結論
ディジタルメディアプロフェッショナルは、画像処理用半導体とその設計技術を販売するファブレス企業である。筆者の結論は「割高」だ。遊技機向けの実績は評価できるが、今後の成長を担うエッジAI半導体と産業用ロボット事業には、まだ継続的な高収益を証明するだけの販売実績がない。
既存事業の中心は、遊技機向け画像処理LSIのRS1である。累計100万台超の搭載実績を持ち、顧客の機種開発に組み込まれる技術には一定の乗り換えコストがある。ただし、2026年3月期のアミューズメント分野の売上は19.51億円に減少した。遊技機の型式試験への適合率が落ちると、新機種の発売と半導体の出荷がともに遅れる。
新製品Di1と産業用ロボット・FA事業には成長余地がある。会社は2030年3月期に売上高80億円を目指している。しかし、Di1の開発キットを配布した企業数と、実際に量産チップを継続購入する顧客数は別物だ。2026年3月期は売上高24.32億円に対して営業損失3.11億円となり、2027年3月期の会社予想も営業利益0.30億円にとどまる。
2026年6月末には現金約17.82億円と投資有価証券約7.08億円を保有し、資金繰りに一定の余裕がある。ただし、研究開発と在庫に使う資金をすべて余剰現金とは扱えない。10年後の事業価値と株主還元を確率で加重し、資本コストで現在価値に戻すと、適正時価総額は約44.6億円となる。現在の約88億円に対して約49%低く、現時点では十分な安全域を見いだせない。
バリュー投資の観点から
長く保有する株主にとって、この会社の評価は「画像処理技術が優れているか」だけでは決まらない。最も大切なのは、研究開発費を払い、製品の世代交代に対応し、必要な在庫を持った後に、どれだけの現金を株主のために残せるかである。遊技機向けRS1には採用の蓄積があるものの、その収益だけで10年先の大きな成長を説明することは難しい。
新製品Di1が成功すれば、少数の設計案件から多数の量産チップへと収益構造が変わる。追加出荷ごとに設計費を回収できるため、量産数量が増えた局面の利益率は魅力的になりうる。逆に顧客の評価段階で止まれば、研究開発に使った現金を回収できない。ここには本質的な非対称性がある。
本当に強い企業なら、複数の顧客が次世代製品でも自社を選び続け、価格交渉でも優位を保つはずだ。現状ではRS1の実績に比べ、Di1とFAの継続契約や量産数量の証拠が足りない。独自技術と特許は参入障壁の候補だが、株主資本に対する安定した超過利益が出て初めて、強い堀として評価できる。
過去の黒字期だけを切り取れば、成長余地の大きな半導体企業に見える。しかし、10年の中には製品の立ち上げ失敗、競争による値下げ、遊技機市場の縮小、資金調達が含まれうる。筆者は、事業そのものが消えるとは考えない一方、2030年の売上目標がそのままオーナー利益に変わるとも考えない。現在の時価総額は、その不確実性に対して支払う額としては大きすぎる。
何で稼ぐ会社か
同社の稼ぎは、画像処理技術を半導体や知的財産として販売することから生まれる。自社で大規模な半導体工場を持たず、設計とソフトウエア開発に経営資源を集中する。製造設備への投資は抑えられる一方、新製品の開発費や外部製造委託に伴う在庫負担は避けられない。
会社の2026年3月期の開示では、製品事業が22.18億円、IPコアライセンス事業が1.39億円、プロフェッショナルサービス事業が0.74億円を占める。別の切り口である用途別売上では、アミューズメント分野が19.51億円、ロボティクス・セーフティ分野が2.81億円である。この二つの分類は交差するため、そのまま足し合わせてはいけない。
遊技機向けRS1は、液晶画面の描画や映像処理を担う専用チップだ。ZEEGなどの遊技機プラットフォームに採用され、機種の開発から認証、量産までの過程に組み込まれる。採用が続けば、ソフトウエア資産や開発ノウハウを生かして次の機種にも供給できる。ただし、販売数量、契約単価、顧客別売上は十分に開示されていない。
産業用ロボット・FA事業では、ロボットの視覚認識機器や関連製品を販売する。SEER Roboticsなどとの取引・協業を足場に、物流や工場で使う移動ロボットの普及を取り込みたい考えだ。この領域ではハードウエアの選定や導入支援も重要になるため、単なるソフトウエアの利用者数より、出荷案件数と案件当たりの売上が収益を左右する。
新しい柱がエッジAI向けSoCのDi1である。監視カメラやドローンなど、機器の内部でAI処理を行う用途を狙う。約50社に開発キットを提供したとの説明や、インドのカメラ企業との取り組みはあるが、開発評価と大量生産は区別すべきだ。量産が進めばチップの出荷数量が収益を決める一方、立ち上がらなければ設計費だけが残る。
残るIPライセンスは組み込み用GPU・AI技術の使用許諾、プロフェッショナルサービスは顧客向け設計開発などである。後者は人の工数に依存するため、AIエージェントによる代替の影響を受ける。前者にも利用量に応じて課金するサービスが含まれるが、その売上規模は非開示であり、独立した大きな収益源とは見なしていない。
優良さと弱いところ
最大の強みは、RS1が実際の遊技機に採用され、累計100万台超の搭載実績を持つことだ。顧客にとって画像処理チップの変更は、基板設計だけでなく描画ソフトウエアや開発環境にも影響する。機種開発中に部品を置き換える手間は大きく、一定の継続受注を支える。ただし、独占的な地位を示すものではない。
弱点は、値決めする力と収益の再現性が十分に実証されていないことだ。遊技機向け画像処理LSIではアクセルが強い競合である。顧客が新しいプラットフォームを選ぶ段階では、処理性能、開発支援、供給能力、価格を改めて比較できる。RS1の高い採用実績だけから、毎年の値上げが通るとは判断しない。
過去10年間のROEの中央値は約1.2%にとどまる。2024年3月期には黒字幅が拡大したが、翌期は減益となり、2026年3月期には再び営業赤字に転じた。増収を続けた期間があっても、それが株主資本に見合う利益へ安定して変わったわけではない。新しい事業に投じた資本の増分利回りが、株主の要求収益率を上回るかは未確定である。
