結論
エムティーアイは、スマートフォン向け有料コンテンツで現金を稼ぎ、薬局・自治体・学校の業務システムに再投資する会社である。筆者の結論は「割高」だ。2026年10月22日の時価総額約308億円に対し、10年先の事業価値と株主還元を資本コストで割り引いた本質価値は約171億円となった。差は約45%のマイナスであり、単なる株価の一時的な下落を理由に割安と判断できる水準ではない。
この会社には、数字だけでは見落としやすい強みがある。2026年6月末にはクラウド薬歴の導入薬局が4,743店、母子手帳アプリの導入自治体が891、校務支援システムの導入学校が1,359校となった。とりわけ自治体との継続契約や学校の成績・出欠情報は、利用者の生活や日常業務に入り込むため、単なる情報配信より離れにくい。ただし、契約数の拡大がそのまま利益の拡大になるとは限らない。実際、ヘルスケア事業は開発負担によって2026年9月期第3四半期累計でも赤字が続いている。
もう一つの問題は、いま稼いでいる利益の寿命だ。2025年9月期のコンテンツ事業は全社売上の約57%を占め、本社費配賦前の営業利益は約43億円に達した。ところが、スマートフォンの画面で情報を探し、入力し、操作する行為そのものがAIエージェントに置き換われば、有料会員の維持費用と単価の両方に圧力がかかる。医療・学校の業務システムでも、記録と制度対応は残っても、操作画面を使うための料金を従来どおり徴収できる保証はない。
財務面には大きな救いがある。2025年9月期末の純現金は約161億円で、資金繰りが直ちに問題となる会社ではない。しかし契約負債や開発投資に備える現金まで全額を少数株主の取り分と考えることはできない。2025年の純利益34億円も、過年度の消費税還付と税効果の影響を含み、通常の稼ぐ力とは分ける必要がある。筆者は、財務の強さと導入基盤を評価しながらも、10年後の超過収益を確信できる部分がまだ狭いと判断する。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、まず十年後にも必要なサービスだけを買いたい。電子薬歴や学校の成績記録、自治体の母子保健手続きは、流行に左右されにくい社会的な仕事である。この需要の存在は評価できる。しかし、必要なのは記録や手続きであって、現在の画面や課金方法がそのまま必要とは限らない。AIエージェントが画面操作を代行し、競合する共通基盤へ接続できるようになれば、業務ソフトの単価には長い時間をかけて圧力がかかる。
次に、利益を自由に使える現金へ変えられるかを見る。コンテンツ事業は高い利益率と会費収入を持つが、会員を獲得する広告費が必要であり、会員の寿命は永久ではない。医療DXは顧客契約が増えても開発費が先行している。学校DXには収益化の実績が現れたが、初期開発売上と繰り返し入る料金を分けて測らなければ利益の質を誤る。したがって、直近の純利益をそのままオーナー利益とは扱わない。
資本配分の最も厳しい試験は、ヘルスケアへの再投資である。過去には業績が悪化した時期にも新規事業を育成し続け、足元ではようやく一部に成果が出始めた。この経験は粘り強さとも言えるが、資本効率の低い事業を長く抱えた結果とも解釈できる。薬局数と自治体数が増えていることよりも、増えた売上から追加の開発費を引いた後に、どれだけ利益が残るかが決定的である。
現金が厚いことは安全域を支えるものの、現金の全額を株主が自由に引き出せるわけではない。2025年9月期の純現金約161億円から、顧客へのサービス履行に必要な資金や開発余力を確保する必要がある。株主として魅力が増すのは、ヘルスケアの投資回収が明らかになり、使い切れない資金が継続的に還元される局面だ。事業の存在価値を認めることと、いまの時価総額を正当化することは、別の判断である。
何で稼ぐ会社か
収益の土台はコンテンツ事業である。音楽・娯楽・情報サービスに加え、広告を遮断するセキュリティアプリ「AdGuard」やオリジナルコミックの提供から収入を得る。2025年9月末の月額有料会員は324万人だった。2026年には子会社ビデオマーケットの連結除外で会員が減る一方、AdGuardの増加がそれを一部補った。会員が毎月料金を払い続ける仕組みは優れているが、会員獲得の広告費、通信キャリアやアプリ流通経路との関係、他社の無料機能との競争が利益を左右する。
ヘルスケア事業は性質の異なる仕事の集合体だ。「ルナルナ」などの個人向け健康情報課金、薬局向けの「CARADA電子薬歴Solamichi」、自治体向けの母子手帳アプリ「母子モ」と子育てDX、医療機関向けの開発・運用が同じ報告セグメントに入っている。2025年9月期の外部売上は約67億円だったが、営業損益は約0.8億円の赤字だった。薬局や自治体の契約は伸びていても、新しいクラウドサービスや機能追加に人件費を先払いしているため、増収分の多くがまだ株主の利益になっていない。
学校DX事業の中心は「BLEND」である。出欠、成績、指導要録、校務帳票を一つのクラウドシステムで扱い、私立学校には生徒一人当たり月額300円を基本とする料金体系を持つ。2025年9月期は外部売上約19億円、セグメント営業利益約5.5億円で黒字化した。公立学校では都道府県などのまとまった導入案件を獲得する機会があるが、初期構築費と継続利用料が混在するため、受注年の売上をそのまま毎年続く売上とみなすべきではない。
その他事業は、法人向けDX支援、受託開発、AI関連サービスなどで構成される。2025年9月期には333人の従業員を抱え、外部売上約43億円、営業利益約9.5億円を計上した。ただし、顧客に納める成果物や開発作業から売上を得る部分があり、作業時間を大幅に短縮するAIエージェントが普及すると、従来の工数に対する請求は維持しにくい。新しい成果報酬型の収益がその減少を埋めるという金額付きの裏付けは、現時点では十分でない。
優良さと弱いところ
最も評価できるのは、生活と業務の接点を複数持っていることだ。「母子モ」は2026年6月末に全国の自治体の約半数で採用され、予防接種、乳幼児健診、相談予約などの周辺サービスを販売する入口になっている。薬局事業にはメディパルグループとの関係を生かした営業網があり、エムティーアイグループ全体では約1万3,000薬局との取引実績があるという。単純な新規参入者と比べれば、営業先に到達する費用は低く抑えやすい。
ただし、堀、つまり競争相手が簡単には奪えない強みを会社全体で「強い」と評価するには証拠が足りない。電子薬歴は法令対応の記録を扱い、移行には一定の手間がかかる。それでも、年間解約率が5%未満であること、移行に年単位の期間が必要なこと、法令改正のたびに値上げが通ったことなど、長期間の超過利益を裏付ける数字は確認できなかった。学校でもBLENDの導入実績は有力だが、公立校務支援にはEDUCOMなど既に大きな顧客基盤を持つ競合がいる。記録を残す価値と、現在の操作画面に高い料金を払う価値は分けて考えるべきだ。
