結論
RKB毎日ホールディングスは福岡の民放局を核に、自治体向けシステム、不動産賃貸、ネット通販と陸上養殖を抱える企業である。長く持つ株主の立場での結論は「割高」だ。資産の厚さは魅力だが、その資産を株主の利益に変える速度が遅く、十年待つ対価まで考えると現在の時価総額約129億円には十分な安全域がない。
2026年3月期は売上高が34%増えたが、純利益は約8億円でほぼ横ばいだった。伸びの主因は通販会社Fun Standardの連結であり、既存事業の稼ぐ力が三割も増えたわけではない。放送広告はインターネットに予算を奪われ、受託開発は自治体システム更新の特需とAIによる省人化の両方を抱える。逆に地元ニュース、放送免許、一定の固定資産は十年後も残る。
見落としたくないのは賃貸等不動産の開示時価304億円と、上場株式約116億円という資産である。ただし不動産の賃貸損益は年5億円台で、国債金利が3%になる世界で鑑定時価を額面どおりに受け取るのは危険だ。政策保有株も少数株主が売却を命じられず、養殖設備には大きなリース負担がある。保有資産から得られる賃料と配当はすでに利益に含まれるため、売却が具体化していない資産の時価を稼ぐ力に重ねて足すこともしない。
楽観の余地は、通販の製品開発が継続して当たり、養殖が黒字化し、保有資産の整理が進むことだ。一方、低採算の新事業に資金を重ねれば、純資産が厚くても株主の取り分は増えない。五つの筋書きの現在価値を確率でならすと約81億円となり、現在の時価総額を約37%下回る。事業を持ち続けるかどうか以上に、資本をどこに振り向けるかを十年間確かめたい会社である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、まず十年後も地域に報道機関が必要かを問うだろう。災害情報や選挙報道、地元スポーツには需要がある。放送免許と取材網は長く残り、築いてきた信用は買い手が簡単には作れない。しかし、事業が必要とされることと、その事業が資本コスト以上の利益を稼ぐことは同じではない。
いちばん考えたいのは、利益の持ち主である株主にどれだけ現金が届くかだ。賃貸等不動産の開示時価は帳簿を大きく上回り、上場株式にも含み益がある。それでも経営陣が放送設備、養殖、持ち合い株へ資金を回し続けるなら、少数株主にとっては現金化できない財産である。簿価より安く買えるというだけでは安全域にならず、収益力と資本配分の規律が必要だ。
Fun Standardの買収には、少額の投資で新しい利益源を手に入れた可能性がある。ここは先入観なく評価したい。一方、陸上養殖には既存の放送事業と共有できる価格決定力が乏しく、40億円台の設備に見合う稼ぎが確かめられるまで追加投資は慎重であるべきだ。更新投資やリース料を差し引いたオーナー利益が増えるかを見たい。
十年後の利益を確かなものとして予見できる領域は、放送と賃貸の一部に限られる。BCCはAIで人月需要が減り、通販は商品が変わり続ける。よって収益への高い倍率を避け、現金・市場性株式・賃貸資産についても、利益に含まれた収入と換金額を重ねて評価しない。今の時価総額と期待現在価値には大きな差があり、現時点で安全域は見いだしにくい。資産の積み上げよりも、利益率の改善と株主還元の強化が数字として見え始めることを重視する。
何で稼ぐ会社か
会社の中心には、テレビのRKB毎日放送とラジオがある。福岡県・北部九州の企業に、番組提供のタイム枠や単発のスポットCM枠を売る。TBS系列のJNN、ラジオのJRNと結び付き、地元のニュースやスポーツ番組、イベントの制作も手掛ける。2026年3月期の放送関連売上は約155億円、営業利益は6億円弱である。
システム関連は子会社BCCが担う。自治体の標準化・ガバメントクラウド移行、病院の電子カルテ更新、店舗のセキュリティ、空港業務の効率化などを受託する。クラウドサービスもあるが、中心は顧客ごとの開発・保守と機器販売である。外部売上約90億円、営業利益9億円強は利益貢献が大きい。ただしBCCの持分は70%であり、全利益が親会社株主のものではない。
不動産事業は百道浜の放送会館の一部、旧本社跡地、駐車場、ビルなどを賃貸する。外部への売上は約11億円だが、グループ内の賃料を含めた事業利益は約10億円になる。その内部取引の多くは連結時に消去されるため、不動産利益を独立した営業利益として全社に上乗せしてはいけない。保有物件からの賃貸損益は約5.6億円である。
ライフスタイル事業の柱は、2025年に買収したFun Standardの通販である。自社企画のPYKES PEAKやBELLEMONDなどを楽天市場、Amazon、自社店舗で販売し、ゲーム機向け保護フィルムは年間25万個超を売った。もう一つは宗像の陸上養殖で、計画生産能力は年500トンだ。出荷開始から間もなく、設備償却のため両事業を合わせた部門損益は赤字である。売上が大きくなっても、事業ごとの利益と必要資本を分けて見る必要がある。
優良さと弱いところ
最も丈夫な堀、つまり競争相手が簡単に越えられない壁は、福岡で長年積み重ねた放送免許、取材網、地域の知名度である。周波数は自由に増やせず、地域の事件や災害を取材する体制は短期間で作れない。TBS系列の全国番組と地元番組を組み合わせられることも強みだ。ただし放送免許は広告枠への需要を独占する免許ではない。視聴者と広告主がネット動画に移れば値上げは難しい。
BCCには自治体・病院との長い取引があり、仕様の複雑さと公共業務の信用が顧客維持に効く。しかし解約率、更新のたびの値上げ、共同利用の不可欠な基盤を示す定量開示が二つ以上そろっていない。法定帳簿の「記録の正本」を支配する高収益なソフト企業と同一視できない。AIが仕様書作成、テスト、運用、画面操作を肩代わりすれば、人月売上は直接圧迫される。
通販の自社ブランドは成功すれば放送以上の値決め力を持ちうるが、商品は比較サイトや大手通販で横並びに見える。画面フィルムの大ヒットは再現性の証拠にはまだならない。陸上養殖は水と飼料、病気、電力、設備の稼働率を管理する仕事で、メディア企業の既存の堀は通用しない。
