結論
L is Bは、建設現場などで働く人々の連絡と業務を支える「direct」を中心に、業務ソフト、受託開発、BIM関連サービスを展開する会社である。筆者の結論は「割高」だ。2026年の値上げ成功は確かな強みを示しているが、10年後も同じ画面と契約体系で稼げるかには疑問が残り、現在の時価総額約41億円に十分な安全域はない。
評価すべき点は、単なる社内チャットではなく、ゼネコンと協力会社が入り交じる現場の仕事に入り込んでいることだ。directの利用実績は招待先を含めて1万社を超え、2026年6月末には約29.7万IDに達した。自治体向けの「LoGoチャット」は販売先のトラストバンクを通じて1,555自治体に導入されている。顧客の仕事の流れに合わせた設計と販売網には、一定の乗り換え障壁がある。
価格を上げられる力も実証された。2026年4月にdirectの主要プランを20%値上げし、その後も契約社数ベースの解約率は大きく悪化していない。同年6月末の既存顧客売上継続率は119.2%である。ただし、これは値上げと既存顧客の利用拡大が重なった数字であり、10年間にわたり同じ伸びが続く証拠ではない。
慎重に見る理由は二つある。第一に、チャットやタスク画面を人が操作する仕事はAIエージェントによって置き換えられ、利用IDと料金の双方が圧迫され得る。第二に、システム・エムズとIU BIM STUDIOの買収で人月型の売上が増えており、過去のSaaS企業としての成長率をそのまま将来に延ばせない。2025年12月期の売上は21.3億円、営業利益は1.7億円で、利益率はまだ低い。
今後数年は値上げとBIMの連結効果で増収増益が続く可能性が高い。しかし、長期株主が買うのは目先の成長率ではなく、競争と技術変化を経た後の利益である。中立では売上が2026年の拡大局面から縮み、営業利益も大きく伸びない。資産の下支えはあるものの、現在の株価はその弱い将来像に対して高いと判断する。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、最初に問うべきことは現場チャット市場が成長するかではない。10年後にもL is Bが顧客から料金を受け取り続け、稼いだ資金を高い利回りで再投資できるかである。建設現場の情報共有は消えないだろう。しかし、その需要が現在のdirectという製品の売上として残るとは限らない。必要な仕事が残ることと、製品の商売が残ることは区別する必要がある。
同社には評価できる証拠がある。2026年の20%値上げは、現場への適合性が一定の価格交渉力を生んでいることを示した。自治体向けOEMも全国規模で使われている。顧客に広く利用され、価格を上げてもすぐには離れない事業には価値がある。ただし、10年先の長期保有に値する堀には、AIが画面を飛ばしても同社のデータや処理基盤を使わざるを得ない仕組みが必要だ。現時点ではその確証がない。
オーナー利益、すなわち事業を維持した後に株主が受け取れる利益にも注意が要る。2025年の純利益は約1.4億円で、同社はさらに製品開発、人材採用、買収、投資事業へ資金を使っている。開発費の多くは費用として処理されるものの、翌年以降も製品の競争力を保つための支出が必要だ。BIMでは人を増やさなければ売上が増えにくい。純利益をそのまま自由に配れる企業ではない。
増分の資本利益率は、経営の最も重要な試験である。BIM買収は既存顧客との取引を広げる入口になるが、追加投資の利益が資本コストを超えなければ株主価値は増えない。現段階では買収先の利益実績が短く、超過収益を立証するには足りない。経営が現金を抱えること自体ではなく、それをどの程度の利回りで運用するかを見たい。
純資産があることは下値の支えだが、必ず帳簿価額で換金できるわけではない。のれんと非流動的な投資を含む資産に高い清算価値を与えるべきでもない。総合すると、値上げの実績と顧客基盤は認めるが、将来の収益の予測可能性は十分ではない。長く持つ株主が現在の時価総額を正当化するには、AI時代にも残る契約収益と、買収を含む高い資本効率の両方を確認する必要がある。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、現場向けビジネスチャット「direct」である。現場監督、協力会社、作業員がスマートフォンで連絡し、写真や図面を共有する。顧客は大林組などのゼネコン、電気設備工事会社、プラント、電力・通信インフラ関連企業などだ。元請企業が採用し、同じ現場に入る協力会社へ利用が広がる構造を持つ。
自社サービスにはdirectのほか、写真を整理・共有する「タグショット/タグアルバム」、技能や作業手順を動画で伝える「ナレッジ動画」、direct Appsなどがある。収益は主に月額利用料で、2025年の自社サービスとその他の継続課金売上は約13.2億円だった。2025年末の直接契約社数は696社である。1万社超という導入実績には招待された協力会社も含まれるため、その全てが有料契約先ではない。
もう一つの柱はOEM提供である。トラストバンクが自治体へ販売するLoGoチャットと、信金中央金庫向けの「しんきんdirect」が代表例だ。2025年のOEM売上は約4.5億円で、会社全体の2割強を占める。行政専用ネットワークへの対応や販売先の顧客基盤を利用できる半面、最終顧客との契約と価格交渉を販売先が握るため、自社サービスより収益条件を自由に決めにくい。
残りは個別開発と現場DX支援である。2024年に買収したシステム・エムズはWebシステム開発、システムコンサルティング、インフラ構築などを担う。2025年のショット売上は約3.7億円で、こうした案件型収入を含んでいる。顧客の固有業務を理解する機会にはなるが、利益が技術者の稼働時間に左右される。
2025年10月に買収したIU BIM STUDIOは、BIMと呼ばれる建物の3次元情報モデルの作成・活用を支援する。2026年上期の売上は2.03億円で、約55人のBIM業務従事者を抱える。図面の整合性確認や施工情報の管理は必要な仕事だが、モデル作成や修正などのデスクワークは生成AIによる省力化の影響を受ける。現場DXという共通顧客を持つ一方、チャットSaaSと同じ利益率にはならない。
