結論
グリッドは電力会社や製造・物流企業の複雑な計画を数理最適化するAI企業であり、蓄電所を開発して売る事業も育てている。筆者の結論は「割高」だ。送配電や工場の運転に食い込んだ技術には価値があるが、現在の時価総額約91億円は、受託開発の利益が長く守られ、蓄電所の案件も途切れず高い利益を生むという期待に依存している。
2026年6月期は売上が約31億円まで増えたのに、営業利益は約4.6億円にとどまった。蓄電所関連の売上が伸びた一方、その利益率はAI本業より低く、本社費も増えたからだ。翌期の会社予想は売上45億円、営業利益6億円と意欲的だが、受注済み案件と顧客が検討中の案件を同じ売上として扱うことはできない。
長く持つ株主にとって難しいのは、AIが同社の製品であると同時に、受託開発の単価を引き下げる競争相手になることだ。電力系統の制約を理解した数理モデルは簡単にはまねできない。しかし、仕様書づくり、データ整理、画面の実装、運用の問い合わせ対応には自動化が広がる。10年後のAI開発収入を単純な成長曲線で延ばすのは危うい。
蓄電所には再生可能エネルギーを支える実需があるものの、系統接続の枠、用地、投資家の買値、需給調整市場の制度で儲けが左右される。5つの筋書きと希薄化を織り込んだ現在価値は約36億円となり、今の時価総額を約60%下回る。現金の厚さは救いだが、利益の株主還元を約束していない以上、それを額面どおり株価に足すこともできない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、まずこの会社の利益が顧客の仕事をどこまで不可欠にしているかを問う。電力系統の安定運用や工場計画は、見栄えのよい画面よりも、誤った計画を出さない数理技術と実務上の責任が大切だ。こうした場所で採用実績を重ねることは価値がある。一度組み込まれたエンジンを交換するには検証や周辺システムの修正が必要で、簡単な価格競争に陥らない部分もある。
しかし、採用実績だけでは10年続く高い利益率を保証しない。最大の売上源は顧客ごとに作るソフトウェアであり、顧客が計画問題の表現と周辺実装を自動化すれば、人月を請求できる仕事は減る。アルゴリズムの知的財産を自社商品として反復販売し、実際に値上げが通り、解約されない証拠が出て初めて堀を広く認めたい。現在の開示からそこまでの確信を持つのは早い。
蓄電所は技術と電力事業の経験を生かせる隣接分野だが、開発権は一度売れば消える。毎年新しい案件を探し、資金を先に使い、系統接続と引渡しを待つ。利益率だけでなく、売掛金・契約資産が現金になる速度、税後の増分投下資本利益率を見たい。成長のために使う利益が資本コストを超えると確認できない限り、利益の増加をそのまま株主価値の増加として数えない。
純現金は失敗に耐える余裕を与えるが、支配株主がいる無配企業では、少数株主がいつ現金を受け取れるかを決められない。現在の値段には技術の魅力と将来の成長がかなり映っている。買収による劇的な成功を予め織り込むより、収益を継続的な現金へ変える力と、利益を分け合う意思を確かめる方が大切だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、発電・送配電、製造・運輸、都市・交通の計画を最適化するAI事業だ。電力会社が発電機の運転順序や送電設備の停止日程を組み、工場が生産順を決めるとき、制約条件の組合せは膨大になる。同社は数理最適化、機械学習、強化学習を組み合わせたエンジンを作り、構想整理から顧客システムへの組み込み、稼働後の支援まで引き受ける。九州電力、関西電力、北海道電力ネットワークなどでの導入は、現場の難しさを理解する力の裏付けとなる。
AI事業の2026年6月期売上約23.63億円のうち、開発などのフロー収入は17.24億円、運用・保守などの継続収入は6.39億円だった。会社はAI事業全体の利益を開示しているが、開発と保守の個別利益は示していない。顧客単価から逆算する取引先換算は約39社であり、これは請求先の実人数を示す公式の契約数ではない。2027年6月期に向けた資料には、開発の受注済み33案件、運用・保守41案件が示され、商談数と売上の関係を確認する手掛かりになる。
もう一つの柱は系統用蓄電所の開発・譲渡だ。用地確保、送電網への接続申込み、設計、施工調整を進め、事業化した案件を投資家や事業者へ売る。2026年6月期の売上は約7.56億円で、同事業の営業利益は約1億円にとどまる。会社資料が示す高圧案件の取引額5億〜10億円は参考になるが、開発権の件数がそのまま当期の完成・引渡し件数を意味するわけではない。
二つの事業は電力の計画技術で接していても、経済性は異なる。AI受託は高度な技術者の稼働と顧客との共同開発に依存し、蓄電所の開発は用地と系統接続枠を押さえて譲渡するまでの資金と時間に依存する。同じAI企業という名前だけで、売上を一括して高収益な継続課金と見なしてはいけない。
優良さと弱いところ
