結論
ジャストシステムは、専用タブレットで学ぶ通信教育「スマイルゼミ」と、日本語入力「ATOK」・「一太郎」、法人向けのデータベースや営業支援ソフトを持つ会社である。連結の従業員は300人ほどで、少人数で高い利益を出してきた。
筆者の結論は、会社の質は高いが値段は大きく割高、である。AI エージェントは人が画面で操作する前提を崩す。無料の AI 家庭教師は通信教育の価値を削り、生成AIは日本語入力と校正を直接こなす。法人の席課金も値上げが物価に届かない。売上の約47%を占めるスマイルゼミは会員数0.80倍・単価1.10倍、約18%の個人ソフトは数量0.55倍、約35%の法人は数量0.80倍・価格1.08倍に置いた。
中立の売上は名目で2割減り、実質では4割減になる。資本コストは基本7.5%に寿命の上乗せ1%を足した8.5%、長期の成長率は名目0〜−1%とした。
やや悲観・悲観の確率を合わせて38%置いた総合の価値は、今の時価総額を7割ほど下回る。悲観は売上が半分以下になる筋書きで、床は純現金のうち運転資金などを除いた650億円とした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ジャストシステムは「良い事業を持つが、持ち方に課題のある会社」だ。稼ぐ力は申し分ない。事業に要る資本は小さく、利益のほとんどが株主に残る。オーナー利益、つまり自由に使える利益は、純利益の大半を占める。
問題は、その利益の行き先である。毎年の利益は預金に積み上がり、預金は時価総額の3分の1に達した。配当は利益の1割強で、自社株買いはない。支配株主のキーエンスは持分法で利益を取り込めるため、現金を急いで戻す動機が弱い。少数株主の立場では、積み上がった現金を満額では評価できない。筆者は帳簿の半分で数えた。
事業の将来は、見通しにくい。スマイルゼミの会員数は開示されず、10年後に子どもの数が減る中で何人が残るかは、筆者にも確信が持てない。法人向けの伸びが続くかも、1四半期では判断できない。予測しにくい事業には、確信度を下げる。
安全域はある。借金はなく、悲観の筋書きでも現金と黒字が残る。ただ、今の値段は中立の筋書きの価値を上回っており、払う値段に余裕があるとは言えない。
何で稼ぐ会社か
事業は個人向けと法人向けの二本柱だ。2026年3月期の売上515億円は、個人向けが約65%、法人向けが約35%を占めた。
個人向けの主役はスマイルゼミである。専用タブレットで学ぶ通信教育で、幼児から高校生までの全16学年をそろえ、AIが理解度に合わせて問題を出す。2012年の開始から会員を積み上げ、2022年に高校生向け、2025年には米国向けにも広げた。会員数は開示されていない。筆者は在籍34万人前後、年間の単価7万円前後、売上240億円と推定した。残る個人向けは月額課金の「ATOK Passport」と「一太郎」で、生成AIを使った文章支援「ATOK MiRA」も加えている。
法人向けは、プログラムなしで作れるクラウドデータベース「JUST.DB」、営業支援の「JUST.SFA」、BIツールの「Actionista!」、セルフ型ネットリサーチの「Fastask」、小中学校向けの学習クラウド「ジャストスマイル」が中心だ。2026年3月期は前年より35%も伸びた。ただ2027年3月期の第1四半期は全社の売上が1%減っている。一時的な需要が混じっていた可能性は残る。
人は少ない。連結の従業員は302名で、平均年収は約1,650万円。少人数で高い利益を出す会社である。会社は業績予想を出さない。
優良さと弱いところ
優良さの核は、継続課金と少人数経営の組み合わせにある。売上の7割超がストック(毎月・毎年の課金)で、営業利益率は44%に達した。連結で302名という身軽さが、この利益率を支えている。
堀、つまり他社がまねできない強みは、どこまであるのか。筆者は「普通」と見る。スマイルゼミは専用端末と教材の作り込みで先行したが、通信教育は学年が変わるたびに解約と乗り換えの機会が来る。会計ソフトのように顧客を縛る仕組みではない。法人向けのクラウドも、競争の厳しい領域だ。強い堀とは言えず、残る利益の割合は半分と置いた。
資本効率は、事業だけで見ると極めて高い。事業に要る自己資本は500億円前後で、そこから150億円近い純利益が出る。これは設備や在庫をほとんど持たない身軽さの表れだ。
弱点は三つある。ひとつは、柱のスマイルゼミに頼る収益構造だ。ふたつめは、ATOKと一太郎が、パソコン市場の縮小と生成AIで先細りしやすいこと。みっつめは、経営が稼いだ現金の使い道を示さないことだ。社長の関灘恭太郎氏は2009年にキーエンスから来た取締役の一人で、現金をためる慎重さはキーエンスの流儀にも通じる。ただ株主から見れば、使われない現金は利益を生まない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
