結論
ワンダープラネットは名古屋発のモバイルゲーム開発会社である。『クラッシュフィーバー』などの自社運営と、有力IPを持つ出版社・ゲーム会社から受け取る開発・運営対価で稼ぐ。筆者の結論は割高だ。人気作品との提携があっても、それが10年続く株主利益に変わると判断するには証拠が足りない。
2026年8月期は売上19.45億円、営業損失1.62億円、最終損失3.30億円となった。2025年8月期までを収録した添付の下調べより、新しい確定決算で業績は悪化している。株主資本は2.65億円、自己資本比率は約18%まで縮み、現預金11.58億円の裏側に社債・借入金10.30億円を抱える。純現金だけを見て安心できる状態ではない。
希望もある。ブシロードとの『HUNTER×HUNTER NEN×SURVIVOR』は配信を開始し、サンリオとの共同開発も動き出した。2026年8月期の開発・運営対価は12.40億円と、売上の64%を占めた。ただし、この部分は人の制作工数を売る側面が強く、AIによる内製化と単価圧力を免れない。残る自社配信・収益分配の部分も、既存作品の減衰と配信終了を埋める新作が要る。
10年後の中立像は、新作の入れ替えに成功して営業黒字を維持するが、盤石な長寿IPはまだ所有していない会社である。成功時の上振れは大きい。それでも弱い価格決定力、将来の増資余地、無配を合わせると、現在約19億円の時価総額に見合う再現性は認めにくい。
バリュー投資の観点から
長く株を持つ者にとって欲しいのは、十年後にも課金を続ける客と、その客を引き付ける権利を自社が保有する仕組みである。ワンダープラネットには制作上の経験はあるが、有力IPは協業先の資産だ。契約が満了すれば経済条件は変わり、新しい人気作を制作しても取り分が一定とは限らない。『クラッシュフィーバー』の長期運営は評価できるが、事業全体の利益が安定しなかったため、価格を決められる堀の証明には至っていない。
投資家に帰属する利益は、会計上の黒字と同じではない。毎年、新しいゲームを投入し、配信開始後も更新と広告に投じ続けなければ旧作の売上が消える。2027年8月期の増収計画も、既存開発費の削減と新規制作投資の増加が同居している。儲かった年の全利益を持ち帰れる企業ではなく、現金のかなりの部分を次の作品へ再投資せざるを得ない企業だ。
AIによる制作効率化は経営にとって有力な改善手段である。ただし、その技術が発注企業にも同時に普及すれば、制作対価の値上げは難しくなる。自社のAI開発ツールを社外顧客へ有償提供している売上は確認できず、『AIで伸びるから』という楽観に値段を払えない。
筆者が求める安全域は、期待作が一つ外れても資金調達を迫られず、既存株主の持分が守られることである。現状はそこに届かない。新作の成功を否定する必要はないが、成功するかを賭けることと、割安な持続利益を買うことは違う。
何で稼ぐ会社か
売上の仕組みを二つに分けて理解したい。一つは協業先から開発と運営の役務対価を受け取る仕事である。2026年8月期には12.40億円を計上した。受託案件、共同開発案件、サービス運営の対価が含まれるが、会社は案件別の契約額や稼働人数を開示していない。契約によっては制作費をパートナーが負担し、納品や運営の節目で収益を受け取るため、失敗作を自社だけで抱えるより損失を抑えられる。
もう一つは自社パブリッシング、既存ゲームの課金、共同開発作品の配信後に受け取る収益分配などである。前の役務売上に入らない『その他』は7.05億円で、前年の11.57億円から大きく減った。これには自社の既存タイトルと協業作品の分配収益が混在するため、自社IPの純粋な売上と呼んではならない。課金利用者数、継続率、一人当たり単価は非開示である。分析上は年換算の収益対象者8万人と認識売上約8811円という仮定に分け、後の筋書きで数量と価格を動かした。
主な作品は運営12年目の『クラッシュフィーバー』、ブシロードとの『HUNTER×HUNTER NEN×SURVIVOR』である。後者は配信直後の累計170万ダウンロードを発表したが、ダウンロードは課金会員でも年間売上でもない。『パンドランド』は2026年3月に、『ジャンプ+ジャンブルラッシュ』は同年9月に終了した。稼ぐタイトルが入れ替わる速さは、長期の売上を読むうえで決定的だ。
著名作品を使う権利は原則として協業先が握る。版元から制作を任される信用と、共同開発用の技術基盤『SEED』は強みである一方、ゲームの顧客関係、宣伝、課金条件のすべてを自社で決められるわけではない。自社開発・外注・プラットフォーム手数料・権利者への配分が残余利益を薄くする構造である。