財務は自己資本421億円、純有利子負債がマイナス34億円と厚い一方、十年のROE中央値は2.4%で、資本コストには遠く届かない。資産を蓄えたことと、再投資が株主価値を増やしたことは別だ。放送と不動産が残っても、余裕資金が低収益の設備や持ち合いに固定されるなら、堀の経済的な価値は広がらない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地上波放送の競争相手は福岡地区のKBC、TNC、FBS、TVQである。KBCグループの2026年3月期売上は約180億円、TNCは約130億円と報じられ、RKBの放送関連約155億円は地元の主要局の一角に相当する。ただし各社の集計にはラジオ、制作、イベントの違いがある。福岡の関連市場を年600億〜800億円程度とみるとRKBは売上換算で概ね2割級だが、広告の純粋なシェアは非開示である。
電通による2025年の地上波テレビ広告費は1兆6333億円で前年並みだったのに対し、ネット広告は4兆円を超えた。全国テレビ市場が横ばいでも、人口構成と視聴時間が変わる地方局は数量を失いやすい。RKBはイベントやTBS NEWS DIGの配信を育てているが、ネットの接触数を広告利益に変えるのは地上波ほど簡単ではない。中立では放送関連全体の名目売上が年1%前後減る見通しである。
情報サービス産業協会による国内情報サービス売上は2024年に33.6兆円で、受注ソフトが5割強を占める。BCCの全国シェアは売上換算で約0.03%にすぎず、地盤の九州でNEC系列やNTTデータ系列などと競う。自治体の標準化需要は期限付きであり、十年先に同じ人手を売れる保証はない。価格はインフレに追随しても、AIエージェントが作業量そのものを減らす影響を見込む。
国内の2025年物販EC市場は約15.8兆円で、Fun Standardの全国シェアは約0.04%にとどまる。製品の発掘が当たれば取り分を増やせるが、Amazonや楽天の集客力と手数料、類似品との価格競争に制約される。サーモンは輸入品と国産養殖に囲まれ、計画年500トンは国内消費の小さな一角である。福岡のオフィス賃料や駐車場稼働率も市況の影響を受ける。五つの仕事に同じ成長率を当てると、この会社の強弱を取り違える。
資本政策と M&A
2025年1月にFun Standard株式の90%を取得した。取得原価は有価証券報告書ベースで約6.24億円で、2026年3月期の同社単独純利益は約1.12億円だった。買値に対して初年度の稼ぎは悪くないが、運転資金、通販広告費、残る10%の少数株主利益を忘れてはならない。一方、宗像サーモンの設備帳簿価額は約42億円に達し、施設のセール・アンド・リースバックで約21億円の資金を得た。こちらはまだ収益性を示していない。
2026年3月期には投資有価証券を約16.6億円取得し、賃貸物件も買い増した。受取配当が増えても、政策保有株を売って資本効率を高める方針は確認できない。2026年3月期の配当総額は約1.64億円で、純利益に対して約21%である。2027年3月期の年間配当は総額約1.86億円が予想されるが、過去5年間で大規模な自社株買いもない。
公表資料で確認できるのは安定配当という基本方針と単年度見通しであり、売上・利益・ROEの複数年目標や、配当性向・DOE・総還元性向・自社株買い額を約束した中期計画は確認できない。したがって資本効率改善については「数字の約束なし」と扱う。上位10株主の合計は約51%で、持ち合い色は濃いが65%以上の支配ではないため、現金の株主への戻り方は75%とする。免許事業を持つ以上、買収やTOBは法的な株主適格性も絡むため、再編による早期の資産解放を既定にしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
福岡は九州の企業と人口が集まる都市圏であり、ローカルニュース、災害情報、ホークスなどの地域スポーツには広告主がつく。RKBは放送免許とJNN・JRN系列の番組供給を持ち、取材網をゼロから競合が作ることはできない。地上波だけでなく、映画出資や催事、ニュースのデジタル配信に売り方を広げられる。放送枠の量が減っても、スポンサー付き番組と地域の大型イベントを増やせれば、ブランドを現金に変える道は残る。
BCCは1966年創業の地場システム会社で、自治体の標準化、病院の電子カルテ、店舗セキュリティまで顧客基盤が広い。人月作業はAIに圧迫されても、顧客との接点を握って自社のクラウドサービスや保守契約に移せれば、少ない工数で利益率を上げられる。ただし現時点でAI製品の売上開示がないため、その成功を数量増加の既定とはしない。
通販は全国に販路を持つ。PYKES PEAKやBELLEMONDが商品改良を続けて自社ブランドとして認知されれば、今の福岡の広告市場に売上の上限を縛られない。6億円台の買収対価に対し、すでに子会社単独で1億円台の利益が出ていることも心強い。宗像の年間500トンの設備がフル稼働して黒字になれば、立ち上げ赤字は消える。賃貸不動産と政策保有株の含み益を、資産売却や増配として少しずつ実現できるなら、利益と資産の両方から株主への現金流入が増える。
慎重な見方
地上波には免許があるが、視聴者の時間にも広告費にも免許はない。広告主は成果が測れるSNS、検索、動画に予算を移す。福岡で局の立場が強くても、広告市場そのものが縮めば売る枠は減る。テレビとラジオの送信施設や人件費は短期間で減らせず、収入の減少が利益率を一気に押し下げる。系列番組の魅力も東京の編成に依存する。
BCCの収益は直近、自治体システムの標準化やガバメントクラウド移行という特定の更新需要に助けられている。作り替えが終われば、同じ規模の追加需要が続くとは限らない。AIエージェントが画面操作、設計書、試験、監視を代替すれば、単価の値上げだけで人月の減少を埋めるのは難しい。契約更新率や独自データによる強い堀の証拠が不足するため、全国IT市場の成長をそのまま同社の成長とみなせない。
