結論
モバイルファクトリーは、駅を訪ねた記録を遊びに変える位置情報ゲーム「駅メモ!」を収益の柱とする会社だ。筆者の結論は「割安」である。現在の時価総額約70億円に対し、10年後の利益と株主還元を割り引いた価値は約93億円となる。ただし、堀が非常に深いから割安なのではなく、すでに実証された収益力と、現金を株主に返す姿勢が値段を支えているからだ。
2014年に生まれた主力ゲームは2026年に12周年を迎え、足元では新たな課金商品、他の作品との連携、アプリ外での決済によって利益を増やしている。2026年9月までの累計営業利益は前年同期比で増え、位置ゲームは新作がなくても稼げることを示した。他方、モバイルゲームへの売上依存は約9割に達する。駅を巡る文化と訪問履歴は模倣しにくいが、利用者が他のゲームも遊べないわけではない。
10年後も位置情報を使った娯楽は残ると考える。だが、「駅メモ!」が22年目にも今の熱量を保つかは別の問いだ。人口の減少、競合作品の進化、料金引き上げの難しさを中立に織り込み、売上が大きく伸びるとは見ていない。過去のデジタル資産事業への投資失敗を踏まえ、未実現の新規事業にも高い価値を与えない。それでも配当と自社株買いを含めた取り分を数えると一定の安全域が残る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、問うべきは高い営業利益率が見かけだけでないか、そして稼いだ利益を株主が実際に受け取れるかだ。モバイルファクトリーには大きな工場がない。新たな駅やキャラクター、イベントを作る費用は必要でも、建物や機械を頻繁に買い替える会社より利益を現金に変えやすい。位置情報を使う娯楽が続き、既存客との関係を丁寧に維持できれば、営業利益率の高さはオーナー利益につながる。
ただし、この会社を一生持てる独占企業だと考えるのは危険だ。利用者の訪問記録は愛着を生むが、サービスを選ぶ理由そのものは気分と余暇に左右される。主力ゲームの歴史が20年を超えた先の利用者数は読みづらい。ゲーム開発をAIで安くできても、他社も同じ技術を利用できる。競争が激しくなるほど、値上げよりも企画の追加に利益を使うことになる。
資本配分にも注文がある。2021年の高いEBITDA目標の未達を忘れず、成長事業を作るためだけの買収に資本を振り向けないことである。株数を減らし、配当を積み重ねるという現在の方針は、再投資の利回りが読めない会社に適している。10年の利益が横ばいでも価値が残る点は魅力だが、安全域の大部分は還元が約束どおり実行されることを前提としている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの大半はモバイルゲーム事業だ。「駅メモ!」「駅メモ! Our Rails」は、スマートフォンの位置情報から実際の駅への訪問を記録し、キャラクターの育成やイベント参加を楽しんでもらう。旅に出る動機をつくり、旅行の思い出が次の課金につながる仕組みである。収入は利用者が支払うゲーム内商品、期間限定の企画、各種パスなどから生まれる。鉄道会社や自治体との催しは独自性を強めるが、運賃を受け取る鉄道事業ではない。
2025年のモバイルゲーム売上は約31.73億円で、全社の約93%を占めた。2026年には新商品と他の知的財産との連携が売上を押し上げ、外部決済の利用拡大も収益性に寄与した。利用者総数、課金者数、実際の平均課金額は十分に公表されていないため、数量は「年に換算した課金者当量」、価格は「その当量一人が年に支払う額」で推定する。これは利用者を実測した数字ではなく、将来の客数と客単価を分けて考えるための物差しだ。
残るコンテンツ事業は、着信音や音楽関連などの携帯電話向け有料コンテンツを扱う。2025年の売上は約2.53億円。月額課金という継続性は強みだが、スマートフォンの標準機能や配信サービスの普及で利用会員数は減少している。2026年の減収もその延長線上にある。一方で追加開発費を抑えた運営ができ、売上規模の割に利益率は高い。2023年に買収したSuishowを含む新規領域は、現時点で継続的な売上を評価できる柱ではない。
優良さと弱いところ
強さの中心は、旅行の履歴とゲーム内の収集物が長い時間をかけて積み上がることだ。訪れた駅を記録し、キャラクターを育てた利用者は、別の作品へ移ると同じ思い出を持ち出せない。実際に12年間サービスを続け、2026年にも主力事業の売上と利益を増やしたことは、単なる一時的な流行ではないという証拠になる。地元の鉄道会社や自治体との協働も、作品と現実の移動を結びつける資産だ。