財務は事業の不確実性を和らげる。2026年6月末の自己資本は約31.50億円で、現金と投資有価証券を合わせた保有額も大きい。ただし、2026年3月期には営業キャッシュフローが大幅なマイナスとなった。将来の研究開発費、製品在庫、顧客への供給責任を考えると、預金残高をそのまま株主の取り分とみなすことはできない。
競争上の堀は「普通」と評価する。RS1には技術蓄積と採用継続の利点があるが、Di1とFAは競争力を形成する途上だ。全社を強い堀の企業と扱うには、複数の製品世代にわたるシェア維持、継続的な価格改定、そして資本コストを上回る利益率が必要である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
遊技機向け半導体は、需要が機種の発売時期と型式試験の結果に左右される市場だ。競合のアクセルによると、2025年の国内新台市場はパチスロ約70万台、パチンコ約78万台で、合計約148万台だった。アクセルは遊技機向けグラフィックスLSIの年間販売数量を約46万個、対象市場でのシェアを約55%と説明している。この55%は新台全体148万台に対する比率ではなく、対象とする画像処理LSI市場の推計シェアである。
この数字は、ディジタルメディアプロフェッショナルの機会と限界の両方を示す。RS1が存在感を持つ特定の機種群はあるが、画像処理LSI市場全体を支配しているわけではない。アクセルは今後のシェア拡大を掲げており、両社の設計採用競争は続く。10年先は国内人口、遊技参加者数、規制、機種更新の速さを踏まえ、遊技機向け市場全体の数量が大きく伸びるとは考えない。
エッジAIの市場はこれよりはるかに大きい。会社資料では2030年の世界のエッジAI搭載カメラ市場を約4.5億台と見込み、このうち監視、車載、産業の合計約2.7億台を主要な対象としている。ただし、これはカメラという最終製品の市場であり、Di1のチップ市場規模でも、同社が獲得できる販売数量でもない。チップの単価と採用率を分けて考える必要がある。
競合は、画像処理や映像向け半導体を展開するAmbarella、Qualcomm、NXPなどの既存勢力に加え、AI演算アクセラレーターの専業企業や顧客の自社設計品にも広がる。演算性能だけでなく、消費電力、開発環境、供給期間、量産歩留まり、ソフトウエア対応が採用を決める。同社が公表する性能比較は製品の可能性を示すが、顧客の量産採用を第三者が保証するものではない。
産業用ロボットでは、国内のAMR・AGV・AGF市場について、会社は2023年の約8,500台から2030年に約28,300台への拡大を想定する。市場金額も約770億円から約2,820億円へ増える見通しだ。ただし、これはロボット完成品の市場規模を含む数字である。カメラ、制御機器、画像処理製品を売る同社が、その全額を対象市場にできるわけではない。
今後10年で実質数量が伸びると考える中心は、Di1とFAの二つだ。一方で、顧客は価格低下と性能向上を同時に求めるため、半導体の単価に物価上昇をそのまま転嫁できるとは限らない。国内遊技機の成熟と海外AI半導体の競争を同時に受ける点が、全社の利益予測を難しくしている。
資本政策と M&A
同社の資本配分で最も大きな判断は、遊技機向けで得た資金をエッジAIと産業用ロボットへ振り向けることだ。2026年3月期にはDi1関連の研究開発費が約3.01億円となり、連結営業赤字の大きな要因になった。半導体の開発では先に資金が出ていき、設計採用から量産収入までに時間がかかる。収益化の遅れは、そのまま株主の負担になる。
2026年6月公表の中期ビジョンは、2027年3月期売上高36.4億円、2028年3月期50億円、2030年3月期80億円を目指す。2030年の内訳は、次世代エッジAI半導体30億円、FA関連20億円、従来のアミューズメント等30億円という構想だ。一方、このビジョンに営業利益額、ROE、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額についての具体的な数値の約束は確認できない。
会社は従来、内部留保と開発投資を優先し、配当を行っていない。2027年3月期も無配予想で、株主還元の開始時期は明確ではない。過去には増資による株数の増加があり、将来も事業拡大を外部資本に頼る可能性を無視できない。大型買収を成長の中心とは見ず、提携先との共同開発と販路開拓を主な戦略として評価する。
現在の現金から研究開発と運転資金の備えを控除した余剰部分は約9億円と推定する。配当や自社株買いで資本を継続的に戻した実績が乏しいため、余剰現金の株主価値への反映には慎重な係数を使う。将来、Di1の量産投資より先に株主還元が拡大するなら、資本配分への評価を改める余地がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
RS1の累計100万台超という実績は、小規模な半導体設計企業として軽視できない。遊技機メーカーに一度採用されれば、画像処理ソフトウエアや開発環境との整合性が生まれ、次の機種でも同じ技術が選ばれやすい。成熟市場でも、競合から設計案件を獲得すれば出荷数量は増やせる。さらに、RS1から得た開発ノウハウは、低消費電力の画像処理やエッジAIへ応用できる。
Di1は、クラウドへ映像を送らずに機器内部でAI処理を行う需要を狙っている。監視カメラ、ドローン、産業機器は対象数量が大きく、その一部に採用されるだけでも、従来の遊技機向けを上回る売上源になりうる。約50社への開発キット提供は、まだ契約ではないものの、評価を受ける入口を広げた。インドのカメラ市場やドローンメーカーとの取り組みが量産発注につながれば、売上の伸びは速くなる。
