結論
ビザスクは、企業や投資家が必要とする専門知識を、実務経験者との面談や調査を通じて届ける会社である。筆者の結論は「割高」だ。理由は、足元の好業績を否定するからではない。AIが調査の仕事そのものを変えることに加え、過去の大型買収で発行した優先株式が、普通株主に帰属する価値を大きく左右するからである。
事業の強みは確かにある。登録エキスパートは国内外で80万人を超え、専門家とのマッチングを通じた年間支援実績も大きい。2026年2月期には営業収益が約100億円、営業利益が約13億円に達し、翌期上期も国内顧客を中心に増収増益となった。企業がまだ誰も文章にしていない経験や現場の一次情報を求める限り、この商売が完全に消えるとは考えにくい。
ただし、今の収益を10年間そのまま伸ばしてはいけない。資料の検索、業界分析、専門家候補の探索、調査票の作成と結果の整理は、AIエージェントが代替しやすい。残るのは、本当にその場にいた人から最新の事実を聞き、その発言の適格性を管理する高付加価値の部分だろう。現状のサービス全体が、その希少な部分だけで成り立っているわけではない。
さらに、Coleman Researchの買収に伴うA種・B種優先株式には、年率3%の累積配当、優先的な残余財産分配、普通株への転換権がある。会社の純現金を普通株主の取り分として丸ごと評価することはできない。これらを踏まえた5つの筋書きの加重現在価値は約25億円で、基準時価総額約72億円を約65%下回る。これは優先株が普通株へ転換されるという単純化を含む評価であり、現金償還が選ばれる場合には、普通株の価値がさらに圧迫される可能性もある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ビザスクを保有する理由は専門家の人数そのものではない。顧客が10年後にも繰り返し支払い、専門家への謝礼と社員の人件費を差し引いたあとに、追加資本をあまり必要としない現金が残るかどうかである。実務経験者から直接話を聞く必要は残るが、その周囲にある情報収集や資料作成まで現在の単価で売り続けられる保証はない。
現状の取扱高は利用実績を示す良い指標だ。しかし、取扱高の拡大と株主利益の拡大は同じではない。専門家への支払いが増え、顧客の値下げ要求も強まれば、取引量だけが伸びても事業価値は増えない。調査と人材紹介を広げる際には、社員一人当たりの事業利益、顧客の継続利用、獲得費用を見なければならない。AI活用も、それにより営業利益が増えたと確認できて初めて評価できる。
経営の資本配分には慎重になる。Coleman買収によって海外事業を一気に手に入れたが、その後の巨額減損と優先株の存在は、普通株主にとって支払った代償が大きかったことを示している。利益が回復したからといって、失われた資本の価値が元に戻るわけではない。今後の増分利益が資本コストを超えるかを見届ける必要がある。
最も大切なのは、会社全体の価値と普通株主の取り分を区別することだ。優先株の残余財産請求は帳簿上の普通の借入金ではないが、普通株主より前に経済的利益を受け取る契約である。純現金をそのまま普通株の安全域とすることはできない。事業には一定の価値があり、経営改善の余地もある。それでも、将来の利益、AIの代替、優先株の出口という三つの不確実性を引き受けるには、現在の時価総額には十分な安全域がない。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は、人が持つ経験を必要とする企業へ届けることである。顧客が調査テーマを示すと、ビザスクは適切な実務経験を持つ専門家を探し、適格性を確認したうえで面談を設定する。専門家への謝礼を含む取扱高と、会社が会計上認識する営業収益は一致しない。平均的なフルサポート型インタビューの料金は1時間当たり約10万円だが、実際にはアンケート、調査受託、業務委託、人材紹介も扱うため、全案件が同じ単価ではない。
法定の報告セグメントは「知見プラットフォーム事業」の一つである。一方、会社は経営管理上、国内事業法人、コンサル・金融の国内顧客、コンサル・金融の海外顧客という3領域に分けている。2026年2月期の営業収益は、それぞれ約30億円、29億円、41億円だった。国内事業法人は製造業の研究開発や新規事業の調査が中心で、面談以外にも調査支援や外部人材の活用へ広げている。
コンサル・金融の国内顧客には、コンサルティング会社、機関投資家、投資ファンドが並ぶ。投資判断や事業買収の前に、業界の現場経験者へ短時間で聞けることが商品となる。海外顧客向けの中核は2021年に買収した米国Coleman Researchであり、世界各地の専門家を結び付ける。国内2領域が伸びる一方、海外顧客向けの2026年2月期取扱高は前年より減少しており、地域ごとの勢いは異なる。
足元では、調査の自動化や専門家の探索にAIを使う取り組みも進む。ビザスクcompassやAI Scoutは、顧客体験と運営効率を変えうる。しかし、これらが独立した新しい収益源として既存の調査需要の減少を上回るだけの売上額は、確認できる開示では切り分けられていない。10年後の売上を考える際には、AIの導入を直ちに新需要の創出とみなさず、顧客が対価を払ってまで人に聞く案件が何件残るかを重視する。
優良さと弱いところ
同社の堀、すなわち競合が簡単にまねできない強みは、専門家の登録数だけではない。誰がどの分野の実務を経験したかを把握し、短期間で候補者を選び、機密情報や利益相反を管理しながら面談を成立させる運営力にある。大企業の研究開発部門や投資ファンドは、単に回答を得るだけでなく、相手の経歴が確かであることにも価値を見いだす。こうした信頼関係と国内の顧客基盤には、一定の参入障壁がある。