それでも堀は「普通」と評価する。利用者には乗り換えの手間があるが、同時に「Pokémon GO」や「ドラゴンクエストウォーク」を楽しむことはできる。高額な値上げを継続して通した実績は確認できず、配信基盤と決済条件はAppleやGoogleなど外部に握られる。アプリ外決済の普及は利益率を上げても、競争相手が同じ手段を採れば恒久的な独占利益にはならない。
資本効率は目立って高い。2025年の営業利益率は約33%で、過去10年に営業赤字はない。純現金を持ち、設備の更新投資も重い工場型事業ではない。だが2023年の純利益は新領域への投資に伴う費用などでほぼゼロとなり、2025年にも税効果の一時費用で最終利益が目減りした。高い営業利益率と株主が受け取る利益は、必ずしも同じではない。経営の失敗を含めて10年の持続力を測る必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の位置情報ゲームは、成長著しいスマートフォン娯楽の中でも、実際に街へ出ることを遊びの条件とする独特の領域だ。Sensor Towerは2023年の国内位置情報ゲーム市場を6億ドル超と推計した。為替を今回の共通前提である1ドル150円で換算すると、年900億円を上回る参考市場となる。ただし、これは当時のアプリ内購入などを中心とする集計であり、2025年の実測額でも「駅メモ!」の会計上の売上と完全に同じ土俵でもない。
競争相手として「ドラゴンクエストウォーク」「Pokémon GO」「モンスターハンターNow」「ピクミン ブルーム」がある。2023年のSensor Tower推計では「ドラゴンクエストウォーク」が約3億ドルと同市場の半分近くを占め、「駅メモ!」は国内売上順位4位だった。2025年にも前者は位置情報ゲームの収益首位を維持し、強い競争相手であり続けている。同社のモバイルゲーム売上を市場900億円に単純に比べると約3.5%だが、これは店舗での課金総額と会社の売上計上の違いを含む参考比率にすぎない。厳密なシェアや競合各社の最新シェアは公開資料だけでは確認できない。
10年後に市場全体が消えるとは見ない。旅行の記録、観光促進、イベントに価値を感じる人は残る。物価上昇を含む市場の名目規模が大きくなっても、客の可処分時間は有限だ。新作の広告費や既存の人気作品によって、古い作品が新しい客を得る難度は高まる。中立では国内位置情報ゲーム市場を約1250億円とする一方、「駅メモ!」の参考シェアは3.5%程度から2.7%程度へ下がると考える。コンテンツ事業の月額課金はさらに成熟した市場であり、会員数が減る前提を外さない。
資本政策と M&A
資本政策には改善と失敗が混在する。2021年に公表した2021〜2025年の中期計画は、デジタル資産の「ユニマ」を育てて2025年のEBITDAを30億円にするというものだった。実績は約11.2億円で、大きく届かなかった。ブロックチェーン領域からの撤退、Suishow買収後の損失や訴訟は、成長投資の利回りを厳しく点検すべき理由である。2026年10月の和解で見込まれる特別利益は継続収益に数えない。
現在の株主還元方針は具体的だ。総還元性向60%を目標とし、累進配当を前提に配当性向40%以上または自己資本配当率(DOE)7%以上の高いほうを払い、残りを機動的な自社株買いに充てる。2026年には約8億円の自社株買いを実施し、自己株式の消却も行った。ROE20%以上を安定させる目標も掲げる。2026年に示した資金配分は、資金約30億円を成長投資14億円、還元5億円、必要資金11億円に振り分ける考え方であり、投資の実行額や利回りを保証するものではない。今後10年の売上や営業利益を保証する数値計画は確認できない。
2026年からは一定条件を満たす長期保有者へ年2万円相当のデジタルギフトを贈る優待も始まった。対象者数が非開示のため、10年の還元には仮に500人分として年0.1億円程度を含めた。優待費用は利益率にも含む前提で、二重に利益を足さない。手元現金を還元する実績は評価するが、過去の買収投資の再発には安全域を求めたい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
