結論
NCDは、企業向けシステムの開発・運用と、約56万台の駐輪場管理を手掛ける独立系の企業である。10年後の価値を考えると、現在の時価総額201億円はやや割安と判断する。ただし、割安さの根拠は従来のIT事業が成長し続けることではない。AIエージェントによる受託開発・運用工数の減少を厳しく織り込んでも、実際の土地と設備を使う駐輪場事業、厚い現金、株主還元が価値を支えることにある。
2026年3月期の売上高は309億円、営業利益は26億円だった。システム開発とサポート&サービスで売上の約74%を占めるが、駐輪場事業は売上26%に対してセグメント利益の約42%を稼ぐ。ここが同業のSI企業との最大の違いである。駐輪場では既存施設の更新、料金改定、無人化による管理費削減が進み、営業利益率は構造改革前より高い水準に定着している。
一方、IT事業について過去10年間の成長率をそのまま延長することはできない。保険会社向けの長期保守契約や一次請けの多さは強みだが、顧客が購入する開発工数そのものをAIが減らす可能性が高い。ストック型売上が約8割あることと、将来も同じ金額を請求できることは別問題である。中立ではIT関連の実質的な販売工数が10年間で大きく減ると考える。
2029年3月期に売上高360億円、営業利益35億円を目指す会社計画には実現の余地がある。しかし、その後も同じ成長が続くとは考えない。2036年の中立では売上高約327億円、営業利益約34億円、純利益約24億円を見込む。5つの筋書きの価値を資本コストで割り引いた概算は247億円で、現在の時価総額を約23%上回る。駐輪場の競争力と還元方針には評価すべきものがあるが、AI代替と大型投資の失敗が安全域を削りうるため、確信度は中程度にとどめる。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、NCDは事業のすべてを同じ価値で評価してはいけない会社である。保険会社向けの開発・運用は今も必要な仕事だが、10年後に必要な人員や契約単価を予測するのは難しい。長期契約があっても、顧客が購入する作業量そのものが減るなら、利益を永続するものとして高く評価できない。
それに対して駐輪場は理解しやすい。自転車を置く場所と設備は現実に存在し、利用者が料金を払う。駅前の立地、自治体との関係、保守体制、機器の更新実績は簡単に複製できない。しかも管理の省人化が進めば、利用者数が増えなくても利益率を改善できる。この事業には小さいながらも持続的な競争優位がある。ただし、土地や施設の所有権がすべてNCDにあるわけではなく、管理契約の更新や地代の上昇には注意が必要だ。
オーナー利益は、会計上の純利益から事業を維持するための支出を差し引いて考える。ITの人材育成と研究開発、駐輪場の機器更新や賃借条件への対応は継続的に必要になる。特に新リース会計基準で将来の貸借対照表に計上される賃借の約束は、現在の純現金だけから受ける印象より事業の自由度を小さくする可能性がある。
経営が資本コストを上回る収益率で再投資できるなら、その利益は長く株主価値を増やす。難しくなった事業への投資を抑え、配当と自社株買いで株主に返す判断も価値を生む。現在の配当性向50%以上という方針は評価するが、景気後退やAI代替によって利益が大きく減れば維持が難しくなる場合もある。
この会社の魅力は、派手な技術成長を前提にしなくても価値を計算できる部分があることだ。中立の将来利益、資産、配当を考えると今の値段には一定の安全域がある。ただし駐輪場の収益性が崩れた場合、IT事業だけではこの評価を支えるのが難しい。したがって、無条件に持ち続けたい会社というより、現金の使い方と駐輪場の競争力を継続して確認したい会社である。
何で稼ぐ会社か
NCDの事業はシステム開発、サポート&サービス、パーキングシステムの3つに分かれる。1967年にシステム開発から事業を始め、1995年に運用支援、1997年に駐輪場へ進出した。現在では、顧客企業の基幹システムと都市生活の駐輪設備という、性質の異なる2つの基盤を持つことが特徴になっている。
システム開発事業は2026年3月期に売上高127億円、セグメント利益9億円を計上した。保険会社などの業務システム開発、アプリケーション保守、クラウド移行、ERP導入支援を担う。FWD生命やJFEグループなどとの長期取引があり、顧客の業務を理解したうえで設計から保守まで引き受ける。一次請け比率が約8割であるため、下請けだけの開発会社より顧客との交渉機会が多い。ただし、売上の多くは専門家の労働時間や開発・保守の作業量に結びついている。
サポート&サービス事業は売上高100億円、セグメント利益6億円である。システム基盤の構築、24時間監視、障害対応、サービスデスク、アウトソーシングを提供する。継続契約が多い反面、問い合わせの一次対応、監視、手順に従う復旧などはAIエージェントによる自動化の対象になりやすい。経営はマネージドサービスへの転換を進め、単純な人員提供から包括的な運用成果を売る形を目指している。
パーキングシステム事業は売上高81億円、セグメント利益11億円を稼ぐ。時間貸しのEcoStation21、月極管理のECOPOOLを展開し、2026年4月時点で全国2,168か所、約56.1万台を管理する。自営駐輪場の利用料、自治体の指定管理、鉄道会社などからの管理受託、駐輪機器販売が収益源である。継続型売上が8割を超え、機器を設置して終わりではなく、精算、遠隔監視、保守、利用者対応まで担う。
