結論
メディアファイブは、福岡と首都圏を拠点に、ITエンジニアを育成して顧客企業の開発現場へ送り出す会社である。筆者の結論は「割高」だ。財務は堅実で、顧客との関係も一定の強みを持つが、利益の源泉が人の稼働時間に依存しており、10年先の収益を守る力は十分とは言えない。
2026年5月期の売上高は約18億円、営業利益は約0.65億円だった。純現金は約4億円あり、金融面で直ちに行き詰まる企業ではない。2027年5月期第1四半期も増収増益で、SES事業では契約単価交渉が続いている。ただし、全社の営業利益率は長期にわたり低く、2020年と2021年には連続赤字を経験した。最近の回復をそのまま10年先に延ばすのは危険だ。
最大の問題は、AIエージェントが顧客の必要とする開発工数を減らす可能性である。同社はAI教育を進めているが、AI製品の販売実績や、成果に応じて料金を受け取る事業への転換を裏付ける金額は確認できない。受託開発も中小企業のIT支援も同様に影響を受けるため、会社全体で人月型の構造的な縮小を考える必要がある。
地域の採用・育成基盤と楽天銀行などの顧客関係は評価できる。一方、独自データ、規制に基づく共同基盤、長期の解約困難性といった強い参入障壁は確認できない。中期経営計画も人材採用の前提が崩れて撤回された経緯があり、経営の長期予測には慎重さが要る。
10年後の中立では、工数の減少を拠点整理や管理部門の省力化で補い、名目の純利益を現状に近い水準で保つ。ただし、そのためには名目の共通費を今より減らす厳しい改革が必要だ。資産の下支えを丁寧に認めても、5つの筋書きの確率加重価値は現在の時価総額を約46%下回る。事業の存続と、現在の値段で長期保有する価値は分けて考えたい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、最も評価しやすいのは財務の余裕と、人を育てて顧客へ送り出す事業の分かりやすさである。人材育成という日々の地道な投資が取引先との信頼を生み、その結果として現金が増えるなら、会社の仕組み自体には価値がある。
しかし、株主が本当に所有しているのは技術者の稼働時間を売る仕組みであって、技術者そのものではない。優秀な人は転職でき、顧客も発注先を替えられる。教育に投じた資金が、どれほど長期間にわたって資本コストを上回る利益を生むのかを慎重に問う必要がある。売上を増やすために採用と研修を繰り返しても、利益率が改善しなければ再投資の成果は小さい。
2026年5月期の営業利益率は3.6%で、過去には赤字も繰り返している。受託案件の粗利益は高く見えても、採用、育成、営業、共通管理部門の費用を差し引いた所有者の利益は薄い。継続的な人材投資を減らせば将来の稼働基盤が細り、投資を増やせば当面の配当余力が弱くなる。
純現金は安全域の一部になるが、帳簿上の現金をすべて株主の財産として足し上げることはできない。顧客との契約を履行する資金と、従業員への支払いに必要な資金は会社から自由に引き出せない。さらに管理費の圧縮が進まなければ、現在の資金は将来の赤字を補うために使われる。
この会社が10年先も存続する可能性は十分ある。ただし、存続と優れた投資成果は同義ではない。保有を正当化するには、稼働工数が減っても利益を増やせる契約形態への転換、持続する価格決定力、または大幅な株主還元が必要だ。現段階ではその証拠が足りず、本質価値と市場価格の間に必要な安全域は見いだせない。
何で稼ぐ会社か
収益の中心はSES事業である。2026年5月期は売上高16.75億円と全社の93.3%を占め、セグメント利益は4.19億円だった。プログラマやシステムエンジニアが顧客企業の開発、運用、保守を支援し、その稼働に応じて料金を受け取る。役務提供契約と労働者派遣契約があり、金融機関向けの基幹システム関連業務も重要な仕事である。
同社の特徴は、IT業界未経験者を約6か月の研修で育てる仕組みにある。「虎の穴研修」に加え、東京の「アキバ・テックドリーム・アカデミー」を通じて人材を確保する。2026年5月末のSES所属従業員は194人である。稼働技術者の約65%が首都圏、約35%が福岡にいると会社は説明する。育成に投じた費用を、卒業後の継続稼働と技術者の定着によって回収する商売である。
主要顧客は楽天銀行とインフォメーション・ディベロプメントで、2026年5月期の売上構成比はそれぞれ22.8%、11.1%だった。安定した金融システムの運用需要に接する一方、特定顧客のIT投資方針が変われば売上に大きな影響が出る。常駐技術者の人数だけでなく、顧客の内製化や開発自動化が収益を左右する。
ソリューション事業の売上高は1.20億円で、受託システム開発と中小企業向けIT支援「OFFICE DOCTOR」を含む。OFFICE DOCTORは月額契約で顧客の情報システム部門を支援するサービスである。2022年の旧中期計画では月間約100社の実績が紹介されているが、2026年の契約社数と事業別売上の内訳は開示されていない。評価では、受託開発と継続保守を推計上分けている。
全社利益を見るときは本社費用が重要になる。SESとソリューションのセグメント利益を合わせると約4.31億円あるが、共通管理費など約3.66億円を差し引くと営業利益は約0.65億円に縮む。採用費、研修費、賃借料、管理人員を維持する負担が重く、わずかな稼働率の変化が最終利益を大きく動かす。保育園の運営は営業外収支に含まれ、独立した成長事業としては評価しない。
優良さと弱いところ
同社の強みは、未経験者を採用してITエンジニアへ育てる組織能力と、福岡・首都圏にまたがる営業基盤である。2026年の有価証券報告書は、2025年に技術専門職向けの新しいキャリア制度を設けたことも説明している。育成と定着が機能すれば、外部の経験者を高値で採用する会社よりも安定して人材を供給できる。