優良さと弱いところ
堀、つまり競争相手が簡単に奪えない強みは、人気IPそのものではなく、それを預かって素早く遊べる作品にする経験である。ブシロードとの共同開発やサンリオとの提携は発注先としての一定の信用を示す。独自のSEED基盤とAIを使う開発工程も、少人数で複数作品を扱う助けになる。ただし、他社を排除できる独占権や、料金を継続的に引き上げた実績は確認できない。強い堀とは評価しない。
利益の履歴は厳しい。2021年8月期の最終黒字の後、2022年8月期には約19億円の純損失を出した。2024年8月期には一時黒字化したが、2025年8月期と2026年8月期は再び赤字である。旧作の減収、サービス終了、新作の先行費用が重なり、増分の投下資本利益率が資本コストを上回るという実績はまだ示せていない。2026年8月期には『クラッシュフィーバー』の運営権などを減損し、過去の資本配分の失敗が帳簿にも現れた。
財務は見た目以上に薄い。社債と借入の合計は10億円超で、現金から引くと余裕は1億円強しかない。期末に短期返済が迫る債務も大きい。借り換えを3.5%以上で考えると、いずれ課金の成功と外注費の削減だけでは埋まらない費用が残る。2026年10月時点で継続企業の前提に関する注記はないが、それだけで増資の可能性が消えるわけではない。
AIエージェント代替の判定は、開発・運営対価の64%を『人月・工数で売る』型、残余の36%を『自社ゲーム・収益分配』型とする。契約移行の難しさ、規制上の正本、解約率と値上げ実績という堀の証拠は二つ以上揃っておらず、前者を記録の正本型に格上げする根拠はない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場自体が消えると考える必要はない。ファミ通ゲーム白書2026は2025年の世界ゲーム市場を32.10兆円、国内市場を2.59兆円と推計した。Sensor Towerは2025年の世界モバイルゲーム内課金を820億ドル、ドル円150円なら約12.3兆円と報告する。ただし前者は家庭用とPCも含み、後者はアプリ内課金中心であり、混ぜて自社の市場シェアを測ってはいけない。会社の『その他』売上7.05億円を後者で割る参考比率は約0.0057%にすぎず、しかも権利者・配信者への取り分控除後の認識売上なので、厳密なシェアではない。
競争は大企業が極めて有利だ。国内ではポケモン社の『Pokémon TCG Pocket』、MIXIの『モンスターストライク』、Aniplexの『Fate/Grand Order』、バンダイナムコの『SDガンダム』が利用者の時間と課金を奪い合う。海外ではTencent、NetEase、Scopely、HoYoverseなども競う。Sensor Towerによれば日本の国内系パブリッシャーは国内課金売上の過半を占める一方、ゲーム市場全体の大半は少数の長寿・新規ヒットに集まりやすい。個社ごとの比較可能な世界売上シェアは統一して開示されておらず、競合作品の上位順位から同社の優位を推論できない。
受託開発の市場は別物である。CESAは国内ゲーム基幹企業の就業人口を約5.8万〜8.3万人と推計する。仮に10〜20人を一つの案件年換算とすれば供給能力は年2900〜8300案件程度となり、当社の仮定上の4案件年は0.05〜0.14%相当である。ただし内部制作や家庭用開発を含むため、これは外注受託市場の正確なシェアではなく供給規模の比較にすぎない。受託大手トーセは累計2400本以上の開発実績を持ち、発注者には複数の代替先がある。
世界の利用者は名目市場成長ほど増えない。ゲームの課金は既存客の長期滞在、広告収益、課金単価の改善が柱となり、プラットフォーム手数料や国別課金規制は利益を削る。2036年の中立は世界モバイル課金市場の実質数量が緩やかに増す一方、小規模開発会社がその成長を自動的に獲得するとは見ない。技術面では生成AIが制作を助ける反面、発注者の内製化と新作供給過剰を招く。
資本政策と M&A
資本配分の評価は慎重である。2022年に旧協業先から『クラッシュフィーバー』の運営権を取得したが、2026年8月期にはその残存運営権などに減損が生じた。成長のために支出した額を長く回収できなかったことを意味する。2023年8月期には株数の希薄化も起きた。拡大と資金確保を優先してきた結果、少数株主が受け取る一株当たりの利益が着実に増えたとはいえない。
