結論
AI CROSSは、企業から携帯電話利用者へ本人確認や督促、販促のメッセージを届ける配信基盤を主力とする。筆者の結論は「割安」である。小型のAI関連企業として見るより、SMSの実物の通信経路と厚い純現金を持つ会社として見る方が、10年後の稼ぐ力を捉えやすい。ただし、国内送信市場の拡大予測をそのまま売上成長率に移すのは危険である。
2025年の売上41.5億円のうち、メッセージングが39.1億円を占めた。2026年上期にも同事業は21.9億円を売り、契約先は9,140社まで増えている。金融機関や企業が本人確認通知を自動化しても、端末へ実際に届ける回線と接続はなお必要である。一方、キャリアとの直接接続は他社にもあり、利用企業が同社を選び続けるほどの独占的な堀があるとは言えない。
国内A2P-SMSの配信数は2025年の約49億通から2030年に約143億通へ増えるとの業界予測がある。ただし、認証がパスキーへ移り、RCSやアプリ通知が既存SMSを侵食し、競合が大口顧客の単価を下げる可能性を考えた。中立でも10年後の実効送信単価には物価上昇をほとんど転嫁できず、AI予測ソフト、受託業務、広告制作の数量にはAIエージェント代替を織り込んでいる。
2035年の中立では売上約90億円、営業利益約13億円、純利益約8億円が残るとみる。10年後の時価総額、期間内の株主還元、将来の新株予約権による取り分減少を割り引いた保守的な確率加重価値は約56億円で、比較の基準となる40.8億円を約38%上回る。強い筋書きへの依存は残るが、余剰現金の将来積み増しを先取りせずとも安全域がある、というのが判断の中心だ。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の立場では、流行語としてのAIではなく、10年後にも顧客が避けられない支出を見つけたい。本人認証、支払いや物流の通知は、顧客企業の業務が自動化されても端末への伝達が要る。送信数に伴ってキャリアの網を使う仕組みは、作業者の席数に課金するソフトと違って、AIエージェントそのものによる消滅を想定しなくてよい。ただし、どの配信会社がその通数を取るかは別問題である。
好ましい企業なら、顧客は少しの値上げを受け入れ、利用が増えるほど同じ設備で利益が膨らみ、投資した資本は高い利回りで回収される。AI CROSSの契約企業数増加とSMSの通数増加にはその兆しがある。しかし大口顧客の価格交渉力は強く、競合は同じキャリア網にアクセスできる。今のところ、利益の一部を高い開発費、販促費、買収に振り向け続ける必要がある会社で、十数年先まで利益率を保証するほどの堀は見えない。
株主のものになる利益を測るには、2025年の営業キャッシュフローからソフトウェア投資を引いた約0.9億円にも目を向けたい。帳簿上の利益が増えても、キャリア支払いに必要な運転資金が積み上がれば自由な現金は増えない。逆に、顧客を維持したまま配信システムを共通化できれば、追加の送信通数に必要な投資は比較的小さく、利益と現金の差は縮むはずだ。
市場が今つける時価総額に比べ、純現金は厚い。これは安全域の有力な源泉だが、現金は少数株主の指示で直ちに払い戻されるわけではないため、全額を即座に株主のものとはしない。買収ののれんと新株予約権も勘案し、伸びる配信事業から生じる現金を持ち続ける値段として合理的かを問う。AI関連事業の評価を小さくしても割安という結論が残るなら、そこにこの銘柄の投資上の意味がある。
何で稼ぐ会社か
最大の収益源は「絶対リーチ!SMS」と「絶対リーチ!RCS」である。顧客の業務システムとAPIでつなぎ、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯網にメッセージを送る。本人認証、決済案内、採用連絡、債権管理などで利用され、顧客の送信通数が増えるほど料金が入る。キャリアに支払う原価と同社が顧客から受け取る料金との差が利益を生み、配信画面そのものではなく接続、到達、企業の運用への組み込みが商品である。
2025年の短信実績から拾える配信数は約7億8,110万通で、メッセージ売上39.14億円を割った実効収入は1通約5.01円である。国内は約6億6,910万通で、全社件数の約86%を占めた。この単価にはRCSや付随サービスの収入も含まれるため、SMSの請求単価そのものではない。2026年4~6月の配信は約2億1,840万通、契約先は9,140社に達しており、数量の伸びは実際に見える。ただし国外配信は同四半期に前年割れし、国内と海外を同じ成長率で延ばしてはならない。
第二の事業は、需要予測などをノーコードで扱える「Deep Predictor」と、その導入に伴うAI開発・コンサルティングである。2025年のAI関連売上は約1億円だが、継続課金と受託作業の売上内訳や有料契約数は開示されていない。予測ソフトが日々の業務の記録の正本になるわけではなく、大手クラウドのAI機能や顧客自身のエージェントに置換される余地がある。受託作業については顧客の工数削減が同社の売上減につながりうる。
第三の事業は2025年10月に取得したLOWPを中心とするマーケティングソリューションである。顧客のサイトや広告、会員獲得の仕組みを制作・運用するため、人の工数と案件獲得に利益が左右される。2025年は3か月だけ連結されて売上1.37億円、2026年上期は2.80億円を計上した。企業向け配信と広告運用を組み合わせる余地はあるが、SMS事業と同じ継続性や値決め力を付与すべきではない。
優良さと弱いところ
一番の強みは、企業の既存システムから日本の携帯電話へ大量の通知を確実に送る仕組みを持ち、複数キャリアとの契約、配信監視、顧客サポートを束ねていることだ。本人確認や延滞督促は止めにくい業務であり、顧客は配信API、送信元番号、法務・同意管理を作り直す手間を嫌う。2026年6月時点の契約企業9,140社という顧客基盤は、競合に対抗するための土台になっている。