報告上はDXソリューション事業と投資事業に分かれている。投資事業ではdirectX Venturesを通じて現場DX関連の新興企業などに投資する。2026年6月末までに8社への投資を実行したが、現段階では継続的な利益源というより、将来の提携や投資回収を目指す資本配分先である。
優良さと弱いところ
同社の堀、つまり競合が簡単に奪えない強みは、建設現場への理解と顧客間のつながりにある。元請と協力会社が同じ連絡手段を使えば、参加者が増えるほど便利になる。大林組でのタスク機能の展開など、単なる会話から日々の作業管理へ用途を広げた実績もある。現場での小さな改善を積み重ねる製品開発力は評価できる。
値決め力には実績がある。directは2014年の提供開始後、長く料金を維持してきたが、2026年4月に主要プランを一律20%引き上げた。値上げ後の月次企業解約率は1.14%で、値上げ前の水準から目立った悪化はない。ただし年率に換算すると約13%であり、解約率が年5%未満という極めて強い顧客固定力までは証明されていない。既存顧客の売上拡大には値上げ効果も含まれる。
自治体向けOEMには、さらに強い導入基盤がある。LoGoチャットは行政専用ネットワークに対応し、多数の自治体が共通の仕組みとして利用している。しかし、L is B自身が行政記録の唯一の正本を保管しているわけではない。顧客との商流はトラストバンクが担い、長期契約の更新条件や移行に要する年数も十分には開示されていない。行政分野の導入実績だけで、全社を強い独占企業と見ることはできない。
資本効率は改善途上だ。2021年と2022年には大幅な営業赤字だったが、2023年以降は黒字化し、2025年のROEは7.8%まで回復した。まだ資本コストを安定して上回る実績ではない。買収によってのれんが増え、BIMでは人件費が売上に比例しやすいため、全社売上が伸びても増分のROICが高いとは限らない。
競争相手はANDPAD、SPIDERPLUS、LINE WORKS、Microsoft Teamsなど幅広い。建設現場に特化していることは差別化要因だが、競合がチャット、写真、図面、AIを統合すれば製品境界は曖昧になる。堀は存在するものの、10年先には狭くなる可能性がある。現時点での評価は強い堀ではなく、通常の堀である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設現場DXには大きな未開拓需要がある。L is Bは2026年の事業説明資料で、建設業のDXソリューション潜在市場を約1,753億円、全業種の現場DXを約1.4兆円と試算した。建設業の約487万人に月額3,000円のサービスが普及するという仮定に基づく最大支出額であり、実際に支払われているソフトウェア市場の売上ではない。この区別は重要である。
同社の2025年末ARR約18.8億円を建設向け潜在市場と単純に比べると約1.1%となる。しかし、このARRには建設業以外の契約とOEM収入も含まれるため、実際の市場シェアではない。製品機能が重なる複数の市場について、統一定義の売上シェアは公表されていない。将来の数量を考える際には、潜在市場の大きさよりも契約企業数、利用ID、単価を重視する。
競合の規模は大きい。ANDPADは2026年に利用企業約27.9万社、利用者約81.8万人を公表している。SPIDERPLUSも同年6月末に2,200社超、約7.8万人の利用を示した。これらは招待先を含む利用企業数や有料契約先など定義が異なり、L is Bの直接契約711社と単純比較できない。それでも、競争相手が現場の多くの機能を一体提供しようとしている事実は重い。
建設業では人手不足、時間外労働規制、熟練技術者の減少がDX需要を支える。写真の記録、危険箇所の確認、図面との照合、複数会社間の連絡は10年後にも必要だろう。だが、その仕事を人間がチャット画面で行うとは限らない。AIが現場情報を読み取り、自動で記録・報告・通知するなら、作業量が増えても人間の利用ID数は減り得る。
LoGoチャットが対象とする自治体市場は国内自治体数に上限があり、既に1,555自治体に導入されている。今後は新規自治体数よりも継続利用、単価、機能追加が成長を左右する。対照的に建設会社や協力会社への浸透余地はあるが、ANDPADなどによる囲い込みとAIへの業務移行が進む。市場の需要増とL is Bの売上増を同一視しないことが必要だ。
BIMも普及余地のある市場だが、業務の中身によって見通しは分かれる。建築基準や施工現場に関する判断、顧客との調整は残りやすい。一方、図面生成、干渉チェック、3次元モデルの修正は自動化が進む。IU BIM STUDIOのように専門人材が成果物を作る企業は、作業時間が減った分を成果報酬へ転換できるかが長期の競争力を決める。
資本政策と M&A
L is Bの資本配分は、配当より成長投資を優先してきた。2025年までの開示実績で配当はなく、継続的な自己株式取得の実績も確認できない。2026年12月期も配当予想はゼロである。2026年3月公表の事業計画および同年8月の決算説明資料には、複数年の売上高、営業利益、ROEについて拘束力のある目標数値は示されていない。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額についても数字の約束なしである。
2026年12月期の単年度会社予想は売上28.23億円、営業利益2.66億円、純利益1.80億円だ。中期方針は営業利益率の継続改善だが、改善速度は今後の買収対象によって変わると会社自身が説明している。したがって、将来の高い利益率や増配を確約されたものとして評価することはできない。
買収では2024年11月にシステム・エムズを、2025年10月にIU BIM STUDIOを子会社化した。取得価格は十分には開示されていない。2025年末ののれんは約4.9億円に達し、2026年上期にはBIM買収先の営業利益がのれん償却費と同程度となった。直ちに失敗と判断する段階ではないが、買収価格に見合う超過利益を継続して生むかは未証明だ。
