結論
クロスキャットは、銀行、公共機関、大手システム会社などにシステム開発とデータ活用支援を提供する独立系ITサービス会社である。長く持つ株主の見方では、現在の時価総額約166億円はやや割高と判断する。顧客との長い取引、利益率の改善、厚い純現金は評価できるが、売上の大半が開発工数に結び付いていることが10年後の価値を制約する。
2026年3月期の売上高は173億円、営業利益は20億円となり、いずれも過去最高を更新した。銀行向けの基幹システム、公営競技関連、データ活用基盤の構築が好調で、中期経営計画の収益目標も前倒しで達成している。これは顧客からの信頼と案件管理能力の証拠であり、直ちに事業が衰える会社ではない。しかし、現在の好業績をそのまま10年先へ伸ばすこともできない。
最大の分かれ目はAIエージェントである。プログラム作成、テスト、データ加工、画面操作をAIが実行するほど、同じシステムを作るために顧客が購入する人月は減る。クロスキャット自身も人的資源への依存から脱却する方針を掲げているが、成果報酬型への転換や自社AI製品による大きな売上の実績は、まだ確認できない。中立では受託開発の実質的な販売工数が10年間で約3割減る一方、名目単価の上昇が売上の縮小を部分的に補う姿を想定する。
10年後の中立的な時価総額は約234億円となる。ただし、その間の資本コストと株主還元を考える必要があり、将来の時価総額が現在を上回るだけでは割安とは言えない。5つの筋書きの確率加重による現在の価値は約130億円で、現時点の時価総額を約21.5%下回る。現金と上場株式の価値を考慮した上での結論であり、優良な経営実績と魅力的な購入価格は別の問題だと考える。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に問うべきことは、顧客のシステムが10年後も必要かという点ではない。必要なのは確かだとして、そのシステムを維持するために顧客が今と同じ量の人間の作業を買うかどうかである。クロスキャットの金融・公共分野には仕事が残る。しかし、仕事の存在と、人月で請求できる売上の存在を混同すると価値を見誤る。
この会社には、経営上の美点も多い。景気や開発需要の変化を乗り越えて黒字を保ち、純現金を蓄え、増配と自社株取得を続けてきた。過去10年の増収に対する利益の増え方からは、経営が利益率を改善できたことも読み取れる。財務に余裕があるため、AI導入による移行期の投資を借金で無理に賄う必要も小さい。
それでも、利益率とROEの高さだけで強い堀を認定することはできない。AIが作業を効率化した利益を顧客と元請けが受け取れば、開発会社の取り分は減る。独立した製品が顧客の業務記録の正本となり、解約の難しさや価格改定の実績が公表されるまでは、工数に依存する企業として慎重に扱うべきだ。事業の信頼性と価格支配力を分けて考える必要がある。
所有者として重視するのは、資本コストを上回る再投資が続くかどうかである。過去の小規模買収や案件選別は比較的良好だったが、今後の設備より大きな投資対象は、人材教育、自動化、顧客データ基盤への技術蓄積になる。それが自社の販売単位を成果に変えるなら企業価値は上向くが、単に安い開発を提供するだけなら収益を顧客へ移すにとどまる。現状の価格には、この転換の成功を十分に確認するまでの安全域がやや不足している。
何で稼ぐ会社か
会社の稼ぎの中心は、金融機関や公共性の高い顧客が使うシステムの開発、改修、保守である。顧客が必要とする業務を理解し、設計から開発、稼働後の改善まで引き受ける。基幹システムは長期間使われるため、案件が終わっても次の改修や更新につながりやすい。富士通とNTTデータは重要な取引先であり、両社の大型案件に参加する立場と、顧客へ直接提案する立場の両方を持つ。
2026年3月期の会社開示では、SI分野が約149億円、DX分野が約25億円を売り上げた。より細かい事業別開示では、システム開発が約148億円、BIビジネスが約16億円、その他が約8億円、スタッフサービスが約0.3億円である。本分析ではスタッフサービスをシステム開発に含め、受託開発、BI・データ基盤、自社製品・その他の3つに分けて評価する。この分け方は会社の正式な報告セグメントではなく、事業の経済性を捉えるための分析上の区分である。
受託開発は規模が大きく、利益の大部分を支えている。金融では既存の業務知識と品質管理が重視される一方、発注者の仕様と元請け企業の判断に左右される。BI分野では、企業のデータを集め、整理し、分析や意思決定に使える基盤を構築する。AIの実用化にはデータ整備が欠かせないため当面の需要は強いが、構築作業そのものはAIで省力化され得る。
自社製品には勤怠管理クラウドのCC-BizMate、予算管理製品、DX推進を支援するCC-Dashなどがある。2026年9月にはAIを使ったスケジュール編成支援サービスも発表した。ただし、製品別の契約ID数、解約率、継続課金売上、AI製品の売上金額は公表されていない。自社製品を持つことと、その製品が会社全体の利益を守るほどの競争優位を持つことは同じではない。
2026年3月期のSI分野の売上総利益は約35億円、DX分野は約5億円である。DXは売上が伸びたものの、クラウド事業への先行投資で売上総利益の伸びが小さかった。販管費を各事業に配分すると、依然として受託開発が全社の営業利益を支える構図になる。10年後の姿を決めるのは、新しい製品の数ではなく、この利益構成を実際に変えられるかどうかである。
優良さと弱いところ
クロスキャットの強みは、金融・公共の顧客が求める業務理解と品質を長い期間にわたり蓄積してきたことである。銀行や公的機関のシステムでは、設計上の判断や既存データとの整合性が重要で、単純に安い開発会社へ切り替えることは難しい。富士通やNTTデータを通じた取引実績も、新規参入企業には簡単に再現できない信用となる。ただし、その信用が開発工数の減少まで防いでくれるわけではない。
