結論
東名は中小企業に光回線と電力を提供し、日々欠かせない通信と電気から継続的な売上を得る会社である。筆者の結論は、現時点の時価総額は10年先の本質価値にほぼ見合い、長期保有の安全域はまだ薄い、というものだ。契約を積み重ねる強さは評価するが、利益をすべて自由に使える現金と見なしてはいけない。
2026年8月期の光回線は約14.1万契約、電力は約7.6万契約まで増えた。売上の半分を電力が占め、その営業利益は光回線を上回る。2027年8月期に売上402億円、営業利益46億円を目指す中期計画も、実際の営業組織と代理店網に裏付けられている。ただし光回線の獲得目標は未達で、電力の好採算は仕入れ市況に左右される。
中立では回線の契約基盤が19.5万に伸び、電力販売量も増えるが、成熟市場の競争を織り込んで電力の利益率を今より低く見込む。反対に、仕入れ高騰と資金繰りの悪化が重なれば、利益の成長物語は簡単に壊れる。実際、直近は約25億円の純利益を計上しながら営業活動による現金収支が約8億円の赤字だった。
10年後の価値は契約数だけでなく、解約率、電力の調達単価、営業債権の回収、そして配当で株主に戻す割合で決まる。株価を出発点とせず事業から積み上げると、上振れ余地はあるものの、悲観時の損失が大きい。今の値段なら、強い堀を持つ優良な公益企業ではなく、営業力に優れた小売事業者として値踏みしたい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、毎月料金が入る事業は魅力的だ。ただし、その料金を取り続けるために何をしなければならないかを見落としてはいけない。東名は通信線も送配電網も他社から借りる。資本をほとんど固定設備に縛られず成長できる反面、仕入れの条件と顧客獲得費を自分だけで支配できない。
自社が値上げしても顧客が去らない力が本物なら、利益率が大きく崩れず、顧客獲得費を上回る長期の契約価値が残る。しかし足元の月次解約率からは、少なくとも規制で守られた公益事業並みの安定を認められない。営業担当者が中小企業の相談に乗り、光回線と電力をまとめる親切さには価値がある。それでも他社の見積もりが有利なら、多くの顧客は移るだろう。
資本配分を見ると、近年の純利益と自己資本の伸びは喜ばしいが、利益の現金化が追い付かなかった年を重く見る。オーナー利益とは、運転資金の追加や顧客獲得費、設備更新を差し引いたあと、株主が使える現金である。売上を拡大するための営業債権が増え続けるなら、報告上の高いROEだけでは豊かになれない。
この会社を10年持つなら、独占企業を買うのではなく、中小企業との接点を効率よく増やし続ける経営の腕を買うことになる。利益を倍増できる道は存在するが、電力価格の変動に耐え、増分投資で価値を作り、現金を適切に還元する条件が付く。現在の価格にはその成功が相応に含まれており、大きな安全域があるとは言い切れない。
何で稼ぐ会社か
東名の稼ぎは、中小企業の面倒な通信契約と電力契約を引き受けるところから始まる。「オフィス光119」はNTT東日本・西日本の光回線を借り、利用者に電話や通信の関連サービスと組み合わせて販売する。自前の全国通信網を持たないため巨額の設備投資は要らないが、回線そのものを独占しているわけでもない。2026年8月期の売上は約132億円で、契約保有数は14万1275回線となった。
「オフィスでんき119」は、小規模事業者や店舗、工場に電力を販売する。一般送配電事業者の網を使い、電力は市場取引や相対契約で調達する。電気を届ける物理的な網は他社のもので、同社の仕事は顧客獲得、需給管理、集金、調達価格の管理だ。2026年8月期の売上は約165億円、保有契約は7万5578件に達し、年度の電力販売量は開示された月次使用量の合計で約4.59億kWhだった。
残るオフィスソリューションは、UTMというネットワーク防御機器、監視カメラ、太陽光・蓄電池、LED、空調設備、ウェブサイト制作、保険などを扱う。通信や電力の顧客に追加で提案し、営業の接点を深める役割がある。2026年8月期の売上は約29億円で、継続課金分は約3億円、単発契約分は約26億円だった。販売した設備の施工・保守には現場の人手が必要だが、ウェブ制作、デジタルクリエーターズの広告運用と標準的な相談業務はAIの影響を強く受ける。
総じて技術の独占よりも、広告、電話営業、代理店、定期フォローの仕組みで顧客を増やす会社である。光回線と電気は一度導入すると日々使うため、契約数が積み上がれば売上の見通しが立ちやすい。ただし毎月解約が発生し、その穴を新規契約で埋めるため営業費は恒常的に必要になる。契約のストックは保有する権利ではなく、顧客に選ばれ続けた結果である。
優良さと弱いところ
東名の強みは、通信と電力という異なる生活基盤を同じ中小企業に提案できる営業網にある。大手通信会社や地域電力会社にとって、小口顧客一社ごとの困りごとを聞きに行く費用は重い。同社は契約後の定期的な連絡と全国の工事業者ネットワークを使い、価格以外の親身さを売り物にしている。光回線から電力への追加契約が進めば、顧客を獲得する費用も分け合える。
しかし、これは強い独占的な堀ではない。会社開示の2026年8月期末の月次解約率は光回線で約0.67%、電力で約1.49%だった。単純に年換算すると、それぞれ約8%と約16%の顧客が去り得る数字である。光回線はNTTの卸条件に、電力は日本卸電力取引所の価格に依存するため、供給原価を自分だけで決めることも難しい。