もっとも、堀を強いと断言するには証拠が足りない。低い解約率が長期間続くことや、顧客が移行に年単位を要すること、値上げを継続して通せることは、十分な定量開示から確認できない。専門家が複数のネットワークに登録することもでき、顧客はGLG、AlphaSights、Third Bridge、Guidepointなどに案件ごとに発注先を変えられる。取引が成立するたびに価値を生むネットワークではあるが、決済基盤や法律上の記録の正本のような不可欠性はない。
利益率の改善も慎重に読む必要がある。2026年2月期の営業利益率は13%台まで回復したが、その前には大規模な買収減損があった。直近でも米国子会社のソフトウエア開発費に係る減損が続いており、調整後の利益指標だけでは株主の負担を測れない。開発費を資産計上しても将来の利用価値が乏しければ減損が必要になる。
純現金があり、日々の資金繰りがただちに危うい会社ではない。一方、自己資本は過去の減損で薄くなったため、直近の高ROEを持続的な高収益投資の証拠にしてはいけない。今後はAIによる人件費削減が売上の減少より速いか、専門家の獲得と案件管理への追加投資が資本コストを上回る利益を生むかが問われる。堀は存在するが、その幅が今後広がると判断するにはまだ早い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界のエキスパートネットワーク市場は、業界事業者Inex Oneの推計で2025年に約30億ドル、1ドル150円なら約4,500億円の規模である。2023年から2025年には年率約12%で拡大したという。ビザスクの2026年2月期連結営業収益約100億円は、この世界市場の約2.2%に相当する。ただし市場の定義、対象年度、売上の総額・純額表示が完全には揃わないため、これは規模を測る参考値であって厳密な世界シェアではない。
国内では会社が調査関連市場として約3.7兆円、2024年のビジネスコンサルティング市場として7,987億円を挙げる。しかし、これらは専門家面談そのものの市場ではない。製造業の研究費やコンサルティング会社の売上を、すべて同社が獲得できる市場と見なすのは誤りである。国内のエキスパートネットワーク市場について、競合まで同じ基準で集計した信頼できるシェア表は確認できない。従って国内の数量は、同社自身が開示する顧客領域別の取扱高と、実際のマッチング活動を基準に見通す。
競争は厳しくなる。海外にはGLG、AlphaSights、Third Bridge、Guidepoint、Dialecticaがあり、仲介プラットフォームのInex Oneも顧客に複数のネットワークを比較する手段を提供する。国内でも同種の専門家紹介や調査受託と競合する。世界市場が拡大しても、海外顧客向けの取扱高が2026年2月期に減少した事実は、市場成長がそのまま同社のシェア拡大になるわけではないことを示している。
10年間で最も大きな変化はAIエージェントによる調査方法の転換だろう。公開情報の収集、過去の面談記録の検索、業界構造の整理は自動化が進む。大量の調査をこなすコンサルティング会社ほど、顧客企業自身による調査の内製化も進めやすい。他方、規制産業の運営経験、工場の具体的な問題、新興市場の未公開の慣行など、本人への直接確認を要する需要は残る。筆者は市場全体が名目では伸びる可能性を認めながら、従来型の有料面談に換算した同社の数量は中立で10年後に現在の6〜7割程度になると見る。名目価格も物価上昇を完全には転嫁できず、世界市場での実効シェアは縮む可能性が高い。
資本政策と M&A
資本配分を考えるうえで避けられないのが、2021年の米国Coleman Research買収である。買収は米国の顧客と専門家ネットワークを一度に獲得する狙いだった。しかし期待した稼ぎが実現せず、2024年2月期には大規模な減損を計上して、連結純損失は約126億円に達した。その後に利益は回復しているが、買収で支払った資本に十分な利回りを得たと評価するのは難しい。
資金調達で発行したA種75,000株とB種13,817株の優先株式は、払込額面の合計が約88.8億円である。いずれも年率3%の優先配当が未払いの場合に複利で累積し、普通株より先に利益配当と残余財産分配を受ける。普通株への転換価額は当初3,724円で、累積未払配当を含む請求額が転換株数の算定対象となる。普通株主にとっては、資金を現金で償還するか、株数が増えるかという重い選択が残されている。
会社は2030年2月期の取扱高300億円以上を中長期目標とする。2027年2月期の通期予想は取扱高約160億円、営業収益約110億円、営業利益14億円、純利益7.5億円であり、足元の成長は続いている。一方、かつて掲げた2027年2月期の取扱高200億円以上という目標からは下方に離れた。中期計画にROEや配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額の具体的な数字の約束はない。
会社設立以来、普通株への配当実績はなく、2027年2月期も無配予想である。過去の成長投資の成果と優先株主の権利が整理されるまでは、余剰資金が普通株主へ戻ると強く期待しない。新たな大型買収よりも、既存ネットワークの収益性改善、借入返済、優先株式の処理を優先することが合理的だと考える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ビザスクの最大の資産は、世界80万人を超える専門家と、その経歴を把握して迅速に面談を成立させる運営体制である。AIが普及して公開情報の分析が簡単になるほど、他の人がまだ知らない一次情報の価値は相対的に高まる可能性がある。新製品の市場調査、製造現場の問題、投資先の事業評価などでは、文章の要約だけで意思決定することはできない。顧客が発言者の経歴や適格性を確かめたい場面では、信頼できる専門家の紹介サービスが残る。