しかし、堀を過大評価してはならない。NTTドコモビジネスXの「空電プッシュ」は売上で首位とされ、ファブリカホールディングス傘下メディア4uは国内法人送信数で首位を掲げる。アクリートも海外配信に強い。同社だけが持つ規制上の免許や替えの利かないデータベースは確認できず、低解約率の開示や継続的な値上げ成功の記録も不足している。大量配信の価格はキャリア原価と顧客の入札圧力にはさまれ、送信数の成長ほど単位利益が伸びない可能性がある。
財務面には明確な余裕がある。2025年末の純現金は約13.8億円で、自己資本は18.6億円、営業赤字も長期履歴にはない。一方、2025年の営業キャッシュフローは約1.5億円にとどまり、ソフトウェア開発に約0.6億円を使った。2021年から2025年に売上が増えても営業利益率はおおむね9%前後であり、規模拡大が自動的に高い再投資利回りに結びついたわけではない。今後はキャリア粗利の増加を、全社費用や買収に頼らず株主の使える現金に変える実績が要る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の企業発SMS市場は、認証、支払い確認、物流通知、予約連絡などの電子化で数量が伸びている。ミック経済研究所の調査を引用した市場資料では、2025年のA2P-SMS配信は約49億通、2030年は約143億通という強い予測が示された。国内約6.69億通を送ったAI CROSSの2025年数量シェアは概算13.7%となるが、調査の市場定義と各社の集計に差があるため精密なシェアではない。金額ベースでも約250億円の市場に対し同社は有力な数社の一角で、独走する首位ではない。
競争相手は、NTTドコモビジネスX、ファブリカホールディングス傘下のメディア4u、アクリートのほか、顧客のCRMに直結するクラウド通信事業者である。公表されているのは各社の異なる基準での首位実績が中心で、厳密な競合別送信シェアは確認できない。したがって10年後は市場全体を伸ばしつつ、同社の国内数量シェアは徐々に低下する筋を中心にした。市場規模そのものを物価で膨らませず、送信件数と1通当たりの実効収入を分けて考える。
RCSは企業ロゴ、画像、反応の把握などで通常SMSより豊かな通知を届け、配信単価と顧客の成約価値を高める可能性がある。反対に、RCSへの移行で従来SMSの通数が置き換わるだけなら、市場の成長を二重に数えてはいけない。パスキーやアプリ内認証の普及、LINEやメール、海外メッセージアプリへの移行も物理的な送信件数を減らす力となる。2026年の会社計画がRCS普及の遅れで下方修正されたことは、普及曲線を慎重に見る理由である。
LOWPが入る広告制作・運用は電通が公表する2025年のネット広告制作費約4,922億円に関連するが、同じ定義の市場ではない。需要予測SaaSにも独立した同一条件の国内市場規模とシェアの一次開示は見つからない。どちらも大手広告会社や内製化、Microsoftなどの業務AI、専業予測ソフトと競合し、AIエージェントが人の作業や画面操作を減らす領域として扱うべきだ。
資本政策と M&A
資本配分は評価の分かれ目である。2024年には約1.55億円の自社株買いを実施したが、2025年は無配であり、創業以来、定常的な配当政策を確立していない。2025年を最後に株主優待を廃止し、2026年以降は成長投資と利益還元をどう両立するかが問われる。上位10株主の保有比率は約36%で支配が特別強い条件には当たらないが、継続的な配当や大規模な株数減少の実績も乏しいため、余った現金の株主還元価値は帳簿の75%にとどめた。
2025年10月にはLOWPを約4.2億円で買収し、約2.7億円ののれんが生じた。2026年上期の買収事業は黒字でも、制作・運用の人月売上にはAI代替リスクが強い。買収額に見合う持続的な現金利益が得られなければ、資本配分の成績と純資産の安全性を損なう。さらなる小型買収はありうるが、価格・相乗効果を開示しない買収に先回りして価値を加えない。
中期計画「AIX2027」は2027年の売上73億円、営業利益18億円を目指し、メッセージング売上70.1億円を柱としていた。しかし2026年の会社見通しはRCSの遅れで売上53億円、営業利益6億円へ修正されている。中計にROE、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額の数字の約束は確認できない。また2025年末時点で最大約29万株の新株予約権が残り、好業績時は既存株主の持ち分が数%薄まる。払込金による資本増加と希薄化の両方を筋書きに含めた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
企業の重要通知は、利用者がどのアプリを使うかにかかわらず確実に届かなければならない。AIが顧客対応を自動化するほど、自動生成された通知を大量に配送する入口が必要になる。国内のA2P-SMSはすでに年間約49億通であり、業界が掲げる2030年約143億通の予測が大きく外れなければ、AI CROSSが物理的に送る件数にはなお余地がある。本人確認だけでなく、督促、予約、マーケティングの取引先が増え、既存システムに組み込まれた接続は長く使われる。
RCSの利用拡大は、単純なSMS通知を画像や行動計測を伴う双方向の企業連絡に変える。実効単価が上がれば、通数だけを競う卸売業者から、顧客の反応を改善する通信パートナーへ近づける。全キャリアに接続した設備と顧客支援は既にあるため、追加の送信通数に比例して本社人員を増やす必要もない。2026年上期のメッセージング売上が伸びながら貢献利益を確保したのは、この経済性をうかがわせる。