財務は表面上健全で、2026年8月期末の自己資本は約119億円、自己資本比率は65.5%に達する。2019年から2025年にかけてのROE中央値は約13%だが、直近は20%超に伸びた。利益率の改善は実力の証しである一方、2022年8月期には営業利益率が2%を切っていた。利益の安定性を直近の好業績だけで判定するのは危険だ。
特に気になるのは、2026年8月期の営業キャッシュフローが赤字になったことである。売上債権や契約獲得に伴う運転資金が膨らめば、会計上の利益が増えても所有者に渡せる現金は増えない。将来の増分投資利益率が資本コストを上回るかは、契約獲得単価と解約率を含めて見極める必要がある。財務の強さは評価するが、値上げ力と資金回収には割引を要する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の光回線市場は、通信量が増えても契約の総数が急増する時代ではない。総務省の資料ではFTTH契約はおよそ4167万、NTT東西の卸を通じた光コラボはおよそ1750万という規模である。東名の14.1万回線は、後者の約0.8%にとどまる。市場全体の成長よりも中小企業向けの営業シェアをどこまで奪えるかが数量の源泉だ。契約先で分類したFTTH市場では2026年3月末にNTTドコモ約17.7%、ソフトバンク約12.1%、KDDI系約9.8%のシェアがある。これら大手の販売力は圧倒的であり、同社の価格交渉力を制約する。
電力小売は2016年の自由化後に多くの事業者が参入し、登録小売電気事業者数は700社を超える。地域の大手電力会社に加え、ENEOS Power、オクトパスエナジー、新電力各社が契約を争う。国内の総発電量をおおむね年間8000億kWhと見れば、東名の約4.6億kWhはわずか0.06%程度だ。市場規模は十分大きいが、その巨大さを理由に10年後のシェア拡大を保証することはできない。
もっと重要なのは、電力売上が契約数と同じように安定しているわけではないことだ。卸市場での仕入れ価格が下がると小売の利益が厚くなる一方、需給逼迫や燃料価格の急変ではマージンが縮む。同社は高騰時の料金調整手段を説明しているが、料金改定には競争と顧客流出という限界がある。筆者は2026年の高い電力営業利益率を、10年続く当然の水準とは見ない。
中小企業庁の企業数統計では中小企業は約336.5万者、小規模企業は約285.3万者を数えるが、長期的には人口減少と後継者不足でこの母数が減る可能性がある。その一方で、オフィスの10Gbps対応、店舗の安全対策、光熱費削減、太陽光と蓄電池は単価や付帯商材の機会を生む。AIエージェントは光ファイバーやキロワット時の供給自体を代替しないが、ホームページ制作や保険の比較案内では顧客が人手のサービスを買わなくなる。10年先の競争は、物理的に必要なサービスを安く供給できる会社と、人の手間を販売する会社の間で明暗が分かれる。
資本政策と M&A
資本配分は、配当を少しずつ増やしながら営業網と新規の継続課金事業に資金を振り向ける姿勢である。中期経営計画「NEXT GROWTH 2027」は2027年8月期に売上402.36億円、営業利益46.33億円、純利益32.58億円、ROE26.1%を目標とする。配当方針は連結配当性向10%以上と累進配当で、直近実績の配当性向は15.6%、翌期予想は15.7%である。DOEや総還元性向、自社株買いの金額について明確な長期数値目標は見当たらない。
2026年8月期には需給緩衝のための株式信託が株を買い、期末までにすべて売却した。これは継続的な自己株消却とは違い、既存株主への実質的な還元実績として過大評価できない。また新株予約権の潜在株式があり、将来の持分はわずかながら薄まり得る。2024年には近畿電工とエコ電気サービスを買収し、2025年に東名グリーンエナジーへ統合した。同時期にデジタルクリエーターズへ広告運用事業を取り込み、プロエージェントを設立して営業の内製化を進めた。設備施工能力の獲得は既存顧客への追加販売に合理性があるが、M&A後の増分ROICや外部販売分の利益は開示から切り分けられない。将来の買収による売上増も確約された価値として先取りしない。
2026年10月には優待が年4回に拡充された。通常の優待額は保有区分により年4000~1万円相当で、サービス契約者には追加がある。費用の実額が開示されないため、適格株主約7000人、平均年5000円と契約者加算を仮置きし、年間約0.4億円、10年約4億円を株主への還元として含めた。優待の利用者数が増えれば費用も増える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
東名はまだ巨大市場のごく小さな一角しか取っていない。国内に存在する数百万の中小企業に対して、回線は14万、電力は8万に満たない。営業を増やし、既存の光回線利用者に電力を売り、電力利用者に通信や防犯設備を提案すれば、新しい顧客をゼロから探す費用が下がる。これは規模の小さい会社が巨大な通信・電力会社に勝てる領域である。
電力事業は2026年8月期に光回線事業を上回る営業利益を生んだ。会社は日本卸電力取引所の価格が低い局面で採算が良くなると明らかにしている。省エネ需要や再エネメニューを組み合わせて顧客を長くつなぎ留めれば、調達リスクを管理しながら契約量を増やせる。高圧電力向けの営業拡大や施工を伴う省エネ設備販売も、利用額の大きい顧客を増やす道となる。