過去10年の資本効率の改善は目を引く。2017年3月期から2026年3月期にかけて、売上高は約102億円から173億円へ、営業利益は約6億円から20億円へ増えた。増収分に対する営業増益の比率は約2割であり、案件の選別、稼働率の改善、経費管理が収益性向上につながってきたと考えられる。自己資本は約28億円から67億円へ増え、純現金も約26億円まで積み上がった。
弱点は、価格を自分で決められる範囲の狭さである。2026年3月期の契約先別売上では、エンドユーザー系の割合が前年の43.4%から36.7%へ低下した。残りはメーカー系やSIer系を通じた取引であり、元請けとの交渉が単価を左右する。中期経営計画はエンドユーザー比率の拡大を掲げているが、現時点ではその転換が数字で定着したとは言いにくい。
自社が顧客の会計記録や決済記録の唯一の正本を握るわけではなく、金融システムの重要性をそのままクロスキャット自身の独占力と評価することはできない。年5%未満の解約率、法改正ごとの値上げ実績、独自データの蓄積、年単位の移行費用など、強い製品型の堀を裏付ける公開数値も不足している。顧客との取引継続力は普通以上だが、10年先まで超過利益が守られる強い堀とは判定しない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は、IDC Japanの推計で2025年に約7兆5,663億円となった。2030年には約10兆2,541億円へ拡大する予測で、金融機関の基幹システム刷新、公共部門の更新、データ・AI活用が需要を押し上げる。クロスキャットのSI分野の売上高をこの市場と単純比較すると約0.20%にすぎない。対象領域には違いがあるため厳密なシェアではないが、同社が巨大市場の中で専門案件を獲得する中小型の供給者であることは明らかだ。
大手にはNTTデータ、富士通、NEC、野村総合研究所、TIS、BIPROGYなどがある。クロスキャットは大手と直接競争するだけでなく、その開発・運用を担う協力会社にもなる。各社の国内ITサービス売上を同じ基準で切り出した公表シェアは確認できないため、競合の正確な順位やシェアを推測で断定しない。長期的には発注側がAI開発基盤を標準化するほど、規模と顧客接点を持つ企業が利益を取りやすくなる。
BI・データ基盤の周辺市場も拡大している。IDCの2025年推計では国内データプラットフォームのソフトウェア市場は約7,371億円で、2029年には約9,934億円となる見通しだ。クロスキャットのBI売上約16億円は、この隣接市場の約0.22%に相当するが、分母はソフトウェア、分子は主に構築サービスであり、正式なシェアではない。競合は大手SI企業のデータ部門、ブレインパッドなどの分析専門会社、クラウド事業者の技術支援組織である。
勤怠管理ソフトでは競争の形がさらに異なる。富士キメラ総研の2024年度実績を使った競合開示では、勤怠管理SaaSの市場は約1,365万IDで、KING OF TIMEのシェアは28.2%だった。クロスキャットの製品別有料ID数は非公表である。本分析の約3.2万IDは他事業も含む売上を単価で割った換算値にすぎず、仮に全て勤怠SaaSだったとしても市場の約0.23%にとどまる。規模の優位は確認できない。
最大の構造変化は、IT支出の増加と開発工数の減少が同時に起こり得ることである。企業はAI関連システムへ多くの金を使っても、コード作成、試験、報告書、データ加工に必要な人月を減らせる。大きくなる市場の売上が、そのまま受託企業の売上にはならない。10年後のSI市場全体が拡大しても、クロスキャットの取り分は縮む可能性がある。この逆方向の動きを中立的な筋書きの中心に据える。
資本政策と M&A
資本配分には評価できる実績がある。2015年にユニチカ情報システムを買収して現在のクロスユーアイエスとし、2020年にはアクティブを子会社化してクロスアクティブへ改称した。2021年には仙台支店を分社化してクロスリードを設立した。地域、業務知識、人材を補う小規模な拡張が中心で、過去10年に事業の姿を変えるほどの大型買収は確認できない。
中期経営計画「Growing Value 2026」は、売上高173億円、営業利益20億円、ROE20%以上、配当性向35%以上を財務目標とした。収益目標は2026年3月期に前倒しで達成した。DOE、総還元性向、自社株買い金額については具体的な数字の約束がない。2026年3月期の年間配当は増配され、2027年3月期も増配予想である。2021年からの発行済み株式から自己株式を除いた株数は約7%減っており、自社株取得による取り分の改善も認められる。
一方、余剰資本の運用には注意が必要だ。2025年にはSBI Venture Fund 2023へ5億円の出資を決めており、未公開企業への投資は本業のシステム開発とは異なるリスクを持つ。上場株式の保有も続いている。これらの資産を保有すること自体が悪いわけではないが、税引後に株主が回収できる価値と、帳簿上の価値を区別しなければならない。
長期の経営ビジョンには2034年度の売上高300億円以上、営業利益30億円以上、時価総額450億円以上という目標がある。経営者が何を目指すかを示す数字として尊重するが、AIによる工数価格体系の変化を考えると、その実現を中立に採用する根拠はまだ足りない。配当と自社株取得の実績を踏まえ、将来の余剰現金が株主へ還元される度合いは高く評価する。ただし、過大な買収や運用損失が生じる悲観の筋書きでは、その価値を別途失わせる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金融・公共の基幹システムは、単純なコード生成だけで置き換えられるものではない。古い仕様、長年蓄積された業務判断、複雑な接続、厳しい品質基準があるため、既存顧客を深く理解する会社には仕事が残る。クロスキャットは金融、公営競技、スポーツ振興くじで受注を拡大しており、2026年3月期には過去最高の利益を上げた。顧客からの信頼を土台に、データ活用やクラウド移行の案件へ横展開できる。
