結論
Fusicは福岡を拠点に、企業や研究機関のシステム開発、AWSを中心とするクラウド運用、自社製品の販売を手掛けるIT企業である。筆者の結論は「割高」だ。クラウド利用の拡大には乗れるが、受託開発で人の工数を売る仕組みが、AIエージェントの普及によって根本から変わるためである。
同社を単純な受託開発会社と見るのも正しくない。2026年6月期の売上約24億円のうち、クロステクノロジーが約12.4億円、クラウドの運用・再販を含むMSPが約9.8億円、自社製品が約1.9億円を占める。AWSの利用量に応じた再販収入は、人月単価に頼る開発受託よりも長く伸びる余地がある。ただし、再販するクラウドの価格や取引条件を最終的に決めるのはAWS側であり、売上の大きさほど利益を独占できるわけではない。
経営陣は生成AIへの対応を急いでいる。開発工程へのAI導入、宇宙関連ソフトウェア、教育・人材分野の自社製品、買収を成長の柱とし、2028年6月期に売上50億円以上、営業利益7.5億円以上を目指している。しかし、この目標にはM&Aによる上乗せが含まれ、買収後ののれん償却などにも注意が必要だ。計画をそのまま10年先まで延長することはできない。
2026年6月期には売上が伸びながら営業利益が約8割減った。先行投資が主因とはいえ、小規模な会社では採用、開発、販促への支出が利益を大きく左右する。自社製品にも一定の顧客基盤があるが、低い解約率や継続的な値上げといった強い堀の証拠はまだ足りない。
10年後にはAWS再販の顧客数が増える一方、開発・運用の請求対象となる人の工数は減ると見る。積み上がる自己資本に見合う利益が生まれなければ、利益を会社に残すだけでは株主価値は増えない。現状の時価総額約42億円には、成長投資の成功、クラウド拡大、利益率の回復という複数の条件が既に必要であり、長く持つ株主に十分な安全域があるとは判断しない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、Fusicは変化への対応が速い技術者集団として評価できるが、10年先の利益を高い確信を持って予測できる事業ではない。顧客に必要とされるものはシステムそのものではなく、業務上の問題が解決されることだからだ。その解決手段が人の開発工数からAIエージェントへ移れば、優れた技術者を抱える会社でも、従来と同じ請求方法を続けることは難しい。
会社にとって望ましいのは、AIを使ってより多くの顧客の課題を解き、その成果に応じた報酬を受け取ることだ。そうなれば、一人当たりの生産性が上がった分を価格引き下げに全部渡さず、自社に残せる。しかし現段階で、成果報酬型の契約や自社AIエージェントによる独立した売上が大規模に成立しているという金額の証拠は不足している。技術に詳しいことと、技術の進歩から高い利益を取れることは別である。
AWS再販はもう一つの試金石になる。顧客のクラウド利用量が増えれば売上が伸びるが、その裏側ではAWSから仕入れる資源の費用も増える。クラウドの運用ノウハウが他社へ移りにくい仕組みや独自製品に結びつかなければ、再販の規模が増えても株主の利益は薄いままだ。売上の伸びより、粗利益と顧客一社当たりの獲得利益を追う必要がある。
筆者は財務の安全性を評価する一方、資本配分には慎重だ。2026年6月期の投資負担、今後の買収方針、異業種への持分投資を見る限り、積み上がった現金のすべてが株主へ戻るとは期待できない。過去に高いROEを実現した時期はあっても、利益を内部に残し続ければ分母の自己資本は大きくなる。その資本に見合う新しい利益を生まない限り、会社の規模だけが拡大する。
良い技術を持つ会社と、どんな値段でも長く保有できる株式とは異なる。評価したいのは、価格決定力、顧客が離れにくい仕組み、資本コストを超える再投資利回りが持続して初めて生まれるオーナー利益である。現状では、この三つを十分に確信できるだけの証拠がなく、安全域を厚く求める。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、顧客の課題に合わせてシステムを設計・開発するクロステクノロジーである。大学や研究機関、一般企業、宇宙関連事業者などを対象に、クラウド、データ分析、IoT、生成AIを組み合わせる。企画段階から技術者が顧客と直接話す点が特徴で、決められた仕様を単純に実装するだけの下請けとは異なる。しかし、収入の基礎に技術者の稼働と案件ごとの工数がある以上、AIによる作業の自動化から自由ではない。
第二の柱はMSPである。AWSの利用料金を顧客に請求する再販と、クラウド環境の構築後に監視、保守、障害対応、改善を引き受ける運用サービスが含まれる。会社は両者を合わせた売上を開示しており、再販と運用の内訳は公表していない。この二つは将来性が異なる。クラウドの計算資源を使う量はAI需要とともに増え得るが、定型的な監視や設定作業はAIエージェントが代替しやすい。
第三の柱は自社製品である。人事評価に使う「360」は、多面評価の実施と集計を効率化し、組織内の評価情報を蓄積する。「sigfy」は学校や保護者などをつなぐ連絡サービスで、学校側の事務を軽くする。2026年6月期の両製品の売上合計は約1.9億円にとどまるが、受託とは違い、製品を共通化できれば追加顧客に対する開発費を抑えやすい。
顧客が何に金を払っているかを区別する必要がある。クロステクノロジーでは課題を解く専門家の働きに、AWS再販ではクラウド資源の利用と支払い窓口に、運用サービスでは継続的な管理作業に対価が払われる。360とsigfyでは、操作画面と業務の流れを整えることが価値の中心になる。どの事業もITと呼べるが、AIに置き換わる速さも、価格を決められる立場も同じではない。
会社は正式な財務報告上、単一の報告セグメントとして事業を管理している。本分析では長期の経済性を見るため、開示された三つのサービス分類をさらに五つの収益源へ分けた。特にMSP内の再販と運用、自社製品二つの売上配分は分析上の推計であり、会社が実額を開示したものではない。
優良さと弱いところ
Fusicの強みは、クラウド、ソフトウェア、データ処理を横断して扱える技術者集団と、顧客の構想段階から入り込む仕事の進め方にある。AWSの上位パートナーとしての技術認定や、大学・研究機関との取引経験は、難しい案件を任せてもらううえで有利に働く。宇宙関連ソフトウェアも、顧客の専門的な業務を理解する経験が積もれば、一般的なWeb開発より切り替えにくい仕事になり得る。
