結論
ソフトテックスは、企業向けのシステム開発と技術者支援に、医療機関向けのIT導入・保守を組み合わせた会社である。長く持つ株主の目では、医療ITの顧客基盤と財務の強さを評価できるが、添付の株数を基準にした現在の評価は「やや割高」と判断する。10年先の業績そのものより、人月で稼ぐ事業がAIエージェントの普及後もどれだけ利益を残せるかが、株主価値を左右する。
2026年3月期の売上高は約36.4億円で、受託開発が28.7%、技術者支援が44.3%、医療ITが27.0%を占める。医療ITでは日本医師会のORCAを使う医療機関を約1,736件支援し、導入後の保守や電子カルテ連携でも収入を得る。この顧客接点は簡単に再現できないが、ORCAそのものの権利や医療データの正本を同社が独占しているわけではない。会社全体を強い堀で守られたソフトウェア企業として扱うのは適切ではない。
現預金は約9.1億円あり、有利子負債もほぼない。一方、直近の営業利益は約3億円、純利益は約2.1億円で、この数年間の利益の伸びは鈍い。2029年3月期に売上高45億円を目指す計画は前向きだが、2036年まで従来型の開発工数が増え続けるという前提は採れない。中立では医療ITがある程度持ちこたえても、受託開発と技術者支援の数量が減り、10年後の純利益は約1.4億円になると考える。
5つの筋書きから求めた現在価値は約12.7億円で、添付基準の時価総額約18.0億円を約29%下回る。ただし重要な留保がある。上場時の自己株式処分を反映すると、実際の流通株数は添付の806,100株より多い可能性が高い。公開資料上の912,200株を使えば時価総額は約20.3億円となり、同じ本質価値との差は約38%に広がる。したがって、株数の修正後には「割高」と判断すべき可能性がある。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、まず10年後も顧客がお金を払い続ける理由を探す。ソフトテックスの医療ITには、その答えがある。診療報酬請求は制度に従って正確に動かなければならず、医療機関は困ったときに対応してくれる業者を必要とする。長年の認定と導入実績は、売上高の小ささからは見えにくい強みである。ただし、顧客が離れにくいことと、売り手が自由に価格を上げられることは別の話だ。
次に、自分が会社を丸ごと所有したら、利益をどう使うかを考える。稼いだ現金が新たな開発人員の採用だけに消え、追加で得られる利益が資本コストを下回るなら、規模を追う意味は乏しい。技術者の稼働率を維持するために低採算案件を取ることも、短期の売上には役立つが株主価値を増やさない。医療機関との関係を守りながら、契約当たりの保守利益を高められるかが真の資本効率を決める。
純現金が厚く、借金による破綻を心配しなくてよい点は評価できる。しかし現預金のすべてが余剰資金ではない。社員への給与、賞与、顧客の案件を進める運転資金、取引先への支払いが必要だからだ。2026年3月期の営業キャッシュフローの弱さを見ると、会計上の純利益をそのまま所有者の自由になる利益として扱うことにも慎重でありたい。
最後に支払う価格を見る。中立の10年後には今より自己資本が積み上がっていても、純利益が減れば資本効率は下がる。帳簿上の自己資本が増えたこと自体は、株主の経済価値が同額増えた証拠ではない。医療ITの小さな堀と豊富な現金は本物だが、それだけでは人月事業の衰退を埋められない。現在の値段に十分な安全域があるとは判断しにくい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、人が顧客のシステムを作り、直し、動かす仕事である。請負開発には、古い基幹システムを刷新するモダナイズ、防災、物流、メディア、クラウドなどの案件がある。2026年3月期には請負開発が売上の28.7%を占め、技術者を派遣契約や準委任契約で提供する支援事業が44.3%を占めた。両者を合わせると全社売上の約7割となり、開発工数や技術者の稼働に依存する事業構造がはっきり見える。
技術者支援の顧客には大手システム会社と一般事業会社がある。大手向けではJBCCが2026年3月期売上の14.2%を占め、前年にはトヨタシステムズも10%を超えていた。顧客の業務を理解して継続案件を受けられることは強みだが、仕事の発注量や単価を最終的に決めるのは顧客側である。経営側は技術者の採用、教育、案件への配置を担い、その差額から利益を得るため、人員の稼働率が下がると収益性が急速に悪化しやすい。
もう一つの柱である医療ITは、日医標準レセプトソフトORCAの導入・保守、電子カルテとの接続、医療機関の機器や周辺システムの支援から成る。名古屋、東京、札幌の3拠点を持ち、2002年から認定サポート事業所として経験を積んできた。2026年3月期末のサポート件数は約1,736件で、翌4月の認定事業所情報には1,750件と記載されている。診療報酬改定や制度変更への対応を求められるため、顧客との接点は単発の開発より長い。
