結論
レイヤードは、医療機関の予約、問診、受付、患者管理、電話対応を効率化するソフトウェアを提供する会社である。筆者の結論は「割高」だ。医療現場での採用実績は確かだが、現在の時価総額約63億円に見合う利益が10年後まで続くかについては、AIエージェントによる業務の置き換えを考えると慎重にならざるを得ない。
同社の強みは、医療機関の実務をよく知り、複数の製品を組み合わせて診療前後の業務をつないでいることである。2026年6月期末の利用医療機関は5,929施設に達し、月次解約率は0.38%にとどまった。WEB問診Symviewには累計6,000万件超の回答実績があり、単に製品を開発しただけの会社とは違う。ただし、診療情報の最終的な保存先である電子カルテそのものを支配しているわけではない。AIエージェントや電子カルテ会社が予約、問診、患者案内を直接処理できるようになれば、画面ごとに利用料を払う理由は弱まる。
2026年6月期は売上高19.8億円、営業利益3.44億円まで成長し、2027年6月期も会社は増収増益を予想する。しかし、現在の売上の約32%は導入時のコンサルテーションや設定支援による一時収入であり、すべてが継続課金ではない。さらに、創業以来配当を実施しておらず、上場後も余った資金を株主へ返す方針は数値で約束されていない。
10年先に医療DXの需要がなくなるとは考えていない。むしろ人手不足によって自動化の必要性は高まる。しかし、その需要を満たす技術が変わることで、現在の製品群が価値を取り続けられるとは限らない。中立では事業規模がほぼ横ばいにとどまり、収益性の改善によって利益を維持するものの、現在の株主に帰属する本質価値は時価総額を大きく下回る。医療現場への定着を評価しつつも、長期の安全域は不足している。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、まず10年後も顧客がお金を払う理由が残るかを考えたい。レイヤードの顧客である医療機関は、人手不足が続く限り受付や問診の自動化を求めるだろう。その意味で需要そのものは消えにくい。しかし、需要がなくならないことと、現在の事業者が利益を守れることは同じではない。製品の機能をAIエージェントが吸収する場合、顧客は便利になっても従来のソフトウェア会社の取り分は減り得る。
オーナー利益を考える際、2026年6月期の営業キャッシュフロー約2.77億円は重要な実績である。設備投資をあまり必要としない事業は魅力的だが、ソフトウェア開発費、販売代理店への手数料、顧客サポートの継続費用は残る。とりわけ新しいAI技術を外部の技術会社とも共同開発しているため、現在の製品を維持するだけでは足りない。利益の一部を次の製品開発に回し続けなければ、今の利用施設を守れない可能性がある。
高いROEにも注意したい。2026年6月期のROEは46.8%だったが、これは上場前の小さな自己資本を分母にした数字である。公募増資で自己資本が増えた後は、同じ利益を稼いでもROEは低くなる。10年の中立では利益の蓄積も加わり、ROEが資本コストに近づく。長く続く超過利益が確認できない段階で、現在のROEを永久に維持できる企業として評価するのは危険である。
経営陣が医療機関の課題を理解し、製品を積み上げてきたことは評価できる。一方で、株主還元の実績はなく、上場後の豊富な資金をどれだけ有利に再投資できるかはこれから証明する段階にある。仮に事業が10年間存続しても、成長投資を続けるだけで株主に分配される利益が乏しいなら、企業の価値と株主の受け取る価値には差が生まれる。
筆者が所有したいのは、顧客が容易に離れず、価格を上げても利用され、追加資本に高い利益を生む企業である。レイヤードにはその候補となる製品と顧客基盤があるが、AI時代に価格決定力まで守れる証拠はまだ弱い。現在の価格に十分な安全域があるとは判断できない。
何で稼ぐ会社か
レイヤードの事業は、医療機関と患者が接する場面を便利にすることで成立している。会社の会計上は医療DX事業の単一セグメントだが、収益の性質は継続利用料、初期導入費用、広告収入の三つに分かれる。それぞれ必要な営業活動、費用構造、AIへの耐性が異なるため、長期の価値も分けて考える必要がある。
医療DXストック事業は、WEB問診Symview、予約システムWakumy、患者管理Kakarite、電話自動応答Iver、院内デジタルサイネージMedicastarなどの月額利用料が中心である。2026年6月期の売上高は10.94億円で、全社売上の55.2%を占めた。利用施設数に加え、同じ施設が複数製品を導入することで利用料が増える仕組みである。期末の延べプロダクトアカウント数は8,451であり、施設数との比較から一施設当たり平均約1.43製品が使われている。
医療DXイニシャル事業は、製品の導入時に発生する設定、運用設計、職員への説明、機器導入などの費用を受け取る。2026年6月期の売上高は6.27億円で、年間導入件数は1,889件だった。医療機関には専門のIT人材が少ないため、人が現場に合わせて設定する仕事には需要がある。しかし、この仕事はAIエージェントが自動化しやすい。新規導入を増やしても、初期設定や操作説明の対価が将来も同じように得られるとは限らない。
広告事業では、院内サイネージやWEB問診の広告枠を使い、製薬会社、食品メーカー、自治体などから広告費を受け取る。2026年6月期の広告収入は2.60億円で、広告案件は127件だった。広告の制作や編集はAIに代替されやすいが、実際に患者が訪れる医療機関へ広告を届ける配信網は残り得る。自社の媒体を持つことが、一般的な広告制作会社との重要な違いである。
販売経路にも特徴がある。2026年6月期に獲得した医療機関の約7割は代理店経由で、そのうちメディパルホールディングスのグループ経由が全体の約4割を占める。医薬品卸の医療機関ネットワークを利用できる反面、販売手数料と特定代理店への依存を抱える構造である。