強みは、文章を生成するだけでは解けない運転制約を、顧客の業務で使える数理モデルにする技術だ。九州電力や送配電会社の実案件には、安全性、停電回避、設備制約など、検証を誤れない条件がある。現場で一度稼働した仕組みには再検証とシステム移行の負担が生じ、一定の継続取引を支える。会社資料による既存顧客売上比率の高さは、この接点が実在する証拠である。
ただし、その比率を解約率の低さと取り違えてはならない。年5%未満の解約率、法令上の記録の正本、業界全体が共同利用する独占的基盤、繰り返し通した値上げの実績は確認できない。顧客がデータと仕様を保有し、大手SIerやAIエージェントに実装の一部を任せれば、技術力が高くても請求できる人月は縮む。開発と運用・保守の両方を、記録の正本ではなく受託サービスとして慎重に扱うのが妥当だ。
財務は自己資本約43億円、純現金約28.5億円で、借入返済に追われる会社ではない。一方、2026年6月期の営業キャッシュフローは小幅なマイナスとなり、未請求の契約資産は約13億円に膨らんだ。利益が計上されても現金の回収が遅れれば、蓄電所開発と技術者の採用を同時に進める余力は減る。
また、株式上場による増資後は自己資本が厚く、ROEは直近8%前後まで低下した。2025年から2026年に売上が大きく増えても営業利益の増分が小さいことは、再投資した資本が十分な超過利益を生むか、まだ立証されていないことを示す。堀は「数理最適化の現場知識」にあって、単価を自由に決められる地位にあるわけではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
社会インフラの最適化需要は続く。再生可能エネルギーが増えるほど発電量は天候に左右され、送電設備の点検や蓄電池の充放電を効率よく組み合わせる必要がある。製造・物流でも人手不足によって計画業務の自動化は進む。会社資料が示す2026年の国内産業DX市場約4.34兆円、2030年約6.25兆円は追い風を表すが、汎用DXを含む広い市場であり、同社の数理最適化だけが受注可能な市場ではない。
市場の切り分けには注意が要る。同社の2026年AI売上約23.63億円を広義のDX市場と比べると単純比率は約0.054%だが、これは本来の競争市場のシェアではない。発電計画や設備停止計画では、日立製作所、東芝系、三菱電機、大手SIerやALGO ARTISのような最適化技術を持つ企業と案件単位で競う。分野をそろえた各社の受注額や世界・国内シェアは公表されておらず、市場全体の伸びを自社の顧客数増加と同一視できない。
AIエージェントの普及は需要を増やす面と売上単価を削る面を同時に持つ。高度な数理最適化そのものは現場での品質保証が必要だが、要件整理、画面設計、検証用コード、保守対応の工数は減り得る。現時点では新しい生成AI製品の有料受注額が独立して開示されていないため、将来のAI売上の跳ね上がりを既成事実とはしない。
系統用蓄電池は別の競争市場だ。国の資料では2025年末ごろの接続済み容量は約64万kWに対し、系統接続検討・申込みは桁違いに大きい。だが、接続申込みは稼働中の設備でも成約済み案件でもない。用地と系統枠の確保、制度変更に対する資金提供者の選別を経て初めて売上が立つ。再エネ開発会社、商社、蓄電所開発事業者と競争するなか、2036年に年間何案件を引き渡せるかがグリッドの価値を最も大きく動かす。
資本政策と M&A
資本配分は成長投資優先で、少数株主への現金還元はまだ実績が乏しい。2026年6月期まで無配が続き、2027年6月期予想も無配である。2026年9月の成長戦略では、2027年6月期に売上45億円、営業利益6億円、AI事業30億円、インフラアセット15億円を見込む。一方、2028年以降の確定した売上・利益・ROE目標、配当性向・DOE・総還元性向、自社株買い金額には数字の約束なし。中長期の方針は示しているが、株主への返し方は曖昧だ。
2026年6月に約16億円の蓄電所開発関連受注を発表した。これは将来の売上の裏付けになる反面、複数期にまたがる履行と資金回収を伴い、契約金額が直ちに自由に使える現金になるわけではない。開発案件の取得や周辺技術への投資、小規模M&Aを急ぐほど、手元資金を守る経営規律が問われる。大規模買収による資本配分の実績は十分に蓄積しておらず、買収利回りが長期的に資本コストを超えるとはまだ判定できない。
大株主には経営者の資産管理会社があり、上位10株主の保有比率は約75%に達する。直近5年間に実質的な増配も大規模な自己株買いも見られないため、余剰現金が少数株主へ戻る価値は帳簿額の半分として扱う。一方、未行使の新株予約権は潜在的に約47.8万株あり、現在の約480.3万株に対する希薄化も無視できない。M&Aや将来のTOBは可能性として考えるが、発表済みの買付けを前提にしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
社会インフラの計画を自動化する仕事は、生成AIが普及するほど必要になる。電力会社が求めるのは文章や画面ではなく、設備制約と安全条件を守った運転計画そのものだ。九州電力の発電計画、送配電会社の設備停止計画などで実績を積んだグリッドは、現場固有の知識を次の顧客でも生かせる。AIエージェントが仕様作成を安くしても、最後の数理モデルと品質保証を担う会社への支払いは残る。運用保守を長く継続できれば、高度な専門家の時間を使い捨てる受託開発から、顧客の重要業務を預かる企業へ進める。