AIの普及は工数の値下げ圧力を伴うが、システムの更新と管理の責任までなくすわけではない。金融の勘定系や公共システムでは、仕様の妥当性、移行時の障害、機密情報の取り扱いに人間の責任が残る。これまでの開発経験を標準化できれば、少ない技術者でより多くの案件をこなせる。中期経営計画が掲げる人的資源依存からの脱却は、この方向を理解した判断だ。
自社製品とデータ活用支援を伸ばす余地もある。CC-BizMateやCC-DashにAI技術を組み込み、顧客の業務改善を一体で担えば、元請けを経由しない取引を増やせる。現時点では製品売上の証拠が足りないため、上振れの前提にも販売工数そのものの増加は含めない。それでも、仕事の高度化と単価改善によって利益率を維持する余地はある。
財務は大きな強みだ。純現金があり、上場株式も保有し、これまで増配と自社株取得を進めてきた。AIへの転換期に大型設備投資を強いられる製造業と異なり、利益のかなりの部分を株主に戻すこともできる。将来の留保現金の価値まで考えると、受託開発の事業価値だけから予想するほど下値が深くない可能性がある。
慎重な見方
クロスキャットが顧客に売っているのは、実質的には人間の作業時間である。AIエージェントが開発、試験、運用、資料作成を自動化すると、顧客が購入する工数は大幅に減る。金融システムの重要性は変わらなくても、従来10人が行っていた仕事を少人数とAIで済ませられるなら、売上の基礎となる人月は失われる。顧客が信頼する会社であることは、失われる作業量を補う保証にならない。
この影響は二次請けや協力会社に先に表れる可能性がある。発注企業や大手元請けはAI開発基盤を共同利用し、案件全体の工数を削減できる。クロスキャットのような企業が生産性向上分を価格へ転嫁できなければ、売上と粗利益が同時に圧迫される。2026年3月期にはエンドユーザー系の売上構成比が低下しており、直販への転換が既に定着したとは言えない。
DX分野も完全な逃げ道ではない。データ基盤構築は企業の需要が強いものの、データ加工や連携設定はAIが処理しやすい。勤怠管理や予算管理のような画面中心のソフトは、AIが画面を介さず業務を実行する時代に利用ID数や価格を守れるか不透明だ。CC-BizMateの有料ID数、解約率、継続売上が開示されていない以上、製品事業へ高い価値を与えることは難しい。
資本効率の悪化にも注意が必要だ。事業が縮む過程で人員と固定費の削減が遅れれば、営業利益は売上以上に落ちる。資金に余裕がある会社ほど、縮小した本業の代わりを求めて高値の買収や未公開投資に向かう危険もある。自己資本が積み上がっても稼ぐ力が回復しなければ、その帳簿額が株主にとっての価値になるとは限らない。
どちらに重みを置いたか
現在の収益力、金融・公共の顧客基盤、純現金、株主還元の実績では強気の見方に説得力がある。一方、10年の保有価値を左右するのは、AIにより販売工数が減っても同じ収益を確保できるかという点だ。自社AIサービスの発表は確認できるが、収益化金額と工数課金からの転換実績が不足しているため、長期の見方では慎重な意見を優先する。
確率は楽観側26%、中立32%、悲観側42%とし、下側に16ポイント寄せた。これは既に中立の数量を縮めたことへの追加罰ではなく、金融顧客との関係が残る道筋と、元請けによる開発自動化が一気に進む道筋の双方があり、後者の損失が大きいという会社固有の不確実性を表す。余剰現金の回収価値を含めた現在価値は約130億円で、現時点ではやや割高と判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,507 円211 億円(+ 還元の換算額還元の合計 344 円48 億円)。 今の値に割り戻すと 951 円133 億円、今との差 −12.6%、 期待の年率 +6.1%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,216 円451 億円 | 713 円100 億円 | +261.1% | +15.8% | 354 円50 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,544 円357 億円 | 544 円76 億円 | +183.9% | +12.5% | 525 円74 億円 |
| 中立 | 32% | 1,723 円241 億円 | 370 円52 億円 | +92.4% | +7.6% | 670 円94 億円 |
| やや悲観 | 27% | 727 円102 億円 | 198 円28 億円 | −15.0% | −1.8% | 250 円35 億円 |
| 悲観 | 15% | 252 円35 億円 | 99 円14 億円 | −67.8% | −12.0% | 53 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,507 円211 億円 | 344 円48 億円 | +70.1% | +6.1% | 1,851 円259 億円 |
今の株価時価総額 1,088 円153 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 金融・公共の関係を守り、仕事の高度化で単価を確保 利益 27 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,216 円451 億円