新しい広告会社LOWPにはSMS配信の後工程での役割があり、顧客の施策設計から通知までを束ねることで、価格だけの競争を一部避けられる。需要予測ソフトの単独市場で勝ち抜く必要はなく、受託の人数を増やさずとも既存顧客との関係維持に役立てられる。買収後の組織を必要以上に拡大しない規律があれば、販管費の増加を抑えながら本業の利益率を回復できる。
純現金は十億円超あり、予期しない競争やシステム変更に耐える財務余力がある。経営が過度な追加買収を控え、増えた利益を還元へ回すなら、既存株主は事業価値の増加を実際に回収しやすい。今の時価総額は、こうした既存SMS基盤の規模拡大と低資本負担を十分に評価していない、という見方が成立する。
慎重な見方
数が増える市場で同社の利益が増えるとは限らない。配信はキャリア接続を必要とする一方、複数の事業者が同じ顧客を獲得できる。NTTドコモビジネスXは売上の首位、メディア4uは国内法人向け送信数の首位を掲げる。価格交渉力の強い金融機関や大口代理店は仕入先を切り替えられ、配信単価が下がると利益には大きく響く。2025年の実効単価が約5円である以上、物価上昇分を容易に顧客へ転嫁できると考えてはならない。
業界の2030年数量予測には大きな不確実性がある。二要素認証がパスキーや端末内の生体認証に移れば、SMSを送る必然性自体が減る。RCSは高度な通知需要を生むが、既存SMSを置き換えているだけなら売上の追加にならない。LINEやアプリ内通知、海外の通信基盤も代替経路である。会社が2026年計画をRCS普及の遅れで引き下げた事実は、普及の速度に制約がある証拠だ。
AI事業の規模は小さく、Deep Predictorが日々の業務記録を保存する不可欠な台帳になる証拠は薄い。AIエージェントがユーザー画面を介さず予測処理を実行すれば、席課金や導入コンサルの案件数が減る。LOWPの制作・運用業務も自動化による単価引き下げを受けやすく、買収したのれんの減損が起これば純資産は圧迫される。大口顧客ジンテック向け売上が2025年に1割を超えた点も、一社の仕入れ判断で通数が振れる構造を示す。
過去に自社株買いはあるが継続的な配当はなく、利益を生まない買収に現金が使われれば純現金を帳簿の額面で株主価値にできない。さらに新株予約権の潜在株数は現在の流通株数に対して無視できない。成長と希薄化が相殺され、10年後も利益が資本コストに届かないという厳しい筋書きは、現実的な損失可能性として残る。
どちらに重みを置いたか
事業の中心が通信の到達経路である点は強い材料だが、値決め力と資本配分には疑問が残る。確率は楽観10%、やや楽観18%、中立30%、やや悲観25%、悲観17%とし、下側42%を上側28%より厚くした。下に寄せる理由は、RCS普及遅延、大口顧客の価格交渉、LOWPのれん、新株予約権による希薄化である。AI代替の数量減少は既にAI受託・SaaS・広告の中立に入れ、悲観確率や資本コストで重ねて引いていない。悲観でも純現金などの回収可能な床を守り、なお確率加重価値が今の時価総額を上回るため、割安という判断が残る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 3,464 円132 億円(+ 還元の換算額還元の合計 78 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 1,696 円65 億円、今との差 +59.1%、 期待の年率 +13.0%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 10,255 円390 億円 | 296 円11 億円 | +889.8% | +26.5% | 1,055 円40 億円 |
| やや楽観 | 18% | 6,809 円259 億円 | 149 円6 億円 | +552.7% | +21.0% | 1,252 円48 億円 |
| 中立 | 30% | 3,313 円126 億円 | 62 円2 億円 | +216.6% | +12.4% | 1,013 円39 億円 |
| やや悲観 | 25% | 626 円24 億円 | 13 円0 億円 | −40.0% | −5.0% | 160 円6 億円 |
| 悲観 | 17% | 366 円14 億円 | 0 円0 億円 | −65.7% | −10.1% | 62 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,464 円132 億円 | 78 円3 億円 | +232.3% | +13.0% | 3,542 円135 億円 |
今の株価時価総額 1,066 円41 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% RCSの定着と配信数量の大幅な拡大 利益 25 億円 · PER 14.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 10,255 円390 億円
企業の本人確認から請求、予約、営業施策まで、SMSとRCSは顧客の業務システムに深く組み込まれる。国内の法人メッセージ市場は2035年に年間約240億通まで広がり、AI CROSSはこのうち約1割を取り込む。海外を合わせた送信は年25億通となり、RCSの利用が進むため実効収入も上がる。キャリアの原価上昇を吸収しても、単一の配信基盤をより高頻度で使うため追加の投資負担は抑えられる。
2027年の中期計画で描いた販路強化がようやく形になり、既存顧客は販促メッセージを認証用途と同じ配信基盤から送るようになる。LOWPは制作人員を増やすことなく大口顧客の獲得を助け、追加買収に資金を浪費しない。予測SaaSとAI受託の件数は現状相当を超えないが、会社の利益の大半は通信事業で稼ぐので影響は小さい。