会社の2027年目標は、通信の保有16.1万契約と電力8.2万契約である。10年かけて既存の営業モデルが各地域に定着すれば、回線28万、電力供給11.8億kWhに到達する筋も完全な夢ではない。法人向けの訪問・フォロー能力をAIで効率化できれば、解約抑制と販売費削減が同時に進む可能性がある。ただし未確認のAI商材売上を利益に先回りして足すことはしない。純現金が厚く、初期投資を銀行借入に頼らず続けられることも強みだ。
慎重な見方
光回線も電気も代替可能な商品であり、価格を自由に決められる製品ではない。2026年8月期の光回線契約数は会社目標の14.8万に届かなかった。月次解約率を年換算すれば、電力の顧客は相当数が毎年入れ替わる計算である。新規開拓を止めると残高が減るなら、契約のストックは永久に続く収入の権利ではない。
現在の全社営業利益を支えるのは、売上の半分を占める電力小売の高い差益である。JEPXでの調達価格が上がり、値上げが顧客に通らなければ、同じ使用量でも利益は急減する。卸価格を転嫁できても、売上債権の回収期間が伸び、仕入代金だけが先に出ていく危険がある。実際、2026年8月期には会計上の黒字と営業現金収支の赤字が同時に起きた。収益性より資金繰りの悪化が先に表れる局面は、電力小売にとって厄介だ。
2027年計画ではオフィスソリューション売上の大幅拡大が見込まれるが、実行には人材採用と案件の獲得が必要だ。ウェブ制作や標準的な相談はAIエージェントの普及で単価が守りにくい。営業網の規模が増えるほど、広告費、人件費、貸倒れ、契約獲得に先行する資金も大きくなる。新規事業や買収による上振れを期待して高い価格を払えば、採算が崩れたときに株主が引き受ける損失は大きい。
どちらに重みを置いたか
上側の見方には、実際の保有契約数の伸びと中小企業向け販売力という裏付けがある。一方で強い堀の証拠は十分でなく、2026年の電力利益率を永続させるのは危険だ。慎重側は電力の価格変動と売上債権の現金化という、この会社固有の弱みを突いている。中立を32%、やや悲観と悲観を合わせて40%とし、上側28%より厚くした。下に寄せる理由は、光回線の契約未達と電力への利益集中、直近の営業現金赤字であり、AIの長期成長率への調整とは二重に数えない。加重価値は現時点の時価総額と大差なく、保有に際して十分な安全域があるとは判断しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,907 円573 億円(+ 還元の換算額還元の合計 172 円52 億円)。 今の値に割り戻すと 1,023 円307 億円、今との差 0.0%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,075 円1,526 億円 | 348 円105 億円 | +430.1% | +19.2% | 542 円163 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,468 円1,043 億円 | 253 円76 億円 | +263.7% | +14.5% | 670 円201 億円 |
| 中立 | 32% | 2,044 円615 億円 | 197 円59 億円 | +119.1% | +8.6% | 717 円216 億円 |
| やや悲観 | 26% | 402 円121 億円 | 89 円27 億円 | −52.0% | −7.7% | 128 円38 億円 |
| 悲観 | 14% | 122 円37 億円 | 39 円12 億円 | −84.3% | −18.3% | 23 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,907 円573 億円 | 172 円52 億円 | +103.3% | +7.7% | 2,079 円625 億円 |
今の株価時価総額 1,023 円308 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 全国営業網が複合契約を獲得 利益 101 億円 · PER 14.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,075 円1,526 億円
2027年の中期目標達成を足場に、中小企業との取引口座を全国に増やす。光回線の保有契約は28万へほぼ倍増し、10Gbps回線や防犯機器との組み合わせによって契約当たりの売上も伸びる。NTT東西の光コラボ1750万回線がほぼ横ばいなら自社数量シェアは約1.6%となり、国内総電力販売量に対する自社数量シェアも約0.15%となる。営業担当によるアフターケアが解約を防ぎ、大手キャリアから小規模事業所のシェアを獲得する。
電力は高圧契約を増やして販売量が11.8億kWhに達する。調達先を多様化し、卸電力の高騰時にも損益を守れる料金条件を維持することで、営業利益率は比較的高い水準を保つ。事業所の省エネ設備更新が進み、蓄電池やネットワーク防御機器の施工件数も増える。
買収は既存の顧客基盤と営業網を補う小規模案件に限り、投じた資本を上回る利益を生む。ウェブ制作などではAIエージェントが単純な作業を奪うため、人的サービスの受注件数は現状を超えない。それでも通信、電気、現場施工という実物需要が利益を押し上げ、株主に還元しながら手元の余剰現金も積み上がる。
- オフィス光119(光コラボ・通信):数量 280,000(年度末の光回線保有契約数(回線))× 価格 13(年度売上÷年度末保有回線(万円/回線・年、初期販売も含む見かけ単価))→ 売上 375 億円・営業利益 58 億円。光28万回線×13.4万円。10Gbpsと関連オプションで物価を上回る年額単価。