この駐輪場事業では、顧客が買うのはソフトウェアの画面だけではない。駅前などの立地、駐輪設備、自治体や地権者との契約、管理サービスが一体となった利用環境である。アプリの操作部分がAIに代わっても、自転車を安全に置く場所は必要だ。全社の利益を考える際には、この実物の基盤をIT受託事業と明確に区別する必要がある。
優良さと弱いところ
NCDには限定的だが本物の競争優位がある。最も分かりやすいのは駐輪場である。約56万台の管理規模、2,000か所を超える運営実績、24時間対応の自社サポートセンターを持つ。自治体や鉄道会社から受託を獲得し、14自治体で指定管理者を担うなど、施設運営の経験が積み重なっている。設置した機器、利用者対応、自治体との運営実績を一度に置き換えるには相応の手間がかかる。
駐輪場の価格決定力には実績もある。2026年3月期は利用料金の改定が収益を支え、2023年3月期から2026年3月期までに事業の採算性が大きく改善した。会社資料によると、構造改革によって駐輪場の売上総利益率は19.2%から29.3%へ上昇した。ただし、この改善には運営効率化と採算重視の案件選別も含まれる。すべてを自由な値上げの成果と解釈するべきではない。
IT事業の堀は駐輪場より弱い。長期顧客、業務知識、一次請けの多さ、保守契約の継続性は評価できる。反面、システム移行に年単位を要する契約の割合、年5%未満の解約率、独自データによる独占力など、AI時代にも価格を守れることを示す定量的な証拠は十分ではない。会計や決済の記録を支配する事業者と同じ強い堀を認めることはできない。
財務は堅い。2026年3月期の自己資本は約85億円、純現金は約69億円、自己資本比率は50%である。直近のROEは22%前後、会社開示のROICは18.5%で、資本コストを大きく上回る。ただし、過去の利益率は2021年3月期に1.4%まで落ちたことがある。人件費や外注費の上昇が契約価格に転嫁できなければ、資本効率は再び低下する。
全社としての堀は普通と判断する。駐輪場の物理的な参入障壁は評価できるが、IT関連が売上の約4分の3を占め、AI代替の影響を避けられないためである。10年後の企業価値を守る力は、技術者数の増加よりも駐輪場の管理区画、収益性、現金の配分に依存するようになる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は2025年に約7.57兆円だった。IDC Japanは2030年に約10.25兆円へ拡大すると予測する。基幹システムの刷新、データ基盤整備、クラウド移行が需要を支えている。NCDのIT関連売上約227億円は、この市場の約0.30%に相当する。システム開発だけでは約0.17%、サポート&サービスでは約0.13%にすぎず、業界全体の価格を左右する規模ではない。
競合にはTIS、SCSK、BIPROGY、NSD、DTSなどがある。TISの2026年3月期連結売上は約5,965億円、SCSKは約7,803億円、BIPROGYは約4,337億円と、NCDよりはるかに大きい。これらを国内ITサービス市場で単純に割ると約8%、10%、6%になるが、各社の海外事業や物販も含むため厳密な国内シェアではない。NCDが独自の立場を築けるのは、業界全体の規模の競争ではなく、保険など特定顧客の業務に深く入り込む領域である。
最大の変化はAIエージェントによる労働量の減少だ。従来のIT市場予測は需要額の拡大を示すが、その全額が従来型の人月契約に流れるわけではない。設計、プログラミング、テスト、監視、問い合わせ対応に必要な人数が減れば、顧客は同じ成果に対して従来ほどの料金を払わなくなる。大手クラウド事業者やAIを内製する顧客が付加価値を取り込む可能性もある。10年後には市場全体が成長していても、従来型SI企業の工数売上は縮んでいると考える。
駐輪場市場はこれとは対照的に成熟市場である。全国の自転車等駐車場の収容能力は2023年時点で約426万台で、実際の収容台数は約251万台、利用率は約59%だった。NCDの管理台数をこの全国収容能力と単純比較すると約13%になる。ただし年度と集計対象が異なるため、厳密な市場シェアではない。競合のサイカパーキングは2026年3月末に約54万台、自転車駐車場整備センターは約45万台を管理しており、大手が複数存在する。
今後10年で全国の自転車利用台数が大幅に伸びるとは考えにくい。人口減少に加え、既存駐輪場の利用率にも余裕があるためだ。それでも老朽設備の更新、駅前再開発、自治体の人手不足、無人化、キャッシュレス化には需要がある。NCDはこの更新需要を取り込み、既存運営会社からシェアを奪うことで管理台数を増やせる。駐輪場の市場規模そのものが急拡大するより、運営の集約と省力化による利益成長を重視する。
資本政策と M&A
資本配分には改善の実績がある。2019年には駐輪場関連の矢野産業を買収して現在のNCDエストとし、2023年12月にはジャパンコンピューターサービスを完全子会社化した。買収は事業の地理的拡大や技術者・顧客基盤の補完を目的としている。もっとも、過去10年の営業利益改善を買収だけの成果とみなすことはできない。既存事業の採算改善も大きく、買収案件ごとの増分ROICは取得価格と投下資本の継続開示が十分でないため確定できない。
新中期経営計画Vision2029では、2029年3月期に売上高360億円、営業利益35億円、営業利益率9.7%、ROE20%以上、ROIC20%以上を目指す。セグメント目標はシステム開発150億円、サポート&サービス120億円、パーキング90億円である。2027年3月期から3年間の成長投資は45億円を計画し、人的資本13億円、研究開発・IT・DX9億円、設備投資等12億円、M&A10億円を予定する。これには駐輪場設備への投資が含まれない点に注意が要る。