資本効率にも評価の難しさがある。2025年9月期のROEは約18.5%まで回復したが、過去10年の中央値は約8%にすぎない。2021年と2022年は最終赤字で、2023年の営業利益率は約1%だった。2025年の純利益には特殊要因があるため、最近の高いROEを新規投資の利回りとみなせない。ヘルスケアの開発に投じた資本が安定して資本コストを超える利益を生んだかについても、事業別投下資本と増分利益の開示は不足している。
現金が厚く、有利子負債の返済に追われにくい点は優れている。一方、費用を先行させる事業を増やしてきたため、財務の強さが必ずしも株主資本の高い利回りに結び付いていない。筆者は、学校DXの採算改善を前向きに評価するが、薬局DXの黒字定着と不採算投資の整理が確認できるまでは、再投資の巧拙を厳しく見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
薬局向けの市場は、全国の施設数という比較的明確な母数を持つ。厚生労働省による2024年度末の薬局数は63,203施設である。2025年9月末のSolamichi導入3,811店は約6%、2026年6月末の4,743店は約7.5%に相当する。店舗当たり月額3万円という分析上の仮定なら、国内薬局すべてを対象とした電子薬歴等の年間料金市場は約228億円となる。ただし、これは電子薬歴の利用料に絞った概算であり、レセコン、在庫管理、機器、導入工事を含む薬局IT市場全体の規模ではない。競合にはEMシステムズのMAPsシリーズやカケハシのMusubiがあり、システムの種類と導入施設の定義が異なるため、競合各社の正確な電子薬歴シェアまでは確定できない。
子育てDXは市場が広がる部分と、既に成熟した部分が共存する。「母子モ」は2025年9月末の772自治体から2026年6月末には891自治体へ増え、国内自治体の約半数に到達した。残る未導入自治体の獲得余地はあるが、今後は導入自治体の数だけで大きく伸びる段階ではない。付加価値の高い予防接種や健診の電子化を追加契約してもらえるかが重要になる。2026年6月末の子育てDXサービス導入は延べ427自治体であり、これは独立した427自治体という意味ではない。出生数の減少と自治体予算の制約を考えると、利用者数が自然に増える市場ではない。
学校DXでは、会社がBLENDの私立中高市場における採用比率を約50%と説明している。ただし、日本の学校すべての半分という意味ではない。公立学校向けではEDUCOMが2025年10月時点で統合型校務支援システムC4thを約1万1,000校に提供しており、学校支援システム全体の導入は1万2,000校を超える。BLENDが公立校で勝ち進むには、価格だけでなく都道府県単位の導入実績、既存システムからのデータ移行、運用支援と情報セキュリティが必要になる。私立校での実績を公立市場全体へ単純に広げることはできない。
個人向けコンテンツは市場の境界が曖昧である。動画、音楽、コミック、広告遮断、健康情報では競合も利用目的も異なり、324万人という会員数だけで市場シェアを推定することはできない。Google、Apple、通信キャリアの流通方針が変われば、獲得単価と継続率が変わる。AIによる回答や自動操作の普及も、有料アプリを開く頻度を減らす可能性がある。その他の受託開発についても、巨大な国内IT市場の一部を扱うだけで、会社の外部売上から信頼できる全国シェアを求めることは難しい。10年後の価値を支えるのは、市場全体の名目成長ではなく、個々の契約を利益付きで維持できるかどうかだ。
資本政策と M&A
会社の中期的な株主還元方針は総還元性向35%を目安とすることである。総還元性向は配当と自社株買いの合計を当期純利益で割る指標で、DOEや特定額の自社株買いについて継続的な数値の約束は確認できない。配当は2024年9月期に増配され、2025年9月期も増配、2026年9月期の会社予定も増配である。したがって、支配株主の存在だけを理由に余剰現金の回収率を極端に低く評価するのは適切でない。
2025年11月の決算説明資料には、数年後に連結営業利益50億円以上を目指す収益イメージが示されている。ただし、図表の到達年度は「FY202X」であり、特定の年度を確約した定量中期計画ではない。売上高、ROE、投下資本利益率についても、同じ到達年に結び付いた具体的な数値目標は示されていない。さらに2026年8月には、薬局・子育てDXの開発負担などから2026年9月期の営業利益予想が27億円へ下方修正された。50億円は目標として評価するが、既に実現が約束された利益ではない。
過去の資本配分には両面がある。2016年には約150万株、約9.6億円の自社株取得を実施し、近年は配当を引き上げた。一方、医療・学校の企業買収や子会社化、関連会社への出資を重ね、2025年9月期末の投資有価証券は約47億円となった。2026年にはビデオマーケットの連結除外など事業の整理も進んだが、投資案件全体が株主資本コストを超える利回りを生んだと結論できる開示はない。持分法利益や保有株式の評価変動も、事業利益と区別して追う必要がある。
大株主への保有集中は資本政策の自由度と少数株主の発言力の両方に影響する。現在確認できる開示では進行中のTOB、MBO、上場廃止予定や継続企業の前提に関する注記は見当たらない。今後の価値向上には、成長投資を続けること自体より、不採算開発の停止基準と余剰資金の還元方針を明確にすることが求められる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
エムティーアイには、デジタル課金企業から医療・教育の業務基盤企業へ変わる可能性がある。薬局向けクラウド薬歴は2025年9月末の3,811店から2026年6月末の4,743店へ伸び、グループの薬局取引網は約1万3,000店に及ぶ。全国の薬局は6万店を超えるため、既存顧客への新機能販売だけでも機会が残っている。電子薬歴に加えてAIによる記録要約、在庫管理、開発中のクラウドレセコンを一体で提供できれば、薬局が購入する商品の幅が広がる。ただし、レセコンはまだ開発段階であり、売上の実現を当然視する必要はない。
母子モの採用は自治体の約半数まで広がった。ここから予防接種、乳幼児健診、相談予約などの高付加価値サービスへ契約が移れば、自治体数が増えなくても一自治体当たりの収益は増える。BLENDは私立学校で高い採用率を獲得し、2025年には学校DX事業が営業黒字となった。公立学校でも複数の県域案件を得れば、開発費を分担でき、利用料が積み上がる。