優良さと弱いところ
いちばん評価できるのは、医療機関の業務に入り込んでいることである。WEB問診から予約、受付、患者管理までの情報をつなげれば、単独の製品を入れ替えるより乗り換えの手間が増える。月次解約率0.38%という実績は、少なくとも現時点で多くの顧客が製品を使い続けていることを示している。導入施設数の拡大と複数製品の利用促進によって、追加投資が大きな設備を必要とせず利益を増やせる点も魅力である。
一方、堀、つまり競争相手が簡単に奪えない強みの評価は慎重である。Symviewには大量の問診記録が蓄積されているが、そのデータを同社が排他的に利用できることや、競合が再現できない独自データ資産になっていることまでは確認できない。Kakariteも患者情報を集約する仕組みだが、診療記録や請求情報の最終的な正本を支配する電子カルテ・レセプトシステムとは役割が異なる。低解約率という堀の証拠は一つあるものの、規制上の独占、年単位の切替障壁、継続的な値上げ実績といった別の証拠は十分ではない。
利益率の改善は明確だ。2024年6月期には営業赤字だったが、2025年6月期は営業利益率8.7%、2026年6月期は17.4%となった。継続課金が増えるとサーバー費用やサポート費用が売上と同じ割合では増えないため、一定の規模の経済が働いている。ただし、黒字化後の実績がまだ短く、高い増分ROICが10年間続くと判断するだけの歴史はない。
自己資本比率は2026年6月末で56.9%だった。上場時の公募増資とオーバーアロットメント対応の増資により資金余力はさらに厚くなったが、調達資金の多くは製品開発や営業体制の拡充に使う予定である。会社が成長投資を行う能力と、その投資が株主の資本コストを超える収益を生む能力は分けて評価すべきだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の一般診療所は2026年6月末の厚生労働省統計で約10万5,712施設ある。医療機関の人手不足、診療報酬の制約、患者の待ち時間短縮の必要性を考えると、予約や問診の電子化そのものは長く続く需要である。レイヤードの利用医療機関5,929施設は一般診療所数の約5.6%に相当する。ただし、利用先には病院や自治体なども含まれるため、厳密な診療所市場シェアではなく、普及規模を測る近似値である。
現在の年間平均利用料約20.7万円を全国の一般診療所に掛けると、同じ価格水準の患者接点SaaS市場は最大約219億円という機械的な参考値になる。これはすべての診療所が同じ機能を購入するという仮定であり、実際の市場規模を確定した数字ではない。診療科ごとに必要な機能が異なり、競合製品の料金体系も異なるため、実際に獲得できる市場はこれより小さくなる可能性がある。
競合には、AI問診を展開するUbie、電子カルテと周辺業務をつなぐエムスリー系製品、オンライン診療や予約システムを持つメドレー、診療予約に強いドクターキューブなどがある。UbieのAI問診は1,800施設以上への導入を公表しており、同じ患者接点で競争がすでに起きている。ただし各社の導入施設数は重複し、対象製品も違うため、単純に足して市場シェアを求めることはできない。予約、問診、患者管理を横断した厳密な競合別売上シェアは公開資料から確認できなかった。
10年で最も大きく変わるのは、医療機関がソフトウェアを利用する方法だ。医師や受付担当者が個別の画面を操作する代わりに、AIへ指示して電子カルテ、予約台帳、問診記録を更新する形が広がる可能性がある。電子カルテ会社がこうした機能を統合すれば、周辺SaaSが独立して課金できる領域は狭まる。レイヤード自身も2026年6月にAI電話エージェントCapaiを提供開始したが、製品の提供開始だけで長期の売上拡大を保証することはできない。
広告では、レイヤードが約3,750面の医療機関向けサイネージを運営する点を評価できる。ただし、製薬会社の広告審査、医療広告規制、広告主の出稿予算に左右され、放映可能な枠にも限りがある。患者への広告配信という接点は残りやすいが、広告制作や配信設定の仕事はAIによって価格が下がる。長期では医療施設数よりも、媒体への接触人数、広告案件数、案件単価の維持が収益を左右する。
資本政策と M&A
2026年9月25日の新規上場では60万株を公募発行し、会社は約7.73億円を調達した。さらに同年10月にはオーバーアロットメントに対応する12万7,500株の第三者割当増資が決まり、約1.64億円の資金が加わる。調達資金の主な用途は既存製品の機能拡張、新製品開発、営業・サポート体制の強化、販売促進である。短期的な資金繰りの心配は小さい一方、追加資金を投じた後の資本効率が新しい課題となる。
創業以来、配当を実施していない。2027年6月期についても無配予想であり、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額の具体的な数値目標はない。複数年度の売上、営業利益、ROEを定めた独立した中期経営計画についても、確認した公式開示では数字の約束なしである。確認できる会社計画は2027年6月期の売上24.74億円、営業利益4.58億円、純利益3.05億円という単年度予想である。
経営の歴史では、2021年に在宅医療向けシステムのクロスログへ30%出資し、2022年にはメディカル・データ・ビジョンと資本業務提携した。2024年にはメディパルとの提携を進め、販売網を広げている。これらは医療の現場と接する機会を増やす合理的な投資だが、買収や出資が長期的にどれだけの投下資本利益を生んだかは、開示された数字だけでは十分に判断できない。
株主構成は創業経営陣と関係者の影響力が強い。上場前の上位10株主の保有割合は高く、上場後も主要保有者の合計が65%を超えると推定される。過去5年間に自社株買いや増配の実績もないため、余剰現金の株主への戻り方は50%で保守的に評価する。10年の中立で想定する累計6億円の株主還元は、2030年代に事業が成熟した場合の推定であり、会社が約束した数字ではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
