結論
アドソル日進は、電力・ガス・鉄道・公共防災・決済など、止まると社会生活に支障を来すシステムを開発する独立系IT企業である。筆者の結論は「割高」だ。社会インフラで培った技術力と顧客との関係は本物だが、開発工数を売る収益構造がAIエージェントによって変わる危険に対し、現在の値段には十分な安全域がない。
2026年3月期は売上高172億円、営業利益21億円、純利益15億円と好調だった。過去10年で営業利益率は約5%から12.5%へ改善し、純現金29億円を持つ。受注単価の改善と高付加価値案件の増加は確認できる。ただし、今の好業績がそのまま10年後にも残るかは別の問題だ。制御システムそのものはなくならなくても、設計・実装・試験に必要な人月が減れば、顧客が支払う開発費も縮みうる。
2026年5月に公表した新中期計画は、2031年3月期に売上高300億円、営業利益50億円を目指す。経営陣が掲げる方向は、従来の受託開発から価値に応じた対価を受け取る事業への転換であり、問題意識は正しい。しかし、成果報酬型や独自サービスの売上が全社の中心になったという金額の証拠はまだない。したがって、計画の達成を10年先の既定路線にはしない。
10年後の中立では、社会インフラ向けの請求工数が現在の約75%、先進インダストリー向けが約60%残り、単価は10年間の物価上昇分だけ上がると考える。売上高は約160億円、純利益は約13億円となる。5つの筋書きと途中の株主還元、政策保有株の価値を現在価値に直した本質価値は約149億円で、比較対象の時価総額約233億円を約36%下回る。これは倒産を予想した結論ではない。優良な顧客基盤が残っても、株主が所有する将来利益の量と持続期間が今ほど大きくない可能性を重視した結果である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、まず「2036年にも電力網、鉄道、決済システムが存在するか」と問うだろう。答えは明らかに肯定的である。次に問うべきは、「その仕事からアドソル日進の株主が今と同じだけ利益を受け取れるか」だ。この二つの答えは一致しない。需要がなくなる事業ではないが、顧客が支払う開発工数と会社が利益を得る仕組みは変わりうる。
同社の魅力は、現場で必要とされる品質と技術力が、長年の仕事によって蓄積されていることだ。単なる一般事務の受託会社より、顧客が突然取引先を変更しにくい。しかし、顧客のシステムを作っている会社が、そのシステムの所有者でもあるとは限らない。顧客がAIを使って設計・開発を内製化できれば、同社の技術者が必要とされても、請求できる人月は減る。真に強い堀とは、顧客の作業が減った後も対価を受け取れる仕組みである。
株主に帰属する利益という観点では、設備投資が小さいことは利点だ。製造設備の更新で毎年巨額の資金を失う事業ではない。一方、人材の採用、教育、品質保証、研究開発に投資し続けなければ技術の価値は薄れる。今の高いROEを将来の成長率と取り違えてはいけない。新たな資金を投じたとき、今までと同じ高い増分利益が得られるとは限らないからだ。
経営陣の配当政策には好感が持てる。株主還元を明示し、余剰資本の抱え込みを抑えようとしている。反対に、2031年の大きな売上目標を追って利益の薄い買収や過剰採用を行えば、これまで積み上げた資本効率を壊す可能性がある。必要なのは売上高300億円という看板よりも、AIで開発作業が効率化した後に残るオーナー利益を増やすことだ。
会社の将来を否定する必要はない。社会インフラに強い独立系企業として成長する道は残る。ただし、株主が支払う値段は、品質の良さに対してではなく、10年間に取り出せる現金とその先の稼ぐ力に対して決めるべきだ。現在の市場評価には、新中期計画の成功だけでなく、開発工数の減少を収益構造の転換で十分に補うことまで期待されている。筆者は、その確認ができる前に高い将来利益を買い取ることには慎重である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、企業が必要とするシステムの設計・開発・試験・保守を請け負い、その仕事に対価を得ることである。2026年3月期の売上高は社会インフラ事業が約112億円、先進インダストリー事業が約60億円だった。前者は全体の65%を占め、電力・ガスのエネルギー分野だけで約82億円を売る。鉄道や交通向けが約13億円、公共・防災向けが約13億円と続く。生活に不可欠なシステムを扱うことが、同社の顧客基盤の特色である。
社会インフラ事業では、機器や通信ネットワークを監視し、安全に動かす仕組みが重要になる。電力設備を制御するシステムでは、応答時間、耐障害性、既存設備との接続、長期間の運用などが求められる。単に画面を作る仕事よりも現場固有の知識が必要であり、実績のない企業が簡単に代替できるわけではない。ただし、システムと運用データを最終的に所有するのは主として顧客である。アドソル日進が業界共通の記録基盤を独占的に保有しているわけではない。
先進インダストリー事業では、製造業向けが約14億円、決済関連を含むサービス分野が約35億円、企業向けシステムが約10億円を占める。顧客の事業を理解し、組込みソフトから企業内システムまで対応できることが強みだ。だが、決済システムの構築を請け負うことと、決済ネットワーク自体を所有して手数料を徴収することは違う。この区別は長期の値付けで大きい。