ただし、その強みはまだ広い経済的な堀ではない。技術認定は競合も取得でき、AWSの再販条件をFusicだけが決められるわけではない。受託開発では担当技術者の理解が深いほど継続案件を受けやすいが、契約が終われば他社や顧客自身のAI開発環境へ移ることもできる。会社全体の解約率、契約更新率、同一サービスの継続値上げ率といった、価格決定力を示す数値も十分に確認できない。
360には導入企業の蓄積や評価データの活用余地がある。しかし、独自データがあることだけで、法令上の記録の正本や不可欠な共同利用基盤になったとは言えない。sigfyも学校に定着すれば連絡先や運用ルールの移行が面倒になるが、競合の教育・保育連絡基盤は規模が大きい。両製品とも、強い堀と認めるための複数の実証的な証拠が不足している。
2023年から2025年にかけて収益性は改善し、2025年6月期には営業利益率が約14%に達した。一方、2026年6月期には重点投資約3.4億円で利益率が約3%まで低下した。投資の成果が将来に残れば問題ないが、顧客ごとに新たな開発費が必要なら利益率の回復は長続きしない。増分の投下資本利益率を高く維持できるかどうかは、なお検証が必要である。
財務は純現金約6.2億円、自己資本約12.2億円で、有利子負債に追い詰められる状況ではない。反面、現金の一部を新規投資や持分取得に振り向ける会社であり、残高をそのまま少数株主の取り分と考えることはできない。強い財務と強い堀は別物である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は、企業の基幹システム刷新、クラウド移行、データ活用を背景に拡大してきた。添付の業界資料では2025年の市場規模を約7.5兆円とし、2030年まで名目年6%前後の成長を想定している。Fusicのクロステクノロジー売上約12.4億円は、この巨大市場の0.02%にも満たない。分野と調査時点が完全には一致しない概算だが、同社の成長機会が国内市場全体の拡大よりも、特定顧客や専門案件の獲得に左右されることを示す。
受託開発の競争相手には、NTTデータ、富士通、NEC、TIS、SCSKなどの大手と、地域の開発会社、専門領域の小規模企業がいる。大手は大規模案件、営業網、既存契約で優位に立つ。Fusicは大学・研究機関や新技術を使う比較的小回りの利く案件で差別化を図る。ただし、特定の専門領域における同社の市場シェアと競合別シェアは、比較可能な公表統計がなく確定できない。
クラウド側の追い風はより明確だ。IDC Japanに基づく公表値では国内パブリッククラウド市場は2024年に約4.1兆円で、2029年には約8.8兆円へ拡大すると予測されている。AIの学習・推論、データ保存、既存システムの移転が利用を押し上げる。しかしAWSの直接販売や、クラスメソッド、サーバーワークス、NTTデータ、IIJなどの支援事業者も同じ市場を狙う。FusicのMSP売上を市場総額で割った比率は約0.02%程度だが、再販売上とクラウド利用額を比較するため厳密な市場占有率ではない。
教育・人事分野はさらに競争が激しい。360はSmartHRなど人事関連サービスが広げる評価機能やAIによる面談・集計支援と競う。sigfyは学校・保育の連絡基盤、自治体システム、学校向けの無料・低価格サービスと競う。例えばコドモンは保育施設の広い導入網を持つが、対象施設が完全に一致しないため、その導入数を直接のシェア計算には使えない。
最大の転換は、人を増やせば売上も増えるという従来のITサービスの関係が崩れることだ。AIエージェントは設計書作成、実装、試験、保守、問い合わせ対応を連続して実行できる方向に進んでいる。顧客はシステムという成果物を欲しており、工数そのものを欲しているわけではない。会社がAIを活用して納期を短くすることは競争力になるが、顧客にとって同じ成果を安く得られるようになれば、業界全体の請求工数は縮む。Fusicが成長するには、単なるAI導入ではなく、工数以外に対価を払ってもらう仕組みを確立する必要がある。
資本政策と M&A
Fusicは上場後、成長投資を優先してきた。2021年6月期から2026年6月期まで普通配当の実績はなく、株主に継続的な現金還元を行う企業とは評価できない。自己株式の取得は小規模に行われているが、新株予約権等の影響もあり、既存株主の株数が過去5年で2%以上持続的に減るような還元実績にはなっていない。
2026年6月期の重点投資は約3.4億円で、生成AIを用いた開発環境、宇宙関連の営業活動、自社製品の強化などに充てられた。これらは事業の競争条件が変わる中で必要な投資だが、2026年6月期の営業利益は約0.8億円へ落ち込んだ。将来の成果がまだ確定しない支出を、現在の高い投下資本利益率の証拠として数えるべきではない。
会社は2028年6月期に売上50億円以上、のれん償却前の営業利益7.5億円以上を掲げている。2027年6月期の会社計画は売上約32.3億円、営業利益約2.7億円である。2028年の目標にはM&Aによる売上約10億円、利益約2.5億円程度の寄与が想定されており、買収枠も示されている。一方、配当性向、DOE、総還元性向、年間の自社株買い額については数字の約束がない。
2025年には酒造事業を営む天郷醸造所への持分投資も行った。地域での事業機会を広げる可能性はあるが、ソフトウェア事業との相乗効果は未検証である。買収の対象が広がるほど、案件の選別、のれん、投資後の経営管理に資本配分の成否が左右される。
2026年6月期末の上位10株主の保有比率は約72.8%に達する。経営の継続性には利点があるが、少数株主が余剰現金の用途を変えさせる力は弱い。上場廃止を伴うTOBやMBOの確定した計画は確認されず、買収される可能性を通常の本質価値に上乗せする根拠はない。長期価値は、事業投資が生む利益と株主へ戻る現金で判断する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
Fusicは国内IT市場全体から見れば極めて小さいため、業界シェアをわずかに獲得するだけでも規模を拡大できる。大学・研究機関や宇宙関連事業者との取引経験は、大手SI企業が標準化して売るには小さく、一般のWeb開発会社には難しい専門領域を開拓する助けになる。専門性の高い技術者が顧客の構想から運用まで関わることで、単純なプログラミングの自動化後も顧客との関係を保てる。
AWSの再販・運用には継続収入の性質がある。企業がクラウドへ移る流れに加え、AIの計算需要が増えれば、利用する計算資源そのものの金額が増える。Fusicはこの需要を大きな設備投資なしに取り込める。現在のMSP売上は10億円に満たず、再販先の法人・研究機関を数百社規模へ広げる余地はある。
