結論
ソリトンシステムズは、社内ネットワークの認証基盤(NetAttest)などのITセキュリティと、警察・放送向けの映像伝送を持つ会社だ。2026年12月期は会社予想の営業利益が前期の4割増で、利益率は17%台に乗る。
筆者の結論は、10年の本質価値は今の時価総額を下回るというものだ。認証基盤は切替が重く、保守が積み上がる。ただ、利益率が過去の山を大きく超える水準は、中立では全部は置かない。
配当性向5割の方針と純現金は魅力で、積み上がる現金が戻る点は評価できる。それでも、今の値段には安全域が薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、切替の重い認証基盤と、増配を続ける姿勢は好ましい。純現金があり、借金もない。
ただ、売上は200億円規模で、今期の利益の急伸は過去の山を大きく超える。山の利益に高い値を払うと、反動で損をする。還元の目安が5割と明確な点は安心材料だが、人手の仕事がAIで置き換わる懸念は残る。事業の読みやすさと安全域が足りない。経営の実行力は疑わないが、値段が見合わない。純現金は事業の厚みを増す。
何で稼ぐ会社か
事業は3つだ。いずれも国内の法人・官公庁向けで、機器とソフトを売り、あとから保守で稼ぐ形である。ITセキュリティは売上の約7割で、認証基盤の機器とライセンス、保守を企業・官公庁・学校に売る。保守が毎年積み上がる。映像コミュニケーションは売上の約2割で、警察・報道向けの携帯映像伝送機を手がける。残りはEco関連などの新規事業で、まだ小さい。売上の内訳は資料で確かめられなかったため、割合は推定で、、ITセキュリティ約7割・映像約2割・新規約1割と推定した。顧客は国内が中心で、官公庁・自治体への依存がある。
優良さと弱いところ
強みは、認証基盤の切替の重さと、保守の積み上がりだ。一度入った認証の仕組みは簡単に外せない。自己資本比率は5割、純現金があり、配当は7期連続で増えている。
弱みは、規模が小さく海外のクラウド型サービスに押される点と、受託や開発に人の手がかかる点だ。利益率は過去12年で1割台前半までが山で、今期の急伸が定着するかは読みにくい。堀は普通とみる。人材の確保も成長の足かせになる。経営陣は長く技術畑の人が多く、実行力は高いとみる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のセキュリティ市場は年率9%前後の名目成長が続くとされる。人材不足とゼロトラストの導入、規制の強化が追い風で、認証や端末管理の需要は底堅い。
一方、認証や映像の機能は、海外のクラウド型サービスに取り込まれる動きがある。生成AIは攻撃を増やして需要を押し上げる反面、運用の自動化で人手の仕事を減らす。中小向けは価格競争が厳しく、専用機の単価には下げ圧力がかかる。同業の国内勢とは機能の差が小さくなっている。官公庁の調達では国産が評価される場面もある。クラウド移行の遅れた組織が、需要の中心だ。10年の分かれ目は、この国産の優位がどこまで続くかである。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、目安は配当性向5割程度または株主資本配当率8%程度とされる。2026年12月期は年間配当の増額を見込み、7期連続の増配となる。自社株買いの大きな実績は確認できなかった。
中期経営計画(2026〜28年)は策定中で、外部環境の整理が中心だった。目標の売上・利益・ROEの具体的な数字は確認できなかったが、還元の目安の数字は明確で、現金の戻り方の根拠にできる。M&Aの目立った実績はない。
見通しをどちらに寄せたか
強気の材料は認証基盤の保守の積み上がりと5割の還元の約束で、慎重な材料は利益率が過去の山を超えていることと海外クラウドとの競争である。会社予想の利益率が定着する証拠はまだ薄く、確率はやや下側に寄せた。やや悲観と悲観で36%、上側は27%とし、中立は37%だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,972 円551 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 673 円125 億円)。 今の値に割り戻すと 1,951 円362 億円、今との差 −46.0%、 期待の年率 +0.1%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,246 円973 億円 | 1,000 円186 億円 | +72.8% | +5.6% | 500 円93 億円 |
| やや楽観 | 19% | 4,413 円819 億円 | 880 円163 億円 | +46.4% | +3.9% | 1,006 円187 億円 |
| 中立 | 37% | 3,530 円655 億円 | 755 円140 億円 | +18.5% | +1.7% | 1,585 円294 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,592 円295 億円 | 480 円89 億円 | −42.7% | −5.4% | 497 円92 億円 |
| 悲観 | 12% | 216 円40 億円 | 265 円49 億円 | −86.7% | −18.3% | 58 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,972 円551 億円 | 673 円125 億円 | +0.8% | +0.1% | 3,646 円676 億円 |