GIS、すなわち地理情報を扱う技術も特色である。COCOYAやDOCOYAといったサービスに加え、地図基盤を活用したシステムを提供している。ただし、2026年3月期のソリューション関連売上約12億円は既存の事業区分に含まれる内数である。これを第三の独立した収益源として足すと二重計上になる。ライセンス収入、継続契約、受託開発の内訳も十分には開示されていないため、全額を高い継続率を持つソフトウェア収益とは評価しない。
優良さと弱いところ
同社の強みは、社会インフラの顧客が要求する品質水準に長年応えてきた経験である。電力制御や交通システムでは、障害発生時の損失が大きく、仕様を理解した開発会社を簡単に替えられない。顧客の設備更新が続く限り、既存システムの知識は次の仕事につながる。過去10年の売上成長に対して営業利益の伸びが大きいことも、単なる人員増だけではない改善を示している。
2026年3月期は受注単価の引き上げと高収益案件の増加により、売上総利益率が29.0%へ改善した。顧客に一定の値上げを受け入れてもらえた事実は評価できる。しかし、物価上昇を超える値上げが10年以上続く証拠とまでは言えない。主要顧客の三菱電機向けは約35億円、東京ガスiネット向けは約19億円で、合計すると売上の約31%に達する。強い顧客との関係は営業上の財産であると同時に、価格交渉で相手が優位になる危険も伴う。
資本効率は優秀だ。過去10年のROE中央値は17.3%であり、2026年3月期は22%を超えた。借入金に依存しない財務も強い。ただし、近年の自社株買いで自己資本が減ったこともROE上昇に寄与しており、利益率の改善だけで説明してはいけない。開発技術への投資が高い利益を生んできたことは確かだが、将来の増分投資も同じ利回りを生むと考えるのは危険である。
競争上の堀は「普通」と判定する。現場固有の知識と乗り換えに伴う品質リスクは評価するものの、全社売上の中心は顧客が発注する開発工数である。年間解約率5%未満という開示、業界が共同利用する独占的な記録基盤、法改正のたびに値上げできた継続的実績などは確認できない。技術力が高いことと、販売数量が減っても利益を守れる経済的な堀があることは区別すべきだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は、2025年に約7.5兆円の規模とみられる。IDC Japanの推計では、2024年に約7兆円だった市場は2029年に約9.7兆円へ成長する見通しである。基幹システムの刷新、クラウド移行、電力設備の高度化、データ活用など、社会全体のIT投資需要は大きい。アドソル日進の売上高約172億円は、この広い市場の約0.23%にすぎない。会社の規模だけを考えれば、顧客や案件を増やす余地はある。
ただし、この市場予測は主に顧客がITサービスへ支払う金額の見通しであり、個々の開発会社の人月売上が将来も同じ割合で伸びることを保証しない。AIエージェントは、仕様の読み取り、コード生成、試験、保守調査を一連の作業として処理できるようになる。顧客のIT投資が増えても、開発工数当たりの生産性がさらに大きく伸びれば、従来型の請求人月は減る。業界全体の名目成長と、同社の10年間の実質数量を同じ方向に動かすべきではない。
社会インフラ向けでは、NTTデータ、日立製作所、NEC、富士通、三菱電機などが大規模案件で競う。決済関連ではTIS、NTTデータ、BIPROGYなどが存在する。アドソル日進は制御・監視技術に強みを持つ専門企業であり、業界全体の価格を決める立場ではない。エネルギー向け、鉄道向け、決済システム開発向けの厳密な市場規模と各社シェアは、同じ定義で比較できる形では開示されていない。
参考になる狭い市場として、矢野経済研究所の社会インフラIT市場調査には2024年度約7,028億円という規模がある。ただし電力・ガスを含まない調査範囲があり、同社の社会インフラ事業112億円をそのまま割ってシェアとするのは誤りだ。交通・公共の売上約26億円だけを仮に比べても約0.4%にすぎず、対象サービスの範囲と年度が一致しない参考値にとどまる。狭い市場のシェアを断定するより、既存顧客への依存と受注単価の動きを追う方が有用である。
2036年に向けて、電力網の分散化、防災投資、老朽インフラの更新は需要を支える。反対側では、顧客の開発内製化、AIによるプログラミングの自動化、海外開発会社との競争が進む。10年後にも電力や交通の制御システムは必要だろう。しかし、それを作るために現在と同じ人数と時間が必要だとは限らない。この二つを分けて判断することが、同社の長期分析の核心である。
資本政策と M&A
経営陣の過去の資本配分は、おおむね株主を意識したものだった。2026年3月期まで16期連続増配を達成し、配当性向の目標を従来の40%以上から50%以上へ引き上げた。自社株買いにも積極的で、直近2年間の株数は大きく減少した。純現金を持ちながら還元を続けた点は評価できる。ただし、自社株買いによる自己資本の減少はROEを機械的に押し上げるため、利益を稼ぐ力と資本政策の効果を切り分ける必要がある。