医療機関の人手不足は今後ますます深刻になり、受付、予約、問診、電話対応を自動化する需要は強くなる。レイヤードは診療所の業務を深く理解し、すでに約6,000施設に製品を届けている。月次解約率が低いことは、顧客が日々の診療で製品を使っている証拠である。新しい競合が出ても、診療科ごとの設定、既存の電子カルテとの連携、職員への教育まで含めて切り替えるには負担がかかる。
製品群を組み合わせる戦略にも可能性がある。現在の平均利用製品数は一施設当たり約1.43であり、既存顧客が追加製品を利用する余地が残っている。2026年に提供開始したAI電話エージェントCapaiは、従来の電話自動応答を高度化する取り組みである。製品が自動化技術の変化に適応できれば、受付業務の支援から医療機関全体の患者接点を担う存在に進化する可能性がある。ただし、Capaiの独立した売上実績は確認できないため、この可能性を確定的な売上拡大として扱うことはできない。
広告事業も独自性がある。医療機関内に設置したサイネージは、実際に受診する患者に情報を届ける媒体であり、一般的なネット広告とは違う価値を持つ。製薬企業などの広告主にとって、医療機関で接触できる広告枠は簡単に作れない。広告制作費がAIによって低下しても、施設との関係と放映枠を持つ企業には利益が残る。
上場によって開発資金が厚くなり、資金不足で競争から脱落する可能性も下がった。会社は2027年6月期に営業利益の増加を見込んでおり、顧客獲得の勢いが足元で続いている。10年後も医療現場に必要な製品を持ち、内部のAI活用によって費用を抑えられれば、今より高い利益を生む道は残されている。
慎重な見方
レイヤードの最大の弱点は、医療の記録を最終的に保有する電子カルテではなく、その周辺の操作や連絡を担っていることである。予約、問診、電話、患者案内は、まさにAIエージェントがまとめて引き受けやすい仕事である。現在は製品ごとに画面を開いて操作しているが、将来は患者や職員が音声で指示するだけで必要な記録が更新されるかもしれない。そのとき各画面への利用料は値下げ圧力を受ける。
現在の売上には導入支援が大きく含まれる。2026年6月期の売上の約3分の1は初期費用であり、顧客への説明、設定、運用設計など人手によるサービスが含まれる。AIが設定や教育を自動化すれば、顧客が支払う初期費用は減る。導入作業そのものが簡単になることは社会にとって良い変化だが、レイヤードにとっては収入源が縮む変化でもある。
販路の集中も見逃せない。新規契約の約4割がメディパルグループ経由であり、特定の代理店の販売方針に成長が影響される。販売代理店が競合の製品を扱ったり、電子カルテ事業者が一括契約を提供したりすれば、顧客の獲得単価は上がり、販売手数料も重くなる。現在の低解約率は、次世代の技術に切り替える判断が起きた後まで顧客が残ることを保証しない。
上場前の高ROEは小さい自己資本の上で生じた数字であり、増資後に同じ水準を維持するのは難しい。さらに新株予約権による希薄化があり、事業が成長しても現在の株主の取り分は薄くなる。創業以来無配であるため、10年の間に価値が株主へ戻る確実性も低い。
医療DXの需要が増え続けても、その利益を電子カルテの大手企業やAIを持つ競合が吸収すれば、レイヤードの売上と利益は減る。現在の時価総額は、このような構造変化を乗り越えて高い利益を維持することをかなり強く前提としている。
どちらに重みを置いたか
現在の顧客定着と医療機関の人手不足という点では強気の見方に説得力がある。しかし、レイヤードは電子カルテの正本を握っておらず、売上の大きな部分が操作画面型SaaSと人的導入支援であるため、AIエージェント代替の懸念を軽く扱えない。確率は楽観側30%、中立30%、悲観側40%とやや下側へ寄せた。中立の数量と価格には既にAIによる縮小を織り込んでいるため、同じ理由で資本コストや確率をさらに極端に悪化させることは避けた。増資後の現金は下値を支えるが、現在の価格との差はなお大きい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,265 円36 億円(+ 還元の換算額還元の合計 123 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 715 円20 億円、今との差 −67.0%、 期待の年率 −4.5%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,448 円70 億円 | 277 円8 億円 | +25.7% | +2.4% | 272 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,891 円54 億円 | 200 円6 億円 | −3.6% | −0.4% | 418 円12 億円 |
| 中立 | 30% | 1,513 円43 億円 | 185 円5 億円 | −21.7% | −2.5% | 509 円15 億円 |
| やや悲観 | 25% | 638 円18 億円 | 0 円0 億円 | −70.6% | −11.5% | 159 円5 億円 |
| 悲観 | 15% | 194 円6 億円 | 0 円0 億円 | −91.1% | −21.5% | 29 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,265 円36 億円 | 123 円4 億円 | −36.0% | −4.5% | 1,388 円40 億円 |