- オフィスでんき119(電力小売):数量 118,000(電力使用量・販売量(万kWh/年、太陽光余剰電力量を含む会社の棒グラフ))× 価格 48(電力小売セグメントの売上÷開示電力量(円/kWh、設備・再エネ関連の実効売上を含む))→ 売上 566 億円・営業利益 85 億円。11.8億kWh×48円。契約シェア拡大と高圧比率上昇、仕入れ市況が良好。
- オフィスソリューション(設備・セキュリティ・施工):数量 7,200(年内の機器導入・施工案件数(件/年、推定))× 価格 108(1件あたり売上(万円/案件、推定))→ 売上 78 億円・営業利益 15 億円。7200案件×108万円。現物工事と大口設備の販売が増加。
- オフィスソリューション(ウェブ制作・保険等の人的サービス):数量 2,400(年内の制作・サポート契約換算件数(件/年、推定))× 価格 25(契約換算1件あたり売上(万円/件、推定))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替により楽観でも制作等の件数は今の1.0倍を超えない。
倍率:余剰現金100億円を除いた事業純利益99.8億円、事業自己資本540億円、ROE18.48%、資本コストk7.75%。普通の堀の残存率1/2で増分RONIC13.12%。長期名目g2.0%として正当化PER=(1−g÷RONIC)/(k−g)=14.739倍の上限を使用。時価総額は(101.2−100×1.4%)×14.7393+100×0.75。現在の市場PERは参照しない。
確率:中小企業という開拓余地は大きいが、光回線の解約率低下、電力仕入れの安定、クロスセル拡大が同時に起きる必要があるため、上振れの確率は10%にとどめる。
やや楽観 18% 契約増と高圧電力の拡大が順調 利益 70 億円 · PER 14.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,468 円1,043 億円
光回線は23万契約へ増える。中小企業の拠点数は減り始めるが、営業網を通じて競合から一定のシェアを奪い、電話やセキュリティの付帯契約が客単価を補う。NTT光コラボ相当市場でのシェアは約1.3%、国内電力需要に対するシェアは約0.12%まで伸びる。10Gbpsへの移行で利用料金をある程度維持でき、通信事業の利益率は現在より少し改善する。
電力販売量は9.5億kWhに広がる。高圧契約の獲得と需要予測の改善が進み、仕入れ価格が平穏な期間には十分な差益が生まれる。ただし地域電力や競合新電力との料金競争があり、2026年8月期の特に良かった営業利益率を無条件に延長しない。
オフィスの設備販売は年間6000件に増え、施工と保守の付加価値が売上を支える。ウェブ制作などの人手サービスはAIエージェントの普及で案件数が減り、値上げで全額を取り戻せない。それでも通信と電力が牽引し、期間中の純利益を伸ばしながら配当と優待を続ける。余った現金は一部を買収や運転資金に振り向け、株主への還元には慎重な姿勢が続く。
- オフィス光119(光コラボ・通信):数量 230,000(年度末の光回線保有契約数(回線))× 価格 13(年度売上÷年度末保有回線(万円/回線・年、初期販売も含む見かけ単価))→ 売上 297 億円・営業利益 43 億円。回線23万、10G比率改善と価格競争の両方を織り込む。
- オフィスでんき119(電力小売):数量 95,000(電力使用量・販売量(万kWh/年、太陽光余剰電力量を含む会社の棒グラフ))× 価格 46(電力小売セグメントの売上÷開示電力量(円/kWh、設備・再エネ関連の実効売上を含む))→ 売上 432 億円・営業利益 61 億円。販売量9.5億kWh、卸電力差益は好調を保つ。
- オフィスソリューション(設備・セキュリティ・施工):数量 6,000(年内の機器導入・施工案件数(件/年、推定))× 価格 101(1件あたり売上(万円/案件、推定))→ 売上 61 億円・営業利益 11 億円。6000件の施工・設備導入で年間売上が拡大する。
- オフィスソリューション(ウェブ制作・保険等の人的サービス):数量 2,150(年内の制作・サポート契約換算件数(件/年、推定))× 価格 25(契約換算1件あたり売上(万円/件、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。AI代替対象の件数を現状0.90倍以下に抑える。
倍率:余剰現金80億円を除いた事業利益68.88億円、事業自己資本430億円、ROE16.02%。k7.75%、普通の堀残存率1/2、RONIC11.88%、10年超g2.0%から式の正当化PER14.4645倍をそのまま使用。時価総額=(70−80×1.4%)×14.4645+80×0.75。
確率:既存の中期計画、回線・電力の保有実績、営業網の拡張で説明できるが、光回線の目標未達が示す獲得難度と電力の高採算持続を考え18%とする。
中立 32% 通信は着実、電力の差益は平準化 利益 43 億円 · PER 13.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,044 円615 億円