生成AIを積極的に開発工程へ取り入れる判断も前向きに評価できる。小さな会社が新技術を早く習得すれば、従来は人手が足りず受けられなかった複雑な案件にも対応できる。顧客が支払う対価を工数から成果へ移すことに成功すれば、人員を比例的に増やさず売上を伸ばせる。360とsigfyも、販売や導入支援を共通化できれば追加顧客による利益が増えやすい。
会社の2028年目標は強気だが、直近には受託、MSP、自社製品のそれぞれで売上成長が見られた。財務には大きな借金がなく、成長に失敗しても直ちに資金繰りが行き詰まる構造ではない。買収対象を慎重に選び、既存顧客へクラウド運用や独自製品を重ねて販売できれば、会社全体の収益力は現在より大きくなる。こうした複数の機会を持つ点は、単純な人月開発専業より魅力的である。
慎重な見方
Fusicの収益の過半は開発受託であり、残る事業にも人が管理するクラウド運用や画面を操作する自社製品が含まれる。これはAIエージェントが最も直接的に変える領域の一つだ。設計、プログラミング、試験、運用をAIが連続してこなせるようになると、同じ仕事に必要な請求工数は減る。効率化に成功した会社が、かえって業界全体の売上単価を下げることも十分あり得る。
会社はAIを使いこなす側に立とうとしているが、競合も同じ基盤モデルや開発ツールを利用できる。特定のモデルの性能向上はFusicだけの資産ではない。大学・研究機関との関係にも強みはあるものの、顧客の予算や担当者の判断に依存し、何十年も変更できない法制度上の基盤を運営しているわけではない。
MSPの拡大にも落とし穴がある。AWSの料金を再販する売上が増えても、仕入れと販売の差額は限定される。AWSが直接販売や自動運用機能を充実させれば、再販業者の役割は小さくなり得る。クラウド移行が増えることとFusicの利益率が高まることは同義ではない。利用額に比べて取引先数、サポート費用、与信管理が増えれば、資本効率も低下する。
360とsigfyは競合の業務ソフトや学校連絡基盤と比べ規模が小さい。業務画面の操作がAIへ移れば、席数や個別機能への課金が弱くなる。自社製品が大きな利益の柱へ変わることは、まだ実績として確認できない。
2026年6月期には投資負担によって営業利益が大幅に減った。これから買収や宇宙関連開発へ資金を使うなら、専門家の採用や販促が先行し、利益が戻るまでさらに時間がかかる可能性がある。大株主の保有比率が高く、長期間配当もないため、株主が資本配分を修正させる力も弱い。成長の可能性だけを理由に高い値段を払えば、事業が存続しても投資の成果が乏しい10年になり得る。
どちらに重みを置いたか
両者の見方の違いは、クラウド利用額の成長をどれだけFusic自身の利益に変えられるかにある。技術力と純現金は評価できるが、クロステクノロジーの工数課金、MSPの再販条件、自社製品の競争力には、それぞれ価格決定力の弱さが残る。中立では既にAI代替による工数減少を織り込んでいるため、その理由だけで確率をさらに悲観へ寄せない。
やや悲観と悲観を合わせて43%、楽観とやや楽観を合わせて27%とした。下に寄せる理由は、2026年の利益減少が示した投資負担の大きさ、AWSへの取引条件上の依存、買収方針、株主還元の弱さが重なるためだ。中立の事業が維持されても、現在の時価総額に十分な安全域はないという判断になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,986 円25 億円(+ 還元の換算額還元の合計 28 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 918 円12 億円、今との差 −69.9%、 期待の年率 −4.1%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 5,005 円64 億円 | 153 円2 億円 | +69.4% | +5.5% | 464 円6 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,542 円45 億円 | 77 円1 億円 | +18.8% | +1.8% | 651 円8 億円 |
| 中立 | 30% | 2,187 円28 億円 | 0 円0 億円 | −28.2% | −3.3% | 656 円8 億円 |
| やや悲観 | 27% | 614 円8 億円 | 0 円0 億円 | −79.8% | −14.8% | 166 円2 億円 |
| 悲観 | 16% | 476 円6 億円 | 0 円0 億円 | −84.4% | −16.9% | 76 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,986 円25 億円 | 28 円0 億円 | −33.9% | −4.1% | 2,014 円26 億円 |
今の株価時価総額 3,045 円39 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% クラウド顧客が大幅に増え、高付加価値案件を維持 利益 5 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,005 円64 億円
企業や研究機関によるクラウド利用が拡大し、FusicはAWS再販契約先を約500組織へ広げる。顧客との関係が深くなり、クラウド構築後の高度な設計や安全性の確認まで任される。AWSの仕入条件は引き続き外部に依存するが、利用額の伸びが取引条件の厳しさを上回り、MSPの利益も増える。
クロステクノロジーでは、大学、宇宙関連企業、高度なデータ処理を要する顧客の仕事が続く。AIによるプログラミング工数の減少を、設計、検証、専門分野の知識で補い、請求対象となる開発規模を現在に近い水準に保つ。成果報酬型の本格的な収入が成立した証拠はまだないため、現在を超える工数の恒常的拡大には頼らない。
360とsigfyは、業務データを使った改善提案や導入支援によって解約を抑え、利用組織を概ね維持する。2028年に掲げる成長投資や買収も大きな損失を生まず、営業利益は7億円台まで伸びる。もっとも、顧客別の開発やクラウド運用を続ける必要は残り、世界的な独占製品のような価格決定力を持つわけではない。既存株主にとって最も望ましい事業の成功が重なる筋書きである。