個人向けの主戦場は、小学生から高校生向けの通信教育だ。ここで子どもの数は確実に減る。紙の教材から端末へ、という置き換えが進むうちは、減る分をシェアの獲得で埋められる。しかし置き換えが一巡すれば、市場は人口なりに縮む。筆者は、10年で子どもの数がおよそ1割減る前提で考えた。
競争相手は強い。ベネッセの進研ゼミは規模が大きく、Z会は難関校向けの評価が高い。さらに生成AIの家庭教師アプリが、無料に近い値段で登場しつつある。端末と教材を売るスマイルゼミの値決め力は、この先むしろ試される。
日本語入力は、パソコンの出荷が減り、スマートフォンやOS標準の入力が使いやすくなったことで、市場が細っている。ATOKは品質で支持されるが、数量は減る側にある。
法人向けは成長市場だ。国内のクラウドソフト市場は年10%台で伸びると見られ、ノーコードのデータベースや営業支援は中小企業から大企業まで需要がある。ただし競合は多い。マイクロソフトやセールスフォースなど海外勢と、国内の新興が入り乱れる。学校向けのジャストスマイルは、端末更新の波に乗れば伸びるが、波が引けば反動も来る。
循環の影響は小さい。教育費と業務ソフトは、不況でも削りにくい支出だからだ。
資本政策と M&A
筆頭株主はキーエンスで、議決権の約44%を持つ。2009年の資本・業務提携で約45億円を出資して以来、持分法の適用会社になっている。会社の開示では、事業上の制約はなく独立性は保たれている。ほかに個人の重田康光氏が約7%を持つ。
還元は控えめだ。2026年3月期の配当は増配が続いたが、配当性向は12%にとどまる。自社株買いは2022年3月期から5年連続でゼロである。預金は4年で約1.7倍の1,049億円に膨らんだ。設備投資はほとんどなく、投資の資金は預金の積み増しに回っている。
買収は小型にとどまる。中期計画の投資枠は研究開発と買収を合わせて35億円ほどで、資本効率の目標は7%以上と報じられている(会社の一次資料では未確認)。大型の買収で現金を使う可能性は低い。
10年以内にTOBや買収が起きる確率は2割弱という推計がある(当社の統計モデル)。現金が厚い会社なので、買い取りは現金を戻す形になりうる。ただ実際に動く確証はなく、筆者はそれを前提に置いていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
スマイルゼミは、まだ伸びしろが大きい。小学生から高校生へ、さらに幼児と米国へと対象を広げており、子どもの数が1割減っても、シェアの上昇で十分に埋められる。端末と教材を自社で作る一貫体制は、紙の通信教育より値上げもしやすい。生成AIも、個別指導の質を上げる武器になる。
法人向けは、2026年3月期に35%伸びた。ノーコードのデータベースや営業支援は、人手不足の企業に必要とされる。学校向けのジャストスマイルも、端末更新の波が来る。会社は少人数で利益率が高く、売上が伸びれば利益はもっと伸びる。
資本面でも救いがある。預金は約1,050億円あり、時価総額の3分の1に迫る。キーエンスが完全子会社化に動けば、この現金の価値は満額で株主に戻る。配当性向は12%と低く、引き上げ余地が大きい。増配が続いている今、還元の拡大は時間の問題だ。事業の質に比べて、今の値段はむしろ妥当だ。
スマイルゼミは立ち上げから14年で、筆者の推定では会社の利益の半分近くを稼ぐ柱に育った。同じ成功をもう一度、法人向けや米国で再現できる力が、この会社にはある。
慎重な見方
スマイルゼミは、子どもの数が減る市場で戦っている。進研ゼミやZ会は規模も評価も上で、生成AIの学習アプリが無料に近い値段で現れた。端末つきの通信教育は、値上げを通すほど解約を招く。会員数が開示されないのも、手放しで信じられない理由だ。
法人向けの35%増は、一時的な要因が混じっていないか。2027年3月期の第1四半期は、全社の売上が1%減った。ATOKと一太郎は、市場そのものが縮んでいる。柱が三本あるように見えて、どれも逆風を抱えている。
何より、現金が株主に戻らない。預金は約1,050億円あるのに、自社株買いは5年間ゼロで、配当性向は12%にすぎない。利益の多くは預金に積み上がり、投資先もない。支配株主のキーエンスが得をする構図で、少数株主に回る保証はない。事業が優れていても、戻らない現金は価値が半分だ。そのうえで今の値段は、10年間の成長を織り込みすぎている。
新しい事業で穴を埋める力も未知数だ。米国向けや幼児向けは始まったばかりで、黒字になる時期も示されていない。中期計画の投資枠は35億円ほどと小さく、稼ぎの落ち込みを補うには足りない。
AI エージェントが学習から文章まで無料に近い費用でこなす世界では、専用端末や個人ライセンス、法人の席に払う理由が薄れる。少人数の高収益も、売上が縮めば維持できない。
AI エージェントが学習から文章まで無料に近い費用でこなす世界では、専用端末や個人ライセンス、法人の席に払う理由が薄れる。少人数の高収益も、売上が縮めば維持できない。
AI エージェントが学習から文章まで無料に近い費用でこなす世界では、専用端末や個人ライセンス、法人の席に払う理由が薄れる。少人数の高収益も、売上が縮めば維持できない。