しかし、この強みは長期の独占的な堀ではない。研修方法は競合も改善でき、顧客は他のSES会社や自社採用へ切り替えられる。楽天銀行との取引は重要だが、同社のシステムが顧客の記録の正本になっているわけではない。低解約率、年単位の移行制約、独自データ蓄積など、規制対応型の強い堀を認定する証拠も不足している。
資本効率は安定していない。過去10年のROE中央値は5.8%で、2026年5月期の約10%を長期の実力と断定できない。高稼働時でも全社営業利益率は低く、顧客単価の引き上げが賃上げや採用費の増加を上回るとは限らない。2027年5月期第1四半期はSES売上が増加した一方、同セグメント利益は前年同期を下回った。人件費の上昇を吸収する難しさが表れている。
財務は明確な長所である。純現金は約4億円で、有利子負債は小さい。営業キャッシュフローも2026年5月期は約1.37億円の流入だった。ただし、現金には給与、税金、契約負債、事務所賃借料を賄う役割がある。資産の厚さは破綻リスクを下げるが、低いROEを自動的に高い企業価値へ変えるものではない。
総合的な堀は弱いと判定する。顧客との信頼や人材育成の蓄積は残るものの、価格を自由に決められる事業でも、技術の進歩から守られた事業でもない。増分投資が資本コストを超える確実性は低く、10年後に同じ形で稼ぎ続けられるかが最大の課題である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のIT投資は足元で拡大している。矢野経済研究所によると、2025年度のデジタル人材採用・活用支援サービス市場は、IT技術者派遣や人材紹介など4市場の合計で約1兆6,257億円と見込まれている。メディアファイブのSES売上をこの広い市場と比較すると、参考比率は約0.10%にすぎない。ただし、同市場には人材紹介なども含まれるため、厳密なSES市場シェアではない。
受託開発ではTIS、システナ、DTS、セラク、SHIFTなどのITサービス企業に加え、地域の中小SES会社やフリーランスが競合する。これらの企業について、同じ定義によるSES売上だけを集めた市場シェアは確認できない。大手は顧客との直接契約、採用力、教育投資、複数業務の一括受託で有利だ。メディアファイブは全国的な規模の競争より、特定顧客との継続取引と地域採用で事業を維持している。
OFFICE DOCTORに近い法人PC運用管理・保守サービス市場は、MM総研が2025年度に約3,464億円と見込んでいる。仮に同サービスの売上を約0.60億円と推計すると、広い市場に対する比率は約0.02%である。受託開発を含むソリューション事業全体でも全国シェアは極めて小さく、規模による価格決定力は期待しにくい。
2026年時点では、技術者不足を背景にSES単価の引き上げ余地がある。会社も2026年5月期に契約単価交渉を進めた。しかし10年という長さでは、生成AIがプログラム作成、テスト、運用監視、問い合わせ処理を代替する影響を中心に考えるべきだ。発注企業のシステム投資総額が増えても、人が請求できる工数まで増えるとは限らない。
中立では国内IT投資の継続を認めながら、人月型サービスの実質需要は縮小するとみる。SESの稼働工数は現状の約7割へ下がり、単価は物価上昇に近い範囲でしか上げられない。2025年の広義市場を起点にした参考シェアも、10年後には約0.09%程度へ緩やかに低下する想定である。これは厳密な市場予測値ではなく、顧客の内製化と自動化が中小事業者へ与える影響を測る目安である。
利益が残る分野は、顧客の業務を理解した上での複雑なシステム移行、セキュリティ、責任を伴う運用管理だろう。ただし、同社がその価値を成果報酬や独自サービスとして請求できるようになるかは別問題である。市場の拡大よりも、請求できる仕事の量と技術者一人当たりの粗利益を追う必要がある。
資本政策と M&A
経営資源は長く人材育成と事業拠点の整備へ向けられてきた。2011年には内装工事会社の匠工房を買収したが、2024年12月に全株式を譲渡し、IT事業への選択と集中を進めた。飲食事業からも過去に撤退している。異業種への拡大が恒久的な収益源にならなかった点は、資本配分を評価する際に忘れてはならない。
2022年に公表した中期経営計画「DXリベンジャーズ2025」では、2025年5月期の単体売上高20.04億円、営業利益0.604億円を掲げていた。ところが人材確保と処遇改善の前提を見直す必要が生じ、会社は同計画を撤回した。新しい中期経営計画の数値目標は確認できず、現在は売上高、ROE、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額について中期計画としての数字の約束なしである。
2026年の有報には、翌期のSES売上総利益率35%、SESとソリューションの稼働率98%という運営目標がある。2027年5月期の通期予想は売上高18.60億円、営業利益0.67億円、純利益0.43億円だ。ただし、これらは長期の還元や資本効率を保証する目標ではない。
配当は2020年から2024年まで無配が続いたが、2025年に再開した。2026年には普通配当の増額と記念配当を合わせ、年間配当総額は約0.141億円、配当性向33.8%となった。2027年の配当予想は約0.094億円である。5年間に大きな自社株買いは確認できず、純利益の長期的な半分以上を安定して還元した実績もない。
