結論
バトンズは、中小企業の売り手と買い手、M&A支援機関を結ぶプラットフォームを運営する会社である。筆者の結論は「割高」だ。事業承継という長期需要と国内首位級の成約実績は評価できるが、現在の時価総額約57億円には、成功報酬の伸びと高い利益率の持続が相当に織り込まれている。
2026年3月期の売上高は20億円、営業利益は3.6億円で、売上は前年から45%増えた。ただし、成約数は805組から753組に減り、FA支援手数料を含む成約単価が99.2万円から161.1万円に上がったことが増収を支えた。案件の大型化、安全性向上、支援範囲の拡大には実力があるものの、この単価上昇を毎年繰り返せるとは考えない。
強みは、売り案件と買い手のネットワークにある。2026年6月末には買い手登録31万超、交渉可能案件1万超、累計成約3608組となった。金融機関や士業などの支援機関も利用し、取引データと案件が互いに利用価値を高めている。単なる業務ソフトとは異なり、この流通基盤を他社が短期間で再現することは難しい。
一方、M&A SaaSと買い手向け月額課金はAIエージェントによる代替を受けやすい。人が案件を検索し、財務を分析し、資料を作るための画面は、十年後には価値の中心でなくなりうる。FA支援も同様である。バトンズ自身がAIを製品に取り入れていることは好材料だが、2026年8月時点では独立したAI収益の金額が確認できず、将来の成長を確実なものとは扱えない。
五つの筋書きから求める現在の本質価値は約26.9億円で、現在の時価総額を約53%下回る。これは事業消滅の予想ではない。十年後も必要な仲介基盤であり続けながら、利用者向けの業務機能と人手による手数料収入の価値が薄まり、利益の多くが会社内に留まる場合の評価である。成約ネットワークが圧倒的な地位を築く楽観シナリオには上振れ余地があるが、その成功を今の価格で先払いする安全域は乏しい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の立場では、バトンズの魅力は成約ネットワークが自ら価値を増す仕組みにある。小規模なM&Aでは、売り手の情報を集め、買い手を探し、安心して交渉できる場所を提供するだけでも大きな価値が生まれる。売り案件と買い手が集まれば追加の広告費をかけずに取引が成立し、増分の資本効率が高まる可能性がある。
ただし、この仕組みを十年先まで確実に守れるかは別の問題である。中古品の取引ならば売り手と買い手を結ぶだけで済む場合があるが、企業の譲渡では隠れた負債、経営者保証、従業員の雇用、税務上の問題を確認する必要がある。そのため人による専門支援を増やすほど、売上は伸びても人件費と賠償リスクも増える。ネットワークの利益率を会社全体にそのまま当てはめることはできない。
最も気になるのは、稼いだ利益の使い道である。バトンズは成長のために営業、システム開発、AI、安全対策を進めている。これらが成功するなら再投資の利回りは高い。しかし、AIで代替される業務機能への投資を続ければ、帳簿上の利益や自己資本は増えても株主のための経済的価値は増えない。高いROEだけでなく、追加で投じた資金がどれだけ追加のオーナー利益を生んだかを追うべきである。
バトンズには現金があり、過大な有利子負債もない。存続のために直ちに資金調達を要する会社ではない点は評価できる。一方で、株主への還元の実績は乏しく、経営陣と大株主の判断によって利益が成長投資に使われる構造が続いている。現金を持っていることと、その現金の価値を少数株主が享受できることは同じではない。
事業そのものには将来性があるが、現在の値段に十分な安全域があるとは考えない。十年間で成約件数が増え続けるとしても、成約手数料、FA支援、SaaSのそれぞれが同時に成長する必要はない。確かな堀を持つマッチング機能に価値を払い、技術の変化にさらされる周辺収益には慎重な評価を与えることが、長期保有の判断として妥当である。
何で稼ぐ会社か
バトンズの事業は会計上、M&Aテクノロジー事業の単一セグメントである。ただし稼ぎ方は大きく異なるため、マッチング、FA支援、買い手向けソーシング支援、M&A SaaS、公共支援等に分けて考える必要がある。
マッチングは売り手が案件を掲載し、買い手が成約した際に手数料を払う仕組みである。原則として成約価額の2%を受け取り、取引規模ごとに最低料金が設けられている。2026年3月期の成約数は753組、成約時システム料の平均は約85.8万円だった。サイトに多くの売り案件が集まるほど買い手が増え、買い手が増えるほど売り手と支援機関が集まる。ここが最もプラットフォームらしい収益源である。
FA支援は、売り手の交渉や契約を人が支えるサービスである。2026年3月期の成約支援は176組、平均手数料は約320万円だった。売り手から原則5%の支援料を受け取り、サービス内容によって最低料金が異なる。案件単価が上がれば利益への寄与は大きいが、担当者の専門性と稼働が必要なため、マッチングのシステム手数料ほど容易には利益率を拡大できない。
ソーシング支援では、有料会員になった買い手が案件検索や接触を効率化する機能を利用する。2026年3月期末の利用社数は1133社で、月額平均利用料金は約2.01万円だった。成約と無関係に収益が発生する利点はあるが、人が画面を操作する機能への支払いなので、AIによる代替余地も大きい。
M&A SaaSは、金融機関、仲介会社、税理士、会計士などに対し、与信審査、決算書の読み取り、買い手候補リストの作成、顧客管理、契約関連作業などを提供する。2026年3月期の売上は4.38億円で全社の約22%を占めた。有料支援機関は1901社、月額平均利用料金は約1.79万円である。2022年に始めた金融機関向けB MASSもこの領域に属し、金融機関との接点を広げている。
残りには官公庁や自治体の事業承継支援などがある。単独では小さな収益だが、地域で売り案件を発掘し、支援機関との関係を築く意味を持つ。ただし受託業務には人件費が必要であり、プラットフォーム全体と同じ高い資本効率を期待すべきではない。
優良さと弱いところ
競争上の最大の強みは、案件、買い手、支援機関が一つの場所に集まるネットワーク効果である。バトンズは外部調査を根拠として、国内M&Aプラットフォームの成約件数、案件数、利用者数で2021〜2025年度に首位だったと説明している。特に小規模案件は大手仲介会社にとって採算が合いにくいため、ネットで幅広い案件を流通させる仕組みには独自の経済性がある。