2026年9月の開示では、2027年に向けた開発の契約済み案件や運用保守の案件が明示されている。大手電力会社を軸に、工場、生産、物流、送電網まで用途を広げていることも強みだ。景気後退でも送電設備の点検や電力需給計画は止められない。主要顧客の課題が増えるほど、顧客当たりの契約規模は大きくなり、会社が保有する最適化エンジンの開発費を多くの契約で回収できるようになる。
蓄電所の開発では、再エネの増加とデータセンターの電力需要を背景に、用地選定と系統接続に先行した企業が売買益を得られる。16億円規模の受注は、その事業が試験段階を超えた材料である。高圧案件から特別高圧の大型案件へ移れれば、同じ担当者数でも取引額が増える。AIによる充放電最適化を組み合わせれば、単に土地を仲介する業者より良い案件を売れる可能性がある。純現金の厚さも拡大に必要な時間を買える。2036年に両事業が成熟し、より大きな企業価値を持つ道は確かに存在する。
慎重な見方
数理最適化の専門性は認めるが、顧客にとって価値があることと、グリッドが高い料金を取り続けられることは別だ。AI事業の売上の大半は顧客ごとの開発・保守であり、標準商品への自動課金ではない。大手電力会社は仕様書、運転データ、既存システムを握っている。新しいAIエージェントや大手SIerが設計、コード、検証、保守の工数を削れば、従来の人月契約は自然に値下げ圧力を受ける。会社が発表する既存顧客売上比率は高いが、それは法令によるロックインや低い解約率を証明しない。
2026年6月期には売上が大幅に伸びたのに営業利益の増加は小さかった。蓄電所開発が売上を押し上げても、AI受託の高い利益率が全社にそのまま乗るわけではない。開発権の仕入れや系統接続枠の手続きには時間がかかり、投資家が電力市場の将来利益を低く見れば譲渡価格も下がる。系統接続を申請した大量の設備は、すべてが完成した蓄電池になるわけではない。競合開発業者の参入、価格競争、電力市場の収益条件変更が重なれば、用地を押さえても利益が残らない。
財務は当面安全でも、未請求の契約資産が大きく増え、2026年の営業現金収支は弱かった。利益を現金で回収できる保証がないまま、蓄電所開発の案件数を増やせば、純現金の余裕は減る。経営者側の持株比率が高く、明確な配当・買戻しの数値方針もない。新株予約権の希薄化も既存株主には不利だ。AI事業の利益率低下と蓄電所開発の失敗が同時に起きれば、10年後に帳簿に残った資本ほどの値打ちも付かない。
どちらに重みを置いたか
送配電の実運用に使われる数理最適化は、単なる画面型ソフトより強い。しかし会社の売上の約4分の3は人的な開発・運用役務に由来し、価格決定力と保守の解約率は数字で確かめられない。蓄電所の受注額も売却益や現金回収を保証しない。このため慎重側の二つの筋書きに計41%を配分し、成長の可能性を残す上側には計32%を認めた。確率を下に寄せたのはAIという一般論ではなく、開発と資金を要する蓄電所へ売上構成が移った、グリッド固有の資本配分上の不確実さが理由だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,596 円77 億円(+ 還元の換算額還元の合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 757 円36 億円、今との差 −57.0%、 期待の年率 −1.0%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 4,378 円210 億円 | 0 円0 億円 | +148.8% | +9.5% | 525 円25 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,410 円116 億円 | 0 円0 億円 | +36.9% | +3.2% | 482 円23 億円 |
| 中立 | 27% | 1,490 円72 億円 | 0 円0 億円 | −15.4% | −1.7% | 402 円19 億円 |
| やや悲観 | 25% | 454 円22 億円 | 0 円0 億円 | −74.2% | −12.7% | 114 円5 億円 |
| 悲観 | 16% | 454 円22 億円 | 0 円0 億円 | −74.2% | −12.7% | 73 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,596 円77 億円 | 0 円0 億円 | −9.3% | −1.0% | 1,596 円77 億円 |
今の株価時価総額 1,760 円85 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% 蓄電所の大型化と最適化技術の定着 利益 17 億円 · PER 13.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,378 円210 億円