金融機関の基幹システム刷新、公共システムの更新、既存資産のクラウド移行が10年間続く。クロスキャットは長年の業務知識と品質管理力によって重要案件を維持し、単純な開発作業ではなく、設計・移行・監査対応を含む責任の重い工程へ仕事を寄せる。大手SI企業はAIを使って開発作業を減らすが、同社も社内の標準化を進めて、稼働時間の減少を利益率の改善で補う。
BI・データ基盤では、金融や公共の既存取引先にデータ整備の需要が残る。CC-Dashなどの仕組みを提案の入口に使い、直接取引の割合も回復する。2026年に発表したAI関連サービスが案件獲得を助ける可能性はあるが、製品の確定売上がないため、AIエージェント自体の新規売上増は数量に加算しない。自社製品の契約数も現在と同水準にとどまる。
優良な案件を選別し、採算管理を徹底することで利益率は現状を上回る。過去の小規模買収を通じて得た人材と顧客関係も無理なく維持され、大型の失敗買収はない。増配と自社株取得を継続しながら、事業に使わない現金が積み上がる。長期経営ビジョンに近い企業価値へ向かうが、その実現には価格交渉と経費管理の両方が成功する必要がある。
- 受託システム開発・スタッフサービス:数量 12,000(年間請求人月換算(人月。社員・外注の稼働を含む推定))× 価格 0.02(請求人月当たり平均売上高(億円/人月))→ 売上 199 億円・営業利益 30 億円。人月数量は現在の1.00倍、価格は物価上昇分を含め1.34倍。高難度案件への集中で営業利益率15%。
- BI・データ活用基盤構築:数量 1,200(年間請求人月換算(人月。技術者稼働の推定))× 価格 0.02(請求人月当たり平均売上高(億円/人月))→ 売上 22 億円・営業利益 3 億円。人月数量は現在の1.00倍、価格1.34倍。金融データ基盤の高付加価値案件へ集中。
- 勤怠管理クラウド・自社製品・その他:数量 32,000(有償ID相当の年間契約数換算(実際の有料ID数ではない))× 価格 0.00(有償ID相当1件当たり年額売上高(億円/ID年))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。ID相当数量は現在の1.00倍、価格1.15倍。AI製品の未確認売上を追加しない。
倍率:資本コストk7.75%、AIエージェント代替後の長期名目成長率g0%。事業ROEは資本コストを上回るが、g0%の正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷0.0775=12.90倍。上限を手で割り引かない。現金・株式の税後収益を純利益から除外し、事業利益の資本価値に将来の余剰現金約106.00億円と保有上場株式の税後評価額約10.87億円を加える。
確率:金融・公共の顧客基盤を守りながらAIによる効率化を自社の利益として回収できる上振れである。ただしAI製品の売上金額が確認できないため、工数型と席課金型の販売数量はいずれも現在以下に制限した。
やや楽観 17% 工数は減るが重要案件と単価改善が支える 利益 20 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,544 円357 億円
金融機関や公共機関のシステム更新は続き、既存顧客との取引関係も大きく崩れない。開発ではAIを使うことが一般化し、顧客が購入する人月は減るものの、安全性や移行責任の重い工程では経験ある技術者が引き続き必要とされる。クロスキャットは元請けとの関係を維持しつつ、単価の高い設計や専門領域へ人材を振り向ける。
データ活用基盤の構築も成長市場に残るが、作業の自動化によって従来ほど人手は要らなくなる。BI分野は数量を減らしながらも単価の改善で売上の落ち込みを抑える。勤怠管理など自社製品では大手SaaSとの競争が続き、契約数の大幅な増加は期待しない。会社の製品戦略は顧客接点を維持する助けとなるが、独立した大きな利益の柱にはならない。
経営は案件の粗利益を重視し、減った稼働に合わせて採用や外注費を調整する。営業利益は高水準を保つものの、収益性はAI普及前の直近最高期からはやや後退する。配当と自社株取得は継続し、留保した利益の多くは将来の余剰現金となる。無理な大型買収を避けることが、この筋書きの企業価値を守る条件となる。
- 受託システム開発・スタッフサービス:数量 10,800(年間請求人月換算(人月。社員・外注の稼働を含む推定))× 価格 0.02(請求人月当たり平均売上高(億円/人月))→ 売上 176 億円・営業利益 22 億円。数量0.90倍、価格1.32倍。複雑な金融・公共案件を守り、利益率12.5%。
- BI・データ活用基盤構築:数量 1,128(年間請求人月換算(人月。技術者稼働の推定))× 価格 0.02(請求人月当たり平均売上高(億円/人月))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。数量0.94倍、価格1.32倍。データ基盤の更新需要が継続。
- 勤怠管理クラウド・自社製品・その他:数量 28,800(有償ID相当の年間契約数換算(実際の有料ID数ではない))× 価格 0.00(有償ID相当1件当たり年額売上高(億円/ID年))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。ID相当数量0.90倍、価格1.13倍。大手SaaSとの競争で伸びは限定的。