2026年5月末の上位10株主の保有比率は69.16%で、創業者と社員持株会の存在感が大きい。株主の声が資本配分へ反映されにくい可能性はあるが、直近で増配したため、余剰現金の株主への戻り方を最低の0.5とはしない。現時点では0.75を採用する。公表情報ではTOB、MBO、上場廃止予定、継続企業の前提に関する注記は確認されない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
企業のITシステムは今後も複雑化し、金融機関では基幹システムの運用、規制対応、セキュリティ、人による検証が欠かせない。AIが単純な開発作業を減らしても、顧客の業務を理解して責任を持てる技術者への需要は残る。メディアファイブは福岡で長く人材を育て、首都圏の顧客へ供給してきた。未経験者を現場で働ける技術者に変える教育基盤は、他社が短期に再現しにくい組織能力である。
顧客との関係も一朝一夕には消えない。楽天銀行は売上の2割以上を占め、金融システムの運用・支援で積み上げた信用がある。技術者を入れ替える際には、業務知識の移管やセキュリティ上の確認が必要になる。短期的な単価差だけで発注先が決まるわけではない。
2027年5月期第1四半期には売上高が8%増え、全社営業利益率も改善した。顧客単価の見直しと研修の成果が続けば、技術者の人数が増えなくても売上と粗利益を維持できる可能性がある。ソリューション事業も同四半期に増収となり、保守契約の顧客基盤を広げる余地は残る。
財務面では、売上の大きさに比べて現金が厚い。大規模な設備更新を要しないため、採用と教育の投資効率を改善すれば、営業キャッシュフローを配当に回せる。2026年の増配は株主還元姿勢の改善を示している。大型買収に依存せず、既存事業の粗利益改善と管理費削減を実現できれば、小さい時価総額ゆえに企業価値の上昇余地は大きい。
慎重な見方
人を育てる能力と、人月単位で高い利益を稼ぎ続ける能力は別物である。AIエージェントはプログラムの作成、テスト、保守、問い合わせ対応を処理できるようになり、顧客が必要とする技術者の人数を減らす。金融機関の業務が高度であっても、すべての作業を従来どおり人へ発注する必要はない。大手企業はAI導入による生産性改善を発注単価の引き下げに反映できる。
メディアファイブのSES事業には、法的に独占できるデータや顧客の記録の正本がない。顧客のシステムに関わっていることは強みだが、技術者を提供する立場である以上、発注側の契約見直しを防ぐ力は限られる。しかも楽天銀行への売上集中が高まり、一社の調達方針変更が営業利益を消しかねない。
会社は2022年に新しい中期計画を掲げたものの、人材採用と処遇改善の難しさから撤回した。かつての工事関連子会社も売却しており、買収によって第二の収益の柱が育ったとは言えない。ソリューション事業は2026年5月期に前年比で売上が大きく減少し、安定したストック収益を持つ大手ITサービス企業とは違う。
薄い営業利益率も重大だ。2026年5月期にはセグメント利益が合計4億円を超えたが、共通費用がその大部分を吸収した。賃上げ、採用費、研修費、事務所賃料が増えると、少しの稼働低下で赤字へ戻る。実際、2020年と2021年には連続赤字だった。
現金があるから割安だという判断も早計である。未払費用、税金、前受契約、将来の給与支払いを考えると、事業に使わない現金は帳簿残高より少ない。会社が資金を内部に留保するだけなら、少数株主がその価値を直ちに受け取れるわけではない。事業の収益力が衰えれば、現金は株主還元より赤字補填に使われる。
どちらに重みを置いたか
財務の健全さと顧客関係では強気の見方に根拠がある。しかし、10年後の価値を決めるのは現在の現金残高よりも、将来の人月需要と再投資の採算である。中立の数量にはAI代替による縮小を既に織り込み、資本コストの寿命項目では重ねて減点しない。
確率は楽観側29%に対して、やや悲観と悲観を合わせて41%とした。下に寄せる理由は、楽天銀行への売上集中、過去の赤字、中期計画撤回、管理費負担の重さという会社固有の弱さである。中立は共通管理費を名目で約2.97億円まで縮小できる条件で利益を保つものの、内部留保の増加でROEが資本コストに届かない。悲観側に純現金を基準とする資産の床を認めても、確率加重価値は今の時価総額を約46%下回る。長期株主が期待できる上振れはあるが、現時点では慎重な見方が優勢だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 826 円8 億円(+ 還元の換算額還元の合計 114 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 450 円4 億円、今との差 −39.9%、 期待の年率 +2.4%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 1,906 円18 億円 | 298 円3 億円 | +193.9% | +12.5% | 242 円2 億円 |
| やや楽観 | 18% | 987 円9 億円 | 181 円2 億円 | +55.7% | +5.0% | 210 円2 億円 |
| 中立 | 30% | 873 円8 億円 | 117 円1 億円 | +32.0% | +3.0% | 297 円3 億円 |
| やや悲観 | 25% | 436 円4 億円 | 43 円0 億円 | −36.2% | −4.6% | 120 円1 億円 |
| 悲観 | 16% | 426 円4 億円 | 16 円0 億円 | −41.1% | −5.2% | 71 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 826 円8 億円 | 114 円1 億円 | +25.3% | +2.4% | 940 円9 億円 |