- クロステクノロジー(受託開発・データ・AI・宇宙関連):数量 69.0(年間請求対象となる受託開発技術者の換算人数(人・フルタイム換算、推計))× 価格 0.23(技術者換算1人当たりの年間受託売上(億円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 5 億円。請求対象工数は現在とほぼ同水準で、専門案件の比率向上によって年間単価が上がる。利益率28%は高付加価値案件への転換が成功する場合。
- AWS等のクラウド利用料金再販:数量 500(クラウド利用料金の再販契約を持つ顧客組織数(社・団体、推計))× 価格 0.08(顧客1組織当たりの年間クラウド再販売上(億円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 3 億円。再販先500組織、1組織当たり年800万円。クラウド消費量と顧客基盤の双方が拡大する。
- クラウド運用・監視・保守サービス:数量 120(継続的なクラウド運用管理の年間契約数(件、推計))× 価格 0.03(運用契約1件当たりの年間売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。高度な運用支援を残し、AIによる定型作業削減の影響をほぼ相殺する。
- 360(多面評価・人材評価サービス):数量 800(年間の有料利用組織数(社・団体、推計))× 価格 0.00(利用組織1件当たりの年間平均売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。利用組織数を維持し、付加機能と導入支援で単価を小幅に上げる。
- sigfy(学校・保護者向け連絡サービス):数量 375(学校・教育機関等の年間有料利用拠点数(拠点、推計))× 価格 0.00(拠点1件当たりの年間平均売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。学校での利用を維持し、機能拡充による単価改善が進む。
倍率:2036年のROEは5.04÷50=10.1%で資本コスト8.25%を上回る。しかしAIエージェント代替とAWSの価格支配を考慮した10年より先の名目成長率g_longは0%である。したがって正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷8.25%=12.12倍が上限であり、その値を使う。余剰現金2.2億円の税後利息相当約0.0308億円を純利益から除き、株主へ戻る割合0.5を掛けた1.10億円を別途加える。
確率:AWS再販の契約先が約500組織まで拡大し、受託開発も現在に近い工数を確保するには、研究機関・宇宙関連案件の継続獲得と複数の営業投資の成功が必要となる。AIを使った新たな成果報酬事業の金額実績は十分に確認できないため、AIだけを理由に開発工数の数量を現在より増やさず、確率は9%にとどめた。
やや楽観 18% クラウドが成長し、AI時代の受託開発に適応 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,542 円45 億円
AWSを利用する企業や研究機関が増え、Fusicの再販契約先は約380組織になる。クロステクノロジーからMSPへ顧客をつなぐ営業の流れも機能する。再販の平均利用額は物価より少し弱い伸びにとどまるが、契約組織数の増加によってクラウド売上が会社の主要な収入源になる。
受託開発では、AIによる工数削減が本格化する。顧客との課題設定や高度な設計は残るものの、請求対象となる作業量は現在より減る。大学や宇宙関連の専門案件が一部を補い、開発部門の利益率は維持できる。自社製品も一定の利用基盤を守り、開発費の共通化によって黒字になる。
経営陣は成長投資を続けるが、案件の採算管理を改善し、無理な買収を避ける。2028年の高い計画目標がすべて達成されるとは限らなくても、10年後には営業利益が約5億円となる。ただし、利益を内部に積み上げるため自己資本も増え、以前の高いROEを長く維持することは難しい。
- クロステクノロジー(受託開発・データ・AI・宇宙関連):数量 60.0(年間請求対象となる受託開発技術者の換算人数(人・フルタイム換算、推計))× 価格 0.23(技術者換算1人当たりの年間受託売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 3 億円。AIによる請求工数削減で数量は現在の約0.87倍。専門性と価格改定で単価を補う。
- AWS等のクラウド利用料金再販:数量 380(クラウド利用料金の再販契約を持つ顧客組織数(社・団体、推計))× 価格 0.08(顧客1組織当たりの年間クラウド再販売上(億円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。AWS再販先380組織、年790万円。利用量は伸びるが再販利幅は薄い。
- クラウド運用・監視・保守サービス:数量 105(継続的なクラウド運用管理の年間契約数(件、推計))× 価格 0.03(運用契約1件当たりの年間売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。高度な支援を残しながらAIによって運用作業を効率化する。
- 360(多面評価・人材評価サービス):数量 740(年間の有料利用組織数(社・団体、推計))× 価格 0.00(利用組織1件当たりの年間平均売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約組織数はやや減るが、運用の共通化により黒字化する。
- sigfy(学校・保護者向け連絡サービス):数量 340(学校・教育機関等の年間有料利用拠点数(拠点、推計))× 価格 0.00(拠点1件当たりの年間平均売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。学校・教育機関で一定の利用を維持し、製品共通化で利益を確保する。
倍率:2036年ROEは3.50÷41=8.54%でk8.25%をわずかに上回るが、g_long=0%であるため正当化PERは1÷k=12.12倍となる。弱い堀の超過利益を長期の高成長として二重計上しない。全社純利益から余剰現金の税後利息約0.0308億円を引き、現在の余剰現金2.2億円のうち株主へ戻る1.10億円を別途評価する。
確率:会社のクラウド運用経験と顧客基盤を生かし、再販先を380組織へ増やす余地はある。一方、開発工数の減少を完全には避けられず、自社製品も強い正本型の堀を持たないため、売上の伸びがそのまま高いROEにつながるとは考えない。