株主還元は明確に強化された。配当性向は50%以上を目安とし、原則として減配しない累進配当を導入した。3年間の配当・自社株買いの計画は合計30億〜42億円であり、自社株買い単独の固定額は約束していない。2026年3月期には配当性向52.7%、総還元性向68.6%を実現している。現預金は月商の2.5〜3.0か月を目安とし、財務健全性を保ちながら成長投資と還元を両立させる方針だ。
筆者が警戒するのは、AIで受託開発の収益機会が縮む中、過去の人月事業を拡大するために高値の買収を続けることである。逆に駐輪場の採算のよい施設を取得し、既存システムと管理拠点を共用できるなら、投下資本の利回りを高められる可能性がある。買収の額そのものではなく、買収後の営業利益、現金回収、ROICの改善を評価する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
NCDの最大の強みは、AIによって代替されるIT受託事業だけに依存していないことだ。駐輪場は管理台数約56万台を持ち、料金改定と運営効率化によって収益性を高めてきた。サイカパーキングや自転車駐車場整備センターと並ぶ規模を持ち、自治体や鉄道会社との取引実績も豊富である。全国の駐輪場は成熟しているが、多くの既存設備は更新時期を迎える。古い機器をキャッシュレス対応や無人管理に置き換える仕事は、人口が減っても続くだろう。
駐輪場の利益率改善はすでに結果が出ている。2026年3月期のセグメント利益率は約14%で、以前の低収益体質から脱した。管理台数を増やしながら料金改定を続けられれば、物価上昇を超える利益成長の可能性もある。固定費を複数の施設で共用できるため、管理区画が増えるほど規模の経済が働く。
IT関連事業にも一定の強みが残る。保険会社などの基幹システムは簡単には廃止できない。一次請け比率が高いため、顧客の業務課題を把握し、AI導入の設計や運用監督を受注できる余地がある。人月単位の仕事は減るとしても、顧客との接点が直ちに消えるとは限らない。
さらに、2029年までの株主還元計画は具体的だ。3年間で30億〜42億円を戻す方針が継続し、駐輪場の拡大投資にも適切な規律が働けば、純利益が大きく伸びなくても既存株主の取り分は増える。純現金が厚いため、短期的な景気後退にも耐えやすい。現在の時価総額は、この事業構成と現金創出力を十分に評価していない可能性がある。
慎重な見方
IT関連売上が全体の約74%を占める事実は重い。保険や金融のシステムが必要であり続けることは、NCDが現在と同じ開発工数を販売できることを意味しない。AIエージェントが設計、実装、テスト、監視、問い合わせ対応を直接処理すれば、顧客は作業量ではなく結果に料金を払うようになる。NCDがその変化を主導するのではなく、海外のAI基盤企業や顧客の内製部門が付加価値を取り込む可能性もある。
ストック型売上の高さも過信できない。長期契約は契約期間中の安定には役立つが、更新時に工数が削られれば売上は減少する。2026年3月期には大型案件終了や人件費上昇でシステム開発の利益が減っている。現在の利益率がAIによる工数圧縮と価格競争の両方に耐えられるとは限らない。
駐輪場にも成長の限界がある。全国の駐輪場収容能力はすでに十分大きく、実際の利用率は約6割である。人口減少や自転車保有台数の減少が続けば、新しい駐輪場の需要は伸びにくい。自治体の入札では価格競争があり、鉄道会社や地権者との契約更新に失敗すれば施設を失う。駐輪場の管理権は永久の資産ではない。
純現金約69億円も全額が株主に自由に配れるものではない。運転資金と駐輪場の設備更新に現金が必要だからだ。2029年までの45億円の投資計画にはM&A10億円が含まれ、買収価格を誤れば利益を損なう。累進配当の約束も、構造的に利益が減り続ける場合には財務の制約を受ける。悲観ではITの工数売上が大きく減り、駐輪場の競争優位も失われるため、現在の株価に安全域があるとは限らない。
どちらに重みを置いたか
事業の持続性では駐輪場の存在が強い評価材料になる。一方、IT関連の売上比率が高く、AIエージェントによって従来の契約工数が減る危険を軽視できない。会社は高付加価値化を掲げるが、AIサービスによる十分な収益化はまだ実証の途中である。
確率は楽観側26%、中立34%、悲観側40%と慎重な方向に寄せた。下に寄せる理由は、NCD固有の収益構成としてIT受託と運用が約74%を占めること、2026年3月期に大型案件終了と費用上昇で減益となったことにある。ただし中立の数量自体にもAIによる縮小を十分に入れており、同じリスクを資本コストや事業寿命に重ねていない。現在の株価には一定の割安さが残るが、駐輪場の収益維持がその前提である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 4,151 円333 億円(+ 還元の換算額還元の合計 1,452 円116 億円)。 今の値に割り戻すと 3,084 円247 億円、今との差 +29.2%、 期待の年率 +10.6%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 8,921 円715 億円 | 2,369 円190 億円 | +373.0% | +20.0% | 790 円63 億円 |