今の株価時価総額 3,615 円671 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 認証基盤と映像が広がり、利益率が上がる 利益 51 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 5,246 円973 億円
ゼロトラストの導入が中堅・官公庁に広がり、認証基盤の契約と保守は今の1.35倍に増える。値上げも物価並みに通り、利益率は2割に近づく。映像伝送も警察・放送の更新需要で伸びる。新規事業が育ち、営業利益は今の1.9倍になる。還元は性向5割を保つ。
- ITセキュリティ:数量 2.2(導入契約数(万件、推定))× 価格 120(1 契約当たり年間売上(万円))→ 売上 259 億円・営業利益 52 億円。認証基盤は切替が重い。価格は物価に届かない
- 映像コミュニケーション:数量 0.6(販売・保守台数(万台、推定))× 価格 134(1 台当たり年間売上(万円))→ 売上 75 億円・営業利益 13 億円。映像伝送は官公庁・放送向け
- 新規事業・その他:数量 57.0(案件数(件、推定))× 価格 0.67(1 件当たり売上(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。新規事業は小さい
倍率:事業のROEとkから式で置いた正当化PERの上限そのもの。余った現金(戻り方込み)を足す。
確率:ゼロトラスト需要が続き、会社予想の利益率が定着する筋書き。8%。
やや楽観 19% セキュリティが伸び、利益率は高止まる 利益 42 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 4,413 円819 億円
認証基盤は1.25倍に伸び、保守の積み上がりが利益を支える。価格は物価に届かないが、利益率は1割台後半を保つ。映像は警察・放送の更新需要で1.2倍になる。新規事業は小さく育つ。営業利益は今の1.6倍強で、性向5割の還元が続く。人材の採用が追いつけば、伸びはさらに続く。
- ITセキュリティ:数量 2.0(導入契約数(万件、推定))× 価格 117(1 契約当たり年間売上(万円))→ 売上 233 億円・営業利益 44 億円。認証基盤は切替が重い。価格は物価に届かない
- 映像コミュニケーション:数量 0.5(販売・保守台数(万台、推定))× 価格 130(1 台当たり年間売上(万円))→ 売上 62 億円・営業利益 10 億円。映像伝送は官公庁・放送向け
- 新規事業・その他:数量 45.6(案件数(件、推定))× 価格 0.65(1 件当たり売上(億円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。新規事業は小さい
倍率:事業のROEとkから式で置いた正当化PERの上限そのもの。余った現金(戻り方込み)を足す。
確率:需要は伸びるが、価格が物価に届かない筋書き。19%。
中立 37% 認証基盤は伸びるが、利益率は2桁後半で頭打ち 利益 33 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 3,530 円655 億円
認証基盤は人材不足を背景に今の1.15倍に増え、値上げは物価の手前で止まる。映像は横ばいの数量で、価格だけが上がる。利益率は1割台半ばで頭打ちとなり、会社予想の1割台後半には届かない見立てだ。営業利益は今の1.5倍。還元は性向5割の方針が続く。
- ITセキュリティ:数量 1.8(導入契約数(万件、推定))× 価格 113(1 契約当たり年間売上(万円))→ 売上 208 億円・営業利益 35 億円。認証基盤は切替が重い。価格は物価に届かない
- 映像コミュニケーション:数量 0.4(販売・保守台数(万台、推定))× 価格 125(1 台当たり年間売上(万円))→ 売上 50 億円・営業利益 8 億円。映像伝送は官公庁・放送向け
- 新規事業・その他:数量 38.0(案件数(件、推定))× 価格 0.60(1 件当たり売上(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。新規事業は小さい
倍率:事業のROEとkから式で置いた正当化PERの上限そのもの。余った現金(戻り方込み)を足す。
確率:認証基盤の伸びと、利益率の頭打ちを合わせた落としどころ。37%。
やや悲観 24% 導入が一巡し、価格競争で利益率が戻る 利益 17 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 1,592 円295 億円
認証基盤の新規導入が一巡し、海外のクラウド型サービスとの価格競争が強まる。数量は0.95倍に減り、価格は物価に届かない。受託や開発に携わる人員の固定費が重く、利益率は1割程度へ戻る。営業利益は今の水準を割り、還元も縮む。保守の積み上がりが下支えにはなるが、新規の導入が細れば長くは持たない。
- ITセキュリティ:数量 1.5(導入契約数(万件、推定))× 価格 104(1 契約当たり年間売上(万円))→ 売上 159 億円・営業利益 19 億円。認証基盤は切替が重い。価格は物価に届かない
- 映像コミュニケーション:数量 0.3(販売・保守台数(万台、推定))× 価格 115(1 台当たり年間売上(万円))→ 売上 39 億円・営業利益 4 億円。映像伝送は官公庁・放送向け
