結論
Link-Uグループは、マンガを作る出版社と読者をつなぐ配信基盤の運営会社である。筆者の結論は「割高」だ。海外進出には事業としての実体があるものの、現在の株式価値はその成功を相当に先取りしている。出版社のアプリを動かす技術と配信先を増やす力は評価するが、出版社が権利と顧客接点を握り、同社が継続的に受け取れる取り分には限界がある。
2026年7月期は売上が48億円だった一方、マーケティング子会社ののれん減損などで営業赤字に転落した。減損などを除いた調整後営業利益は4億円で、事業全体が赤字のまま崩れたわけではない。しかし2022年に示した2026年7月期の営業利益12億円という目標は届かず、買収後の資本の使い方には実績上の疑問が残る。新しい2030年計画は売上80億円、営業利益16億円という強気の数字を掲げた。
希望の中心はCrunchyroll Mangaをはじめとする海外配信とIP制作にある。反面、国内の電子コミック市場は成熟し、プラットフォームの運営を顧客が内製化する可能性もある。受託開発はAIエージェントが工数を減らし、読者を集めるには有力な作品の権利と販促費が必要になる。基礎的な配信契約は残るが、売上の増加がそのまま株主の利益になる構造ではない。
2026年10月8日のクランチロール向け増資で株数は増えた。追加資金は海外展開の原資となるが、既存株主の持ち分も薄まった。10年後の5つの筋書きに重みを付けた現在価値は約40億円で、増資後の時価総額約107億円を6割強下回る。現時点の価格には、長期保有のための十分な安全域が見当たらない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が買うのは、毎日変わる株価ではなく、将来その事業から繰り返し受け取れる現金である。Link-Uには、世界中で日本のマンガを読むという長い需要と、出版社の背後で読書体験を支える能力がある。大量閲覧を処理する経験は新参者がすぐ買えるものではない。2026年の減損があってもなお、継続事業の調整後営業利益と海外売上の伸びは存在する。すべてを「夢だけの会社」と切り捨てるべきではない。
それでも、株主のものになる利益を予測するには難問が多い。権利元は出版社であり、契約が更新されるたびに条件を変えられる。読み放題サービスにはコンテンツの調達費と会員維持費がかかり、独自IP制作には外れる作品が必ずある。AIエージェントによって受託開発の従来型売上は圧縮される。増えた利益を新サービスや権利取得に戻す場合、会計上の利益と株主が現金で受け取れる額には差が生じる。
資本配分の履歴も安全域を狭める。M&Aによるのれんを減損し、投資先と連結範囲を整理した後、さらに増資で海外展開へ投資することになった。投資の失敗は将来の確率だけでなく、すでに自己資本の減少として現れている。投資資金の増分利回りが8%を恒常的に超えるのか、既存事業から生じた資金が必要な再投資額を超えるのかを、今後の複数期で確かめたい。
この会社を10年後も持ちたい条件は、作品の権利と販売窓口が変わっても、同社が高い取り分を維持できると数字で示されることだ。現状ではその証拠が十分でない。成長市場に参加していることと、今の株価を正当化できることは別である。
何で稼ぐ会社か
売上の源は、マンガが読者に届くまでの仕組みを作り、維持することである。国内では集英社やスクウェア・エニックスなどの出版社に技術を提供し、公式アプリやサイトを開発・運営する。単純な書籍小売りではなく、読書サービスの稼働、課金、広告、コンテンツ流通に伴う対価が会社に入る。自社設計のサーバーと高速配信の技術を持ち、マンガサービスに必要な大量アクセスへの対応を強みとしている。
海外ではCrunchyroll Mangaの開発・運営に加え、MANGA Plus by SHUEISHA、Manga UP!、Comikeyなどの配信・現地化に関わる。2025年10月のCrunchyroll Manga開始に続き、2026年には集英社の新サービスMANGA MILLIONの開発も担うことになった。全運営サービス合計で月間利用者2,000万人超、閲覧5億回という規模があるが、この数を自社の有料契約者数と混同してはならない。作品の権利元への分配や事業提携先との契約が取り分を決める。
制作側ではWebtoonを含む作品の企画、制作、海外配信と権利収入を組み合わせる。作品を自ら持つ比率が増えれば利益の厚みは変わるが、制作費が先に出てヒットが後から決まるため、損失も出やすい。システム受託には出版社・書店向けの案件があり、AIによる作業効率化を進めているものの、人の工数を請求する従来部分は代替リスクが高い。
安定収入の候補はビューンの「ブック放題」や施設向け読み放題、生活関連アプリである。個人だけでなく、店舗・宿泊施設・企業福利厚生などで契約を積み上げる。2027年度から会社はマンガプラットフォーム、コンテンツソリューション、ライフスタイルの三つの事業区分で管理する。公表区分に対応させつつ、分析ではAIの影響が異なる国内・海外・制作・受託・読み放題の五つに分けた。
優良さと弱いところ
堀、つまり競争相手が簡単には奪えない強みは、出版社との長年の仕事と、大量の読書アクセスを処理する配信運営の実績にある。読者が作品を読む仕組みを壊さずに移すには慎重な作業が要る。集英社やスクウェア・エニックス向けの配信、さらにCrunchyrollとの協業を続けられれば、実装の細部や運営データが蓄積し、後発が入り込む余地は狭くなる。全体の月間閲覧5億回という実績は、その技術が机上の構想ではない証拠だ。