| やや楽観 | 19% | 6,763 円542 億円 | 1,833 円147 億円 | +260.1% | +16.1% | 1,633 円131 億円 |
| 中立 | 34% | 4,906 円393 億円 | 1,434 円115 億円 | +165.6% | +12.0% | 2,155 円173 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,616 円130 億円 | 1,247 円100 億円 | +19.9% | +2.4% | 773 円62 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,056 円85 億円 | 873 円70 億円 | −19.2% | −2.7% | 251 円20 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,151 円333 億円 | 1,452 円116 億円 | +134.7% | +10.6% | 5,603 円449 億円 |
今の株価時価総額 2,387 円191 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 駐輪場で全国展開し、ITの高付加価値化も進む 利益 42 億円 · PER 15.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 8,921 円715 億円
駐輪場の省人化需要が全国へ広がり、NCDは新しい自治体や鉄道会社との契約を獲得する。EcoStation21の既存設備に加え、ECOPOOLの月極管理や次世代型の精算機レス駐輪場が普及する。管理台数は88万台へ増え、料金改定と施設の運営効率化が進むことで、駐輪場の利益率は19%に達する。競合のサイカパーキングや自転車駐車場整備センターが持つ一部施設の更新案件を獲得し、全国の管理台数シェアを伸ばす。
IT関連では、保険会社との長期取引と一次請けの強みを生かし、上流設計、セキュリティ、AI導入後の運用監督などに業務を移す。従来型の開発・運用工数は減るが、高度な顧客対応が必要な仕事では単価を維持する。人員を無理に増やさず、採算の悪い契約を減らすことで収益性が改善する。
経営は買収価格を慎重に管理し、駐輪場の更新事業と既存顧客の拡大に資本を使う。株主還元も利益成長に沿って増え、10年間の累積還元は190億円に達する。IT事業の成長には限界が残るものの、駐輪場の稼ぐ力によって全社利益は大きく伸びる。
- システム開発事業:数量 960(実効有償稼働量(人年、協力会社の外注工数を含む推定))× 価格 0.17(実効有償稼働1人年当たりの売上高(億円、名目))→ 売上 164 億円・営業利益 18 億円。AI代替後も工数96%を維持。高付加価値案件と物価転嫁で単価は1.34倍。
- サポート&サービス事業:数量 940(実効有償稼働量(人年、協力会社の外注工数を含む推定))× 価格 0.13(実効有償稼働1人年当たりの売上高(億円、名目))→ 売上 125 億円・営業利益 11 億円。販売工数94%、単価1.34倍。マネージドサービスへの転換が成功。
- パーキングシステム事業:数量 88.0(管理駐輪場収容台数(万台、各時点の管理区画数))× 価格 2.00(管理1万台当たりの年間セグメント売上高(億円、名目・機器売上を含む換算単価))→ 売上 176 億円・営業利益 33 億円。管理88万台、全国市場の約21%相当。更新案件と料金改定、固定費共用の効果を含む。
倍率:k7.25%、g_long1.0%、moat普通で超過ROEの残存割合50%。10年後の余剰現金120億円を除く事業自己資本94.7億円、現金利息税後1.68億円を除く事業純利益40.72億円からROE43.0%、RONIC25.1%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約15.36倍を採用。事業利益40.72億円×15.36倍に、余剰現金120億円の75%を加える。市場で取引されるPERは根拠にしていない。
確率:駐輪場の管理区画が大幅に増え、料金改定を継続し、ITでもAIによる工数減少を高付加価値案件の獲得でおおむね補う必要がある。複数の成功が重なる筋書きであるため7%とした。AIサービスの金額を伴う収益化実績が十分ではないので、楽観でもITの販売工数は現状以下とする。
やや楽観 19% 駐輪場の拡大がITの工数縮小を補う 利益 32 億円 · PER 15.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6,763 円542 億円
駐輪場では駅前再開発と老朽設備の更新需要を取り込み、管理台数が76万台へ拡大する。地方都市では採算の悪い新規施設を避け、関東や主要都市の需要がある地点に重点を置く。管理料金は物価上昇におおむね連動し、施設を増やしながら利益率17.5%を確保する。NCDの駐輪場事業は成熟市場の中でシェアを広げ、全社の重要な利益源となる。
システム開発とサポート&サービスは、AIエージェントによって販売工数がそれぞれ17%、15%減少する。反面、保険会社などとの長期関係を生かし、設計・監督・障害の最終対応の仕事を残す。価格交渉が進み、名目単価は物価に近い上昇を確保する。
経営は駐輪場や周辺ITサービスの買収を小規模にとどめ、還元方針を維持する。利益の大幅な拡大は起きないものの、設備投資と配当の両立が続く。10年間で約147億円を株主に返し、自己資本の増加は抑えられる。