AI エージェントが学習から文章まで無料に近い費用でこなす世界では、専用端末や個人ライセンス、法人の席に払う理由が薄れる。少人数の高収益も、売上が縮めば維持できない。
AI エージェントが学習から文章まで無料に近い費用でこなす世界では、専用端末や個人ライセンス、法人の席に払う理由が薄れる。少人数の高収益も、売上が縮めば維持できない。
AI エージェントが学習から文章まで無料に近い費用でこなす世界では、専用端末や個人ライセンス、法人の席に払う理由が薄れる。少人数の高収益も、売上が縮めば維持できない。
AI エージェントが学習から文章まで無料に近い費用でこなす世界では、専用端末や個人ライセンス、法人の席に払う理由が薄れる。少人数の高収益も、売上が縮めば維持できない。
どちらに重みを置いたか
少人数で高い利益を出す質と実質無借金の財務では強気の見方が優勢だが、無料の AI 家庭教師と生成AIが会員と個人ソフトを削る筋書きでは慎重な見方が重い。席と画面に課金する売り方は、AI エージェントが画面を飛ばす世界で価格を保ちにくい。資本コストは基本7.5%に寿命の上乗せ1%を足して8.5%とし、長期の成長率は名目0〜−1%。やや悲観・悲観を合わせて38%の重みを置いた総合は、今の時価総額を7割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,427 円2,201 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 421 円270 億円)。 今の値に割り戻すと 1,998 円1,283 億円、今との差 −60.0%、 期待の年率 −2.6%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,017 円3,222 億円 | 658 円423 億円 | +13.5% | +1.3% | 397 円255 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,586 円2,945 億円 | 550 円353 億円 | +2.7% | +0.3% | 925 円594 億円 |
| 中立 | 37% | 4,215 円2,707 億円 | 456 円293 億円 | −6.6% | −0.7% | 1,729 円1,110 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,235 円1,436 億円 | 320 円206 億円 | −48.9% | −6.5% | 639 円410 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,012 円650 億円 | 207 円133 億円 | −75.6% | −13.2% | 158 円102 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,427 円2,201 億円 | 421 円270 億円 | −23.0% | −2.6% | 3,848 円2,471 億円 |
今の株価時価総額 5,000 円3,211 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% スマイルゼミの会員が踏みとどまり、法人の AI 対応も進む 利益 151 億円 · PER 21.3 倍 · 株価時価総額 5,017 円3,222 億円
無料の AI 家庭教師が使える時代でも、専用タブレットと学習の習慣づくりを一式で届けるスマイルゼミは一定の会員を保つ。会員数は今の0.9倍ほど、単価は1.17倍まで上がる。法人向けは学校のクラウドが更新され、営業支援やデータベースも堅調だ。個人ソフトの ATOK は縮むが、文章支援の AI 機能を月額に組み込んで下げ止まる。売上は今より1割弱減るにとどまり、営業利益は200億円強を保つ。ただし AI エージェントを売り物にして売上を出している開示は無く、楽観でも数量は1.0倍以下とみる。 最も大きい「スマイルゼミ」は、数量が今の0.92倍、価格が1.17倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.99倍(実質0.74倍)、純利益は151億円になる。
- スマイルゼミ(通信教育):数量 31.3(在籍会員数(万人))× 価格 8.23(1人あたり年間の売上(万円))→ 売上 258 億円・営業利益 118 億円。数量0.92倍・価格1.17倍・営業利益率46%(AI エージェント代替の型:席課金)
- ATOK・一太郎ほか(個人):数量 73.4(有償利用者・契約(万件))× 価格 0.84(1件あたり年間の売上(万円))→ 売上 62 億円・営業利益 24 億円。数量0.63倍・価格1.06倍・営業利益率39%(AI エージェント代替の型:席課金)