今の株価時価総額 750 円7 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 高度人材への転換と共通費改革に成功 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,906 円18 億円
楽天銀行などの金融機関との取引が続き、単純なプログラム作成から、顧客の業務を理解したシステム移行、複雑な運用管理、セキュリティ対応へ仕事の内容が移る。顧客はAIを活用するが、重要な業務を任せられる技術者への発注は残り、メディアファイブの育成制度も新しい技術に対応する。
採用した人材の定着が改善し、技術者の実質稼働人月を維持する。物価上昇に近い単価改定も継続し、SESの粗利益率は現在より高まる。ソリューション事業では、受託開発の品質管理と中小企業の継続保守契約が定着する。ただし、独自AI製品が売上を押し上げるという未確認の前提は含めない。
共通管理費は採用・教育の改善と業務整理によって増加を抑える。人材確保に必要な賃上げを行いながらも、再配置と稼働率の改善が費用の伸びを上回る。営業利益は2億円程度まで拡大し、財務余力から配当も増える。
大規模な買収を実施せず、既存事業への投資に集中する。顧客との継続取引は強みを保つが、依然として人月型の事業である。将来の恒久的な高成長ではなく、10年間の収益力改善が実現した姿である。
- SES事業:数量 2,212(年間の請求対象となるITエンジニア稼働人月(人月・推計))× 価格 0.01(請求人月1単位当たりの平均売上(億円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 6 億円。実質稼働人月は現状維持、名目単価1.34倍。高度業務への配置転換でセグメント利益率27%。
- ソリューション事業内・受託システム開発(推計区分):数量 48.0(受託開発の作業量に相当する技術者人月(人月・推計))× 価格 0.02(技術者人月1単位当たりの受託売上(億円・名目、外注費相当を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。開発工数は現状維持、名目単価1.34倍。案件管理の改善によって利益率22%。
- ソリューション事業内・OFFICE DOCTOR(推計区分):数量 100(年間を通じて利用する換算顧客契約数(社・推計))× 価格 0.01(顧客1社の年間平均売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。換算顧客契約数は100社維持、年単価1.34倍。保守対応の効率改善で利益率20%。
倍率:k=8.25%。事業のROEは約12.9%で資本コストを上回るが、AIエージェント代替による長期の人月需要制約からg_long=0%とする。正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)はg=0で1/k=12.1212倍となる。現在の余剰現金1.5億円の税後運用益0.021億円を純利益から除き、戻り方0.75を適用するため、時価総額=(1.20−0.021)×12.1212+1.5×0.75=15.4159億円。10年間の累積純利益約8.0億円から還元2.8億円を控除し、自己資本は約9.3億円となる。
確率:既存顧客を維持しながら高度業務へ人材を配置し、10年間で実質稼働人月を守る上限の筋書きである。AI製品の独立売上は確認されないため数量増加までは認めず、利益改善は運営効率化に限定する。
やや楽観 18% 人月縮小を高度化と収益改善で補う 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 987 円9 億円
AIによって定型的な開発工数は減るが、顧客は依然としてシステムの移行、障害対応、セキュリティ、運用の責任を担う技術者を必要とする。メディアファイブは主要取引先との関係を維持し、経験豊富な人材を重要な業務へ移す。
SESの実質稼働人月は現状を下回るものの、賃上げと技能向上に見合った契約単価の引き上げをある程度実現する。研修費と採用費を管理し、顧客企業の求める技能に教育内容を合わせることで、稼働率と粗利益を支える。
受託開発は規模を縮めるが、品質管理と保守の組み合わせで収益を保つ。OFFICE DOCTORも人が行う作業は減るが、ITに詳しい担当者がいない中小企業との契約が残る。管理部門は事業規模に合わせて縮小し、全社の利益率を維持する。
配当は増えるが、社内留保も必要になる。大型買収をせず、既存事業への集中が続く。地域で必要とされるITサービス会社として存続し、現在より高い名目利益を得るものの、独占的な収益力までは形成できない。
- SES事業:数量 1,858(年間の請求対象となるITエンジニア稼働人月(人月・推計))× 価格 0.01(請求人月1単位当たりの平均売上(億円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 5 億円。人月は現状の84%、単価1.33倍。高度案件への比率上昇で利益率26%。
- ソリューション事業内・受託システム開発(推計区分):数量 40.3(受託開発の作業量に相当する技術者人月(人月・推計))× 価格 0.02(技術者人月1単位当たりの受託売上(億円・名目、外注費相当を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人月84%、単価1.30倍。品質管理と契約選別で利益率18%。