もう一つの強みは信頼性の構築である。中小企業のM&Aでは、買い手の資金力、売り手の情報の正しさ、経営者保証の解除などを確認しなければならない。バトンズは登録時の審査、案件診断、専門家による支援、表明保証保険、決済支援を組み合わせている。利用者にとって単に安いだけのサービスよりも、取引後の問題が少ないサービスの価値は高い。
値上げの実績もある。2026年3月期は成約単価が大きく上昇し、2026年4月にはSaaSの料金体系を改定した。同年6月までの四半期では、支援機関とソーシング支援の利用者数が減る一方で、月額単価は前年同期比30〜40%程度上昇した。質を高めて価格を引き上げる戦略には一定の手応えがある。ただし成約単価には案件構成の変化も含まれ、純粋な同一商品値上げの実績として過大評価できない。
SaaSの解約率は会社開示で2.3%と低い。ただし、その計算は期中の解約会員数と月次累積会員数によるもので、一般的な年次顧客解約率と直接比較できない。独自の成約情報、買い手候補データ、低い解約率は堀の証拠だが、顧客の正式な業務記録を独占管理するシステムとまでは認められない。AIが操作画面を不要にする可能性も残るため、SaaS全体を強固な『記録の正本』とは分類しない。
資本効率は直近期に改善したものの、実績期間が短い。営業利益率は2024年3月期の8.5%、2025年3月期の3.7%から2026年3月期に18.1%へ変化した。事業の固定費が大きく、広告宣伝や採用、安全対策の費用が利益を動かす。増分投資の高い利回りが十年以上続くことはまだ証明されていない。会社全体の堀は普通とし、成約ネットワークだけが比較的強いと評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の中小M&A市場には、経営者の高齢化と後継者不在という長期の需要がある。中小企業基盤整備機構によると、2025年度の事業承継・引継ぎ支援センターの新規相談者数は2万4030者、第三者承継の成約数は2265件となり、いずれも過去最多だった。中小企業庁の登録支援機関を通じた2024年度のM&Aは、譲渡側の報告で4940件に達している。潜在的な相談需要は大きいが、実際の成約には買い手の資金、信用、専門家の支援が必要となる。
会社は中小M&A支援報酬市場を約4800億円と推計している。2026年3月期の売上20億円は、この広い市場に対して約0.4%にすぎない。ただし4800億円には大手仲介会社が受け取る高額な報酬も含まれ、小規模案件のネット仲介市場と同一ではない。成約件数についても、バトンズの753組を登録支援機関の4940件で割ると約15%になるが、年度、対象案件、重複の範囲が異なる。これは規模感を測る参考値であって、確定した市場シェアではない。
直接競争するのはTRANBIやM&Aクラウドなどのネット型サービスである。日本M&Aセンター、ストライク、M&Aキャピタルパートナーズなどの仲介会社も、より大きな案件を中心に顧客を争う。各社の同一定義による年間成約数と手数料収入は十分には開示されておらず、正確な競合別シェアは算定できない。バトンズの国内プラットフォーム首位という地位と、M&A支援市場全体での小さな取り分は分けて理解すべきである。
今後十年は、事業承継需要の増加とAIによる仲介工程の自動化が同時に進むと考える。案件概要書の作成、買い手候補の抽出、財務情報の整理は既にAIで処理できるようになっている。これは中小M&Aの取引費用を引き下げ、従来成立しなかった小規模案件を市場に呼び込む一方、業務ソフトや人手による支援の単価を押し下げる。市場の取引件数が増えても、仲介会社全体の報酬が同じ速度で増えるとは限らない。
規制はもう一つの分岐点である。2024年の中小M&Aガイドライン第3版と2025年の市場改革プランは、不適切な買い手や取引後の問題への対応を強める方向にある。厳格な審査と保険の負担は参入障壁になりうるが、審査費用が増えれば小規模案件の採算を損なう。中立では、登録支援機関を通じて把握される市場の成約規模が2036年に年間8000〜9000件程度まで広がる一方、成約一件から得られる収入には競争圧力がかかると考える。
資本政策と M&A
バトンズは2018年設立、2026年4月上場の若い会社であり、上場企業としての十年間の資本配分実績はまだない。2021〜2026年3月期の配当実績はなく、2027年3月期の配当予想もゼロである。会社が公表する事業計画には、AIを活用したM&A業務の効率化、プラットフォームの利用拡大、周辺事業への展開という方向性があるが、複数年度の売上、営業利益、ROEについて拘束力のある数値目標は確認できない。
直近の具体的な年度目標は、2027年3月期の売上高24.47億円、営業利益3.87億円、純利益約2.69億円である。これは単年度の業績予想であって中期経営計画の確約ではない。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額についても数字の約束なしである。会社は2027年3月期に採用、開発、品質管理の投資を優先しており、短期の利益最大化より成長基盤を整える方針を示している。
2026年4月と5月の上場に伴う新株発行で、自己資本は2026年3月末の約7.1億円から6月末の約9.55億円に増加した。事業買収によって急拡大した経歴は確認できず、これまでの成長は主として自社開発と支援機関との提携によるものである。今後、人材紹介などの周辺事業を買収する場合は、成約ネットワークとの相乗効果があるかを投資額に照らして厳しく評価する必要がある。
日本M&Aセンターホールディングスが大株主であり、経営陣や投資ファンドを含む上位株主への株式集中度は高い。過去五年に増配や継続的な自社株買いが確認できないため、余剰現金の株主への戻り方は0.5とする。将来の増配や自社株買いを楽観側で一部認めるものの、会社内に蓄積した現金が少数株主に額面どおり還元されるという前提にはしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
バトンズの最大の価値は、2026年時点で既に構築している買い手31万超、売り案件4.6万超の累積登録情報、累計3608組の成約実績にある。中小企業の事業承継は日本の人口構造が生み出す長期課題であり、多少景気が悪化しても需要そのものは消えない。大手のM&A仲介会社に採算が合わない小規模案件を扱えることは、従来の仲介会社との単なる価格競争から離れた独自の優位性である。