- 法人向け(データ基盤・営業支援・学校):数量 1.8(有償契約の件数(万件。企業・自治体・学校のライセンス単位))× 価格 105(1件あたり年間の売上(万円))→ 売上 193 億円・営業利益 66 億円。数量0.92倍・価格1.14倍・営業利益率34%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 122 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 53.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 30.5%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,535 億円。全体の PER 21.34 倍、時価総額 3,222 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:楽観でも数量は1.0倍以下。AI エージェントを自社の売り物にした売上の開示(金額)が無いので、伸びる筋書きにはしない。確率は小さく置いた。
やや楽観 18% 会員は減るが単価で支え、法人は横ばい 利益 132 億円 · PER 22.3 倍 · 株価時価総額 4,586 円2,945 億円
会員数は今の0.86倍ほどに減るが、タブレットと AI 添削を組み合わせた学習の一式で単価は物価に近い1.13倍まで上がる。法人は学校向けの更新が続くが、新規は伸びない。個人ソフトは AI の文章支援に押されて半分近くに縮む。売上は今より1割ほど減り、営業利益は180億円前後。筆者は、少人数で高い利益を出す会社の質は本物だが、この筋書きでも今の値段を支えるには足りないとみる。 最も大きい「スマイルゼミ」は、数量が今の0.86倍、価格が1.13倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.90倍(実質0.67倍)、純利益は132億円になる。 営業利益は179億円で、今の225億円の80%に当たる。
- スマイルゼミ(通信教育):数量 29.1(在籍会員数(万人))× 価格 8.00(1人あたり年間の売上(万円))→ 売上 233 億円・営業利益 102 億円。数量0.86倍・価格1.13倍・営業利益率44%(AI エージェント代替の型:席課金)
- ATOK・一太郎ほか(個人):数量 68.3(有償利用者・契約(万件))× 価格 0.82(1件あたり年間の売上(万円))→ 売上 56 億円・営業利益 21 億円。数量0.59倍・価格1.03倍・営業利益率37%(AI エージェント代替の型:席課金)
- 法人向け(データ基盤・営業支援・学校):数量 1.7(有償契約の件数(万件。企業・自治体・学校のライセンス単位))× 価格 102(1件あたり年間の売上(万円))→ 売上 175 億円・営業利益 56 億円。数量0.86倍・価格1.11倍・営業利益率32%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 104 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 46.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 26.7%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,517 億円。全体の PER 22.33 倍、時価総額 2,945 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会員の減りが緩やかで、法人も学校向けの更新が続く筋書き。開示が無いので数量は1.0倍以下に抑えた。
中立 37% 中立:売上は名目で2割減、実質は4割減 利益 115 億円 · PER 23.5 倍 · 株価時価総額 4,215 円2,707 億円
スマイルゼミの会員は今の0.8倍、単価は物価に届かず1.1倍。無料の AI 家庭教師と、AI 付きの他社教材が値上げを許さない。個人ソフトの ATOK は生成AIが入力と校正を直接こなすので数量0.55倍まで縮む。法人向けは JUST.DB や営業支援の席が AI エージェントに置き換わりはじめ、数量0.8倍。売上は名目で今の8割、実質では6割弱に縮む。営業利益は150億円強、純利益は110億円強で、還元も利益に合わせて減る。 最も大きい「スマイルゼミ」は、数量が今の0.80倍、価格が1.10倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.82倍(実質0.61倍)、純利益は115億円になる。
- スマイルゼミ(通信教育):数量 27.2(在籍会員数(万人))× 価格 7.77(1人あたり年間の売上(万円))→ 売上 211 億円・営業利益 89 億円。数量0.80倍・価格1.10倍・営業利益率42%(AI エージェント代替の型:席課金)