今の株価時価総額 2,168 円62 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 医療現場に根付き、AI時代にも製品価値を守る 利益 5 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,448 円70 億円
医療機関の人手不足が続き、レイヤードの製品が診療所の標準的な患者接点の一つとして使われ続ける。電子カルテ会社やUbieなどの競合は機能を拡大するが、既存顧客は診療科ごとの設定、予約と問診の連携、職員への教育をやり直す負担を考え、レイヤードの利用を継続する。低い解約率も長く維持される。
WakumyやKakariteの追加導入によって一施設当たりの契約内容が厚くなり、名目単価は物価上昇に近い水準まで改善する。ただし、2026年に提供を開始したCapaiの実際の売上金額は確認できないため、新しいAI製品によって利用施設数が現在を超えて増えることは、この楽観にも算入しない。
導入支援は人が行う仕事が減るものの、大規模な医療機関での複雑な設定案件が残り、案件単価を守る。広告では院内サイネージの利用拡大と製薬会社の継続出稿により、広告案件数が増える。社内業務の自動化と効率的な製品開発が進み、営業利益率は現在より高まる。
上場後の資金を使った開発投資は大きな失敗に至らず、2030年代には利益の一部が株主へ還元される。無理な大型買収に頼らず既存製品を改善し、10年後も独立した医療DX会社としての価値を維持する筋書きである。
- 医療DXストック事業:数量 5,284(年度平均の利用医療機関数(施設))× 価格 0.00(1施設当たり年間利用料(億円、2026年実績は約20.7万円))→ 売上 14 億円・営業利益 6 億円。年度平均利用施設数は現在水準を維持。年間単価は約27.4万円へ改善する。AIによる新しい売上数量の上乗せはしない。高い営業利益率はサポートと開発の効率化が実現する場合に限る。
- 医療DXイニシャル事業:数量 1,889(年間導入件数(新規導入と追加導入の合計、件))× 価格 0.00(導入1件当たり平均初期単価(億円、2026年実績は約30.3万円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。導入件数は現在と同数まで。平均単価は約40.2万円で、物価上昇と高単価案件の構成改善を反映する。過去の売上との調整係数1.0953を維持する。
- 広告事業:数量 160(年間広告案件数(件))× 価格 0.03(広告案件1件当たり平均売上(億円、2026年実績は約204.7万円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。自社媒体への出稿案件は160件。広告単価は案件当たり約258.5万円。制作作業の効率化で利益率が改善する。
倍率:k=7.25%、g_long=0%、通常の堀による超過利益の残存割合は1/2。事業ROEは約10%で、RONICはkに近い水準まで薄まる。長期成長率を0%に抑えた正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷0.0725=13.79倍をそのまま採用。余剰現金3.5億円の税後受取利息相当0.049億円を全社純利益から控除し、戻り方50%の1.75億円を足す。市場での過去のPERは使わない。
確率:複数製品の連携と低解約率が続き、AI代替の進展を顧客基盤の維持と内部コスト削減で吸収する場合。既に確認できるCapaiの売上金額はないため、AIによる新規売上や数量増加を楽観の前提にしていない。利益率改善に成功する上位の結果として10%を配分する。
やや楽観 20% 継続利用と高付加価値化で収益を維持 利益 4 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,891 円54 億円
医療機関のDX投資は今後も続き、レイヤードはSymview、Wakumy、Kakariteを組み合わせた提案によって既存顧客を維持する。受付や問診の一部はAIエージェントへ移るが、電子カルテとの接続や診療所ごとの運用を担うソフトウェアとして一定の価値が残る。
医療機関での新規導入は2027年の会社計画を一時的に上回る時期もあるが、その後はAIや競合製品への移行が徐々に進む。10年後の年間平均利用施設数は現在をわずかに下回る。複数製品の導入と高機能なサービスへの移行によって、施設当たり単価は改善する。
初期導入では定型的な設定や職員向けの操作説明が自動化され、人手で受け取る料金は減る。しかし複雑な医療機関への導入案件は残り、全体の利益率は大きく崩れない。広告事業では、院内サイネージのネットワークを守り、出稿案件が緩やかに増える。
経営は大型買収より自社製品の改善を優先し、増資資金を活用して製品の世代交代を進める。2030年代には一部の株主還元も始まるが、成長投資が優先され、株主への分配は限定的となる。
- 医療DXストック事業:数量 5,020(年度平均の利用医療機関数(施設))× 価格 0.00(1施設当たり年間利用料(億円、2026年実績は約20.7万円))→ 売上 13 億円・営業利益 4 億円。数量は現在比95%、単価は約25.6%上昇。製品組み合わせの改善で物価に近い単価上昇を維持する。
- 医療DXイニシャル事業:数量 1,700(年間導入件数(新規導入と追加導入の合計、件))× 価格 0.00(導入1件当たり平均初期単価(億円、2026年実績は約30.3万円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。導入件数は現在比約90%。初期費用の高単価案件を維持し、定型作業の自動化で利益率を保つ。