- システム開発事業:数量 830(実効有償稼働量(人年、協力会社の外注工数を含む推定))× 価格 0.17(実効有償稼働1人年当たりの売上高(億円、名目))→ 売上 141 億円・営業利益 13 億円。AI代替で販売工数83%、価格1.33倍。上流案件の採算改善を反映。
- サポート&サービス事業:数量 850(実効有償稼働量(人年、協力会社の外注工数を含む推定))× 価格 0.13(実効有償稼働1人年当たりの売上高(億円、名目))→ 売上 112 億円・営業利益 9 億円。工数85%、価格1.32倍。包括的運用への転換が一定程度進む。
- パーキングシステム事業:数量 76.0(管理駐輪場収容台数(万台、各時点の管理区画数))× 価格 1.96(管理1万台当たりの年間セグメント売上高(億円、名目・機器売上を含む換算単価))→ 売上 149 億円・営業利益 26 億円。管理76万台、料金と更新需要により単位売上が約1.35倍。
倍率:余剰現金93億円を除く事業自己資本94.7億円、現金利息控除後の事業純利益31.10億円から事業ROE32.8%。k7.25%、残存割合50%でRONIC20.0%、g_long1.0%とすると正当化PERは15.20倍。事業純利益にこの上限を掛け、余剰現金93億円の75%を加える。
確率:駐輪場の新規管理契約、既存料金の改定、運営効率化は過去の実績から一定の実現可能性がある。ただしITの収益モデル転換と同時に進める必要があり、経営計画を継続的に上回る状態には慎重であるため19%とした。
中立 34% ITは工数縮小、駐輪場は着実に成長 利益 24 億円 · PER 14.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,906 円393 億円
2029年までの中期計画では売上高360億円を目指し、IT関連の案件獲得や駐輪場の設備更新が進む。しかし2030年代にはAIエージェントが実装・テスト・監視・問い合わせ対応を大幅に自動化する。NCDの顧客関係は残るが、必要な開発・運用工数が減り、契約更新の際に請求額を見直される。システム開発の販売工数は現在の65%、サポート&サービスは72%まで縮む。名目単価は上昇するものの、物価ほどは上げられない。
駐輪場は管理台数が67万台に増える。全国の駐輪場市場そのものはほぼ横ばいでも、NCDは機器の更新、既存契約の継続、自治体案件の獲得で管理区画を広げる。利用料金の改定と遠隔管理の効率化が進み、利益率は16%に改善する。EcoStation21とECOPOOLの運営基盤が、IT関連の減収を補う。
経営は新規事業への投資を続けるが、大型買収で収益構造を一変させることはない。配当性向50%以上の方針を基礎に株主還元を進め、10年間で115億円を返す。最終的には売上高約327億円、営業利益約34億円、純利益約24億円となり、現在よりも駐輪場の収益に依存する会社へ変わっている。
- システム開発事業:数量 650(実効有償稼働量(人年、協力会社の外注工数を含む推定))× 価格 0.17(実効有償稼働1人年当たりの売上高(億円、名目))→ 売上 108 億円・営業利益 9 億円。AI代替で実質工数65%、単価1.30倍。2030年代に工数請求が減る。
- サポート&サービス事業:数量 720(実効有償稼働量(人年、協力会社の外注工数を含む推定))× 価格 0.13(実効有償稼働1人年当たりの売上高(億円、名目))→ 売上 93 億円・営業利益 6 億円。AI代替で実質工数72%、単価1.29倍。監視・ヘルプデスクの自動化を反映。
- パーキングシステム事業:数量 67.0(管理駐輪場収容台数(万台、各時点の管理区画数))× 価格 1.89(管理1万台当たりの年間セグメント売上高(億円、名目・機器売上を含む換算単価))→ 売上 127 億円・営業利益 20 億円。管理67万台、現状比約1.19倍。価格は1.30倍で物価をやや下回る。
倍率:余剰現金70億円を除いた事業自己資本99.7億円、税後現金利息0.98億円を除く事業純利益22.82億円から事業ROE22.9%。k7.25%、moat普通の残存割合50%からRONIC15.1%。AI代替のため全社g_longは1.0%とし、正当化PER=(1−0.01÷0.1507)÷(0.0725−0.01)=約14.94倍を採用。事業純利益22.82億円×14.94倍と、余剰現金70億円×戻り方0.75の合計である。
確率:ITの人月・工数型について、AIエージェント代替の中立数量をシステム開発65%、サポート72%とし、価格も物価上昇を下回らせた。駐輪場は全国市場が成熟しているため市場全体の拡大を期待せず、管理台数のシェア上昇と料金改定で成長させる。実物の駐輪場が利益の過半を担うことから、この筋書きを最も可能性の高い34%とした。
やや悲観 27% AIによる価格圧力と駐輪場の成長停滞 利益 11 億円 · PER 10.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,616 円130 億円
AIエージェントの普及が想定以上に速く、企業は外部の開発・保守契約を縮小する。保険会社の基幹システムは残るが、仕様書作成、プログラム修正、テストのかなりの部分を顧客側が自動化する。NCDは一部の高難度案件を維持するものの、価格交渉力が低下する。システム開発の販売工数は現在の半分、サポート&サービスは56%となる。