このネットワークをAIが破壊するとは限らない。AIは案件概要書の作成や買い手候補の抽出を容易にするが、実際に取引を成立させるには情報の正確性と相手方の信用が必要になる。バトンズには取引実績と独自の買い手情報があり、単なる汎用AIよりも精度の高い推薦が可能である。2026年に公開したAI-IMとAIロングリストは、汎用AIにはアクセスできない情報を使う製品であり、既存顧客の利用も広がっている。
値上げの実績も注目に値する。成約単価の上昇に加え、2026年の月額料金改定後も高単価プランへの移行が確認された。顧客が支払う対価を単なるシステム利用料から、安全性や成約可能性を含む総合的なサービス料へ変えられれば、案件の単価を高く維持できる。独自データと信頼性を備えたプラットフォームが業界標準になれば、競争相手が価格だけで顧客を奪うことは難しくなる。
現在の国内中小M&Aの件数は、潜在需要に比べればまだ小さい。登録支援機関を通じた成約件数が十年で倍以上になり、バトンズがプラットフォームとしての首位を維持すれば、年間成約数が1900組に達することも考えられる。人手の必要なFAやSaaSの伸びが限定的でも、システム手数料が利益を拡大する。この成功の可能性は無視すべきではない。
慎重な見方
バトンズの売上成長は強いが、その内訳を見ると注意が必要である。2026年3月期は成約数が減ったにもかかわらず、FA支援と大型案件による成約単価上昇で収益が伸びた。これは提供価値が高まった証拠であると同時に、高単価案件への依存が増したことも示す。小規模M&Aの流通を広げるという当初の強みが、将来的には人手による高額支援サービスへ変質する可能性がある。
AIによる置き換えは、この収益構造に直接影響する。決算書の読み取り、企業価値の概算、案件概要書の作成、買い手候補の抽出、契約書案の作成は、人間が業務システムを操作する必要性そのものを小さくする。金融機関やM&A仲介会社が独自のAIエージェントを導入すれば、従来の月額課金SaaSを継続する理由は弱くなる。FA業務でも一人の担当者が扱える案件数が増え、業界全体の人手による支援報酬には値下げ圧力がかかる。
ネットワーク効果にも限界がある。買い手と売り手が一つのサイトにしか登録できないわけではない。TRANBIやM&Aクラウドなどへ複数登録することは可能であり、プラットフォーム間で取引手数料の引き下げ競争が起きうる。AIエージェントが複数サイトを横断検索するようになれば、利用者が特定サイトの画面を訪れる必要も減る。流通基盤を保有していることは強みだが、買い手と売り手の関係を完全に独占しているわけではない。
さらに、小規模M&Aでは不適切な買い手による被害や取引後の問題が深刻である。審査を強化すれば案件数が減り、緩めれば信用事故が起きる。どちらも費用を伴う。2026年3月期の高い利益率は一期間の実績であり、厳格な審査体制を十年維持した後でも同じ採算が得られる証拠はまだない。配当や自社株買いの約束がない以上、利益が社内に積み上がること自体を株主価値の増加と同一視することもできない。
どちらに重みを置いたか
中小M&Aの需要と成約ネットワークの競争力では強い見方に説得力がある。一方、売上の約半分を構成するFA、SaaS、月額支援機能にはAI代替の影響が及び、最近の単価上昇を十年間繰り返すことはできない。中立の数量には既にAIによる縮小を反映しているため、確率では同じ理由を重ねて過度に悲観しない。下側37%、上側35%としたのは、安全性投資の負担、価格改定後の利用社数減少、少数株主への還元実績の乏しさという会社固有の不確実性による。総合的には事業継続の見込みは高いが、現在の時価総額に対する安全域は不足している。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,124 円53 億円(+ 還元の換算額還元の合計 15 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 569 円27 億円、今との差 −53.9%、 期待の年率 −0.8%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 13% | 2,481 円117 億円 | 64 円3 億円 | +106.2% | +7.6% | 331 円16 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,858 円88 億円 | 32 円2 億円 | +53.2% | +4.4% | 416 円20 億円 |
| 中立 | 28% | 1,146 円54 億円 | 0 円0 億円 | −7.2% | −0.7% | 321 円15 億円 |
| やや悲観 | 24% | 207 円10 億円 | 0 円0 億円 | −83.2% | −16.3% | 50 円2 億円 |
| 悲観 | 13% | 169 円8 億円 | 0 円0 億円 | −86.3% | −18.0% | 22 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,124 円53 億円 | 15 円1 億円 | −7.7% | −0.8% | 1,139 円54 億円 |
今の株価時価総額 1,234 円58 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 13% 成約ネットワークが業界標準として定着 利益 7 億円 · PER 15.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,481 円117 億円
小規模M&Aの市場が大きく拡大し、事業承継の相談先としてBATONZが事実上の業界標準になる。年間成約数は1900組に達する。売り案件の品質審査、表明保証保険、買い手の信用情報、専門家との連携が一体となり、他社が単なるマッチング機能を提供しても顧客を奪いにくくなる。成約時システム料は取引の大型化と信頼性への対価によって維持され、案件流通の増加が営業利益を押し上げる。
2026年に投入されたAI-IMやAIロングリストは、既存の顧客と案件データを生かして支援の品質を改善する。ただし独立したAI関連売上の金額は確認できないため、FAやSaaSがAIだけを理由に数量を増やす筋書きにはしない。FAの成約件数は現在と同じ176組にとどめ、単価だけが物価上昇と高付加価値化の範囲で上がる。ソーシング支援とSaaSも既存の数量を超えず、周辺業務の自動化による生産性向上が利益率に寄与する。