送配電会社の難しい計画問題で実績を重ね、最適化エンジンの実装は標準化される。AIエージェントによって仕様作成や周辺コードの工数は減るが、蓄積した運用条件と安全性の検証が差別化の中心となり、顧客換算数の落ち込みを食い止める。既存顧客の深耕で開発単価と運用単価を物価程度に引き上げ、AI事業の利益率も改善する。しかし、新しい生成AI機能そのものの売上が実証されていないため、顧客換算数が現在を上回る成長は見込まない。
蓄電所開発では高圧の用地と接続枠を安定して確保し、特別高圧案件へ移る。電力需給と充放電の最適化知識を活用して投資家が高く買える案件を組成し、年8案件換算を譲渡する。1案件相当の単価は大型化で上がり、開発利益率も2割を超える。資金は案件の譲渡代金で回転し、現金の回収遅れは解消に向かう。
業容拡大の過程で小型の技術買収を行っても、大規模な株式発行で既存株主の持分を一段と減らすことは避けられる。経営者の資本配分が奏功し、2036年の純利益は17億円近くになる。ただし、その成功があっても無配を続ける可能性を尊重し、株主の価値は会社内に残る利益と資産で測る。
- AI事業・個別開発と導入:数量 39.0(年間の有償取引先換算数(社相当・推定))× 価格 0.59(取引先換算1社当たり年間開発収入(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 9 億円。AI開発の顧客換算39社、価格指数1.34。人月の数量を増やさない上振れ
- AI事業・運用保守と継続支援:数量 39.0(年間の有償取引先換算数(社相当・推定))× 価格 0.22(取引先換算1社当たり年間運用保守収入(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 4 億円。運用保守39社換算、継続支援を強化。開示のない解約率は仮定しない
- インフラアセット事業・系統用蓄電所の開発譲渡:数量 8.0(高圧蓄電所の年間売上計上相当案件数(件換算・推定))× 価格 11(1件換算当たり年間売上(億円、譲渡・関連収入込み))→ 売上 88 億円・営業利益 19 億円。大型化した蓄電所の売上計上8案件相当、平均11億円、利益率22%
倍率:資本コストk7.75%、2036年以降の名目成長率g2%。事業の純利益は全社純利益16.8億円から余剰現金6億円の税後受取利息1.4%を除いた額。事業自己資本は160億円から余剰現金を除外し、事業ROE10.85%、超過利益が半分残るRONIC9.30%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.652倍を採用。余剰現金の戻り方は0.5で、事業利益×PERに3.0億円を加算。自己資本の推移は起点42.9億円+2027〜2036年の純利益累計117.1億円−配当・自己株買い累計0億円=160億円で検算した。
確率:AI側は新たな開発単価の値上げ証拠がないため、数量は現時点を超えない。蓄電所を毎年8件換算で譲渡し22%の利益率を保つには、特別高圧案件の連続成約と資本効率の改善が必要で、上振れ確率は12%に限る。
やや楽観 20% 開発減少を蓄電所拡大が補う 利益 10 億円 · PER 13.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,410 円116 億円
AIエージェントが設計書、画面、テストコードの作成を効率化し、同じ顧客を支援しても請求する工数は少なくなる。グリッドは電力分野の専門知識を生かし、主要顧客の重要システムへの関与を守る。開発の取引先換算数は現在より減るものの、複雑な業務の対価を保ち、単価は物価に沿って上昇する。運用支援も基本的な問い合わせは自動化されるが、障害対応と最適化条件の更新に人の責任が残る。
系統用蓄電池の案件形成では、用地、電力系統への接続、投資家への譲渡に必要なネットワークが広がる。高圧案件の中に大口の特別高圧案件が混じるため、年間6件換算でも売上はAI事業を上回る。競合開発会社との競争は強まるが、電力運用の経験を示すことで平均的な譲渡価格と二桁の利益率を保つ。
本社費を増やしても全社の営業利益は現在より伸び、純利益は約9.5億円となる。増えた利益は案件の仕込みと研究開発に回り、貸借対照表も厚くなる。投資は成功したが継続配当を約束できる段階には至らない、という10年である。
- AI事業・個別開発と導入:数量 33.2(年間の有償取引先換算数(社相当・推定))× 価格 0.59(取引先換算1社当たり年間開発収入(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 7 億円。AI開発は33.15社換算で現在の85%、名目価格1.34倍
- AI事業・運用保守と継続支援:数量 32.4(年間の有償取引先換算数(社相当・推定))× 価格 0.22(取引先換算1社当たり年間運用保守収入(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。運用支援は32.37社換算で83%、価格1.32倍