- ATOK・一太郎ほか(個人):数量 63.8(有償利用者・契約(万件))× 価格 0.79(1件あたり年間の売上(万円))→ 売上 51 億円・営業利益 18 億円。数量0.55倍・価格1.00倍・営業利益率35%(AI エージェント代替の型:席課金)
- 法人向け(データ基盤・営業支援・学校):数量 1.6(有償契約の件数(万件。企業・自治体・学校のライセンス単位))× 価格 99(1件あたり年間の売上(万円))→ 売上 159 億円・営業利益 48 億円。数量0.80倍・価格1.08倍・営業利益率30%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 87 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 39.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 23.3%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,502 億円。全体の PER 23.46 倍、時価総額 2,707 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:無料の AI 家庭教師と生成AIが会員と個人ソフトをじわじわ削り、法人は横ばいという最も重みを置く筋書き。
やや悲観 25% 無料の AI 家庭教師と生成AIに、会員と個人ソフトを削られる 利益 78 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 2,235 円1,436 億円
学習も文章も、AI エージェントが無料に近い費用でこなす世界になる。スマイルゼミは会員が今の3分の2に減り、単価も下がる。ATOK は使う人が減り、法人の席課金も解約と値引きが続く。売上は今より3割弱減って営業利益率は3割に落ちる。営業利益は100億円を切り、純利益は80億円弱。実質無借金の財務と純現金は残るが、余った現金の戻し方は慎重で、還元は利益に合わせて小さくなる。 最も大きい「スマイルゼミ」は、数量が今の0.66倍、価格が1.05倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.64倍(実質0.47倍)、純利益は78億円になる。 営業利益は97億円で、今の225億円の43%に当たる。
- スマイルゼミ(通信教育):数量 22.3(在籍会員数(万人))× 価格 7.38(1人あたり年間の売上(万円))→ 売上 165 億円・営業利益 58 億円。数量0.66倍・価格1.04倍・営業利益率35%(AI エージェント代替の型:席課金)
- ATOK・一太郎ほか(個人):数量 52.3(有償利用者・契約(万件))× 価格 0.75(1件あたり年間の売上(万円))→ 売上 39 億円・営業利益 11 億円。数量0.45倍・価格0.95倍・営業利益率28%(AI エージェント代替の型:席課金)
- 法人向け(データ基盤・営業支援・学校):数量 1.3(有償契約の件数(万件。企業・自治体・学校のライセンス単位))× 価格 94(1件あたり年間の売上(万円))→ 売上 123 億円・営業利益 28 億円。数量0.66倍・価格1.03倍・営業利益率23%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業に要らない現金 1,900 億円(戻り方 0.5)を分けると、事業の純利益 51 億円(現金の税後利息を除く)・事業の ROE 22.8%。AI エージェント代替でスマイルゼミの会員と個人ソフトの数量が減り、法人の席課金も値上げが物価に届かない(席・画面を前提にした型)とみて。長期の成長率 g を名目 -1.0% と置き、RONIC = k 7.25% + 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 15.6%、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 11.2 倍。上限の 8.5 割に置き、事業 51 億円 × 9.5 倍 + 余った現金 950 億円(戻り方込み)で時価総額 1,436 億円、全体の PER に直して 18.5 倍。
確率:無料で使える AI 家庭教師や文章生成の質が上がれば、タブレット学習も ATOK も使う理由が薄れる。実現しやすいと見て2割台半ばに置いた。
悲観 13% AI エージェントが学習と文章を肩代わりし、売上は3分の1 利益 27 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,012 円650 億円