競合のTRANBIやM&Aクラウドは存続するが、バトンズの豊富な成約実績と信頼性を崩せない。大手仲介会社との関係でも、小規模案件の流通基盤として補完的な地位を確立する。大きな買収によって成長を買うのではなく、成約ネットワークと独自データへの再投資に集中する。利益の一部が株主に還元され、少数株主にも成長の成果が届く十年間となる。
- M&Aプラットフォーム・マッチング:数量 1,900(BATONZを通じた年間M&A成約組数(組・年))× 価格 0.01(1成約あたりのシステム利用料(億円・名目、FA支援料を除く))→ 売上 22 億円・営業利益 11 億円。国内中小M&Aの成約規模が年間約1.2万件まで拡大し、プラットフォーム経由の1900組を獲得。平均システム料115万円。
- 売り手向けFA支援:数量 176(年間FA支援成約案件数(組・年))× 価格 0.04(1案件あたり平均FA支援手数料(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 3 億円。人月型。成約数は現在と同数。平均手数料は物価上昇率の10年分を上限として約429万円。
- 買い手向けソーシング支援:数量 1,133(月額有料ソーシング支援社数(社))× 価格 0.00(1社あたり実効月額料金(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。席課金型。会員数1.0倍、実効月額料金1.15倍。rev_factor=12。
- M&A SaaS・B MASS:数量 1,901(月額有料M&A支援機関数(社))× 価格 0.00(1機関あたり実効月額料金(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。席課金型。利用社数1.0倍、実効単価1.15倍。AIによる効率化を利益率の改善には反映するが数量成長には使わない。
- 公共事業・その他支援:数量 5.0(年間受託案件の換算件数(件・推定))× 価格 0.16(1件あたり平均売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。公共支援契約の換算数量は横ばい、単価は約1.33倍。
倍率:k=7.25%、g_long=1%、普通の堀で超過ROEの残る割合1/2。余剰現金32億円の税後利息0.448億円を除く事業純利益は6.657億円、事業自己資本は52.5−32=20.5億円、事業ROE約32.5%。RONIC=k+0.5×(ROE−k)≈19.9%。正当化PER=(1−0.01÷RONIC)÷(0.0725−0.01)≈15.194倍。倍率の上限そのものとし、6.657×15.194+32×0.5≈117.15億円。
確率:国内首位級のプラットフォームを保ち、登録支援機関を通じたM&A市場の年間成約規模が約1.2万件へ拡大し、その中で年間1900組の成約を獲得する筋書き。案件ネットワークの拡大と品質向上の連続成功を要するため13%。
やや楽観 22% 小規模M&A市場の拡大を着実に取り込む 利益 5 億円 · PER 15.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,858 円88 億円
中小M&Aの需要が着実に増え、登録支援機関を通じた市場の年間成約規模が約1万件になる。バトンズは取引実績と支援機関のネットワークを活用して、年間1500組の成約を獲得する。市場が拡大する過程でTRANBIやM&Aクラウドも成長するが、BATONZは案件の幅と審査機能で上位の地位を維持する。
成約時システム料は、2026年からの価格改善の一部が残り、物価上昇の範囲に近い水準まで増える。ただし、FAの成約件数はAIエージェントによる資料作成や財務分析の自動化で減少する。SaaSは会員数の減少を料金改定と独自データの価値で一部補うが、かつての高い契約数成長を再現することはない。
利益率は、案件流通が増えることで固定費を吸収し、営業利益率が二割台へ改善する。経営陣は大型買収に踏み込まず、案件審査、買い手データ、AI機能の改善を優先する。上場後の資本政策も徐々に整備され、一部の利益が株主に戻る。成長を維持しながら事業構成はプラットフォーム中心へ変わっていく筋書きである。
- M&Aプラットフォーム・マッチング:数量 1,500(BATONZを通じた年間M&A成約組数(組・年))× 価格 0.01(1成約あたりのシステム利用料(億円・名目、FA支援料を除く))→ 売上 17 億円・営業利益 9 億円。年間成約1500組。平均システム料112万円、プラットフォーム首位級を維持。
- 売り手向けFA支援:数量 150(年間FA支援成約案件数(組・年))× 価格 0.04(1案件あたり平均FA支援手数料(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。成約数は現在の0.85倍、平均手数料420万円。人手の業務縮小を織り込む。
- 買い手向けソーシング支援:数量 1,080(月額有料ソーシング支援社数(社))× 価格 0.00(1社あたり実効月額料金(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。数量0.95倍、月額単価1.12倍。rev_factor=12。
- M&A SaaS・B MASS:数量 1,800(月額有料M&A支援機関数(社))× 価格 0.00(1機関あたり実効月額料金(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。数量0.95倍、単価1.13倍。AIで置き換えられる機能と独自データ機能が混在。
- 公共事業・その他支援:数量 4.5(年間受託案件の換算件数(件・推定))× 価格 0.16(1件あたり平均売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。公共支援事業の換算件数は現状比0.9倍、単価は名目で上昇。
倍率:k=7.25%、g_long=1%。余剰現金27億円の税後利息0.378億円を控除した事業純利益は4.937億円。事業自己資本は46−27=19億円、事業ROE約26.0%、超過ROEの残る割合1/2からRONIC約16.6%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)≈15.037倍。4.937×15.037+27×0.5≈87.74億円。