- 広告事業:数量 145(年間広告案件数(件))× 価格 0.02(広告案件1件当たり平均売上(億円、2026年実績は約204.7万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。広告案件145件、案件平均単価約243万円。院内媒体の価値は維持する。
倍率:k7.25%、長期名目成長率0%。事業ROEは約9%でkを上回るものの、AIによる周辺SaaSの成熟を考え、10年より先の実質成長は認めない。正当化PERは1÷kの13.79倍。余剰現金3.5億円の利息相当0.049億円を純利益から控除してからPERを適用し、株主への戻り方50%の1.75億円を足す。
確率:現状の低解約率と複数製品の展開を評価する一方、AIによる操作画面の代替を完全に防ぐことは難しい。利用施設数の減少を小さくとどめ、製品構成の改善で単価を維持する可能性に20%を配分する。
中立 30% 医療DX需要は続くが、AIによる収益単価の圧力が定着 利益 3 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,513 円43 億円
医療機関の受付、予約、問診を自動化する需要は2036年にも残っている。しかし、電子カルテ会社やAIエージェントの提供事業者が患者対応を統合し、診療所が個別に契約するソフトウェアは徐々に整理される。レイヤードは一定の顧客を維持するが、現在の製品群すべてが同じ形で残るわけではない。
2027年6月期の会社予想では利用医療機関数の拡大が続くものの、その後の数年間で市場環境が変わる。既存システムを使い続ける施設が残る一方、AIを前提とした新規導入や更新によって競合に顧客を奪われる。10年後の平均稼働施設数は現在より減少し、名目の利用料も物価上昇ほどには引き上げられない。
初期導入のコンサルテーションや設定作業はAIが代替し、導入件数と売上単価の伸びが抑えられる。広告は患者との接点を持つ媒体として一定の価値が残り、案件数と単価は緩やかに維持される。会社は内部でのAI活用とサポート体制の効率化を進めるため、営業利益率の大幅な悪化は避ける。ただし、この費用削減が実現することは中立でも重要な条件である。
大型買収による成長は前提としない。会社は増資で得た資金を製品開発と顧客維持に使い、2030年代に入ってから利益の一部を還元する。営業利益は概ね現状を少し上回る水準で残るが、自己資本が厚くなることでROEは過去の高水準から低下する。医療機関に必要な会社であり続けても、株主が高い成長を享受できるとは限らない10年になる。
- 医療DXストック事業:数量 4,550(年度平均の利用医療機関数(施設))× 価格 0.00(1施設当たり年間利用料(億円、2026年実績は約20.7万円))→ 売上 11 億円・営業利益 4 億円。数量は現在比86.1%、単価は15.0%上昇。AIエージェントによる操作画面の代替を数量に、物価を下回る値上げを価格に織り込む。36%の区分別利益率は内部自動化により人件費・サポート費用を抑制する場合の推定であり、会社計画ではない。
- 医療DXイニシャル事業:数量 1,400(年間導入件数(新規導入と追加導入の合計、件))× 価格 0.00(導入1件当たり平均初期単価(億円、2026年実績は約30.3万円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。導入数量は現在比74.1%、平均単価は約20.5%上昇。人手による定型導入作業の減少を織り込む。
- 広告事業:数量 130(年間広告案件数(件))× 価格 0.02(広告案件1件当たり平均売上(億円、2026年実績は約204.7万円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。広告案件130件、案件平均単価約243万円。自社媒体の広告枠の価値は維持するが、制作・編集の対価は伸びにくい。
倍率:k7.25%、10年後の事業ROEは余剰現金控除前で約7.5%。RONICは資本コストに接近する。AIによる長期の数量・価格圧力を受けるためg_longを名目0%とし、正当化PER=(1−0÷RONIC)÷(0.0725−0)=13.79倍を上限そのままで使う。市場の過去の倍率から割り引かない。mcapは(純利益3.02−余剰現金利息0.049)×13.79+余剰現金3.5×戻り方0.5で約42.73億円。
確率:医療現場のデジタル化需要と低解約率は評価するが、診療情報の正本を支配しない周辺SaaSである点が価格決定力を制約する。操作画面型SaaSの数量を現在の約86%、人手による導入支援件数を約74%とするAI代替の中心的な筋書きで、確率30%を配分する。
やや悲観 25% 競合への乗り換えが進み、導入支援が縮小 利益 1 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 638 円18 億円
電子カルテ事業者やAIエージェント会社が予約、問診、受付、患者連絡を一体化したサービスを広げる。診療所は複数のソフトウェアを契約する必要がなくなり、新規開業やシステム更新をきっかけにレイヤードから他社へ切り替える。従来の低解約率は徐々に悪化し、営業活動を強化しても利用施設数の減少を止められない。
医療DXストック事業では単価を十分に引き上げられず、現在よりも利用施設数が減る。初期導入ではAIによる設定自動化が進み、人が受け取る作業対価が縮小する。代理店の販売方針が競合製品へ向かえば、新規導入件数の減少はさらに速くなる。
広告事業には院内サイネージの配信網が残るが、製薬会社の広告予算や放映枠の競争によって案件数が減る。広告制作や配信管理の自動化による単価下落も重なる。会社は人件費と開発投資を抑えるものの、固定的なサポート費用とシステム維持費が残り、利益率が低下する。
経営は大胆な買収を行わず既存顧客の維持を優先するが、新製品開発への投資回収は限定的となる。株主還元は開始されず、蓄積された現金の価値が株価を下支えする。収益力が弱まった医療ソフトウェア会社として存続する筋書きである。