「駅メモ!」は、新作のヒットを毎年当てなければ生き残れないゲームではない。旅の足跡という独自の遊びを長く提供し、2014年から12年後の2026年にも過去最高水準の収益を出している。既存利用者の蓄積に加え、鉄道・地域と結んだ企画が観光と地域振興の需要を拾える。ユーザーが自分の移動に意味を見つける仕組みは、画面上のキャラクターを増やすだけのゲームよりも模倣が難しい。日本の鉄道網がある限り、旅行の記録を残したい人は絶えない。
今後、外部決済の普及やAIを使った開発の効率化が定着すれば、売上が少し増えるだけでも利益が大きく伸びる可能性がある。過去に失敗した新規事業へ再び巨額の資本を投じず、主力への小さな追加投資と株主還元を続けるなら、稼いだ現金は実際に保有者へ届く。2026年の大幅な自社株買いと配当方針の明確化は、その姿勢が言葉だけではないことを示した。厚い財務が長期運営を支えるため、競合が新作を出しても急に資金繰りが悪化する確率は小さい。
位置情報ゲームの市場規模が名目で拡大し、会社が参考シェアを大きく失わなければ、課金者と課金額の両方が伸びる。新しい大型作品が当たらなくても、既存作品の長寿化だけで投資額に見合う利益が得られる。さらに、株主還元を通じて過剰な自己資本が減るほど、事業の資本効率の高さが見えやすくなる。
慎重な見方
収益が一作品に集中した企業の10年先は、現在の利益率からはわからない。「駅メモ!」は12年続いたが、2036年には22年目だ。熱心な古参利用者が残っても、新たな世代が同じ鉄道旅行のゲームを選ぶ保証はない。競争相手の「ドラゴンクエストウォーク」や「Pokémon GO」は大きな知的財産と利用者基盤を持ち、新しいイベントや周辺機能を継続的に投入できる。両方のゲームを同時に遊べる以上、利用者に独占的な囲い込みがあるわけでもない。
会社は過去に「ユニマ」を柱に据え、2025年のEBITDA30億円を目指したが、実績はその半分にも届かなかった。Suishowを巡る投資と訴訟も、経営陣が新領域を見極める能力に疑問を残す。2026年の和解から生じる特別利益は将来繰り返されない。事業を救うはずの次の買収が同じ失敗を繰り返せば、現金の厚さはすぐに薄くなる。
もう一つの問題は、累進配当や高いDOEを約束したことである。業績が落ちても支払いを維持すれば内部資金が減り、新作を作る余力も細る。配当を減らせば、資本政策への信用が失われる。アプリ外決済による手数料の改善も、プラットフォームの規約変更や競合の追随で長続きしないかもしれない。単一作品に値上げ力や永続的な超過成長を認めるのは早計だ。
どちらに重みを置いたか
中立より下の確率を39%、上を27%とし、慎重側に12ポイント寄せた。下に寄せる理由は、モバイルゲーム売上が全社の約9割に集中し、2021年の新領域の中期目標が未達だったという、この会社に固有の事実だ。ただし、駅を巡る体験の12年の継続力と、2026年の具体的な株主還元は無視できない。収益を縮める筋書きに相応の重みを与えても、確率加重の現在価値は約93億円と、時価総額約70億円を上回る。結論は割安だが、一本足の事業に永久保有を約束できるほどの堀があるとは判断しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,798 円117 億円(+ 還元の換算額還元の合計 685 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 1,430 円93 億円、今との差 +33.9%、 期待の年率 +10.6%(資本コスト 6.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,960 円257 億円 | 1,069 円69 億円 | +370.9% | +20.0% | 453 円29 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,951 円192 億円 | 889 円58 億円 | +259.5% | +16.3% | 691 円45 億円 |
| 中立 | 34% | 1,982 円129 億円 | 722 円47 億円 | +153.2% | +11.7% | 920 円60 億円 |
| やや悲観 | 25% | 782 円51 億円 | 561 円36 億円 | +25.7% | +3.0% | 336 円22 億円 |