- ソリューション事業内・OFFICE DOCTOR(推計区分):数量 90.0(年間を通じて利用する換算顧客契約数(社・推計))× 価格 0.01(顧客1社の年間平均売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。換算契約90社、単価1.30倍。継続保守契約を維持。
倍率:k=8.25%、2036年のROEは約7.5%で資本コストをやや下回る。g_long=0%なので正当化PERの上限は1/k=12.1212倍となり、そこから恣意的に割り引かない。余剰現金の税後利息0.021億円を除き、残る現金価値1.125億円を加える。時価総額=(0.56−0.021)×12.1212+1.125=7.6583億円。累積純利益約5.05億円から還元1.7億円を控除して自己資本7.45億円とする。
確率:金融機関の既存契約と研修制度が一定の競争力を保つ可能性はある。しかし、工数減少を完全には止められず、単価改定と管理費改善の両方が必要になるため、楽観より高いが限定的な確率とする。
中立 30% AIによる工数減少と管理費合理化が併存 利益 0 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 873 円8 億円
金融機関を中心とする顧客基盤は残るが、開発工程の自動化が進み、同じシステムを維持するために必要な技術者の人数は減少する。メディアファイブは既存顧客との取引を続けながら採用数を抑え、育成内容をAI活用や高度な運用支援へ切り替える。
SESは請求できる工数が減るため、名目単価の引き上げだけでは現在の売上を守れない。未経験者研修の規模を縮小する一方、技能の高い社員を維持するための処遇改善は続ける。受託開発の工数も減り、OFFICE DOCTORでは契約数と人が行う作業の双方が減少する。
利益を守る条件は共通管理費の大幅な改革である。本社と東京支店の拠点整理、採用・教育体制の縮小、経理・営業事務の自動化を通じ、共通費を現在の約3.66億円から10年後には名目で約2.97億円まで削る。移行期には研修負担と再配置費用から一時的な赤字も生じるが、2036年には営業利益が約0.85億円となり、全社利益率は過去の好調期に近い水準へ改善する。これは会社が実行を約束した改革ではなく、売上減少下でも事業を保つための必要条件である。
大型買収による新しい事業の獲得は想定しない。配当は10年間の累積利益の一部にとどめ、利益の大半が内部に残るため自己資本は増える。それでも2036年のROEは資本コストを下回り、名目の利益を守れても資本効率の高い会社にはならない。
- SES事業:数量 1,526(年間の請求対象となるITエンジニア稼働人月(人月・推計))× 価格 0.01(請求人月1単位当たりの平均売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 4 億円。AIエージェント代替で実質人月0.69倍、単価1.30倍。セグメント利益率24.5%。
- ソリューション事業内・受託システム開発(推計区分):数量 32.6(受託開発の作業量に相当する技術者人月(人月・推計))× 価格 0.02(技術者人月1単位当たりの受託売上(億円・名目、外注費相当を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人月0.68倍、単価1.29倍。受託開発は案件を選別し利益率13%。
- ソリューション事業内・OFFICE DOCTOR(推計区分):数量 70.0(年間を通じて利用する換算顧客契約数(社・推計))× 価格 0.01(顧客1社の年間平均売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。換算契約70社、単価1.28倍。操作支援の自動化が進み利益率12%。
倍率:資本コストk=8.25%、2036年の純利益0.49億円と自己資本6.50億円からROEは約7.54%となり、kを下回る。AIエージェント代替で人月需要に長期の成長余地を見いだせずg_long=0%としたため、利益ベースの正当化PER上限は1÷k=12.1212倍である。現在の余剰現金1.5億円に係る税後運用益0.021億円を純利益から除き、現金の戻り方0.75を用いると時価総額=(0.49−0.021)×12.1212+1.5×0.75=6.8098億円となる。SES・SI・IT保守の合計セグメント利益3.81511億円から共通費2.97億円を引いた営業利益は0.84511億円、純利益÷営業利益は約0.58で過去中央値約0.57と整合する。共通費の名目縮減には拠点整理・採用縮小とAIを使った事務の省力化が必要で、未発表の経営改革を既成事実としてはいない。2027〜2036年の年度別純利益を概ね0.43、0.50、0.35、0.15、−0.05、0.30、0.36、0.47、0.50、0.49億円と想定すると、累計3.50億円となる。10年間の還元1.10億円を差し引けば、期末自己資本は4.10+3.50−1.10=6.50億円となり、最終年の損益だけから累積利益を過小評価しない。
確率:AI代替による工数縮小を避けられない一方、金融機関の運用支援と中小企業保守は残る。採用・研修・拠点の共通費を長期で大幅に合理化し、2030年代前半の一時的な赤字を経て営業利益率を過去の好調期程度に戻す条件付きの中心筋書きである。合理化の難度が高いため、これを下回る側には合計41%を配分する。
やや悲観 25% 主要顧客の工数削減で赤字が定着 利益 0 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 436 円4 億円