駐輪場では人口減少と自治体の経費削減が進む。全国で施設更新の需要はあるが、競合のサイカパーキングや自治体関連団体との入札競争が強まり、新規施設の採算が悪化する。管理台数は53万台とほぼ現在並みにとどまり、利用料の上昇も限定的になる。人件費と地代が上がるため、利益率は11%まで低下する。
経営は投資の選別を強めるが、すでに行ったM&Aや新規事業投資から十分な利益が得られない。配当は当初維持されるものの、収益悪化が続くにつれて自社株買いの余地が小さくなる。10年後の純利益は約11億円に減少し、資本効率は資本コストに近づく。
- システム開発事業:数量 500(実効有償稼働量(人年、協力会社の外注工数を含む推定))× 価格 0.15(実効有償稼働1人年当たりの売上高(億円、名目))→ 売上 74 億円・営業利益 4 億円。AIによる工数半減。単価は1.16倍にしか上がらず、利益率も低下。
- サポート&サービス事業:数量 560(実効有償稼働量(人年、協力会社の外注工数を含む推定))× 価格 0.12(実効有償稼働1人年当たりの売上高(億円、名目))→ 売上 65 億円・営業利益 3 億円。工数56%、単価1.17倍。自動運用と内製化で低採算の契約が増える。
- パーキングシステム事業:数量 53.0(管理駐輪場収容台数(万台、各時点の管理区画数))× 価格 1.71(管理1万台当たりの年間セグメント売上高(億円、名目・機器売上を含む換算単価))→ 売上 91 億円・営業利益 10 億円。管理53万台。設備更新案件はあるが、地代と人件費の上昇を十分に転嫁できない。
倍率:余剰現金27億円を除く事業自己資本92.7億円、現金利息を除いた事業純利益10.12億円から事業ROE10.9%、RONIC9.1%。k7.25%とg1%に基づく理論上限は約14.24倍だが、この筋書きでは事業の競争力が低下し、10年後以降の新規案件で資本コストを超える収益を得にくい。やや悲観の規則に従い稼ぐ力を保守的に評価し、10.8倍とした。余剰現金は27億円の75%を加える。
確率:IT関連が全社売上の約74%を占め、システム開発の大型案件終了で減益を経験しているため、AIによる工数の減少と価格競争が同時に進む可能性を重く見る。駐輪場は残るが管理台数が伸びず、採算の改善も止まる筋書きとして27%とした。
悲観 13% ITの人月商売が崩れ、駐輪場でもシェアを失う 利益 2 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,056 円85 億円
AIエージェントが多くの基幹システムの開発・保守を直接処理するようになり、人月による外注契約が大幅に縮小する。NCDは一部の金融系システム保守と特殊な障害対応を残すが、従来の開発人員を十分に稼働させられない。システム開発の販売工数は35%、サポート&サービスは38%まで落ち込む。高付加価値領域への転換にも失敗し、値上げは物価に大きく遅れる。
駐輪場では自治体入札の競争が激しくなり、主要な施設の契約を失う。機器の更新負担が重くなる一方で、新しい施設を獲得できない。管理台数は36.5万台まで減少し、十分な料金改定もできなくなる。さらに機器更新の遅れでサービス品質が落ち、過去に築いた管理実績が新規受注の強みにならなくなる。
経営は設備と人員の再編を進めるが、過去の投資を回収できず、ROEは資本コストを大きく下回る。累進配当の維持も困難となり、収益悪化が続いた段階で減配を余儀なくされる。10年後の売上は現在の半分弱、純利益は約2億円に縮む。事業の稼ぐ力よりも残存する純現金と資産が価値の中心となる。
- システム開発事業:数量 350(実効有償稼働量(人年、協力会社の外注工数を含む推定))× 価格 0.14(実効有償稼働1人年当たりの売上高(億円、名目))→ 売上 48 億円・営業利益 1 億円。AI代替と顧客内製化により工数35%、単価1.08倍。
- サポート&サービス事業:数量 380(実効有償稼働量(人年、協力会社の外注工数を含む推定))× 価格 0.11(実効有償稼働1人年当たりの売上高(億円、名目))→ 売上 41 億円・営業利益 0 億円。工数38%、単価1.07倍。監視とサービスデスクの採算が崩れる。
- パーキングシステム事業:数量 36.5(管理駐輪場収容台数(万台、各時点の管理区画数))× 価格 1.52(管理1万台当たりの年間セグメント売上高(億円、名目・機器売上を含む換算単価))→ 売上 55 億円・営業利益 3 億円。管理36.5万台。契約失効と低利用率により規模・採算とも悪化。
倍率:10年後のROEは約1.9%で資本コスト7.25%を大幅に下回る。純利益1.9億円を資本コストで資本還元した稼ぐ力の価値は約26億円で、現在の純現金69.2億円より小さい。悲観の床として2026年3月期の自己資本84.7億円を用い、将来の自己資本98.7億円に倍率を掛けない。過去の谷のPBRは使わない。
確率:AIによるシステム開発・運用の大幅な省人化と、駐輪場の競争優位喪失が重なる複合的な悪化である。IT関連の売上が現状の半分以下となり、駐輪場の管理台数も大幅に減るため頻度は高くないが、排除できない13%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
システム開発事業
保険会社などの業務システム開発、アプリケーション保守、クラウド移行、ERP導入支援を行う。人月・工数に結びつく受託型収益が中心である。