新体制は2026年に発足し、今後3年で有力IP協業、オリジナル作品、SEEDとAIを使った少数精鋭の制作を軸に据える。2027年8月期の会社予想は売上21.0億円、営業利益0.30億円、純利益0.10億円である。2028年8月期を新作投入、2029年8月期を利益貢献の年と位置付けるが、売上・利益・ROEの中期数値目標はない。長期の配当性向、DOE、自社株買い額についても数字の約束なしである。2026年8月期、2027年8月期とも無配の方針だ。
2026年8月末の大株主上位10名の比率は約57%であり、株主への大規模な定例還元実績もない。将来生じた余剰現金が全額株主に戻るとは考えず、帳簿価値の75%だけを株主に帰属しうる価値として扱う。既存の新株予約権も将来の取り分を薄める。慎重な筋書きでは赤字を埋める外部調達による追加希薄化を明示した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
IPを自社で所有していないことは、必ずしも弱さだけではない。人気の高い原作を借り、開発対価で固定費を回収しながら、配信後の収益分配でも利益を得られれば、自社IP開発より少ない初期資本で成果を積み上げられる。『HUNTER×HUNTER NEN×SURVIVOR』の170万ダウンロードは、同社が今なお多数の利用者に届く作品を作れる証拠である。サンリオとの共同開発は顧客層を広げる機会にもなる。会社が語る2028年の新作投入集中と2029年の収益貢献が実現すれば、数本の柱ができる。
SEED基盤とAI駆動の制作を組み合わせれば、開発時間を短くし、少人数で品質を維持できる。2026年8月期の第4四半期は、通期赤字の中でも営業黒字になった。ここから損益分岐点が下がり、役務対価と収益分配が積み重なれば利益率を改善できる。過去の減損は痛いが、むしろ不採算資産の処理を終えて身軽になったとも見られる。
2036年に協業先との条件が改善し、自社と収益分配の対象となるゲームに年間20万人を超える課金者換算の利用が定着するなら、売上規模は今の倍以上になり得る。海外向けの日本IPの認知度と配信の容易さを利用し、国内だけに頼らない収益を作れる。人気作が複数重なる場合、薄い現在の自己資本に対して利益成長が大きく効く。
慎重な見方
会社にとって価値の高い人気作品ほど、権利者が強い立場を取る。共同開発を受注できても、顧客の宣伝費、配信権、課金条件、取り分を自社の都合だけでは動かせない。2026年8月期は開発・運営対価が増えたのに全社売上が減り、営業赤字も残った。『クラッシュフィーバー』など旧作の減衰と、『パンドランド』『ジャンプ+ジャンブルラッシュ』の終了がその実態を示している。ダウンロードの初速だけでは10年の現金収益を証明できない。
最大の懸念は、売上の約64%が労働投入と案件契約に依存することだ。AIエージェントがプログラム、画像制作、検証、運営業務を代替すれば、発注者は外部工数を削減する。会社自身がSEEDとAIの活用を進めるほど、同じ制作工程の希少性は低下しうる。人員削減で利益率を守れても、案件数と単価の両方が縮む危険がある。
財務にも時間の余裕が乏しい。2026年8月期の株主資本は2.65億円で、自己資本比率は2割を切った。純現金は約1.28億円あるが、短期に返す社債・借入も大きい。利益が立ち上がる前に新作が外れれば、増資や高い借入金利を受け入れる必要がある。自社株買いや配当の履歴に乏しい中、株主が受け取るものは将来の再建成功への期待が中心となる。
どちらに重みを置いたか
新体制の費用削減と有力IP協業は現実の改善材料である。ただし、近年の旧作の減収、2026年8月期の減損、薄い自己資本という会社固有の事実を重く見る。確率は楽観側27%、中立32%、悲観側41%と、下側に14ポイント寄せた。これはAI代替を資本コストに重ねて罰するためではなく、新作の成否と資金調達を必要とする可能性が利益の幅を大きくするためだ。高い利益率が出た年だけを10年後の実力としない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 513 円13 億円(+ 還元の換算額還元の合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 202 円5 億円、今との差 −71.7%、 期待の年率 −3.3%(資本コスト 9.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 2,273 円58 億円 | 0 円0 億円 | +217.4% | +12.2% | 205 円5 億円 |