中立 30% 受託工数は減り、クラウド再販が会社を支える 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,187 円28 億円
国内クラウド市場は成長を続け、FusicのAWS再販先は約290組織に増える。大学・研究機関や一般企業で、データ処理とAIを使うためのクラウド資源が必要とされる。再販売上は会社の中心になるが、AWSが価格と機能を決める立場は変わらず、利益率の大幅な改善にはつながらない。
クロステクノロジーはAIエージェントの普及によって仕事の形が変わる。顧客の課題定義、高度な設計、安全性の検証は人が関わり続けるが、プログラミングや試験の請求対象工数は減少する。運用サービスでも監視、設定、一次対応の多くが自動化される。技術者の生産性が上がっても、顧客がその便益を受け取るため、従来の人月売上は回復しない。
360とsigfyは一部の顧客に残る。ただし、評価の集計や連絡の操作がAIで簡素化され、販売単価は物価に追い付かない。売上全体は現在より大きくなるものの、利益率の薄い再販への依存が高まる。株主還元は限定的で自己資本が積み上がるため、ROEは資本コストを下回る。会社は存続し成長しても、株主資本を効率よく増やす力は弱くなる。
- クロステクノロジー(受託開発・データ・AI・宇宙関連):数量 47.0(年間請求対象となる受託開発技術者の換算人数(人・フルタイム換算、推計))× 価格 0.22(技術者換算1人当たりの年間受託売上(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。人月・工数型。数量47÷69.2=0.68倍、価格0.222÷0.1792=1.24倍で、AI代替による作業量の減少を明示する。
- AWS等のクラウド利用料金再販:数量 290(クラウド利用料金の再販契約を持つ顧客組織数(社・団体、推計))× 価格 0.08(顧客1組織当たりの年間クラウド再販売上(億円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。AWS再販の取引組織は290へ増える。クラウド需要の数量増を評価する一方、再販利幅の上昇は限定的。
- クラウド運用・監視・保守サービス:数量 78.0(継続的なクラウド運用管理の年間契約数(件、推計))× 価格 0.03(運用契約1件当たりの年間売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。人月・工数型。数量78÷120=0.65倍、価格1.25倍。監視・設定の自動化による請求対象作業の減少。
- 360(多面評価・人材評価サービス):数量 650(年間の有料利用組織数(社・団体、推計))× 価格 0.00(利用組織1件当たりの年間平均売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。操作画面型。数量0.81倍、価格1.09倍。評価業務の自動化と競争による価格圧力。
- sigfy(学校・保護者向け連絡サービス):数量 310(学校・教育機関等の年間有料利用拠点数(拠点、推計))× 価格 0.00(拠点1件当たりの年間平均売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。操作画面型。数量0.82倍、価格1.10倍。競合の教育プラットフォームとの競争が続く。
倍率:2036年のROEは2.07÷35.5=5.83%とk8.25%を下回る。ROEが資本コスト以下の会社では、先の再投資による超過利益を加算せず、PER上限を1÷k=12.12倍とする。g_long=0%とも整合する。全社純利益から余剰現金2.2億円の税後利息約0.0308億円を除き、0.5の戻り方を掛けた余剰現金1.10億円を別途加える。会社の過去や同業のPERを根拠にしていない。
確率:国内クラウド利用額の拡大と、Fusicの技術力を踏まえ、再販契約先は着実に増えると判断した。一方、人月・運用作業の数量はAIエージェント代替の指定範囲内で減少し、画面中心の自社製品も契約数と単価の双方に圧力がかかる。2028年の買収込みの会社計画を10年後の恒常利益として延長しない中心見通しである。
やや悲観 27% クラウドは残るが、請求工数と利益率が縮む 利益 1 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 614 円8 億円
AWSの利用そのものは増えるが、クラウド再販業者の取引条件が厳しくなる。Fusicは契約先を現在より増やすものの、AWSの直接販売や大手パートナーとの競争で、顧客一社当たりの利益が減る。再販売上の増加は人件費や販促費を吸収するほどではなく、MSP全体の採算が弱くなる。
クロステクノロジーでは、AIエージェントが設計書、実装、試験を一体で進めるようになり、請求できる工数が現在の6割弱へ減少する。大学・研究機関向けには専門的な開発が残るが、継続契約を巡る競争は強まる。顧客側がAI開発環境を内製するため、従来の案件の更新時にも単価の引き上げが難しくなる。
360は他の人事サービスへ機能が統合され、sigfyは学校・保育関連の大型プラットフォームとの競争で利用拠点を失う。自社製品の固定的な開発・サポート費も残る。買収を積極化しても大きな相乗効果は得られず、採用した人員と本社費の調整に時間がかかる。会社は黒字を維持するが、利益の大部分は今までの資本に対して小さなものとなり、配当や自社株買いへ回す余裕は乏しい。
- クロステクノロジー(受託開発・データ・AI・宇宙関連):数量 39.0(年間請求対象となる受託開発技術者の換算人数(人・フルタイム換算、推計))× 価格 0.21(技術者換算1人当たりの年間受託売上(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。請求工数は現在の0.56倍。専門領域も価格競争を受け、営業利益率が低下する。
- AWS等のクラウド利用料金再販:数量 200(クラウド利用料金の再販契約を持つ顧客組織数(社・団体、推計))× 価格 0.07(顧客1組織当たりの年間クラウド再販売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。再販先は200組織に増えるが、競合と取引条件によって利幅が4%へ縮む。