| 悲観 | 14% | 293 円19 億円 | 308 円20 億円 | −43.8% | −7.2% | 84 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,798 円117 億円 | 685 円44 億円 | +132.5% | +10.6% | 2,483 円161 億円 |
今の株価時価総額 1,068 円69 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 旅行と課金がともに増える 利益 15 億円 · PER 16.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,960 円257 億円
駅と訪問履歴の関係が旅行者に定着し、全国の鉄道会社・自治体との企画が新規利用者を呼び込む。観光需要と位置情報ゲーム市場の広がりに乗り、2036年の国内関連市場は名目約1800億円に達する。『駅メモ!』はアプリ外課金による費用削減を続け、独自商品や定額パスで課金者当量が現在を大きく上回る。人気の競合作品が並ぶ中でも参考シェアを約3.3%に維持する。23年目に向かうゲームとしては極めて良い姿だ。
コンテンツ課金は縮小するものの、古い会員を大切にして高い利益率を維持する。経営陣は過去のNFT関連投資で学んだ規律を守り、大型買収で利益を失わない。開発のAI活用は制作費の効率化として現れ、未証明のAI新製品の収益は見込まない。増えたキャッシュは配当と自社株買いに回り、事業の成長と株主の取り分が両立する。
- モバイルゲーム(駅メモ!など):数量 17.2(年換算の課金者当量(万人・公表課金者数ではない推定))× 価格 3.48(課金者当量1人当たり年間売上(万円・名目、店頭/外部課金合算))→ 売上 60 億円・営業利益 20 億円。課金者当量が12万人から17.2万人へ増加。客単価は物価程度に上がり、国内位置情報市場1800億円に対する参考比率は約3.3%。
- モバイルコンテンツ(着信音・音楽関連):数量 6.0(年換算の有料会員当量(万人・公表会員数ではない推定))× 価格 0.35(有料会員当量1人当たり年間売上(万円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。成熟会員は減るが、値上げと低コスト運営により利益を維持する。
倍率:現在の市場PERは使わない。余剰現金17.0億円の税後利息1.4%を控除した事業純利益14.66億円、事業自己資本52.80億円、事業ROE27.8%を用いる。k6.75%、moat=normalの超過利益残存割合1/2からRONIC17.3%。2036年以降の名目g_long1.0%とし、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=16.38倍。上限を手で割り引かず、事業利益×PER+余剰現金×戻り方1.0で株式価値を求める。
確率:鉄道・自治体との連携が全国に広がり、22年目でも課金者が増え続け、競争相手にシェアを奪われない強い条件が必要なため9%に限る。
やや楽観 18% 長寿IPの収益が着実に拡大 利益 11 億円 · PER 16.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,951 円192 億円
位置情報で遊ぶ文化は全国の観光と結びつき、国内関連市場は名目約1550億円へ大きくなる。『駅メモ!』は競合の有力作品に押されながらも利用者を少しずつ増やし、課金者当量は14万人に達する。アプリ外決済の普及と新商品で、一人当たりの年間支出も増える。参考シェアは約3.0%となり、急な独走ではなく長年の利用者を保った結果として増収する。
コンテンツの会員減少は避けられないが、着信音を使い続ける固定客から収益が残る。収益を大きな新規買収に使うのではなく、イベント制作、ゲーム内機能、株主還元に振り向ける。これまでの失敗を繰り返さず、利益率が現状に近い水準を保つため、ROEも資本コストを大きく上回る。利用者の定着が数字にも表れる。
- モバイルゲーム(駅メモ!など):数量 14.0(年換算の課金者当量(万人・公表課金者数ではない推定))× 価格 3.27(課金者当量1人当たり年間売上(万円・名目、店頭/外部課金合算))→ 売上 46 億円・営業利益 15 億円。課金者当量14万人、単価3.27万円。国内関連市場1550億円に対し参考シェアは約3.0%。