コンテンツでもAdGuardのような安全性と利便性を直接売る商品は、単なる情報記事よりAIに代替されにくい。会員基盤を維持して値上げが進めば、既存事業は新規投資の資金源として長く機能する。営業利益50億円という会社の中長期目標を超える余地はある。ただし、それを裏付けるには、開発中の商材が売れ、追加導入の利益率が実際に改善し、AI関連事業が外部顧客から成果に見合う料金を得られることが必要だ。
慎重な見方
現在の利益の大部分は、技術革新の速いコンテンツ事業が生んでいる。2025年9月期のコンテンツ事業の営業利益は約43億円で、全社営業利益約29億円を上回った。その他の事業と本社費を合算すると、古い課金モデルの高収益が会社全体を支えている姿が浮かぶ。AIエージェントや端末の標準機能が、検索、広告遮断、健康情報の整理、会員向け情報配信を安く提供すれば、既存会員の減少と料金競争が同時に起きる。
医療DXも簡単には利益源へ変わらない。薬局の電子薬歴にはEMシステムズやカケハシなど競合があり、顧客は記録の安全性を求めながらも費用を比較する。AIが薬歴の下書きや操作を代行するほど、操作性の良さを理由に高い料金を請求する余地は小さくなる。母子モは自治体への普及が進んだ分、新規導入だけでは成長しにくい。学校の校務支援には、既に公立市場で大きな導入基盤を持つEDUCOMもいる。
2025年の純利益34億円は消費税還付と税効果に支えられた数字であり、10年間の稼ぐ力を示すものではない。売上高は2015年の約335億円から2025年の約299億円へ減少し、2021年と2022年には最終赤字となった。成長事業を育てながらも、過去10年の資本効率は安定して高かったわけではない。大株主の保有が集中し、資金の使い方を少数株主が直接決められないことも、余剰現金を額面どおり評価できない理由になる。
どちらに重みを置いたか
導入実績と財務の厚さでは前向きな見方に十分な根拠がある。しかし、会社全体の利益を守る力については慎重な見方が優勢だ。学校DXは黒字化したが、ヘルスケアの開発投資回収はなお未確定で、既存コンテンツと受託開発にはAI代替の圧力が残る。確率は楽観側27%、中立30%、悲観側43%と下方に寄せた。下に寄せる理由は、コンテンツの高収益への依存と、医療DXが増収下でも赤字という会社固有の事実である。AIの影響は主として数量・単価と長期成長率に織り込んでおり、資本コストや確率で同じ縮小を機械的に重ねていない。10年の確率加重価値は約171億円、現時点の時価総額との差は約45%のマイナスとなる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 502 円279 億円(+ 還元の換算額還元の合計 101 円56 億円)。 今の値に割り戻すと 307 円171 億円、今との差 −43.3%、 期待の年率 +1.2%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,073 円596 億円 | 207 円115 億円 | +136.1% | +10.0% | 102 円57 億円 |
| やや楽観 | 19% | 782 円434 億円 | 144 円80 億円 | +70.8% | +6.0% | 176 円98 億円 |
| 中立 | 30% | 472 円262 億円 | 108 円60 億円 | +7.1% | +0.8% | 174 円97 億円 |
| やや悲観 | 27% | 304 円169 億円 | 70 円39 億円 | −30.9% | −4.0% | 101 円56 億円 |
| 悲観 | 16% | 272 円151 億円 | 36 円20 億円 | −43.2% | −5.8% | 49 円27 億円 |
| 加重平均 | 100% | 502 円279 億円 | 101 円56 億円 | +11.2% | +1.2% | 603 円335 億円 |
今の株価時価総額 542 円301 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 医療と学校が利益源となり、既存課金も持ちこたえる 利益 40 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,073 円596 億円
既存の薬局・学校・自治体契約から追加サービスの採用が進み、増収が開発費を上回るようになる。薬局では電子薬歴と在庫管理などを組み合わせ、学校では私立向けの運用実績が公立校の競争入札でも信用につながる。母子モは自治体との関係を維持し、健診や予防接種関連の継続料金を積み上げる。いずれも2026年までに確認できた導入基盤を土台とするもので、未発売のクラウドレセコンが必ず成功すると決めているわけではない。
コンテンツ事業ではAdGuardの収益力が維持され、価格を物価以上に引き上げても会員離れが限定的にとどまる。その他の法人DXはAIで作業が効率化される一方、請求可能な工数そのものは増えない。開発・管理の費用を抑えた結果、営業利益は会社が掲げる中長期目標を上回る。経営陣は不採算の買収や追加開発を避け、利益の一部を配当と自社株買いに戻す。10年間の利益蓄積が厚く、既存株主にとって最も望ましい筋書きである。
- コンテンツ・セキュリティ課金:数量 3,100,000(月額有料会員数(人、期末値))× 価格 600(会員換算の月平均外部売上(円、コミック等の非会費売上を含む))→ 売上 223 億円・営業利益 67 億円。有料会員310万人。セキュリティ商品を中心に実効単価が上昇する。
- 薬局DX・電子薬歴:数量 4,740(クラウド薬歴導入薬局数(店))× 価格 34,500(薬局1店当たり推計月額包括売上(円))→ 売上 20 億円・営業利益 5 億円。2026年6月時点に近い店舗数を維持し、周辺サービスで採算を改善。
- 母子モ・子育てDX:数量 891(母子手帳アプリ導入自治体数(自治体))× 価格 115,000(自治体1件当たり推計月額売上(円、周辺DX契約を換算))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。2026年の自治体基盤を維持。追加機能への支払いが増える。
- ルナルナ等の個人向けヘルスケア:数量 400,000(月額有料会員数(人))× 価格 600(有料会員1人当たり推計月額売上(円))→ 売上 29 億円・営業利益 7 億円。有料会員の減少を限定し、専門機能の利用料を維持。
- 医療機関向け開発・その他ヘルスケアDX:数量 139(年間の直接稼働人員相当(人、推定))× 価格 17,512,795(稼働人員1人当たりの年間売上換算額(円))→ 売上 24 億円・営業利益 5 億円。工数は2025年を超えず、案件単価と収益管理を改善。