光回線の保有数は19.5万に増える。市場自体の契約増は限られるが、既存の営業拠点と代理店が中小企業向けに一定の顧客を獲得する。NTT光コラボ相当市場でのシェアは約1.1%、国内電力需要に対するシェアは約0.10%と見込む。10Gbpsやオプションの普及が売上を支える一方、大手キャリアとの競争で単価の伸びは物価を少し下回る。
電力販売量は7.6億kWhに拡大する。高圧契約と既存通信顧客への追加販売で数量を増やすが、契約の解約を補う広告費と営業費も必要だ。JEPX価格が低い局面で得られた差益は徐々に縮み、営業利益率は11%台に落ち着く。それでも小口顧客の管理を効率化できれば事業全体の稼ぎは大きくなる。
設備販売は約4600案件で、更新需要と省エネ対応が中心となる。ウェブ制作と標準相談はAIエージェント代替で受注換算件数が7割に減る。人的サービスは値上げと付加価値で一部を補うが、会社全体の成長を左右する規模ではない。本社費は賃金と営業活動に応じて増える。資金需要を満たした後に残る現金はあるものの、厚い還元が実現するとは前提にしない。
- オフィス光119(光コラボ・通信):数量 195,000(年度末の光回線保有契約数(回線))× 価格 12(年度売上÷年度末保有回線(万円/回線・年、初期販売も含む見かけ単価))→ 売上 234 億円・営業利益 32 億円。市場全体の横ばいを、自社シェア獲得で19.5万回線に補う。
- オフィスでんき119(電力小売):数量 76,000(電力使用量・販売量(万kWh/年、太陽光余剰電力量を含む会社の棒グラフ))× 価格 43(電力小売セグメントの売上÷開示電力量(円/kWh、設備・再エネ関連の実効売上を含む))→ 売上 327 億円・営業利益 38 億円。販売量7.6億kWh、実効価格43円、調達差益を平準化。
- オフィスソリューション(設備・セキュリティ・施工):数量 4,600(年内の機器導入・施工案件数(件/年、推定))× 価格 94(1件あたり売上(万円/案件、推定))→ 売上 43 億円・営業利益 6 億円。設備4600件、価格には10年のCPIをほぼ反映。
- オフィスソリューション(ウェブ制作・保険等の人的サービス):数量 1,680(年内の制作・サポート契約換算件数(件/年、推定))× 価格 25(契約換算1件あたり売上(万円/件、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の工数型:数量は0.70倍、名目単価1.25倍。
倍率:余剰現金45億円を除いた事業純利益42.47億円と事業自己資本354億円からROE12.00%。k7.75%、堀は普通で超過利回りの残存率1/2、RONIC9.87%。g_long=2.0%を用いて正当化PER=(1−0.02/0.09874)/(0.0775−0.02)=13.8685倍の上限そのもの。事業評価42.47×13.8685に、余剰現金45×0.75を加える。
確率:2026年決算の実物契約数と2027年計画を起点とし、成熟した国内事業所市場で控えめなシェア獲得を続け、電力小売マージンが平準化する最も起こりやすい中心像。下に寄せる理由:光回線契約目標の未達、電力の高い利益寄与、2026年8月期の営業キャッシュフロー赤字が同時に存在するため、上側28%に対し下側40%とした。
やや悲観 26% 通信獲得が鈍り電力利ざやが薄い 利益 11 億円 · PER 10.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 402 円121 億円
中小企業の廃業や集約が進み、光回線契約はほとんど増えず14.5万で頭打ちになる。大手キャリアの値引きや代理店競争で、10Gbpsへの移行は価格を守る程度にとどまる。NTT光コラボ相当市場でのシェアは約0.83%と現状並み、国内電力需要に対するシェアも約0.065%にとどまる。契約残高を維持するための営業費がかさみ、通信事業の利益率は大きく低下する。
電力は料金競争と供給原価の上昇によって成長が止まり、販売量が5.2億kWhにとどまる。会社は調達価格の上昇を料金に転嫁しようとするが、変更には時差があり、転嫁後には一定の顧客が離れる。利益率は6%台まで縮小し、電力の大きな売上に比べて稼ぐ力は弱くなる。
設備販売は中小企業の投資抑制で3100件へ戻り、追加の営業案件の紹介も減る。AIエージェント代替で制作や標準相談サービスの受注はさらに細る。人件費と本社費を急には減らせず、余剰資金を運転資金に回す。会社は存続し配当も続けられるが、資本コストを下回る低いROEの事業となり、上振れシナリオとは企業の質が異なる。
- オフィス光119(光コラボ・通信):数量 145,000(年度末の光回線保有契約数(回線))× 価格 11(年度売上÷年度末保有回線(万円/回線・年、初期販売も含む見かけ単価))→ 売上 158 億円・営業利益 13 億円。145,000回線で停滞、低価格競争により名目単価は物価以下。
- オフィスでんき119(電力小売):数量 52,000(電力使用量・販売量(万kWh/年、太陽光余剰電力量を含む会社の棒グラフ))× 価格 39(電力小売セグメントの売上÷開示電力量(円/kWh、設備・再エネ関連の実効売上を含む))→ 売上 203 億円・営業利益 13 億円。5.2億kWhの販売、卸価格と値上げ時差で利益率6.5%。
- オフィスソリューション(設備・セキュリティ・施工):数量 3,100(年内の機器導入・施工案件数(件/年、推定))× 価格 86(1件あたり売上(万円/案件、推定))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。工事の受注減と価格競争で設備利益が圧迫。