- モバイルコンテンツ(着信音・音楽関連):数量 5.5(年換算の有料会員当量(万人・公表会員数ではない推定))× 価格 0.34(有料会員当量1人当たり年間売上(万円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。残存する課金会員へ緩やかに値上げを実施し、高い利益率を保つ。
倍率:現在の市場PERは使わない。余剰現金15.0億円の税後利息1.4%を控除した事業純利益10.89億円、事業自己資本47.50億円、事業ROE22.9%を用いる。k6.75%、moat=normalの超過利益残存割合1/2からRONIC14.8%。2036年以降の名目g_long1.0%とし、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=16.22倍。上限を手で割り引かず、事業利益×PER+余剰現金×戻り方1.0で株式価値を求める。
確率:既存客の継続利用と観光連携が強みになり、地域の新客獲得とアプリ外決済の効率化が続く現実的な上振れとして18%。
中立 34% 主力は残るが課金者が少し減る 利益 8 億円 · PER 15.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,982 円129 億円
2036年にも鉄道を訪ねる楽しさは残り、位置情報ゲーム市場は名目約1250億円に広がる。ただし『駅メモ!』は22年目を迎え、新規の若い利用者を増やすのが難しくなる。古参の利用者と沿線の連携企画が継続課金を支える一方、課金者当量は約11万人へやや減る。物価が上がる10年でも競合と家計負担を考えれば、実質的な値上げは難しい。年間の課金単価は増えるが物価上昇より遅く、参考シェアは約2.7%へ縮小する。
古いコンテンツの会員は半数程度まで減り、全社の売上と営業利益は今とほぼ同じ水準に収まる。外部決済の効率化と制作費の上昇はおおむね相殺する。経営は未検証の大型買収を行わず、利益の約6割を配当と自社株買いに回す。それでも利益の一部が自己資本に積もるため、全社ROEは過去10年の中央値より低くなる。
- モバイルゲーム(駅メモ!など):数量 11.0(年換算の課金者当量(万人・公表課金者数ではない推定))× 価格 3.04(課金者当量1人当たり年間売上(万円・名目、店頭/外部課金合算))→ 売上 33 億円・営業利益 10 億円。数量は12万→11万当量、価格は2.644万→3.04万円。物価1.34倍より低い値上げで、国内市場1250億円に対する参考比率は2.7%。
- モバイルコンテンツ(着信音・音楽関連):数量 4.1(年換算の有料会員当量(万人・公表会員数ではない推定))× 価格 0.34(有料会員当量1人当たり年間売上(万円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。有料会員当量は9万→4.1万人に減る。価格は実質下落し、減員率を優先して利益を積む。
倍率:現在の市場PERは使わない。余剰現金12.0億円の税後利息1.4%を控除した事業純利益7.33億円、事業自己資本43.30億円、事業ROE16.9%を用いる。k6.75%、moat=normalの超過利益残存割合1/2からRONIC11.8%。2036年以降の名目g_long1.0%とし、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=15.92倍。上限を手で割り引かず、事業利益×PER+余剰現金×戻り方1.0で株式価値を求める。
確率:2026年の増益は実績として認める一方、22年目のゲームが人口減少や新作競争で課金者を微減させる蓋然性が最も高いため34%。
やや悲観 25% 主力の熱が冷め、利益率が落ちる 利益 4 億円 · PER 11.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 782 円51 億円
『駅メモ!』の常連客は残るが、新規利用者の獲得が鈍って課金者当量は8.2万人まで減る。位置情報ゲームの国内市場自体は名目約1100億円に保たれるものの、大手作品のイベントや広い知的財産群が利用者の時間を奪う。参考シェアは約2.1%となる。新たな課金パスやキャラクター販売を続けても大幅な値上げはできず、開発費や販促費を負担するほど営業利益率は落ちる。