また、directX Venturesを通じて新興企業へ投資している。現場DXの技術を早く取り込む意義はあるが、投資先の評価益と現金回収は別物である。2025年末の自己資本は18.5億円、純現金は約2.8億円という添付の財務数値を基準とする。財務余力は残るものの、買収負債、のれん、未上場投資を考えると全額が株主へ自由に戻る現金ではない。
大株主にはWell Sideと経営者、事業会社、投資ファンドが並ぶ。2025年末の上位10株主合計は約60%であり、強い支配と無還元の両条件が必要な現金戻り率50%には該当しない。増配や自社株買いの実績も乏しいため、10年間で余剰現金が株主価値として戻る割合は75%とする。既存利益の大部分が買収や開発に再投資されることを基本とし、強気の筋書きだけで将来の株主還元開始を認める。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現場向けの製品は、一般的なオフィス用ソフトとは異なる。ゼネコンの現場には数多くの協力会社が出入りし、作業員のIT習熟度も一定ではない。使いやすさや既読確認、写真共有、連絡の確実性は、機能数だけでは測れない価値を持つ。directが大手企業の現場へ定着し、招待された協力会社へ広がる仕組みは、後発企業が簡単には再現できない。
2026年の値上げも強い証拠である。主要プランを20%引き上げても月次解約率はおおむね維持され、既存顧客のARR増加率は119.2%へ高まった。企業は便利だから契約するだけでなく、仕事の一部として定着しているから使い続ける。LoGoチャットも全国の自治体の大半に使われており、販売先を通じた導入基盤は強固だ。
さらに、AIを脅威としてだけ見るのは一面的だ。directアシスタントは過去のやりとりを検索可能な知識に変え、現場からAIへ情報を渡す接点になる可能性がある。Starlink Direct対応や建設業の個別ニーズへの対応も、製品の必要性を高める。大手の汎用ツールが全現場の特殊事情まで最適化できるとは限らない。
買収したIU BIM STUDIOは設計・計画から施工・保守までをつなぐ入口になる。顧客が同じであればソフト、BIM、受託開発を組み合わせた提案ができる。AIで作業時間を短縮すれば、同じ人数からより大きな成果を得られるかもしれない。買収後の利益が改善し、継続課金の強さが維持されれば、現在の時価総額を上回る企業価値を将来実現する余地はある。
慎重な見方
最も危ういのは、会社が強みとしてきたチャット画面そのものが、AI時代には中心でなくなることだ。建設現場で必要なのは情報共有と正確な作業であり、人間がトーク画面を開いてメッセージを送信する行為ではない。AIエージェントが報告を作り、必要な相手へ通知し、写真と図面を照合するなら、操作する人数に応じて料金を得る仕組みは弱くなる。
2026年の値上げ実績は認めるが、長期の価格決定力を証明するには期間が短い。月次解約率1.14%は年率では無視できない水準である。ARRの増加も価格改定と既存顧客の契約拡大に支えられており、独立した新しい顧客数が加速度的に伸びているわけではない。大型の顧客契約を失えば、現在の小規模な利益には大きな打撃となる。
LoGoチャットの自治体導入実績も、L is B自身が行政システム全体を握っていることを意味しない。販売はトラストバンクが担い、行政の情報基盤が統合されればOEMの条件が変わる可能性がある。ANDA...ではなくANDPAD、SPIDERPLUS、Microsoft、LINE WORKSなどの競合は、現場の連絡機能を他の業務と一体化させようとしている。
買収による事業拡大も慎重に評価すべきだ。BIMの作図はAIに向いている業務であり、人月を減らす方向に技術が働く。2026年上期のIU BIM STUDIOの営業利益はのれん償却費と同程度にとどまった。自社サービスの高い粗利益率を人月型事業へ広げると、全社の資本効率はむしろ薄まる恐れがある。配当と自己株買いの実績もないため、少数株主は経営による資本配分の成果を待たなければならない。
どちらに重みを置いたか
直近の事業運営については前向きな見方に十分な根拠がある。20%値上げの成功、既存顧客売上の伸び、自治体への普及は実績であり、単なる期待ではない。しかし、10年という時間軸では慎重な見方が優勢だ。直接契約先はまだ711社であり、強い制度上の独占や代替不能な記録データの地位は確認できない。AIは人間の操作とBIMの作業工数を同時に減らし得る。確率は楽観側29%、中立31%、悲観側40%と下に寄せた。下に寄せる理由は、現場向けチャットという製品の価値が人間の操作に依存し、買収したBIMも工数型であるという会社固有の構成にある。ただし中立の数量・価格に既にAIの影響を織り込んでおり、確率や資本コストで同じ縮みを二重には評価していない。最終判断は割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 531 円27 億円(+ 還元の換算額還元の合計 16 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 257 円13 億円、今との差 −67.6%、 期待の年率 −3.7%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 1,056 円54 億円 | 78 円4 億円 | +43.3% | +3.8% | 125 円6 億円 |
| やや楽観 | 18% | 729 円38 億円 | 39 円2 億円 | −2.9% | −0.3% | 138 円7 億円 |
| 中立 | 31% | 548 円28 億円 | 0 円0 億円 | −30.8% | −3.6% | 170 円9 億円 |
| やや悲観 | 26% | 342 円18 億円 | 0 円0 億円 | −56.8% | −8.1% | 89 円5 億円 |
| 悲観 | 14% | 178 円9 億円 | 0 円0 億円 | −77.5% | −13.8% | 25 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 531 円27 億円 | 16 円1 億円 | −30.9% | −3.7% | 547 円28 億円 |