2026年5月20日に決定した「New Canvas 2031」は、2031年3月期の売上高300億円、営業利益50億円、営業利益率16.7%を掲げる。ROEについて新たな2031年の明確な数値目標は見当たらない。株主還元は配当性向50%以上、DOE6%以上、累進かつ連続増配、年2回配当を約束し、21期連続増配を目指す。自社株買いは機動的に検討するが、金額の最低保証はない。
同計画の2027年3月期から2029年3月期までの資金配分は、営業キャッシュフロー55億円を想定する一方、成長投資33億円以上、株主還元28億円、期末手元現預金30億円を見込む。借入枠も活用する計画であり、成長投資と還元を同時に進める意思は明確だ。ただし、新しい事業や買収へ資金を投じる際の利回りが資本コストを超えるかが重要になる。
政策保有株では、日本プロセスとバリューHRの上場株式を保有し、2026年3月期末の時価は合計約19億円に達する。協業目的は説明されているものの、定量的な保有効果は明らかではない。これらの資産は価値を持つが、受託開発の競争優位そのものではない。経営陣には、保有を続ける理由と現金化して還元する場合の利益を継続的に比較してほしい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電力・交通・公共防災のシステムは、人間の生活と物理設備を動かすために必要であり、AIだけで完成するものではない。既存システムの安全性を維持しながら刷新する仕事には、設備仕様の理解、試験、承認、事故時の責任分担が欠かせない。アドソル日進が長年培った監視・通信・制御技術は、一般的な業務システム開発より置き換えにくい。電力網の高度化やデータセンターの電力需要、防災設備の更新が続けば、顧客は同社を必要とし続ける。
実際に2026年3月期は受注単価が改善し、3期連続で最高業績を更新した。社会インフラの売上比率も上昇し、電力向けだけで約82億円の売上がある。顧客の重要業務に深く入り込むことで、単純な価格競争から距離を置ける可能性がある。先進インダストリーでも決済や医療など、品質要求の高い領域で仕事を増やせる。ベトナムの開発体制を活用すれば、国内の技術者不足に対応しながら原価を抑えられる。
経営陣が新中期計画で人月型のSIと価値対価型のオファリングを区別していることは、事業の変化を理解している証拠でもある。AIによって設計や試験のコストが下がれば、同社自身の生産性も上がる。顧客に単価引き下げを求められても、品質保証や高度な制御設計の仕事を残せれば利益率を維持できる。もっとも、独自のAIサービスが既に大きな売上を生んだという開示はないため、その成功を数量拡大の既成事実としては扱わない。
純現金を持ち、配当性向50%以上とDOE6%以上を掲げる資本政策も強みだ。景気後退や技術転換の際に過度な借入を迫られる可能性は小さく、株主への還元を通じて価値を回収できる。AI時代にも請求工数を維持し、価格上昇を確保できるなら、株主には現在を大きく上回る将来の事業価値が残る。
慎重な見方
最大の問題は、社会インフラの需要が安定していることと、ソフトウェア開発会社の売上が安定していることを同一視しやすい点だ。顧客は電力網や交通制御を維持し続けるだろう。しかし、同じ品質のコードや試験を少ない人数で作れるなら、従来の人月単価を掛け合わせた請求額を支払う理由は薄れる。AIエージェントはコード生成だけでなく、仕様照合、試験、障害解析まで対象を広げる。高度な領域でも、熟練者が管理する少数のAIに開発の多くを任せるようになる可能性がある。
アドソル日進は業界の決済記録、電力設備データ、顧客の業務履歴を独占的に所有する事業者ではない。顧客から仕事を受託する構造が中心であり、開発の省力化で浮いた利益をどちらが得るかは交渉で決まる。2026年3月期の主要2社向け売上比率は合計約31%に及ぶ。大口顧客が調達方法を変えれば、会社全体の受注単価や稼働率への影響は大きい。品質の高い二次受託先として残っても、価格交渉力を持ち続けられるとは限らない。
GISソリューションは魅力的な技術を持つが、既存の二事業に含まれる売上約12億円の内数であり、高利益率の継続課金売上として独立開示されていない。COCOYAやDOCOYAが企業の基幹記録を握り、解約がほとんど発生しないという数字も確認できない。地図基盤にはEsriやMapboxなど他社の技術を利用する部分がある。すべてを強固な独自プラットフォームとして評価するのは早い。
2031年の売上高300億円、営業利益50億円という計画には、人材確保と事業転換を同時に成功させる必要がある。直近の業績が好調だからといって、2036年にも同じ請求工数が残るとは限らない。成長目標に合わせた採用や買収の直後に市場構造が変われば、固定的な人件費と研究投資が収益を圧迫する。政策保有株は資産の裏付けになるものの、それだけで受託開発事業の利益が守られるわけではない。
どちらに重みを置いたか
