6.75%・g0%による正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1/k=14.8148倍を上限そのままで採用。楽観の純利益15.967億円から余剰現金52.0億円×税後2%利息1.4%を控除した本業利益に掛け、現金52.0億円×株主回収率1.0を加算する。過去・現在の市場PERを参照しない。
確率:鉄道・電力と危機管理の大口更新が継続し、車載の受注範囲も広げる必要がある。AIの自社製品売上額は未確認なので全事業の有償工数は現状以下に抑え、低い確率とする。
やや楽観 20% 安全性の仕事を維持し高採算を保つ 利益 12 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,421 円213 億円
制御・特定情報の長期案件で既存の顧客関係を維持する。新幹線や在来線の更新、電力設備の監視高度化、防衛・航空宇宙関連の案件が一定の周期で発生する。SCSKとの提携は車載基本ソフトや産業向けの受注窓口を広げるが、大きな自社プラットフォームへ転換するほどではない。半導体記憶装置とクラウド案件は選別し、採算を重視する。
AIエージェントの導入で顧客が購入する工数は減る。それでも設計段階の責任分担と複雑な検証が残るため、低難度の実装ほどには収入が減らない。特定情報では現在の九割近くに迫る工数を維持でき、自動車や産業・ICTでは二割以上減る。賃金と単価の上昇に生産性向上を組み合わせ、連結利益率はほぼ直近の水準に踏みとどまる。
七次中計の還元方針は維持される。株主資本は現金の積み上がりで緩やかに増えるが、買収プレミアムや新規AI事業の想像上の利益を価値へ足さない。
- 制御システム:数量 1,658(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 22 億円・営業利益 6 億円。鉄道・電力の更新を定期受注
- 自動車システム:数量 2,080(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 28 億円・営業利益 7 億円。ADASの責任範囲を維持
- 特定情報システム:数量 1,720(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 23 億円・営業利益 6 億円。宇宙・危機管理が緩やかに拡大
- 組込システム:数量 1,600(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 19 億円・営業利益 4 億円。半導体向けを選別して維持
- 産業・ICTソリューション:数量 2,772(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 37 億円・営業利益 8 億円。クラウド構築の採算案件に集中
倍率:AIエージェント代替を十年の有償工数縮小とg_long名目0%で扱い、k6.75%・g0%による正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1/k=14.8148倍を上限そのままで採用。やや楽観の純利益11.722億円から余剰現金50.0億円×税後2%利息1.4%を控除した本業利益に掛け、現金50.0億円×株主回収率1.0を加算する。過去・現在の市場PERを参照しない。
確率:顧客の安全責任と深い既存仕様が競争力として機能する見方。工数減少を一定程度抑えながら物価転嫁ができるが、二社集中は変わらない。
中立 34% システム需要は残り工数だけが減る 利益 7 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,543 円136 億円
社会インフラのシステムは十年後も使われる。鉄道や電力は新しい監視手段への更新が続き、防災や宇宙関連も需要がなくならない。ただし顧客はAIを用いて小規模の実装を内製し、外部に委託するのは複雑な設計と最終検証へ偏っていく。日本プロセスは安全性への習熟で案件を守るが、受注する人数と期間は短くなる。
中立の請求工数は制御と特定情報で現状の四分の三、自動車で約三分の二、組込と産業・ICTで約六割を見込む。単価は値上げと物価上昇である程度補えるものの、顧客が品質の対価を払う部分以外では物価に届かない。自動車の共通基盤化で車種別実装が減り、クラウド移行後の追加開発も小粒化する。足元の中期計画の達成は評価するが、それを十年後まで直線的には延ばさない。
セグメントの採算は落ちても会社全体の技術者数、外注量、本社費を徐々に絞り、事業の赤字は避ける。毎年の利益に応じた配当を続け、買付け後の余剰現金を慎重に保有する。独自データの基盤や成果報酬を広く持つ会社には変わらず、超過成長を永久の価値には数えない。
- 制御システム:数量 1,463(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 20 億円・営業利益 5 億円。更新需要は残るが自動化で短縮
- 自動車システム:数量 1,690(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 22 億円・営業利益 5 億円。AIによる実装・検証の集約