| やや楽観 | 18% | 910 円23 億円 | 0 円0 億円 | +27.2% | +2.4% | 164 円4 億円 |
| 中立 | 32% | 419 円11 億円 | 0 円0 億円 | −41.5% | −5.2% | 134 円3 億円 |
| やや悲観 | 24% | 36 円1 億円 | 0 円0 億円 | −95.0% | −25.8% | 9 円0 億円 |
| 悲観 | 17% | 13 円0 億円 | 0 円0 億円 | −98.1% | −32.9% | 2 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 513 円13 億円 | 0 円0 億円 | −28.3% | −3.3% | 513 円13 億円 |
今の株価時価総額 716 円18 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% IP協業と新作が複数の長寿収益源に育つ 利益 5 億円 · PER 10.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,273 円58 億円
サンリオとの共同開発を契機に、国内だけでなく海外のライトユーザーへ届く作品を継続して生み出す。2028年の新作投入と2029年の利益回収が実現し、その後も作品の入れ替えで失効する売上を補える。『HUNTER×HUNTER NEN×SURVIVOR』で得た協業先への納品実績が次の大型IP契約を呼び込む。自社タイトルと収益分配を合わせた課金者換算は年間22万人へ増え、会社が受け取る実質の分配率も改善する。世界市場全体で見た取り分は依然ごく小さいが、世界的なゲーム売上の実質成長に加えて自社の獲得率も上がる。
SEEDとAIは制作原価を下げるために使い、AI開発サービスを外販したという根拠のない成長は数えない。制作の受託数量は10年前と同程度にとどめ、名目の契約対価だけが物価に沿って上がる。新しいIPを買い集める大型M&Aは想定せず、余剰資金の一部で既存契約を延長する。権利元の交渉力は強いままだが、複数作品の成功で固定費を吸収し、営業利益率は15%程度に改善する。
- 協業ゲームの開発・運営対価:数量 4.0(年換算の標準協業案件数(案件年、分析用の推計))× 価格 4.12(標準協業案件1件年当たり認識収益(億円、名目、推計))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。案件数4.0、単価10年1.33倍。AI下でも数量の拡大は期待せず、制作自動化を利益率に反映。
- 自社ゲーム・配信後収益分配など:数量 22.0(収益対象となる有料利用者の年換算人数(万人年、分析上の推計))× 価格 1.35(有料利用者1万人年当たりの当社認識売上(億円、名目、推計))→ 売上 30 億円・営業利益 6 億円。年間課金者換算22万人、認識額1人年1万3500円。新作複数本の長寿化と海外展開が必要。
倍率:k9.75%、事業ROE4.95÷24.0=20.6%、弱い堀の残存割合1/3からRONIC13.38%。長期名目gを全社のAI影響込みで1%に抑え、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=10.57倍。過去株価・同業倍率から決めていない。
確率:2028年前後の新作群のうち複数本が10年先まで課金を維持し、低コストの制作基盤が利益に直結する稀な好循環。単一の成功では足りないため1割未満とする。
やや楽観 18% 有力IPの連続採用で収益構造を修復 利益 2 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 910 円23 億円
有力IPを活用する共同開発モデルが定着し、完成したゲームの制作対価に加えて配信後の分配収入を獲得できる。2026年に見直した人員と外注費が通年で効き、既存ゲームの自然減を新作の定期投入で埋める。ゲームIPの権利そのものは版元が持つが、案件の繰り返し受注で開発準備の費用が軽くなる。世界のモバイル課金市場の実質拡大を享受しつつ、会社が扱う有料利用者換算は15.5万人まで伸びる。
開発・運営の受託はAIで内製化する発注企業が増えるため、案件年数が10年間で1割減る。報酬単価には物価上昇の一部しか転嫁できないが、AIを自分たちも導入して工数を減らす。経営は赤字ゲームの早期撤退を徹底し、大型の高値買収は行わない。結果として営業利益率は約10%を確保できる。ただし、特定IPの契約切れや一つの作品の失速で収益が揺れる弱い堀は残る。