今の株価時価総額 791 円41 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 現場DX基盤を守り、買収事業も利益を生む 利益 4 億円 · PER 12.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,056 円54 億円
建設現場の連絡・写真共有・安全確認は今後も必要とされ、directはその入り口としての地位を守る。大林組などの元請企業で業務アプリとの連携が深まり、協力会社への利用拡大が続く。2026年の値上げも定着し、長期的に実質単価を守れる。顧客はAIによって作業を省力化するが、業務連絡や情報共有の基盤には引き続きdirectを使う。
LoGoチャットは自治体での共同利用の地位を維持する。トラストバンクとの取引も安定し、自治体数が伸びなくても機能更新と利用範囲の拡大で契約価値が維持される。ANDPADやLINE WORKSとの競争は続くが、現場に合わせた使いやすさが選択理由として残る。
システム・エムズとIU BIM STUDIOは、顧客の複雑な仕事を理解する技術者を残しながら、定型的な開発や作図を自動化する。AIによって工数が減っても、単価や利益率の改善で補う。追加の大型買収は避け、既存子会社からの回収を優先する。成長投資の成果が利益として現れ、安定した黒字と株主還元が可能になる10年である。
- 自社現場SaaS・その他ライセンス:数量 696(有償直接契約企業数(社))× 価格 0.02(契約企業1社あたり年間売上(億円/社・年))→ 売上 17 億円・営業利益 4 億円。有償契約696社×年240万円。AIによる人数課金の縮小を他サービスとの契約拡大で相殺するが、数量は2025年を上回らせない。
- 自治体・信用金庫向けOEM:数量 1,555(自治体などのOEM稼働先換算数(先))× 価格 0.00(OEM稼働先換算1先あたり年間売上(億円/先・年))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。自治体など1,555先換算×年35万円。広い導入基盤を維持し、機能更新の対価を確保。
- 受託開発・DXコンサルティング:数量 300(年間有償稼働工数(人月換算))× 価格 0.01(1人月あたり平均売上(億円/人月))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。300人月×125万円。定型開発は減るが、複雑な現場システムの統合業務が残る。
- BIM作成・技術者支援:数量 660(年間BIM技術者稼働工数(人月換算))× 価格 0.01(1人月あたり平均売上(億円/人月))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。660人月×82万円。2026年の稼働能力を維持し、AIによる効率化を主に単価と利益率で回収する。
倍率:k8.0%、長期名目成長率gマイナス0.5%、2035年のROE約9.62%、moat=normalによる超過利益残存割合1/2とする。RONICは約8.81%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で約12.43倍。AIエージェント代替をgと数量に反映済みであり、資本コストの寿命には重ねていない。直近や同業の市場PERは根拠としない。将来の余剰現金は別途、規定の戻り方で評価する。
確率:大手建設会社の共同利用基盤が維持され、2026年の値上げ後も利用が定着し、買収先の収益性まで改善する複数の条件が必要である。AIアシスタントの収益貢献額は未開示のため、AIでIDが増えるという数量上振れは認めない。
やや楽観 18% 値上げと買収の成果が一定程度続く 利益 3 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 729 円38 億円
directの利用は人間中心の操作からAIを併用する形へ変わるが、企業間の連絡や写真共有に残る。顧客企業数は2025年をやや下回るものの、大口顧客の契約拡大と製品の組み合わせ販売によって単価を高める。建設会社は複数のツールを使い続け、directはその一部として位置を守る。
OEMでは行政専用ネットワークへの対応と販売先との関係が続く。自治体での大規模なシステム更新が起きても、LoGoチャットは相応の割合で選ばれる。信金中央金庫向けの利用は横ばいに近い。AIエージェントの普及で一部のIDが不要になるが、既存顧客の業務への適合が下支えとなる。
受託開発とBIMでは定型作業の自動化が進む。システム・エムズとIU BIM STUDIOは人件費を抑えつつ、顧客への提案や品質管理に仕事を移す。買収によって顧客基盤を広げた利点は残るが、高い超過利益を長く生むほどではない。会社は利益を積み上げ、一部を株主に戻せるようになる。
- 自社現場SaaS・その他ライセンス:数量 625(有償直接契約企業数(社))× 価格 0.02(契約企業1社あたり年間売上(億円/社・年))→ 売上 14 億円・営業利益 3 億円。625社×年225万円。数量は2025年の約0.90倍、単価は約1.18倍。
- 自治体・信用金庫向けOEM:数量 1,430(自治体などのOEM稼働先換算数(先))× 価格 0.00(OEM稼働先換算1先あたり年間売上(億円/先・年))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。自治体等1,430先換算、OEM価格は基準年の約1.17倍。
- 受託開発・DXコンサルティング:数量 274(年間有償稼働工数(人月換算))× 価格 0.01(1人月あたり平均売上(億円/人月))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。274人月×125万円。数量は基準年の約0.75倍。