- オフィスソリューション(ウェブ制作・保険等の人的サービス):数量 1,450(年内の制作・サポート契約換算件数(件/年、推定))× 価格 21(契約換算1件あたり売上(万円/件、推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。人月・制作の需要がさらに減り利益率2.5%。
倍率:本シナリオは事業のROE約4.2%がk7.75%を下回り、超過成長価値を計上しない。稼ぐ力の上限1/k=12.90倍より低い10.4倍で、主要2事業の値決め力が落ち、長期利益の減耗が起こる慎重な残余利得評価とする。余剰現金15億円を除いた利益10.69億円に適用し、15×0.75億円を加える。
確率:光回線の直近契約目標未達と、電力契約の年間換算解約率が高いこと、営業キャッシュフロー赤字を踏まえ、中立より下がる確率を26%とする。
悲観 14% 卸電力ショックと顧客離反で赤字へ 利益 −10 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 122 円37 億円
電力調達価格の高騰と需給逼迫が何度も起き、料金転嫁を急ぐほど顧客が他社へ移る。低圧顧客の解約が進み、電力販売量は2.4億kWhへ縮小する。JEPX価格に連動する調達条件の改定が追い付かない時期が続き、電力小売は営業赤字になる。売掛債権や仕入れ保証金に資金が固定され、拡大路線を止めざるを得なくなる。
NTT光コラボ相当市場でのシェアは約0.57%、国内電力需要に対するシェアは約0.03%へ縮む。光回線も10万契約に減少する。NTT系の料金競争が激しく、通信は基礎的な利益しか残せない。設備販売は1600件に減り、固定費に耐えきれず赤字へ転じる。ウェブ制作はAIエージェントで標準作業の価値を失い、専業サービスとしての存在感がなくなる。
初期に出た利益は途中からの赤字と契約獲得費に食われ、株主還元は最初の数年に限られる。過去の資産で保証された安全な株ではなくなり、清算時に確保できそうな純金融資産を中心に評価する。利益の蓄積だけを支払可能な価値と誤認せず、手元に残る換金可能資産と既存株主の回収可能性を重視する。
- オフィス光119(光コラボ・通信):数量 100,000(年度末の光回線保有契約数(回線))× 価格 9.00(年度売上÷年度末保有回線(万円/回線・年、初期販売も含む見かけ単価))→ 売上 90 億円・営業利益 2 億円。回線10万で縮小。NTT卸・競争で低採算。
- オフィスでんき119(電力小売):数量 24,000(電力使用量・販売量(万kWh/年、太陽光余剰電力量を含む会社の棒グラフ))× 価格 34(電力小売セグメントの売上÷開示電力量(円/kWh、設備・再エネ関連の実効売上を含む))→ 売上 82 億円・営業利益 −2 億円。2.4億kWhまで市場シェア縮小。調達価格急騰と解約により営業赤字。
- オフィスソリューション(設備・セキュリティ・施工):数量 1,600(年内の機器導入・施工案件数(件/年、推定))× 価格 71(1件あたり売上(万円/案件、推定))→ 売上 11 億円・営業利益 −1 億円。設備投資縮小と固定販管費負担で赤字。
- オフィスソリューション(ウェブ制作・保険等の人的サービス):数量 1,000(年内の制作・サポート契約換算件数(件/年、推定))× 価格 20(契約換算1件あたり売上(万円/件、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で制作・相談が減り赤字となる。
倍率:恒常赤字のためPERではなく、純現金と税後換金可能資産による床で評価する。SCHEMAの検査基準に合わせ、PBRの分母は10年後の自己資本83億円でも、2026年8月期の自己資本119.47億円でもなく、添付factsの基準期2025年8月期の自己資本97.7億円を使用する。97.7億円×0.3791倍=37.04億円となり、床37.0億円とも整合する。このPBRは過去の市場の底値から採ったものではなく、換金可能資産の回収額を基準期自己資本で割った表示倍率である。10年間の利益蓄積を床の分母に加算しない。
確率:継続的な現物需要があるため倒産を必然とはしないが、過去の2022年の利益急減と2026年の資金回収悪化は、卸仕入れの急変時に事業の品質が構造的に落ちる危険を示している。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オフィス光119(光コラボ・通信)
NTT東西の卸光回線を中小企業に再販売し、インターネット接続と光電話、ネットワーク機器のオプション収入を得る。
| 数量年度末の光回線保有契約数(回線) | 価格年度売上÷年度末保有回線(万円/回線・年、初期販売も含む見かけ単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 141,275 | 9.36 | 132 | 17 |
| 10 年後 中立 | 195,000 | 12 | 234 | 32 |