ただし医療ITの売上がすべて月額保守料というわけではない。2026年3月期には約9.83億円のうち約5.32億円が一時点で認識する売上で、期間にわたる売上は約4.51億円だった。導入機器や初期設定も含まれるため、顧客数をそのまま高収益の継続課金契約数とみなしてはいけない。利益の開示は全社単一セグメントであり、事業別営業利益率は会社の数字ではなく、原価構造を踏まえた分析上の推計である。
優良さと弱いところ
医療ITには、地域で積み重ねた信頼という小さいながらも意味のある堀がある。ORCAの認定サポート事業所として長く活動し、新規導入件数で継続的に表彰されている。電子カルテ、診察券発行システム、保険請求業務を接続する経験も蓄積してきた。医療機関にとって障害時の対応力や制度改正への追随は重要であり、見知らぬ業者へ容易に乗り換えない理由になる。
それでも、会社全体の堀は弱いと判断する。医療機関の解約率が年5%未満であることや、移行に年単位を要すること、制度改正のたびに値上げを通したことなど、強い価格決定力を立証する数字は確認できない。ORCAは同社の独占製品ではなく、他の認定事業者も扱える。受託開発と技術者支援では、顧客固有の業務知識は役立つものの、労働時間と利益の関係を切り離す独自資産がまだ小さい。
財務は大きな長所である。2026年3月期の自己資本比率は69.3%で、現預金は約9.1億円に達する。景気後退や案件の遅延が起きても、すぐに資金調達を迫られる会社ではない。しかし、ROEが16~18%台にあることだけで追加投資の利回りが高いとは言えない。2024年3月期から2026年3月期までに自己資本は約3.3億円増えた一方、純利益の増加は約0.2億円で、単純な増分利益率は資本コストに届かない。観察期間は短いが、資本を増やすほど利益も増えるという証拠は乏しい。
現金の質にも注意が要る。2026年3月期は純利益が約2.1億円あったのに、営業活動による現金収入は約0.15億円にとどまった。売掛金と契約資産の増加が大きく、利益がそのまま自由に使える現金になっていない。研究開発費も約0.10億円と売上の0.3%弱であり、AI時代に競争相手が使えない製品を次々に生み出せる体制と評価するには、まだ実績が足りない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は、2025年に約7.5兆円という大きな市場である。基幹システムの刷新、クラウド移行、セキュリティ対策、データ活用が需要を支える。ソフトテックスのソフトウェア開発サービス売上は約26.6億円なので、単純な市場対比では約0.035%にすぎない。富士通、日立製作所、NEC、NTTデータなどの大手が存在するが、各社の事業範囲は異なるため、売上高を機械的に比べて厳密な競争シェアを断定することはできない。小規模な会社が専門領域で案件を獲得する余地はある一方、市場全体の成長率がそのまま同社の成長率になるわけでもない。
医療ITは市場の定義を分けて考える必要がある。ORCAの全国稼働施設数は2026年10月時点で18,404施設であり、ソフトテックスの2026年3月期末サポート件数と比較すると、同社の支援対象は約9.4%に当たる。この比率はORCA稼働施設を分母にした参考値であり、日本の医療IT市場全体のシェアではない。競争相手には全国のORCA認定サポート事業者のほか、ウィーメックスのメディコムや富士通Japanなど、別の医事会計・電子カルテ基盤を提供する会社がある。
医療機関の電子化、オンライン資格確認、電子処方箋、診療報酬改定への対応は、当面の仕事を生む。一方、国内の診療所数が際限なく増えるわけではなく、閉院や統合、医療機関のクラウド移行も起こる。ORCAを使う施設の総数と、そのうち同社が継続支援できる割合を分けて見る必要がある。中立では2036年のORCA稼働施設を約17,500施設、同社の支援比率を約8.7%と想定する。これは現在の顧客基盤をほぼ守りながらも、技術や提供方法の変化で一部の接点を失う姿である。
最大の構造変化はAIエージェントである。従来は技術者が仕様を読み、コードを書き、検査し、画面を操作していた。今後は顧客自身や少人数の担当者が、AIに指示して同じ成果を得る場面が増える。国内のIT投資総額が増えても、開発会社へ発注される人月が減る可能性がある。過去の人手不足による単価上昇をそのまま延長することはできない。同社がAIを活用する計画は確認できるが、AIエージェントを自社商品として販売し、金額を伴う売上が立っている証拠は確認できないため、AI需要を新しい売上として先取りしない。