- インフラアセット事業・系統用蓄電所の開発譲渡:数量 6.0(高圧蓄電所の年間売上計上相当案件数(件換算・推定))× 価格 9.50(1件換算当たり年間売上(億円、譲渡・関連収入込み))→ 売上 57 億円・営業利益 11 億円。譲渡6案件換算、平均9.5億円で粗利より保守的な営業利益率19%
倍率:資本コストk7.75%、2036年以降の名目成長率g2%。事業の純利益は全社純利益9.5億円から余剰現金9億円の税後受取利息1.4%を除いた額。事業自己資本は120億円から余剰現金を除外し、事業ROE8.45%、超過利益が半分残るRONIC8.10%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.096倍を採用。余剰現金の戻り方は0.5で、事業利益×PERに4.5億円を加算。自己資本の推移は起点42.9億円+2027〜2036年の純利益累計77.1億円−配当・自己株買い累計0億円=120億円で検算した。
確率:AI受託の作業量が10年で15〜17%減る一方、蓄電所譲渡が年間6件に達する場合を想定する。事業計画の案件開拓実績はあるが再現性は未確立のため、上振れとして20%とする。
中立 27% AI役務は縮小し蓄電所が売上の主役に 利益 6 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,490 円72 億円
AI技術の需要は消えないが、その仕事の請求方法は変わる。電力や製造の最適化は難しいため、数理モデルの重要部分は顧客が外注し続ける。一方、要件整理、画面実装、プログラム修正、保守に必要な技術者の工数は減る。開発の有償取引先換算は10年で現在の68%、保守は70%となる。AI事業全体の売上は2027年の会社予想から一巡して縮み、現状より小さくなるが、技術力のおかげで十分な黒字を残す。
蓄電所関連では案件形成の経験が積み上がり、年間5件換算の譲渡ができるようになる。個々の計画が系統接続や投資家の要求利回りに左右されるため、売値は大型化に伴って上がるが、利益率は2割未満にとどまる。再エネの導入と電力需給調整の必要性が、この事業の数量を支える。競合の増加によって土地や接続枠の調達費も上がるため、成長がそのまま高収益になるわけではない。
全社の売上は約63億円に増えても、本社費や開発資金がかさみ、純利益は約5.8億円にとどまる。十年間は配当を期待せず、利益が自己資本へ蓄積してROEを低下させる。資本コストを超える増分利益が十分に確認できず、株主にとって魅力的な超過収益企業とは言い切れない。
- AI事業・個別開発と導入:数量 26.5(年間の有償取引先換算数(社相当・推定))× 価格 0.57(取引先換算1社当たり年間開発収入(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 5 億円。開発は26.52社相当=現状0.68倍、価格1.30倍。生成AIは作業工数を縮める
- AI事業・運用保守と継続支援:数量 27.3(年間の有償取引先換算数(社相当・推定))× 価格 0.21(取引先換算1社当たり年間運用保守収入(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 3 億円。運用は27.30社相当=現状0.70倍、価格1.28倍。記録の正本に該当しない
- インフラアセット事業・系統用蓄電所の開発譲渡:数量 5.0(高圧蓄電所の年間売上計上相当案件数(件換算・推定))× 価格 8.50(1件換算当たり年間売上(億円、譲渡・関連収入込み))→ 売上 43 億円・営業利益 7 億円。開発・譲渡の売上計上5案件相当、平均8.5億円、営業利益率17%
倍率:資本コストk7.75%、2036年以降の名目成長率g2%。事業の純利益は全社純利益5.8億円から余剰現金12億円の税後受取利息1.4%を除いた額。事業自己資本は99億円から余剰現金を除外し、事業ROE6.47%、超過利益が半分残るRONIC7.11%。事業ROEがk以下であるため正当化PERの上限は1÷k=12.903倍。中立は稼ぐ力の値としてこの上限を用い、余剰現金の戻り方は0.5。自己資本の推移は起点42.9億円+2027〜2036年の純利益累計56.1億円−配当・自己株買い累計0億円=99億円で検算した。
確率:AI開発の数量は人月型の標準的な代替レンジ0.68倍、保守は0.70倍、価格は物価3%の10年累計を少し下回る。蓄電所は年間5件換算まで育つが利益率17%止まりとし、中心確率を27%とする。
やや悲観 25% AI内製化と蓄電所の選別が重なる 利益 0 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 454 円22 億円
電力会社の既存最適化モデルは残るが、新しい実装やデータ加工の仕事は社内のAIエージェントと大手SIerが引き受ける。開発の有償取引先換算数は現在の半分、運用保守も55%まで縮み、単価の上昇は物価に届かない。九州電力など主要顧客の契約を失わなくても、発注の範囲が狭くなるため売上は落ちる。独自の数理エンジンの技術は価値を保つが、顧客がその成果の大半を受け取る。