確率:市場の拡大に伴って年間成約1500組を確保し、値上げした利用料金の一部が長く定着する筋書き。新規案件の流入と品質管理がともに必要だが、既存の強い顧客基盤があるため22%。
中立 28% 成約数は増えるがAIで周辺収益が縮小 利益 3 億円 · PER 14.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,146 円54 億円
国内の中小M&Aは引き続き必要とされ、登録支援機関を通じた年間成約規模は約8000〜9000件へ増える。バトンズは取引ネットワークの国内上位の地位を保ち、年間成約数を1230組まで増やす。売り案件を獲得する支援機関との関係を維持し、安心安全の審査が評価されるため、成約プラットフォームとしての事業は十年後も存在する。
一方、AIエージェントは案件検索、財務資料の整理、企業価値の概算、候補企業の抽出、契約書案の作成を普及させる。FA支援の数量は現在の約0.68倍となり、成約数の減少を名目価格上昇が一部補う。ソーシング支援とSaaSの利用社数はそれぞれ約0.84倍、0.83倍に減り、単価の伸びも物価上昇を下回る。独自の顧客情報は残るが、人が画面を操作するための料金を高く維持することは難しくなる。
売上は2036年に約25億円となり、営業利益率は2026年の水準に近いところへ戻る。広告費の効率化とAIを使った省力化は進むが、審査、安全対策、専門人材への費用は継続する。配当・自社株買いによる明確な資本配分の転換はなく、利益の大部分が会社内に積み上がる。株主にとって事業は存続するが、利益の成長速度と資本効率は市場の拡大ほどには高まらない。
- M&Aプラットフォーム・マッチング:数量 1,230(BATONZを通じた年間M&A成約組数(組・年))× 価格 0.01(1成約あたりのシステム利用料(億円・名目、FA支援料を除く))→ 売上 13 億円・営業利益 6 億円。成約数は現在の1.63倍、システム料単価は1.20倍。手数料の実質価格は物価上昇率より低い伸び。
- 売り手向けFA支援:数量 120(年間FA支援成約案件数(組・年))× 価格 0.04(1案件あたり平均FA支援手数料(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。人月・工数型。数量176組から120組へ0.68倍、価格320万円から412.8万円へ1.29倍。
- 買い手向けソーシング支援:数量 950(月額有料ソーシング支援社数(社))× 価格 0.00(1社あたり実効月額料金(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。席課金型。数量0.84倍、実効単価1.08倍。AIエージェントによる横断検索の普及を反映。
- M&A SaaS・B MASS:数量 1,580(月額有料M&A支援機関数(社))× 価格 0.00(1機関あたり実効月額料金(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。席課金型。数量0.83倍、単価1.10倍。独自DBの価値は残るが、画面型ソフトの座席収入は減る。
- 公共事業・その他支援:数量 3.5(年間受託案件の換算件数(件・推定))× 価格 0.14(1件あたり平均売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。人手による公共支援の換算数量は0.70倍、名目単価は1.15倍。
倍率:k=7.25%、g_long=1%、普通の堀で残る割合1/2。余剰現金20億円の税後利息0.28億円を控除した事業純利益は3.016億円。事業自己資本は39−20=19億円、事業ROE約15.9%、RONIC約11.6%。正当化PER=(1−0.01÷RONIC)÷(0.0725−0.01)≈14.616倍を上限そのものに採用する。事業価値3.016×14.616+余剰現金20×0.5≈54.09億円。現金は半分の株主帰属価値で評価する。
確率:事業承継需要による成約数の増加と、FA・SaaS・ソーシングの業務代替が同時に進む中心シナリオ。2026年の単価上昇を永久の値決め力と見ず、ネットワークの強みを残すため28%。
やや悲観 24% 競争激化で高単価事業の収益力が衰える 利益 0 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 207 円10 億円
中小M&Aの市場そのものは存在するが、ネットプラットフォーム間の競争が厳しくなる。TRANBI、M&Aクラウド、金融機関の自社システムが案件情報を流通させ、買い手は複数のサービスから案件を選ぶ。AIエージェントが案件を横断検索することで、BATONZの画面を訪れる必要が減り、取引手数料にも値下げ圧力がかかる。年間成約数は800組にとどまり、成約単価の改善は続かない。
FA支援は資料作成や財務分析の自動化によって支援報酬が圧縮され、年間成約数も92組に減少する。買い手向けソーシング支援とM&A SaaSは顧客数が減り、料金改定だけでは成長を取り戻せない。独自データの価値は残るものの、利用者はAIで必要な情報だけを取り出し、従来の席単位の契約を減らす。
不適切な買い手や取引後の問題を防ぐため、案件審査と専門家による確認を維持しなければならない。取引件数が減っても安全管理の費用は十分には減らず、営業利益率は一桁まで低下する。経営陣は成長投資を抑制するが、大規模な株主還元には踏み切らない。事業は存続するものの、資本コストを十分に稼げない収益構造へ近づく。
- M&Aプラットフォーム・マッチング:数量 800(BATONZを通じた年間M&A成約組数(組・年))× 価格 0.01(1成約あたりのシステム利用料(億円・名目、FA支援料を除く))→ 売上 6 億円・営業利益 3 億円。成約数は現状に近いが、平均システム料は81万円へ低下。
- 売り手向けFA支援:数量 92.0(年間FA支援成約案件数(組・年))× 価格 0.04(1案件あたり平均FA支援手数料(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。成約数は0.52倍。人的支援の需要縮小と高単価案件の減少。