- BIM作成・技術者支援:数量 560(年間BIM技術者稼働工数(人月換算))× 価格 0.01(1人月あたり平均売上(億円/人月))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。560人月×78万円。2026年の年間稼働能力を下回るが、成果の単価が改善する。
倍率:ROE約7.02%でk8.0%を下回る。超過利益を生む増分投資を長期の価値に加えず、g_longマイナス0.5%を適用した稼ぐ力の上限1÷(k−g)=11.765倍とする。AIの縮小は数量・価格とgで既に反映済み。
確率:価格改定実績と建設業界への深い浸透から、AI移行が緩やかであれば実現し得る。ただし契約数とID数の成長を2020年代前半の水準で延長せず、利益率改善も限定的にする。
中立 31% AIによる操作の削減と現場向け基盤の残存 利益 2 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 548 円28 億円
建設現場の業務はデジタル化するが、チャット、写真整理、記録の転記、日程調整などの操作はAIエージェントに移る。directは現場とAIシステムの接点として一定の地位を残すものの、企業が必要とする利用IDは減る。2026年の値上げ効果は一度利益に表れるが、その後は競争と自動化が料金の上昇を抑える。
自社サービスの有償契約先は2025年の約8割となる。大林組などの大口顧客では一部の機能が残り、協力会社向けにも一定のネットワーク効果が働く。だがANDPADやMicrosoft系の業務基盤がAI機能を組み込むと、顧客は複数のチャット基盤を持つ必要が薄れる。LoGoチャットも行政の共同利用基盤として残るが、自治体数は成熟し、単価も長期的には大きく伸びない。
受託開発とBIMでは、これまで人が時間をかけた作図・整理・プログラム作成が短縮される。難しい設計判断と顧客との調整は残るため仕事が消滅するわけではないが、受注工数は減る。システム・エムズとIU BIM STUDIOの収益も買収時の期待ほど伸びない。追加買収を抑え、既存製品の維持と小規模な機能更新を続ける。黒字は維持するが、高い資本利益率を生む成熟企業にはならない。
- 自社現場SaaS・その他ライセンス:数量 543(有償直接契約企業数(社))× 価格 0.02(契約企業1社あたり年間売上(億円/社・年))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。543社×年214万円。数量は基準年の0.78倍、単価は1.126倍で、AI代替の業務SaaSの中立範囲内。
- 自治体・信用金庫向けOEM:数量 1,244(自治体などのOEM稼働先換算数(先))× 価格 0.00(OEM稼働先換算1先あたり年間売上(億円/先・年))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。1,244先換算×年32万円。数量0.80倍、価格1.118倍。行政基盤の残存と契約価格の抑制を併せて見る。
- 受託開発・DXコンサルティング:数量 237(年間有償稼働工数(人月換算))× 価格 0.01(1人月あたり平均売上(億円/人月))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。237人月×120万円。数量は2025年の0.65倍、価格は1.20倍。
- BIM作成・技術者支援:数量 429(年間BIM技術者稼働工数(人月換算))× 価格 0.01(1人月あたり平均売上(億円/人月))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。429人月×74万円。2026年の年間稼働能力660人月から約35%減少する。
倍率:営業利益約2.15億円、純利益1.65億円、ROE約4.89%を前提とする。k8.0%を下回るので超過成長の価値を認めず、AIエージェント代替で長期名目gをマイナス0.5%とした稼ぐ力の上限1÷(k−g)=11.765倍。短期の成長を倍率に繰り返し加算しない。
確率:2026年の値上げ成功と既存顧客の利用拡大は確認できる一方、同年のAIアシスタントは先行トライアル段階で独立した収益規模が確認できない。企業の共通基盤として残る部分は評価するが、従来型のID課金と人月作業は縮むという中間の見通しとした。
やや悲観 26% AI基盤への統合が進み、既存契約が減る 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 342 円18 億円
建設会社はAIを使った施工記録と連絡の自動化を進める。ANDPADやMicrosoft Teamsなどの大きな業務基盤が、従来は専用チャットを必要とした仕事を吸収する。directの直接契約は減り、利用IDの減少が新規営業で補えなくなる。写真サービスや動画サービスも、顧客が契約する基盤に組み込まれ、個別料金を取りにくくなる。
自治体ではLoGoチャットの利用が一定程度続くが、行政システムの更新時に契約統合が進み、OEMの稼働先と平均単価が伸び悩む。販売先のトラストバンクが担う商流は残るものの、機能改善の対価をL is B側で十分に確保できない。販売網への依存が利益率を抑える。
受託開発ではAIがプログラムの作成・修正を減らし、BIMでも設計モデルの定型作業が自動化される。技術者の再配置と固定費削減で黒字は保つが、稼ぐ力は細る。過去に買収した子会社の売上も当初の計画を下回り、投資先の評価額には慎重な見直しが必要になる。経営は資本の保全を優先し、新規買収を控える。事業は存続しても、株主にとっての魅力は大きく下がる。
- 自社現場SaaS・その他ライセンス:数量 452(有償直接契約企業数(社))× 価格 0.02(契約企業1社あたり年間売上(億円/社・年))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。452社×年200万円。契約先は約35%減るが、大口顧客を残して費用を絞る。