ただし、この堀を独占的な収益力と取り違えるのは危険である。コンテンツの著作権も主要ブランドも多くは出版社と配信先のものだ。定量的な解約率、値上げ実績、契約先の乗り換え期間は十分に開示されておらず、値段を自分の都合で決められる証拠は乏しい。顧客が増えれば増えるほど相手も大手になり、取引条件で譲歩を求められる可能性がある。強い堀とは判定しない。
資本効率にも厳しい目を向けたい。2019年頃は高かった営業利益率が、事業を増やす過程で低下した。2025年7月期のROEは5.7%、2026年7月期は減損で大幅なマイナスとなった。将来の投資が資本コストを上回ることを示すには、海外新規売上の増加だけでなく、投下した資金に対する営業利益と現金回収の両方が必要である。2026年の営業キャッシュフローはプラスだが、設備・投資取得への支出が大きく、自由に配れる現金が豊富とは言えない。2026年7月期の決算短信では継続企業の前提に関する注記はない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内電子コミック市場は大きいが、すでに成熟段階に入った。インプレス総合研究所によれば、2025年度の電子書籍市場は6,846億円、そのうちコミックは6,010億円で、電子書籍全体の前年比伸び率は2.1%である。日本の読書人口が大幅に増える局面ではなく、利用者の時間と財布を奪い合う市場だ。ピッコマとLINEマンガは利用率でそれぞれ32.7%、31.9%を占め、少年ジャンプ+、Kindle、コミックシーモアも存在感が大きい。
Link-Uの国内配信基盤推定売上11.3億円は電子コミック市場の0.2%弱に過ぎない。ただしこれは会社に残る技術・運営サービスの売上であり、出版社の販売総額と直接比較できる市場シェアではない。配信アプリの契約別GMV、課金利用者数、会社への収益配分率は開示されず、正確なシェアを断言できない。今後も出版社が自社ブランドで売る流れは強く、同社がシェアを増やすには既存顧客の深耕と海外受託案件の獲得が要る。
海外マンガ市場の成長余地は国内より大きい。業界調査では世界のマンガ市場が2033年に439億ドルへ拡大する予測もあり、会社も年率20%超の成長を強調している。ただし国ごとの定義や調査手法によって市場規模は振れ、無償配信の読者が全員課金するわけではない。北米にはVIZ、講談社のK MANGA、WEBTOON、Tapasなどがあり、出版社による配信直営化も進む。Crunchyrollの有料会員2,100万人超は見込み顧客への入口だが、そのまま同社の有料マンガ会員数ではない。
10年後も日本のマンガIPへの海外需要は続くと考える。しかし翻訳と配信アプリの開発はAIによって廉価になり、IPを独占的に確保する側が強くなる。流通基盤の保守だけでは、世界のマンガ市場の伸びと同じ速度で自社利益は増えない。国内市場は実質横ばい、海外は成長するが取り分は抑えられる、という非対称な前提が妥当である。
資本政策と M&A
資本配分はこの会社の評価で最大の弱点である。2022年に公表した前の中期計画は2026年7月期売上60億円、営業利益12億円、利益率20%を掲げたが、実績は売上48億円、営業損失約3.8億円に終わった。減損7.67億円を除いた調整後営業利益は4.03億円で、事業の運営収支と過去の買収失敗は切り分ける必要がある。それでもRomanzののれん7.45億円の減損は、買収で支払ったお金が価値を十分生まなかった明確な記録である。
2026年7月にBrightechとバリューコンサルティングを売却し、コンパスを連結から持分法の関連会社へ移した。新しい中期経営計画2030では2030年7月期売上80億円、営業利益16億円、利益率20%超を掲げる。2027年度の予算は売上41億円、営業利益4.4億円程度だ。還元について配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額、ROE目標などの数字の約束はなく、2027年度まで無配予想である。
2026年10月8日にはクランチロール向け新株107万1,900株の払込が完了し、約9.18億円を調達した。海外流通強化には戦略的な資金だが、既存株主は約7%希薄化した。増資後の発行済株式総数は1,524万8,400株である。筆頭級の既存個人大株主2人とメディアシーク、提携先を含めると上位株主の持株集中は高い。過去5年間に継続的な増配や自己株買いが見られないため、未配分資金が将来そのまま少数株主へ戻ると見るのは慎重にしたい。
2026年7月2日に東証プライムからスタンダードへ市場区分を移した。クランチロールの出資は現時点で少数持分の資本業務提携であり、TOBや上場廃止決定ではない。資金の投資収益率を公表して検証する姿勢が、次の10年の株主利益を左右する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
海外マンガの潜在市場は国内より広く、日本作品の正規流通が地域と言語の壁を越える局面は長い。Link-Uは単なる制作会社ではなく、出版社が実際に頼る配信インフラを持っている。集英社のMANGA PlusとMANGA MILLION、スクウェア・エニックスのManga UP!という顧客関係は、コンテンツの権利元から技術を任されていることの証拠である。Crunchyroll Mangaとの協業が本格化すれば、アニメで関心を持った人を原作マンガへ送る仕組みを築ける。クランチロールの2,100万人を超える有料会員基盤は、自前で広告費をかけて読者を探すよりはるかに有利な集客口となりうる。