物価は年3%、金利は10年国債3%、ドル円は150円という共通前提を使う。人件費と顧客のIT予算は名目では増えるが、開発工数の減少を物価上昇だけで補えるとは限らない。医療ITでも、制度対応は残る一方で、請求事務や操作支援の自動化は単価を押し下げる。技術者不足が続く市場と、人が行う仕事そのものが減る市場が、同時に存在する10年になる。
資本政策と M&A
会社は2029年3月期の中期目標として、売上高45億円、従業員400人、売上高経常利益率10%、総資本経常利益率15%、販管費率15%、自己資本比率50%、外部負債依存率10%を掲げている。2026年3月期の実績は売上高約36.4億円、従業員330人、経常利益率約8.1%である。計画の中心は採用と高付加価値案件の獲得だが、人月依存から脱却するという方針も示している。10年先の価値を考える際には、採用人数の増加がそのまま株主利益の増加になるとは考えない。
配当は継続しており、2026年3月期の配当総額は約0.54億円だった。2027年3月期については上場記念配当を含む増配予想も公表している。一方、確認した中期計画には配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額に関する具体的な数字の約束がない。現時点の還元は利益の約4分の1にとどまり、将来の余剰現金を必ず全額株主へ戻すと評価することはできない。
過去には事業の統合や提携を通じて体制を整えてきたが、大規模な買収を繰り返して利益を成長させた実績は確認できない。今後は人員獲得のための買収よりも、医療ITで自社の継続収益を増やす投資や、開発作業の省力化を優先する方が望ましい。買収によって売上が増えても、買った事業が従来型の人月商売であれば、同じ代替リスクを高い価格で引き受けることになる。
株主構成と上場時の資本異動は重要である。2026年4月には106,100株の自己株式を募集により処分し、さらに新株発行が行われた。したがって、2026年3月末の自己株式数を上場後の発行済株式数からもう一度差し引くと、株数を過少計上するおそれがある。また、2018年発行の新株予約権が37,000株分存在する。余剰現金の扱いと既存株主の希薄化を考慮しなければ、財務の強さを株価の安全域と取り違えてしまう。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
医療ITの顧客基盤は、市場が思うよりも長持ちする可能性がある。ORCAの支援実績は約1,736件に達し、直近の新規導入件数でも全国上位に入った。日々の診療と保険請求を支えるシステムでは、安さだけで業者が選ばれるわけではない。診療報酬改定への対応、電子カルテとの接続、障害時の支援を一体で提供できることは、地域の医療機関にとって価値がある。
医療機関のクラウド化は、既存業者を不要にするだけではない。古い端末や周辺システムを接続し直す仕事も生み、移行後の監視や保守にも需要が残る。同社は名古屋、東京、札幌の拠点を通じて顧客と接しており、完全な遠隔対応だけでは済まない問題を扱える。ORCAの認定事業者として蓄積してきた現場知識が、他のIT企業との違いになる。
受託開発でも、すべての仕事がAIで消えるわけではない。防災システム、物流の基幹処理、長く稼働してきた企業システムでは、業務の制約を理解し、障害の責任を引き受ける人間が必要だ。AIによって単純な作業を減らせれば、同社の技術者は難しい案件へ集中できる。社内の生産性改善が進めば、仕事量が横ばいでも営業利益率を引き上げられる余地がある。
2029年3月期の売上高45億円という計画も、極端に非現実的な数字ではない。2026年3月期にはソフトウェア開発の受注残高が増え、医療ITでも顧客数が拡大していた。借金に依存せず採用と新サービス開発を進められるため、景気の悪い年に研究や教育をやめずに済む。医療ITの継続収益がさらに厚くなれば、全社の利益の質は現在より改善しうる。
資本配分が慎重に行われ、余剰資金の株主還元も進めば、規模の小ささはむしろ経営の機動性につながる。大手が引き受けにくい小口の保守や業種特化の案件を取り込み、医療ITの信頼を守る経営が続けば、今の時価総額を上回る価値を生む道筋は残っている。
慎重な見方
売上の73%を占めるソフトウェア開発サービスは、AIエージェントの普及で商売の単位そのものが変わりうる。顧客がAIを使って仕様からコード、検査、運用までを少人数で処理できれば、開発会社に発注する工数は減る。生産性が上がっても、それを顧客が値下げとして受け取るなら、技術者を抱える会社には利益が残らない。価格と数量の双方を顧客に握られる下請け型の事業では、この圧力が特に強い。