通販の商品はAmazonや楽天の競争にさらされ、売れ筋はすぐ模倣される。年間25万個を超えた保護フィルムの成功も、次の機種に変われば続く保証はない。陸上養殖は成長領域という言葉と違い、餌や水、電力、魚の病気、リース料という逃げられない原価を抱える。放送とは違う知識が必要な事業に大金を投じている点が心配だ。
最も重いのは資本配分である。近年、投資有価証券を買い増し、配当は利益の2割程度しか出していない。帳簿の純資産が時価総額より大きくても、現金化される時期は決まっていない。十年後に不動産の利回りが上がり、持ち合い株が下がり、新規事業で減損が出れば、見かけの資産の厚さは株主を守りきれない。
どちらに重みを置いたか
地元放送の存続力と賃貸資産の実在は評価するが、収益を伸ばす力では慎重な見方がやや強い。下に寄せる理由はAIによる同じ工数の縮小を二重計上するためではない。通販買収の大幅増収が利益増につながらず、養殖設備とリースの負担が増え、政策株の買い増しで資本効率改善の意思がまだ見えないことによる。
十年の不利な二つの筋書きに43%、有利な二つには25%を配した。中立の十年後時価総額は現在とほぼ同水準であり、十年の資本コストを補えるだけの成長力に欠ける。期待現在価値は約81億円で現在の約129億円を約37%下回り、判定は割高となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 6,837 円150 億円(+ 還元の換算額還元の合計 768 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 3,690 円81 億円、今との差 −35.9%、 期待の年率 +3.0%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 15,688 円344 億円 | 1,460 円32 億円 | +197.7% | +12.2% | 1,372 円30 億円 |
| やや楽観 | 17% | 9,683 円212 億円 | 1,186 円26 億円 | +88.7% | +7.0% | 1,848 円41 億円 |
| 中立 | 32% | 5,942 円130 億円 | 958 円21 億円 | +19.8% | +2.0% | 2,208 円48 億円 |
| やや悲観 | 25% | 5,018 円110 億円 | 456 円10 億円 | −5.0% | −0.5% | 1,369 円30 億円 |
| 悲観 | 18% | 4,334 円95 億円 | 160 円4 億円 | −22.0% | −2.5% | 809 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,837 円150 億円 | 768 円17 億円 | +32.0% | +3.0% | 7,605 円167 億円 |
今の株価時価総額 5,760 円126 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 地域媒体と自社ブランドの成功が重なる 利益 26 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 15,688 円344 億円
地域の広告主が大型イベントと地元ニュースの価値を再評価し、インターネットで失った一部の予算が番組協賛とスポーツ中継へ戻る。テレビの有料枠数は大きく減らず、連結放送売上は約193億円へ増える。これは免許の独占を見込むのでなく、地域番組の広告収益化と制作体制の改善が十年続く場合である。
BCCの受託人月はなお15%減るが、自治体・病院の保守を維持し、クラウドやセキュリティで顧客当たり売上を高める。AIによる人数の増加は見込まず、少人数での効率改善を利益率に残す。通販の複数ブランドが全国で定着し、年間170万件相当を販売する。養殖は計画能力500トンを使い切り、リースと償却費を負担しても小幅な黒字となる。
政策保有株の売却や利益の積み上がりで現金が増え、株主還元も拡大する。福岡の賃貸物件は賃料の上昇を享受し、価値を下げるような無理な物件投資は行わない。放送の堀が残りながら新事業の採算も改善する、複数の成功が重なる筋書きである。
- 放送関連事業:数量 55,800(年間の有料30秒広告枠換算数(枠/年。番組協賛、イベント、制作収入の売上も同一枠に換算する推計単位))× 価格 0.00(1換算枠の複合平均売上(億円/枠))→ 売上 193 億円・営業利益 13 億円。広告枠相当量は現状の93%。制作・派遣のAI代替も織り込むが、地域イベントと協賛の実現単価が改善する。
- システム関連事業(BCC):数量 329(開発・販売・運用を担う従業員年換算人員(人年/年。正社員337+平均臨時雇用50))× 価格 0.31(1人年当たりの複合売上(億円/人年、機器や外注再販を含む))→ 売上 103 億円・営業利益 13 億円。AIエージェント代替の受託人月型で数量は現状の85%。保守の単価改善と効率化で利益率が上がる。
- 不動産事業:数量 27,500(賃貸施設の年間貸付面積換算(平方メートル・年。駐車場や地代を含む代理単位))× 価格 0.00(1平方メートル年換算の外部売上(億円/㎡・年))→ 売上 16 億円・営業利益 12 億円。外部賃貸面積換算の増加と名目賃料の上昇。内部取引の消去は全社調整で扱う。
- ライフスタイル事業のうち通販(Fun Standard等):数量 1,700,000(自社ブランドEC商品の年間注文換算件数(件/年、推計))× 価格 0.00(注文1件あたり平均売上(億円/件))→ 売上 162 億円・営業利益 16 億円。商品ブランドの認知が広がり、注文が170万件相当へ増加。広告費・在庫費用を控除した利益。
- ライフスタイル事業のうち宗像陸上養殖:数量 500(サーモンの年間出荷重量(トン/年))× 価格 0.02(1トン当たり平均出荷売上(億円/トン))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。開示能力の年間500トンを出荷。更新投資、償却、リース料を負担した後の小幅な利益。