同社は2025年10月に海外サービスを開始し、2026年7月期に海外売上が前年比82%増えた。政府のIP360支援、集英社の多言語配信構想、Comikeyとの現地化網は、成長のための実際の接点となる。自社設計サーバーや大量配信の経験は大手出版社のシステム内製化にも簡単には置き換えられない。技術開発にAIを使うことで、大型受託案件を小さな組織でも消化できる点も見逃せない。コンテンツ制作で当たり作品を増やし、海外流通の取り分を獲得できれば、収益規模の拡大と利益率の上昇が同時に起こる。
2026年の減損は主としてマーケティング子会社ののれんに生じたもので、継続事業の調整後利益は増えている。Brightechなどを整理し、利益率の高い海外事業へ経営資源を移す決断は合理的である。クランチロールとの資本提携も、単なる提携契約より強い利益共同体を生む。10年という長さで見れば、現在の売上水準にこだわらず国際流通の基盤を築く利益を評価すべきだ。
慎重な見方
同社が扱うマンガの多くは同社だけのものではない。IPの権利は出版社や作家、顧客接点は出版社ブランドと大手配信サービスにあり、Link-Uはその間で契約に基づく報酬を受け取る。自社のシステムで大量の閲覧を処理できても、サービス運営料の値上げが定着した実績や、解約率の低さは公表されていない。顧客が規模を増やせば、外注するより社内で配信を管理した方が安くなる場合もある。Crunchyrollの会員がすべてマンガで課金するわけではなく、世界市場の成長率をそのまま同社売上へ掛けるのは誤りだ。
AIエージェントの時代には開発工数の販売単価が下がりやすい。アプリを作る費用や翻訳のコストが安くなれば、その価値を得るのは発注する出版社でもある。AI駆動開発の受注事例があっても、それが10年後に継続する高い利益率の証拠にはならない。IP制作にもヒットの外れ、コンテンツ調達費、版権配分、広告競争があり、人数や作品数を増やすほど利益が増える事業ではない。読み放題事業も配信権に対価を払い続ける必要がある。
数字の履歴はさらに重い。2022年の中期計画が示した2026年営業利益12億円の目標に対し、実績は大きく及ばず、マーケティング子会社に7億円台の減損を出した。2026年7月末の現金は約9.5億円しかなく、借入金は約13.1億円で、見かけの自己資本の厚さは現金の厚さとは違う。海外進出のために約9.2億円を増資で集めた結果、持ち分は薄まった。2030年計画が達成されるまで資金が追加で要る可能性もある。長期の株主価値を語るには、利益が出てから何を株主に戻すのかが未定のままだ。
どちらに重みを置いたか
海外流通の機会は実物であり、最も強い悲観に賭ける理由はない。ただし支配するIPの少なさ、過去の買収減損、増資後も無配という資本政策を考えると、計画達成の利益を先払いする根拠は薄い。確率は上側28%に対し下側37%と慎重側に寄せた。AIエージェント代替は受託数量と長期成長率に入れ、確率では主として資本配分と海外収益化の不透明さを評価した。現在価値は今の時価総額から大きく離れ、長期保有の安全域はまだ乏しい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 543 円83 億円(+ 還元の換算額還元の合計 14 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 261 円40 億円、今との差 −61.9%、 期待の年率 −2.1%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 1,712 円261 億円 | 79 円12 億円 | +161.1% | +10.4% | 197 円30 億円 |
| やや楽観 | 17% | 936 円143 億円 | 26 円4 億円 | +40.3% | +3.5% | 164 円25 億円 |
| 中立 | 35% | 459 円70 億円 | 3 円1 億円 | −32.6% | −3.9% | 162 円25 億円 |
| やや悲観 | 24% | 107 円16 億円 | 0 円0 億円 | −84.5% | −17.0% | 26 円4 億円 |
| 悲観 | 13% | 72 円11 億円 | 0 円0 億円 | −89.5% | −20.2% | 9 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 543 円83 億円 | 14 円2 億円 | −18.8% | −2.1% | 557 円85 億円 |
今の株価時価総額 686 円105 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 海外配信とIP制作が連続成功 利益 19 億円 · PER 13.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,712 円261 億円
日本作品の海外流通が、アニメ配信と連動する日常的な読書習慣に成長する。Crunchyroll Mangaは英語圏にとどまらず複数地域で定着し、集英社向けのMANGA PlusやMANGA MILLION、スクウェア・エニックスのManga UP!との開発・運営関係も拡大する。競合のWEBTOON・Tapasと棲み分け、海外サービスの月間閲覧数は今の数倍に達する。出版社が作品と権利を握ることは変わらないが、運営速度と現地化の品質によって同社の取り分も改善する。