- 協業ゲームの開発・運営対価:数量 3.6(年換算の標準協業案件数(案件年、分析用の推計))× 価格 3.90(標準協業案件1件年当たり認識収益(億円、名目、推計))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。AI代替で同等案件数0.90倍、名目対価1.26倍。
- 自社ゲーム・配信後収益分配など:数量 15.5(収益対象となる有料利用者の年換算人数(万人年、分析上の推計))× 価格 1.18(有料利用者1万人年当たりの当社認識売上(億円、名目、推計))→ 売上 18 億円・営業利益 3 億円。新作IP・自社配信ゲームの組合せで課金者換算15.5万人を維持。
倍率:k9.75%、ROE2.26÷12.9=17.5%、弱い堀の残存1/3からRONIC12.34%。長期名目g1%、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=10.50倍。売上拡大の利益を十年より先の高成長倍率で再計上しない。
確率:サンリオ・ブシロードの協業経験を活用して新作を定期的に投入できる可能性はあるが、収益配分の条件と作品寿命を考えて楽観より低い利益率にする。
中立 32% 黒字には戻るがIPと役務契約の入れ替えが続く 利益 1 億円 · PER 10.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 419 円11 億円
会社は2027年8月期に小幅な営業黒字へ戻り、2028年以降はサンリオとの共同開発など新作の完成を増やす。だが、初速で利用者が増えた作品も数年で落ち着き、既存IPとの契約更新では権利元への分配が重い。クラッシュフィーバーの衰退から学んだ運営費管理を続け、低い利益率ながら黒字を保つ。実質の世界ゲーム市場が緩やかに広がり、対象となる有料利用者換算は11.5万人に増える。過去に複数の終了タイトルがあったため、自社の市場占有率が急拡大するとは見ない。
開発・運営の役務対価は会社の主力であり続けるが、AIエージェントが制作・検証・イベント運営を代替する。標準案件年数は今の70%となる。価格は10年間で約23%上がるだけで、物価の34%上昇には届かない。SEEDによる工数削減が下支えし、案件単位では利益を出せても全社の営業利益率は6%台にとどまる。新たな大型買収や恒常的な配当はない。
- 協業ゲームの開発・運営対価:数量 2.8(年換算の標準協業案件数(案件年、分析用の推計))× 価格 3.82(標準協業案件1件年当たり認識収益(億円、名目、推計))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。人月型の中立数量0.70倍、価格1.23倍。AI導入で単位工数を減らすが顧客への値上げは物価未満。
- 自社ゲーム・配信後収益分配など:数量 11.5(収益対象となる有料利用者の年換算人数(万人年、分析上の推計))× 価格 1.16(有料利用者1万人年当たりの当社認識売上(億円、名目、推計))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。有料利用者換算11.5万人、収益認識単価約1.32倍。新作更新が旧作減衰を上回るが独占IPは持たない。
倍率:k9.75%、ROE1.05÷7.4=14.19%、弱い堀の残存1/3からRONIC11.23%。AI影響後の長期名目g1%を使用し、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=10.41倍。ROEは今の株価ではなく、純利益と資本の流れから出した結果。
確率:2027年8月期の営業黒字化計画は出発点だが、その後の複数作品のヒットは未確定。旧作の減衰と新作の補完を均して中心の確率とする。下に寄せる理由:2026年期末に株主資本が2.65億円へ縮小し、旧作の終了と役務対価への依存が同時に進んでいる。
やや悲観 24% 新作不発と受託縮小で増資を迫られる 利益 −1 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 36 円1 億円