- クラウド運用・監視・保守サービス:数量 72.0(継続的なクラウド運用管理の年間契約数(件、推計))× 価格 0.02(運用契約1件当たりの年間売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。監視・運用工数の自動化が進み、残る仕事にも価格引き下げ圧力が及ぶ。
- 360(多面評価・人材評価サービス):数量 540(年間の有料利用組織数(社・団体、推計))× 価格 0.00(利用組織1件当たりの年間平均売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。他の人事システムへの機能統合で利用組織が減少する。
- sigfy(学校・保護者向け連絡サービス):数量 280(学校・教育機関等の年間有料利用拠点数(拠点、推計))× 価格 0.00(拠点1件当たりの年間平均売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。統合型の学校・保育連絡サービスに顧客を奪われる。
倍率:2036年ROEは0.58÷21=2.76%とk8.25%を大きく下回る。稼ぐ力の上限は1÷k=12.12倍だが、顧客流出と再販条件の悪化で現状利益の持続に不確実性が残るため、悲観側の稼ぐ力を10.5倍で評価する。全社純利益から現金利息約0.0308億円を除き、余剰現金は2.2億円の75%に戻り方0.5を掛けた0.825億円とする。時価総額約6.59億円は、現在の換金可能資産から求めた純現金に基づく床約6.20億円を上回る。過去の谷のPBRは参照していない。
確率:再販契約先は増えても、受託の工数課金、クラウド運用の自動化、再販条件の見直しという三つの問題が重なれば利益が薄くなる。2026年に売上拡大と利益減少が同時に起きた実績があり、費用の先行を単なる一時的な例外とは扱わない。
悲観 16% 受託開発が構造的に負け、現金と売れる資産が価値の中心となる 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 476 円6 億円
AIエージェントが受託開発の実装、試験、保守作業を大きく置き換え、Fusicの顧客の一部は内製へ移る。残るのは個別の高度な判断や専門データを扱う案件で、請求工数は現在の約3分の1となる。技術者の賃金や研究開発費を売上と同じ速さでは削れず、クロステクノロジーはほとんど利益を生まなくなる。
AWS再販は大手パートナーと直接販売の競争に負ける。クラウド利用市場全体が大きくなってもFusicの取引先は減り、再販利幅はほぼなくなる。運用管理もAIに置き換わり、必要な技術者の工数が少なくなる。売上の中心だった二つの領域が同時に弱体化する。
360とsigfyは競合サービスに機能を統合され、顧客の離反が続く。製品を維持するための最低限の開発費は残り、収益は赤字になる。過去の成長投資や異業種投資から十分な回収が得られず、経営は人員整理や縮小へ向かう。10年後の売上は現在の約半分となり、営業赤字が残る。赤字を放置せず事業を縮小し、営業債権の回収と資金流出の抑制を優先する。下値は現在の純現金を基礎とするが、強制清算や純現金を超える資金流出に陥る事態はこの事業存続の筋書きとは区別する。配当・自社株買いによる還元も行われない。
- クロステクノロジー(受託開発・データ・AI・宇宙関連):数量 23.0(年間請求対象となる受託開発技術者の換算人数(人・フルタイム換算、推計))× 価格 0.18(技術者換算1人当たりの年間受託売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。請求工数は現在の0.33倍まで縮小する。専門案件のみが残り、固定費で利益が消える。
- AWS等のクラウド利用料金再販:数量 110(クラウド利用料金の再販契約を持つ顧客組織数(社・団体、推計))× 価格 0.06(顧客1組織当たりの年間クラウド再販売上(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。直接販売と競合パートナーに顧客を失い、再販利幅はほぼ消滅する。
- クラウド運用・監視・保守サービス:数量 43.0(継続的なクラウド運用管理の年間契約数(件、推計))× 価格 0.02(運用契約1件当たりの年間売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。クラウドの監視・運用の多くが自動化され、サービス利益は失われる。
- 360(多面評価・人材評価サービス):数量 340(年間の有料利用組織数(社・団体、推計))× 価格 0.00(利用組織1件当たりの年間平均売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIを備えた統合人事システムへの置き換えが進み、製品維持費が売上を上回る。
- sigfy(学校・保護者向け連絡サービス):数量 190(学校・教育機関等の年間有料利用拠点数(拠点、推計))× 価格 0.00(拠点1件当たりの年間平均売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。学校連絡の統合サービスとの競争に敗れ、顧客と単価がともに減る。
倍率:2036年に営業赤字・純損失が残るため、永続利益へのPERは使わず、事業存続下で回収できる純資産を下値の基礎とする。直近期の自己資本約12.2億円にPBR0.51倍を当てた約6.22億円は、2026年6月期末の純現金約6.20億円を下回らない。PBRは10年後の自己資本9.8億円ではなく現在の自己資本を分母とし、過去の相場の底から取っていない。売掛金・契約資産等の回収は営業負債と精算費用に充て、余剰現金や将来利益を二重計上しない。破産に近い状態で現金が失われる筋書きではなく、費用を圧縮しながら事業を縮小する悲観である。
確率:人月受託の急減に加え、AWS再販の顧客獲得失敗、自社製品の競争劣位、買収投資の回収失敗が同時に起きる複合的な構造悪化である。財務には現金があるため直ちに倒産するとは見ないが、事業価値が縮む危険は無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
クロステクノロジー(受託開発・データ・AI・宇宙関連)
企業、大学、研究機関、宇宙関連事業者向けにシステムを開発する。工数課金の影響が大きく、AIエージェント代替の人月・工数型に分類する。