- 買い手向けソーシング支援:数量 760(月額有料ソーシング支援社数(社))× 価格 0.00(1社あたり実効月額料金(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。月額契約数0.67倍。AIによる直接検索で利用社数が減少。
- M&A SaaS・B MASS:数量 1,390(月額有料M&A支援機関数(社))× 価格 0.00(1機関あたり実効月額料金(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。数量は0.73倍、実効単価は約1.04倍。
- 公共事業・その他支援:数量 3.0(年間受託案件の換算件数(件・推定))× 価格 0.11(1件あたり平均売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。受託件数の減少と低価格の入札。
倍率:事業純利益は0.443−12×0.014=0.275億円、事業自己資本は24.5−12=12.5億円で事業ROE約2.2%とk7.25%を下回る。ROEが資本コスト以下のため、正当化PERの上限は1÷k=13.793倍とし、成長による超過価値を認めない。0.275×13.793+12×0.5≈9.79億円で、資産の床8億円を上回る。
確率:成約単価の伸びが止まり、安全対策費用と顧客獲得費用が増える筋書き。2026年に成約数が減少しながら価格が急上昇した事実から、案件構成への依存が高いと判断して24%。
悲観 13% 流通の主導権を失い成約支援事業が縮小 利益 0 億円 · PBR 1.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 169 円8 億円
国内の中小M&A市場は残るが、バトンズは成約プラットフォームとしての主導権を失う。競合サイトと金融機関がAIを活用した案件紹介基盤を築き、買い手と売り手がBATONZを経由せずに交渉する案件が増える。複数サイトを横断するAIエージェントが普及することで、独自画面への集客力は低下する。年間成約数は510組まで減り、手数料も下がる。
FA支援は専門家の業務自動化によって件数と単価がともに縮小する。ソーシング支援とSaaSも、外部AIや顧客自身の業務システムに機能を代替され、有料契約数を大きく失う。2026年に開発したAI機能は顧客基盤を守るには不十分で、独自の成約データが必ずしも独占的な収益につながらないことが明らかになる。
不適切な買い手への対応や法令・ガイドラインの厳格化が重なり、審査費用の増加と案件数の減少が同時に起こる。経営陣は採用を止め、システムの開発範囲を縮小し、不採算事業を撤退する。数年間の損失と資産の評価減によって、それまで蓄積した利益の一部が失われる。2036年には売上が2026年のおよそ半分、営業赤字という構造的な負けに至る。
会社の存続自体は想定するが、成長事業としての価値は大きく失われる。悲観の時価総額は過去の株価倍率ではなく、純現金と換金可能資産の価値を中心に評価する。累積損失がさらに大きくなり資産価値まで失う場合は、この床も成立しない。
- M&Aプラットフォーム・マッチング:数量 510(BATONZを通じた年間M&A成約組数(組・年))× 価格 0.01(1成約あたりのシステム利用料(億円・名目、FA支援料を除く))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。年間成約510組、平均システム料69万円。取引ネットワークの優位を喪失。
- 売り手向けFA支援:数量 75.0(年間FA支援成約案件数(組・年))× 価格 0.03(1案件あたり平均FA支援手数料(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。FA件数は0.43倍。高単価の人的支援需要が後退。
- 買い手向けソーシング支援:数量 600(月額有料ソーシング支援社数(社))× 価格 0.00(1社あたり実効月額料金(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。数量0.53倍、単価0.85倍。月額契約の縮小。
- M&A SaaS・B MASS:数量 1,050(月額有料M&A支援機関数(社))× 価格 0.00(1機関あたり実効月額料金(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。数量0.55倍、単価0.92倍。AIエージェントが主要機能を代替。
- 公共事業・その他支援:数量 2.0(年間受託案件の換算件数(件・推定))× 価格 0.13(1件あたり平均売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。公共事業の受託額減少。実質利益は残らない。
倍率:営業赤字・最終赤字であるためPER評価を用いない。悲観の資産の床は純現金約7.9億円と換金可能資産の税後価値から約8億円と評価する。PBRの分母にはSCHEMA §1-3の基準となる2026年3月期の現在の自己資本約7.1億円を使用し、8÷7.1=約1.127倍とする。7.1×1.127=約8.00億円。増資後の9.55億円や2036年の自己資本9.55億円に倍率を掛けない。この倍率が1倍を超えるのは、推定した売却可能資産の価値が現在の帳簿自己資本を上回るためであり、収益力や将来の利益留保を高く評価したものではない。中立のPBR約1.39倍を下回り、悲観の時価総額8億円はやや悲観9.79億円より低い。
確率:AIを組み込んだ他社プラットフォームや金融機関が案件流通を囲い込み、不適切取引への対応費用も重なる複合シナリオ。国内首位級の既存基盤があるため可能性は限定的だが、不可逆的なシェア喪失を13%と評価する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
M&Aプラットフォーム・マッチング
売り手と買い手を結び、成約時に買い手からシステム利用料を受領する取引プラットフォーム。AI代替型の業務ソフトではなく、独自案件と買い手ネットワークを保有する市場運営機能として評価する。
| 数量BATONZを通じた年間M&A成約組数(組・年) | 価格1成約あたりのシステム利用料(億円・名目、FA支援料を除く) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 753 | 0.01 | 6 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,230 | 0.01 | 13 | 6 |