- 特定情報システム:数量 1,500(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 20 億円・営業利益 5 億円。高安全性部分だけを維持
- 組込システム:数量 1,240(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 14 億円・営業利益 3 億円。ファームウェアの共通化
- 産業・ICTソリューション:数量 2,160(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 28 億円・営業利益 5 億円。クラウドと業務SIの内製化
倍率:AIエージェント代替を十年の有償工数縮小とg_long名目0%で扱い、k6.75%・g0%による正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1/k=14.8148倍を上限そのままで採用。中立の純利益6.769億円から余剰現金45.0億円×税後2%利息1.4%を控除した本業利益に掛け、現金45.0億円×株主回収率1.0を加算する。過去・現在の市場PERを参照しない。
確率:工数型の全事業でAIエージェント代替が進む一方、安全認証と現場試験は残ることから、完全消失でなく5分の3〜4分の3前後の有償工数を中心とする。
やや悲観 25% 大口顧客が内製し利益を失う 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 636 円56 億円
大口顧客のソフトウェア戦略が変わり、車載ソフトの開発工程は完成車メーカーや部品大手の共通基盤へ移る。Astemoなどの発注は個別車種の実装から限定的な試験支援へ縮み、産業・ICTでもクラウド移行の一巡後に継続契約が小さくなる。制御と特定情報は法律や安全性の要求によって残るが、価格交渉では大手元請けに逆らえない。
全五事業でAIエージェント代替が進み、請求工数はほぼ半減する。名目単価は十年間の物価上昇にも及ばず、外注人員の削減でセグメント利益を維持しようとしても、管理部門や品質保証の固定費が残る。長年の納入経験があるから倒産には直結しないが、連結では採算割れに近づき、ROEは資本コストを大幅に下回る。
配当は最初の数年には続けられても、利益の縮小に応じ減額する。専門部門の統廃合や資産売却によって現金を守るものの、再投資に魅力的な案件は乏しくなる。ここでは永続的な利益への倍率ではなく、今ある事業資産と金融資産を中心に会社の価値を判断する。
- 制御システム:数量 1,170(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 14 億円・営業利益 3 億円。元請け主導で外注量縮小
- 自動車システム:数量 1,300(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。OEM開発縮小と共通化
- 特定情報システム:数量 1,220(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。安全検証のみ残る
- 組込システム:数量 1,000(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。SSD量産向けの工数減
- 産業・ICTソリューション:数量 1,728(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 20 億円・営業利益 3 億円。ガバメントクラウド移行一巡
倍率:営業利益がほぼゼロで、純利益0.27億円も金融収支に依存するため、永続的な事業利益に高い倍率を付けない。資産の床は56.0億円と推定し、稼ぐ力から求める約18億円より大きいため56.0億円を採用する。表示するPBRは2036年5月期の自己資本118.0億円に対して56.0÷118.0=0.47457627倍となる。これは過去のPBRを参考にした倍率ではなく、売却可能資産から求めた価値を自己資本で割った結果である。
確率:下に寄せる理由:Astemoを含むOEMの開発計画変更と、日立を通じた大口外注契約の組み替えが同時に起こりうる。AI工数減はすでに各数量に含めた。
悲観 13% 受託工程が構造的に消える 利益 −7 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 567 円50 億円
AIによる自動化が開発の実装・テストだけでなく上流設計にも広がり、メーカーは蓄積した仕様を自社エージェントへ読み込ませる。交通・電力では最後の承認や実設備の試験だけが外注に残り、産業・ICTの画面設計やクラウド構築は半ば商品化される。車載ではSDVの共通化とOEMの投資停止が重なり、主要な下請け契約を相次いで失う。
請求工数は制御で半分以下、産業・ICTでは三分の一程度まで落ちる。顧客から見た外部技術者の代替可能性が高まり、単価は物価上昇を吸収しきれない。高いセグメント利益率は保てず、本社の規模を縮めても営業赤字が残る。危機管理や鉄道の顧客固有知識は一部残るが、会社全体の堀を支えるには足りない。
利益のある早い時期は配当するが、その後は減配し、事業所の統合や人員整理へ資金を使う。のれんなど換金困難な資産には床を認めず、買付け後にも残る現金、有価証券、回収可能債権の保守的な価値が最後の支えとなる。公開買付けによる割増価値や、将来の営業回復は織り込まない。