| 数量実効有償稼働量(人年、協力会社の外注工数を含む推定) | 価格実効有償稼働1人年当たりの売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 0.13 | 127 | 9 |
| 10 年後 中立 | 650 | 0.17 | 108 | 9 |
取り方:2026年3月期のセグメント売上127.29億円と利益9.42億円を使用。有価証券報告書ではシステム開発の常勤従業員672人、臨時従業員58人を開示している。外部協力会社の稼働量は非開示なので、約270人年相当を含む合計1000人年を仮定した。売上を12か月で割った実効請求単価は約106万円/人月となり、国内のSE・PM混合案件の外部単価水準と大きく矛盾しない。ただしパッケージ販売なども含む売上換算値で、実際の契約人月数・単価の開示ではない。市場規模はIDC Japanの2025年国内ITサービス市場7兆5663億円で、当社システム開発売上の粗いシェアは0.168%。AIエージェント代替の型は人月・工数型であり、記録の正本型と認める定量的証拠は不足する。出典:https://edinetdb.jp/company/E05120/text?fy=2026 、https://www.imagazine.co.jp/idc-report-on-20260309/
サポート&サービス事業
システムインフラの構築、監視、障害対応、運用、サービスデスクとアウトソーシングを提供する。継続契約が多いが、手順化された作業は自動化の影響を受ける。
| 数量実効有償稼働量(人年、協力会社の外注工数を含む推定) | 価格実効有償稼働1人年当たりの売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 0.10 | 100 | 6 |
| 10 年後 中立 | 720 | 0.13 | 93 | 6 |
取り方:2026年3月期の売上99.61億円とセグメント利益6.31億円を使用。有報で常勤619人、臨時119人が確認できる。外部協力会社の稼働量が非開示のため約262人年を加えた1000人年を収益換算の基準とした。実効請求単価は約83万円/人月で、開発より低い運用・サポート中心の業務内容と整合する。機器や外部サービスを含む売上換算のため実際の人月単価ではない。国内ITサービス市場7兆5663億円に対する粗い売上シェアは約0.132%。AIエージェント代替は、監視・障害の初動対応・サービスデスク等の人月・BPO型として扱う。会社が進める包括的なマネージドサービスは、成果課金への移行の可能性であり、確定したAI耐性としては織り込まない。
パーキングシステム事業
EcoStation21、ECOPOOLを中心に駐輪場の設置、管理、利用料収受、機器販売を行う。物理的な駐輪スペースと管理契約が収益の土台となる。
| 数量管理駐輪場収容台数(万台、各時点の管理区画数) | 価格管理1万台当たりの年間セグメント売上高(億円、名目・機器売上を含む換算単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 56.1 | 1.45 | 81 | 11 |
| 10 年後 中立 | 67.0 | 1.89 | 127 | 20 |
取り方:会社開示の2026年4月1日時点管理台数561068台、管理施設2168か所を使用。2026年3月期の売上81.28億円を管理56.1068万台で割り、1万台当たり1.449億円、1台当たり年間約1万4490円の売上換算単価とした。これは実際の個別駐輪料金ではなく、機器販売・受託収入も含む。会社資料ではストック型売上が8割超で、2026年3月期第3四半期では約86%。全国の2023年駐輪場収容能力426万台との比較で、管理台数の粗い比率は13.2%。競合サイカパーキングは約54.1万台、自転車駐車場整備センターは約45万台であり、全国統計とは時点と範囲が異なる。中立では既存施設の更新と自治体案件の獲得による台数増、料金改定による単価増を分けて考える。現物の施設・土地・設備運営が価値の中心であり、人月・席課金のAIエージェント代替型には分類しない。ただしECOPOOLの管理画面や事務対応の一部はAIに置き換わりうる。出典:https://www.ncd.co.jp/business/ps/ 、https://www.bridge-salon.jp/report_bridge/archives/2026/07/260713_4783.html 、https://www.jitensha.jp/
リスクと懸念
AIエージェント代替
システム開発とサポート&サービスは合わせて売上の約74%を占める。生成AIがプログラミング、テスト、監視、問い合わせ対応を代行すれば、顧客が必要とする外部工数は減少する。現在のストック契約が継続しても更新時に料金が下がる可能性がある。中立ではすでに販売工数を大きく減らしているが、顧客の内製化や海外AI企業への付加価値移転がさらに進めば、悲観側の筋書きに近づく。
駐輪場の立地・契約更新リスク
駐輪場の稼ぐ力は駅前などの立地と自治体・鉄道会社・地権者との契約に依存する。管理している約56万台を自社が永久に所有するわけではない。土地の賃借条件が悪化したり、指定管理の更新入札で競合に敗れたりすれば、設備を保有していても利用料収入を失う。長期価値において重要なのは一時的な管理台数より、更新後も残る管理台数と施設別採算である。
全国駐輪場市場の成熟と低い利用率