- 学校DX・BLEND:数量 1,359(導入学校数(校))× 価格 2,037,399(導入学校1校当たりの年間平均売上換算額(円))→ 売上 28 億円・営業利益 8 億円。2026年の導入校規模を維持し、公立案件の初期費用を回収。
- 法人向けDX支援・AI受託:数量 330(報告セグメントの年間稼働人員相当(人))× 価格 17,211,354(稼働人員1人当たりの年間外部売上換算額(円))→ 売上 57 億円・営業利益 14 億円。受託工数を増やさず、高付加価値契約へ移行。
倍率:2036年のROEは40.0÷399.1=約10.0%。資本コスト7.75%、堀の残る割合1/2から増分資本利益率RONICは約8.9%となる。ただしAIエージェント代替により2036年以降の名目成長g_longを0%とするため、正当化PER=(1-0÷RONIC)÷(0.0775-0)=12.90倍を上限そのものとして採用。余剰現金140億円の税後利息相当1.96億円を純利益から外して12.9倍を掛け、現金の75%を加える。2025年の営業利益率や現在の市場PERから倍率を決めていない。
確率:薬局と学校の導入済み顧客を収益化し、同時に既存コンテンツ会員を高水準で守るという複数の成功が必要。営業利益率は過去の全社最高水準を超えるため、可能性は認めるが低い確率とする。
やや楽観 19% 学校が利益を積み、薬局DXの赤字が解消する 利益 27 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 782 円434 億円
BLENDの継続利用料が増え、公立校の導入も一定の利益を残す。薬局DXでは既に導入した薬局向けの保守と周辺機能が収益を支え、開発費の増加が落ち着く。母子モでは自治体数の大幅な拡大よりも、一自治体への追加契約が収益を補う。これらの事業は大きく伸びるが、薬局・学校の導入件数について2026年時点の既知の高水準から、さらに継続して増え続けるとは仮定しない。
コンテンツの会員は緩やかに減るものの、AdGuardを中心とする商品群が収益を維持する。医療系の個人向け課金はAIによる無料サービスとの競争を受け、契約者が減る。その他DXは人月請求への圧力によって稼働量が縮小するが、専門性の高い案件で単価を補う。全社営業利益は50億円という会社の長期的な到達目標に近付くものの、それを毎年当然に達成するほどの成長ではない。余剰現金を大きな買収に使い切らず、通常の株主還元を継続する。
- コンテンツ・セキュリティ課金:数量 2,850,000(月額有料会員数(人、期末値))× 価格 565(会員換算の月平均外部売上(円、コミック等の非会費売上を含む))→ 売上 193 億円・営業利益 52 億円。会員285万人へ縮小するが、広告遮断等の料金を維持。
- 薬局DX・電子薬歴:数量 4,500(クラウド薬歴導入薬局数(店))× 価格 34,500(薬局1店当たり推計月額包括売上(円))→ 売上 19 億円・営業利益 4 億円。2026年の導入基盤の大半が残り、開発負担が収束。
- 母子モ・子育てDX:数量 850(母子手帳アプリ導入自治体数(自治体))× 価格 115,000(自治体1件当たり推計月額売上(円、周辺DX契約を換算))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。自治体契約を維持しつつ、追加業務の電子化が進む。
- ルナルナ等の個人向けヘルスケア:数量 350,000(月額有料会員数(人))× 価格 550(有料会員1人当たり推計月額売上(円))→ 売上 23 億円・営業利益 5 億円。健康情報課金の会員減少は続くが、専門サービスは残る。
- 医療機関向け開発・その他ヘルスケアDX:数量 112(年間の直接稼働人員相当(人、推定))× 価格 16,728,640(稼働人員1人当たりの年間売上換算額(円))→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。開発工数は2025年の80%。価格上昇と採算管理で補う。
- 学校DX・BLEND:数量 1,300(導入学校数(校))× 価格 2,019,683(導入学校1校当たりの年間平均売上換算額(円))→ 売上 26 億円・営業利益 7 億円。校務DXの利用料と公立案件が収益を下支え。
- 法人向けDX支援・AI受託:数量 266(報告セグメントの年間稼働人員相当(人))× 価格 16,697,583(稼働人員1人当たりの年間外部売上換算額(円))→ 売上 44 億円・営業利益 9 億円。稼働量は80%。工数課金の単価維持に一定程度成功。
倍率:2036年ROEは26.6÷334.1=約8.0%で資本コスト7.75%をわずかに上回る。通常の堀の残存率1/2からRONICは約7.9%。AIエージェント代替を織り込む長期名目成長0%では、利益ベースの正当化PER上限は1÷0.0775=12.90倍となる。余剰現金160億円に対する税後利息2.24億円を除く継続利益に12.9倍を適用し、現金の75%を別に加算する。
確率:学校DXの黒字化実績と薬局の導入増加を考えると十分に実現しうる。ただし既存会員の維持、薬局の採算改善、受託開発の価格維持が同時に必要で、最も可能性が高い筋書きにはしない。
中立 30% 導入実績は残るが、旧来の高収益が薄まる 利益 14 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 472 円262 億円
薬局と学校の契約は社会的に必要な記録を扱うため一定数が残る。しかし、AIエージェントが薬歴入力や校務画面の操作を補い、クラウドの基本機能を横並びにすることで、料金は物価上昇に追い付かない。2026年に既に導入されていた薬局と学校の一部を失い、新規獲得と解約がおおむね拮抗する。母子モは自治体の約半数という地位を一部維持するが、人口減少と行政予算の制約で契約数を大きく伸ばせない。
コンテンツの会員は長期的に減り、AdGuardなどの有力商品だけが価格を比較的守る。ルナルナ等の有料会員も、汎用AIによる情報整理や健康管理の普及によって減少する。その他DXは従来の65%相当の工数へ縮むが、名目の受託単価上昇が一部を補う。本社共通費は業務自動化と人員配置見直しにより削減できるものの、2025年ほどの高い営業利益は保てない。10年間の利益から会社方針に沿った還元を行い、残る資金を開発と現金として保持する。事業は続くが、株主資本に対する利回りは十分ではない。
- コンテンツ・セキュリティ課金:数量 2,500,000(月額有料会員数(人、期末値))× 価格 510(会員換算の月平均外部売上(円、コミック等の非会費売上を含む))→ 売上 153 億円・営業利益 35 億円。有料会員は250万人へ減少。価格上昇は10年間で約16%にとどまる。