- 自治体・信用金庫向けOEM:数量 1,000(自治体などのOEM稼働先換算数(先))× 価格 0.00(OEM稼働先換算1先あたり年間売上(億円/先・年))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。1,000先換算×年30万円。行政基盤の一部が他システムへ統合される。
- 受託開発・DXコンサルティング:数量 200(年間有償稼働工数(人月換算))× 価格 0.01(1人月あたり平均売上(億円/人月))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。200人月×110万円。人員調整で赤字化を免れるが、利益は生まない。
- BIM作成・技術者支援:数量 360(年間BIM技術者稼働工数(人月換算))× 価格 0.01(1人月あたり平均売上(億円/人月))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。360人月×67万円。BIM作図の自動化で稼働機会が減り、利益率はゼロに近づく。
倍率:ROE約3.39%でk8.0%を大きく下回る。事業の成長価値を認めず、g_longマイナス0.5%による稼ぐ力の上限を適用する。事業再編や契約減少はこの筋書きの数量・利益率で反映しており、倍率に同じ悪材料を重ねて引かない。
確率:会社の主要収益が操作画面や人の工数に依存するため、技術変化が契約数量を削る可能性は高い。ただし行政OEMと大手建設会社への導入は急には消えず、全事業が一斉に失われる想定にはしない。
悲観 14% チャットの独立市場が崩れ、買収資産も傷む 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 178 円9 億円
AIエージェントが連絡、日程調整、写真確認、作業記録、報告書作成を直接処理するようになる。チャット画面そのものを開く人が減り、顧客は既に契約している大手業務プラットフォームから現場業務を管理する。directの独立した契約を維持する理由が薄れ、解約が継続的に発生する。大手元請企業でもシステムが順次切り替わり、協力会社へ広がった利用網は逆に縮小していく。
LoGoチャットは当初、行政専用ネットワークという強みを保つ。しかし自治体の共通システム更新が進むと、連絡機能が広い行政基盤へ組み込まれ、従来のOEM契約が減少する。信用金庫の業務も同様に統合が進む。共同利用の実績は残っても、L is Bがその収益を長く取り続けられなくなる。
システム・エムズの定型開発とIU BIM STUDIOのモデル作成ではAIが人の作業を大幅に削減し、顧客が支払う人月も減る。買収時に期待した利益が実現せず、のれんや未上場投資の減損が必要になる。固定費の削減が売上減少に追いつかず、営業赤字に戻る。企業は存続するものの、株主価値の中心は成長する利益から現金と換金可能な資産へ移る。株主還元も行われない。
- 自社現場SaaS・その他ライセンス:数量 278(有償直接契約企業数(社))× 価格 0.02(契約企業1社あたり年間売上(億円/社・年))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。278社×年171万円。数量は2025年の約0.40倍、単価も下落し、維持開発費を吸収できない。
- 自治体・信用金庫向けOEM:数量 545(自治体などのOEM稼働先換算数(先))× 価格 0.00(OEM稼働先換算1先あたり年間売上(億円/先・年))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。545先換算×年25.5万円。自治体向けOEM契約の大幅な縮小。
- 受託開発・DXコンサルティング:数量 120(年間有償稼働工数(人月換算))× 価格 0.01(1人月あたり平均売上(億円/人月))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。120人月×90万円。受託開発の需要減と人員調整の遅れが重なる。
- BIM作成・技術者支援:数量 230(年間BIM技術者稼働工数(人月換算))× 価格 0.01(1人月あたり平均売上(億円/人月))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。230人月×60万円。BIM作成の自動化で案件が減り、固定人件費が重荷となる。
倍率:営業赤字が続くため利益倍率を用いず、2025年末の資産・負債を回収可能額に引き直した売却価値を床とする。現預金、債権、換金可能な投資、固定資産等の回収額から負債全額を控除した約9.18億円であり、現在の自己資本18.5億円に対するPBRは約0.4962倍。2035年の自己資本13.5億円を分母にせず、のれんや繰延税金資産を床に含めない。中立のPBR約0.575倍を下回るが、倍率に市場の過去の下値は使っていない。
確率:AIエージェントが人間の画面操作を大きく代替し、大手プラットフォームへの契約統合とBIMの自動化が同時に進む構造的敗北の筋書きである。自治体OEMと資産の残存価値があるため、完全な事業消滅とはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自社現場SaaS・その他ライセンス
direct、タグショット/タグアルバム、ナレッジ動画、direct Appsなどの自社提供サービスと、少額の他社ライセンス再販を含む。中心は法人単位の継続契約である。
| 数量有償直接契約企業数(社) | 価格契約企業1社あたり年間売上(億円/社・年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 696 | 0.02 | 13 | 1 |
| 10 年後 中立 | 543 | 0.02 | 12 | 2 |