- 医療DXストック事業:数量 3,950(年度平均の利用医療機関数(施設))× 価格 0.00(1施設当たり年間利用料(億円、2026年実績は約20.7万円))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。数量は現在比約75%、単価は約5%上昇にとどまる。物価上昇より大幅に低い価格転嫁となる。
- 医療DXイニシャル事業:数量 1,100(年間導入件数(新規導入と追加導入の合計、件))× 価格 0.00(導入1件当たり平均初期単価(億円、2026年実績は約30.3万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。導入件数は現在比約58%。初期支援は固定費を賄えず小幅赤字となる。
- 広告事業:数量 100(年間広告案件数(件))× 価格 0.02(広告案件1件当たり平均売上(億円、2026年実績は約204.7万円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。広告案件100件。院内配信網は残るが、広告主の出稿数が減少する。
倍率:ROEは約3.9%でk7.25%を下回るため、10年より先の増分成長に価値を付けない。稼ぐ力の上限は1÷k=13.79倍。競合に優位を奪われた後の利益の不確実性を考え12.5倍とする。余剰現金の利息控除後の純利益1.201億円に12.5倍を掛け、現金3.5億円の50%である1.75億円を加え、約16.76億円とする。資産の床14.4億円を上回る。
確率:AIエージェントが受付・問診の個別操作を代替し、電子カルテとの一体化が進む場合。レイヤードには低解約率と一定の顧客基盤があるので事業消滅までは想定しないが、代理店依存と人的導入支援の大きさから収益縮小が起こりやすいと考え25%を配分する。
悲観 15% 医療業務がAIと電子カルテへ集約される 利益 0 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 194 円6 億円
医療機関が利用するシステムは電子カルテとAIエージェントを中心に再編される。予約、問診、電話対応、患者案内は統合的に処理され、個別の操作画面を持つ周辺SaaSの価値は大幅に低下する。レイヤードは既存施設の一部を維持するが、新規顧客の獲得が難しくなり、利用施設数は長期的に減少する。
初期導入のコンサルテーションはAIによる自動設定に置き換えられ、件数と単価がともに低下する。広告でも院内サイネージの一部が更新されなくなり、広告案件数が減る。医療機関に接点を持つ企業として一定の事業は残るものの、過去の製品群が持っていた高い収益性は失われる。
会社は競争力の回復を目指して新製品やAI技術への投資を続けるが、投じた資金に見合う売上を獲得できない。2030年代前半には複数年にわたる営業赤字や製品開発の失敗が生じる。経営は採算の悪いサービスから撤退し、人員と事業拠点を整理するが、ソフトウェアの減損や退職関連費用が重なる。2036年6月期の営業損失は一時的な巨額赤字より小さくなるものの、10年間の累積損失と減損によって自己資本は大幅に減少する。
上場時に調達した資金は新製品開発、顧客維持、赤字補填、事業整理に使われ、当初の純現金が10年後もそのまま残るわけではない。会社は借入金の返済や費用削減を進めながら事業を縮小する。10年後に残るのは現金性資産と小規模な事業であり、継続的な利益を生む力にはほとんど価値を付けられない。創業経営陣は資産を維持して事業を続けるが、株主への分配は行われない。既存の医療DX事業が構造的に競争力を失う10年である。
- 医療DXストック事業:数量 3,000(年度平均の利用医療機関数(施設))× 価格 0.00(1施設当たり年間利用料(億円、2026年実績は約20.7万円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。数量は現在比約57%、年間単価は約18.5万円へ低下。AIと電子カルテの統合により料金を大幅に引き下げざるを得なくなる。
- 医療DXイニシャル事業:数量 850(年間導入件数(新規導入と追加導入の合計、件))× 価格 0.00(導入1件当たり平均初期単価(億円、2026年実績は約30.3万円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。導入件数は現在比約45%、単価も低下。人的設定支援を維持する費用が収入を上回る。
- 広告事業:数量 75.0(年間広告案件数(件))× 価格 0.02(広告案件1件当たり平均売上(億円、2026年実績は約204.7万円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。広告案件は75件へ減少。サイネージの維持費が広告収入に対して重くなる。
倍率:2036年6月期の純利益は赤字であり、継続的な稼ぐ力に正のPERを適用しない。増資後の自己資本15.7億円は10年間の事業損失、開発投資の失敗、ソフトウェアの減損、整理費用によって約6.3億円まで減少する。2026年6月期の現在自己資本は約6.32億円であり、悲観の床にはこれを超える将来の自己資本を使わない。PBR1.00を現在自己資本約6.32億円に適用し、丸めて時価総額6.3億円とする。10年後自己資本も約6.3億円であるため、将来利益の蓄積により床を引き上げることはない。10年後の純現金と換価可能資産の税後価値も約6.3億円と見込み、稼ぐ力ではなく残存資産が株主価値を支える筋書きである。