AI エージェントが学習計画から添削、文章の入力と校正まで直接こなし、専用タブレットも個人ソフトも法人の席も半分以下に縮む。売上は今の3分の1、営業利益は30億円足らずに細る。それでも実質無借金で純現金が厚いので、株主の取り分の床は純現金のうち運転資金と前受の学費を除いた650億円ほど残る。稼ぐ力ではなく、この資産の厚さが悲観の値段を決める。少人数の経営が持ち味でも、売上の縮みを固定費の削減だけでは埋められない。 最も大きい「スマイルゼミ」は、数量が今の0.36倍、価格が0.93倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.31倍(実質0.23倍)、純利益は27億円になる。 営業利益は27億円で、今の225億円の12%に当たる。
- スマイルゼミ(通信教育):数量 12.2(在籍会員数(万人))× 価格 6.60(1人あたり年間の売上(万円))→ 売上 81 億円・営業利益 18 億円。数量0.36倍・価格0.94倍・営業利益率22%(AI エージェント代替の型:席課金)
- ATOK・一太郎ほか(個人):数量 28.7(有償利用者・契約(万件))× 価格 0.67(1件あたり年間の売上(万円))→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。数量0.25倍・価格0.85倍・営業利益率15%(AI エージェント代替の型:席課金)
- 法人向け(データ基盤・営業支援・学校):数量 0.7(有償契約の件数(万件。企業・自治体・学校のライセンス単位))× 価格 84(1件あたり年間の売上(万円))→ 売上 61 億円・営業利益 6 億円。数量0.36倍・価格0.92倍・営業利益率10%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:悲観は売上が 10 年で半分以下になる筋書き。純現金+売れる資産の税後 650 億円(純現金(facts の純有利子負債がマイナス)のうち、運転に要る売上1.5か月分)を床として、今の自己資本 1,187 億円に対する PBR 0.55 倍で時価総額 650 億円とした。AI エージェント代替で専用タブレットも個人ソフトも法人の席も半分以下に縮む。稼ぐ力そのものが崩れる筋書きなので、事業の利益には値を付けない。
確率:AI エージェントが学習計画から添削まで直接こなし、会員も個人ソフトも法人の席も半分以下に縮む筋書き。やや悲観と合わせて3割台後半にとどめた(中立の数量・価格に縮みを入れたので、確率では重ねない)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
スマイルゼミ(通信教育)
専用タブレットによる幼児〜高校生向けの通信教育。会員数は非開示で、在籍数と年間単価からの推定。
| 数量在籍会員数(万人) | 価格1人あたり年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 34.0 | 7.06 | 240 | 112 |
| 10 年後 中立 | 27.2 | 7.77 | 211 | 89 |
取り方:個人向け売上332億円のうち、スマイルゼミを約240億円と推定(残りはATOKなど)。月額約0.59万円の12カ月払いを想定して在籍を34万人前後とした。営業利益は会社全体の利益率より高い約47%と置いた(開示なし)。 型は席(会員)課金。AI エージェント代替で、無料の AI 家庭教師が通信教育の価値を削るので、会員数0.80倍・単価は物価1.34倍に届かず1.10倍と置いた。売上の約47%がこの型。
ATOK・一太郎ほか(個人)
月額課金の日本語入力ATOK Passport、一太郎、英会話コーチングなど。パソコン市場の縮小で数量は細る側にある。
| 数量有償利用者・契約(万件) | 価格1件あたり年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 116 | 0.79 | 92 | 46 |
| 10 年後 中立 | 63.8 | 0.79 | 51 | 18 |
取り方:個人向け332億円からスマイルゼミの推定240億円を引いた約92億円。ATOK Passportの月額課金(年約0.79万円)で割って契約を約116万件と置いた推定。利益率は50%と置いた。 型は席(個人ライセンス)課金で操作画面が価値の中心。生成AIが文章入力と校正を直接こなすので、数量0.55倍・価格1.0倍と置いた。売上の約18%がこの型。
法人向け(データ基盤・営業支援・学校)
JUST.DB・JUST.SFA・Actionista!・Fastask・JUST Officeと、小中学校向けのジャストスマイル。
| 数量有償契約の件数(万件。企業・自治体・学校のライセンス単位) | 価格1件あたり年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 92 | 183 | 67 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 99 | 159 | 48 |