倍率:2036年ROE4.64%は資本コスト8%に届かない。したがって低ROE企業の正当化PER上限は1÷k=12.5倍であり、長期成長による上乗せは認めない。純利益25.90億円から余剰現金35億円の税後受取利息0.49億円を控除し、事業純利益25.41億円に12.5倍を適用する。317.625億円に余剰現金の回収価値35億円×0.75=26.25億円を加え、時価総額343.875億円となる。賃貸収益と保有株式配当をすでに含む連結利益の倍率評価に対して、それらの保有資産時価を追加計上しない。
確率:地域広告の構造的な流出を逆転し、通販の新商品開発とサーモンのフル稼働も同時達成する必要がある。成功は可能だが条件が多く、確率は8%にとどめる。
やや楽観 17% 通販の伸長と養殖の損益改善 利益 16 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 9,683 円212 億円
RKBは福岡の視聴者との関係を維持しつつ、ネット配信とスポーツ・美術展イベントへの販売を増やす。放送枠の数量は16%減るものの、番組協賛の割合が高まり名目収入を支える。放送会館の修繕費は増えるが、施設更新を計画的に進め、地域メディアとしての固定客は残る。
BCCの工数は25%減る。自治体標準化の大きな更新は落ち着くが、医療システムや空港の保守契約は残り、売上単価の引き上げと粗利改善で利益を維持する。通販ではPYKES PEAKとBELLEMONDの製品拡充が進み、注文換算数が137万件となる。陸上養殖は年420トンまで出荷し、赤字をほぼ解消する。
親会社は大型の追加買収を控え、増加する利益の一部を配当に回す。不動産の賃貸稼働率と地方の利用人口は大きく変わらず、見かけの純資産より稼ぐ力の改善が際立つ。放送広告の長期減速は残るが、非放送の二つの成長源がそれを上回る。
- 放送関連事業:数量 50,400(年間の有料30秒広告枠換算数(枠/年。番組協賛、イベント、制作収入の売上も同一枠に換算する推計単位))× 価格 0.00(1換算枠の複合平均売上(億円/枠))→ 売上 164 億円・営業利益 9 億円。広告枠相当量は現状の84%。イベントと協賛により名目売上が維持される。
- システム関連事業(BCC):数量 290(開発・販売・運用を担う従業員年換算人員(人年/年。正社員337+平均臨時雇用50))× 価格 0.30(1人年当たりの複合売上(億円/人年、機器や外注再販を含む))→ 売上 88 億円・営業利益 9 億円。受託人月型のAI代替で数量が25%減少。保守の価格改定と省力化で採算は維持。
- 不動産事業:数量 26,000(賃貸施設の年間貸付面積換算(平方メートル・年。駐車場や地代を含む代理単位))× 価格 0.00(1平方メートル年換算の外部売上(億円/㎡・年))→ 売上 15 億円・営業利益 11 億円。賃貸数量はほぼ維持し、物価に沿った名目賃料の上昇を認める。
- ライフスタイル事業のうち通販(Fun Standard等):数量 1,370,000(自社ブランドEC商品の年間注文換算件数(件/年、推計))× 価格 0.00(注文1件あたり平均売上(億円/件))→ 売上 126 億円・営業利益 9 億円。全国市場で複数のブランドが育つが、通販モールの手数料を支払い続ける。
- ライフスタイル事業のうち宗像陸上養殖:数量 420(サーモンの年間出荷重量(トン/年))× 価格 0.02(1トン当たり平均出荷売上(億円/トン))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。年間420トンを販売し、リース料・償却を負担した後でほぼ損益均衡。
倍率:2036年ROE3.04%はk8%に届かないため、正当化PERの上限は1÷k=12.5倍。純利益15.60億円から余剰現金30億円の税後利息0.42億円を除き、事業純利益15.18億円を評価する。15.18億円×12.5倍=189.75億円に、余剰現金30億円の回収価値22.50億円を加えて時価総額212.25億円とする。賃貸利益と保有株配当は連結純利益に含めて評価しているため、それらの資産価値をさらに上乗せしない。
確率:通販の受注増とサーモンの稼働率改善は十分に起こりうるが、双方の利益率回復と工数減への対応が必要であり17%とする。
中立 32% 事業の入れ替わりは進むが低ROEが続く 利益 10 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,942 円130 億円
福岡ではネット広告への出稿が続き、テレビ・ラジオの有料広告枠相当量は十年で26%減る。番組単価とイベント収入の上昇で一部を補うものの、放送関連の名目売上は約139億円となる。電波と地元ニュースという役割は残るが、放送の営業利益率が高くなるほどの値上げ力は生まれない。
BCCは人月に依存する受託開発とBPOの工数が約3割縮み、名目の単価上昇では穴を埋めきれない。自治体・病院の保守案件は残るので売上は約76億円で下げ止まるが、利益も過去の高い水準には戻りにくい。客が画面を操作しなくなるAIエージェントの普及を数量と長期成長率で扱い、ここからさらに資本コストを上げることはしない。
通販は全国市場の伸びに乗り、年118万件相当を売るが、広告費と在庫を要するため高利益率にはならない。養殖は目標500トンより低い320トンで、償却後に小幅な赤字が残る。物件賃料は物価に沿って上がり、政策保有株の配当も残る。結果として売上は約340億円でも純利益は約9億円台、低い資本効率が続く。
- 放送関連事業:数量 44,400(年間の有料30秒広告枠換算数(枠/年。番組協賛、イベント、制作収入の売上も同一枠に換算する推計単位))× 価格 0.00(1換算枠の複合平均売上(億円/枠))→ 売上 139 億円・営業利益 5 億円。広告枠相当量は現状の74%。イベント収入と名目単価は上がるが、ネットへの広告流出を補いきれない。