国内顧客の足元の成長も力強い。2027年2月期上期の取扱高は、国内事業法人で前年同期比約20%、コンサル・金融の国内顧客で約25%増えた。海外エキスパートに対する国内顧客の面談需要も伸びている。これは単に国内の専門家を紹介するサービスから、世界の実務経験にアクセスできる基盤へ移行していることを示す。専門家の登録数が増えるほど特殊な案件にも対応でき、優良な顧客が増えれば専門家に新しい仕事が集まるという好循環も期待できる。
AIは脅威だけでなく費用を下げる手段でもある。AI Scoutなどを使って人手による候補者探索や案件管理を効率化し、compassによって顧客の調査準備を支援できれば、事業利益率は上がりうる。海外Colemanの採算が安定すれば、現在重い共通費用も売上に対して軽くなる。大型買収によって生じた損失はすでに過去のものとして、今後は稼ぐ力の改善に経営資源を集中できる。
優先株も、会社価値が十分に高まれば普通株への転換を通じて整理できる。そうなれば、累積配当による現金負担をなくし、資本構成が単純になる。専門家へのアクセスという独自の価値が残り、国内での地位を保ち、海外の収益性まで改善できれば、直近の利益を上回るオーナー利益が生まれる余地がある。
慎重な見方
専門家ネットワークの強みを認めても、それが今の収益規模を守るとは限らない。従来はコンサルティング会社の若手社員が数日かけて調べていた資料を、AIエージェントが短時間で集めて整理できる。過去のインタビュー記録を検索し、論点を抽出し、必要な専門家候補を探す作業まで自動化されれば、有料面談を必要とする案件は絞られる。顧客の調査予算が縮み、残った案件にも価格競争が起きる可能性がある。
差別化の証拠もまだ十分ではない。登録専門家の多さは有益だが、同じ専門家が他社にも登録できる以上、排他的な資産ではない。顧客は案件ごとに複数の会社を比較でき、海外にはGLGやAlphaSightsなどの大手がいる。規制上の記録の保管先を握っているわけでもなく、他社への乗り換えに長いシステム移行が必要な事業でもない。顧客との関係だけで実質値上げを続ける力は、未証明である。
Coleman買収は、経営判断の弱さを示す重大な事例だった。売上規模は一度に広がったが、巨額の減損によってそれまで積み上げた自己資本が失われた。海外顧客向けの取扱高は2026年2月期に減少し、その後の回復も国内ほど力強くない。さらにソフトウエアの減損が続くなか、調整後利益だけを強調しても株主の実際の負担は消えない。新たな資金調達や再編による希薄化も否定できない。
普通株主にとって最も厳しいのは、優先株式の請求権である。額面約88.8億円に年率3%の累積配当が積み上がり、将来の現金償還では普通株より先に支払いを受ける。普通株へ転換すれば株数が増えるが、転換価額を下回る企業価値では、優先株主が自発的に転換する経済的動機は弱い。事業が黒字で存続しても、その価値の多くを優先株主が受け取り、普通株にはわずかな残余価値しか残らない事態がありうる。
どちらに重みを置いたか
専門家への直接アクセスが10年後も必要だという主張には説得力がある。国内事業の足元の成長も確認できる。ただし、登録者数を強い独占的な堀とみなす証拠は不足している。さらに、Coleman買収の減損と優先株の累積請求は、ビザスク固有の普通株主リスクである。
確率は楽観8%、やや楽観17%、中立34%、やや悲観26%、悲観15%とし、下側を41%にした。AI代替による件数減少は中立の数量と長期成長率にすでに反映し、確率だけで同じ損失を重ねていない。下に寄せた追加の理由は、海外事業の競争力低下、買収後の資本配分、優先株の処理が普通株の取り分を左右することである。会社の存続可能性と普通株の投資価値を混同しない判断を優先する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 829 円77 億円(+ 還元の換算額還元の合計 9 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 399 円37 億円、今との差 −43.0%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,570 円239 億円 | 62 円6 億円 | +275.9% | +14.4% | 211 円20 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,746 円162 億円 | 23 円2 億円 | +152.7% | +9.8% | 301 円28 億円 |
| 中立 | 34% | 814 円76 億円 | 0 円0 億円 | +16.2% | +1.5% | 277 円26 億円 |
| やや悲観 | 26% | 186 円17 億円 | 0 円0 億円 | −73.5% | −12.4% | 48 円4 億円 |
| 悲観 | 15% | 13 円1 億円 | 0 円0 億円 | −98.1% | −32.6% | 2 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 829 円77 億円 | 9 円1 億円 | +19.7% | +1.8% | 838 円78 億円 |
今の株価時価総額 700 円65 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 一次情報の価値が高まり、AIで運営効率も改善 利益 20 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,570 円239 億円
AIが公開資料の調査を効率化するにつれて、顧客はむしろ信頼できる一次情報へ予算を集中させる。製造業の研究開発、企業買収、規制産業の調査では、本人に聞かなければ得られない経験の価値が残る。ビザスクは国内の法人顧客基盤を守り、海外専門家へのアクセスを強みにして、世界各国の競合に顧客を奪われない。