社会インフラに必要な技術と財務の健全さは高く評価する。一方、10年以上持つ株主にとっては、顧客のシステムが残ることより、開発作業が自動化された後も対価を得られるかが重要だ。中立の請求工数にAI代替を織り込み、10年後より先の成長率も名目0%とした。下側の確率を39%、上側を25%とした理由は、AIリスクをもう一度罰するためではなく、主要顧客への集中、価値対価型への移行実績の不足、成長投資の実行リスクがあるためだ。したがって、好企業であっても現時点の株主価値は市場評価を下回ると判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 993 円167 億円(+ 還元の換算額還元の合計 540 円91 億円)。 今の値に割り戻すと 874 円147 億円、今との差 −32.4%、 期待の年率 +2.1%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,029 円342 億円 | 844 円142 億円 | +122.4% | +10.2% | 201 円34 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,732 円292 億円 | 798 円134 億円 | +95.8% | +8.5% | 455 円77 億円 |
| 中立 | 36% | 1,093 円184 億円 | 612 円103 億円 | +31.9% | +3.5% | 614 円103 億円 |
| やや悲観 | 25% | 452 円76 億円 | 379 円64 億円 | −35.7% | −5.4% | 208 円35 億円 |
| 悲観 | 14% | 233 円39 億円 | 163 円27 億円 | −69.3% | −13.2% | 55 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 993 円167 億円 | 540 円91 億円 | +18.7% | +2.1% | 1,533 円258 億円 |
今の株価時価総額 1,292 円218 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 制御系の信頼を守り、請求工数を維持する 利益 25 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,029 円342 億円
電力網の高度化、交通制御の更新、防災システムへの投資が続き、既存顧客との関係がさらに深まる。三菱電機や電力・ガス関連企業は、制御品質と運用の知識を持つ同社を主要な開発パートナーとして使い続ける。顧客側のAI開発が進んでも、現場固有の試験や安全確認には同社の専門技術者が必要であり、従来の請求人月を維持できる。
先進インダストリーでも、決済や組込みの品質保証で差別化し、価格だけで競争する案件を減らす。AIによって社内の設計・試験効率は上がり、同じ売上をより少ない直接作業で提供することで利益率を改善する。2031年の経営目標をそのまま達成するというより、AIによる大幅な工数減少を防ぎ、2036年にも堅固な受注基盤を保つことが成功の中身となる。価値対価型の案件への転換は進むが、実績のない新商品による販売数量の増加までは見込まない。
大規模な買収は避け、品質、人材育成、顧客との共同開発に資金を使う。株主還元を続けながら高い資本効率が残る。2036年には営業利益約35億円、純利益約25億円を稼ぐ企業になる。
- 社会インフラ事業:数量 9,319(年間の請求工数換算(人月)。自社技術者と外部協力会社の提供価値を含む推定数量)× 価格 0.02(契約売上の人月当たり平均単価(億円/人月))→ 売上 150 億円・営業利益 42 億円。請求人月1.00倍、単価1.34倍。重要インフラでの品質優位が残り、セグメント利益率は本社費控除前28%。AIエージェント代替を受けても数量維持が上限。
- 先進インダストリー事業:数量 4,973(年間の請求工数換算(人月)。自社技術者と外部協力会社の提供価値を含む推定数量)× 価格 0.02(契約売上の人月当たり平均単価(億円/人月))→ 売上 80 億円・営業利益 22 億円。請求人月1.00倍、単価1.34倍。決済と組込みの高度案件を維持し、セグメント利益率26.9%。
倍率:資本コストk=7.25%、2036年ROE=24.5÷122.4=20.0%。通常の堀の残存率1/2からRONICは約13.6%。AIエージェント代替を反映した2036年以降の名目g_longは0%で、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=13.7931倍。上限そのものを用い、市場の過去倍率による割引はしない。mcap_okuは24.5億円×13.7931倍=337.93億円とする。政策保有株は最上位のholdingsで別途評価されるため、ここで資産価値を手動加算しない。
確率:品質要求の厳しい電力・交通案件で競争力を維持し、AIによる省力化を自社の利益にも取り込める最良の筋書き。ただし独自AI商品による数量拡大の実績金額がないため、人月換算数量は両事業とも現在の1.0倍を上限にする。上振れは主に単価と利益率に表す。
やや楽観 18% 社会インフラの受注を保ち、工数減少を抑える 利益 21 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,732 円292 億円