2035年には全社の営業利益が約40億円に達する。経営は利益の一部を自社株買いへ振り向け、従来ののれんも収益で回収する。株式報酬の権利行使で株数は増えるが、それを超える事業価値の拡大が起きる筋書きである。
- スマートメッセージング(SMS・RCS):数量 2,500(年間のSMS配信実績(百万通。RCS収入は実効単価に含む))× 価格 6.20(配信1通当たりの実効売上(円、RCS・付帯売上を含む))→ 売上 155 億円・営業利益 48 億円。国内A2P市場を年240億通、当社国内数量シェア約9.8%、海外約1.5億通と推定。RCS比率上昇を実効収入に反映。
- AI予測ソフト(Deep Predictorの有償契約相当):数量 17.0(年額契約に換算した契約社数相当(実顧客数でなく推定))× 価格 0.04(年額契約相当の収入(億円/社・年))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。席・画面型。契約換算数は2025年と同じ17で、単価のみ13%上昇。
- AI受託開発・導入支援:数量 15.0(外部請求可能な専門家人月相当(推定))× 価格 0.04(請求人月当たりの実効売上(億円/人月))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人月型。15人月を超えない。価格は今の約1.31倍で物価1.34倍以下。
- マーケティングソリューション(LOWP):数量 312(有償案件に充当できる従業員の人月相当(2025年は連結3か月のみ))× 価格 0.02(従業員1人月当たりの実効売上(億円/人月))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。2025年Q4の26人を通年化した312人月と同量。案件単価は物価未満の上昇。
倍率:本業の現金利息を除いた純利益25.007億円、余剰現金8億円を除いた自己資本135.984億円から事業ROE18.39%。堀は普通で超過ROEの残存割合1/2、資本コスト7.75%からRONIC13.07%。AI代替・値決め力に対応する2035年以降の名目g1.7%より正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.38倍。利益の質をk・堀に含め済みなので上限から再割引しない。事業利益×PERに余剰現金の還元評価6億円を足し、未行使新株予約権による希薄化はholder_shareで最後に掛ける。
確率:通信網の継続性と全国全キャリアの接続基盤を生かし、RCSをSMSの単純な置換以上の商材に育てる必要がある。2035年に年間25億通、実効単価6.2円、メッセージ貢献利益率31%を同時に達成するのは難度が高く10%とした。AI人月事業の数量増は利益の条件にしていない。
やや楽観 18% SMS数量成長が続きRCSも採算に貢献 利益 17 億円 · PER 14.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6,809 円259 億円
国内の法人向けSMS市場は2035年にも約200億通へ拡大し、認証に加えて督促や予約、企業への連絡手段として定着する。同社は大手通信子会社や専業配信会社との競争で国内のシェアを少し落とすが、既存顧客の利用頻度が上がり、海外を加えた年間送信は約21億通になる。RCSは一気に普及するわけではないが、高付加価値な通知の一部を取り込み、送信1通当たりの稼ぎを支える。
2026年に計画未達を招いたキャリア・端末側の普及の遅れは徐々に解消する。顧客ごとの配信設定と既存APIの資産は残り、営業部門を増やさず売上を伸ばせる。LOWPは制作と運用の労働集約性を抱えたままでも、買収時の収益性を守る。AI予測ソフトの契約換算数と受託人月は増やさずに済ませる。
メッセージ配信が全社利益の柱として太くなり、2035年には営業利益約27億円を確保する。過度な大型買収をせず、蓄えた現金の一部を株主に戻すが、新株予約権の行使による株数増加は受け入れる。主力は強い一方で独占的な値上げ力までは持たない、という水準に収まる。
- スマートメッセージング(SMS・RCS):数量 2,100(年間のSMS配信実績(百万通。RCS収入は実効単価に含む))× 価格 5.76(配信1通当たりの実効売上(円、RCS・付帯売上を含む))→ 売上 121 億円・営業利益 35 億円。2035年国内市場約200億通、国内シェア約9.7%、海外約1.6億通。実効単価は今の1.15倍。
- AI予測ソフト(Deep Predictorの有償契約相当):数量 16.0(年額契約に換算した契約社数相当(実顧客数でなく推定))× 価格 0.04(年額契約相当の収入(億円/社・年))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。席課金型は16/17=0.94倍で頭打ち。価格は約1.11倍。
- AI受託開発・導入支援:数量 13.0(外部請求可能な専門家人月相当(推定))× 価格 0.03(請求人月当たりの実効売上(億円/人月))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。専門家の人月13/15=0.87倍。楽観側であっても工数成長を想定しない。
- マーケティングソリューション(LOWP):数量 280(有償案件に充当できる従業員の人月相当(2025年は連結3か月のみ))× 価格 0.02(従業員1人月当たりの実効売上(億円/人月))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。年換算312人月から280人月に縮小。料金は2025年の約1.27倍。