FA事業も、国内の移動ロボット市場の拡大と中国などの製品供給網を利用できる。画像認識部品だけでなく、周辺機器と導入支援を組み合わせることで、売上の単価を上げられる可能性がある。会社の2030年売上高80億円という目標は、世界のAIカメラ市場から見れば過大な出荷シェアを必要としない。
財務に大きな有利子負債がないことも強みだ。現在の投資が顧客獲得につながれば、開発費の先行負担が一巡し、利益率は急速に改善する。十分な量産採用と継続受注を獲得した場合、10年後の価値は現在の時価総額を大きく上回りうる。
慎重な見方
RS1の採用実績は立派だが、遊技機向け半導体が成長市場であることまでは意味しない。国内の遊技機需要には構造的な逆風があり、型式試験への適合率が落ちると、顧客の新機種投入と同社の出荷は同時に減る。競合のアクセルは画像処理LSIで高いシェアを持ち、さらに拡大を狙っている。新世代のプラットフォームが登場するたびに、同社は既存の設計採用を守り直さなければならない。
Di1についても、開発キットの配布先と量産顧客の間には大きな隔たりがある。カメラやドローンのメーカーは、価格、消費電力、画像処理性能、ソフトウエアの完成度、供給能力を総合して選ぶ。大手半導体メーカーや専業AIチップ企業に対し、技術と販売網の両方で勝ち続ける保証はない。2030年の売上目標のうちDi1が占める割合は大きく、一つの立ち上げが遅れただけでも全社計画への影響は深刻になる。
FAも市場の成長率だけで利益を見積もれない。ロボット完成品の市場規模には、同社が直接販売しない部品や装置が含まれる。販売代理店として関わる案件では、仕入先が製品の仕様や価格を決めるため、自社の取り分が拡大市場の伸びより小さくなることもある。
実際の財務では、2026年3月期に営業損失が発生し、営業キャッシュフローも大幅なマイナスだった。2027年3月期の営業利益予想はわずか0.30億円である。現金が厚い間は開発を続けられるが、10年の間に追加増資が必要になれば既存株主の取り分は薄まる。現在の株価は収益実績より新規事業の成功期待に強く依存しており、長期保有に必要な安全域は乏しい。
どちらに重みを置いたか
既存のRS1については採用実績を評価するが、Di1とFAに関しては慎重な見方の根拠が強い。2026年3月期の赤字と2027年3月期の小幅黒字予想は、2030年の成長目標を利益に変える難しさを示している。10年後の価値を左右するのは、技術そのものの魅力より、量産数量、販売単価、開発費回収の実績である。
下側の確率を40%、上側を28%とし、慎重な方向へ12ポイント寄せた。これはAIエージェント代替を重ねて悲観しているためではない。主因はDi1の量産実績の不足、RS1の競争環境、FAの利益率の不確実性という、この会社固有の事実にある。資産による下支えを認めても、現在の時価総額は本質価値を大きく上回ると判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 3,037 円96 億円(+ 還元の換算額還元の合計 67 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 1,420 円45 億円、今との差 −45.9%、 期待の年率 +1.7%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 10,922 円344 億円 | 382 円12 億円 | +330.8% | +16.2% | 1,130 円36 億円 |
| やや楽観 | 18% | 5,387 円169 億円 | 159 円5 億円 | +111.4% | +7.9% | 998 円31 億円 |
| 中立 | 32% | 2,001 円63 億円 | 0 円0 億円 | −23.7% | −2.7% | 640 円20 億円 |
| やや悲観 | 25% | 895 円28 億円 | 0 円0 億円 | −65.9% | −10.2% | 224 円7 億円 |
| 悲観 | 15% | 740 円23 億円 | 0 円0 億円 | −71.8% | −11.9% | 111 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,037 円96 億円 | 67 円2 億円 | +18.3% | +1.7% | 3,104 円98 億円 |
今の株価時価総額 2,624 円83 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% Di1が世界の量産案件を獲得し、FAも主力事業へ育つ 利益 23 億円 · PER 14.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 10,922 円344 億円
Di1の低消費電力性能と開発環境が評価され、インドの監視カメラメーカーやドローン企業との開発案件が本格的な量産へ移る。採用先は複数の国と機器メーカーへ広がり、2036年には年間175万個のチップを出荷する。半導体の単価には競争による圧力があるが、画像処理機能を増やした製品構成が売上を支える。
FA事業は、移動ロボットや産業設備向けの画像認識機器で存在感を高める。販売パートナーの製品群に加えて自社技術を組み込み、案件数と1件当たりの売上がともに拡大する。遊技機向けRS1でも新世代プラットフォームへの採用が続き、成熟市場の中で競合から一部の案件を獲得する。
研究開発の増加に対して量産収入の伸びが勝り、製品開発費を十分に回収できる構造が整う。会社が長く無配を続けてきた方針にも変化が生まれ、一定の株主還元が始まる。ただし、新規事業が三つの市場で同時に成功する必要があり、これを当然の将来とは扱わない。
- 遊技機向け画像処理LSI・RS1:数量 24.0(RS1搭載遊技機相当の出荷数量(万台・年、推計))× 価格 1.32(搭載機1万台当たり実効売上(億円、関連売上を含む推計))→ 売上 32 億円・営業利益 6 億円。搭載24万台相当。新機種への継続採用で数量と単価を維持し、営業利益率20%。