- 制御システム:数量 878(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。安全確認の小規模請負へ
- 自動車システム:数量 1,040(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。車載外注契約を大きく喪失
- 特定情報システム:数量 960(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。政府系の主契約者へ仕事移る
- 組込システム:数量 800(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。顧客内製とAIによる置換
- 産業・ICTソリューション:数量 1,260(顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計))× 価格 0.01(請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。低付加価値SIの契約縮小
倍率:連結営業赤字が続くため将来の赤字にPERを掛けず、売却可能な資産の回収額を評価する。厳しい事業縮小による資産の毀損と整理費用を考慮した床は50.0億円である。2036年5月期の自己資本95.0億円に対する表示PBRは50.0÷95.0=0.52631579倍となる。やや悲観より帳簿上のPBRが高く見えるのは、悲観では自己資本自体が小さくなっているためで、実際の時価総額と売却可能資産はやや悲観より低い。過去のPBRの谷から倍率を決めたわけではない。
確率:下に寄せる理由:二大顧客への集中と車載の共通基盤化が重なり、開発を従来のような社外人月で調達しなくなる。会社の豊富な金融資産が倒産確率を低く保つ。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
制御システム
鉄道のATOS・新幹線運行管理、電力系統・発電所など高安全性制御システムの受託開発。
| 数量顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計) | 価格請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 1,950 | 0.01 | 19 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1,463 | 0.01 | 20 | 5 |
取り方:2026年5月期の開示売上19.45212億円・セグメント利益約4.87億円を正とする。工数は会社非開示。連結技術者数や協力会社利用を参考に年1,950人月と仮定し、月当たり約99.75万円を売上÷仮定工数で逆算した。実測の単価や顧客別契約数ではない。交通・電力制御の外注開発市場に公開された単独集計・シェアはない。国内ITサービス全体約7.5兆円を仮の分母とする参考比率は0.026%。日立、三菱電機、NEC等が競合・発注者で、十年先は安全試験の継続が相対的に工数を支える。型:AIエージェント代替が及ぶ受託SI人月型。中立10年数量0.75倍、単価1.34倍、長期g0%。
自動車システム
ADAS、基本ソフト、画像センサー、電池管理などOEM・Tier1向け車載ソフトの受託開発。
| 数量顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計) | 価格請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 2,600 | 0.01 | 26 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1,690 | 0.01 | 22 | 5 |
取り方:2026年5月期の開示売上26.32044億円・セグメント利益約6.49億円を正とする。請求人月の実数は非開示のため年2,600人月と推定、名目実現単価は売上÷推定工数で約101.23万円/月。矢野経済研究所の2025年外部ベンダー等を含む車載ソフト市場6,790億円に対する売上26.32億円は約0.39%。統計範囲と年度が完全には一致しない参考値。SCSK、富士ソフト、デンソー内製部隊等との競争とSDV共通化で、十年後の請求工数シェアは維持できない可能性。型:受託SI人月型。中立10年数量0.65倍、単価1.30倍、長期g0%。
特定情報システム
危機管理、防災、航空宇宙、衛星画像処理などの特殊用途ソフトウェアの設計と検証。
| 数量顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計) | 価格請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 2,000 | 0.01 | 20 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 0.01 | 20 | 5 |