系統用蓄電所では接続申込みが多くても、電力市場の価格変動で投資家が開発権に払う額が厳しくなる。案件を無理に抱え込まず年間2.5件換算の譲渡へ絞るが、調達や施工調整の固定費はすぐには減らせない。売却利益率は約1割まで低下し、本社費用の圧縮を進めても全社では小幅な営業黒字にとどまる。
経営陣は人員と開発案件の拡大を止め、保有現金を守る。過去に積み上げた利益で自己資本は現在より増えるが、稼ぐ力が低いので帳簿額そのものには買い手がつかない。継続企業の危機には至らないものの、強い成長企業という評判を失った10年となる。
- AI事業・個別開発と導入:数量 19.5(年間の有償取引先換算数(社相当・推定))× 価格 0.51(取引先換算1社当たり年間開発収入(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 3 億円。開発は19.5社換算と現状の50%、価格上昇1.15倍に限定
- AI事業・運用保守と継続支援:数量 21.5(年間の有償取引先換算数(社相当・推定))× 価格 0.18(取引先換算1社当たり年間運用保守収入(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。運用は21.45社換算と現状55%、単価1.10倍
- インフラアセット事業・系統用蓄電所の開発譲渡:数量 2.5(高圧蓄電所の年間売上計上相当案件数(件換算・推定))× 価格 7.50(1件換算当たり年間売上(億円、譲渡・関連収入込み))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。蓄電所譲渡は2.5件換算、平均7.5億円、利益率11%
倍率:事業の純利益0.36億円から余剰現金12億円の税後受取利息0.168億円を除くと、事業の稼ぐ力は約0.192億円となる。資本コスト7.75%から正当化PERの上限12.903倍を使っても事業価値は約2.48億円であり、余剰現金の戻り方0.5を反映した6億円を加えても約8.48億円にとどまる。一方、純現金と処分可能資産に基づく税後資産床は24億円であるため、大きい方の24億円を採用する。PBR0.55944056倍は過去の市場倍率ではなく、現在の自己資本42.9億円に対して資産床24億円が占める割合である。2036年の自己資本62.5億円には倍率を掛けず、未還元の利益を二重評価しない。
確率:顧客がエージェントや大手SIerを使って受託開発の一部を内製し、蓄電所案件は資金調達条件の厳格化で絞られる。業界の一般論だけでなく、単一大口取引と契約資産増という固有の脆さを踏まえて25%とする。
悲観 16% 技術の受託が汎用化し開発案件も失敗 利益 −3 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 454 円22 億円
専門的な数理モデルの一部は使われるが、計画最適化の周辺技術が大手SIerやオープンソースに広がり、顧客は大半の新規開発を自社で組み立てる。電力分野の実績があっても、顧客のシステムとデータを所有しているわけではない。技術者の工数に対する発注は半分以下になり、値上げもほとんどできない。運用保守は最低限の品質検証だけが残り、継続収入の看板も弱くなる。
蓄電所では大量の接続検討に対して実際の投資案件が少なく、調達した用地や開発権の買い手が見つからない。譲渡できるのは年間1件に満たず、価格も低下する。電力市場の制度や需給調整価格が開発会社に不利に変わり、案件を売っても赤字となる。本社費用を減らしても営業赤字が続き、追加投資を止めて現金を残すことが最優先となる。
2026年に蓄えた純現金と売れる資産が残り、ただちに倒産する筋書きとは区別する。しかし、利益の回復を前提にした企業価値は認められず、少数株主への配当も期待できない。過去の好調な顧客開発や将来の蓄電所構想は売却価値にならず、清算に近い資産価値だけが株式を支える10年になる。
- AI事業・個別開発と導入:数量 16.4(年間の有償取引先換算数(社相当・推定))× 価格 0.46(取引先換算1社当たり年間開発収入(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。開発数量は現状42%、価格1.04倍。人月作業の構造的喪失
- AI事業・運用保守と継続支援:数量 17.6(年間の有償取引先換算数(社相当・推定))× 価格 0.17(取引先換算1社当たり年間運用保守収入(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。保守数量45%、価格1.05倍。レガシー契約だけが残る
- インフラアセット事業・系統用蓄電所の開発譲渡:数量 0.8(高圧蓄電所の年間売上計上相当案件数(件換算・推定))× 価格 6.00(1件換算当たり年間売上(億円、譲渡・関連収入込み))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。蓄電所の譲渡は0.75件換算、価格6億円、保有案件の減損で営業赤字