- 薬局DX・電子薬歴:数量 4,260(クラウド薬歴導入薬局数(店))× 価格 33,000(薬局1店当たり推計月額包括売上(円))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。2026年の4,743店の約90%が残る。全国薬局の約6.7%。
- 母子モ・子育てDX:数量 800(母子手帳アプリ導入自治体数(自治体))× 価格 110,000(自治体1件当たり推計月額売上(円、周辺DX契約を換算))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。2026年の891自治体の約90%を維持。追加機能の値上げは限定的。
- ルナルナ等の個人向けヘルスケア:数量 280,000(月額有料会員数(人))× 価格 510(有料会員1人当たり推計月額売上(円))→ 売上 17 億円・営業利益 3 億円。有料会員は2025年の約60%。AIによる情報サービス代替を反映。
- 医療機関向け開発・その他ヘルスケアDX:数量 91.0(年間の直接稼働人員相当(人、推定))× 価格 16,336,563(稼働人員1人当たりの年間売上換算額(円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。実質工数65%、名目年間単価125%。成果報酬への転換は未確定。
- 学校DX・BLEND:数量 1,220(導入学校数(校))× 価格 1,948,816(導入学校1校当たりの年間平均売上換算額(円))→ 売上 24 億円・営業利益 5 億円。2026年の1,359校の約90%を維持。既存校の単価には競争圧力。
- 法人向けDX支援・AI受託:数量 216(報告セグメントの年間稼働人員相当(人))× 価格 16,055,368(稼働人員1人当たりの年間外部売上換算額(円))→ 売上 35 億円・営業利益 5 億円。実質稼働量65%、名目単価125%。AIによる人月単位の代替を反映。
倍率:中立の2036年ROEは13.5÷294.1=約4.6%で資本コスト7.75%を下回る。超過収益を長期成長として認めないため、PERの上限は継続する稼ぐ力1÷k=12.90倍。余剰現金155億円の利息相当2.17億円を除く事業純利益11.33億円に上限12.9倍をそのまま適用し、現金155億円の75%を別に加算する。利益の不確かさは数量・利益率・g_longに反映済みであり、倍率をさらに恣意的に縮めない。
確率:電子薬歴とBLENDには実際の顧客が存在するため事業消滅を中立とはしない。ただし収益化が進む速度より、コンテンツと工数型受託の単価・数量にかかる圧力が大きい。下に寄せる理由:ヘルスケア事業の増収下での赤字と、既存コンテンツ利益への高い依存が同時に確認されるため、下方の筋書きにより大きな確率を与えた。
やや悲観 27% 高収益コンテンツが縮み、新規事業も低採算にとどまる 利益 7 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 304 円169 億円
コンテンツの会員数が大きく減り、残るセキュリティ関連商品からの利益で他事業を支える構図になる。薬局の電子薬歴と学校DXは競争相手に契約を奪われ、画面操作を提供するだけの料金は下がる。薬歴や成績の記録義務がなくなるわけではないが、その保存と操作を行うソフトウェアの選択肢が増えることで、顧客の乗り換え交渉力が強くなる。自治体向け子育てDXも競争入札と予算縮小の影響を受ける。
経営陣は開発案件や子会社を整理し、共通部門の人員と外注費を削る。売上が大きく落ちるため、営業利益は一桁億円まで低下するが、会社はなお存続する。受託開発は高単価案件だけを残し、採算の悪い医療向け開発を減らす。配当と自社株買いは利益水準に合わせて縮小し、買収に大きな現金を使わず財務を守る。利益の再拡大は見込みにくく、株主が期待できる価値の大部分は残った現金と限定的な事業利益から生まれる。
- コンテンツ・セキュリティ課金:数量 2,100,000(月額有料会員数(人、期末値))× 価格 465(会員換算の月平均外部売上(円、コミック等の非会費売上を含む))→ 売上 117 億円・営業利益 28 億円。有料会員210万人。収益性の低い商品を整理して利益率を守る。
- 薬局DX・電子薬歴:数量 3,000(クラウド薬歴導入薬局数(店))× 価格 29,000(薬局1店当たり推計月額包括売上(円))→ 売上 10 億円・営業利益 −1 億円。導入シェアが約4.7%へ低下し、保守・開発費で赤字化。
- 母子モ・子育てDX:数量 650(母子手帳アプリ導入自治体数(自治体))× 価格 100,000(自治体1件当たり推計月額売上(円、周辺DX契約を換算))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。予算削減と競争入札で自治体契約を失う。
- ルナルナ等の個人向けヘルスケア:数量 200,000(月額有料会員数(人))× 価格 420(有料会員1人当たり推計月額売上(円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。AI健康情報サービスへの移行で課金会員が減る。
- 医療機関向け開発・その他ヘルスケアDX:数量 70.0(年間の直接稼働人員相当(人、推定))× 価格 14,376,175(稼働人員1人当たりの年間売上換算額(円))→ 売上 10 億円・営業利益 −1 億円。稼働工数50%、名目単価110%。開発の固定費が残る。
- 学校DX・BLEND:数量 950(導入学校数(校))× 価格 1,807,084(導入学校1校当たりの年間平均売上換算額(円))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。公立の競争入札に苦戦し、私立の一部も契約を変更。
- 法人向けDX支援・AI受託:数量 170(報告セグメントの年間稼働人員相当(人))× 価格 14,128,724(稼働人員1人当たりの年間外部売上換算額(円))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。実質工数約51%、名目単価110%。人月の稼ぎが薄まる。
倍率:ROEは6.7÷255.1=約2.6%で資本コストを下回る。長期名目成長0%のため継続利益に対する価値上限1÷7.75%=12.90倍を超えない。余剰現金145億円の税後利息相当2.03億円を除いた事業純利益4.67億円に12.9倍を掛け、現金145億円の75%を別に加算する。やや悲観の価値の中心は利益成長でなく現金である。