倍率:k7.75%、g_long0%を使う。人月の減少を営業利益に既に反映したため、楽観~中立の倍率をさらに裁量で引き下げない。正当化PER上限12.90倍を適用し、余剰現金約100.72億円と保有株式の税後価値約10.87億円を別計上する。
確率:金融・公共のシステム更新は継続し、開発工数の削減が緩やかに進む筋書きである。既存顧客との長期関係と資本配分の実績から一定の可能性を認めるが、人月課金への依存が大きいため楽観の中心にはしない。
中立 32% AIが開発工数を削り、現金が企業価値を下支え 利益 11 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,723 円241 億円
2036年にも銀行の基幹システム、公共サービス、データ基盤は存在し、クロスキャットには相応の仕事が残る。しかし、同じシステムを作るための開発・試験・運用工数はAIエージェントによって減少する。元請けの富士通やNTTデータも自動化を進めるため、協力会社へ発注する工数は大きく削られる。金融・公共向けの深い業務知識を持つことが受注継続を助けるものの、数量の減少を止めることはできない。
受託開発では10年間で販売人月が3割減る。名目単価は人件費上昇と高度な業務への集中で上がるが、数量の減少を完全には埋められない。BI分野もデータ整備需要を取り込む一方、構築工程の自動化により工数は4分の1減る。勤怠管理などの製品事業では、AIが操作画面を飛ばすため契約ID数が減り、価格も物価ほど上げられない。自社AI製品の販売額が開示されていない以上、その成功は見込まない。
会社は採用抑制、外注費の調整、案件の標準化を通じて固定費を削り、黒字を維持する。売上総利益率には一定の効率改善を見込むものの、販管費や人材維持費の上昇もあり、営業利益は直近の約20億円を下回る。大きな買収による業態転換は起こらず、配当と自社株取得が継続する。使い切れない利益は現金として蓄積し、営業利益よりも資産の厚さが企業価値を支える会社となる。
- 受託システム開発・スタッフサービス:数量 8,400(年間請求人月換算(人月。社員・外注の稼働を含む推定))× 価格 0.02(請求人月当たり平均売上高(億円/人月))→ 売上 135 億円・営業利益 12 億円。AIエージェント代替を中心に販売人月0.70倍、価格1.30倍。元請け経由の値上げ制約を反映し営業利益率9%。
- BI・データ活用基盤構築:数量 900(年間請求人月換算(人月。技術者稼働の推定))× 価格 0.02(請求人月当たり平均売上高(億円/人月))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。構築工数0.75倍、価格1.30倍。データ整備需要は続くが自動化で利益率6%。
- 勤怠管理クラウド・自社製品・その他:数量 25,600(有償ID相当の年間契約数換算(実際の有料ID数ではない))× 価格 0.00(有償ID相当1件当たり年額売上高(億円/ID年))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。ID相当数量0.80倍、価格1.10倍。席課金・画面中心のソフトにAIによる代替圧力。
倍率:資本コストk7.75%、AIエージェント代替後の長期成長率g_long0%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷0.0775=12.903倍を適用する。時価総額の検算では純利益11.26億円×PER12.903倍=145.28778億円に、筋書きで明示した余剰現金88.87億円を加算し、234.15778億円となる。入力上の時価総額は234.16億円とし、保有株式の価値はholdingsの資産評価で別途扱う。
確率:下に寄せる理由:SIの約149億円とBIの約16億円は、いずれも顧客が開発・構築の工数を買う比重が高い。大手元請けがAI開発環境を導入すると案件全体の工数が減りやすく、会社の金融顧客への強みだけでは数量を守れない。一方、銀行・公共の更新需要と純現金があるため、急激な消滅ではなく収益縮小を中立とする。
やや悲観 27% 大手元請けの自動化で下請け工数が縮む 利益 4 億円 · PER 8.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 727 円102 億円
金融機関は既存システムの刷新を続けるものの、大手元請けが設計補助、実装、試験をAI開発基盤へ移し、協力会社に発注する工数を削る。クロスキャットは品質と実績によって一定の案件を維持するが、従来型の開発作業では単価交渉が難しくなる。案件数が急減するわけではなくても、一件から得られる売上が減り、技術者の稼働率は低下する。
BI・データ基盤ではクラウド事業者が自動化された構築機能を強化し、顧客自身が作れる範囲が広がる。クロスキャットは既存顧客向けの移行・調整作業を受け続けるが、売上の縮小に利益率の悪化が重なる。勤怠管理などの製品事業では大手の低価格製品とAIエージェントが競合し、利用ID数が減る。自社製品が独立した高収益事業になるという期待は実現しない。
経営は採用を絞り、外注先への発注を減らして事業規模を調整する。それでも既存社員の賃金、営業体制、セキュリティ対応などの費用は残り、営業利益率は低下する。配当は減益に応じて縮小し、自社株取得も抑える。積み上がった現金の一部は低採算事業の維持に使われ、将来留保額のうち株主に戻る価値は中立より小さくなる。
- 受託システム開発・スタッフサービス:数量 6,840(年間請求人月換算(人月。社員・外注の稼働を含む推定))× 価格 0.02(請求人月当たり平均売上高(億円/人月))→ 売上 103 億円・営業利益 4 億円。数量0.57倍、価格1.22倍。元請けによる自動化と稼働率の低下で営業利益率4%。