社会インフラの顧客は、電力網、交通、防災設備の更新を続ける。アドソル日進は開発工程の自動化を進めながら、要件の確認、安全試験、既存設備との接続で引き続き選ばれる。AIで削られる設計・実装の工数を、高度化した設備や新しい規制・セキュリティ要件への対応が部分的に埋める。社会インフラの請求数量は10年間で約6%減に収まる。
先進インダストリーは、企業の内製化とAI開発の普及により請求人月を約10%失う。もっとも、決済関連と組込み分野では品質保証と監査への需要が続くため、受注が急減するほどではない。物価並みの単価上昇を実現し、作業の省力化による原価改善を一部利益として取り込む。GISを含むソリューション収益は既存の仕事を支えるが、記録の正本を握る独占事業には成長しない。
経営陣は新中期計画に沿って人材育成とサービス開発へ投資するが、大型の失敗買収は避ける。2031年の売上目標300億円には届かなくても、事業の稼ぐ力は大きく損なわれない。2036年の純利益は約21億円となり、株主還元も継続する。
- 社会インフラ事業:数量 8,760(年間の請求工数換算(人月)。自社技術者と外部協力会社の提供価値を含む推定数量)× 価格 0.02(契約売上の人月当たり平均単価(億円/人月))→ 売上 141 億円・営業利益 38 億円。請求人月0.94倍、単価1.34倍。電力・交通向けの品質要求が工数減少を緩和し、セグメント利益率27.1%。
- 先進インダストリー事業:数量 4,476(年間の請求工数換算(人月)。自社技術者と外部協力会社の提供価値を含む推定数量)× 価格 0.02(契約売上の人月当たり平均単価(億円/人月))→ 売上 72 億円・営業利益 19 億円。請求人月0.90倍、単価1.34倍。顧客の内製化による減少を決済と高付加価値案件が緩和。
倍率:ROEは20.8÷110.4=18.8%、kは7.25%、通常の堀からRONICは約13.1%。2036年以降の名目g_longは0%であるため、正当化PERの上限は1÷0.0725=13.7931倍となる。mcap_okuは全社純利益20.8億円×13.7931倍=286.90億円とする。政策保有株については最上位のholdingsによって受取配当の重複控除と税後資産価値の調整を行い、この値には手動加算しない。
確率:電力・交通の継続案件と製造・決済の顧客関係により、AIによる人月減少が緩やかにとどまる筋書き。価値対価型への移行は一部進むが全社の収益構造を根本的に変えるほどではない。
中立 36% 必要なシステムは残るが、請求工数は縮む 利益 13 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,093 円184 億円
電力網、交通設備、防災システムの更新は2036年にも続く。しかし、顧客が発注する開発作業のうち、コード生成、仕様照合、単体試験、保守調査はAIエージェントによる自動化が進む。アドソル日進は設備を理解した技術者と品質保証の仕事を残すが、従来と同じ工数を請求できない。社会インフラ向けの年間請求人月は約25%減少する。
先進インダストリーでは、一般企業のシステム開発や製造業向けの業務ソフトを顧客自身がAIで作る割合が増える。決済の安全性に関わる仕事は残るものの、発注額は工数の削減に合わせて縮む。請求数量は約40%減少する。両事業とも単価は物価上昇に沿って上がるが、開発サービスの実質的な値決め力は強くならない。AIによる社内業務の効率化は本社費の増加を抑えるものの、失われた売上をすべて補えない。
新中期計画が掲げる価値対価型ビジネスは部分的に進展する。ただし、独自の規制対応データや顧客の基幹記録を保有する事業へ全社が転換するまでには至らない。経営陣は増配方針を維持し、成長投資は人材育成やサービス開発に向ける。結果として2036年の売上高は約160億円、純利益は約13億円となる。会社は健全に存続するが、現在ほど高いROEは維持できない。
- 社会インフラ事業:数量 6,989(年間の請求工数換算(人月)。自社技術者と外部協力会社の提供価値を含む推定数量)× 価格 0.02(契約売上の人月当たり平均単価(億円/人月))→ 売上 112 億円・営業利益 30 億円。請求人月0.75倍、単価1.34倍。電力・交通の継続需要は残るがAI代替で請求数量が減る。利益率26.7%は本社費控除前で、作業効率化の効果を含む。
- 先進インダストリー事業:数量 2,984(年間の請求工数換算(人月)。自社技術者と外部協力会社の提供価値を含む推定数量)× 価格 0.02(契約売上の人月当たり平均単価(億円/人月))→ 売上 48 億円・営業利益 13 億円。請求人月0.60倍、単価1.34倍。汎用的な開発・試験の自動化によって数量が減るが、原価も削減する。
倍率:2036年ROEは12.85÷108.4=11.85%、kは7.25%。通常の堀で超過ROEの半分が残るとしてRONICは約9.55%。10年より先の名目成長率g_longはAIエージェント代替により0%なので、正当化PER=(1−0/RONIC)/(0.0725−0)=13.7931倍。過去の市場PERは使わない。mcap_okuは全社純利益12.85億円×13.7931倍=177.24億円とする。政策保有株の受取配当控除と税後資産価値の加算はbuildのassets_addに任せ、ここでは含めない。