- システム関連事業(BCC):数量 263(開発・販売・運用を担う従業員年換算人員(人年/年。正社員337+平均臨時雇用50))× 価格 0.29(1人年当たりの複合売上(億円/人年、機器や外注再販を含む))→ 売上 76 億円・営業利益 6 億円。受託・人月工数は現状の68%、複合単価は1.25倍。AIエージェント代替を数量に反映し、長期gは0%。
- 不動産事業:数量 25,500(賃貸施設の年間貸付面積換算(平方メートル・年。駐車場や地代を含む代理単位))× 価格 0.00(1平方メートル年換算の外部売上(億円/㎡・年))→ 売上 15 億円・営業利益 11 億円。賃貸の換算面積は小幅増、名目賃料は物価に近い上昇。内部賃料は調整項目で相殺する。
- ライフスタイル事業のうち通販(Fun Standard等):数量 1,180,000(自社ブランドEC商品の年間注文換算件数(件/年、推計))× 価格 0.00(注文1件あたり平均売上(億円/件))→ 売上 105 億円・営業利益 6 億円。年間118万件相当。新商品が一定のヒットを生むが、大手モールの広告費と在庫負担が残る。
- ライフスタイル事業のうち宗像陸上養殖:数量 320(サーモンの年間出荷重量(トン/年))× 価格 0.02(1トン当たり平均出荷売上(億円/トン))→ 売上 6 億円・営業利益 −1 億円。計画年産500トンには届かない。固定のリース料と償却を負担すると小幅な赤字。
倍率:2036年ROE1.95%はk8%に届かず、低ROEの事業については1÷k=12.5倍が正当化PERの上限となる。純利益9.50億円から余剰現金20億円の税後利息0.28億円を除いた事業純利益9.22億円に適用し、事業価値115.25億円とする。ここへ余剰現金20億円×回収係数0.75=15億円を加え、十年後時価総額は130.25億円となる。賃貸資産の評価益と持ち合い株の含み益は、具体的な売却・還元計画がない限り利益ベースの評価に重ねて足さない。悲観側では換金可能な資産を別途床として評価する。
確率:放送の緩慢な縮小、BCCの工数減、ECの適度な成長、養殖の部分稼働という、それぞれの根拠を組み合わせた中心で32%とする。
やや悲観 25% AIと放送広告流出が重なる 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,018 円110 億円
地上波の視聴時間と広告予算が想定より速く移り、RKBの有料枠は四割減る。TBS系列の番組供給と災害報道の役割は残るが、スポット枠の値上げは通らず、放送は収入約108億円に縮む。番組制作の外注を減らしても、中継・放送設備の更新と人件費を十分には削れない。
BCCでは自治体の標準化特需が終わり、仕様作成、テスト、監視、業務画面の操作がAIに置き換わる。人年需要は45%減少する。経営は保守顧客を守るものの値下げ圧力により営業利益は約2億円に落ちる。通販は売れ筋を競合に奪われて年間95万件程度となり、売上を維持しても利益が薄い。
養殖は年200トンにとどまり、飼料費とリース料の固定負担が残って赤字が続く。売上が減るにつれて本社費も削るが、完全には変動費化できない。金利上昇で賃貸不動産の必要還元利回りが高くなり、株式相場も弱含む。会社は存続するが、収益より資産の売れる価値が株主価値を支える局面となる。ただし持ち合い株には相場下落と売却制約があり、賃貸物件にも利回り上昇と修繕費の負担があるため、現在の資産時価をそのまま床にはできない。
- 放送関連事業:数量 36,000(年間の有料30秒広告枠換算数(枠/年。番組協賛、イベント、制作収入の売上も同一枠に換算する推計単位))× 価格 0.00(1換算枠の複合平均売上(億円/枠))→ 売上 108 億円・営業利益 1 億円。広告枠換算数量は現状の60%。固定費が残り、放送利益率は大きく低下する。
- システム関連事業(BCC):数量 213(開発・販売・運用を担う従業員年換算人員(人年/年。正社員337+平均臨時雇用50))× 価格 0.27(1人年当たりの複合売上(億円/人年、機器や外注再販を含む))→ 売上 58 億円・営業利益 2 億円。受託工数の数量は現状の55%。AI代替と単価競争で利益が圧縮される。
- 不動産事業:数量 23,000(賃貸施設の年間貸付面積換算(平方メートル・年。駐車場や地代を含む代理単位))× 価格 0.00(1平方メートル年換算の外部売上(億円/㎡・年))→ 売上 12 億円・営業利益 9 億円。稼働面積の減少と賃料交渉の弱さを反映。必要還元利回りも上昇する。
- ライフスタイル事業のうち通販(Fun Standard等):数量 950,000(自社ブランドEC商品の年間注文換算件数(件/年、推計))× 価格 0.00(注文1件あたり平均売上(億円/件))→ 売上 81 億円・営業利益 1 億円。商品模倣と広告費上昇で受注数と利益率が弱含む。
- ライフスタイル事業のうち宗像陸上養殖:数量 200(サーモンの年間出荷重量(トン/年))× 価格 0.02(1トン当たり平均出荷売上(億円/トン))→ 売上 3 億円・営業利益 −2 億円。設備稼働率40%にとどまり、リース料と償却を賄えない。
倍率:2036年の営業利益0.68億円、純利益0.85億円、ROE約0.19%では、事業の稼ぐ力はk8%で約11億円にとどまる。これより税後で売却できる資産110億円が大きいため、純現金と市場性資産・不動産の換金価値を床とする。PBRの分母には2036年の累積利益で増えた自己資本455億円ではなく、2026年の自己資本421.2億円を使い、110÷421.2=0.2611586倍とした。将来に積み上がる自己資本に床の倍率を掛けておらず、過去のPBRの谷も根拠にしていない。
確率:低ROEの会社は業績の小さな崩れが全社利益を消す。養殖の固定費と放送の施設費が残るため、この現実的な不利を25%とする。
悲観 18% 媒体の優位を失い新事業で資本を傷める 利益 −7 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,334 円95 億円