着信音などの会員課金も一段と縮小する。会社は2021年のデジタル資産投資のような大規模な賭けを避けても、既存のゲームを立て直す広告や制作にお金を使わざるを得ない。累進配当は初期には維持するが、自社株買いを減らして手元の流動性を守る。総還元性向の目標は平常時より厳しくなる。
- モバイルゲーム(駅メモ!など):数量 8.2(年換算の課金者当量(万人・公表課金者数ではない推定))× 価格 2.88(課金者当量1人当たり年間売上(万円・名目、店頭/外部課金合算))→ 売上 24 億円・営業利益 5 億円。課金者当量8.2万人、単価2.88万円。市場名目1100億円に対する参考比率約2.1%、販促負担で利益率23%。
- モバイルコンテンツ(着信音・音楽関連):数量 2.6(年換算の有料会員当量(万人・公表会員数ではない推定))× 価格 0.34(有料会員当量1人当たり年間売上(万円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。会員当量は2025年から7割減となり、固定費負担が重くなる。
倍率:主力への依存度が高いまま利用者を失い、2036年事業ROEは約9.6%まで低下する。k6.75%を上回るが超過利益は薄い。これはやや悲観の構造劣化であり、稼ぐ力を保守的に11.0倍として評価する。純利益4.0億円から余剰現金8.0億円の利息0.112億円を除く。筋書きで余剰現金8億円を明示しているため、戻り方は全社共通の1.0を適用し、事業利益3.888億円×11.0倍+余剰現金8.0億円=50.768億円とする。
確率:新しい人気位置ゲームに利用時間を奪われ、既存作品の利用者が減る事態を十分に現実的と評価して25%。下に寄せる理由:一つのIPが売上の約9割であり、代替する新事業の実績がまだない。
悲観 14% 駅メモ!が構造的に競争力を失う 利益 1 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 293 円19 億円
有力な新作位置情報ゲームと旅行サービスが広がり、『駅メモ!』を生活の中で遊ぶ客が減る。位置ゲーム全体は名目約900億円を残しても同社の参考シェアは約1.3%へ落ち、課金者当量は2025年の半分以下となる。値上げで利用者の減少を埋められず、固定の企画・運営費が利益を圧迫する。コンテンツ事業も古い携帯向け料金契約がほぼ消え、わずかな利益を残すだけとなる。
経営は業績を補おうとして新領域へ投資するが、採算を十分に確かめられず回収が遅れる。主力作品の立て直しにも投資がかかるため、累進配当とDOEの約束は途中で維持できなくなる。会社の存続は可能でも、利用者から選ばれる理由と株主に返せる金額を大きく失う。10年後の価値は利益の成長ではなく、残った現金と換金できる資産を中心に考える。
- モバイルゲーム(駅メモ!など):数量 4.6(年換算の課金者当量(万人・公表課金者数ではない推定))× 価格 2.55(課金者当量1人当たり年間売上(万円・名目、店頭/外部課金合算))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。課金者当量は12万→4.6万人、単価も2025年を下回る。市場900億円に対する参考シェアは約1.3%。
- モバイルコンテンツ(着信音・音楽関連):数量 1.5(年換算の有料会員当量(万人・公表会員数ではない推定))× 価格 0.30(有料会員当量1人当たり年間売上(万円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。残る会員が少なく、料金収入はごく小さい。
倍率:2036年のROEは純利益0.75億円÷自己資本32.0億円で約2.3%とk6.75%を下回る。したがって継続する稼ぐ力の上限は、事業純利益0.75億円×(1÷6.75%)の約11.1億円にとどまる。一方、2026年9月末の現金・売却可能な有価証券から負債と処分費用を差し引いた税後換金可能資産は約19億円であるため、こちらを悲観の時価総額の床として採用する。PBR0.617倍は19億円を2025年末の自己資本約30.8億円で割った換算値であり、過去の株価やPBRの谷から決めたものではない。2026年9月末の自己資本25.66億円は10年間の自己資本推移の起点として別途反映する。2036年の自己資本32億円を床に使わず、余剰現金も二重計上しない。