金融機関や大手SI企業が発注先を整理し、従来の常駐技術者の一部を自社のAI活用チームや自動化ツールへ置き換える。メディアファイブは既存契約の一部を失い、単価交渉でも優位に立てなくなる。経験の浅い技術者の育成を続けても、顧客の求める技能と一致せず、採用投資の回収が難しくなる。
SES売上は縮小し、受託開発の小規模案件も価格競争が激しくなる。OFFICE DOCTORではAIによる自動問い合わせ対応が広がり、人によるIT支援を必要とする契約が減少する。既存の金融システム運用支援は残るが、会社全体の固定費を支えられる規模ではない。
経営は採用停止、人員整理、拠点縮小を進め、共通費用を削減する。それでも営業損失を解消できず、直近の増配方針は維持できない。前半の黒字で得た資金が後半の赤字補填に使われ、自己資本はほぼ現在の水準に戻る。
新しい大型買収は実施せず、事業の立て直しが優先される。現金と回収可能な売掛金は残るため直ちに破綻する状況ではないが、収益事業としての価値は小さくなる。株主価値は継続事業の成長より、残った資産の回収可能性に支えられる。
- SES事業:数量 1,217(年間の請求対象となるITエンジニア稼働人月(人月・推計))× 価格 0.01(請求人月1単位当たりの平均売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。人月0.55倍、単価1.20倍。契約縮小と稼働低下でセグメント利益率20%。
- ソリューション事業内・受託システム開発(推計区分):数量 26.4(受託開発の作業量に相当する技術者人月(人月・推計))× 価格 0.02(技術者人月1単位当たりの受託売上(億円・名目、外注費相当を含む))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。受託人月0.55倍、単価1.20倍。価格競争によって利益率6%。
- ソリューション事業内・OFFICE DOCTOR(推計区分):数量 60.0(年間を通じて利用する換算顧客契約数(社・推計))× 価格 0.01(顧客1社の年間平均売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。換算契約60社、単価1.15倍。保守サービスの単価上昇が抑えられる。
倍率:最終赤字が続くため、将来利益に正当化PERを掛けず、足元の売却可能資産の床で評価する。2026年5月期の自己資本約4.1億円を分母にし、純現金約4.0億円と換価資産・債務を差し引いた資産床4.1億円を見込むため、PBRは4.1÷4.1=1.00倍となる。中立の実効PBRは6.8098÷6.50=約1.05倍で、これより低い。10年間の累積純利益約0.40億円から還元0.40億円を差し引いて自己資本4.1億円を維持すると想定する。PBRは過去の株式市場の底値ではなく純現金と換価可能資産の床から求めた。
確率:楽天銀行など主要顧客の発注量が減り、管理費削減が追い付かない可能性を重く見る。AIによる中立の数量縮小とは別に、顧客集中と低い全社利益率が赤字転落を深める会社固有の要因になる。
悲観 16% 人月商売が構造的に衰退し資産価値だけが残る 利益 −1 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 426 円4 億円
AIによる開発・運用の自動化が進み、顧客企業は外部に発注する技術者の人数を大幅に減らす。大手SI会社も外注先を絞り、金融機関向けの継続業務でメディアファイブが担っていた工程の一部が失われる。価格競争に加え、経験のある技術者の流出が進み、採用と教育の仕組みが従来の競争力を発揮できなくなる。
SESの実質人月は現在の半分を下回る。受託開発ではAIで作成されたソフトウェアの確認や導入支援の仕事は残るが、会社が主導権を持つ案件は少ない。OFFICE DOCTORも、顧客が自動化サービスや大手の一括保守へ移行することで、契約基盤が縮小する。
経営は研修規模の縮小、採用停止、拠点整理を進め、共通費用を大きく減らす。それでも売上減少に追い付かず、2030年代前半までは既存案件による利益が残るが、後半に発注量が急減して営業赤字が拡大する。配当は縮小し、前半に積んだ利益が後半の赤字補填や退職関連費用へ流れる。
異業種買収による救済は想定しない。小規模な運用保守業務だけが残り、事業を大きく成長させる能力は失われる。会社は資金が底をつく前に採用・拠点を縮小し、現在の純現金に相当する換価可能資産を極力保つ。事業を継続する限り費用がかかるため、株主価値は収益力ではなく残余資産の価値に近づく。
- SES事業:数量 995(年間の請求対象となるITエンジニア稼働人月(人月・推計))× 価格 0.01(請求人月1単位当たりの平均売上(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。人月0.45倍、単価1.08倍。顧客の発注集約と稼働低下で利益率17%。
- ソリューション事業内・受託システム開発(推計区分):数量 21.6(受託開発の作業量に相当する技術者人月(人月・推計))× 価格 0.01(技術者人月1単位当たりの受託売上(億円・名目、外注費相当を含む))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。受託人月0.45倍、単価1.10倍。残る案件の採算は極めて薄い。
- ソリューション事業内・OFFICE DOCTOR(推計区分):数量 50.0(年間を通じて利用する換算顧客契約数(社・推計))× 価格 0.01(顧客1社の年間平均売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。換算契約50社、単価1.10倍。自動化と大手保守への移行が進む。