倍率:2036年の純利益はマイナス2.5億円で、継続企業としての稼ぐ力から正の事業価値を認められない。純現金と売却可能資産から未履行契約負債などを控除した税後資産床24億円を、十年後の時価総額とする。現在の自己資本42.9億円に対して24億円はPBR0.55944056倍に相当するが、これは資産の内訳から決まる換算値であり、過去の市場PBRを根拠にしたものではない。2036年の自己資本39億円に倍率を掛けない。やや悲観と同じ24億円になるのは、両筋書きとも継続利益の価値が資産床を下回り、資産床が評価の下限となるためである。
確率:受託開発の数量が現状の42%、保守45%となることと、蓄電所の開発権が十分な値段で売れない事態が重なる複合的な下振れ。純現金が大きいため倒産は基本線ではなく、16%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
AI事業・個別開発と導入
送配電や工場の最適化エンジンを、顧客ごとに設計・開発して業務システムへ組み込む受託収入。
| 数量年間の有償取引先換算数(社相当・推定) | 価格取引先換算1社当たり年間開発収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 39.0 | 0.44 | 17 | 6 |
| 10 年後 中立 | 26.5 | 0.57 | 15 | 5 |
取り方:2026年有報のフロー売上17.23677億円。会社資料のAI事業売上23.62823億円を顧客平均売上0.605億円で割ると約39社相当となる。開発の平均単価は17.23677÷39=0.441968億円。実顧客社数は非開示であり、39は取引先換算数にすぎない。2027年に向けた開発受注済み33案件9.6億円は契約単位が異なるので数量に直接足さない。開発部分の営業利益5.54億円は全AI利益8.48527億円から推定配賦した未開示推定値。AIエージェント代替では人月・工数型と認定する。
AI事業・運用保守と継続支援
導入済み最適化モデルの保守、計画更新、追加機能と運用支援で得る継続型の役務収入。
| 数量年間の有償取引先換算数(社相当・推定) | 価格取引先換算1社当たり年間運用保守収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 39.0 | 0.16 | 6 | 3 |
| 10 年後 中立 | 27.3 | 0.21 | 6 | 3 |
取り方:2026年有報の運用・保守などのストック売上6.39146億円を、AI事業全体の取引先換算約39社で割った年間単価0.163884億円。2027年向け資料の運用保守41案件6.4億円は案件数であり、2026年時点の顧客実数ではない。営業利益2.94527億円は全AI利益から開発推定利益を引いた推定配賦。既存顧客への売上比率と契約解約率は別物であり、解約率5%未満の証拠もないため、契約ID・正本型のSaaSではなく運用工数型としてAIエージェント代替の数量縮小を適用する。
インフラアセット事業・系統用蓄電所の開発譲渡
用地取得や系統接続、設計を行った蓄電所の開発権・設備を投資家へ譲渡し、関連運用支援も行う。
| 数量高圧蓄電所の年間売上計上相当案件数(件換算・推定) | 価格1件換算当たり年間売上(億円、譲渡・関連収入込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1.2 | 6.30 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 8.50 | 43 | 7 |
取り方:2026年有報のインフラアセット売上7.56255億円、セグメント利益1.00266億円を正とする。事業計画で示した高圧蓄電所1案件5億〜10億円の価値幅を使い、売上計上相当1.2案件×約6.302億円と推計した。売上には部分履行・接続支援が含まれるため、これは引渡し済み設備の厳密な件数ではない。会社が示す翌期以降の3件32MWhなどの開発権・パイプライン件数を、今期の売上件数と混同しない。MWhの容量拡大は案件大型化として単価にも反映し、二重計上しない。物理的な開発・譲渡はAI代替の人月型には当たらない。
リスクと懸念
AIエージェント代替と受託の値決め力
AI事業の開発・運用保守は、顧客専用の仕様づくりやプログラム修正、問い合わせ対応を伴う人月・工数型の役務である。数理最適化の核心は残っても、周辺作業をAIエージェントが行えば、技術者の稼働時間と顧客が払う単価は縮む。独自の継続課金と値上げの証拠が出るまでは、開発と運用保守を一括して高成長のSaaSとみなさない。
九州電力など大口顧客への依存
2026年6月期は九州電力向け売上が約5.42億円で、全社の約17%を占めた。送配電会社の難しい業務へ組み込まれることは強みだが、大口顧客が内製化したり、大手SIerへの発注に戻ったりすると、年間数億円単位の収入が一度に失われる。顧客との信頼関係を独占契約や価格改定権と取り違えることはできない。