作品の制作本数と当たり作品の継続率も改善し、コンテンツ利益が海外流通を押し上げる。SI受託はAIエージェント代替で案件数量が伸びないが、既存契約の大口案件を効率的にこなし、事業の足を引っ張らない。2030年計画に近い利益率の継続を示した後、ようやく還元を始める。既存株主にとっての上振れは海外から得る手数料収入の質とIP持分の双方が高まる点にある。
- 国内マンガ配信基盤:数量 3.0(月間閲覧数(億PV、国内基盤への推定配賦))× 価格 0.60(1閲覧当たりの年間換算前売上(円/PV、実質利用対価と広告・運用料の加重平均))→ 売上 22 億円・営業利益 3 億円。国内アプリの読書量が増え、広告依存も抑えられる
- 海外マンガ配信・現地化:数量 7.0(月間閲覧数(億PV、海外向け基盤への推定配賦))× 価格 0.92(1閲覧当たり帰属売上(円/PV))→ 売上 77 億円・営業利益 20 億円。海外配信地域と連携先を増やし、出版社への帰属配分を維持
- 自社・共同IPの制作と流通:数量 75.0(年に売上を生む換算作品数(作品/年、推定))× 価格 0.27(作品当たり年間帰属売上(億円/作品))→ 売上 20 億円・営業利益 5 億円。ヒット作を複数持つ制作・海外ライセンス
- 受託システム開発・技術ソリューション:数量 12.0(年間受託案件の標準案件換算数(件/年、推定))× 価格 0.25(標準案件当たり売上(億円/件))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AI開発による受注単価増。案件数は現状の1倍以下
- 読み放題・生活関連プロダクト:数量 70.0(月間平均の有料契約換算口数(万契約、推定))× 価格 0.38(1契約当たり年間の会社帰属売上(万円/年))→ 売上 26 億円・営業利益 3 億円。法人導入と会員増、コンテンツ仕入れ費を抑制
倍率:資本コストk=8.0%、10年超の名目g=2.0%、堀は普通で増分超過収益の残存割合50%。2036年のROE=14.80%、RONIC=11.40%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.74倍であり、楽観〜中立は理論上限をそのまま使用。余剰現金を別建てで二重に足さず、現金の株主還元は実績に応じて慎重に見る。
確率:クランチロールとの協業、集英社・スクウェア・エニックス向け配信、独自IPのヒットが同時に進む高い条件の組合せであり、既存ののれん減損や大型投資の履歴から成功確率を11%に抑える。
やや楽観 17% 海外が牽引し中期計画を一部実現 利益 11 億円 · PER 13.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 936 円143 億円
海外マンガの流通契約が北米・南米・欧州へ段階的に広がり、配信基盤へのアクセスが出版社から継続的に集まる。MANGA Plusの海外MAUやCrunchyrollの会員基盤が読者獲得の入口となり、同社は技術運用とローカライズに集中する。国内はピッコマやLINEマンガとの激しい競争で大きな市場シェアを取れないが、配信の運営効率を高めて利益を守る。
制作作品の供給も増え、海外向け権利収入が国内市場の鈍化を補う。システム開発はAIエージェントによる工数単価の切り下げを生産性改善で部分的に打ち消し、数量は少し減る。ブック放題・法人向け読み放題の販路は拡大するが、値上げ余地は限定的である。大型の新規買収を避けて内製IPと配信基盤へ投資を絞り、後半に小さな株主還元を始める。
- 国内マンガ配信基盤:数量 2.7(月間閲覧数(億PV、国内基盤への推定配賦))× 価格 0.56(1閲覧当たりの年間換算前売上(円/PV、実質利用対価と広告・運用料の加重平均))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。既存出版社との運用継続が国内PV減少を防ぐ
- 海外マンガ配信・現地化:数量 4.5(月間閲覧数(億PV、海外向け基盤への推定配賦))× 価格 0.80(1閲覧当たり帰属売上(円/PV))→ 売上 43 億円・営業利益 10 億円。Crunchyrollの海外配信が拡大し、単価も改善
- 自社・共同IPの制作と流通:数量 55.0(年に売上を生む換算作品数(作品/年、推定))× 価格 0.26(作品当たり年間帰属売上(億円/作品))→ 売上 14 億円・営業利益 3 億円。制作本数を増やし海外に継続供給
- 受託システム開発・技術ソリューション:数量 10.4(年間受託案件の標準案件換算数(件/年、推定))× 価格 0.24(標準案件当たり売上(億円/件))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェントで受託件数は0.80倍、単価1.20倍
- 読み放題・生活関連プロダクト:数量 60.0(月間平均の有料契約換算口数(万契約、推定))× 価格 0.35(1契約当たり年間の会社帰属売上(万円/年))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。法人契約拡大と小幅な実質単価維持