サンリオなどとの協業の制作対価は一定期間続くが、配信後の課金が予想ほど伸びず、次の版権契約では条件が厳しくなる。老舗の自社ゲームを支えた顧客も減り、売上を持続するには広告出稿を増やさねばならない。発注会社はAIを用いた内製化を進め、当社の標準案件年数は2.2件まで低下する。契約単価も物価に追いつかず、制作効率化だけでは固定人件費を吸収できない。
2027年の小幅黒字化は一時的に達成しても、数年後に収益の谷が再発する。大きな買収を行う余裕はなく、赤字を埋めるため10年の間に約6億円の株式資金調達が必要になる。新株約154万株と既存予約権の行使を想定すると、現在の株主に残る比率は約61%となる。期末には営業赤字が残り、事業の継続価値より回収可能な流動資産が価値を支える。配当による補填も見込めない。
- 協業ゲームの開発・運営対価:数量 2.2(年換算の標準協業案件数(案件年、分析用の推計))× 価格 3.40(標準協業案件1件年当たり認識収益(億円、名目、推計))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。標準案件年数は0.55倍。価格は名目1.10倍でしか上がらない。
- 自社ゲーム・配信後収益分配など:数量 7.0(収益対象となる有料利用者の年換算人数(万人年、分析上の推計))× 価格 0.95(有料利用者1万人年当たりの当社認識売上(億円、名目、推計))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。対象顧客の減少と広告費の固定負担により赤字。
倍率:2036年も赤字で利益倍率が使えない。直近の株主資本2.65億円を分母としたPBR約0.565倍は、資本を積み増すこと自体に価値を認めず、事業用権利の減損や累積赤字を経て残る換価可能資産約1.50億円の評価を表す。期末株主資本2.0億円へ単純に掛けた倍率でも、過去のPBRの谷でもない。
確率:旧作の減収とIP提供者に対する交渉力の低さが続き、AIによる制作工数削減で新規案件を失う可能性を無視できない。
悲観 17% 開発業務の代替が進み、権利と資金調達で劣後 利益 −2 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 13 円0 億円
AIエージェントによるゲーム制作や検証の内製化が進み、権利者が受託開発会社に払う工数対価は縮小する。高い知名度を持つIPほど発注者が選定力を握り、同社は大型案件を獲得できなくなる。自社タイトルも新作を育てられず、旧作のサービス終了が続く。収益対象の有料利用者換算は年間4万人に減り、価格・分配条件まで悪化する。保有する技術基盤には市場価値が残るとしても、長期の課金顧客と排他的な権利を伴わない。
2027年の黒字化目標が外れ、その後も資金流出が続く。会社は支出を削り、IPの大型買収どころか少人数の開発体制を維持するために追加資本を集める。10年間で約13億円の新株発行を要する場合、新株約722万株と既存予約権の行使によって、現在株主の取り分は約26%に縮む。2036年に残る営業赤字とわずかな金融資産では、買収による救済にも高い対価を期待しにくい。事業が消える極端な倒産を前提にせず、換価可能資産を下値とする。
- 協業ゲームの開発・運営対価:数量 1.4(年換算の標準協業案件数(案件年、分析用の推計))× 価格 3.00(標準協業案件1件年当たり認識収益(億円、名目、推計))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。AIによる受注数の大幅減少、単価も現状を下回る。
- 自社ゲーム・配信後収益分配など:数量 4.0(収益対象となる有料利用者の年換算人数(万人年、分析上の推計))× 価格 0.68(有料利用者1万人年当たりの当社認識売上(億円、名目、推計))→ 売上 3 億円・営業利益 −1 億円。収益対象者半減、料率と継続率も低下。
倍率:2036年の最終損失1.92億円には利益倍率を掛けない。赤字による資本毀損を反映した2036年末の自己資本1.50億円を分母としてPBR約0.867倍を適用し、会社全体の時価総額1.30億円と整合させる。現在の自己資本2.65億円を分母とする場合の比率は約0.49倍だが、異なる時点の分母を計算上混同しない。換価可能な税後金融純資産1.28億円がほぼ全価値を支える。過去の株価や市場倍率を根拠にしない。
確率:主要契約の停止と配信作品の失敗が複数重なると、2026年時点ですでに薄い株主資本では支えられない。小規模ゲーム会社固有の尾部リスクとして厚めに見る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