専門家候補の探索や案件管理にはAI Scoutを使い、調査前の準備にはcompassを組み合わせる。人が担う仕事を高難度の案件に集中させることで、取扱件数を維持しながら社員一人当たりの事業利益が改善する。海外Colemanも人員配置を見直し、低採算の案件を減らして利益率を引き上げる。グループの営業収益は約133億円、営業利益は約29億円となる。
経営は新たな大型買収を控え、既存の専門家ネットワークと顧客基盤の改善に資本を使う。優先株式の処理でも普通株主に過度な追加負担を生じさせず、普通株への転換による資本構成の整理が進む。利益が積み上がった後には普通株への還元も始まる。もっとも、10年先には業界の高速成長が終わり、その後は名目利益が大きく増え続ける前提にはしない。
- 国内事業法人向け:数量 47,930(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。実際のインタビュー件数ではない)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 40 億円・営業利益 16 億円。件換算数量は現在と同じ。認識単価は物価10年分に相当する1.34倍。共通費控除前の事業利益率40%。
- コンサル・金融向け(国内顧客):数量 40,510(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。実際の案件数とは異なる)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 39 億円・営業利益 22 億円。国内金融・コンサルの高難度案件を維持。数量1.00倍、価格1.34倍、共通費控除前利益率55%。
- コンサル・金融向け(海外顧客):数量 55,791(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。各国の実際の面談単価や案件数ではない)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 53 億円・営業利益 18 億円。海外数量0.98倍、価格1.34倍。Colemanの業務効率化により事業利益率34%。
倍率:10年後のROEは20.4÷144.4=約14.1%、資本コストは7.75%。通常の堀として超過ROEの残存割合を2分の1とすると、増分資本のRONICは約10.9%となる。ただしAIエージェント代替により10年後以降の名目成長率g_longは0%なので、正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)=1÷0.0775=12.90倍。上限から恣意的に割り引かず、約20.4億円の純利益に対応する263.16億円を会社全体の価値とする。優先株の普通株転換による既存株主の取り分は別途holder_shareで反映する。
確率:国内の優位を維持し、海外の採算回復とAIによる運営効率化を同時に達成する筋書きである。ただしAI製品単独の収益実績がまだ十分に確認できず、専門家面談に換算した数量が10年後もほぼ維持されるには複数の条件が必要なため8%とする。
やや楽観 17% 国内の強さが残り、海外の採算が回復 利益 13 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,746 円162 億円
国内の研究開発企業や投資家は、重要な意思決定の前に専門家の経験を聞き続ける。ビザスクは国内のネットワークと顧客接点を生かし、競合より短い時間で適格な候補者を紹介できる会社として地位を保つ。一方、一般的な業界調査やアンケートの一部は顧客企業がAIを使って自ら実施するようになり、従来型の有償案件は減少する。
海外ではGLGやAlphaSightsとの競争が続くものの、Colemanの人員管理と案件管理の改善が進む。AIによって候補者探索や事務処理の工数を減らし、少ない取扱件数でも利益を確保する。国内顧客向けの営業活動は強化できるが、顧客が面談に払う価格は物価の上昇分ほどは伸びない。営業収益は約110億円、営業利益は約18億円となる。
新たな大型買収は行わず、資本は営業効率と顧客の継続利用率を改善するために使われる。優先株式は条件調整を経て普通株へ転換され、資本構成が徐々に整理される。普通株主への現金還元は限定的であるが、事業として一定のオーナー利益を残す。10年後の業界は成熟し、現在の高い成長率がその後も続くとは考えない。
- 国内事業法人向け:数量 40,740(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。実際のインタビュー件数ではない)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 33 億円・営業利益 13 億円。件換算数量0.85倍、認識単価1.30倍。共通費控除前事業利益率38.5%。
- コンサル・金融向け(国内顧客):数量 36,459(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。実際の案件数とは異なる)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 34 億円・営業利益 18 億円。数量0.90倍、価格1.30倍。国内の専門家面談に対する需要が比較的残る。
- コンサル・金融向け(海外顧客):数量 48,390(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。各国の実際の面談単価や案件数ではない)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 13 億円。数量0.85倍、価格1.25倍。案件管理の効率化により事業利益率30%。