取り方:2026年5月期の開示売上20.13953億円・セグメント利益約5.23億円を正とする。年2,000人月は人員配賦の非開示を補う分析仮定で、実現単価約100.70万円/月は売上から逆算したもの。防災・危機管理・宇宙の委託開発市場は政府予算と大手主契約者の内部に埋もれ、独立した市場規模・各社シェアが非開示。国内ITサービス全体を仮に用いる参考比率は0.027%で、NEC・日立等の下で専門開発を続ける。型:高安全性案件でも独占データ・規制の記録正本の証拠2件がなく受託SI人月型。中立10年数量0.75倍、単価1.34倍、長期g0%。
組込システム
SSD等ストレージ、建設機械IoT、医療機器のファームウェアと組込制御の開発。
| 数量顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計) | 価格請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 2,000 | 0.01 | 18 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,240 | 0.01 | 14 | 3 |
取り方:2026年5月期の開示売上18.38829億円・セグメント利益約3.71億円を正とする。工数年2,000人月は非開示のため仮定、実現単価は逆算して約91.94万円/月。ストレージ・建機IoT・医療機器の組込受託を合算する同一市場は公開統計に存在しない。全ITサービス約7.5兆円に対する参考比率は0.025%。競合はシステナ・DTS・顧客内製であり、量産品の共通コード化が十年先の工数を削る。型:受託SI人月型。中立数量0.62倍、単価1.25倍、長期g0%。
産業・ICTソリューション
業務・公共システム、ガバメントクラウド、駅務機器、システム構築・運用支援。
| 数量顧客に請求する年間開発・試験人月(協力会社を含む、会社非開示の推計) | 価格請求人月当たり実現売上(億円/人月、名目・推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 3,600 | 0.01 | 37 | 8 |
| 10 年後 中立 | 2,160 | 0.01 | 28 | 5 |
取り方:2026年5月期の開示売上36.89399億円・セグメント利益約7.64億円を正とする。工数年3,600人月は連結従業員780人・うち技術系約733人に外部協力会社を加えた全社約12,150人月という仮定の一部分。単価約102.48万円/月は売上逆算である。クラウド・SI・駅務機器など複数の市場を横断し固有の市場シェアは公表されない。国内ITサービス全体を仮分母とした参考比率は0.049%。富士通・NTTデータ・NEC・SCSK等との競争で、顧客がAIを通じて内製する部分は増える。型:席課金のSaaSとは異なりSI受託・工数型。中立数量0.60倍、単価1.25倍、長期g0%。
リスクと懸念
AIエージェント代替と発注工数の蒸発
T-SESは要件整理から試験まで顧客の仕事を請け負うが、見積りの基礎はなお人月・工数だ。生成AIが顧客内の設計と検証を助ければ、システム投資自体が伸びても外注先へ支払う人月は減る。制御・危機管理の最終承認は残っても、全社を独自データや正本のサブスクリプションと見なすことはできない。AIエージェント代替の進み方が中立数量を超えれば収益は大きく下ぶれる。
日立製作所とAstemoへの売上集中
2026年5月期の売上の29.0%が日立製作所、10.9%がAstemo向けである。顧客の投資判断だけでなく、開発を内製する比率、一次下請けの変更、共通ソフト採用、契約の固定費化によって受託工数は変わる。元請けの仕様に習熟していることは強みだが、集中した交渉相手に単価上昇を要求できるかは別の問題だ。
車載ソフトの共通化とOEM投資中止
ソフトウェア定義車両への移行は市場全体を拡大させる一方、車種別の設計や開発環境を共通基盤へ集約する。会社自身の2026年5月期資料にはOEMによるEV開発中止の影響があり、2027年5月期第1四半期の自動車システムも減収減益となった。市場成長率を会社の人月増加率と取り違えると、長期価値を過大に見積もる。
人材の確保と賃金・協力会社コスト
技術者の定着率は高いが、鉄道・車載・危機管理の専門技術は養成に時間がかかる。採用競争と賃上げ、協力会社の外注単価上昇が続き、顧客への転嫁が遅れれば営業利益率が低下する。AI駆動開発を習得できる社員とできない社員の格差が開けば、既存人材の生産性と受注能力にも影響する。
利益と現金のずれ、余剰資金の二重評価
2026年5月期は純利益約11.4億円に対し営業活動キャッシュフローが約1.9億円と小さかった。売上債権の増加と税金支出は一時的な面もあるが、会計利益だけをそのまま自由に使える現金と扱うのは危険だ。また、2026年7月の約15.9億円の自社株買いを控除しないまま過年度の純現金を別途足せば、価値を二重に数える。
SCSKとの提携・再編と少数株主の取り分
筆頭株主SCSKとの協力はSDVや産業システムへの販路を広げるが、提携先への発注集中や契約条件の偏りが起きれば少数株主の利益と一致しない可能性がある。将来のTOBを期待して現在価値をかさ上げすべきではない。M&Aや大規模再編が起きた場合は買収価格だけでなく、独立性と少数株主への配分を精査する必要がある。
今後の分かれ目
- 2027年以降に、AIエージェントを自社の課金商品として販売し、受注・売上金額と継続率を別途開示したら