- ロボットビジョン・FA関連機器:数量 850(機器・導入案件の販売換算件数(件・年、推計))× 価格 0.07(1案件当たり平均認識売上(億円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 9 億円。850案件×650万円。自社付加価値の拡大と販路増で営業利益率17%。
- 次世代エッジAI半導体・Di1:数量 175(Di1量産チップの年間出荷数量(万個))× 価格 0.55(チップ1万個当たり認識売上(億円・名目))→ 売上 96 億円・営業利益 24 億円。年間175万個、平均単価5,500円。複数の量産顧客を獲得。
- 組込GPU・AI技術のIPライセンス:数量 26.0(ライセンス対象端末の販売換算数量(百万台・年、推計))× 価格 0.17(対象端末100万台当たりの平均認識売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。2,600万台相当のライセンス対象数量。既存IPの横展開に成功。
- 半導体・AI関連プロフェッショナルサービス:数量 8.0(有償開発・設計支援の工数(人年換算))× 価格 0.12(1人年当たり認識売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替下でも専門性の高い設計支援が残る上振れケース。工数は現在と同水準。
倍率:資本コストk=8.25%、2036年以降の名目成長率g=2.5%。余剰現金9億円の税後利息0.126億円を純利益から外した事業純利益は23.074億円。事業用自己資本101億円に対するROEは22.85%。普通の堀として超過ROEの半分が残るRONIC=15.55%となり、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.595倍。事業純利益×PERに余剰現金9億円×戻り方0.75を足す。
確率:Di1で複数顧客の量産採用が続き、世界市場で約175万個の年間出荷を実現する場合。遊技機の設計採用維持とFAの販路拡大も同時に必要で、達成には連続した製品・営業上の成功を要する。
やや楽観 18% 新規半導体とFAが収益の二本柱になる 利益 12 億円 · PER 14.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,387 円169 億円
Di1が監視カメラと産業用機器で量産採用を獲得する。顧客数は順調に増えるものの、世界の大手半導体メーカーに広く対抗するまでには至らない。2036年の年間出荷数量は105万個となり、単価は量産化による値下げと高機能品への移行が打ち消し合う。
FA事業では、協業先のロボット関連製品と画像認識技術の販売が広がる。物流倉庫や工場での自動化投資を取り込み、既存の小規模な販売事業から一定の利益を生む事業へ成長する。アミューズメント分野ではRS1の採用は続くが、アクセルとの競争も残り、販売数量の増加は穏やかにとどまる。
新製品の開発費はなお必要だが、量産数量が増えることで固定費の負担は軽くなる。会社の中期ビジョンが描く事業の組み替えはおおむね実現し、研究開発型企業から黒字を継続する製品企業へ近づく。株主還元も一部始まるが、積極的な自社株買いまで定着するとは想定しない。
- 遊技機向け画像処理LSI・RS1:数量 21.5(RS1搭載遊技機相当の出荷数量(万台・年、推計))× 価格 1.22(搭載機1万台当たり実効売上(億円、関連売上を含む推計))→ 売上 26 億円・営業利益 5 億円。21.5万台相当。主要プラットフォームを維持しながら緩やかに増収。
- ロボットビジョン・FA関連機器:数量 650(機器・導入案件の販売換算件数(件・年、推計))× 価格 0.06(1案件当たり平均認識売上(億円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 5 億円。650案件×550万円。拡販に伴い粗利と共通費の吸収が改善。
- 次世代エッジAI半導体・Di1:数量 105(Di1量産チップの年間出荷数量(万個))× 価格 0.53(チップ1万個当たり認識売上(億円・名目))→ 売上 56 億円・営業利益 12 億円。年間105万個、平均単価5,300円。量産が複数顧客に拡大。
- 組込GPU・AI技術のIPライセンス:数量 20.0(ライセンス対象端末の販売換算数量(百万台・年、推計))× 価格 0.15(対象端末100万台当たりの平均認識売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。2,000万台相当。ロイヤルティ収入が増え、営業利益率48%。
- 半導体・AI関連プロフェッショナルサービス:数量 7.2(有償開発・設計支援の工数(人年換算))× 価格 0.12(1人年当たり認識売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替を一部受け、工数は現状の90%に縮小。
倍率:k=8.25%、g=2.5%。現金利息を外した事業純利益11.474億円と事業用自己資本61億円から事業ROE18.81%。普通の堀の残存係数0.5によりRONIC13.53%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.178倍を適用し、別途、余剰現金9億円に戻り方0.75を掛けた価値を足す。
確率:Di1が複数の顧客で量産化され、FAが会社目標を上回って成長する筋書き。実現可能な市場シェアの範囲だが、販路と供給体制の整備が必要であり、初期評価案件をそのまま受注とみなさない。