倍率:資本コストk=8.0%、10年超の名目g=2.0%、堀は普通で増分超過収益の残存割合50%。2036年のROE=11.32%、RONIC=9.66%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.22倍であり、楽観〜中立は理論上限をそのまま使用。余剰現金を別建てで二重に足さず、現金の株主還元は実績に応じて慎重に見る。
確率:海外売上の増加と販路の実在は前向きな材料だが、プラットフォーム収益の分配契約や言語別の収益性は非開示である。伸びても利益率20%の長期定着までは織り込まない。
中立 35% 海外成長は続くが利益率は漸進的 利益 6 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 459 円70 億円
国内の電子コミック利用は定着するが、顧客獲得競争は終わらない。集英社・スクウェア・エニックスなど出版大手との仕事は続き、サーバー運営と配信技術は必要とされるものの、出版社は運営委託先を競わせる。国内の月間閲覧数はほぼ横ばい、単価は物価並みの上昇に届かない。海外は配信先の追加と言語対応で増えるが、クランチロールの加入者全員がマンガの有料読者になるわけではない。
制作は着実に増えるがヒットは毎年生まれず、利益率の高い権利収入は部分的なものにとどまる。受託システム開発ではAIエージェントが設計・実装・保守の工数を減らし、案件数は今の約3分の2へ縮む。読み放題は法人利用が残るが、既存の会員や契約先を維持する費用も増える。減損後の事業の整理は進み、利益は回復するものの、中期計画が掲げる20%の利益率は全社では定着しない。余剰資金の多くを海外の権利確保と運営に再投資する。
- 国内マンガ配信基盤:数量 2.4(月間閲覧数(億PV、国内基盤への推定配賦))× 価格 0.50(1閲覧当たりの年間換算前売上(円/PV、実質利用対価と広告・運用料の加重平均))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。国内読書PVは横ばいで単価は物価未満
- 海外マンガ配信・現地化:数量 2.9(月間閲覧数(億PV、海外向け基盤への推定配賦))× 価格 0.65(1閲覧当たり帰属売上(円/PV))→ 売上 23 億円・営業利益 4 億円。現地化により実質数量増。海外での取り分は限定
- 自社・共同IPの制作と流通:数量 42.0(年に売上を生む換算作品数(作品/年、推定))× 価格 0.25(作品当たり年間帰属売上(億円/作品))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。中ヒットを一定数供給し大当たり依存は避ける
- 受託システム開発・技術ソリューション:数量 8.5(年間受託案件の標準案件換算数(件/年、推定))× 価格 0.25(標準案件当たり売上(億円/件))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。人月型AIエージェント代替:数量0.65倍・価格1.225倍
- 読み放題・生活関連プロダクト:数量 53.0(月間平均の有料契約換算口数(万契約、推定))× 価格 0.34(1契約当たり年間の会社帰属売上(万円/年))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。契約数緩やか増、年帰属単価は物価未満
倍率:資本コストk=8.0%、10年超の名目g=2.0%、堀は普通で増分超過収益の残存割合50%。2036年のROE=7.68%、RONIC=7.84%。ROEがkを下回るため10年後の再投資利益を高く評価せず、PER上限1÷k=12.50倍。余剰現金を別建てで二重に足さず、現金の株主還元は実績に応じて慎重に見る。
確率:国内電子コミック市場の伸びは年2%程度である一方、海外の成長基盤と契約先は実在する。中期計画の2030年売上80億円・営業利益16億円を達成の前提にはせず、国内の競争とIP制作の失敗率を差し引いた確度の最も高い筋書きとして35%とする。
やや悲観 24% 海外収益化の遅れと受託縮小 利益 1 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 107 円16 億円
Crunchyroll Mangaの配信地域は増えるが、著作権の条件交渉と利用者の課金率が重荷になる。海外市場そのものは成長する一方、出版社の直営アプリや競合のWEBTOON、電子書籍ストアが顧客接点を握る。Link-Uが得られるのは裏側の運営料が中心となり、海外の閲覧数と単価は中立より低い。国内は広告単価と利用者数が弱まり、制作もタイトル数を増やせない。
AIエージェントによるコード生成が普及し、出版社のシステム内製化や外注の単価競争が進む。収益が減った受託の人材・固定費をすぐには圧縮できず、IP制作の高い固定費も重なる。読み放題は既存契約が下支えとなるため全社で大きな赤字には陥らないが、収益率は低く、成長投資の回収が遅れる。資産売却や事業の再整理で帳簿価値も目減りする。
- 国内マンガ配信基盤:数量 1.9(月間閲覧数(億PV、国内基盤への推定配賦))× 価格 0.46(1閲覧当たりの年間換算前売上(円/PV、実質利用対価と広告・運用料の加重平均))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。国内PVは競合に奪われる