倍率:10年後のROEは12.9÷124.4=約10.4%と資本コスト7.75%を上回る。超過ROEの残存割合を2分の1とするとRONICは約9.1%。10年より先のg_longはAI代替を反映した名目0%であるため、正当化PERの上限は1÷7.75%=12.90倍となる。過去や同業の市場倍率は根拠にしない。
確率:国内の顧客関係と一次情報の価値は持続しうる一方、調査の周辺作業にはAI代替が及ぶ。海外の一部回復と国内の利益率改善は実現可能だが、数量減少を全て補うほどではないため17%とする。
中立 34% 一次情報は残るが、有償調査の件数が減る 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 814 円76 億円
企業が専門家に直接話を聞く必要は残る。ただし、その前段階にあった資料の検索、業界の概況調査、調査票の作成、報告書の下書きはAIが担当するようになる。顧客が支払う予算は、誰でも調べられる情報から、本人への直接確認が必要な案件へ移る。ビザスクは日本の大企業との関係を守るが、従来型の調査をまとめて受託する取扱量は減少する。
国内事業法人と国内コンサル・金融顧客の件換算数量は、現在の約7割まで減る。海外は競合が多く、同じ専門家へ複数のネットワークを通じてアクセスできるため、数量は6割まで減る。価格にも顧客の内製化による圧力がかかり、物価上昇分を全て転嫁できない。これにより営業収益は約75億円となる。
会社側でもAIを用いた候補者探索や事務処理の自動化が進み、社員数や共通費を削減する。共通費の削減で売上減少の一部を補うものの、顧客案件の少ない海外拠点には固定費が残る。営業利益は約7億円、純利益は約5億円まで低下する。10年を通じた利益の蓄積で帳簿上の自己資本は増えるが、利益の伸びが鈍るため資本効率は低下する。優先株の経済的な請求権が残る以上、普通株主に帰属する価値には厳しい制約がある。
- 国内事業法人向け:数量 33,551(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。実際のインタビュー件数ではない)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 9 億円。AIエージェント代替の人月・情報調査型。件換算数量0.70倍、価格1.20倍。管理会計上の共通費控除前利益率35.5%。
- コンサル・金融向け(国内顧客):数量 27,547(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。実際の案件数とは異なる)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 24 億円・営業利益 12 億円。数量0.68倍、価格1.18倍。投資判断に必要な一次情報は残るが、周辺の調査工数は縮む。
- コンサル・金融向け(海外顧客):数量 34,158(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。各国の実際の面談単価や案件数ではない)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 7 億円。数量0.60倍、価格1.10倍。GLGなどとの競争とAI代替により国内より大きく縮小。
倍率:10年後ROEは5.07÷92.4=約5.5%となり、資本コスト7.75%を下回る。追加の成長投資は価値を十分に増やさないため、ROEが資本コスト以下の会社に認める上限1÷kを用いる。g_longは0%であり、正当化PERは12.90倍。純利益約5.07億円に対応する会社全体の価値は65.40億円。優先株の転換による既存普通株主の取り分約71.82%は最後に適用し、倍率には二重に織り込まない。
確率:国内の顧客基盤と専門家ネットワークが一定の取引を守る一方、AIが従来の情報収集と調査工数を代替する最も自然な筋書きである。件換算数量を国内で0.68~0.70倍、海外で0.60倍とし、34%の中心確率を置く。
やや悲観 26% 調査の内製化が進み、営業利益はほぼ消える 利益 0 億円 · PER 7.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 186 円17 億円
大手コンサルティング会社と投資ファンドは、自社のAI調査環境を整え、必要な場合だけ専門家ネットワークを利用するようになる。企業の研究開発部門も、公開情報を探す業務の多くを内製化する。ビザスクのネットワークには引き続き実務経験者が登録するが、その人数が案件数を保証するわけではない。顧客はGLGやAlphaSightsを含む複数社に同じ依頼を出し、競争が単価にも及ぶ。
国内の2領域は件換算数量が現在の55%、海外は50%に減る。価格は物価に比べて伸びず、海外では実質的な値下げ圧力も強い。営業収益は約54億円となり、固定費を支えるには十分でなくなる。採用抑制、事務所の縮小、AIによる社内業務の自動化を進めるが、専門家の審査や顧客との折衝には一定の人員が要る。
経営は海外の低採算業務を整理し、新規買収を停止する。収益を改善する余地はあるものの、最終的な営業利益はほぼゼロにとどまる。優先株の累積配当は普通株への還元より優先され、既存普通株主は利益成長の果実を受け取りにくい。ここでは事業の継続価値をわずかに認めるが、純現金を普通株主の清算価値として評価することはしない。