倍率:2036年の純利益は赤字であり、継続企業としての利益をPERで評価できない。事業価値を積み増さず、現時点の純現金約3.993億円に相当する資産の床を約4.0億円として、現在の自己資本4.1億円に対するPBR=4.0÷4.1=約0.97561倍を適用する。中立の実効PBR約1.05倍、やや悲観の1.00倍をともに下回る。初期には既存契約から利益を得るが、2030年代前半から大幅に赤字が拡大するとして10年間の累積純利益約0.15億円、還元約0.15億円を想定し、2036年の自己資本は4.1億円となる。過去のPBRの底から求めた倍率ではない。
確率:顧客の開発内製化、大手への発注集約、人月契約の採算悪化が重なり、研修と採用への先行投資を十分に回収できなくなる。過去の連続赤字と撤回した中期計画が、極端な下振れを無視できない根拠となる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
SES事業
顧客企業のシステム開発、保守、運用を支援するITエンジニアの役務提供・人材派遣。AIエージェント代替の分類は人月・工数で売る事業である。
| 数量年間の請求対象となるITエンジニア稼働人月(人月・推計) | 価格請求人月1単位当たりの平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 2,212 | 0.01 | 17 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,526 | 0.01 | 15 | 4 |
取り方:2026年5月期有報でSES売上16.75273億円、セグメント利益4.19113億円、期末SES従業員194人を確認した。通期平均稼働人月の実数は開示されないため、194人×12か月×仮定稼働率95%を約2,212人月とし、売上から平均月額約76万円を逆算した。95%は実績ではなく推計で、会社が次期の目標として掲げる98%とは区別する。2022年旧中計の東京131人・福岡61人という稼働者計画も人数規模の検証に用いた。矢野経済研究所の2025年度デジタル人材採用・活用支援4市場計1兆6,257億円に対する売上比は約0.10%だが、対象市場の範囲が広いため厳密なSESシェアではない。AIエージェント代替の中立数量は現在の0.69倍、単価は1.30倍で、指定された人月型の範囲内とした。
ソリューション事業内・受託システム開発(推計区分)
顧客が求めるシステムの設計、開発、導入を受託する業務。開示上はOFFICE DOCTORと合算されているが、数量と価格の構造が異なるため評価上分けた。
| 数量受託開発の作業量に相当する技術者人月(人月・推計) | 価格技術者人月1単位当たりの受託売上(億円・名目、外注費相当を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 48.0 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 32.6 | 0.02 | 1 | 0 |
取り方:会社はソリューション事業として売上1.20484億円、セグメント利益0.12349億円、従業員8人を開示しているが、SIとOFFICE DOCTORの内訳は示していない。2022年旧中計では2025年のSI目標0.8億円、IT支援目標0.85億円を別々に公表していた。現状の受託開発売上を推計0.60億円とし、8人の半分が通年相当の受託開発に従事する48人月を数量の基準とした。単価125万円には外注や付随サービスの売上が含まれる可能性がある。セグメント利益は合算値から仮配賦しており、独立開示された利益ではない。AI代替の中立数量0.68倍、価格1.29倍は人月・工数型として設定した。
ソリューション事業内・OFFICE DOCTOR(推計区分)
中小企業のIT担当部門を月額契約で支援する、PC・サーバー運用、保守、IT相談などのサービス。人の対応と運用業務が中心で、業務SaaSの独自基盤とはみなさない。
| 数量年間を通じて利用する換算顧客契約数(社・推計) | 価格顧客1社の年間平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 100 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 0.01 | 1 | 0 |
取り方:2022年公表の旧中期計画には、OFFICE DOCTORについて月間約100社の取引実績が記されている。2026年の最新契約数は開示されていないため、この100社を数量の代理値とし、ソリューション全体1.20484億円から受託開発の推計0.60億円を差し引いて、同サービスを0.60484億円と仮配賦した。年単価は約60.5万円、月額約5万円相当になる。サービス別の実績売上・契約数・利益は未公表で、これらは推計にすぎない。MM総研が示した2025年度法人PC運用管理・保守市場3,464億円と比較した参考売上比は約0.017%。AI分類は運用BPO・人の対応による月額サービスで、中立の実質数量0.70倍、価格1.28倍とした。
リスクと懸念
AIエージェント代替による人月需要の減少
SES、受託開発、IT運用支援の全てで、AIが人の作業を代替する可能性がある。顧客のシステム投資が増えても請求対象の人月が減れば、技術者を多く抱える会社の売上は伸びない。メディアファイブには独自AI製品による売上や成果報酬型への転換を示す金額開示がないため、この影響を事業の中心的なリスクとして扱う。