- 海外マンガ配信・現地化:数量 1.3(月間閲覧数(億PV、海外向け基盤への推定配賦))× 価格 0.53(1閲覧当たり帰属売上(円/PV))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。海外市場成長の取り分が小さい
- 自社・共同IPの制作と流通:数量 25.0(年に売上を生む換算作品数(作品/年、推定))× 価格 0.21(作品当たり年間帰属売上(億円/作品))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。当たり作品が減り単価上昇が限定
- 受託システム開発・技術ソリューション:数量 7.2(年間受託案件の標準案件換算数(件/年、推定))× 価格 0.22(標準案件当たり売上(億円/件))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。人月型AI代替で数量0.55倍・単価1.10倍
- 読み放題・生活関連プロダクト:数量 41.0(月間平均の有料契約換算口数(万契約、推定))× 価格 0.32(1契約当たり年間の会社帰属売上(万円/年))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。価格競争で契約数減、低採算を容認
倍率:資本コストk=8.0%、10年超の名目g=2.0%、堀は普通で増分超過収益の残存割合50%。2036年のROE=2.77%、RONIC=5.39%。ROEがkを下回るため10年後の再投資利益を高く評価せず、PER上限1÷k=12.50倍。余剰現金を別建てで二重に足さず、現金の株主還元は実績に応じて慎重に見る。
確率:下に寄せる理由:マーケティング子会社の減損7.45億円と2026年の大型事業整理で、投資判断が必ずしも利益を生んでいない。海外配信の視聴数が売上へ変わる割合も未開示であり、計画未達が再発する余地がある。
悲観 13% 配信の主導権を失い投資も毀損 利益 −2 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 72 円11 億円
出版社が重要作品を直営のサービスや大手海外企業へ集約し、Link-Uとの委託契約を縮小する。Crunchyrollとの協業も期待ほどの有料転換を生まず、ローカライズはAIによる低価格の標準機能になる。海外事業が事業の核に成長できないまま、国内でもピッコマ、LINEマンガ、Kindleなどの集客力に押される。制作する作品数と権利の取り分が同時に縮み、固定費を吸収できなくなる。
受託開発の標準作業はAIエージェントと出版社の内製チームに置き換わり、売上が今の半分未満まで落ちる。読み放題にも大手通信・出版グループの廉価サービスが入り、全社で営業赤字が続く。過去に資金を投じた持分法投資や新規プロダクトを減損し、自己資本は減る。会社の技術がなくなるわけではないが、投資家にとっての価値は拡大する利益よりも回収可能な金融資産が中心となる。
- 国内マンガ配信基盤:数量 1.3(月間閲覧数(億PV、国内基盤への推定配賦))× 価格 0.40(1閲覧当たりの年間換算前売上(円/PV、実質利用対価と広告・運用料の加重平均))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。出版社直営化と来訪減少
- 海外マンガ配信・現地化:数量 0.6(月間閲覧数(億PV、海外向け基盤への推定配賦))× 価格 0.38(1閲覧当たり帰属売上(円/PV))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。海外の委託先から外れ現地化の粗利も消える
- 自社・共同IPの制作と流通:数量 15.0(年に売上を生む換算作品数(作品/年、推定))× 価格 0.15(作品当たり年間帰属売上(億円/作品))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。保有IPが失敗し開発費を回収できない
- 受託システム開発・技術ソリューション:数量 5.5(年間受託案件の標準案件換算数(件/年、推定))× 価格 0.20(標準案件当たり売上(億円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人月型AI代替で数量0.42倍、単価据え置き
- 読み放題・生活関連プロダクト:数量 32.0(月間平均の有料契約換算口数(万契約、推定))× 価格 0.28(1契約当たり年間の会社帰属売上(万円/年))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。低価格競争と施設契約の喪失
倍率:収益力が赤字でPERを使えない。2026年7月末の現金9.54億円に増資払込9.18億円を足し、借入13.06億円を控除した純現金5.66億円を起点とする。その他金融資産8.44億円の約6割と売掛金・買掛金差額1.82億円からリース債務1.85億円を除いた回収可能資産を約10.7億円と試算し、のれん3.31億円、その他無形2.93億円は床に含めない。悲観で減損を受けた自己資本18.0億円にPBR0.61111倍を掛けた約11.0億円。過去の谷のPBRは用いない。
確率:一過性の損失だけでは悲観を説明できないが、巨額ののれん減損の実例、権利元依存、技術のコモディティ化が重なると、配信とIP制作の優良性そのものを失う可能性がある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内マンガ配信基盤