確率:コンテンツ課金、受託工数、学校の画面操作という複数の収益源にAI代替の影響が及ぶ可能性は高い。薬局・学校が存在し続けても、新規導入や保守の利益率が下がるという、会社固有の下振れを想定する。
悲観 16% 既存課金の堀を失い、事業を大幅に縮小する 利益 −2 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 272 円151 億円
スマートフォンの標準機能とAIエージェントが有料コンテンツを広く代替し、会員は2025年の半分以下になる。薬局ではEMシステムズや新興クラウド企業に顧客を奪われ、導入店数は1,500店まで減る。学校では公立の大型案件に参加できず、既存私立校も更新時に他社へ移る。母子モは競争入札や国の標準化により契約を失い、追加DXの売上も細る。法人向けの受託開発はAIによる工数代替が進み、残る契約では高い利益を得られない。
経営陣は不採算サービスから撤退し、従業員や共通部門を大幅に縮小する。売上高は100億円程度に落ち、事業全体は最終赤字となる。初期の配当は支払えても、その後の還元は大きく減る。事業の成長価値ではなく、既に持つ現金や換金可能な投資資産から契約履行費用を差し引いた価値が株主を支える。事業用ソフトウェアやのれんは、清算しても帳簿どおりには売れない。会社がなお存続する前提で、それらの無形資産を現金と同じ床には含めない。
- コンテンツ・セキュリティ課金:数量 1,200,000(月額有料会員数(人、期末値))× 価格 400(会員換算の月平均外部売上(円、コミック等の非会費売上を含む))→ 売上 58 億円・営業利益 12 億円。課金会員120万人。商品を整理しても売上は大幅に減る。
- 薬局DX・電子薬歴:数量 1,500(クラウド薬歴導入薬局数(店))× 価格 25,000(薬局1店当たり推計月額包括売上(円))→ 売上 5 億円・営業利益 −2 億円。全国薬局に対するシェアは約2.4%。投資回収ができない。
- 母子モ・子育てDX:数量 450(母子手帳アプリ導入自治体数(自治体))× 価格 80,000(自治体1件当たり推計月額売上(円、周辺DX契約を換算))→ 売上 4 億円・営業利益 −1 億円。自治体契約のほぼ半数が失われ、固定費を回収できない。
- ルナルナ等の個人向けヘルスケア:数量 100,000(月額有料会員数(人))× 価格 320(有料会員1人当たり推計月額売上(円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。有料健康情報が汎用AIに広く置き換わる。
- 医療機関向け開発・その他ヘルスケアDX:数量 50.0(年間の直接稼働人員相当(人、推定))× 価格 13,069,250(稼働人員1人当たりの年間売上換算額(円))→ 売上 7 億円・営業利益 −2 億円。工数約36%、名目単価据え置き。撤退費用が収益を圧迫。
- 学校DX・BLEND:数量 600(導入学校数(校))× 価格 1,594,486(導入学校1校当たりの年間平均売上換算額(円))→ 売上 10 億円・営業利益 −1 億円。学校数は600校へ後退。開発・保守を賄えない。
- 法人向けDX支援・AI受託:数量 120(報告セグメントの年間稼働人員相当(人))× 価格 12,844,294(稼働人員1人当たりの年間外部売上換算額(円))→ 売上 15 億円・営業利益 −1 億円。工数約36%、単価は据え置き。従来型受託の競争力を失う。
倍率:最終赤字で継続利益にPERを掛けられないため、純現金と換金可能資産を基準にする。床は2025年の純現金161.2億円に投資有価証券のうち保守的に換金可能と推定する18億円を加え、契約負債27.3億円と処理費用約1.9億円を控除した約150億円。2025年の自己資本184.1億円に対する0.82倍は150.96億円で、この床を下回らない。2036年の自己資本169.1億円に掛けて二重に帳簿価値を積み上げない。過去の市場PBRの谷を根拠にはしていない。
確率:AIが業務画面と情報課金を大きく置き換え、競争・規制変更・投資失敗も重なる構造的敗北を想定する。すでに有力な導入先と厚い純現金があるため倒産を中心にはしないが、低頻度の例外として片付けるには収益源の重なりが大きい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンテンツ・セキュリティ課金
AdGuardを含む個人向け月額課金と、コミック配信事業者への作品提供。会費収入と権利販売が混在する。
| 数量月額有料会員数(人、期末値) | 価格会員換算の月平均外部売上(円、コミック等の非会費売上を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 3,240,000 | 439 | 171 | 43 |
| 10 年後 中立 | 2,500,000 | 510 | 153 | 35 |
取り方:2025年9月期のコンテンツ事業の外部顧客売上170.77382億円を、会社開示の期末有料会員324万人×12か月で割ると439.23円となる。これはコミック権利料も会員に均等換算した分析用の単価であり、実際の月額請求単価や会員ごとの平均課金を直接開示した数字ではない。会員324万人は期末残高で年間平均ではない点も誤差要因。2026年6月末は会員316万人、うちAdGuard131万人。AIエージェントによる情報検索・操作の中抜きは数量減と価格の抑制で扱う。セキュリティ機能そのものは記録の正本や席課金の業務SaaSではないが、アプリ画面や流通プラットフォームへの依存は残る。
薬局DX・電子薬歴
CARADA電子薬歴Solamichiを中心とした薬局向けクラウドサービス。今後のクラウドレセコンは開発段階で、確定収益に含めない。
| 数量クラウド薬歴導入薬局数(店) | 価格薬局1店当たり推計月額包括売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 3,811 | 30,000 | 14 | −3 |
| 10 年後 中立 | 4,260 | 33,000 | 17 | 2 |
取り方:導入店舗数3,811店は2025年9月末の会社開示。薬局別の売上高と契約単価は非開示のため、電子薬歴と周辺サービスの包括的な月額収入を3万円と仮定した推計値である。比較対象となるEMシステムズの一部クラウド商品の公表価格には1接続当たり月額2.2万円の例があるが、端末・機能・契約条件が違い、Solamichiの実売価格と同一ではない。2025年の当部分の売上推計13.72億円と営業損失推計2.8億円は独立開示ではなく、ヘルスケア外部売上66.66055億円、営業損失0.80148億円へ整合するように置いた内訳仮説である。2026年6月末の4,743店を既知の最新導入水準として参照。国内薬局63,203店という2024年度末の厚生労働省統計に対し約7.5%の店舗普及である。薬歴保存は規制の記録だが、解約率・移行期間・値上げ実績について強い堀の証拠が二つ揃わないため、AIエージェント代替の操作画面型SaaSとして中立を慎重に見る。