- BI・データ活用基盤構築:数量 720(年間請求人月換算(人月。技術者稼働の推定))× 価格 0.02(請求人月当たり平均売上高(億円/人月))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。数量0.60倍、価格1.15倍。クラウド事業者の自動化で収支均衡。
- 勤怠管理クラウド・自社製品・その他:数量 21,760(有償ID相当の年間契約数換算(実際の有料ID数ではない))× 価格 0.00(有償ID相当1件当たり年額売上高(億円/ID年))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。ID相当数量0.68倍、価格1.05倍。製品維持費が残り営業赤字。
倍率:事業が競争力を失い、営業利益率が大幅に低下するため、継続利益に対して稼ぐ力の価値を限定する。事業由来の純利益約2.81億円にPER8.0倍を適用し、余剰現金59.86億円、保有上場株式の税後価値約10.87億円を別計上する。将来の留保超過額は、事業維持や不利な投資に使われるリスクを踏まえ、中立に対して回収割合を75%とする。
確率:AIによるコード作成、テスト、データ加工の省力化が元請け企業に先行して広がり、協力会社への発注が減る筋書きである。エンドユーザーへの直接販売比率がまだ低く、受注を自社で決められない点を重く見る。ただし金融・公共の専門案件が残るため、営業黒字は維持する。
悲観 15% 工数商売が構造的に敗れ、資産回収が主な価値になる 利益 1 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 252 円35 億円
大手元請けは自社のAI開発環境を標準とし、プログラム作成からテストまでの多くを自動化する。銀行や公共機関には重要システムが残るものの、従来の協力会社へ発注する仕事は大きく減る。クロスキャットは顧客との関係を維持しても、作業量そのものの減少を防げない。稼働が減った技術者を高付加価値案件へ移すことも十分には進まず、主力事業は現在より著しく小さくなる。
データ活用基盤はクラウドサービスの標準機能へ組み込まれ、専門会社が個別に構築する部分が減る。BI事業は赤字となり、勤怠管理など自社製品も利用ID数と利益率を失う。2026年に発表したAI関連サービスは大きな収益源に育たず、後発の製品開発費だけが残る。金融・公共の重要業務で最低限の保守需要は続くが、会社全体を成長させる力にはならない。
経営は人員と事業拠点を縮小し、固定費を削る。それでも過去のような営業利益率は取り戻せず、資本効率が極端に悪化する。残った現金を使って事業転換のための買収や未公開投資に挑むが、十分な収益につながらない。帳簿上の自己資本が厚くても、株主がその全額を回収できるとは考えにくい。残存事業の稼ぐ力より、現在の純現金と換金できる上場株式を価値の基礎とする。
- 受託システム開発・スタッフサービス:数量 4,680(年間請求人月換算(人月。社員・外注の稼働を含む推定))× 価格 0.01(請求人月当たり平均売上高(億円/人月))→ 売上 64 億円・営業利益 1 億円。数量0.39倍、価格1.10倍。構造的に工数需要が失われる。
- BI・データ活用基盤構築:数量 480(年間請求人月換算(人月。技術者稼働の推定))× 価格 0.01(請求人月当たり平均売上高(億円/人月))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量0.40倍、価格1.04倍。独立した構築サービスの優位を喪失。
- 勤怠管理クラウド・自社製品・その他:数量 14,400(有償ID相当の年間契約数換算(実際の有料ID数ではない))× 価格 0.00(有償ID相当1件当たり年額売上高(億円/ID年))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。ID相当数量0.45倍、価格1.00倍。競合とAIエージェントに置き換えられ、維持費を回収できない。
倍率:10年後の純利益は約0.65億円、ROEは1%未満であり、事業の継続利益には高い価値を与えられない。将来の自己資本128.50億円ではなく現在の自己資本66.6億円を基準にPBR0.53倍とし、時価総額35.30億円を求めた。現在の純現金26.0億円と税引後で売却可能な上場株式8.31億円の合計34.31億円を悲観の床とする。将来の留保利益は失敗した再投資や事業維持費で価値を失うため、追加の回収価値として数えない。
確率:AIエージェントの普及、大手元請けによる内製化、低価格製品との競争が重なり、10年間で主力の売上が半分近くまで落ちる筋書きである。金融・公共の顧客が完全に消えるわけではないが、旧来の人月販売から脱却できず、留保資本を有効に使えない可能性を考慮する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
受託システム開発・スタッフサービス
銀行、公共機関、公営競技などのシステム開発・改修・運用を担う。スタッフサービスを含め、AIエージェント代替の分類は人月・工数型である。
| 数量年間請求人月換算(人月。社員・外注の稼働を含む推定) | 価格請求人月当たり平均売上高(億円/人月) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12,000 | 0.01 | 149 | 18 |
| 10 年後 中立 | 8,400 | 0.02 | 135 | 12 |