出版社のマンガアプリ・Webサイトを設計・運営し、配信量や課金・広告等に連動する収益を得る。出版権そのものをすべて保有するわけではない。
| 数量月間閲覧数(億PV、国内基盤への推定配賦) | 価格1閲覧当たりの年間換算前売上(円/PV、実質利用対価と広告・運用料の加重平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 2.4 | 0.39 | 11 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 0.50 | 14 | 2 |
取り方:会社資料は提携・運営する全サービス合計でMAU2,000万人超、月間PV5億回を公表するが、国内・海外・ビューン別のPVと売上単価は非開示。2026/07期の組織再編後のマンガプラットフォーム売上16.1億円を、海外比率と旧分類の資料を手掛かりに国内11.3億円・海外4.8億円と分析上推定した。全体の月5億PVのうち国内2.4億PVを便宜配賦し、会社への帰属売上を閲覧数で割った0.392円/PVを実効単価とする。総流通額やユーザー課金額とは異なる。
海外マンガ配信・現地化
Crunchyroll Manga、MANGA Plus by SHUEISHA、Manga UP!、Comikeyなど海外向け流通基盤と翻訳・現地化を担う。
| 数量月間閲覧数(億PV、海外向け基盤への推定配賦) | 価格1閲覧当たり帰属売上(円/PV) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 0.9 | 0.44 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2.9 | 0.65 | 23 | 4 |
取り方:2026年7月期のマンガサービス海外売上前年比182%、海外比率17.2%は旧分類であり、新3区分の海外単独売上ではない。旧区分のマンガサービス売上約28億円の17.2%≒4.8億円を海外の実態の参考とし、再編後のマンガプラットフォーム16.1億円の内訳推定に転用。月間PV全体5億のうち海外0.9億PVを仮定して実効単価0.444円とした。2025年10月のCrunchyroll Manga開始・2026年10月の対象地域拡大、国のIP360採択を数量増の根拠とするが、閲覧数の内訳は開示されていない。
自社・共同IPの制作と流通
Webtoonを含むオリジナル作品の制作、版権の開拓・翻訳・海外流通など。版権保有割合と契約条件によって取り分が変わる。
| 数量年に売上を生む換算作品数(作品/年、推定) | 価格作品当たり年間帰属売上(億円/作品) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 20.0 | 0.20 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 42.0 | 0.25 | 10 | 2 |
取り方:旧区分の制作事業は2026/07期4Q単体でコンテンツ売上1.59億円・技術開発2.42億円を示すが、2027年度からのコンテンツソリューションは旧分類と範囲が異なる。新体制2026年度の同区分6.6億円をIP制作4.0億円、技術受託2.6億円に配賦した分析上の推定。作品数は会社開示がないため、収益貢献する20作品相当×年0.20億円の仮説とし、投稿作品数5万件をそのまま収益作品数にはしない。
受託システム開発・技術ソリューション
出版社・取次・書店向けのアプリ、基盤、AI駆動型受託開発。工数・案件受託に依存する部分はAIエージェント代替の対象となる。
| 数量年間受託案件の標準案件換算数(件/年、推定) | 価格標準案件当たり売上(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 13.0 | 0.20 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.5 | 0.25 | 2 | 0 |
取り方:新3区分のコンテンツソリューションに含む受託売上は単独非開示。2026年度の同区分6.6億円からIP制作推定4.0億円を除く2.6億円を、年間13標準案件×0.20億円とモデル化。会社はAI駆動型開発により2億円・1億円の大型受注事例を公表したが、その契約金額と年度売上計上額は同じではない。ここは人月・工数の型として中立数量を10年で0.65倍とする。
読み放題・生活関連プロダクト
ビューンのブック放題や法人向け読み放題、Link-U Productsの防災などのアプリを提供する。大半はコンテンツ利用価値に対する対価。
| 数量月間平均の有料契約換算口数(万契約、推定) | 価格1契約当たり年間の会社帰属売上(万円/年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 50.0 | 0.29 | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 53.0 | 0.34 | 18 | 2 |
取り方:新体制2026年度のライフスタイル売上14.3億円が会社資料で確認できる。ビューンの個人向けブック放題は月額550円の公開料金だが、法人・福利厚生・流通経由を含む手取り単価は非公表。月間平均50万有料契約相当×会社帰属年2,860円とする推計であり、公表契約数ではない。自社アプリのUI・情報サービス部分も含まれ、AI要約や代替アプリによる圧力は量と単価に含めた。