母子モ・子育てDX
自治体が費用を負担する母子手帳アプリと、予防接種・健診・相談予約などの業務電子化。
| 数量母子手帳アプリ導入自治体数(自治体) | 価格自治体1件当たり推計月額売上(円、周辺DX契約を換算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 772 | 100,000 | 9 | −1 |
| 10 年後 中立 | 800 | 110,000 | 11 | 1 |
取り方:2025年9月末の母子モ導入は772自治体、全国シェア約44%。自治体から徴収する基本料金は月額5万~10万円と説明されており、別途、子育てDXの初期費用や継続費用がある。基本料金と追加サービスをまとめた実効単価を月10万円と仮置きして9.264億円を推計したもので、実際の売上単価は非開示。2025年9月末の追加DXは延べ280自治体、2026年6月末は母子モ891自治体・追加DX延べ427自治体であり、追加DXの延べ数を新規の独立した自治体数として二重に数えていない。自治体契約は席数課金そのものではないが、予約・申請等の操作画面の一部がAIエージェントに代替される可能性を価格と導入維持率に含める。営業損失1.4億円は会社非開示の推計配分。
ルナルナ等の個人向けヘルスケア
女性向け健康情報・医師相談などの月額課金。利用者の継続率と課金単価が収入を決める。
| 数量月額有料会員数(人) | 価格有料会員1人当たり推計月額売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 470,000 | 450 | 25 | 8 |
| 10 年後 中立 | 280,000 | 510 | 17 | 3 |
取り方:2025年9月末のヘルスケア系月額有料会員47万人は会社開示。ルナルナの有料コースは月額300円からの料金設定があり、商品ミックスと付加サービスを踏まえて月額450円と仮定すると年間25.38億円となる。実際のARPUと当部分の営業利益は非開示で、営業利益7.6億円は分析上の推計。2026年6月末には有料会員が44万人へ減少したため、AIによる健康情報・予定管理の無料化が進む中で、会員数の減少を中立に反映している。
医療機関向け開発・その他ヘルスケアDX
医療機関や事業者向けのオンライン診療、システム開発、運用支援など。受託・開発工数の性格が強い部分。
| 数量年間の直接稼働人員相当(人、推定) | 価格稼働人員1人当たりの年間売上換算額(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 140 | 13,069,250 | 18 | −4 |
| 10 年後 中立 | 91.0 | 16,336,563 | 15 | 1 |
取り方:ヘルスケア報告セグメントの外部売上66.66055億円から、推計した電子薬歴13.7196億円、母子モ9.264億円、個人向け課金25.38億円を引いた残余18.29695億円。残余を独立した公表売上と誤認しないため、会社全体のヘルスケア事業従業員274人のうち約140人が関連する開発・保守に稼働するという仮説を明示し、1人年約1,307万円の売上換算額とした。実際の部署別人員と稼働率は非開示である。人月・工数型のAIエージェント代替を適用し、中立の実質稼働量を現在の65%、価格を現在の125%にする。2025年の営業損失4.20148億円は報告セグメント合計の赤字に合わせる推計配分。
学校DX・BLEND
私立中高を中心とした統合型校務支援クラウド。公立学校向けの初期開発や追加機能を含む。
| 数量導入学校数(校) | 価格導入学校1校当たりの年間平均売上換算額(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1,067 | 1,771,651 | 19 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1,220 | 1,948,816 | 24 | 5 |
取り方:2025年4月のBLEND導入1,067校と、2025年9月期の学校DX外部売上18.90352億円から年間平均約177万円/校を逆算。会社が開示する私立学校向け定価は生徒1人月額300円である。仮に1校350人とすると継続基本料金は1校年間126万円、全校で13.4442億円となり、差額約5.46億円は公立学校の初期導入や追加収入を含むものとして売上換算額に配賦した。350人は公開された平均在籍数ではなく推計であるため、平均売上177万円を実際の単一学校への請求単価とはみなさない。2026年の導入実績1,359校を足元の到達点とする。画面操作を中心とする学校SaaSなので、中立の実質導入維持量は2026年到達水準の約90%、価格は2025年換算額の110%とし、AIによる画面課金圧力を反映する。
法人向けDX支援・AI受託
法人顧客向けの開発、運用、AIを使った業務支援など。開発人員と請負単価に依存する。
| 数量報告セグメントの年間稼働人員相当(人) | 価格稼働人員1人当たりの年間外部売上換算額(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 333 | 12,844,294 | 43 | 9 |
| 10 年後 中立 | 216 | 16,055,368 | 35 | 5 |
取り方:2025年有価証券報告書におけるその他事業の従業員333人と、同事業の外部売上42.7715億円を用いると、1人年間約1,284万円の売上換算額となる。実際にはAIライセンス、保守、外注費を含み、333人全員が請求可能な開発員という意味ではない。単価は工数・契約収入をまとめた便宜上の換算値である。AIエージェント代替の人月・工数型として、中立の実質稼働量を333人相当から216人相当、約65%へ縮小し、名目価格は25%上昇とした。AI事業が存在することと、AIエージェントを外部顧客に提供して代替工数分を補う売上が確認できたことは同義ではないため、楽観でも数量を現在の水準以上へ拡大しない。
リスクと懸念
AIエージェント代替による契約数量と単価の減少