取り方:2026年3月期決算説明資料のKPI構造では成約753組、システム料単価858千円。753×858千円=約6.46億円であり、FA支援料を含む平均成約単価1611千円とは区別する。買い手への登録料は基本無料で、成約価額の原則2%、取引規模ごとの最低料金を設定している。部門別営業利益は非開示のため、op_okuは人件費・本社共通費配賦前の推定貢献利益である。全社共通費は別途調整する。国内首位という相対順位は会社が引用する外部調査によるもので、厳密な数値シェアは非開示。市場全体の成約件数と利用率から将来数量を推定する。
売り手向けFA支援
案件診断、交渉、条件調整、契約までを専門人員が支える成功報酬型サービス。人月・工数型の要素が大きく、AIによる資料作成や分析の自動化を直接受ける。
| 数量年間FA支援成約案件数(組・年) | 価格1案件あたり平均FA支援手数料(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 176 | 0.03 | 6 | 2 |
| 10 年後 中立 | 120 | 0.04 | 5 | 1 |
取り方:事業計画のKPI構造で2026年3月期のFA支援成約数176組、平均手数料3200千円を確認。176×320万円=約5.63億円。原則として成約価額の5%を受け取り、最低50万円の部分支援と最低200万円の一貫支援などがある。部門利益は非開示であり、人件費を控除する前の貢献利益を推定。AIエージェント代替の人月・工数型として、中立の数量は10年間で約0.68倍、価格は約1.29倍とする。
買い手向けソーシング支援
買い手に案件情報の探索・接触・管理機能を月額課金で提供する。自社案件データの利用価値を持つが、利用者が検索画面を操作する機能にはAI代替圧力がかかる。
| 数量月額有料ソーシング支援社数(社) | 価格1社あたり実効月額料金(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,133 | 0.00 | 3 | 2 |
| 10 年後 中立 | 950 | 0.00 | 3 | 1 |
取り方:2026年3月期末のソーシング支援社数は1133社、開示ARPPUは月20.1千円。開示のマッチング売上6.46億円、FA支援売上5.63億円をプラットフォーム売上15.03億円から控除すると、ソーシング支援などの残余は約2.94億円となる。1133社×12カ月で割った実効単価は月約2.16万円。期末会員数と期中平均の違いやスポット課金があるため、開示ARPPUとのずれを含む推定値と明記する。AIエージェント代替の席課金型として、中立の数量は0.84倍、価格は約1.08倍とする。
M&A SaaS・B MASS
M&A支援機関向けに財務分析、与信、買い手候補抽出、顧客・案件管理などを提供する月額課金事業。独自データと解約率の低さを持つが、操作画面型SaaSとしてAI代替を強く織り込む。
| 数量月額有料M&A支援機関数(社) | 価格1機関あたり実効月額料金(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,901 | 0.00 | 4 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,580 | 0.00 | 4 | 2 |
取り方:2026年3月期のM&A SaaS売上438百万円、期末有料支援機関1901社、ARPPUは月17.9千円。438百万円÷1901社÷12カ月から実効月額約1.92万円を推計し、期中会員数やオプション収益との差を含める。2026年4月の料金改定後はARPPUが前年同期比30〜40%程度上がったが、同時に利用社数は減った。低解約率2.3%と独自取引データは確認できるものの、法定記録の正本という性格や長期にわたる移行障壁の証拠が十分でないため、記録の正本型ではなく席課金型に分類。中立の数量0.83倍、価格1.10倍、長期成長率0〜−1%相当とする。
公共事業・その他支援
官公庁、自治体、経済団体等から受託する事業承継の普及、案件発掘、地域支援事業。公共の案件獲得は信頼構築に役立つが、人が活動する部分はAIと予算制約の影響を受ける。
| 数量年間受託案件の換算件数(件・推定) | 価格1件あたり平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 0.12 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3.5 | 0.14 | 0 | 0 |
取り方:2026年3月期のその他売上61百万円を起点とする。官公庁受託と周辺サービスの内訳や契約本数は非開示。2026年8月の説明資料には長岡市、郡山市、茨城県、東京都関連の支援案件などが示されているため、代表的な年間約5件相当と仮定し、1件1220万円に換算した推計である。実契約数を示す値ではない。人手を要する公共支援として、中立の実質数量を10年で0.70倍とする。
リスクと懸念
AIエージェント代替
FA支援は人月・工数型であり、財務分析、資料作成、候補企業抽出、契約関連業務の多くがAIで処理できるようになる。ソーシング支援とM&A SaaSは席課金・操作画面型のため、AIが画面を経由せず業務を実行するほど利用者数と価格に下押し圧力がかかる。マッチング基盤には独自データと成約実績があるため同じ割合で縮小させないが、AIが競合間で案件を横断検索するようになれば手数料にも影響が及ぶ。中立の数量とg_longに影響を反映し、kの寿命で二重に引かない。
取引の健全性と不適切な買い手
中小M&Aでは、買収後の資金流出、経営者保証の解除問題、虚偽の企業情報などが取引参加者の損失につながる。バトンズは審査、保険、専門家支援を強化しているが、利用者が増えればすべての取引を完全に管理することは難しい。重大な事故が起これば、案件の登録抑制、利用者の減少、訴訟や補償、安全対策費用の増加が同時に起こりうる。ネットワークの信頼は構築に時間がかかり、一度失うと戻すのが難しい。
成約単価への依存と利益率の変動