確率:長期の中心は、社会インフラそのものの需要が続く一方、AIによる開発・試験の省力化で売れる人月が減る筋書き。数量は社会インフラ0.75倍、先進インダストリー0.60倍とし、工数受託型の中立範囲に収める。
やや悲観 25% 価格交渉力が弱まり、顧客の内製化が進む 利益 6 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 452 円76 億円
三菱電機をはじめとする大口顧客が、AIを利用した開発基盤と内製チームを整備する。アドソル日進は設備固有の知識を持つため直ちに取引を失うわけではないが、従来は外注していたコード開発や試験の一部を顧客が自ら行うようになる。社会インフラの請求人月は現在の約62%に減少する。新規案件では顧客が成果物ごとの見積もりを細かく比較し、契約価格を抑えようとする。
先進インダストリーでは汎用的な業務システムの受託開発がさらに縮む。製造業の設備投資も弱く、決済分野の大手競合が開発と運用の一体契約を獲得する。請求人月は現在の約48%に減り、10年間の単価上昇は物価上昇に届かない。システムの品質を守るための管理費用は残り、社内の合理化だけでは営業利益率の低下を止められない。
経営陣は採用を抑制し、開発拠点と本社機能の効率化を進める。配当と自社株買いも利益水準に合わせて縮小し、新中期計画の成長投資は計画どおり進まない。2036年には純利益が約6億円まで減り、ROEが資本コストを下回る。政策保有株と手元資金は残るものの、本業の企業価値は大きく傷む。
- 社会インフラ事業:数量 5,778(年間の請求工数換算(人月)。自社技術者と外部協力会社の提供価値を含む推定数量)× 価格 0.02(契約売上の人月当たり平均単価(億円/人月))→ 売上 87 億円・営業利益 21 億円。請求人月0.62倍、単価1.25倍。顧客の内製化と見積価格の厳格化により、物価並みの値上げができない。
- 先進インダストリー事業:数量 2,387(年間の請求工数換算(人月)。自社技術者と外部協力会社の提供価値を含む推定数量)× 価格 0.02(契約売上の人月当たり平均単価(億円/人月))→ 売上 36 億円・営業利益 9 億円。請求人月0.48倍、単価1.25倍。汎用開発の受注減と決済システム案件の競争が重なる。
倍率:2036年ROEは約5.1%でk=7.25%を下回る。事業の稼ぐ力は1÷k=13.79倍が上限であり、価格競争の激化と新規投資の低収益性を反映してPER12倍とする。mcap_okuは純利益5.5億円×12倍=66.0億円とする。政策保有株の税後資産価値はbuild側のholdings処理で別途調整されるので手動では足さない。資産面の床40億円に対し、事業の稼ぐ力による評価額66億円が上回る。
確率:AI代替の中心想定に加え、大口顧客の内製化と価格交渉の厳格化が進む筋書き。下に寄せる理由:主要2社への売上集中が高く、価値対価型への転換の実績金額が不足しており、失注時の影響が会社全体に及びやすい。
悲観 14% 構造的な競争力を失い、資産価値が下支えする 利益 1 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 233 円39 億円
大口顧客が設計・実装・試験の多くをAIエージェントと自社技術者で処理するようになり、アドソル日進が担当する作業は限定的な安全確認と旧式設備の保守に縮小する。社会インフラの仕事そのものは続くが、請求できる人月は現在の約45%になる。主要な設備更新案件を大手競合に奪われ、過去に蓄積した技術が新世代の調達で十分な優位を生まない。
先進インダストリーでは、一般的な受託開発の需要が減り、大口の決済システム開発も競合の一体型サービスへ移る。請求人月は現在の約33%まで落ち込む。単価は10年間で13%しか上がらず、物価3%の前提に大きく負ける。新中期計画を見込んで採用した人材や買収した事業が収益を生まず、研究開発費や再編費用が利益を圧迫する。経営陣は大規模な人員・拠点再編を迫られ、本社費用を削減しても営業利益はほとんど残らない。
2036年の純利益は約1億円となり、本業の超過利益は失われる。途中の配当と自社株買いは大幅に抑え、事業再編に現金を使う。ただし、銀行借入に依存する構造ではなく、既存の純現金と上場政策保有株を直ちにすべて失うとも考えない。株主価値は高いPERによる継続価値ではなく、換金可能な資産の税後価値を中心に評価される。
- 社会インフラ事業:数量 4,194(年間の請求工数換算(人月)。自社技術者と外部協力会社の提供価値を含む推定数量)× 価格 0.01(契約売上の人月当たり平均単価(億円/人月))→ 売上 57 億円・営業利益 14 億円。請求人月0.45倍、単価1.13倍。品質管理要員は残るが開発の多くを失う。固定費は本社費と調整額にも残る。
- 先進インダストリー事業:数量 1,641(年間の請求工数換算(人月)。自社技術者と外部協力会社の提供価値を含む推定数量)× 価格 0.01(契約売上の人月当たり平均単価(億円/人月))→ 売上 22 億円・営業利益 5 億円。請求人月0.33倍、単価1.13倍。決済や一般企業の開発案件を失い、構造的に小規模化する。