倍率:本業の現金利息を除いた純利益16.477億円、余剰現金8億円を除いた自己資本103.301億円から事業ROE15.95%。堀は普通で超過ROEの残存割合1/2、資本コスト7.75%からRONIC11.85%。AI代替・値決め力に対応する2035年以降の名目g1.7%より正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.16倍。利益の質をk・堀に含め済みなので上限から再割引しない。事業利益×PERに余剰現金の還元評価6億円を足し、未行使新株予約権による希薄化はholder_shareで最後に掛ける。
確率:2026年上期の国内配信数量は前年から伸び、SMSインフラの需要拡大は実在する。ただし2027年の会社中計から遅れが出ているため、好調が10年続く確率を18%にとどめた。
中立 30% 通数が伸びても値決め力は強まらない 利益 8 億円 · PER 13.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,313 円126 億円
2035年も企業は本人確認や料金回収の通知を携帯網に届けている。国内A2P市場は約155億通に落ち着き、アプリ内認証やパスキーが一部の用途を奪う一方、督促、公共通知、予約などで件数は残る。AI CROSSは競争激化で国内の概算数量シェアを約9.5%へ下げるが、海外を合わせた送信は年16.5億通まで増える。物価は上がっても大口顧客の交渉力が強く、実効単価は現在と大差ない。
2026年のRCS普及の遅れは取り返すものの、2027年中計の営業利益率をそのまま常態とはできない。短信の貢献利益率は現在の水準から伸びず、全社の保守、セキュリティ、営業体制には費用がかかる。それでも配信量が増えるため本業の利益は厚くなる。LOWPはAIによる制作自動化を受け、通年の人月が2025年末時点の稼働規模から3分の2程度に縮み、AI受託と予測SaaSも成長の中心にはならない。
2035年の全社売上は約90億円、営業利益は約13億円である。無理な買収を控えて利益のごく一部を還元し、残りの資本を持つが、企業向け通信市場で特別な独占力は得ない。利益が資本コストを上回る範囲で成長する、普通の堀を持つ会社として存続する。
- スマートメッセージング(SMS・RCS):数量 1,650(年間のSMS配信実績(百万通。RCS収入は実効単価に含む))× 価格 5.15(配信1通当たりの実効売上(円、RCS・付帯売上を含む))→ 売上 85 億円・営業利益 21 億円。2035年国内市場155億通、当社の国内数量シェア約9.5%、海外約1.78億通。実効単価1.03倍で物価の1.34倍を大きく下回る。
- AI予測ソフト(Deep Predictorの有償契約相当):数量 14.0(年額契約に換算した契約社数相当(実顧客数でなく推定))× 価格 0.04(年額契約相当の収入(億円/社・年))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。席・画面型で年契約相当14/17=0.82倍、単価1.09倍。業務の正本の堀はない。
- AI受託開発・導入支援:数量 10.0(外部請求可能な専門家人月相当(推定))× 価格 0.03(請求人月当たりの実効売上(億円/人月))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。人月・工数型は10/15=0.67倍、単価は1.24倍まで。
- マーケティングソリューション(LOWP):数量 203(有償案件に充当できる従業員の人月相当(2025年は連結3か月のみ))× 価格 0.02(従業員1人月当たりの実効売上(億円/人月))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。2025年Q4×4の年間312人月を基準に203/312=0.65倍。名目人月収入は1.24倍。
倍率:本業の現金利息を除いた純利益7.922億円、余剰現金8億円を除いた自己資本68.003億円から事業ROE11.65%。堀は普通で超過ROEの残存割合1/2、資本コスト7.75%からRONIC9.70%。AI代替・値決め力に対応する2035年以降の名目g1.7%より正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.63倍。利益の質をk・堀に含め済みなので上限から再割引しない。事業利益×PERに余剰現金の還元評価6億円を足し、未行使新株予約権による希薄化はholder_shareで最後に掛ける。
確率:業界の2030年強気予測から先の普及を鈍らせ、契約先数の多さは評価しつつ価格交渉とAI代替を認める中心ケース。過去の利益率の急改善を前提にせず30%とした。
やや悲観 25% 競合への流出とAI自動化で採算が細る 利益 2 億円 · PER 9.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 626 円24 億円
2035年、国内の法人向けメッセージ市場は約130億通にとどまる。大手キャリア系の配信会社と低単価の専業会社が取引先を囲い込み、AI CROSSの国内シェアは8%弱まで低下する。海外を含めた年間送信は約11億通にとどまり、RCSの単価改善はキャリア原価と顧客への値引きで消える。金融機関が本人認証をパスキーへ移し、従来の大量SMSに依存した販路が縮む。
LOWPでは広告の制作と運用をAIエージェントが担い、確保できる案件の人月が2025年末の通年換算規模から半分になる。Deep Predictorも大手クラウドのAI機能に競り負け、開発・導入の請求工数が減る。採算維持のため人員配置を見直すが、キャリア接続やセキュリティ監視などの共通費は簡単に消えない。買収会社は営業利益が赤字となり、のれんの一部を減損する可能性もある。