中立 32% Di1は一定の量産を獲得するが、成長は会社目標に届かない 利益 5 億円 · PER 12.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,001 円63 億円
RS1は遊技機市場の縮小と競争を受けながら、主要な設計採用を維持する。国内の新台投入は引き続き型式試験の結果に左右され、販売数量は大きく増えない。既存顧客での開発環境の蓄積が取引を支えるものの、競合に対して大幅な値上げを通すほどの力は持たない。
Di1は監視カメラと産業機器で一定の量産案件を獲得する。年間出荷数量は55万個に伸びるが、世界の大手SoCメーカーとの競争から単価上昇は限られる。会社が掲げる2030年の大きな売上目標には届かず、開発費を回収しながら慎重に製品世代を更新する事業となる。
FAは国内のロボット市場の伸びを背景に案件数を増やす。ただし、ロボット完成品の市場拡大率をそのまま自社の成長率にはできず、仕入先の価格政策と顧客の導入予算に利益率が左右される。プロフェッショナルサービスではAIエージェント代替により、人手を使う設計支援の工数が約35%減少する。
全社では2036年に売上約72億円、純利益約4.55億円を確保する。これは現在より稼ぐ力が改善する将来だが、資本コストを十分に超える高収益企業とまでは言えない。配当開始を確実なものとは見ず、事業資金を引き続き社内に留保する。
- 遊技機向け画像処理LSI・RS1:数量 19.0(RS1搭載遊技機相当の出荷数量(万台・年、推計))× 価格 1.14(搭載機1万台当たり実効売上(億円、関連売上を含む推計))→ 売上 22 億円・営業利益 4 億円。19万台相当。成熟市場で数量は微減、価格上昇は物価を下回る。
- ロボットビジョン・FA関連機器:数量 400(機器・導入案件の販売換算件数(件・年、推計))× 価格 0.05(1案件当たり平均認識売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。400案件×500万円。会社の2030年FA売上目標20億円に2036年で到達。
- 次世代エッジAI半導体・Di1:数量 55.0(Di1量産チップの年間出荷数量(万個))× 価格 0.50(チップ1万個当たり認識売上(億円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 6 億円。年間55万個、平均単価5,000円。量産化するが会社の想定ほど大きくない。
- 組込GPU・AI技術のIPライセンス:数量 16.5(ライセンス対象端末の販売換算数量(百万台・年、推計))× 価格 0.12(対象端末100万台当たりの平均認識売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。1,650万台相当。既存IPの採用増と単価競争が併存。
- 半導体・AI関連プロフェッショナルサービス:数量 5.2(有償開発・設計支援の工数(人年換算))× 価格 0.11(1人年当たり認識売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替型。工数8人年相当から5.2人年へ縮小し、価格は10年で約23%上昇。
倍率:k=8.25%、g=2.5%。余剰現金利息0.126億円を除く事業純利益4.424億円、事業用自己資本43億円から事業ROE10.29%。普通の堀で超過利益の半分が残るRONIC9.27%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.701倍。事業純利益に掛けた後、余剰現金9億円の75%である6.75億円を加える。現在の市場PERは参照しない。
確率:RS1の既存採用をおおむね維持し、FA・Di1で実際の売上を作る一方、2030年の会社目標を全面的には達成しない中心ケース。量産競争と開発費を反映し、過去の一時的な高利益率への回帰を前提にしない。
やや悲観 25% Di1の量産が遅れ、RS1の採用も侵食される 利益 −3 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 895 円28 億円
遊技機の市場規模が徐々に縮み、競合が次世代の画像処理プラットフォームで採用を増やす。RS1の既存案件は一部残るが、顧客が機種を更新する際の競争に負ける場面が増える。販売数量は現在の推計より減り、単価も物価上昇に追いつかない。
Di1は技術評価で一定の評価を得るものの、大口顧客の量産採用が続かない。新しい製品世代への投資を負担しながら出荷数量は10万個にとどまり、研究開発費を十分に回収できない。販売価格を下げても採用が増えなければ、成長市場に参加しているだけでは利益は生まれない。
FA事業は継続するが、案件の大型化が想定より進まず、仕入先の価格交渉力も強い。設計受託サービスではAIエージェントが定型的な開発工程を代替し、人手を使う仕事の量が大きく減る。会社は経費削減と開発案件の絞り込みを進め、赤字を抑えようとする。
事業の収益力は資本コストを下回り、株主還元を始める余裕も乏しい。一方で、現金や一部の売却可能資産は残り、直ちに倒産する事態までは想定しない。企業価値の中心は将来利益ではなく、残る資産と事業再編による回収可能額に移る。
- 遊技機向け画像処理LSI・RS1:数量 15.0(RS1搭載遊技機相当の出荷数量(万台・年、推計))× 価格 1.05(搭載機1万台当たり実効売上(億円、関連売上を含む推計))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。15万台相当。新機種での競争劣位と値下げ圧力が定着。
- ロボットビジョン・FA関連機器:数量 180(機器・導入案件の販売換算件数(件・年、推計))× 価格 0.04(1案件当たり平均認識売上(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。180案件×410万円。市場は拡大するが同社の販売拡大は限定的。