取り方:会社の2026年3月期決算補足資料ではシステム開発148.20億円、スタッフサービス0.32億円。両者を合計して148.52億円とした。請求人月は非開示のため、グループ従業員数と外注先の稼働を考慮して年間12,000人月と推定し、売上高から平均123.8万円/人月を逆算した。実際の契約件数や人数を開示した数字ではない。SI分野の売上総利益35.35億円から、全社販管費20.63億円を売上比例で配分した推定営業利益が17.65億円。国内ITサービス市場7兆5,663億円に対する売上比は約0.20%で、正式な市場シェアではない。中立のAIエージェント代替分類は人月型で、数量10年0.70倍、価格1.30倍、長期g0%。資料:https://www2.jpx.co.jp/disc/23070/140120260513528318.pdf、https://edinetdb.jp/company/E05291/text?fy=2026、https://www.imagazine.co.jp/idc-report-on-20260309/
BI・データ活用基盤構築
データ基盤の設計・導入、BIシステム構築、データ活用支援を提供する。DX需要を取り込むが、収益の中心は依然として構築作業と技術者の工数である。
| 数量年間請求人月換算(人月。技術者稼働の推定) | 価格請求人月当たり平均売上高(億円/人月) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,200 | 0.01 | 16 | 2 |
| 10 年後 中立 | 900 | 0.02 | 16 | 1 |
取り方:2026年3月期の事業別開示にあるBIビジネス16.21億円を使用。請求人月数は非公表であり、高度なデータエンジニアリングを担う案件単価をSIよりやや高く見て年間1,200人月と推定、平均135.1万円/人月となる。DX分野の売上総利益5.42億円をBIとその他の売上比率で分け、販管費を配分した推定営業利益が1.64億円。IDCの2025年国内データプラットフォーム・ソフトウェア市場7,371億円に対する売上比約0.22%は隣接市場との参考比較であり、サービス市場の正式シェアではない。AI代替分類は人月型で、中立の数量0.75倍、価格1.30倍、長期g0%。資料:https://www2.jpx.co.jp/disc/23070/140120260513528318.pdf、https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/2023316.html
勤怠管理クラウド・自社製品・その他
CC-BizMate、予算管理製品、DX関連サービスおよびその他売上を含む。実際には席課金以外も混在するが、内訳が非開示のため、価値評価では保守的に席課金・操作画面型として扱う。
| 数量有償ID相当の年間契約数換算(実際の有料ID数ではない) | 価格有償ID相当1件当たり年額売上高(億円/ID年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 32,000 | 0.00 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 25,600 | 0.00 | 7 | 0 |
取り方:2026年3月期の事業別開示にある「その他」8.40億円を使用。独立行政法人中小企業基盤整備機構の製品紹介ではCC-BizMateの年間利用料は5ユーザー想定で税込13.2万円、1ID当たり約2.64万円である。この単価を参考に全売上を割ると約3.2万ID相当となるが、その他には異なる製品・サービスも含まれるため実契約数ではない。DX分野の売上総利益5.42億円から売上比例で割り振った推定営業利益は0.85億円。2024年度の勤怠管理SaaS市場約1,365万IDと比較した0.23%は、全売上が同種SaaSであると仮定した上限的な参考値にすぎず、正式シェアは不明である。AI分類は席課金・操作画面型とし、中立の数量0.80倍、価格1.10倍、同領域固有の長期gは0~マイナス1%の範囲と判断。資料:https://www2.jpx.co.jp/disc/23070/140120260513528318.pdf、https://digiwith.smrj.go.jp/cocoapp/app/cc-bizmate.php、https://www.kingoftime.jp/
リスクと懸念
AIエージェント代替による人月需要の減少
システム開発、BI構築、テスト、保守の多くはAIエージェントが代替し得る。顧客のシステム支出が増えても、外部の技術者に発注する工数は減る可能性がある。2026年3月期の売上の大半がこの型に属しているため影響は全社的である。中立の数量には受託SI0.70倍、BI0.75倍を織り込み、2036年以降の名目成長率も0%としている。
元請け依存と価格交渉力の不足
富士通とNTTデータは大口取引先であり、取引先としての信用を支える一方で、発注単価や案件構成が元請けの判断に左右される。2026年3月期にはエンドユーザー系の売上構成比が36.7%へ低下した。元請けが自社のAI開発基盤を導入し、外注工数を削れば、顧客関係を維持したまま売上が減る可能性がある。
自社製品の競争優位を裏付ける数字の不足
CC-BizMateやCC-Dashはあるが、有料ID数、解約率、継続収益、製品単位の営業利益率が公表されていない。勤怠管理ではKING OF TIMEなど規模の大きなSaaSと競合する。AIが操作画面を飛ばして業務を実行すれば、利用席数を課金単位とする価値そのものが弱まる。自社製品を持つという事実だけで強い堀を認定するのは危険である。
賃金上昇と稼働率低下が重なるリスク