- 国内事業法人向け:数量 26,362(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。実際のインタビュー件数ではない)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 6 億円。数量0.55倍、価格1.08倍。顧客内製化で案件数が減り、固定費削減後も事業利益率34%。
- コンサル・金融向け(国内顧客):数量 22,280(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。実際の案件数とは異なる)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 8 億円。数量0.55倍、価格1.05倍。顧客による調査の自動化が進む。
- コンサル・金融向け(海外顧客):数量 28,465(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。各国の実際の面談単価や案件数ではない)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 4 億円。数量0.50倍、価格0.95倍。世界大手との競争で値下げが進む。
倍率:収益がほぼ消え、ROEは0.3÷62.4=約0.5%で資本コスト7.75%を大幅に下回る。将来の投資による成長価値を認めず、継続して得られるわずかな利益の価値を基本とする。1÷k=12.90倍は上限にすぎず、顧客減少がさらに続く可能性があるやや悲観側では、約7~8年分の利益回収に相当する7.5倍に抑える。過去の株価倍率は参照しない。
確率:顧客がAIを使って調査を内製化し、専門家ネットワークを使うのは難しい案件だけになる。海外でのシェア後退と固定費の削減遅れが重なる確率は小さくないため、やや悲観に26%を配分する。
悲観 15% 一次調査の仲介価値を失い、普通株の残余価値が薄れる 利益 −5 億円 · PBR 0.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 13 円1 億円
AIエージェントは公開情報の調査だけでなく、過去の面談記録から論点を抽出し、専門家候補の探索や調査票作成まで代替する。顧客のコンサルティング会社は社内に蓄積した面談記録とAIを組み合わせ、新しい専門家を呼ぶ回数を減らす。専門家側も複数のプラットフォームで活動するため、ビザスク独自のネットワークを維持することが難しくなる。国内で培った顧客基盤だけでは数量減少を止められない。
海外ではGLG、AlphaSights、Third Bridgeなどとの競争がさらに激しくなる。海外顧客の取扱量は4割まで縮み、国内も4割台に減る。単価は物価が上昇する環境でも維持できず、営業収益は約40億円となる。事務所や人員を削減しても、機密管理、審査、顧客営業の最低限の費用は必要である。グループの営業損失は約8億円に達し、純損失も続く。
経営は新規投資を大幅に減らし、海外事業の売却や再編を検討する。ただし海外事業を買う側も、その顧客と専門家の基盤が将来どれだけ稼ぐかを厳しく査定するため、過去の取得価額で売却できない。優先株主の残余財産分配権は普通株主に先立ち、現金を回収できるとしても普通株に帰属する部分は乏しい。清算価値はゼロに近く、普通株には事業再建や条件変更によるわずかな選択肢としての価値だけが残る。
- 国内事業法人向け:数量 20,610(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。実際のインタビュー件数ではない)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 4 億円。数量0.43倍、価格1.00倍。汎用的な調査の大部分が代替される。
- コンサル・金融向け(国内顧客):数量 17,419(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。実際の案件数とは異なる)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 5 億円。数量0.43倍、価格0.97倍。顧客の調査内製化が一段と進む。
- コンサル・金融向け(海外顧客):数量 22,772(取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。各国の実際の面談単価や案件数ではない)× 価格 0.00(件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。数量0.40倍、価格0.92倍。海外で競争力を失い、案件数と単価がともに低下。
倍率:営業赤字が定着するため利益に正当化PERを掛けず、現在の自己資本17.4億円を基準にした事業再建の小さな残余オプションを評価する。PBR0.10倍は過去の市場の底を参照した値ではなく、普通株の清算床がゼロであり、継続して利益を生む事業の価値も失われた筋書きでの定性的な残余価値である。2036年まで積み上がる自己資本9.4億円に倍率を掛けて床を膨らませていない。優先株の残余財産請求が普通株に先順位であることを前提とし、株式転換による持分の調整は別に扱う。
確率:AIによる調査の内製化に加え、競合への専門家と顧客の流出、海外拠点の固定費負担、優先株の処理難航が重なる複合的な損失シナリオである。事業そのものの完全消滅までは想定しないが、過去の買収減損という資本配分上の実例があるため15%を無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内事業法人向け
国内の製造業、IT企業などを対象とする専門家面談、アンケート、調査受託、業務委託紹介など。法定セグメントではなく会社の管理会計上の顧客領域である。