ネット動画・検索・AI要約に地域広告と視聴者の大半を奪われ、放送の有料枠相当量は十年で55%縮む。放送免許は残っても番組制作と送信所維持の固定費を賄えず、放送関連は赤字化する。TBS系列であることは番組の供給と免許更新の助けにはなるが、広告を買う顧客の予算を取り戻す力にはならない。
BCCは受託工数が十年で六割縮む。クラウドサービスへの置き換えが間に合わず、受注価格にも圧力がかかる。通販は大手プラットフォームでの広告費高騰と商品模倣に負け、EC売上は約51億円まで減少する。宗像の養殖は稼働率が上がらず、魚病・電力高・設備更新が重なって大きな損失を出す。
営業赤字が続いたため、養殖設備とのれん、放送設備の一部で減損を認識する。保有株の市場価格も大幅に下がり、賃貸不動産は金利の上昇と修繕費で換金価値が小さくなる。会社は資産を処分して存続できるが、これまでのように買収して成長する余地はない。利益の倍率ではなく、債務と税を控除して実際に売れる資産だけが床となる。
- 放送関連事業:数量 27,000(年間の有料30秒広告枠換算数(枠/年。番組協賛、イベント、制作収入の売上も同一枠に換算する推計単位))× 価格 0.00(1換算枠の複合平均売上(億円/枠))→ 売上 74 億円・営業利益 −1 億円。放送枠相当量が現状の45%に減少。広告減収で放送設備と人件費の固定負担が勝る。
- システム関連事業(BCC):数量 155(開発・販売・運用を担う従業員年換算人員(人年/年。正社員337+平均臨時雇用50))× 価格 0.25(1人年当たりの複合売上(億円/人年、機器や外注再販を含む))→ 売上 39 億円・営業利益 −3 億円。受託人年は現状の40%に縮小。AIエージェント代替が進み、クラウドへの事業転換が失敗する。
- 不動産事業:数量 18,500(賃貸施設の年間貸付面積換算(平方メートル・年。駐車場や地代を含む代理単位))× 価格 0.00(1平方メートル年換算の外部売上(億円/㎡・年))→ 売上 8 億円・営業利益 6 億円。修繕費が増加し、賃貸面積と実質賃料が減少。物件の売却必要利回りも高まる。
- ライフスタイル事業のうち通販(Fun Standard等):数量 650,000(自社ブランドEC商品の年間注文換算件数(件/年、推計))× 価格 0.00(注文1件あたり平均売上(億円/件))→ 売上 51 億円・営業利益 −2 億円。ヒット商品の模倣、広告費高騰、返品増加で受注と利益が減少する。
- ライフスタイル事業のうち宗像陸上養殖:数量 80.0(サーモンの年間出荷重量(トン/年))× 価格 0.01(1トン当たり平均出荷売上(億円/トン))→ 売上 1 億円・営業利益 −4 億円。年80トンにとどまり、リース・償却・保守費が収入を大幅に超える。
倍率:営業赤字14.82億円、純損失7億円のためPERによる事業価値は認めず、税後純換金資産95億円だけを評価する。基準の2026年現在の自己資本421.2億円を分母として95÷421.2=PBR0.22555倍を表示する。2036年の自己資本364.2億円は累積損益・配当・約58億円の減損を含む推移として示すが、そこへ過去の谷のPBRを掛け直さない。時価総額95億円と十年の還元3.5億円の合計は現在の時価総額129.33億円を下回る。
確率:単なる景気後退ではなく、放送広告・受託開発・通販の競争力が同時に劣化し、養殖の固定費で資本を失う。頻度は低いが現在の低ROEを踏まえて18%を割く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
放送関連事業
RKB毎日放送のテレビ・ラジオ広告枠、地域ニュース・番組制作、イベント。子会社RKB CINCの映像制作と人材派遣も含む。
| 数量年間の有料30秒広告枠換算数(枠/年。番組協賛、イベント、制作収入の売上も同一枠に換算する推計単位) | 価格1換算枠の複合平均売上(億円/枠) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60,000 | 0.00 | 155 | 6 |
| 10 年後 中立 | 44,400 | 0.00 | 139 | 5 |
取り方:有報の実績は売上154.64億円、営業利益5.78億円。枠数と枠別単価の開示はないため、地上波・ラジオの放送時間、タイムとスポットの構成、イベント・制作を含む売上を6万有料枠相当と見た換算推計であり、実際のCM放映本数ではない。タイム売上+5.9%、スポット−0.8%、福岡地区スポット投下量−0.9%が開示され、数量減と価格競争の感応度を与える。KBC約180億、TNC約130億を含む福岡5局の広告・放送周辺市場はおよそ600〜800億円と推測し、RKBは定義差を伴う売上で概ね2割級。出典:https://edinetdb.jp/company/E04382/text?fy=2026 と https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011003.html
システム関連事業(BCC)
自治体・医療・小売のシステム構築、保守・BPO、PC等の販売、クラウド・セキュリティの提供。
| 数量開発・販売・運用を担う従業員年換算人員(人年/年。正社員337+平均臨時雇用50) | 価格1人年当たりの複合売上(億円/人年、機器や外注再販を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 387 | 0.23 | 90 | 9 |
| 10 年後 中立 | 263 | 0.29 | 76 | 6 |