倍率:2036年のROEは約1.1%で資本コスト7.25%を大幅に下回り、事業利益1.1億円の稼ぐ力では資産価値に届かない。そこで過去の株式市場の底値を使わず、2026年3月期の自己資本67.4億円に対する処分可能資産40億円の比率0.59347を床のPBRとする。掛ける対象は現在の自己資本67.4億円であり、10年後の自己資本104.4億円ではない。時価総額は税後換金可能資産40億円と一致する。
確率:AIによる工数削減に加えて、主要顧客の開発方針変更、案件喪失、成長投資の失敗が重なる構造的な負け筋。安全性が要求される制御系の仕事はなお残るため、事業が完全に消滅する確率とは区別する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
社会インフラ事業
電力・ガス、交通・運輸、公共・防災、通信など、停止時の社会的影響が大きいシステムの設計・開発・保守を担う。電力・ガスが最大の顧客分野。
| 数量年間の請求工数換算(人月)。自社技術者と外部協力会社の提供価値を含む推定数量 | 価格契約売上の人月当たり平均単価(億円/人月) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9,319 | 0.01 | 112 | 27 |
| 10 年後 中立 | 6,989 | 0.02 | 112 | 30 |
取り方:2026年3月期の報告セグメント売上111.833億円、セグメント営業利益27.080億円を採用。電力・ガス81.89億円、交通12.92億円、公共13.12億円、通信3.89億円が主な内訳。開発人月数の直接開示はないため、業界のSE・PMの人月単価と外注を含む請求工数を参考に、売上から平均120万円/人月を仮定して約9319人月と逆算した。これは実際の社員人数ではなく、外注・ライセンス・保守も工数に換算した分析用の数量である。市場はIDC Japanが示す国内ITサービス市場約7.5兆円の一部で、社会インフラ領域だけの厳密なシェアは非公表。単なる国内市場全体に対する売上比率は約0.15%。単価の参考はhttps://overx.co.jp/media/man-month-rate/、外注を含む業界構造はJISA基本統計https://www.jisa.or.jp/publication/tabid/272/pdid/R7-J003/Default.aspx、売上は2026年3月期有価証券報告書。
先進インダストリー事業
製造業の組込み・業務システム、決済関連を含むサービス事業者のIT基盤、一般企業のDX案件を担う。
| 数量年間の請求工数換算(人月)。自社技術者と外部協力会社の提供価値を含む推定数量 | 価格契約売上の人月当たり平均単価(億円/人月) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,973 | 0.01 | 60 | 16 |
| 10 年後 中立 | 2,984 | 0.02 | 48 | 13 |
取り方:2026年3月期の報告セグメント売上59.681億円、セグメント営業利益15.538億円を採用。製造13.74億円、決済等を含むサービス35.46億円、エンタープライズ10.47億円。人月・契約件数の開示はないため、平均120万円/人月という分析上の単価で約4973人月に換算した。決済処理件数や決済手数料収入の数量ではなく、システムを開発するための請求工数の代用指標である。国内ITサービス市場全体への売上比率は約0.08%だが、決済システム開発だけの競合シェアを表すものではない。GIS等のソリューション売上約11.98億円は二事業の内数であり、独立セグメントとして加算しない。セグメント利益は本社費控除前で、両事業合計42.62億円から調整額約21.22億円を差し引くと全社営業利益21.4億円になる。
リスクと懸念
AIエージェント代替による人月需要の減少
最大の構造的なリスクである。電力・交通のシステムは必要とされ続けても、その開発・試験・保守に必要な人月が少なくなれば、受託開発会社への支払額は減る。会社は価値対価型ビジネスへの転換を掲げているが、独自サービスや成果報酬が全社売上の大きな部分を占めるという金額の証拠はまだ乏しい。顧客のAI導入率よりも、受注額と請求工数の変化を確認すべきだ。
三菱電機・東京ガスiネットへの売上集中
主要2社向け売上は合計約54億円で、全社の約31%を占める。長年の取引関係は品質と実績の証明であるが、同時に顧客が開発の内製化や発注先の集約を進めたときの影響を大きくする。大口顧客に対する値上げが一度通ったとしても、AIで作業時間が短縮された後に同じ単価を維持できるとは限らない。
社会インフラ特有の品質・サイバー事故
電力網、鉄道、公共防災の制御システムには、一般的な業務ソフトより厳しい安全性が求められる。重大なシステム障害や情報漏えいが起きれば、損害賠償だけでなく、顧客による調達先の見直しにもつながる。AIによる開発効率化を急ぐほど、生成物の検証責任と既存設備との整合性確認を誰が負担するかが重要になる。
2031年の成長目標と資本配分のずれ