物価上昇に伴う賃金、採用費、セキュリティ対応費は増える一方、AIで顧客の購入工数が減ると社員の稼働率が落ちる。日本の雇用慣行では余った人員を直ちに減らすことは難しい。会社が高付加価値案件への再配置に失敗すると、売上の縮小以上に営業利益率が悪化する。悲観側ではこの固定費負担を重く見ている。
余剰現金の不利な再投資
純現金と上場株式は下値を支えるが、経営者が利益率の低い事業を延命したり、割高な買収や未公開投資に資金を使えば帳簿の価値は株主に戻らない。SBI Venture Fund 2023への5億円の出資は、今後の資本配分を観察する材料である。事業の成長性が低下した場合ほど、配当・自社株取得と新規投資の優先順位が重要になる。
金融・公共システムに固有の障害と情報管理
銀行や公共性の高い顧客のシステムでは、開発・運用上の障害や情報漏えいが取引関係に大きな影響を及ぼす。厳格な品質管理の実績は受注上の強みだが、事故が起きれば補償、是正費用、失注が重なる。AIを開発工程へ導入する場合も、生成内容の検証やデータの管理責任は残る。品質を守る費用を単価へ転嫁できないことも長期的な利益率のリスクとなる。
今後の分かれ目
- 金融・公共向けの継続案件が増え、開発工数当たり単価と営業利益率が同時に改善し続けたら
- 顧客との関係が価格決定力へ転換している証拠として、やや楽観以上の確率を上げる。ただし単価上昇だけでなく、必要人月の減少を補っているかを確認する。
- SIとBIの売上が伸びる一方で、開示された技術者稼働や外注工数が減り、粗利益が増加したら
- 工数請求から成果価値への転換が始まった可能性を検討する。AIによる効率改善を顧客に全て渡さず自社利益へ残せているかを確かめ、中立の利益率を引き上げる。
- 自社AI製品またはCC-BizMateの継続課金売上、解約率、有料ID数が金額付きで開示され、成長が確認できたら
- 製品事業の数量を実際の契約数へ置き換え、受託型と区別して再評価する。強い堀の判定には、低解約率や乗り換え費用など複数の独立した証拠を求める。
- 主要元請けがAI開発環境を導入した後に、クロスキャットへの発注額や新規受注残が継続的に減少したら
- 販売人月の減少が中立より早いと判断し、やや悲観と悲観の確率を上げる。とくにエンドユーザー系の売上構成比が回復していない場合は慎重に見る。
- 保有株式の売却益が配当や自社株取得として株主へ戻らず、未公開投資や大型買収に振り向けられたら
- 余剰現金の株主回収割合を引き下げ、事業投資の増分ROICを確認する。利益の成長につながらない資本の積み上がりは企業価値を増やさない。
- 2027年3月期の中期計画終了後も配当性向35%以上を守り、減益局面でも財務の健全性と株主還元を維持できたら
- 下値を支える資本配分の信頼性を高く評価する。利益が減少しても株主資本を非効率に積み上げない会社であれば、悲観側の損失幅を縮められる。
見ておくもの
- 四半期のSI分野とDX分野の売上高・売上総利益率、およびBIと自社製品の内訳
- 富士通・NTTデータ向け売上とエンドユーザー系売上構成比の変化
- 開発技術者の人数、稼働率、外注費、一人当たり売上高・営業利益の推移
- 受注残高と新規受注額を開発工数の変化と合わせて確認すること
- CC-BizMateの有料ID数、解約率、継続課金売上、AI関連製品の売上金額の開示
- 中期計画終了後の売上高・営業利益・ROEと株主還元方針の数字
- 保有上場株式の売却額、未公開ファンドの評価損益、現金残高、配当と自社株取得額
- AI開発環境の導入後に、単価を保ったまま案件の粗利益率が改善するかどうか
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や過去の市場PERから2036年の利益倍率を決めていない。まず会社の事業別売上を受託SI148.52億円、BI16.21億円、製品・その他8.40億円に分け、非開示の数量については請求人月と有償ID相当数を明示的な推定として組み立てた。中立ではAIエージェント代替により人月数量が0.70~0.75倍、席相当数量が0.80倍となる一方、価格には物価を含む名目上昇を一度だけ反映した。
資本コスト7.75%、長期成長率0%から正当化PERの上限を算出し、楽観から中立に適用した。金融・公共の顧客との関係は評価するが、記録の正本を保有する独占的なソフトウェア企業とは扱っていない。現金は給与・外注費のための運転資金を残した額だけを余剰とし、保有上場株式はholdingsに分けて評価対象とした。中立の時価総額は、純利益11.26億円にPER12.903倍を適用した145.28778億円と、筋書きの余剰現金88.87億円の合計234.15778億円に修正した。
悲観の時価総額35.30億円は、純現金と税引後で換金可能な上場株式の合計34.31億円を下回らない。新リース会計基準によって将来の貸借対照表の表示が変わる可能性はあるが、10年後の営業利益は現在と同じ費用認識の考え方にそろえている。5つの筋書きの時価総額と還元額を資本コスト7.75%で割り引き、確率加重すると現在価値は約130.19億円となる。2026年10月22日の時価総額165.82億円との差は約マイナス21.5%で、結論はやや割高である。中立の時価総額修正に伴い、summaryとdebate.verdictの評価額も整合させた。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%、株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に事業品質の+0.25%を加えた。AIの影響は販売数量・単価とg_longで扱い、資本コストの寿命に二重計上しない。