確率:ゲームの22年目に客層の世代交代に失敗し、新規事業への過去の投資判断の弱さも再燃する低頻度だが無視できない事態として14%。下に寄せる理由:主力集中と未達の中期計画が重なる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
モバイルゲーム(駅メモ!など)
位置情報と鉄道駅の訪問履歴を遊びにする自社運営ゲーム。ゲーム内課金、パス、他作品との連携企画などが収入源である。
| 数量年換算の課金者当量(万人・公表課金者数ではない推定) | 価格課金者当量1人当たり年間売上(万円・名目、店頭/外部課金合算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12.0 | 2.64 | 32 | 9 |
| 10 年後 中立 | 11.0 | 3.04 | 33 | 10 |
取り方:会社決算の2025年モバイルゲーム売上31.73億円を正とした。課金者実数・ARPPUの開示がないため、年間2.644万円を支払う課金者当量12万人という一組の推定に分解した。これは実測MAUではない。2026年第3四半期の同事業売上23.88億円、営業利益7.60億円を継続性の照合に使う。市場規模はSensor Towerの2023年国内位置情報ゲーム6億ドル超(共通為替150円で900億円超)を参考とし、会社売上÷市場の約3.5%はアプリ決済の集計定義が違う参考値に限る。競合はDQウォーク、Pokémon GO、Monster Hunter Now。AIエージェント代替表の人月・業務SaaS・広告運用の型には該当しない。
モバイルコンテンツ(着信音・音楽関連)
着信音や音楽関連など、携帯利用者の月額課金による成熟コンテンツ。会員減少下でも運営コストが軽い。
| 数量年換算の有料会員当量(万人・公表会員数ではない推定) | 価格有料会員当量1人当たり年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 9.0 | 0.28 | 3 | 2 |
| 10 年後 中立 | 4.1 | 0.34 | 1 | 1 |
取り方:会社の2025年コンテンツ売上2.53億円を正とし、月額約234円に当たる年2,811円×有料会員当量9万人に分解した推計。実際の会員数、契約月数、単価構成は非開示であり実測ではない。2026年第3四半期売上1.75億円は前年同期比9.3%減で、数量側には緩やかな退会を入れる。業務用の席課金ソフトではなく消費者向け着信音コンテンツなので、AIエージェント代替表の業務SaaS型には該当しない。
リスクと懸念
一つの長寿IPへの集中
2025年のモバイルゲーム売上は全社の約93%を占める。主力の歴史は2026年で12年となり、2036年には22年目だ。旅行に出る習慣や訪問記録は残っても、若い新規利用者が同じ作品を選ぶとは限らない。課金者が減り始めると、固定の開発・運営費をすぐには削れず、売上以上に利益が落ちる可能性がある。
AIエージェント代替と新作競争
駅を実際に訪れる娯楽は、人月請負や業務SaaSと違ってAIエージェントが代行しても顧客の楽しみにならないため、直接的な代替表の型には当たらない。しかしAIがゲーム制作と個別提案を安くし、代替的な娯楽が大量に増えると、人が使える時間の競争は厳しくなる。会社自身のAIによる開発効率向上も、差別化がなければ長期の価格決定力にはならない。
アプリ流通と課金手数料の変化
アプリ外決済の拡大によって2026年の主力ゲームの利益率は改善しているが、AppleとGoogleが決済・配信の規約や料率を変更すれば効果は変わる。アプリ外へ誘導する仕組みが競合にも広まると、優位性は一時的な費用節減にとどまる。プラットフォーム手数料の変化を将来の独占的な値上げ力と取り違えないことが重要だ。
投資判断と買収後の統合
2021年に掲げた2025年EBITDA30億円の計画は実績の約11.2億円と大きく離れた。ブロックチェーン関連事業とSuishowを巡る費用・訴訟は、高収益の既存事業から生じた現金を不確実な領域へ再投資する危険を示す。2026年の和解による一時利益が大きくても、その分を恒常的な稼ぐ力として評価すると本質価値を過大にする。
還元方針と事業資金の板挟み