確率:既存SaaSの役割がAIエージェントと電子カルテに吸収され、人的導入支援と広告案件も減る複合シナリオ。構造転換には時間がかかるが、会社が診療記録の正本を握っておらず、独立した料金体系を守る力が弱いため15%とする。やや悲観との違いは、売上減少に加えて長年の開発投資の失敗と累積損失が生じ、増資資金まで大きく失われる点である。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
医療DXストック事業
WEB問診Symview、予約Wakumy、患者管理Kakarite、電話自動応答Iver、院内サイネージなどのクラウド型利用料。顧客は主に医科診療所であり、複数製品の利用で施設当たり売上が増える。
| 数量年度平均の利用医療機関数(施設) | 価格1施設当たり年間利用料(億円、2026年実績は約20.7万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 5,284 | 0.00 | 11 | 3 |
| 10 年後 中立 | 4,550 | 0.00 | 11 | 4 |
取り方:会社開示の医療DXストック収入は10.93747億円、期末利用施設数は5,929、ARPUは年間207千円。期末施設数と年度売上を直接掛けると期中の増加分を過大計上するため、10.93747億円÷0.00207億円から年度平均稼働施設数を約5,284施設と推定した。会社が公表する8,451アカウントは延べ製品数であり、利用施設数と重複して数えない。AIエージェント代替の型は「席課金・操作画面が価値の中心」に分類する。実際の課金単位は席でなく医療機関だが、主要な機能が予約・問診・受付などの画面とワークフローであるため同型のリスクを受ける。Kakariteは患者データを集約するが電子カルテの正本ではなく、独立した『記録の正本』型に格上げする証拠は不足している。営業利益3.12億円は会社が区分別利益を開示していないため、全社利益との整合を目的とした分析上の仮配分であり会社実績ではない。
医療DXイニシャル事業
新規導入や既存施設への追加導入に伴うコンサルテーション、システム設定、操作説明、機器関連の初期費用。医療機関ごとの業務フローに合わせる人的作業が含まれる。
| 数量年間導入件数(新規導入と追加導入の合計、件) | 価格導入1件当たり平均初期単価(億円、2026年実績は約30.3万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1,889 | 0.00 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,400 | 0.00 | 6 | 1 |
取り方:2026年9月25日の上場時決算開示に年間導入件数1,889件、平均単価303千円、実際の医療DXイニシャル売上6.26928億円が示されている。単純な件数×平均単価では約5.724億円となり、実際の売上と約9.5%の差がある。開示資料だけでは差の原因を確定できないため、収益認識期間や契約範囲の相違を含む調整係数1.0953を明示し、全社売上との整合を取った。会社の単価303千円を無断で331千円へ置き換えない。AIエージェント代替の型は「人月・工数で売るコンサル・設定支援」であり、中立の導入数量を10年で現状の55〜75%とする。営業利益0.27億円は未開示の区分別利益の推定配分。
広告事業
院内サイネージMedicastarやWEB問診Symviewの広告枠を使い、製薬会社、食品メーカー、自治体などへ広告の配信と関連サービスを販売する。
| 数量年間広告案件数(件) | 価格広告案件1件当たり平均売上(億円、2026年実績は約204.7万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 127 | 0.02 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 130 | 0.02 | 3 | 0 |
取り方:2026年9月25日の上場時決算開示に広告案件127件、案件平均単価2,047千円、広告売上2.59988億円が示されている。127件×0.02047億円=約2.59969億円で概ね一致する。広告ネットワークは2026年3月末時点で約3,750面。サイネージの面数は配信能力の目安であり、広告案件数と重複して売上数量に掛けない。AIエージェント代替の型は、自社医療機関ネットワークに掲載する広告枠部分を「自社媒体・プラットフォーム」、広告制作・編集・運用部分を「制作・運用」とする。制作と媒体の正確な収入内訳は非開示のため、広告枠を主、制作部分を従とみる。制作部分には手数料率低下圧力を織り込み、媒体自体は実際の接触人数と出稿需要で評価する。営業利益0.25億円は会社未開示の推定配分。
リスクと懸念
AIエージェント代替
予約、問診、電話、受付といった操作画面が価値の中心となるSaaSは、AIエージェントが電子カルテと直接連携することで個別の利用料を払う必要が薄れる。医療DXストックは全社売上の約55%、人的導入支援は約32%を占めるため、技術転換が両方の収益を同時に圧迫する可能性がある。自社のAI電話サービスCapaiは2026年6月に提供を開始したが、独立した売上金額は確認できず、代替リスクの相殺材料として過大評価しない。
電子カルテ・AI問診会社との競争
エムスリー系製品、メドレー、Ubie、ドクターキューブなどが周辺業務の効率化を提供している。電子カルテと予約・問診・患者管理が一体化すれば、レイヤードの独立した製品は切り替えの対象になる。現在の低解約率が新しいシステム世代でも続くかは未確認であり、今の導入施設数から将来の安定収入をそのまま推定できない。
メディパル経由の販売への依存
2026年6月期の新規契約医療機関の約4割はメディパルグループを経由している。医薬品卸のネットワークは販売上の強みである反面、代理店の製品選定、販売手数料、提携条件が変わると新規導入件数が急減する可能性がある。代理店を経由した契約の収益性と継続率を直接販売と比較できる十分な開示はなく、販売網の強さを独占的な堀とは認められない。