- 次世代エッジAI半導体・Di1:数量 10.0(Di1量産チップの年間出荷数量(万個))× 価格 0.40(チップ1万個当たり認識売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 −1 億円。年間10万個、平均単価4,000円。開発費を量産売上で回収できない。
- 組込GPU・AI技術のIPライセンス:数量 11.0(ライセンス対象端末の販売換算数量(百万台・年、推計))× 価格 0.12(対象端末100万台当たりの平均認識売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。ライセンス対象数量が減り、採算も悪化。
- 半導体・AI関連プロフェッショナルサービス:数量 3.5(有償開発・設計支援の工数(人年換算))× 価格 0.11(1人年当たり認識売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替と価格競争で人月型業務が縮小する。
倍率:2036年も赤字のため永続利益にPERを掛けず、添付factsにおける2025年3月期の実績自己資本36.1億円をPBR評価の基準として使う。36.1億円×0.78=28.158億円。2026年6月末の自己資本31.49億円は将来の自己資本推移の起点であり、PBR評価の基準額とは区別する。直近の現金17.82億円、投資有価証券7.08億円、売掛金・棚卸資産・有形固定資産の売却回収額から負債4.72億円を控除した保守的資産床約20.28億円を上回る。倍率は過去の市場PBRではなく、資産回収と事業縮小後の継続価値から判断した。
確率:競合の遊技機向けLSIが新規採用を奪い、Di1は試作から量産への移行に時間がかかる場合。2026年3月期の開発先行赤字と、会社が公表する評価顧客数が量産受注数ではない事実を踏まえた。
悲観 15% 画像処理チップの競争力を失い、事業は縮小均衡へ向かう 利益 −3 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 740 円23 億円
遊技機向けの次世代画像処理LSIで競合が優位に立ち、RS1の採用機種が大幅に減る。既存機種の補修や一部の小さな顧客向け供給は続くが、収益の柱としての地位を失う。市場そのものも縮小し、値上げによって数量減少を補うことはできない。
Di1は量産採用先をほとんど獲得できず、研究開発の一部は回収不能となる。AIカメラ市場は世界的に成長しても、顧客は競合製品か自社設計チップを選ぶ。会社は新規の大規模開発を断念し、既存技術の維持や限定的な受託に事業を絞り込む。
FAでも大きな販売網を構築できず、在庫評価損や契約条件の見直しが発生する。人の工数で売る設計開発サービスは、AIエージェントによる代替と顧客の内製化でさらに縮小する。経営は研究開発費を削減して現金の流出を止めようとするが、収益力の回復には至らない。
この場合、事業は資本コストを生む資産ではなくなる。価値を支えるのは残った現金、換金可能な金融資産、回収できる売掛金などであり、技術の将来性にはほとんど追加価値を認めない。資産がすべて失われる倒産には至らないが、株主が保有する企業の性格は大きく変わる。
- 遊技機向け画像処理LSI・RS1:数量 10.0(RS1搭載遊技機相当の出荷数量(万台・年、推計))× 価格 0.96(搭載機1万台当たり実効売上(億円、関連売上を含む推計))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。10万台相当。主力プラットフォームの設計採用を失う。
- ロボットビジョン・FA関連機器:数量 70.0(機器・導入案件の販売換算件数(件・年、推計))× 価格 0.04(1案件当たり平均認識売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。70案件×360万円。販売縮小と在庫損失で赤字。
- 次世代エッジAI半導体・Di1:数量 2.0(Di1量産チップの年間出荷数量(万個))× 価格 0.30(チップ1万個当たり認識売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。年間2万個相当のみ。量産商品として定着しない。
- 組込GPU・AI技術のIPライセンス:数量 7.0(ライセンス対象端末の販売換算数量(百万台・年、推計))× 価格 0.10(対象端末100万台当たりの平均認識売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。既存顧客の保守的なライセンス収入だけが残る。
- 半導体・AI関連プロフェッショナルサービス:数量 2.0(有償開発・設計支援の工数(人年換算))× 価格 0.10(1人年当たり認識売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で定型設計受託が縮小し、採算も悪化。
倍率:構造的な赤字事業に利益倍率を掛ける合理性は乏しく、添付factsの2025年3月期実績自己資本36.1億円をPBR評価の基準とする。36.1億円×0.645=23.2845億円。2026年6月末の自己資本31.49億円は資本推移の起点として別に扱う。評価額は現金、金融資産の一部、売掛金、棚卸資産、有形固定資産から全負債を控除した保守的資産床約20.28億円を上回る。のれん、開発中ソフトウエア、未実現の知的財産価値は床に含めない。過去のPBRの安値は根拠にしない。
確率:RS1で主要な設計採用を失い、Di1も量産事業として定着しない複合シナリオ。現金によって急な資金不足は避けられるものの、過去の複数の赤字期と半導体技術の世代交代の速さを考えれば無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