総還元性向60%、累進配当、DOE7%以上という方針は、利益が保たれている間は魅力である。だが主力ゲームの売上が構造的に下がると、減配回避のために現金を取り崩すか、投資資金を削るかの選択を迫られる。悲観側では方針を守り切れない可能性も認め、10年累計の還元を縮める必要がある。
移動行動、規制、利用者データ
位置情報ゲームは外出、鉄道利用、位置情報への同意を土台とする。人口減少や地方鉄道の縮小、天候災害などで訪問機会が減れば遊び方が制約される。位置データの利用に対する規制やスマートフォンOSの権限管理の変更も、ゲームの利便性を落としかねない。単にスマートフォン市場が伸びるだけでは課金者が増えない。
コンテンツ会員数の先細り
着信音などの従来型コンテンツは少額の月額課金が安定していても、スマートフォンの標準機能や他の配信サービスに代わられつつある。2026年第3四半期の同部門は売上が前年同期比9.3%減少した。少ない固定費のもとで高い利益率を保てても、課金会員数が半減すれば会社全体の利益を補う力は小さくなる。
今後の分かれ目
- モバイルゲームの売上成長が3年連続でプラスになり、課金客に相当する利用指標も開示されたら
- 中立の利用者数量を見直し、減少前提を緩める。売上だけでなく継続課金者や利用頻度が伸びたかを確認する。
- ゲーム売上が2年以上連続して10%超減少し、営業利益率も25%を下回ったら
- 一時的なイベント不振でなく主力IPの寿命が縮んだと判断し、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。
- アプリ外課金の利用率拡大で、販路全体の手数料低下と利益率改善が持続したら
- 費用改善が客単価の値上げではないことを区別しつつ、同じ売上でも残る利益を引き上げる。
- 2026年の一時的な和解利益を除いたROEが20%以上で持続し、総還元性向60%の実行が続いたら
- 資本配分への信頼を高め、余剰現金が株主へ戻る確実性を再確認する。ただし既に計算に入れた還元を重複加算しない。
- 未検証の新分野に年間営業利益に匹敵する大型買収資金を投じたら
- 買収後の増分ROICと回収計画が開示されるまで、新事業の成功は中立に織り込まず、悲観側の失敗損失を厚くする。
- コンテンツ会員数の減少が止まり、月額課金の値上げでも解約が増えなかったら
- 成熟コンテンツの価格維持力を再評価し、10年後の単価と営業利益を少し引き上げる。
見ておくもの
- 『駅メモ!』シリーズの四半期売上高、長期継続率・月間有料課金者数(開示された場合)
- 新商材・周年イベントの売上寄与と、2026年の好調が続くか
- モバイルゲーム部門の営業利益率、アプリ外決済比率とプラットフォーム手数料
- コンテンツ事業の会員減少率と平均利用料金
- 総還元性向60%、配当性向40%以上またはDOE7%以上の履行、自社株式数の変化
- 2026年10月の和解による一時利益の確定額と、再び大きな買収を行わないか
- 位置情報データに対する規制および競合ゲームの市場構成
- 2026年9月末の現金預金25.89億円からの資金流出と2027年以降の正常な営業キャッシュフロー
倍率と資本コストの決め方
非開示の課金者数は2025年部門売上を使った当量推定と明示した。2036年の市場拡大は数量と名目価格に分解し、国内の物価3%を数量へ二重に入れていない。資本コストは7.5%の基本から、安定した営業利益と純現金を評価して6.75%とした。倍率は株価や類似企業のPERを見ず、10年後の事業ROE、資本コスト、長期成長1%、堀の残存割合から決めた。2026年の自社株買いは新しい株数と自己資本に反映済みなので、今後の還元に再度含めていない。株価・株数は2026年10月22日の添付値を維持し、業績は翌23日発表分まで反映した。2026年9月末の発行済み株式から自己株を引くと6,493,838株であり、添付の株数6,493,895株との差は57株にすぎないため、指定された株数を採用した。和解の特別利益を継続利益とせず、悲観側の床は2026年9月末の処分可能な現金等から負債と清算費用を差し引いた。やや悲観の余剰現金は明示した8億円に戻り方1.0を適用し、悲観のPBR価値は2025年末の自己資本30.8億円を評価基準として算定した。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%に、事業の循環性と純現金の評価−0.75%を反映する。市場価格の変動率や小型株上乗せは採用しない。