| 数量取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。実際のインタビュー件数ではない | 価格件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 47,930 | 0.00 | 30 | 11 |
| 10 年後 中立 | 33,551 | 0.00 | 25 | 9 |
取り方:2026年2月期有報の国内事業法人の管理会計値は取扱高47.93億円、営業収益29.88億円。会社公式サイトのフルサポート面談平均料金10万円を単位に取扱高を割り、47,930件相当とした。営業収益をこの件換算で割った約6.23万円は会計上の認識収益であり、顧客が実際に支払った面談料金ではない。アンケートや委託契約も混在するため実件数を推定したと誤認してはいけない。現在の事業利益は2026年2月期の管理会計上の取扱高利益率約22%を掛けた約10.55億円の推計であり、共通費控除前である。AI代替分類は情報・調査サービス、人月・工数型で、10年中立の実質数量を0.70倍、単価を1.20倍とする。国内の専門家ネットワーク市場の厳密な規模とシェアは未公表であり、約3.7兆円の関連調査市場を直接の分母には使わない。
コンサル・金融向け(国内顧客)
国内のコンサルティング会社、機関投資家、投資ファンドを対象とする実務経験者への面談、投資調査、企業買収調査、専門家アンケート。
| 数量取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。実際の案件数とは異なる | 価格件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 40,510 | 0.00 | 29 | 15 |
| 10 年後 中立 | 27,547 | 0.00 | 24 | 12 |
取り方:2026年2月期有報の国内コンサル・金融顧客向け取扱高40.51億円、営業収益29.33億円を使用。取扱高を公式サイトに示された平均面談料金10万円で割り、40,510件相当とした。実際の件数や案件別平均単価の公表値ではない。営業収益の実効認識単価は1件換算約7.24万円となる。現在の事業利益は取扱高に管理会計上の事業利益率約36%を掛けた約14.58億円の推計で、全社営業利益と直接比較できない。国内ビジネスコンサル市場7,987億円は顧客産業の規模であって、この面談サービスの直接市場ではない。AI代替分類は情報・調査およびコンサル工数型で、中立の数量0.68倍、価格1.18倍とする。
コンサル・金融向け(海外顧客)
米国Coleman Researchを中心とする海外コンサルティング会社、機関投資家、投資ファンドへのエキスパートネットワークサービス。
| 数量取扱高を1件10万円の有償面談に換算した件数/年。各国の実際の面談単価や案件数ではない | 価格件換算1件当たりの会計上の営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 56,930 | 0.00 | 41 | 10 |
| 10 年後 中立 | 34,158 | 0.00 | 27 | 7 |
取り方:2026年2月期有報の海外顧客向け取扱高56.93億円、営業収益40.56億円を使用。便宜的に同じ10万円単位に換算すると56,930件相当、認識収益は1件換算約7.12万円である。海外の実際の面談単価に日本の平均料金を当てたわけではなく、数量を比較するための共通単位にすぎない。現在の事業利益は取扱高に管理会計上の利益率約18%を掛けた約10.25億円と推計した。世界エキスパートネットワーク市場約30億ドルを1ドル150円で換算した4,500億円に対し、海外顧客向け認識収益40.56億円は約0.9%に当たるが、対象範囲と認識方法の違いから厳密なシェアではない。海外の競争とAI代替が国内より厳しいとみて、中立の数量0.60倍、価格1.10倍とする。
リスクと懸念
AI エージェント代替による調査需要の縮小
公開情報の探索、企業比較、過去のインタビューの要約、調査票の設計、専門家候補の抽出はAIが実行しやすい。大手コンサルティング会社や投資ファンドは調査業務を内製化できるため、専門家面談への発注件数や単価が減る可能性がある。一次情報を本人に直接確認する需要は残るが、現在の営業収益全体を守れるとは限らない。中立の件換算数量と10年後以降の名目成長率にこのリスクを反映している。
優先株の累積配当と普通株主への帰属
A種・B種優先株には額面合計約88.8億円と年率3%の累積優先配当があり、普通株よりも先に配当と残余財産を受け取る。未払期間が長引くほど将来の償還請求額と転換による潜在株数が増える。株価が転換価額より低い間は優先株主が現金請求を選ぶ経済的動機も残るため、普通株への転換を想定した評価はむしろ楽観的となる場合がある。法律上の分配可能額の制約もあり、出口の時期と方法は読みにくい。
Coleman買収後の海外収益の不安定さ
2021年のColeman Research買収は海外顧客とエキスパートネットワークを獲得する一方、その後の巨額減損を招いた。2026年2月期の海外顧客向け取扱高は前年割れとなり、2027年2月期上期も国内ほどの成長率ではない。世界市場の成長をそのまま自社のシェア拡大とみなせない。今後も低採算の海外拠点維持やシステム開発費に資本を投じ続ければ、連結利益と現金の回収力が圧迫される。
専門家の非独占性と顧客の乗り換え
専門家が他のエキスパートネットワークにも登録できることは、顧客にとって選択肢が多いことを意味する。GLG、AlphaSights、Third Bridge、Guidepointなど世界的な競合は顧客との関係をすでに持っており、案件単位で価格と紹介速度が比較される。値上げや低解約率に関する強い定量証拠がない以上、国内の知名度を独占的な堀とみなして高い持続成長率を付けることは危険である。