協業ゲームの開発・運営対価
版権者や配信会社に対する制作・運営の役務対価。配信後の売上連動レベニューシェアは含まず、人月・工数型のAI代替リスクを受ける。
| 数量年換算の標準協業案件数(案件年、分析用の推計) | 価格標準協業案件1件年当たり認識収益(億円、名目、推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 4.0 | 3.10 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.8 | 3.82 | 11 | 1 |
取り方:2026年10月13日の通期説明資料29頁に『開発・運営売上高1240百万円』と明記。案件別の受注金額、年間稼働件数、実際の人月単価は非開示である。新規のサンリオ案件、ブシロード等の協業と既存運営を参考に標準契約4件年を仮置きし、単価12.40÷4=3.10億円と逆算した推計であり、実契約数の主張ではない。CESAの国内ゲーム基幹企業の就業人口5.8万〜8.3万人を10〜20人/案件年で割った供給容量2900〜8300案件年に対して、同社の規模は0.05〜0.14%程度という粗い比較しかできない。営業損失も会社非開示の配賦仮定である。2区分の推定営業損失の合計−1.02097億円に未配賦の本社共通費−0.60億円を足すと、全社の確定営業損失−1.62097億円に一致する。AIエージェント代替は人月・工数型と判定し、中立数量10年0.70倍、価格1.23倍、長期g0%をこの部分に適用する。
自社ゲーム・配信後収益分配など
自社配信作品の課金収益と、協業作品の配信後に獲得する分配収入など。自社保有IPだけの収益ではなく、権利者への分配後の認識売上が含まれる。
| 数量収益対象となる有料利用者の年換算人数(万人年、分析上の推計) | 価格有料利用者1万人年当たりの当社認識売上(億円、名目、推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 8.0 | 0.88 | 7 | −1 |
| 10 年後 中立 | 11.5 | 1.16 | 13 | 1 |
取り方:会社の2026年8月期総売上19.4486億円から公表の開発・運営対価12.40億円を差し引いた『その他』7.0486億円(会社資料は703百万円に丸め)を用いる。対象課金者数やARPPUは非開示なので、年換算8万人と仮定し1万人年当たり0.881075億円、すなわち一人年約8811円を逆算した。170万DLは2026年の新作の累積配信数であり課金者数ではない。Sensor Towerの2025年世界モバイル課金820億ドル(https://sensortower.com/press/press-release-sensor-tower-state-of-gaming-gaming-drove-52-billion-downloads-82b-iap-revenue-on-mobile-and-12b-premium-revenue-on-steam)をドル円150円で12.3兆円とすると、この売上の参考比率は約0.0057%だが、世界の総課金と会社の純額収益の比較であり厳密な市場シェアではない。利益は単一セグメントのため推計配賦。
リスクと懸念
AIエージェント代替と外注費の圧縮
開発・運営対価は2026年8月期売上の64%を占める。ゲームのコード、素材制作、テスト、運営イベントはAIによる自動化の余地が大きい。発注者が工程を内製化すると件数が減り、工数単価の物価転嫁も難しくなる。SEEDを使う自社の原価削減と、受注市場の縮小は同時に起こりうるため、両者を混同して成長率を高くしない。
人気IPの権利者に対する弱い交渉力
ブシロードやサンリオとの共同開発は販路を広げる反面、他社の著作物を使う条件の変更を受ける。IP所有権や利用許諾は自社だけで更新できず、人気が出た作品ほど権利者への利益配分が増える可能性がある。役務契約が継続しても、新規ユーザー獲得費用や収益分配率が悪化すれば、会社の持ち帰る利益は小さくなる。
旧作の減衰と新作の回収失敗
『クラッシュフィーバー』のような長寿作品でも利用者と売上は一定ではない。『パンドランド』と『ジャンプ+ジャンブルラッシュ』はサービス終了となり、新しいIP作品の初期ダウンロードが継続課金へ転じるかは未確認である。次の開発費が先に発生するので、作品を一本外すだけで稼いだ現金の大半が消える可能性がある。