新中期計画は2031年に売上300億円と営業利益50億円を目指し、3年間で33億円以上の成長投資を予定する。計画には一定の積極性がある。人材確保や買収によって開発能力を増やしても、顧客の請求工数需要が減り始めれば資本効率は低下する。売上規模の拡大より、買収後の増分利益と顧客から実際に受け取る対価を重視したい。
政策保有株の価格変動と現金化の制約
日本プロセスとバリューHRの保有株時価は約19億円であり、全社の自己資本や市場評価に対して無視できない。これらの株式は換金可能な資産である一方、協業目的で保有しているため、少数株主が望む時期にすべて売却されるとは限らない。市場価格の下落と売却時の課税も考慮する必要がある。
技術者の採用競争と海外開発体制
高品質の制御技術を持つ人材は育成に時間がかかる。国内賃金が上昇しても顧客単価へ十分転嫁できなければ利益は減る。ベトナムなどの開発体制は原価低減に役立つが、品質管理、情報セキュリティ、知的財産保護に追加の費用が必要になる。AIによって人数を減らせる局面では、従来の採用拡大方針が固定費負担に変わる可能性もある。
今後の分かれ目
- 会社がオファリングビジネスの売上・粗利益・継続率を独立開示し、その売上が全体の20%を超えて継続的に伸びたら
- 人月・工数を売る事業の割合を引き下げる。独自データ、契約継続、値上げ実績が確認できれば、その部分だけ記録の正本型に分類し直し、数量とg_longを上方修正する。
- AIによる開発効率化が進んでも社会インフラの受注額と単価が増え続け、外部向け請求工数が減らなかったら
- AI代替が顧客への値下げでなく同社の利益として残っている証拠になる。社会インフラの数量前提を中立の0.75倍から引き上げ、楽観側の確率を増やす。
- 三菱電機・東京ガスiネット向けの合計売上比率が25%以下に下がり、他顧客向け利益率が改善したら
- 顧客集中による価格交渉リスクが薄れる。やや悲観・悲観の確率を減らし、成長の根拠を少数の既存顧客から幅広い顧客層へ移せる。
- 2028年3月期から2029年3月期にかけて売上・営業利益が中期計画から継続して下振れし、人員増加だけが続いたら
- 2031年計画の達成可能性を引き下げ、固定費の増加と増分投資の低い利回りをやや悲観側の営業利益率に反映する。ROEの見かけ上の高さだけで判断しない。
- 大型買収により有利子負債が増え、営業キャッシュフローや還元方針が弱まったら
- 買収ののれん、統合費用、借入金利の上昇を利益と資産の両方から評価し直す。買収対価に見合う新規利益が確認できない限り、上振れの根拠とはしない。
- 政策保有株を段階的に売却し、税後の売却資金を増配・自社株買いとして株主へ還元したら
- 保有株の換金可能価値が実際の株主利益になるため、資本配分への評価を高める。ただし株式の売却価値と、すでに純利益に含まれていた受取配当を二重に評価しない。
見ておくもの
- 社会インフラ事業のエネルギー、交通、公共向け売上高と受注高の四半期推移
- 三菱電機および東京ガスiネット向け売上高と全社売上比率
- 開発人員、外部協力会社への委託費、請求人月、契約単価の変化
- AI導入による開発生産性向上が、請求額の維持につながったかどうか
- オファリングビジネスの売上高、粗利益、解約率、成果報酬型契約の金額開示
- GISソリューション約12億円の売上内訳、COCOYA・DOCOYAの継続契約実績
- 2031年計画の売上300億円、営業利益50億円に対する実際の進捗
- 政策保有株の縮減額、配当性向50%以上、DOE6%以上、自社株買いの実行額
- 2027年3月期以降の先進インダストリー受注の回復・減速
- AI関連の新サービスが具体的な受注金額と継続収益を生んでいるか
倍率と資本コストの決め方
価値の計算では、まず2026年3月期に実際に開示された二つの報告セグメントの売上・利益を起点とした。請求人月は非開示のため、外注を含む工数を平均120万円/人月で換算した推計であり、実際の契約数量と断定していない。10年間の物価上昇は単価側に入れ、AIエージェント代替による工数減少は数量側だけに反映した。さらに2036年以降の名目成長を0%とし、資本コスト7.25%と正当化PERの式から楽観〜中立の倍率を求めた。同じ危険をlifeや倍率の恣意的な割引に重ねていない。各PER筋書きのmcap_okuは純利益×PERと厳密に整合させ、政策保有株の税後資産価値と受取配当の控除は最上位のholdingsを使ったbuildの処理に任せる。政策保有株をmcap_okuへ手動で加算しない。純現金29.4億円は新中期計画が必要とする手元運転資金30億円にほぼ一致するため、別の余剰現金として足さない。2028年3月期からの新リース会計基準による貸借対照表表示の変化は、家賃を従来どおり費用として扱う10年の収益比較に影響させない。現在の株価や過去のPERを将来倍率の根拠には使わず、最後に市場評価との乖離を確認した。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。普通の企業の資本コスト7.5%から、純現金の厚さを反映したqualityマイナス0.25ポイントを差し引いて7.25%。個別の顧客集中、買収、AI対応の実行リスクは筋書きと確率に入れ、追加の資本コストには重ねない。