遊技機向け画像処理LSI・RS1
パチスロ・パチンコ機の映像描画と画像処理を担う半導体。累計100万台超の搭載実績を持つが、年間出荷個数と平均契約単価は非開示である。
| 数量RS1搭載遊技機相当の出荷数量(万台・年、推計) | 価格搭載機1万台当たり実効売上(億円、関連売上を含む推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 0.98 | 20 | 4 |
| 10 年後 中立 | 19.0 | 1.14 | 22 | 4 |
取り方:会社の2026年3月期成長可能性資料が開示するアミューズメント分野売上19.51億円を起点とする。競合アクセルが示す2025年のパチスロ新台約70万台と画像処理LSI約46万個の販売数量を参照し、同社の特定プラットフォーム向けRS1搭載機を年20万台相当と推計した。19.51億円÷20万台から実効単価約9,755円を得るが、これは開示された実際のチップ販売単価ではなく、当該用途の関連売上を含めた売上換算係数である。年間個数と単価が非開示のため推計誤差は大きい。営業利益3.5億円も非開示の製品別採算を表す分析上の仮配分で、全社の実績営業利益ではない。
ロボットビジョン・FA関連機器
移動ロボットや産業設備に用いる画像認識機器、制御関連製品、周辺機器の販売。中国などの技術・製品パートナーと販路を広げる。
| 数量機器・導入案件の販売換算件数(件・年、推計) | 価格1案件当たり平均認識売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 90.0 | 0.03 | 3 | −1 |
| 10 年後 中立 | 400 | 0.05 | 20 | 2 |
取り方:2026年3月期の製品事業22.18億円から、アミューズメント用途19.51億円を控除した2.67億円をFA関連製品の便宜的な起点とした。会社の製品別分類と用途別分類は交差するため、これは正確なセグメント売上ではない。年間90件、1案件約297万円は機器販売と関連支援をまとめた推計であり、実際の案件数・単価は非開示。会社資料の国内AMR・AGV・AGF市場は2030年に約28,300台・2,820億円だが、完成ロボットの市場規模を部品の売上にそのまま使っていない。
次世代エッジAI半導体・Di1
監視カメラ、ドローン、産業機器などに搭載する低消費電力AI処理SoC。量産拡大が新規事業の成否を左右する。
| 数量Di1量産チップの年間出荷数量(万個) | 価格チップ1万個当たり認識売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 0.50 | 0 | −3 |
| 10 年後 中立 | 55.0 | 0.50 | 28 | 6 |
取り方:会社は約50社への開発キット提供や量産候補案件を説明するが、2026年3月期時点でDi1の量産チップ個数と独立した売上高は開示していない。量産売上は保守的にゼロを起点とし、評価キットなどの小さな既存売上はFA等の推計側に残した。価格0.5億円/万個は平均認識単価5,000円を意味する将来の試算用仮定であり、現在の契約単価ではない。営業損失3.01億円は会社開示のDi1関連研究開発費を便宜的に対応させたもの。2030年売上目標30億円と、対象とするカメラ市場約2.7億台を将来数量の検証材料とする。
組込GPU・AI技術のIPライセンス
画像処理・組み込み向けの独自技術を半導体メーカー等へ使用許諾する。初期ライセンス料、ロイヤルティ、関連支援を含む。
| 数量ライセンス対象端末の販売換算数量(百万台・年、推計) | 価格対象端末100万台当たりの平均認識売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14.0 | 0.10 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 16.5 | 0.12 | 2 | 1 |
取り方:会社開示の2026年3月期IPコアライセンス売上1.39億円を採用。対象端末の年間実出荷数量と契約当たり単価は非開示のため、1,400万台換算と端末当たり約9.93円の実効ロイヤルティを仮定した。初期契約料等も含むため、数量は実際に計上された端末台数ではない。営業利益0.9億円は研究開発費と本社費配賦前の仮定。使用量課金サービスの規模も非開示であり、規制対応や解約率の証拠を伴う『記録の正本』型の堀は認めていない。
半導体・AI関連プロフェッショナルサービス
顧客の画像処理・半導体・AIシステムに関する設計開発支援など、人の工数を使って提供する役務。
| 数量有償開発・設計支援の工数(人年換算) | 価格1人年当たり認識売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 0.09 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 5.2 | 0.11 | 1 | 0 |
取り方:会社開示の2026年3月期プロフェッショナルサービス売上0.74億円を、約8人年×925万円で換算した。人数・工数・役務単価は非開示のため分析上の代理変数である。AIエージェント代替に直接該当する人月・工数型として扱い、中立2036年の工数は現在の65%の5.2人年、価格は現在の約1.23倍に抑える。成果報酬型への転換を証明する金額開示は確認できず、2036年以降の長期名目成長率は0%とする。
リスクと懸念
Di1の量産採用が計画を下回る
世界のAIカメラ市場が拡大しても、それがDi1の受注につながるとは限らない。開発キットの提供先や試作協業先は量産契約先とは異なる。量産開始の遅れ、採用後の数量不足、低い販売単価のいずれかが発生すると、研究開発費を回収できず、会社の2030年売上目標と将来利益の両方が大きく下振れる。