全国の駐輪場収容能力は2023年時点で約426万台、実際の利用率は約59%である。人口減少や自転車保有台数の減少が続く中、新たな駐輪場を大量に建設する需要は期待しにくい。NCDが管理台数を増やすには他社から契約を獲得するか、既存施設を更新する必要がある。競争が激化すると管理料金を下げざるを得ず、過去の料金改定や省人化による利益改善を相殺する可能性がある。
人件費・外注費と価格転嫁
2026年3月期の減益には従業員の賃上げ、外注先からの労務費転嫁、収益性の高い案件の終了が影響した。一次請けの多さは交渉上の強みだが、価格交渉がすべて成功するわけではない。物価と賃金が上がる世界では、顧客に請求できる単価の上昇が人件費の増加に追いつかなければ利益率が下がる。AIによって請求工数も減少すれば、固定的な人員負担がさらに重くなる。
M&Aと新規事業への資本配分
Vision2029では3年間の成長投資45億円のうち10億円をM&Aに予定する。これは現在の自己資本の1割を超える規模であり、買収価格と投下資本利益率が重要になる。特にAIによって収益モデルが変わる受託開発会社を高値で取得した場合、買収後の工数縮小やのれん減損で価値を壊す恐れがある。実行後は売上の増加よりも買収事業の利益率、現金回収、増分ROICを追う必要がある。
純現金の見かけと賃借・更新負担
純現金約69億円は財務上の安全性を高めるが、すべてを直ちに配当できるわけではない。会社は現預金を月商の2.5〜3か月分確保する方針であり、駐輪場の設備更新や運営の運転資金も必要となる。さらに新リース会計基準の適用で、施設・事務所などの賃借契約が負債として見えやすくなる可能性がある。家賃はすでに営業費用に含まれているため、価値評価では利益と負債を二重に差し引かない。
今後の分かれ目
- 駐輪場管理台数が70万台を超え、料金改定後も施設当たりの利益率が維持されたら
- 駐輪場の競争優位が広がっている証拠となる。管理台数と単位売上の前提を引き上げ、中立からやや楽観への確率移動を検討する。
- システム開発・運用の請求単価が上昇しても有償稼働量が継続的に減少したら
- AIエージェント代替が売上に現れたと判断する。ITセグメントの数量前提を下げ、利益率の維持可能性を再検証する。
- AIを使った成果報酬型サービスの受注額と継続収益が開示され、従来工数の減少を補っていることが確認できたら
- IT事業の構造転換が実証される。AI型の数量・単価制約の一部を見直し、将来の利益とg_longを再評価する。
- パーキングシステムのセグメント利益率が12%を継続して下回り、管理台数も減少したら
- 駐輪場の堀が弱まっている可能性が高い。やや悲観・悲観側の確率を増やし、全社の安全域を再計算する。
- 計画されたM&Aの実行後にROICが資本コストを下回り、営業現金収入が伸びなかったら
- 買収によって資本効率を損なったと判断する。買収による売上増加を価値にそのまま反映せず、余剰現金の戻り方も慎重に見直す。
- 連結配当性向50%以上と累進配当を維持し、余剰資金を自社株買いで返す実績が積み上がったら
- 資本配分への信頼が高まる。excess_cash_returnの0.75を1.0へ引き上げる根拠となり、本質価値の上方修正につながる。
見ておくもの
- 駐輪場管理台数、管理施設数、ECOPOOL管理台数、主要自治体の指定管理契約更新状況
- パーキングシステム事業のセグメント利益率、料金改定効果、機器販売とストック型売上の構成
- システム開発・サポート&サービスの売上高、営業利益率、実効稼働量、価格転嫁の実績
- AI関連サービスの契約金額、継続収益、成果報酬型契約への移行状況
- Vision2029の売上高360億円・営業利益35億円・ROIC20%以上の進捗
- 成長投資45億円、M&A10億円、株主還元30〜42億円の執行額と投資後の資本効率
- 配当性向、自己株式数、営業キャッシュフロー、現預金の月商倍率
- 国内駐輪場の全国収容能力、利用率、サイカパーキング等の管理台数と入札競争
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や同業のPERを使って将来倍率を決めていない。2026年3月期の3事業を、システム開発は実効人年と単価、サポート&サービスも実効人年と単価、駐輪場は管理台数と単位売上に分解した。ITの中立数量はAIエージェント代替の規則に従い65%と72%へ縮め、物価3%の世界でも価格上昇は1.30倍と1.29倍に抑えた。駐輪場だけは管理台数の増加と料金改定を認めた。
10年後の倍率は資本コスト7.25%、余剰現金を除いた事業ROE、資本コストを超える利益の残存割合50%、長期成長率1%から正当化した。中立の事業PERは14.94倍で、現在や過去の市場倍率を参照していない。AI代替は販売工数とg_longに反映し、資本コストの寿命調整には重ねていない。
今の時価総額201.06億円と比較するのは最後とした。5つの筋書きの株式価値と累積還元を、資本コスト7.25%で割り引いた概算は247.38億円である。差は約+23.0%となり、判定はやや割安である。新リース会計基準による貸借対照表の表示変更は、駐輪場の賃借負担を確認する材料とし、現在の営業利益から支払済み家賃を再び差し引くことはしない。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%を基礎とし、財務の強さを反映したquality−0.25%を加えて7.25%とした。個別のM&AやAI代替の失敗は、資本コストへの追加ではなく筋書きと確率で評価する。