本業は失われず、2035年も売上約55億円は残る。ただし営業利益は約3億円へ減り、買収先の立て直しに現金を使うため株主還元はほとんど行われない。通信の土台はあるが高い資本効率を失った会社として、稼ぐ力に低い評価を与える筋書きである。
- スマートメッセージング(SMS・RCS):数量 1,100(年間のSMS配信実績(百万通。RCS収入は実効単価に含む))× 価格 4.65(配信1通当たりの実効売上(円、RCS・付帯売上を含む))→ 売上 51 億円・営業利益 10 億円。2035年国内市場130億通、国内シェア約7.8%、海外約0.86億通。単価は今より下落。
- AI予測ソフト(Deep Predictorの有償契約相当):数量 10.0(年額契約に換算した契約社数相当(実顧客数でなく推定))× 価格 0.04(年額契約相当の収入(億円/社・年))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。席・画面型は10/17=0.59倍。自動化による機能のコモディティ化が強い。
- AI受託開発・導入支援:数量 8.0(外部請求可能な専門家人月相当(推定))× 価格 0.03(請求人月当たりの実効売上(億円/人月))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。請求人月8/15=0.53倍。人間の導入工数が大幅に代替される。
- マーケティングソリューション(LOWP):数量 156(有償案件に充当できる従業員の人月相当(2025年は連結3か月のみ))× 価格 0.02(従業員1人月当たりの実効売上(億円/人月))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。通年換算312人月→156人月に減少、実効単価も物価に追いつかない。
倍率:業績が構造的に弱い筋で事業ROEは3.72%とk7.75%を下回るため、名目成長による超過価値を認めない。稼ぐ力の基準1÷k=12.90倍が上限だが、送信単価下落と顧客流出が残るため9.6倍。純利益から余剰現金8億円の税後利息0.112億円を引いて倍率を掛け、余剰現金には通常評価6億円の0.75倍だけを足す。AIの縮みは中立数量とg_longに入れ、kの寿命では重ねていない。
確率:下に寄せる理由:2026年のRCS普及の遅れに加え、大口顧客の入札で配信単価が下がり、取得した広告会社にもAI自動化による人月減少が起こりうる。通信そのものは残るので倒産までは想定せず25%とした。
悲観 17% 配信経路の地位を失い買収資産も毀損 利益 −4 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 366 円14 億円
2035年、本人認証はパスキーや端末内で完結する仕組みが中心となり、企業が有料のSMSを送る場面は大きく減る。国内市場は約110億通あるが、競合のキャリア系列、メディア4u、他のクラウド通信基盤が大口案件を握り、AI CROSSの数量シェアは約5%に落ちる。海外分を含む送信は年6.5億通となり、キャリア原価が上がっても顧客に値上げできず、実効単価まで下落する。
今までの配信ソフトを維持するだけでは採算が出ず、固定的な保守と回線接続の負担が残る。AI予測ソフトは大手クラウドのエージェントに代替され、専門家の請求人月も減る。LOWPの広告制作は自動化と内製化で案件の大半を失い、買収時ののれんが減損する。経営が撤退と人員削減を進めても、売上低迷を埋め切れない。
2035年には売上約29億円、営業損失約4億円となる。新たな買収や株主還元をやめ、現金と売却可能な有価証券の価値が株式の支えとなる。破綻そのものまでは想定しないが、収益を成長事業として評価できず、事業価値に頼らず資産の回収可能額を床とする筋書きである。
- スマートメッセージング(SMS・RCS):数量 650(年間のSMS配信実績(百万通。RCS収入は実効単価に含む))× 価格 4.30(配信1通当たりの実効売上(円、RCS・付帯売上を含む))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。2035年国内市場110億通、国内シェア5%、海外約1億通。SMSから他手段への代替を反映。
- AI予測ソフト(Deep Predictorの有償契約相当):数量 5.0(年額契約に換算した契約社数相当(実顧客数でなく推定))× 価格 0.03(年額契約相当の収入(億円/社・年))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。有料契約換算5/17まで縮小。操作画面の価値が失われる。
- AI受託開発・導入支援:数量 5.0(外部請求可能な専門家人月相当(推定))× 価格 0.03(請求人月当たりの実効売上(億円/人月))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。人月5/15まで縮小。売上減でも専門支援人員を一定数残す。
- マーケティングソリューション(LOWP):数量 80.0(有償案件に充当できる従業員の人月相当(2025年は連結3か月のみ))× 価格 0.02(従業員1人月当たりの実効売上(億円/人月))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。通年換算312人月の約4分の1まで低下、単価も下落して赤字。