ストック収入と初期収入の取り違え
2026年6月期は増収の大きな部分を医療DXイニシャル事業が支えた。導入時に受け取る設定費用やコンサルテーション収入は、同じ顧客から毎年同額を受け取れるものではない。初期導入件数が一時的に急増しても、翌期以降の継続利用料の増加と結び付かなければ収益力は持続しない。AIによる導入作業の省力化は顧客の利便性を高める一方、会社の初期費用単価を引き下げ得る。
成長投資と株式希薄化
2026年のIPO後に資金余力は拡大したが、既存製品の機能拡張と営業体制への投資が高い増分利益を生むとは限らない。さらにオーバーアロットメント対応の増資と未行使新株予約権を合わせると、添付の株数基準から現在の株主の取り分は大きく薄まる。成長投資の成果が希薄化を上回らなければ、会社全体の利益が増えても一人の株主に帰属する価値は増えにくい。
医療広告規制と広告主予算
院内広告は医療機関で患者に接触できるという独自の価値を持つが、広告内容の審査、医療広告に関する規制、製薬企業の広告予算、サイネージの設置施設数によって案件数が左右される。広告制作自体はAIで低価格化しやすく、広告枠の価値と制作手数料の価値を分けて考える必要がある。広告収入が縮小しても設備・配信網の維持費は残るため、利益率への影響は売上減少以上になる場合がある。
今後の分かれ目
- WEB問診・予約・患者管理の複数製品利用率が上昇し、月次解約率0.38%前後を維持したまま年間利用料の値上げにも成功したら
- 医療DXストック事業の価格決定力の証拠が増える。単なる画面型SaaSから業務基盤に近づいたかを検証し、中立の数量と価格、長期成長率の見通しを上方修正する余地が生まれる。
- AI電話エージェントCapaiの有料契約施設数と年間売上金額が明確に開示され、従来製品の売上減少を補っていることが確認できたら
- AIによる事業代替の受け手ではなく、提供側として収益化できている証拠となる。AI製品で実際に売上が増える範囲を数量に反映し、楽観側の筋書きを見直す。発表や導入実証だけでは上方修正しない。
- 利用医療機関数が会社予想の2027年6月期7,627施設へ向けて伸びる一方、解約率やARPUが悪化したら
- 一時的な新規獲得に頼る成長の可能性が高まる。純増施設数ではなく継続利用と実現単価を重視し、中立の数量を減らしてやや悲観の確率を引き上げる。
- メディパル経由の契約割合が大幅に低下し、直接販売の顧客獲得費用が増えたら
- 販売網の競争優位が弱まった可能性を考える。導入件数の減少と販売管理費率の上昇を同時に見直し、人的導入支援と継続課金の利益率を下方修正する。
- 営業利益率が2027年会社予想の18.5%を超えて安定し、同時に営業キャッシュフローも増え続けたら
- 内部のAI活用や規模の経済が実際に利益へ結び付いた証拠となる。単に開発費や販売費を先送りした結果でないことを確かめ、中立の営業利益率と投下資本利益率を見直す。
- 増資後の余剰現金を利用した大型買収や追加増資が発表されたら
- 買収価格、対象会社の継続課金、統合費用、のれん、株式希薄化を評価し直す。買収額に見合う利益が確認できなければ会社全体の価値を自動的に増やさず、株主の取り分と資本配分リスクを慎重側へ修正する。
見ておくもの
- 利用医療機関数、年度平均稼働施設数、延べプロダクトアカウント数の四半期推移
- 月次解約率0.38%の維持と、医療機関当たり年間利用料ARPUの実績
- 医療DXストック、医療DXイニシャル、広告の収入構成比とそれぞれの成長率
- 年間導入件数、導入平均単価、メディパル経由の契約比率
- AI電話エージェントCapaiの有料契約数、売上金額、従来製品からの移行実績
- 営業キャッシュフロー、研究開発・ソフトウェア投資、営業利益率、増資後ROE、配当・自社株買いの開始状況
倍率と資本コストの決め方
現在の株価2220円と添付の基準株数2,849,498株から得られる時価総額約63.26億円は、最後の比較にだけ使用した。セグメントの数量と単価は上場時決算開示の利用施設数・ARPU・導入件数・導入単価・広告案件数を起点とし、物価上昇は名目価格に入れた。AIエージェント代替は10年の数量・価格とg_longに反映し、kの寿命や確率によって同じ縮小を何度も割り引いていない。kは基本7.5%から増資後の純現金による0.25ポイントのみを控除した7.25%。楽観から中立のPERは市場の過去の倍率ではなく、RONIC、k、g_longから導く13.79倍を採用した。やや悲観は縮小後の稼ぐ力と換価可能資産を比較した。悲観では10年間の開発投資失敗、営業損失、減損、事業整理によって増資後自己資本15.7億円が約6.3億円まで減少する。したがって悲観のPBR1.00は将来に積み上がった自己資本ではなく、現在自己資本約6.32億円を基準とする。時価総額6.3億円は現在自己資本約6.32億円×PBR1.00の丸めた値であり、10年後の換価可能資産6.3億円とも一致する。増資後の現金約14.72億円が2036年まで無傷で残るとは想定せず、悲観の10年間に約8.1億円を消費する点を明記した。潜在株式の希薄化は会社全体の価値を算定した後に適用する。日本基準の新リース会計基準による貸借対照表の表示変更は事業価値の増加とみなさない。2026年10月23日時点の確認ではTOB、MBO、上場廃止予定を確認できず、2026年6月期の継続企業の前提に関する注記は該当事項なしである。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3.0%と株式リスクプレミアム4.5%を合わせた基本7.5%から、増資後の純現金の厚さに対応する0.25ポイントを控除した。個別のAIリスク、代理店集中、株式希薄化は事業の筋書きと株主の取り分で扱い、資本コストには重ねない。