取り方:2026年10月15日の決算補足説明資料p14で保有141,275回線、短信で当セグメント売上132.23597億円、営業利益16.92826億円を確認。売上にはストック126.50311億円と新規獲得などフロー5.73286億円が含まれる。単価9.36018万円は当年度の平均回線稼働数が未開示のため年度末回線で除した見かけ年額であり、厳密な継続顧客ARPUではない。NTT光コラボ卸契約規模約1750万に対して現行数量シェア約0.81%。10年先の実質数量は国内法人光回線需要×当社営業シェアで決まり、物価や10Gbpsアップセルは価格だけで扱う。
オフィスでんき119(電力小売)
中小企業向けの低圧・高圧電力小売。卸電力取引と相対調達を組み合わせ、販売電力量と顧客単価の差益を稼ぐ。
| 数量電力使用量・販売量(万kWh/年、太陽光余剰電力量を含む会社の棒グラフ) | 価格電力小売セグメントの売上÷開示電力量(円/kWh、設備・再エネ関連の実効売上を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 45,927 | 36 | 165 | 26 |
| 10 年後 中立 | 76,000 | 43 | 327 | 38 |
取り方:決算資料p17「電力使用量推移」の2025年9月~2026年8月の月別12値を計45,927万kWhと算出。2026年8月末保有は75,578契約。セグメント売上164.84225億円を電力量で割り実効単価約35.89円/kWh。グラフに太陽光余剰買取の数量も含むため、厳密な請求単価でなく売上の数量近似である。国内全電力需要を約8000億kWhとした規模の目安では約0.057%。将来は契約数×年間使用量が実質数量、物価と電力料金の改定が名目価格。ただし粗利率はJEPXの調達条件で大きく動く。
オフィスソリューション(設備・セキュリティ・施工)
UTMやネットワークカメラ、太陽光発電、蓄電池、空調、LEDなど、実物機器の販売・施工と保守。
| 数量年内の機器導入・施工案件数(件/年、推定) | 価格1件あたり売上(万円/案件、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 3,200 | 75 | 24 | 5 |
| 10 年後 中立 | 4,600 | 94 | 43 | 6 |
取り方:公式のソリューション部門2026年売上28.71316億円のうち、継続課金は3.07411億円、単発売上25.63905億円。機器・施工の内訳と件数は未開示であるため、単発売上の大部分24億円を設備と仮置きし、年間約3,200案件×75万円と分解した推定値。利益4.5億円も会社非開示の分析上の配賦であり、ソリューション全体の営業利益5.10447億円を下記サービスと合算して一致させる。実質需要は中小企業の拠点数×更新・省エネ導入率×獲得シェアでみる。中小企業庁の2021年企業数約336.5万社を顧客基盤の最大母数とし、その2割が毎年何らかの設備更新を行うと仮定すると年間約67.3万件の対象案件が生じる。推定の当社3,200件はその約0.48%を取る計算である。設備更新率2割も会社公表値ではなく、数量が変動する感応度のための仮定である。
オフィスソリューション(ウェブ制作・保険等の人的サービス)
ウェブサイト制作「レン太君」、人的提案や保険関連サービス。AIエージェントが制作と案内を代替しやすい部分。
| 数量年内の制作・サポート契約換算件数(件/年、推定) | 価格契約換算1件あたり売上(万円/件、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 2,400 | 20 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,680 | 25 | 4 | 0 |
取り方:ソリューション売上28.71316億円から設備仮配賦24億円を除いた4.71316億円を本枠に置いた。年間2,400件×約19.64万円は契約数非開示のための推定で、保険継続手数料等の異なる性質を一括した契約換算単価である。人手のウェブ制作・標準相談をPROMPT_AI_RISK「人月・工数」型と判定。中立10年数量0.70倍、価格1.25倍、同事業の10年超gは名目0%。解約率5%未満の開示、規制正本データ、年単位の乗換費用等の証拠が2つないため「記録の正本」に区分しない。保険の対面支援まで機械的に消滅させる想定ではない。デジタルクリエーターズの広告運用コンサル事業を含むAI対象の外販売上は非開示で、顧客獲得用のグループ内広告費と外販収益を二重計上しない。広告の制作・運用も人月型同様に対象とする。
リスクと懸念
卸電力価格の急変と電力小売の利幅
2026年8月期のオフィスでんき119は全社営業利益の大きな源泉となった。会社はJEPXの月平均単価が6~9円のときに採算が最も良くなると説明しており、市況との関係は無視できない。値上げ条項はあるものの、急変時の転嫁遅れ、顧客の乗換え、需給調整や保証金による現金流出が重なれば、販売数量が増えても価値は下がり得る。
光回線の解約と仕入れ先への依存
光回線はNTT東西から卸を受けており、回線自体に排他的な権利はない。2026年の保有契約は14.1万で会社の14.8万目標に届かず、月次解約率は約0.67%だった。大手キャリアや地域の競合が値下げした場合、解約を埋める営業費が増え、契約残高が増えても営業利益が減る可能性がある。
現金化の遅れと電力運転資金
2026年8月期は純利益約25億円に対し営業キャッシュフローが約8億円の赤字だった。契約数の拡大に伴う売掛債権や前払いが増えると、帳簿上の利益はそのまま株主に戻せない。売上債権の回収日数が長期化したり貸倒れが増えたりすれば、利益が拡大しても新規投資や配当の原資が不足する。