同社の事業には、開発工数で請求する法人DX、画面を使って入力・照会する学校や薬局のソフト、情報や利便性を月額で売る個人向けサービスが混在する。AIエージェントが操作を引き受ければ、必要な工数や席数が減り、操作画面を提供すること自体の対価が縮む。記録の保存や法令対応は残っても、その部分が売上の何割かは非開示である。AIを自社商品として販売した外部売上が代替される既存収入を埋めたという証拠が出るまでは、長期成長率を高く認めない。
コンテンツ利益の集中とアプリ流通への依存
2025年のコンテンツ事業は本社費配賦前で約43億円を稼ぎ、全社利益を支えた。AdGuardは利用者の広告遮断需要に支えられるが、OS、ブラウザー、通信キャリア、アプリ配信経路の仕様が変わると商品価値や獲得経路が変わる。高い利益率があるため会員減少の初期には利益を維持しやすいが、長期に獲得単価が上がり契約数が落ちれば、固定費を吸収できる余裕は次第に失われる。
薬局DXの投資回収失敗
クラウド薬歴の導入店舗は増えている一方、ヘルスケア事業は2025年通期に営業赤字となり、2026年9月期第3四半期累計でも赤字が続いた。競合はEMシステムズやカケハシなどで、今後は薬歴だけでなくレセコンや在庫管理を含む提案力が問われる。次世代クラウドレセコンの開発が遅れたり、調剤報酬制度への対応費用が増えたりすれば、契約数が伸びても増分利益が資本コストを下回る可能性がある。
自治体予算・少子化と校務システムの競争入札
母子モは全国自治体の約半数に入ったが、これからは新規採用より追加サービスの単価と契約継続が重要になる。出生数が減る地域では、住民向けサービスの価格引き上げを正当化しにくい。学校DXでは公立校向けの一括調達に大きな競合が存在し、落札時の初期開発費と長期保守費を見誤ると、大型受注でも低採算になりうる。自治体・教育委員会の標準仕様変更も契約更新のリスクになる。
税効果・持分法利益による稼ぐ力の錯覚
2025年9月期の純利益34億円には、2019年・2020年に関係する消費税還付と、繰延税金資産の計上による税負担減少が含まれる。2026年の四半期利益にも持分法投資利益が寄与している。これらを営業活動から毎年生まれる現金と同じ扱いにすると、増分ROICも適正な利益倍率も過大になる。出資先の損益が悪化すれば持分法損失や株式評価損が発生する可能性もある。
余剰現金と少数株主の取り分
2025年の純現金約161億円は時価総額の半分を超えるが、契約負債や開発負担に備える現金まで自由資金とは限らない。投資有価証券の全額が直ちに売却できるわけでもない。大株主の保有が集中しているため、配当や自社株買い以外の資金用途を少数株主だけで決めることは難しい。新規事業や買収への再投資が低収益のまま続けば、帳簿上の現金と株主が実際に得られる価値の差が広がる。
今後の分かれ目
- クラウド薬歴の導入が6,000店を超え、ヘルスケア事業が開発費を含めて通期黒字を継続したら
- 薬局の契約維持率と追加機能の収益を確認し、薬局DXの数量・利益率を上方修正する。投下資本に対する増分利益が資本コストを超えると確認できれば、中立より上の確率も引き上げる。
- BLENDが公立学校を含め2,000校規模へ拡大し、初期開発収入を除いた継続利益率が高水準を保ったら
- 学校DXの顧客基盤と価格維持力を再評価する。ただし、単年度の公立学校向け大型導入費だけで増えた売上なら、10年先の継続利益へそのまま加算しない。
- コンテンツの有料会員が250万人を下回り、AdGuardの純増も止まったら
- 会費収入の縮小が中立を上回る速度に入ったと判断し、コンテンツの数量と営業利益を引き下げる。会員獲得広告費が下がらなければ、利益率についても慎重に修正する。
- 2028年9月期以降もヘルスケアの赤字が続き、新しい薬局・子育てDX開発費が増え続けたら
- 投資回収期間が長期化したと見て、再投資に使える現金と中立の営業利益率を引き下げる。新規受注数ではなく、維持費控除後の営業キャッシュフローを判断の中心にする。
- 法人向けAIエージェント商品について継続的な外部売上と顧客契約額が開示されたら
- 従来の人月型売上が減るだけという前提を見直す。自動化による節約額ではなく、AIエージェント自体の有償契約数と実現単価を確認できた部分に限って、数量の上振れを認める。
- 現金・有価証券の換金可能額が増え、35%の総還元性向を上回る還元が継続したら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ見直す余地がある。ただし、開発投資のために必要な資金と関連会社への出資を除き、実際の配当と純株数の減少を伴う自社株取得を確認する。
見ておくもの
- コンテンツ有料会員総数とAdGuard会員数の四半期推移
- ヘルスケア事業の営業損益とクラウド薬歴の導入薬局数
- 薬局1店当たりの継続売上、解約率、値上げ実績の開示
- 母子モ導入自治体数と子育てDXの延べ契約数・実収入
- BLENDの私立・公立別導入校数と初期導入費を除く継続売上
- その他DXの開発人員、外部売上、AIエージェント自体の有償受注金額
- 全社共通費と開発費の推移、営業利益に対する営業キャッシュフロー
- 総還元性向、自己株式控除後株数、現金と投資有価証券の増減
- 消費税還付・税効果・持分法損益を除いた継続純利益
- 2026年9月期の本決算公表時点での最新株数・現金・継続企業の前提の注記
倍率と資本コストの決め方
株価555円と時価総額約308.25億円は最後の比較だけに用いた。コンテンツ、薬局、自治体、個人向け健康情報、医療開発、学校、法人DXを、人数・店舗数・自治体数・学校数・稼働人員と名目単価に分けた。非開示のサービス別単価と損益は推計と明記した。10年以降の成長率をAI代替を踏まえ0%とし、資本コスト7.75%から楽観~中立の利益倍率上限12.9倍を算出した。悲観は過去のPBRの安値ではなく、純現金・換金可能資産・履行義務から約150億円の床を得た。株主還元は10年間の累計を中間時点の価値へ割り引き、2036年の時価総額は10年分割り引いた。5筋書きの確率8%、19%、30%、27%、16%による本質価値は約170.75億円で、時価総額との差は-44.6%となる。2025年の利益には税還付、2026年の利益には持分法損益があるため、通常収益へ正規化した。日本基準の新リース会計基準によって2027年以降の貸借対照表の表示は変わりうるが、10年先の利益には現在と同様に賃借費用を営業費用として含め、表示変更そのものから価値を生まない。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%による基準7.5%に、事業の値決め力と財務の質による+0.25%を加えた。個別のM&Aや開発失敗は確率と事業利益に反映し、追加の上乗せをしない。