蓄電所の系統接続、開発遅延と在庫資金
用地の選定、系統接続の検討、施工会社の手配から譲渡までには長い時間がかかる。申込み済みの容量が増えても、接続の確保と出資者への売却が遅れれば、前払いの調査費や契約資産だけが残る。2026年6月期の営業現金収支は弱く、同社が受注額をどれだけ早く現金に変えられるかが、10年の価値の大きな分かれ目となる。
蓄電池市場の制度変更と譲渡価格の下落
系統用蓄電池の収益は卸電力、需給調整、容量市場などの制度と価格に左右される。接続検討の申込件数が多いことは市場の成長余地であると同時に、参入過剰の兆候でもある。電力市場の収益予測が下方修正されれば、投資家が蓄電所開発権に払う価格も下がり、案件数が伸びてもグリッドの粗利益が縮む可能性がある。
利益の現金化と株主還元の乏しさ
2026年6月期の契約資産は約13億円に達し、利益の一部が未請求の仕事として残る。現金の回収前に新しい開発へ資本を投じると、業績は黒字でも株主に分けるお金は乏しくなる。経営者側の支配が強く、配当・自社株買いの数値方針もないため、純現金28.5億円をそのまま少数株主が使える資産と見積もるのは危険だ。
新株予約権と投資・買収による希薄化
2026年6月末時点の既存株約480.3万株に対して、未行使の新株予約権約47.8万株が潜在する。行使代金は会社に入るが、株主一人当たりの利益と持分は薄まる。成長投資や技術獲得のための買収を株式で賄えば、同じ問題が繰り返される可能性がある。新規投資の利益が希薄化以上に増えているかを確認しなければならない。
今後の分かれ目
- AI事業の新規受注額が伸びても、顧客当たり売上と運用保守の契約継続が低下したら
- AIエージェント代替が請求できる作業量と価格を削っていると判断し、AI開発・保守の数量前提を下げ、やや悲観と悲観の重みを増やす。
- AI運用保守の解約率5%未満が継続開示され、独立した製品利用料の値上げも実現したら
- 数理エンジンの堀が工数から独立している証拠となる。保守の収益を役務型から別に評価し、10年後の数量と長期成長率の上方修正を検討する。
- 2027年向けの受注済み開発33案件と継続支援41案件が予定どおり売上・現金に転換したら
- 短期の業績予想の確度を上げる。ただし検討中の商談を受注済みと同一に扱わず、十年先の顧客維持率は別に確かめる。
- 系統用蓄電所の年間譲渡相当件数が5件以上に定着し、セグメント利益率も15%以上を維持したら
- 中立の物的案件数と事業利益を引き上げる。容量だけ増えて売値が下がる場合は、高圧と特別高圧を分けて単価の前提を修正する。
- 売上が伸びる一方で契約資産が増え続け、営業キャッシュフローのマイナスが常態化したら
- 蓄電所を成約する前に現金が枯渇する危険が増す。現金の余剰認定額を減らし、希薄化や借入の確率を高める。
- 配当性向や総還元性向の数値目標が明示され、実際の配当・自社株買いが複数年続いたら
- 余剰現金の少数株主への戻り方を再評価し、資本コスト未満の再投資より還元する資本政策へ改善したか確認する。
見ておくもの
- 2027年6月期予想のAI事業30億円とインフラアセット15億円の達成度、及び営業利益6億円との対応
- AI開発の受注済み案件数、運用保守の契約継続率と顧客単価の推移
- AIエンジンの標準製品売上・生成AI新サービスの実際の受注金額
- 蓄電所の系統接続完了件数、売上認識した案件数、1案件当たりの粗利益
- 卸電力・需給調整市場の制度と蓄電池の投資家要求利回り
- 契約資産13億円の回収、営業キャッシュフロー、無配方針の変更
- 新株予約権の行使残高、経営者側保有割合、自社株買い実施の有無
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や同業のPERから倍率を逆算していない。2026年のAI開発・運用保守を取引先換算の数量と役務価格に分け、人月型AIエージェント代替の中立レンジに従った。蓄電所は実引渡し数が非開示なので、会社公表の案件価格帯で売上計上相当の件数に直した。PERはk7.75%、g2%、事業のROEと堀の残存比率2分の1から求め、ROEがk以下なら1÷kを上限とした。やや悲観の従来評価32.175億円は、稼ぐ力と税後資産床の大きい方24億円を超えていたため採用しない。やや悲観と悲観はいずれも税後資産床24億円を採用し、現在の自己資本42.9億円に対するPBR換算値0.55944056倍を使う。これは市場の倍率ではなく、純現金から契約負債等を控除した資産価値の換算である。余剰現金は資産床に含まれるため二重に足さない。株主の取り分には新株予約権による潜在希薄化を最後に掛けた。新リース会計基準の適用後も、賃借料を費用とする同じ基準で比較する。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式リスク上乗せ4.5%を基本に、観測された利益変動と純現金だけを質の調整に反映する。案件実行の失敗は資本コストではなく五つの筋書きに配分する。