倍率:2035年末は営業赤字で利益倍率を付けられない。PBRの分母は2035年まで積み上がった自己資本でなく、2025年末の自己資本18.6億円を使う。現在の純現金13.8億円に、投資有価証券0.56億円のうち保守的な換金可能分0.3億円のみを加えた資産床14.1億円を株式価値とし、PBR14.1÷18.6=0.758倍。のれん約2.7億円は床から除き、希薄化はholder_shareに任せる。
確率:構造的な負けのケース。SMSからパスキー・アプリ通知への移行、同業の低単価競争、LOWPの受注消失が重なる時に発生しうる。純現金の床があるため倒産ではなく事業価値の崩落と考え17%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
スマートメッセージング(SMS・RCS)
企業の本人確認、通知、督促、販促のSMS/RCSを携帯網に配信するAPI・管理基盤。料金は実際の送信数と実効単価の積で生じる。
| 数量年間のSMS配信実績(百万通。RCS収入は実効単価に含む) | 価格配信1通当たりの実効売上(円、RCS・付帯売上を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 781 | 5.01 | 39 | 11 |
| 10 年後 中立 | 1,650 | 5.15 | 85 | 21 |
取り方:2026年上期の会社決算資料に載る2025年各四半期のSMS総配信数173.3、202.9、191.0、213.9百万通を合計し781.1百万通とした。有報の2025年メッセージング売上39.1445億円をSMSの実数で割ると1通約5.01円となる(SMSだけの契約価格ではなくRCSや周辺機能を含む実効収入)。同年国内配信は約669.1百万通で、2025年A2P-SMS国内総量4902百万通との概算数量シェア13.7%。比較市場はミック経済研究所の2025年見通しであり、業界・会社の定義差がある。事業貢献利益は会社説明資料の概数約10.87億円。
AI予測ソフト(Deep Predictorの有償契約相当)
需要予測・最適化を扱うノーコード予測ソフトの継続利用。人の操作画面への依存があり、業務記録の正本には当たらない。
| 数量年額契約に換算した契約社数相当(実顧客数でなく推定) | 価格年額契約相当の収入(億円/社・年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 17.0 | 0.04 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 14.0 | 0.04 | 1 | 0 |
取り方:2025年AI関連サービス売上0.99964億円のみが開示され、予測SaaSと受託の内訳・顧客数は非開示。便宜上、うち0.60億円を継続課金相当と仮置きした。公開されるDeep Predictorの月額30万円程度からのプランを参照し、年約353万円×17契約相当と逆算したが、17は実契約社数ではない。AI事業の損益が小幅赤字だった2025年の費用を仮配賦した。AIエージェント代替の席・画面型:中立数量14/17=0.82、単価1.09倍、g_longは事業単独なら0~−1%。
AI受託開発・導入支援
予測モデルやデータ活用の要件整理、開発、導入を専門家の工数で販売する事業。
| 数量外部請求可能な専門家人月相当(推定) | 価格請求人月当たりの実効売上(億円/人月) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 15.0 | 0.03 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 0.03 | 0 | 0 |
取り方:2025年AIサービス0.99964億円のうち、前項以外の0.39964億円を受託40%と仮配賦したもの。請求実人月は未開示なので高付加価値専門家15人月×約266万円を推定の数量・単価とする。固定契約の平均を開示した数字ではない。AIエージェント代替の人月型として中立10/15=0.67、10年価格1.24倍、事業単独の長期gは0%を上限とする。
マーケティングソリューション(LOWP)
広告・サイト制作、顧客開拓施策の設計と運用。人が作る成果物と運用工数で受注が動く。
| 数量有償案件に充当できる従業員の人月相当(2025年は連結3か月のみ) | 価格従業員1人月当たりの実効売上(億円/人月) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 78.0 | 0.02 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 203 | 0.02 | 4 | 0 |
取り方:LOWPの2025年10月取得により連結売上は10~12月の1.37194億円に限られる。有報のLOWP従業員26人×3か月=78人月を数量の代理とし、1人月当たり売上約176万円とした。2026年上期実績2.80億円は26人×6か月で約179万円/人月となり代理単価の整合を確認できる。2025末の年間稼働可能規模は78人月×4=312人月で、10年後中立は203人月=通年比較0.65倍、単価1.24倍。2025実績の3か月のみと2035年の通年を直接比べて数量増と誤認しない。AIエージェント代替の制作・運用人月型で、長期gは事業単独で0%。
リスクと懸念
SMS認証がパスキーとアプリ通知へ置き換わる
二段階認証ではSMSから端末内のパスキーや生体認証への移行が進む。RCSも通常SMSを上書きするだけなら追加の通数にはならない。国内市場の2030年約143億通という予測は強い前提であり、通知の実需要が減れば、配信基盤が残っても同社の数量は減る。2025年の配信件数と用途別の推移を分けて点検したい。
キャリア原価と顧客単価のはさみ撃ち