株主資本の薄さと増資による希薄化
2026年8月末の株主資本は約2.65億円にとどまり、現預金11.58億円から社債・借入10.30億円を引くと純現金は約1.28億円である。赤字が再拡大すると借り換え金利だけでなく、増資で現在の株主の取り分が小さくなる。会社全体の売上が戻っても、既存株式一株が受け取る価値が同じ割合で増えるわけではない。
課金規制とプラットフォームの取り分
AppleとGoogleのアプリ配信・課金手数料、国別の未成年者保護やゲーム内課金規制は、課金客一人から残る利益を左右する。広告獲得単価が上がれば利用者が増えても収益性が下がる。プラットフォーム手数料の引下げは追い風となるが、権利元との収益分配でその改善が当社に全額残るとは限らない。
開発投資と資本配分の再失敗
2022年に取得した旧ゲーム運営権は2026年に減損となった。2027年の利益計画は既存開発費の削減に加え、新作への支出拡大も織り込む。経営陣が売上の回復を優先して大きな先行投資や高値での権利取得に走れば、過去の投資損失が繰り返される。開発中止基準と投資回収期間の開示がない点は不確実性を高める。
今後の分かれ目
- 2027年8月期の営業利益0.30億円と純利益0.10億円の会社計画が未達で、営業キャッシュフローも再び赤字となれば
- 中立の早期黒字化という出発点を失う。協業開発の粗利率と固定費の改善がどこで止まったかを確認し、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 2028年に投入する協業・オリジナル作品が複数本とも運営2年目に黒字を維持し、収益分配売上も増えれば
- 自社ゲームの課金者換算と単価の実績を更新し、やや楽観側の数量と営業利益率を引き上げる。ただし発注側が保有するIPの契約期間も確認する。
- 開発・運営対価が名目で大幅減となり、案件の新規獲得件数も前年割れが続けば
- AIエージェント代替や発注者内製化が数量に表れた可能性を重く見る。SEEDによる社内生産性の改善だけで補えるかを受託粗利と人数で判定する。
- 新株予約権の行使に加えて、短期借入返済のために第三者割当増資や公募増資が決議されれば
- 会社全体の利益予想とは別に既存株主の取り分を引き下げる。調達価格・新株数・調達資金の用途からholder_shareを必ず更新する。
- 自社・収益分配作品について課金者数、継続率、月次純売上、版権元との分配率が継続開示されれば
- 推計の8万人という現在の数量仮定を実績で置き換え、著名IPと長期契約が真の顧客囲い込みに結びつくかを評価し直す。
- 累計減損が止まり、3年以上にわたり営業利益率10%超と黒字の営業キャッシュフローが両立すれば
- 増分投資の利回りが資本コストを超え始めた証拠となる。弱い堀という評価と利益の持続性を上方再検討する。
見ておくもの
- 開発・運営対価と『その他』売上の四半期別推移、および各売上の粗利率
- 2027年8月期会社予想:売上21億円、営業利益0.30億円、純利益0.10億円の達成状況
- 2028〜2029年に投入する新作の本数・開始時期・配信後2年の課金売上
- 営業キャッシュフロー、社債・借入金の償還予定、金利、追加増資・予約権行使
- AI駆動の開発で減った制作工数と、発注者から受け取る単価・契約継続率
- 協業IPの契約延長、権利者への収益分配条件と海外課金比率
倍率と資本コストの決め方
起点は添付の株価748円・純株数254万9556株で、時価総額約19.07億円となる。10年後の売上は2026年の役務対価12.40億円とその他7.05億円を異なる数量・単価で見積もった。役務の中立数量はAIエージェント代替により0.70倍、価格は1.23倍とし、ゲームの旧作減少を新作が補う範囲を別に考えた。倍率はk9.75%、長期g1%、弱い堀のRONICから正当化PER約10.4倍で決定し、今の株価や同業のPERから逆算しない。2026年8月期の減損は現預金の床から除き、悲観では純資産と希薄化を区別した。日本基準の新リース会計で今後の貸借対照表の表示は変わり得るが、現状の地代家賃を費用とした利益で10年を比較する。
資本コスト 9.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%から基本7.5%、事業品質+0.75%、経営不振の上乗せ+1.5%として9.75%。AIエージェントによる長期縮小は別途g_longと数量・価格で数え、kの寿命に上乗せしない。