リスクと懸念
海外提携の取り分と権利元依存
Crunchyrollや集英社、スクウェア・エニックスとの関係は価値があるが、マンガのIPと消費者ブランドは相手側が主に持つ。会員数が増えても、同社への売上配分率が下がれば利益は増えない。地域別の課金者数と契約更新率が非開示であり、国際流通の利益の持続性を数字で確信できない。
AIエージェント代替
受託開発の設計、コーディング、テスト、保守はAIエージェントが代行しやすい。会社はAI駆動開発で大口受注を得た実績があるが、人月販売の数量が10年後も維持できる証拠ではない。中立で受託案件数量を0.65倍、長期成長をゼロとして扱い、制作翻訳・情報アプリにも単価圧力を見込む。
のれん減損とM&Aの再発
2026年7月期にはRomanzののれん7.45億円を減損し、連結利益が大きく赤字となった。2026年の事業再編で一度ポートフォリオを整理したものの、コンテンツ制作、翻訳事業、出資先の価値はヒットや契約に左右される。今後再び資本を高く投じれば、株主利益が増えないまま自己資本を損なう。
クランチロール増資後の資本効率
2026年10月8日に107万1900株が増え、既存株主の取り分が薄くなった。9.18億円の調達は海外展開用であり、余剰現金として配当可能とはみなせない。2030年の営業利益16億円計画に近づくまで追加投資が必要なら、再増資や株主還元見送りのリスクが残る。
国内読書市場の成熟と競合
2025年度の国内電子書籍市場の伸びは2.1%で、電子コミック利用者の獲得競争ではピッコマとLINEマンガが大きい。出版社の直営化や既存サービス間の値引き・ポイント還元で、外部運営業者に残る料金が抑えられる。閲覧数だけ増えても単位当たりの利益が細る危険がある。
情報管理と外部基盤
マンガ配信基盤には課金、閲覧履歴、権利処理など信頼性が欠かせない。2026年10月に会社が告知したStudio株式会社の不正アクセスは外部サービスに関するものであり、自社配信基盤への侵入と同一視はできない。それでも外部クラウドや提携先の事故への依存を示すため、契約・セキュリティ対策費の増加を監視する。
今後の分かれ目
- 海外マンガの売上高と課金者数が4四半期連続で増え、粗利率も上昇したら
- 海外の実効単価と数量を上方修正し、やや楽観の確率を引き上げる。閲覧PVのみの成長なら収益の裏づけとしない。
- 2030年7月期の売上80億円・営業利益16億円を実現し、減損を除かない利益も同水準なら
- 利益率と増分資本利回りの再現性を認め、中立の純利益と本質価値を再計算する。四半期だけの超過利益には恒久倍率を与えない。
- クランチロールとの収益分配や契約更新条件が開示され、長期の継続が確認できたら
- 出版社依存の契約不確実性を低減し、海外配信の堀の強さと長期成長率を見直す。
- AI受託の契約が成果課金へ移り、工数減少下でも売上総利益が継続して増えたら
- SI受託の人月型という分類を一部解除し、数量縮小の前提を再点検する。単なる生成AI導入の発表では変えない。
- 新しいのれん減損・海外JVの損失や追加の大型増資が起きたら
- 海外収益化の失敗と資本配分の悪化を確認し、下側の筋書きと株主希薄化リスクを厚くする。
- 定量的な配当性向か自己株買い方針が設定され、実行も始まったら
- 余った現金の株主への戻り方0.5を見直し、還元の現在価値を上方修正する。
見ておくもの
- 海外マンガサービス売上比率と四半期売上の実額、課金者数・運営手数料率の開示
- Crunchyroll Mangaの展開地域と会員課金率、協業契約の更新
- 国内外の月間PV5億・MAU2000万に対する会社帰属売上の推移
- AI駆動開発の受託案件数、案件単価、受注粗利益の持続
- 2030年計画:売上80億円、営業利益16億円と実績との差
- 営業CFからコンテンツ・ソフト開発投資を引いた自由現金、のれん・持分法投資残高
- 2026年10月増資後の持株集中率と配当・自己株買い、追加増資の有無
倍率と資本コストの決め方
財務基準は添付の2025年7月期から、2026年9月14日公表の2026年7月期実績へ更新した。2026年10月8日に増資が完了したため株数も添付14,173,932株から15,248,332株へ更新し、時価総額を約106.6億円、自己資本の起点を約32.07億円とした。株価699円は添付の2026年10月22日の値を保持した。利益は旧売上48億円から連結除外分約10.7億円を差し引く新事業体制の37.3億円を橋渡しし、各事業の数量と名目単価を積んだ。PERはk8%、全社の長期g2%と将来ROEから式で導き、現時点の市場PERや過去の株価の高低は使わない。悲観は2026年ののれん減損後の資産と増資・借入・リースを考慮した売却回収可能額約10.7億円を床とし、過去のPBR底を用いない。IFRS採用済みのためリース負債は既に貸借対照表に計上されている。将来の余剰現金が蓄積しない仮定は、作品権利と海外基盤への再投資を優先し、過去5年の無配・株式買戻しなしを根拠に持分の戻り方を0.5と見るためである。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。通常の7.5%に、サービスの値決め力が弱いことによる0.5%を加え8.0%。2026年赤字は一過性の減損が主因であり、特別な財務困窮加算を重ねない。