遊技機市場の縮小と画像処理LSIの競争
アミューズメント向けは直近の用途別売上の約8割を占める。型式試験への適合率や新機種の発売時期によって販売数量が振れるうえ、アクセルとの設計採用競争がある。新しい遊技機プラットフォームで採用を逃すと、同じ顧客に長く供給してきた強みが薄れ、継続受注と価格交渉力が同時に傷む。
大手半導体メーカーとの価格・供給競争
Di1はAmbarella、Qualcomm、NXPなどの製品や、顧客による専用チップ設計と競争する。消費電力や処理性能で優位な評価を得ても、顧客はソフトウエアの完成度、供給期間、価格、量産品質を重視する。販売数量の拡大を急ぐほど単価を引き下げる必要が生じ、売上が伸びても資本コストを上回る利益が残らない可能性がある。
開発費・在庫と財務余力の減少
2026年3月期は営業赤字となり、営業キャッシュフローも大幅なマイナスだった。ファブレス企業でも、製品開発、量産準備、部品在庫、品質保証には資金を要する。現金残高が厚いことは短期の安全性を高めるが、開発失敗を繰り返せば資産は減る。新株発行に頼る場合は既存株主の取り分が薄まる。
FAの対象市場と実際の取り分の違い
会社が示すAMR・AGV・AGF市場の規模には、ロボット完成品や同社が販売しない部分が含まれる。市場の伸びをそのまま画像認識機器や関連製品の売上成長に使うことはできない。取引先の供給能力や価格政策、販売代理店としての取り分に左右されるため、案件数が増えても期待した営業利益率に届かない可能性がある。
AIエージェント代替と受託設計の収益縮小
プロフェッショナルサービスは人の工数で設計開発を提供するため、AIエージェント代替に直接さらされる。中立では10年後の工数を現在の65%に縮小させた。IPライセンス内の利用量課金サービスにも競争圧力があるが、売上内訳は非開示だ。大部分を占める物理的な半導体製品にまで同じ縮小率を機械的に掛けず、工数型の部分だけ別に評価した。
今後の分かれ目
- Di1の量産出荷数量と売上高が独立して開示され、複数顧客への継続供給が確認できたら
- 開発キットの評価段階から事業収益化へ進んだと判断できる。量産個数と実効単価を更新し、やや楽観・楽観の確率を引き上げる。ただし、粗利益と研究開発費回収も同時に確認する。
- 2028年3月期の売上高50億円という中間目標を達成し、営業利益と営業キャッシュフローも黒字なら
- 新規事業が全社の固定費を賄い始めた証拠になる。中立のDi1・FA数量を引き上げ、研究開発投資の増分収益率を再評価する。売上目標だけを達成しても評価は変えない。
- RS1の搭載機種や採用プラットフォームが減少し、アクセルの画像処理LSIシェアが拡大したら
- 遊技機向けの数量と価格をともに見直し、やや悲観・悲観の確率を高める。設計採用が失われると次の複数機種への継続供給にも影響するため、一時的な販売時期のずれとは区別する。
- FA売上が増えても粗利益率が改善せず、売掛金と棚卸資産だけが増えたら
- ロボット市場の拡大から同社が得られる付加価値は小さいと判断する。FAの案件単価と利益率を下げ、将来の運転資金需要を引き上げる。現金の余剰部分も再計算する。
- 現金と換金可能な金融資産が継続的に減り、追加増資や大規模な新株予約権発行が行われたら
- 資産の下値支えを縮小するとともに、既存株主の持分希薄化を評価に反映する。資金調達によって会社が存続できても、1株当たりの取り分が維持されるとは限らない。
- 継続配当、自社株買い、または数値を伴う総還元方針が正式に導入されたら
- 余剰現金が株主へ戻る確度を見直す。実績により配当性向の中央値が50%以上となる、または自己株式取得で株数が累積5%以上減るなどの条件が整えば、現金の戻り方を1.0へ改める余地がある。
見ておくもの
- Di1の量産採用社数、年間チップ出荷個数、1個当たり実効売上
- 開発キット提供先から継続量産顧客への移行率
- RS1搭載遊技機の新機種数とアミューズメント分野売上
- アクセルの画像処理LSI販売数量と公表シェア
- FA関連の案件数、売上高、粗利益率、売掛金・棚卸資産の増減
- 2028年3月期売上高50億円、2030年3月期売上高80億円への進捗
- 営業キャッシュフロー、研究開発費、現金・投資有価証券残高、配当・自社株買いの開始
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額約88.31億円を起点に将来の売上を逆算していない。遊技機向けRS1は国内新台数量と競合のLSI出荷実績、Di1は量産チップ個数、FAは販売案件数、IPは対象端末換算数量、受託は人年換算工数を、それぞれ名目単価と掛け合わせた。数量が非開示の部分は仮定と明記し、実際の契約単価と区別した。
資本コスト8.25%、2036年以降の名目成長率2.5%、普通の堀に対応する増分資本利益率から、利益が黒字の上位三つの筋書きの正当化PERを決めた。やや悲観と悲観は赤字のため実績自己資本と換金可能資産の床から評価した。悲観側のPBRには添付factsの2025年3月期自己資本36.1億円を使用し、やや悲観は36.1×0.78=28.158億円、悲観は36.1×0.645=23.2845億円とした。2026年6月末の実績自己資本31.49億円は将来の資本推移の起点に使用している。新リース会計基準による表示変更は将来の利益と負債を二重に数えないよう扱う。将来価値の加重平均を現在へ割り引いた結果は約44.6億円であり、現在の株価は最後の比較だけに用いた。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本資本コスト7.5%に、循環+0.5%、値決め力+0.5%、純現金−0.25%、寿命0%を加えた8.25%。直近の赤字は開発先行によるもので、2026年6月末の自己資本と現金残高を踏まえると、現時点で財務存続上の特別上乗せは必要ない。