AI エージェント代替と人手の営業経済性
AIエージェントは物理的な通信回線や電力使用量を消すわけではない。一方、ウェブサイト制作、標準的な保険比較、電話や画面で行う案内と広告の制作運用は代替されやすい。顧客向けの人的サービスの件数と値段を厳しく見積もるほか、競合企業も自動化で販売費を削減すれば、東名が持つ営業フォローの優位が狭まる可能性を考える。
中小企業の廃業・顧客基盤の縮小
同社の顧客は小規模な店舗や法人が中心で、人口減少、経営者高齢化、後継者不在による廃業に直接さらされる。通信契約と電気契約が同じ事業所に紐づくと、一社の廃業で複数サービスが同時に解約される。新規事業者への営業で補えなければ、契約更新率の悪化が長期の数量成長を止める。
買収、設備販売、株式希薄化の資本配分
中期計画は新規ストック事業とM&Aに言及しているが、買収価格と資本効率が不確定な段階で利益の上乗せはできない。設備施工の拡大には人員と運転資金が要り、低採算の売上だけ増やす恐れもある。新株予約権による潜在株式の増加と、株式需給緩衝信託の売却済み株式を恒久的な自社株買いと誤認することにも注意したい。
還元方針と優待コストの不確実性
累進配当と配当性向10%以上という数値方針はあるが、利益の50%を配るといった強い約束ではない。2026年10月の優待拡充は既存株主に価値があるが、利用株主数が増えれば費用も増える。優待の現金相当額は実人数が未公表のため推定であり、配当と重複しないように計算する必要がある。
今後の分かれ目
- 四半期ごとの光回線の新規獲得が解約数を安定的に上回り、保有16.1万を達成したら
- 2027年の契約数目標が実現したと評価し、10年の光回線数量と中立確率を上方修正する。ただしNTTからの卸料金が悪化せず、追加回線の獲得費を回収できていることも条件とする。
- オフィスでんき119の電力契約が8.2万を超え、販売量と顧客単価がともに増えたら
- 量と単価の双方から電力売上を上方修正する。一方でJEPXの価格帯と売上債権の増加額を突き合わせ、純利益よりも現金創出が改善している場合に限り強気の確率を上げる。
- JEPXの月平均調達価格が会社の採算良好とする6~9円の帯域を長く外れたら
- 料金への転嫁の時差と解約数に応じ、電力営業利益率を引き下げる。営業現金収支まで赤字が続くなら、やや悲観と悲観を厚くし、余剰現金の見積りも減らす。
- 営業キャッシュフローが2期以上連続して純利益に近い黒字へ戻ったら
- 契約増に要る運転資金が改善した証拠となる。自由に株主へ戻せる余剰現金を再評価し、買収投資や還元方針との整合を確かめて適正価値を引き上げる余地がある。
- ウェブ制作や保険案内でAIを顧客向け有料商品として販売し、金額を開示したら
- 人的サービスの数量縮小前提を商品ごとに見直す。社内業務へのAI導入や宣伝だけでは楽観の売上増に入れず、実際の有償契約数と継続率を条件とする。
- 高圧電力や省エネ設備への大型投資・買収が発表されたら
- 契約当たり使用量や設備単価の上振れを調べると同時に、買収費用、顧客獲得原価、運転資金の負担、資金調達方法を精査する。増収だけではROICの改善と見なさない。
- 増配が続く一方で新株予約権の行使が増え、1株当たりの取り分が薄まったら
- 還元総額から既存株主に帰属する割合を別に計算する。株式発行による調達資金が同額以上の事業価値を生んでいないなら、株主の本質価値を下げる。
見ておくもの
- オフィス光119の保有回線数、四半期純増・月次解約率、10Gbpsの採用比率
- オフィスでんき119の保有件数、月別使用量(万kWh)、高圧契約の比率
- JEPX月平均価格、料金調整の適用状況、電力セグメント営業利益率
- 中小企業向け光コラボの新規販売市場と、NTT東西の卸条件
- 連結売上債権・営業キャッシュフロー・運転資本増減と現金同等物
- 2027年8月期の中期経営計画:売上402億円、営業利益46億円、ROE26.1%の進捗
- オフィスソリューションのストック売上と機器・施工の受注内訳、AI商材の外部有償売上
- 実際の配当性向、株主優待費用、株式数の純減と新株予約権の行使
倍率と資本コストの決め方
基準株価・株数・基準期表記は添付factsの2026年10月22日終値、3006万4868株、2025年8月期を固定した。ただし業績モデルの起点だけは2026年10月15日公表の2026年8月期実績に更新した。最新決算末の純株数は3008万8868株で差は0.08%未満と確認した。数量は光回線の契約と電力kWh、価格は契約当たり年売上と円/kWhに分離した。物価3%は価格にのみ含め、売上と数量への重複加算を避けた。値付けは市場のPER・PBRを参照せず、k7.75%、g_long2%、ROEからの増分RONICに基づく正当化PERと純金融資産の処分価値に従った。悲観PBRの分母はSCHEMAの基準に合わせ、添付factsの2025年8月期自己資本97.7億円に統一した。悲観時価総額37.04億円は、この自己資本×0.3791倍による評価であり、10年後自己資本83億円を掛けていない。2028年8月期以降の新リース基準による表示変更は、家賃を営業費用とする実質的な損益比較に調整する。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3%、株式リスクプレミアム4.5%に、事業品質の調整+0.25%を加える。電力変動の固有リスクは事業利益と確率で扱う。