取り方:決算短信の法人向け売上183億円(前年比35%増)。件数は非開示のため2万件前後と推定し、1件あたり約92万円(大口の学校・官公庁と小口の企業向けの平均)とした。利益率は個人向けより低い約37%と置いた。 型は席課金の業務SaaS(JUST.DB・SFA など)と学校向け。AI エージェントが画面操作を飛ばすので数量0.80倍・価格1.08倍と置いた。売上の約35%がこの型。
リスクと懸念
AI エージェントによる学習・文章入力・業務画面の置き換え
無料の AI 家庭教師は通信教育の価値を、生成AIは日本語入力と校正の価値を直接削る。法人の席課金も、AI エージェントが画面操作を飛ばせば値下げ圧力を受ける。売上の約47%は会員課金の通信教育、約18%は個人ソフト、約35%は法人の席で、いずれも影響を受ける。10年の売上は名目で2割減、実質で4割減とみた。
ベネッセ・Z会との競争
進研ゼミは規模、Z会は難関校向けの評価で上にいる。端末つきの通信教育は広告費と開発費がかさみ、競争が激しくなると利益率が下がる。値上げを通すほど解約を招きやすい構造でもある。
法人向けの急伸が続くか
2026年3月期の法人向けは35%増と急伸したが、2027年3月期の第1四半期は全社の売上が1%減った。端末更新や大口案件など、一時的な需要が混じっていたなら、反動が来る。
ATOK・一太郎の縮小
パソコン市場の縮小と、スマートフォン・OS標準の入力の使いやすさ向上で、日本語入力の市場は細る。生成AIの文章支援も競合になる。ATOK MiRAなどで課金を保てるかが焦点だ。
現金が株主に戻らない
預金は約1,050億円で、時価総額の3分の1に迫る。配当性向は12%、自社株買いは5年間ゼロ。キーエンスが約44%を持つため、少数株主への還元を急ぐ動機が弱い。戻らなければ、現金の価値は目減りする。
開示の薄さ
単一セグメントで、会員数や解約率、法人向けの製品別売上は開示されず、業績予想も出さない。外から見て会員の増減や需要の質を確かめにくく、悪化に気づくのが遅れるおそれがある。
今後の分かれ目
- キーエンスが完全子会社化(TOB)に動く
- 余った現金が満額で株主に戻る形になるため、現金の戻り方を1.0に引き上げて価値を見直す。提示される価格が事業と現金の合計に見合うかを確かめる。
- 自社株買いを始める、または配当性向が3割を超える
- 現金が戻る証拠になるため、戻り方を0.5から引き上げ、楽観側の確率を厚くする。買い付けの価格が割高でないかも見る。
- スマイルゼミの在籍数が開示され、減少が確認される
- 少子化とAIの重しが早く表れたと見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。単価の下落を伴う場合は特に重く見る。
- 法人向けの売上が2期続けて前年を割る
- 2026年3月期の急伸が一時的だったと判断し、法人向けの数量の見通しを引き下げ、中立の利益を下げる。
- 高校生・幼児・米国向けが会員数を大きく押し上げる
- 子どもの減少を上回るシェア獲得が実現しているとみて、強気の見方に重みを移す。米国は黒字化の時期も確かめる。
- AI エージェントを組み込んだ新サービスが、金額で開示できる売上や受注として積み上がったら
- 楽観・やや楽観の数量を1.0倍超に直し、確率を上げて見直す。開示が無い間は楽観も数量1.0倍以下にとどめる。
見ておくもの
- スマイルゼミの在籍数・学年別の動きの開示
- 法人向けの売上の前年比(2027年3月期の各四半期)
- ストック売上の割合と伸び
- 配当性向・自社株買い・預金残高
- キーエンスの持株比率の変化
- ATOK Passportの課金数と生成AI機能の反応
倍率と資本コストの決め方
スマイルゼミ・個人ソフト・法人に分け、AI エージェント代替の型(席課金)で数量・価格・利益率を置いた。余った現金700億円は戻り方0.5で足した。倍率は式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k7.25%、g名目0〜−1%)に対する位置で置き、楽観〜中立は上限の9.5割、やや悲観は8.5割。悲観は稼ぐ力ではなく純現金+売れる資産の床。今の株価や過去・同業の倍率は見ていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.83→21.34 倍・やや楽観 PER 16.45→22.33 倍・中立 PER 17.14→23.46 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質+0.2%。同じ領域の会社と比べ、日本オラクルやラクスと同じ水準。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。