取り方:2026年8月14日の決算説明資料の四半期売上グラフから、2025年のストック自社サービス約13.08億円とストックその他約0.15億円を合計した。2025年末の有償直接契約企業数696社で割り、1社当たり売上を約190万円/年と逆算した。契約社数と平均ARRは実際の公表指標だが、この単価は年度平均ではなく期末社数で割った代理値であり、報告された平均ARRそのものではない。2026年6月末は711社、directのID数は約29.7万、価格改定後の平均ARRは約232万円である。営業利益の内訳は非開示のため、自社ソフトの開発・販売負担を考慮した分析上の配賦値であり、会社の報告セグメント利益ではない。AIエージェント代替の型は『席課金・操作画面中心』。中立の数量は2025年の0.78倍、価格は1.126倍とし、2026年の一度きりの値上げを10年続く値上げ率とはみなさない。
自治体・信用金庫向けOEM
トラストバンク向けLoGoチャットと信金中央金庫向けしんきんdirectを中心とするOEM収益。行政・金融の専用環境に適合する点が強みである。
| 数量自治体などのOEM稼働先換算数(先) | 価格OEM稼働先換算1先あたり年間売上(億円/先・年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,555 | 0.00 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,244 | 0.00 | 4 | 1 |
取り方:2025年の四半期OEM売上約4.45億円を、2026年4月時点のLoGoチャット導入自治体1,555先で割り、1先換算で約28.6万円/年とした。信用金庫向けなどの売上も含むため、これは自治体1件から実際に受け取る料金ではなくOEM稼働先換算単価である。2025年末の正確な自治体別稼働数とOEM先別単価は非開示であり、2026年の導入先数を数量代理値に採用した。トラストバンクへの依存も考慮する。LoGoチャットは業界共同利用に近いが、法定記録の正本としての地位と年単位の移行障壁の両方は証明できないため、AIリスク上は席課金・操作画面型とする。中立数量0.80倍、価格1.118倍。営業利益は非開示のため推計配賦値である。
受託開発・DXコンサルティング
システム・エムズの受託開発、インフラ関連業務と、L is B本体の個別開発・DXコンサルティングを含む。主に案件と工数に対応した売上である。
| 数量年間有償稼働工数(人月換算) | 価格1人月あたり平均売上(億円/人月) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 365 | 0.01 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 237 | 0.01 | 3 | 0 |
取り方:2025年の四半期ショット売上を合計した約3.65億円を起点とする。案件の実人月と単価は非開示のため、国内受託開発の実務上の単価帯を参考に1人月100万円で換算し、365人月相当と推定した。これは実稼働人数の開示値ではない。システム・エムズの2026年上期売上は1.09億円で、直近の事業規模を確認した。AIエージェント代替の型は『人月・工数型』。中立は数量を365人月の0.65倍とし、単価は物価上昇より低い1.20倍までにとどめる。現時点の営業利益配賦は本社費用と案件別原価が非開示のため推定値である。
BIM作成・技術者支援
IU BIM STUDIOが提供する3次元建築情報モデルの作成、設計・施工データの整備、BIM技術者支援。2025年の買収後、2026年から本格的に連結売上へ寄与する。
| 数量年間BIM技術者稼働工数(人月換算) | 価格1人月あたり平均売上(億円/人月) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 429 | 0.01 | 3 | 0 |
取り方:2025年10月31日に株式を取得したが、2025年の連結損益には実質的に本格寄与していないため、2025年の数量と売上をゼロとする。将来の数量の起点には、2026年上期の公表売上2.03億円と、2026年6月末のBIM業務従事者約55名を使用する。55名×12か月=660人月/年を現在の年間稼働能力と推定し、売上を年率4.06億円とした場合の単価は約61.5万円/人月となる。この単価には稼働率や外注などの影響が混ざり、個別契約単価ではない。AIリスクは現場での物理施工ではなく、モデル作成と作図を中心とする人月・工数型に分類する。中立の将来工数429人月は2026年の660人月に対する0.65倍であり、価格は2026年換算単価の約1.20倍。
リスクと懸念
AIエージェント代替
directは人がチャットやタスク画面を操作することを前提に料金を受け取る。AIが連絡、指示、記録、写真整理を自律的に処理すれば、作業の需要が残っても有料ID数が減り得る。2026年7月にdirectアシスタントの先行トライアルが始まったが、独立したAI売上の金額は確認できない。自社がAIの基盤として残れるかが最大の長期リスクである。
大手業務プラットフォームへの統合
ANDPAD、SPIDERPLUS、Microsoft Teams、LINE WORKSなどが建設現場の連絡機能を他の業務へ組み込む。L is Bの利用者が多くても、有料契約先としての独立性を失えば売上は縮む。競合の利用者数には招待先なども含まれ比較には注意が要るが、競争相手の資金力と製品開発の規模は無視できない。
自治体OEMの販売先依存
LoGoチャットは多くの自治体に導入され、共同利用の便益もある。しかし、最終顧客への販売はトラストバンクが担う。行政専用ネットワークや自治体調達の制度変更、価格交渉、競合基盤への統合が起きると、L is Bの収益条件が変わり得る。2025年有価証券報告書ではトラストバンク向けが大きな販売先となっている。
BIMと受託開発の工数単価下落
IU BIM STUDIOとシステム・エムズには、人の作業時間に依存する売上がある。生成AIによって図面作成、モデル修正、プログラム開発が省力化すれば、受注工数が減る可能性がある。成果物の価格を保ち、生産性の改善を利益に変えられなければ、売上が減る一方で人員維持と教育に費用がかかる。AIの影響は中立の数量・価格に反映した。