- 対象部分に限り人月型から成果・独自製品型への転換を検討する。自社AIによる工数削減だけでは数量上限を緩めず、顧客に売った金額と利益を確認して楽観側を再評価する。
- 日立製作所とAstemoの売上比率がそれぞれ下がり、他の最終顧客の直接契約が増えたら
- 特定顧客による発注停止の集中リスクを引き下げ、やや悲観の確率を減らせる。単にSCSK向けへ発注先が移っただけなら分散とは認めない。
- 全五事業で請求単価が物価に追いつき、技術者当たり粗利も改善していると開示されたら
- 単価の交渉力がある証拠として中立の実現単価と利益率を引き上げる。ただし工数縮小と独立に評価し、人員増をそのまま販売数量にしない。
- 車載の四半期売上・セグメント利益が前年割れを続け、OEMの共通基盤化で個別開発案件が減ったら
- 自動車システムの中立数量を0.65倍より下げ、産業・ICTにも関連する内製化の波及を確認する。必要ならやや悲観・悲観側へ確率を移す。
- 2027年以降も年間総還元がおおむね純利益の66%以上で続き、流動資産が厚いままなら
- 余剰現金が株主へ戻る係数1.0の判断を維持する。逆に大きな買収で現金が減りROICを下回る案件が増えれば、将来の余剰現金と資本配分の評価を引き下げる。
- 鉄道・防災分野で数年を要する顧客移行や価格改定、独自データに関する定量的な実績が二つ以上確認できたら
- その事業だけ「記録の正本」等の強い堀があるか再審査する。会社全体に一律の高成長倍率を掛けず、該当部分の工数と名目長期成長率だけを改める。
見ておくもの
- 四半期の五セグメント別売上・利益と自動車システムの減収継続の有無
- 日立製作所・Astemo向け売上比率、SCSKとの案件の直接受注額
- 受注高・受注残高・完工までの平均工数と技術者の稼働率
- AI駆動開発による請求人月・単価・採算の開示、成果報酬または自社商品の売上金額
- 技術者数、離職率、平均給与、協力会社費用、要員当たり売上総利益
- 配当性向66%目標、現金残高、投資有価証券、追加の自己株買い・消却
- 営業キャッシュフローと売上債権の回収、最新の自己資本推移
- JR東日本情報システムの発注範囲と電力グリッド更新、航空宇宙・危機管理の受注
- 顧客のSDV共通化・ソフト内製比率と日本プロセスの車載での担当工程
倍率と資本コストの決め方
2026年10月22日の基準株価1,876円と取得後株数8,811,435株による時価総額約165.30億円は最後の比較にのみ使った。五事業の2026年5月期売上を起点に、実測ではない有償人月とその逆算単価を明示し、中立の工数減少・単価変化・セグメント利益率・本社費を別々に積んだ。物価は価格にのみ反映し、数量に重ねなかった。
10年より先の名目成長率は全社工数型なので0%とし、資本コスト6.75%から楽観〜中立の正当化PERを14.8148倍とした。会社や同業の現在・過去の市場PERは根拠にしていない。終点の現金は利息の分を利益から外して株主回収率1.0で足し、自動で貯まる利益との二重加算を避ける。
やや悲観は営業利益がほぼゼロで、稼ぐ力約18億円より売却可能資産56億円の方が大きいため、時価総額を56億円とした。対応する表示PBRは56÷118=0.47457627倍である。悲観は営業赤字が続くため、売却可能資産を一段厳しく50億円と評価した。対応する表示PBRは50÷95=0.52631579倍となる。いずれも過去のPBRの底から価値を逆算したものではなく、事業と売却可能資産の経済性から決めた。なお、悲観のPBRがやや悲観より数値上高いのは、悲観シナリオでは分母の自己資本が小さくなっているためであり、時価総額は適切に低下している。
2026年7月の自己株取得後の株数と8月末の自己資本をそろえ、買付け代金を今後の還元へ重ねていない。新リース会計基準で後年に貸借対照表の表示が変わっても、賃借費用を二重控除せず実質比較を維持する。十年間の各還元を中間期で割り引くと、資本コスト6.75%、五つの確率8%・20%・34%・25%・13%による加重本質価値は約110.97億円となる。現在の時価総額約165.30億円との差は−32.9%で、五段階評価は「割高」である。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%+株式リスクプレミアム4.5%を基礎に、営業利益の安定性と純現金の厚さを合計−0.75%評価する。顧客集中やAIによる需要変化は利益シナリオと確率で扱い、個別上乗せはしない。
同じ業種(情報・通信業)の AI 分析
読んだ資料
- 日本プロセス 2026年5月期決算説明会資料(2026年7月17日、五事業・中計・還元)
- 日本プロセス 2027年5月期第1四半期決算短信(2026年9月30日、自己資本・現預金・継続企業注記)
- 日本プロセス 2026年5月期有価証券報告書全文(EDINET原本の転載、事業・販売先・株主)
- 日本プロセス 第7次中期経営計画(2025年5月期~2027年5月期)
- IDC Japanの国内ITサービス市場予測(2024年7兆205億円、2029年9兆6625億円)
- 矢野経済研究所 国内車載ソフトウェア市場調査(2025年8月27日)
- ガートナー調査に基づく2024年国内ITサービス市場シェア(IDCと定義が異なる)