純現金と株主が受け取れる現金の違い
2026年2月期の純現金は約26億円であるが、2026年8月末には契約負債が約20億円存在する。これは全額が直ちに返金される債務という意味ではないものの、顧客へのサービス提供に必要な費用を伴う。さらに優先株主の先順位請求権があるため、預金残高をそのまま普通株主の安全域にすることはできない。将来の現金が優先株の償還に充てられれば、普通株の価値に上乗せできる余剰現金は限られる。
調整後利益とソフトウエア減損の乖離
会社は調整後EBITDAを重要指標としているが、Colemanのソフトウエア開発費に関連する減損損失が2026年2月期と翌期上期に発生している。機能を開発した費用が将来の収益を生むと期待されて資産計上されても、その価値が保てなければ損失となる。AI導入による省人化効果だけでなく、開発費、更新費、減損を通じた実際の株主利益を追う必要がある。
今後の分かれ目
- 国内事業法人と国内コンサル・金融の取扱高が、AI普及後も3年以上にわたり件数と単価の両面で増え続けたら
- 国内の一次情報需要が想定より強い証拠となる。中立の件換算数量を引き上げ、やや楽観の確率を増やす。ただし取扱高ではなく、会計上の営業収益と共通費控除後の利益も確認する。
- ビザスクcompassやAI Scoutについて、独立した有料契約数、売上高、継続率が開示され、既存面談の減少を上回る収益が確認されたら
- AIを収益源に変える能力を初めて定量的に評価できる。その新しい売上を既存の人月・調査サービスと分離し、数量の縮小率と10年後以降の成長率を改めて検討する。
- A種・B種優先株の現金償還、普通株転換、権利条件変更の具体的な契約が開示されたら
- 最優先で優先株主の請求額と普通株主の取り分を再計算する。額面、累積未払配当、調整後転換価額、発行株数、現金支払の原資を確認し、今回の仮定によるholder_shareを実際の条件に置き換える。
- 海外顧客向けの取扱高が2年以上減少し、事業利益率も低下したら
- Colemanの競争上の地位がさらに弱くなったと判断し、海外領域の件換算数量と共通費回収力を下方修正する。減損と拠点再編費用も考え、やや悲観・悲観の確率を増やす。
- 営業利益が増えているのにソフトウエア減損や運転資金流出が続き、営業キャッシュフローが改善しなかったら
- 会計上の利益を株主が受け取れる現金とみなす前提を弱める。開発費の資産計上と減損、顧客からの前受け、専門家への支払いを分けて確認し、利益率だけでなく再投資負担を見直す。
- 2030年2月期の取扱高300億円以上という目標に近づかず、成長目標が再度引き下げられたら
- 経営の需要見通しと資本配分能力を厳しく評価する。既存顧客への追加販売と海外拡大の両方が想定を下回っていないかを確かめ、中立の収益と上側シナリオの確率を見直す。
見ておくもの
- 国内事業法人の取扱高・営業収益・事業利益率の四半期推移
- コンサル・金融の国内顧客向け取扱高と有償インタビュー件数
- Colemanを含む海外顧客向けの取扱高、事業利益率、拠点別の収益改善
- 専門家登録数だけでなく実際のマッチング件数、法人顧客数、継続利用率
- ビザスクcompass・AI Scoutの独立した売上、契約数、利用率、AI導入による工数削減実績
- A種・B種優先株の累積未払配当、普通株転換価額の調整、現金償還交渉
- 営業キャッシュフロー、契約負債、ソフトウエア減損損失の継続有無
- 2030年2月期の取扱高300億円目標の進捗と株主還元方針の具体化
- 海外競合GLG・AlphaSights・Third Bridge・GuidepointのAI対応と料金体系
倍率と資本コストの決め方
基準時価総額は株価771円と普通株9,284,847株から約71.59億円である。これを逆算して収益や倍率を決めていない。数量は有報の顧客領域別取扱高を1件10万円相当に換算し、価格は会計上認識する1件換算収益とした。実際の面談件数ではない点を明記した。営業利益は管理会計上の事業利益から共通費を控除し、純利益と自己資本は10年間の利益・還元の流れに合わせた。楽観から中立のPERは資本コストと長期成長率から決め、過去や同業の市場倍率に寄せていない。優先株は全額普通株転換による持分希薄化の方法で一度だけ反映し、現金償還請求額をさらに時価総額から二重控除していない。ただし転換価額を下回る場合に転換が合理的とは限らないため、得られた普通株価値は過大評価となる余地がある。新リース会計基準の導入後も、事務所賃借費を経済的な費用に含める同一基準で10年後を比較する。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、事業の値決め力と純現金を評価したqualityの+0.25%を加える。Coleman買収の失敗や優先株の出口は個別シナリオと普通株主の持分で表し、資本コストへ重ねて上乗せしない。直近は営業黒字で、継続企業の前提に関する注記もないため、財務危機を理由としたextraは不要とする。
同じ業種(情報・通信業)の AI 分析
読んだ資料
- ビザスク 2026年2月期有価証券報告書:顧客領域別取扱高・営業収益、2030年目標、Coleman、配当政策
- ビザスク 2027年2月期第2四半期決算短信(2026年10月15日):直近業績、貸借対照表、継続企業の前提
- ビザスク 半期報告書のA種・B種種類株式条項:累積配当、現金取得請求、普通株転換、残余財産分配順位
- ビザスク公式 ビザスクinterview:平均面談料金、専門家登録数、年間支援実績
- Inex One Expert network market size in 2025:世界エキスパートネットワーク市場推計
- ビザスク 2027年2月期上期決算説明会:AI製品、各顧客領域の進捗、海外競争