2026年3月期は成約数が6%減った一方、FA支援を含む成約単価が62%上昇し、営業利益が急拡大した。大型案件や高付加価値支援の増加は実績だが、すべての期間で同じ案件構成になるとは限らない。年間数件の大型案件が遅れるだけでも四半期の利益が大きく動く。人件費や安全対策費が固定的に残るため、案件単価と成約数が同時に弱まる場合は、利益率が直近の高水準から急速に低下する可能性がある。
競合プラットフォームと顧客の内製化
TRANBI、M&Aクラウド、金融機関、大手仲介会社が案件流通の仕組みを改善している。売り手と買い手は複数のサービスを利用できるため、BATONZだけに取引が集まる保証はない。AIを活用した横断検索が普及すれば、個別サイトの訪問者数が減る可能性がある。銀行や仲介会社が自前のAIシステムで案件を管理するようになれば、B MASSやM&A SaaSの外部契約も減少する。競争が単価だけでなく、案件数と有料契約数に波及するリスクがある。
支配の集中と余剰現金の使い道
大株主と経営陣に株式が集中しており、少数株主が会社の資本配分を変えることは容易ではない。無配で自社株買いの実績も乏しいため、将来の利益が現金として積み上がっても、その全額が株主に戻るとは限らない。AI開発、採用、周辺事業の買収に高い価格を払えば、帳簿上の純資産が増えても一株当たりの本質価値は減りうる。現金の戻り方は0.5とし、大株主の存在だけで割引率を変更する二重計上は避ける。
人件費・投資負担と利益の再現性
2027年3月期の会社予想は増収率22%に対して営業増益率約6%であり、採用、移転、保険、安全対策などの費用負担が重い。2026年3月期の営業利益率18%が新しい平常値なのか、案件構成や費用発生時期に恵まれた水準なのかは、さらに複数年度の検証が必要である。専門人材の採用競争が続けば賃金は上がり、AI開発も継続的な費用を要する。会計上の利益だけでなく、ソフトウエア投資と顧客獲得費を差し引いた現金創出力を確認すべきである。
今後の分かれ目
- 年間成約数が1000組を超え、その後も単価を維持しながら増え続けたら
- 成約ネットワークの競争優位が強まっていると判断し、やや楽観以上の確率を増やす。売上の伸びがFA支援の大型案件だけでなく、マッチングの成約数そのものから生まれているかを確認する。
- M&A SaaSの有料支援機関数が減少から増加へ転じ、料金改定後も低い解約率を維持したら
- AI代替による席課金の縮小が想定より緩やかである証拠になる。2026年の一時的な値上げ効果ではなく、複数年度の契約数と継続収入の増加を確認できればSaaS数量と利益の見通しを上げる。
- AI-IMやAIロングリストの独立した売上・受注金額が開示され、増収の主因になったら
- AIを自社の販売可能な製品に転換した証拠として、AI関連サービスの数量見通しを再評価する。単なる利用率や導入社数ではなく、実際の売上と粗利益を確認するまでは楽観の数量成長に織り込まない。
- 成約数の減少が続き、平均成約単価も前年を下回るようになったら
- 成約件数と値決め力を同時に失っていると判断し、やや悲観・悲観側の重みを増やす。案件公開数から成約数への転換率、平均手数料、審査による案件の除外率も併せて確認する。
- 継続的な増配または自社株買いを開始し、資本配分方針に配当性向や総還元性向の数値目標を設けたら
- 少数株主への現金の戻り方を再評価する。実際の還元が継続し、所定の実績条件を満たせばexcess_cash_returnを0.75または1.0へ引き上げ、蓄積した現金の価値を上方修正する。
- 重大な不適切買収や情報管理事故が発生し、プラットフォームの利用制限や追加規制が課されたら
- 安全性が競争優位から費用負担へ変わる可能性があるため、成約件数、営業利益率、利用者数を引き下げる。補償負担や行政対応で現金が流出する場合は、悲観の資産の床も改めて計算する。
見ておくもの
- BATONZの年間成約組数と、FA支援を除いた成約時システム料単価
- 売り案件公開数、公開案件からの成約率、成約までの平均期間
- ソーシング支援社数とARPPUの推移、料金改定後の有料契約維持率
- M&A SaaS有料支援機関数、解約率、AI機能の利用率と独立売上
- 中小企業庁の登録支援機関経由の成約件数、事業承継・引継ぎ支援センターの年間成約件数
- TRANBI、M&Aクラウドなどの競合サービスの成約件数と料金体系
- 重大な取引事故、金融機関によるサービス内製化、新しいM&A関連ガイドライン
- 上場後の配当・自社株買い実績、現金残高、増分投資利益率、M&Aによる資本配分
倍率と資本コストの決め方
現在の株価1214円や時価総額約57.3億円から将来の売上・利益を逆算していない。2026年3月期の成約753組、FA176組、月額契約の支援社数と実効単価を起点に、五つの収益源の数量と価格をそれぞれ積み上げた。AIエージェント代替はFAの数量120組、SaaS1580社、ソーシング950社という中立の縮小と、十年後以降のg_long1%に反映し、資本コストの寿命や倍率に同じ縮小を重ねていない。kは7.25%、普通の堀による超過ROEの残存割合は1/2とし、楽観〜中立のPERは正当化式の上限そのものを使用した。純現金を利益倍率と重複評価せず、累積余剰現金には還元実績に基づく0.5の係数を適用した。悲観の資産の床は8億円である。床のPBR1.127倍は2026年3月期の現在の自己資本約7.1億円に掛け、7.1×1.127≈8億円となる。IPO増資後の自己資本9.55億円や十年後の自己資本9.55億円には倍率を掛けない。悲観の床が現在の自己資本より大きいのは純現金と売却可能資産を根拠とするためであり、将来の利益留保や過去の市場PBRに基づく評価ではない。2036年の五つの時価総額は楽観117.15億円、やや楽観87.74億円、中立54.09億円、やや悲観9.79億円、悲観8.00億円。資本コストによる割引と期間中の還元を合わせた確率加重の現在価値は約26.9億円で、現在の時価総額に対し約53.1%の割高という結論になる。新リース会計基準適用後は事務所の使用権資産・リース負債の表示が変わるが、筋書きの営業利益は賃借料を費用とする現在の経済的な形に揃えた。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%から基本7.5%。事業の利益変動、値決め力、純現金、寿命の調整を合計−0.25%として資本コスト7.25%。支配株主、AI投資や不祥事の個別リスクは数量・利益率・確率に表し、kには上乗せしない。