楽天銀行などへの売上集中
2026年5月期の楽天銀行向け売上は全体の22.8%、インフォメーション・ディベロプメント向けは11.1%だった。両社の開発内製化、調達方針変更、IT投資の延期が発生すると、売上だけでなく稼働率が低下する。共通管理費が重いため、主要顧客の一部契約を失うだけでも営業利益が大きく減少する。
採用・研修投資の回収失敗
未経験者を約6か月かけて育成する仕組みは強みである反面、顧客が求める技術と研修内容が一致しないと、研修に投じた費用を回収できない。給与水準の引き上げと技術者の流出が重なれば、育てた人材が会社に利益を残す期間も短くなる。撤回した中期計画は人材確保の予測が外れた実例でもある。
薄い全社利益率と固定費の負担
2026年5月期はセグメント利益の合計約4.31億円に対し、全社の営業利益は約0.65億円だった。共通費用の約3.66億円が利益を大きく吸収している。福岡本社、東京支店、保育園などの賃借料も継続的に発生する。売上が減る局面で管理人員や拠点費用を十分に減らせなければ、赤字への転落が早まる。
資本配分と少数株主への還元
上位10株主が約69%を保有しており、少数株主の意向が経営判断へ反映されにくい可能性がある。2026年には増配したものの、安定した高配当性向や大規模な自社株買いの実績はない。現金を新規事業や採用投資に使って十分な収益を得られなければ、帳簿上の純現金が厚くても株主に帰属する価値は減る。
案件採算・派遣規制・情報漏洩
受託開発では納期遅延、見積り誤り、顧客要求の変更で利益が失われる。SESには派遣法の規制があり、派遣事業許可の次回更新時期は2028年11月末と有報に記載されている。金融機関などの機密情報を扱うため、情報漏洩や品質事故が起きれば顧客の信用を失い、小規模な会社の収益に大きく影響する。
今後の分かれ目
- SESの実稼働人月が3年以上増加し、契約単価も賃金上昇を上回り続けたら
- 数量減少と利益率の前提を見直し、やや楽観側の比重を高める。実人数ではなく請求可能な人月と粗利益で確認する。
- 楽天銀行向けの売上構成比が大幅に低下し、代替顧客が獲得できなかったら
- SES数量と稼働率を下方修正する。固定費削減の進捗が不十分ならやや悲観側を重くする。
- AIを活用した成果報酬型サービスについて、継続的な売上・受注額が具体的に開示されたら
- 該当する売上部分を人月型から切り分け、利益率と長期成長率を再評価する。研修や社内利用だけでは分類を変えない。
- 共通管理費が削減され、売上が横ばいでも全社営業利益率が5%を超えて数年間定着したら
- 中立の営業利益率と増分資本収益率を上方修正する。採用費の一時的な抑制ではなく、継続可能な構造改革かを確かめる。
- 新しい中期経営計画が公表され、ROEや総還元性向の数値目標と実行実績が示されたら
- 再投資と株主還元の配分を見直す。保有現金の回収可能性が高まれば、余剰現金の戻り方を0.75から1.0へ変更する余地が生じる。
- 2期連続の営業赤字、純現金の大幅減少、または継続企業の前提に関する注記が発生したら
- 事業価値より現金消費と清算可能資産を優先して再評価する。継続企業の前提の注記が付いた時点では、依頼の対象外として通常の分析を見送る。
見ておくもの
- SES事業の稼働技術者数、人月稼働率、月額平均契約単価
- SES事業の売上総利益率35%目標と稼働率98%目標の進捗
- 楽天銀行とインフォメーション・ディベロプメントの売上構成比
- ソリューション事業の受注残高とOFFICE DOCTORの契約社数
- SES・ソリューションのセグメント利益合計と共通管理費の差額
- AI活用サービスの顧客向け売上・受注額と成果報酬契約の実績
- 新中期経営計画の公表、配当性向、自己株式取得実績
- 現金預金、有利子負債、売掛金、契約負債と未払費用の推移
- 取締役会の資本配分方針、主要株主の保有比率、TOB・MBO関連開示
倍率と資本コストの決め方
現在の株価741円と株式数94万株から求める時価総額は6.9654億円である。この値は数量・単価・利益率・倍率の決定には使わず、最後の価値比較にのみ用いた。
SESと受託開発は人月、OFFICE DOCTORは換算顧客契約で数量を測り、物価3%の上昇分は価格だけに含めた。中立のAIエージェント代替は人月の減少と2036年以降のg_long=0%に反映し、資本コストの寿命や追加の割引率には重ねていない。PERはk=8.25%と長期gから得られる12.1212倍を用い、今や過去の市場倍率から逆算していない。
2026年5月期のセグメント利益と全社営業利益の差を共通費用として出発点にし、各筋書きで賃金・採用費・拠点縮小の程度を変えた。悲観側は赤字事業に高い利益倍率を掛けず、売れる資産から負債と換価費用を引いた額を床とする。2028年5月期からの新リース会計による表示変更は、賃借料を営業費用として認識する現行の比較可能な形へ戻して評価する。中立では共通費の実質削減を事業上の難しい必要条件として明示し、2036年の営業利益0.84511億円、純利益0.49億円、10年間の利益合計3.50億円、還元1.10億円から期末自己資本6.50億円への流れを一致させた。このとき中立の実効PBRは約1.05倍で、やや悲観1.00倍、悲観約0.98倍より高い。期待現在価値は約3.79億円、現時価総額との差は約マイナス46%となり、結論は割高である。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、循環、値決め力、財務の質の合計+0.75%を加える。直近は営業黒字で純現金も厚く、継続企業の前提に関する注記がないため、経営危機による追加上乗せは行わない。