- 新規事業・その他:数量 30.4(案件数(件、推定))× 価格 0.55(1 件当たり売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。新規事業は小さい
倍率:事業のROEが資本コストに近く、稼ぐ力の値まで。余った現金(戻り方込み)を足す。
確率:利益が急伸した直後で、導入の一巡と価格競争の確率は小さくない。24%。
悲観 12% 海外クラウドに置き換わり、固定費だけが残る 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 216 円40 億円
認証や映像の機能が海外のクラウド型サービスに取り込まれ、専用機の需要が細る。数量は3割減り、価格も下がる。新規事業は赤字が続く。人の固定費が残り、営業利益は小さくなる。会社に残る価値は純現金が中心になる。稼ぐ力では値が付かず、配当も大きく減る。
- ITセキュリティ:数量 1.1(導入契約数(万件、推定))× 価格 96(1 契約当たり年間売上(万円))→ 売上 107 億円・営業利益 4 億円。認証基盤は切替が重い。価格は物価に届かない
- 映像コミュニケーション:数量 0.2(販売・保守台数(万台、推定))× 価格 100(1 台当たり年間売上(万円))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。映像伝送は官公庁・放送向け
- 新規事業・その他:数量 19.0(案件数(件、推定))× 価格 0.50(1 件当たり売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 −1 億円。新規事業は小さい
倍率:悲観の床は稼ぐ力でなく、純現金から前受金などを引いた40億円を今の自己資本132億円で割った値。
確率:専用機がクラウドに取り込まれる筋書き。12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ITセキュリティ
認証基盤などのセキュリティ機器・ライセンス・保守を企業・官公庁に売る。
| 数量導入契約数(万件、推定) | 価格1 契約当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.6 | 87 | 139 | 22 |
| 10 年後 中立 | 1.8 | 113 | 208 | 35 |
取り方:売上198億円の約7割と推定。1契約年約87万円と置いて1.6万件に推定(軽い版)。【AI エージェント代替】認証基盤は切替が重く席課金型ほどは縮まないが、運用の人手は減る。
映像コミュニケーション
警察・報道向けの携帯映像伝送機を製造・販売する。
| 数量販売・保守台数(万台、推定) | 価格1 台当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.4 | 100 | 40 | 6 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 125 | 50 | 8 |
取り方:売上の約2割と推定。1台年約100万円と置いて0.4万台に推定。
新規事業・その他
Eco関連などの新規事業と受託開発。
| 数量案件数(件、推定) | 価格1 件当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 38.0 | 0.50 | 19 | 1 |
| 10 年後 中立 | 38.0 | 0.60 | 23 | 1 |
取り方:売上の約1割と推定。小さい部門として単純に置く。
リスクと懸念
利益率が過去の山を超えている
2026年12月期の会社予想は利益率17%台で、過去12年の山14%台を超える。定着しなければ反動が大きい。中立では1割台半ばで置いた。
海外クラウドへの置き換え
認証や端末管理は、海外のクラウド型サービスに機能ごと取り込まれる恐れがある。専用機の価格は物価に届かない1.30倍までと置いた。
AI エージェントによる運用・受託の代替
導入や運用の人手の仕事はAIエージェントが担いやすい。保守の人月も減る。数量を伸ばし切らない理由の一つだ。
官公庁・自治体への依存
警察や自治体の予算の付き方で、映像伝送と認証の受注が動く。調達の方針変更で需要が一度に動くことがある。
今後の分かれ目
- 保守の売上が前年を超えて伸び、解約率が低いと開示される
- 積み上がりの強さの証拠。数量を高く置き、やや楽観に近づく。
- 中期経営計画で営業利益率やROEの目標数字が示される
- 数字の約束が出る。達成の実績が続けば、利益率の置き方を上げられる。
- 配当性向5割の方針が引き下げられる
- 現金の戻り方の根拠が弱まり、確率を下側へ寄せる。
- 認証基盤で海外クラウド勢に大口の顧客を奪われる
- 切替の重さという強みが崩れた印。悲観に近づく。
見ておくもの
- ITセキュリティ売上と保守の積み上がり
- 営業利益率が17%台を保てるか
- 配当性向と1株配当の増減
- 中期経営計画の数字目標の有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や同業の倍率を見ず、事業のROE・k・gから式で置いた。kは7.5%にqualityの-0.25%を足した7.25%。g_longは2%。売上の内訳は推定。中期経営計画の売上・利益・ROEの数字は確認できず、還元の目安(性向5割・DOE 8%)は確認できた。リース会計の新基準は10年後の数字では今と同じ形にそろえた。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。