| 数量年間請求対象となる受託開発技術者の換算人数(人・フルタイム換算、推計) | 価格技術者換算1人当たりの年間受託売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 69.2 | 0.18 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 47.0 | 0.22 | 10 | 2 |
取り方:2026年6月期の会社開示でクロステクノロジー売上12.40億円、売上総利益率46.8%を確認した。数量の正式開示がないため、技術者1人当たり年約1,792万円の売上を仮定し、請求対象約69.2人相当を逆算した。全社のエンジニア約96人をそのまま使った値ではなく、受託部門の稼働換算人数である。利益0.70億円は全社営業利益0.79億円への整合を取った部門費用配賦後の推計で、開示セグメント利益ではない。市場規模は国内ITサービス約7.5兆円と比較し、数量には物価上昇を含めない。AIエージェント代替を反映した中立の10年後数量は現在の約0.68倍、価格は約1.24倍とする。
AWS等のクラウド利用料金再販
AWSなどのクラウド資源の利用料金を顧客に再販する。AIによる開発工数削減とは異なり、クラウド利用量と取引先数の増減が数量を決める。
| 数量クラウド利用料金の再販契約を持つ顧客組織数(社・団体、推計) | 価格顧客1組織当たりの年間クラウド再販売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 120 | 0.06 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 290 | 0.08 | 22 | 1 |
取り方:会社はMSP売上9.79億円を一括開示しており、再販部分の売上や再販契約数を公表していない。本分析では売上の75%に当たる7.34億円を再販、25%の2.45億円を運用サービスと仮定した。再販の売上総利益率13%、運用の売上総利益率50%なら加重平均22.25%となり、会社開示のMSP売上総利益率22.3%と整合する。顧客数を120組織と仮定した年間売上は約612万円で、開示された取引先総数とは異なる推計である。国内パブリッククラウド市場の2024年約4.1兆円、2029年約8.8兆円というIDC Japanの見通しを需要の基礎とし、Fusicの市場占有率は再販の重複計上があるため厳密には算出できない。中立では契約組織数の増加を見込むが、顧客単価は10年の物価1.34倍を下回る約1.25倍に抑える。
クラウド運用・監視・保守サービス
顧客のクラウド環境を継続監視し、障害対応、構成変更、技術支援を行う。定型作業にはAIエージェント代替が効くため人月・工数型に分類する。
| 数量継続的なクラウド運用管理の年間契約数(件、推計) | 価格運用契約1件当たりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 120 | 0.02 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 0.03 | 2 | 0 |
取り方:会社開示のMSP売上9.79億円から再販推計7.34億円を除いた2.45億円を運用管理サービスとした。契約数と平均契約単価は非開示のため、約120契約、年約204万円と仮定する。AWSの利用組織数と同数に近いのは便宜的な起点であり、両者が同一顧客集合であるとの開示はない。営業利益0.28億円も管理費の配賦による推計である。監視、一次障害対応、定型設定が自動化されるため、中立の契約作業量を現在の0.65倍とし、単価の伸びは物価を下回る約1.25倍とした。
360(多面評価・人材評価サービス)
人事評価の実施、回答収集、集計、分析を支援する自社サービス。評価情報の蓄積はあるが、強い法的正本性は確認できず、操作画面を中心とする業務ソフト型に分類する。
| 数量年間の有料利用組織数(社・団体、推計) | 価格利用組織1件当たりの年間平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 800 | 0.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 650 | 0.00 | 1 | 0 |
取り方:会社が開示するのは360とsigfyを合わせた製品売上約1.87億円、売上総利益率53.8%であり、製品別の売上、課金組織数、解約率は非開示である。360の導入実績が累計1,000組織を超えるという情報から、年間有料利用800組織、平均年12万円、売上0.96億円と仮定した。公開価格情報は契約プランや利用規模で異なり、この平均単価は公式実績ではない。累計導入と現在の継続課金数を混同しないため、数量は明示的な推計とする。商品開発・販売費を負担する初期段階として営業損失0.17億円を推計した。解約率5%未満、年単位の制度移行、継続値上げ実績など二つ以上の堀の証拠がないため、AIエージェント代替に対する例外的な正本型にはしない。中立は数量0.81倍、単価1.09倍とする。
sigfy(学校・保護者向け連絡サービス)
学校や教育関連組織と保護者の連絡を電子化する。現場の連絡網として一定の切替負担はあるが、AIによる操作や競合の統合製品に置き換わり得る業務ソフト型とする。
| 数量学校・教育機関等の年間有料利用拠点数(拠点、推計) | 価格拠点1件当たりの年間平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 380 | 0.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 310 | 0.00 | 1 | 0 |
取り方:sigfyの利用者規模約24万人という公表情報と、公開料金の一例である月額1万9,800円を起点にした。1拠点当たり約630人と仮定すると約380拠点となり、年約24万円の売上で0.91億円となる。自治体契約、初期費用、利用規模による価格差があるため、契約数と売上は推計である。360と合計した売上は会社開示の製品部門約1.87億円と一致する。製品再構築への投資を反映して営業損失0.20億円を配賦した。学校連絡市場ではコドモンなど規模の大きい競合がいるが、学校と保育施設では対象市場が異なるため、単純な導入拠点数の比で市場占有率を断定しない。中立の数量は現在の0.82倍、単価は1.10倍とする。
リスクと懸念