取り方:BCCセグメントの開示人数337人+平均臨時雇用50人=387人を出発点とした。1人年23.2百万円は顧客へ請求する単純な労務単価ではなく、機器・クラウド売上と外注費のパススルーを含んだ複合単価である。受注工数・稼働率非開示で精度には限界がある。国内情報サービス市場33.6兆円に対し売上シェア約0.027%、九州市場のみの正確なシェアは未開示。AIエージェント代替の型は大半が受託開発・人月BPO(中立数量0.55〜0.75倍、価格上限1.34倍、長期g0%)、小部分は席課金クラウドの可能性があるが売上比率非開示。独自データ、低解約率等2件の証拠がないため記録の正本型にしない。出典:https://edinetdb.jp/company/E04382/text?fy=2026、https://www.bcc-net.co.jp/company/company.html、https://www.jisa.or.jp/explain/tabid/755/default.aspx
不動産事業
福岡の賃貸ビル・放送会館の一部、駐車場、旧本社跡地などの賃貸と太陽光発電。
| 数量賃貸施設の年間貸付面積換算(平方メートル・年。駐車場や地代を含む代理単位) | 価格1平方メートル年換算の外部売上(億円/㎡・年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25,000 | 0.00 | 11 | 10 |
| 10 年後 中立 | 25,500 | 0.00 | 15 | 11 |
取り方:外部顧客売上10.66億、内部取引込み19.57億、事業営業利益10.02億。主要設備開示では放送会館の一部4995㎡、駐車場用地11340㎡、旧本社敷地7052㎡等を保有する。貸付可能面積と駐車場回転率が未開示のため、合計約2万5千㎡相当として外部売上と照合した代理数量。内部賃料約8.90億円が連結調整に含まれるため、外部賃料だけを利益として重複させない。賃貸損益5.59億、帳簿122.30億、時価304.30億は有報注記。福岡の事業者別賃貸シェアは公表された同一定義の母集団がない。出典:https://edinetdb.jp/company/E04382/text?fy=2026、https://regfis.com/reports/20260624_S100YJDD_E04382_null_010_030000_120
ライフスタイル事業のうち通販(Fun Standard等)
PYKES PEAKのアウトドア商品、BELLEMONDの保護フィルム、カー用品、防災関連などの自社企画・通販。正式報告区分では養殖と合算。
| 数量自社ブランドEC商品の年間注文換算件数(件/年、推計) | 価格注文1件あたり平均売上(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000,000 | 0.00 | 70 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,180,000 | 0.00 | 105 | 6 |
取り方:有報の主要子会社Fun Standard単独売上70.33億円。1注文約7033円を仮定すると年100万件相当だが、EC受注件数は非開示であり卸売を含む換算値である。保護フィルムだけで実売25万個超の開示があり、残余はアウトドア用品、車用品、防災用品等。2025年国内物販EC市場15兆8233億円に対する全国売上シェアは約0.044%。本項の営業利益1.60億円は子会社経常利益1.56億円から推定した配賦値で、養殖との内訳は会社が非開示。2事業合計の正式営業損失は3.27億円。出典:https://edinetdb.jp/company/E04382/text?fy=2026、https://netshop.impress.co.jp/n/2026/10/21/16900、https://www.funstandard.jp/business
ライフスタイル事業のうち宗像陸上養殖
福岡県宗像市で陸上循環水養殖したサーモンを地域の小売・外食へ出荷する事業。正式報告区分では通販と合算。
| 数量サーモンの年間出荷重量(トン/年) | 価格1トン当たり平均出荷売上(億円/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 0.01 | 0 | −5 |
| 10 年後 中立 | 320 | 0.02 | 6 | −1 |
取り方:施設の計画年産500トンは会社・現地ニュース開示、初出荷は2025年12月。2026年3月期は単独の出荷トン数・売上・利益が非開示。連結ライフスタイル70.47億円からFun Standard単独70.33億円を引いた0.14億円には別会社や調整の可能性があり、仮に10トン×約1400円/kgとした観測用の代理値であって実績の断定ではない。営業損失4.87億円も通販への推定営業利益1.60億円との差額配賦である。年産500トンは国内サーモン消費約32万トンに対する上限約0.16%で、輸入品と他社養殖に競争する。出典:https://edinetdb.jp/company/E04382/text?fy=2026、https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rkb/1779832?display=1
リスクと懸念
地上波広告の構造的減少
放送免許とニュースの信用が残っても、広告主は視聴率に縛られず検索・動画・SNSへ予算を配分する。福岡での既存シェアを維持しても市場全体が縮めば販売枠と実質単価は減る。送信設備や放送会館、人員は固定費が大きく、広告収入の減少がそのまま利益率の低下につながる。
AIエージェント代替
BCCの受託開発・運用、RKB CINCの制作・派遣、広告素材制作は工数を販売する性格が強い。AIエージェントが設計・試験・事務処理・媒体運用を自動化すると、従来の人月契約や席課金の数量と手数料率が下がる。独自の正本データや解約率の定量的な堀を確認できないため、これらを一律に高成長とみなすのは危険だ。
陸上養殖の固定負担と資本毀損
宗像の養殖施設には約42億円の設備と約42億円のリース債務があり、生産開始直後から償却費が発生している。目標の年500トンを達成できても、餌料・電力・歩留まり・販売単価が想定を外れれば利益は出ない。出荷遅延や病気で設備減損が生じれば、帳簿上の純資産は短期間に減る。