配信はキャリア網への接続と課金が前提であり、複数の配信事業者が同じ企業顧客を狙う。大口顧客が複数社を比較すれば、仕入れ原価が上がっても実効配信単価を値上げできない。2025年の実効収入は1通約5.01円だがRCSの付随収入を含み、単純な契約料金の値上げ力を示す数字ではない。
AIエージェント代替:予測SaaS・受託・広告運用
Deep Predictorは画面操作や予測モデル選択をAIエージェントが肩代わりでき、顧客が契約する席数を減らす可能性がある。導入コンサルやLOWPの制作・広告運用は工数そのものが売り物で、生成AIの内製化と成果物の値下げが直撃する。これらは記録の正本を持つ型ではなく、主力のSMS配信インフラと分けて数量を減らした。
RCS普及の遅れと中期計画の実行不足
AIX2027は売上73億円、営業利益18億円を目標にしたが、2026年見通しはRCSのキャリア・端末への浸透の遅れで売上53億円、営業利益6億円へ改定された。利用端末、キャリア、企業顧客の三者が揃わないと双方向の高度な通知が広がらない。2027年計画の達成だけを理由に2035年の利益率を高く置いてはいけない。
LOWPのれんと買収後の現金収益
2025年10月のLOWP買収には約4.2億円を投じ、約2.7億円ののれんが残る。広告制作とサイト運用の受注は景気と顧客の内製化に左右されやすく、AIの進化により人月単価も圧迫される。利益は一時的に見えても、買収のれん償却や将来の減損、追加の人材確保費でオーナー利益が乏しくなる可能性がある。
主要顧客・代理店への依存と情報漏えい
2025年はジンテック向け売上が約5.03億円と全社の約12%を占めた。送信元が大口代理店に集中すると、代理店の仕入れ条件の変更だけで通数と粗利が動く。また送信先番号や認証情報の扱いに事故が起きれば、金銭損害だけでなく配信サービスを使う企業からの信頼を長期に失いかねない。
無配・ストックオプション・余剰現金の使途
純現金は厚いが、2025年まで定常的な配当はなく、2024年の自社株買いが継続する保証もない。未行使新株予約権は2025年末で約29.3万株あり、行使されれば現行株数に対して数%の希薄化が生じる。買収に使う現金と株主に返せる現金を混同せず、低収益の追加買収が続けば現金の額面価値を割り引く必要がある。
今後の分かれ目
- 国内SMSの四半期送信通数が前年比10%未満の伸びに3期連続で鈍化したら
- 2035年中立の年間16.5億通という数量前提を見直す。RCSへの代替が原因なのか、同業へシェアを奪われたのかを切り分け、後者ならやや悲観の確率を高める。
- RCSの通数と売上が独立開示され、実効収入の上昇がキャリア原価上昇を上回って定着したら
- 会社の値決め力を見直し、2035年のメッセージ実効単価と貢献利益率を引き上げる。単なるSMSからの置換なら数量と価格を二重に増やさない。
- 競合NTTドコモビジネスX・メディア4uが大口法人の値下げ攻勢を強め、同社の1通当たり実効売上が5円を継続して割ったら
- 中立の実効単価5.15円を下げ、キャリア原価の変化と合わせて利益を再計算する。国内数量シェアの低下も確認できれば下側の確率を上げる。
- LOWPの通期売上が6億円前後を維持しても営業現金収益が黒字化せず、のれん減損が示唆されたら
- 広告の収益を悲観寄りに変更し、のれんを自己資本の床から引いたままとする。追加買収に用いる現金の株主還元評価も引き下げる。
- Deep Predictorの有料契約数・解約率と継続課金売上が明示され、2年以上の高継続率と実質値上げが確認できたら
- 初めてAI予測ソフトを工数型ではなく継続ソフトとして再評価する。ただし業務の記録の正本に当たるかは独立の証拠を必要とする。
- 配当方針の数値化や継続的な自社株買いで純利益の5割以上が株主へ戻ることが実証されたら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ改める。同時に新株予約権の行使による希薄化を新しい実発行株数で更新する。
見ておくもの
- 四半期の国内SMS送信件数、海外件数、RCS固有件数と実効単価
- 有料SMS契約企業数、ARPU、主要顧客・代理店への売上集中率
- メッセージング貢献利益率とキャリア向け費用の対売上比率
- RCS対応端末・キャリアの普及と中期計画AIX2027の再修正
- Deep Predictor有料契約社数・解約率・受託工数別売上の初開示
- LOWPの案件人月、案件粗利、のれん償却・減損と営業現金利益
- 余剰現金の増減、配当または自社株買いの実績、新株予約権の行使株数
倍率と資本コストの決め方
2035年の送信量は2025年の通数実績と国内A2P市場の実質件数から、1通当たり収入は2025年の売上÷配信通数から独立に推定した。SMSの市場規模と単価に物価を二重計上していない。LOWPは2025年10月から3か月だけ連結されているため、AIエージェント代替の数量倍率は同年末人員の12か月換算を基準に適用した。
PERは現在・過去・同業の売買倍率を参照せず、k7.75%、普通の堀、余剰現金を分けた将来事業ROEと、AI代替を考慮した長期名目g1.7%から計算した。悲観は営業赤字なので純現金と換金できる資産の床を用いる。2025年末のれん約2.7億円は換金資産に数えず、買収後の償却の影響も利益率に反映する。日本基準の新リース会計の表示変更があっても、事業の賃借費は一貫して営業費用とする。2026年10月22日の株価はすべての事業・倍率・確率を決めた後の比較にだけ用いた。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式リスク上乗せ4.5%の7.5%を起点に、事業の価格競争と純現金で計+0.25%とした。M&A失敗や個別のAI事業縮小は数量・利益・確率にのみ反映。