AIエージェント代替による工数課金の縮小
クロステクノロジーはシステムの設計、実装、試験などの工数を収益化する性格が強い。AIエージェントがこれらの作業を連続して処理できれば、同じ成果物に必要な請求工数は減少する。クラウド運用の監視や設定も自動化の対象である。Fusic自身がAIを使いこなしても、顧客が受ける効率化の恩恵を売上へ転換できなければ、会社の利益は減る。
AWS再販の仕入条件と薄い利益率
AWS再販はクラウド利用市場の成長に乗れるが、価格体系やパートナー条件を最終的に決めるのはAWS側である。クラウド資源の利用額が増えても、Fusicに残るのは原価を差し引いた利益であり、売上総額が伸びたことだけでは価値は増えない。AWSの直接販売や大手パートナーによる顧客獲得が強まれば、同社の立場はさらに弱くなる。
先行投資の回収と買収による資本効率の低下
2026年6月期には約3.4億円の重点投資が利益を大きく押し下げた。生成AI対応、宇宙関連、製品再構築、買収はそれぞれ別の能力を必要とし、全てが高い投下資本利益率を生むとは限らない。2028年の計画にはM&Aによる成長が含まれるため、買収価格、のれん償却、人員の定着、既存顧客との相乗効果を区別して見る必要がある。
360とsigfyの競争優位が十分に実証されていない
360には導入実績と評価情報の蓄積があり、sigfyには学校の連絡業務に入り込む強みがある。しかし、開示された低解約率や法令上の記録の正本性、継続的な値上げ実績など、強い堀を確認するための証拠は限られる。人事システムや学校向けサービスの競合がAI機能を統合すれば、操作画面を中心とする製品の単価と契約数が同時に減る可能性がある。
大株主への集中と現金の株主還元
上位10株主に約72.8%の株式が集中し、少数株主が現金の用途に影響を与える力は小さい。過去に配当実績はなく、大規模な株数減少を伴う自社株買いも確認できない。現金や利益が研究開発、買収、異業種持分投資へ再投資されれば、帳簿上の自己資本は増えても株主が自由に受け取れる現金は増えない可能性がある。余剰現金を額面どおり株主価値に加えるのは危険である。
人材・顧客集中と小規模企業の費用変動
専門的な技術を売る会社では、技術者の採用と定着、主要顧客との関係、案件管理の質が業績を大きく左右する。Fusicは大手ITサービス会社より事業規模が小さく、数件の大型案件や重点投資のタイミングによって利益率が変わりやすい。宇宙関連や研究開発案件では顧客の予算や事業計画が変更されることもあり、長期の売上を現在の受注や顧客数から直線的に予測することはできない。
今後の分かれ目
- クロステクノロジーで工数課金に代わる成果報酬型の売上が金額付きで開示され、継続案件で利益率改善が確認できたら
- AI代替に伴う請求工数の縮小を一部相殺できるため、開発部門の数量・価格の筋書きを上方修正する。単なるAIツール利用率の上昇だけでは評価を変えない。
- AWS再販の顧客組織数と粗利益額が継続的に増え、再販の実質的な利益率も維持されたら
- クラウド市場の拡大を自社の利益に変えられている証拠となる。楽観側の確率とMSPの利益率を上方修正する。売上だけが増え、粗利益率が低下する場合は評価しない。
- 2028年6月期の売上50億円以上、のれん償却前営業利益7.5億円以上の達成状況が開示されたら
- 既存事業の成長と買収寄与を分離し、のれん償却後の利益、買収対価、追加投資額を確認する。買収後のROICが資本コストを超える場合に限り中立価値を引き上げる。
- 360とsigfyの継続課金顧客数、年間解約率、顧客単価が開示され、低解約率と値上げの両方が確認できたら
- 自社製品の堀を再評価する。さらに移行に年単位を要する実績や独自データの不可欠性が確認できた部分に限って、記録の正本に近い分類への変更を検討する。
- 配当の開始や継続的な増配、発行済株数を実質的に減らす自社株買いが実行されたら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.5から見直す。利益を内部に残すだけの場合と比べて既存株主が享受する価値は増えるが、投資による将来利益の変化も同時に確認する。
- 2027年以降、営業利益率が回復せず、研究開発・採用・買収関連費用だけが増え続けたら
- 先行投資が将来の高収益事業へ結びついていないと判断し、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。売上成長が続いても、増分のROICが資本コスト以下なら本質価値を増やさない。
見ておくもの
- クロステクノロジーの売上、技術者当たり売上、請求対象工数の変化
- MSPのAWS再販売上と運用サービス売上の内訳、売上総利益額、顧客数
- 360とsigfyの有料利用契約数、解約率、顧客単価、製品別営業利益
- 2028年6月期の中期目標に対する既存事業とM&A寄与の実績
- AIエージェントを独立して販売した売上、成果報酬型契約の金額
- 大株主の持株比率、発行済株数から自己株式を引いた株数、配当・自社株買いの実績
- 現預金、契約資産、未収債権、買収持分投資の増減と回収可能性
倍率と資本コストの決め方
2026年10月22日の株価3,275円と自己株式控除後1,283,240株から現在の時価総額は約42.03億円となるが、各筋書きの数量と価格、利益率、倍率はこの時価総額から逆算していない。クロステクノロジーとMSP運用はAIエージェント代替による中立数量の縮小、自社製品は画面中心の課金に対する価格圧力、AWS再販はクラウド需要の拡大と薄い利幅をそれぞれ分けた。長期名目成長率0%、資本コスト8.25%による正当化PERの上限は12.12倍である。悲観側は10年後の積み上がった自己資本を床にせず、直近の純現金約6.20億円と営業負債を賄う営業債権の回収可能性を基礎にした。余剰現金の戻り方0.5、潜在株式による既存株主の取り分0.983も別に考慮する。物価年3%、国債3%、ドル円150円を固定し、今後のリース会計変更による表示上の利益・負債の変化を実質的な価値増加とは扱わない。5つの筋書きの会社全体の時価総額と期間還元を割り引いた価値は、現在の時価総額を大幅に下回り、結論は割高となる。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、収益の振れ、弱い値決め力、純現金を反映したquality+0.75%を加えた。個別のM&A失敗やAI代替リスクについて追加の上乗せは設けず、数量・価格・利益率と長期成長率、筋書きの確率に反映した。