M&Aとのれんの減損
2024年にシステム・エムズ、2025年にIU BIM STUDIOを買収した。2025年末ののれんは約4.9億円で、同社の自己資本に対して無視できない。2026年上期のBIM買収先は営業利益がのれん償却費と同程度だった。統合効果が出なければ、のれん償却に加えて減損が発生し、帳簿上の自己資本と将来の稼ぐ力を傷める可能性がある。
還元の欠如と再投資利回り
過去の配当はゼロであり、自己株式取得による継続的な還元実績も確認できない。経営は稼いだ資金を開発、買収、ベンチャー投資へ使う方針である。これらの追加投資が資本コストを下回る収益しか生まなければ、利益をためることは必ずしも株主価値の増加にならない。余剰現金は戻り率75%で評価し、全額還元を仮定しない。
今後の分かれ目
- directの値上げ後も月次解約率が1%前後で安定し、価格改定効果が一巡した後も既存顧客ARRが実質増加し続けたら
- 価格決定力と顧客定着の証拠が強まる。自社SaaSの数量減少前提を見直す余地が生まれるが、AIによるID数削減が止まったかも合わせて確認する。
- directアシスタントなどのAI機能が有料化され、既存契約と分けた継続売上額が開示されたら
- AIが同社の売上を奪うだけでなく、新しい収益源になった証拠となる。実際の売上、顧客単価、解約率を確認できれば、AI関連の強気数量前提と長期成長率の引き上げを再検討する。
- LoGoチャットの自治体導入数が減り始め、トラストバンク向けOEM売上も前年比で減少したら
- 行政の共同利用基盤という堀が弱まった可能性を重く見る。OEMの長期数量と単価を引き下げ、やや悲観・悲観の確率を高める。
- IU BIM STUDIOがのれん償却後で安定して利益を増やし、工数ではなく成果単位の価格体系を広げたら
- 買収による資本配分の質を上方修正する。BIMを単純な人月型とみなす比率を減らし、営業利益率と増分資本利益率を確認して価値を再評価する。
- 今後3年間に大型買収を重ねる一方、連結ROEが資本コスト8%を下回り続けたら
- 成長のための投資が株主価値を生んでいない可能性が高まる。買収で取得した利益を過大評価せず、のれん減損や余剰現金の目減りを考慮して慎重な筋書きへ重みを移す。
- 配当性向や自社株買いについて数値目標を公表し、利益に見合う還元を実行したら
- 蓄積される現金が既存株主に戻る確度を見直す。5年間の配当・自社株買い実績が十分に積み上がれば、余剰現金の戻り率を0.75から1.0へ変更することを検討する。
見ておくもの
- directの有償契約社数。2025年末696社、2026年6月末711社からの増減
- directの利用ID数。2026年6月末約29.7万IDからの増減
- 既存顧客ARR増加率。2026年6月末119.2%から、値上げの一巡後にどう変わるか
- 企業数ベースの月次解約率。2026年6月末1.14%を起点とする
- 自社サービスARRとOEM ARRの内訳。2026年6月末はそれぞれ約16.14億円、4.77億円
- LoGoチャットの自治体導入数とトラストバンク向け売上高
- IU BIM STUDIOの売上、営業利益、のれん償却費。2026年上期は2.03億円、0.22億円、0.22億円
- システム・エムズの受託売上と人員当たり利益
- directアシスタントの有料契約社数、独立したAI売上、顧客の継続率
- 連結営業利益率、ROE、買収後ののれん残高、投資有価証券の現金回収
- 配当開始や自己株式取得の有無と金額
- ANDPAD、SPIDERPLUS、Microsoft系業務基盤の現場AI機能と導入状況
倍率と資本コストの決め方
評価の出発点は2025年の売上21.33億円、営業利益1.69億円、自己資本18.5億円であり、株価や過去のPERから将来利益を逆算していない。2026年上期のBIM売上と55名程度の従事者を別に確認し、2025年に存在しなかった利益を2025年の実績へ混ぜないようにした。将来のBIM数量は2026年の稼働能力を基準とする。directとOEMには席課金・画面中心のAI代替ルール、受託とBIMには人月・工数型のルールを適用した。中立の10年数量はそれぞれ0.78倍、0.80倍、0.65倍、0.65倍であり、価格は1.126倍、1.118倍、1.20倍、1.20倍である。BIMの数量倍率だけは2026年の年間化した稼働能力との比較である。
倍率はk8.0%と10年後以降の名目gマイナス0.5%、ROE、超過利益残存率から決めた。2026年の値上げや2025年までの高成長を永続倍率へ持ち込んでいない。中立の時価総額は約19.4億円、悲観は2025年末の資産を回収可能額に引き直し、のれんと繰延税金資産等の換金価値を認めない約9.18億円である。中立の将来自己資本に対するPBR約0.575倍より悲観の現在自己資本に対するPBR約0.496倍が低くなることも確認した。これは現時点の市場PERやPBRを基準にしていない。自己資本の変化は各筋書きの10年間の累積利益と還元で概算した。利益を留保して生じる余剰現金は規定の自動計算の対象であり、手計算で将来時価総額へ二重に加えていない。
現在の株価804円と株数5,147,665株から得られる時価総額は約41.39億円で、事業を積み上げた結果との間には大きな隔たりがある。純現金の基準は添付factsに統一し、2026年中間期の現預金だけを取り出して二重に足していない。AIによる縮小は数量・価格とg_longに反映し、kの寿命と確率に同じ理由の追加罰則を掛けていない。リース会計基準の変更で将来の貸借対照表の表示が変わっても、事業の利益は現行基準と比較できるよう家賃などの費用を維持した形で考える。結論は割高であり、現在の株価へ合わせた調整は行っていない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に企業の利益循環特性0.5%を加えた8.0%。規模や市場ベータは加算しない。買収、希薄化、AIへの対応失敗は事業の筋書きと確率に反映し、同じリスクを資本コストに重複計上しない。