通販のヒット依存・プラットフォーム依存
Fun Standardの通販は製品の企画力と店頭を持たない低コストが長所だが、競合が同じ商品を出し、Amazonや楽天の手数料と広告費が上がれば利益率が下がる。ゲーム機用フィルムのような大当たりは機種転換で消えることもある。増収とともに在庫や返品が膨らむ場合、帳簿利益を現金として回収できない。
資産の値段と流動性の錯覚
賃貸等不動産の鑑定・自己評価時価304億円をそのまま現金と数えると、金利3%下の必要利回りを無視する。保有株約116億円にも市場下落と売却時の税負担があり、さらに業務提携に絡む売却制約がある。賃貸損益・配当収益を利益倍率で評価したうえで資産価値を足す二重計上にも注意が要る。
少数株主への還元と金融負担
安定配当はあるが配当総額は純利益の約2割にすぎず、政策株の買い増しは資本効率改善とは逆方向だ。BCCは持分70%、通販子会社は90%で、連結利益の一部は少数株主に帰属する。養殖のリース固定払いとテレビ施設の更新投資を差し引くと、現金同等物や高い自己資本比率ほど自由に使える余力はない。
M&Aと放送制度の変化
2025年の通販買収は少額で利益を取り込んだ可能性がある一方、異分野への多角化は経営管理の難度を高める。認定放送持株会社は放送法・電波法の要件の下にあり、TOBや系列再編が起きても買い手や取引形態は自由ではない。免許更新はこれまで続いているが、制度の変更だけに企業価値を賭けない。
今後の分かれ目
- 地上波スポットの投下量とタイム枠の実収入が3期連続で増え、イベント・配信の営業利益も黒字で伸びたら
- 放送枠の実質数量縮小を緩め、やや楽観の確率を増やす。ただしイベント費用と内製制作の利益率を別に確認する。
- BCCの保守・クラウドの継続売上比率、解約率と価格改定実績が公表され、受託工数が減っても営業利益が拡大したら
- 記録の正本に近い部分だけAI代替の重みを下げ、システム部門の中立数量と長期成長率を見直す。単なる従業員増では評価しない。
- 宗像サーモンが年400〜500トンを安定出荷し、リース料・償却を負担した後に複数期の黒字を出したら
- 養殖を失敗する筋書きの確率を下げ、ライフスタイル部門の利益率を上方修正する。新しい増設は投下資本利益率を見てから判断する。
- Fun Standardの商品ヒットが複数ブランドで再現し、在庫回転・営業キャッシュフローが売上とともに改善したら
- 通販の数量と利益率の上振れを評価する。市場シェアよりも、広告費と返品を引いた自社ブランドの利益を優先する。
- 政策保有株を年間10億円規模で減らし、売却代金が自社株買いか増配として株主へ戻ったら
- 余剰資産の回収係数を0.75から1.0へ引き上げる余地が生まれる。資産を単に別の低収益事業へ再投資するなら引き上げない。
- 賃貸物件の賃貸損益が減る一方で修繕費や長期金利が上がり、査定利回りが7%超で常態化したら
- 不動産の開示時価ではなく賃貸純収入の還元価値を下げ、純資産が多くても十年後の価値を引き下げる。
- 新たなMBO・公開買付け・上場廃止方針が正式決定されたら
- 通常の十年価値分析を中止し、公表された買付条件と放送事業の認可要件に沿って別途検討する。
見ておくもの
- 福岡のテレビスポット投下量・RKBのタイム/スポット収入と放送関連営業利益率
- BCCの受託人年、保守・クラウド売上割合、継続率、自治体標準化案件の終息とAIによる工数圧縮
- RKB CINCの制作・派遣収入が媒体自社広告枠の収入と区別して開示されるか
- Fun Standardの複数ブランドの年間注文数、広告費率、在庫回転率と営業キャッシュフロー
- 宗像養殖場の年間トン数、歩留まり、kg当たりの実現価格、稼働率とリース料込みの損益
- 賃貸等不動産の賃貸損益・帳簿価額・時価・購入額とオフィス利回り
- 政策保有株の時価と売却額、年間配当総額、自社株買い、定期預金とリース債務の推移
倍率と資本コストの決め方
現時点の時価総額129.33億円や市場のPER・PBRは倍率の根拠に使わず、各事業の販売枠、従業員年、賃貸面積、EC受注、養殖トン数から2036年の売上と利益を計算した。資本コストは8%。どの上側の筋書きでも連結ROEがこれに届かず、利益部分の正当化PERは1÷8%=12.5倍の上限で統一した。
楽観・やや楽観・中立の時価総額は、事業の純利益=連結純利益−余剰現金の税後利息に正当化PERを適用し、余剰現金×回収係数0.75だけを加えた。賃貸資産の開示時価304億円と上場株式116億円は事実として認識するが、賃貸損益・保有株配当が連結利益に含まれる以上、それらの資産の税後価値を独立に加えて利益ベースの上限を超えない。悲観側だけは利益価値と独立した税後純換金資産の床を用いた。
やや悲観の床は、今の自己資本421.2億円を基準とするPBR0.2611586倍により110億円とした。将来の自己資本455億円に床の倍率を掛けておらず、悲観95億円より高いが中立130.25億円より低い。2026年の減価償却費15.19億円は既存資産の取得時の価格で続く一方、更新・新規投資の現金支出はインフレ3%下で増える。中立では2036年の償却費を設備更新分を含めおよそ17億円と考え、費用を一律1.34倍にはしない。2027年4月以後開始年度からの新リース会計により見かけの営業利益と純負債の表示が変わるため、十年の損益は現行の費用負担に揃えた。
五つの筋書きの時価総額は順に343.875億円、212.25億円、130.25億円、110億円、95億円。10年間の還元は順に32億円、26億円、21億円、10億円、3.5億円である。資本コスト8%で将来時価総額を十年、還元を五年割り引き、確率加重した現在価値は約80.87億円となる。現在時価総額との差は約−37.5%であり、結論を割高とした。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%、株式リスクプレミアム4.5%、事業の値決め力の弱さ0.5%。規模や株価変動の上乗せは行わない。