JBCC向けの売上が全社の14.2%を占めることも無視できない。主要顧客が技術者の稼働を減らす、案件を内製化する、AIを使う別の取引先に切り替えるだけで、同社の収益は大きく変わる。防災や物流の専門知識は強みだが、その知識を他社が利用できない独自データやソフトウェアとして収益化している証拠は限定的である。
医療ITも安全地帯ではない。ORCAは同社の独占製品ではなく、他の認定サポート事業所も取り扱える。医療機関のクラウド化が進めば、従来の端末設定や操作支援が減り、顧客との接点をプラットフォーム側が直接持つ可能性がある。売上の半分以上が一時点で認識されているため、すべてを解約されにくいストック収益として評価することもできない。
2026年3月期の研究開発費は約0.10億円にすぎず、独自のAI製品が事業の中心となった実績はまだない。現状の人員採用と開発受託を延長する中期計画だけでは、10年後の競争力を十分に説明できない。2027年3月期第1四半期の営業利益が小幅にとどまったことも、案件の構成や稼働率が変わると利益が細る性質を示している。
財務が良好でも安心はできない。余剰現金は少数株主が自由に使えるわけではなく、採算の悪い事業を維持するために消費される可能性がある。上場時の株式処分と新株予約権による株主の取り分の変化もある。将来の利益が小さくなれば、現在の高いROEは維持できず、会社を長く保有するだけで期待した収益を得られるとは限らない。
どちらに重みを置いたか
医療ITの顧客基盤と財務の安定性は強気の見方を支えるが、会社全体の約7割が人月に依存する構造は重い。ORCA関連の実績は評価するものの、価格決定力を伴う独占的な基盤とは確認できなかった。確率は楽観側29%、中立30%、悲観側41%と慎重な方向に寄せた。下側を厚くした会社固有の理由は、JBCCへの売上集中、ORCAの第三者所有、研究開発費の小ささ、利益と営業現金収入の乖離である。AI代替による縮小は中立の数量と10年後以降の成長率に織り込んでおり、資本コストや悲観確率で同じ理由を重複して引いていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,511 円20 億円(+ 還元の換算額還元の合計 553 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 1,571 円13 億円、今との差 −30.2%、 期待の年率 +3.5%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 5,972 円48 億円 | 1,032 円8 億円 | +211.3% | +13.4% | 770 円6 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,247 円34 億円 | 830 円7 億円 | +125.7% | +9.5% | 914 円7 億円 |
| 中立 | 30% | 2,403 円19 億円 | 581 円5 億円 | +32.6% | +3.2% | 895 円7 億円 |
| やや悲観 | 26% | 973 円8 億円 | 356 円3 億円 | −41.0% | −5.8% | 345 円3 億円 |
| 悲観 | 15% | 771 円6 億円 | 154 円1 億円 | −58.9% | −9.1% | 139 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,511 円20 億円 | 553 円4 億円 | +36.2% | +3.5% | 3,064 円25 億円 |
今の株価時価総額 2,250 円18 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 医療顧客を維持し、開発効率が大幅に改善 利益 4 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,972 円48 億円
医療ITで培った信頼が続き、ORCA支援の顧客数はほぼ維持される。診療報酬制度や電子カルテの仕様変更に対応する能力が認められ、周辺の保守やシステム接続でも仕事を確保する。全国のORCA稼働施設が約18,500件と横ばいで推移し、同社は約9.4%の支援比率を守る。
受託開発では、防災、物流、モダナイズの専門知識が高付加価値案件につながる。顧客の仕様調整や障害対応など、責任を伴う仕事が残るため、競合との差別化が一定程度続く。AIの利用によって社内のプログラミングや検査が効率化され、従来より少ない請求人月でも採算を改善する。AI商品そのものによる未確認の新規売上は織り込まない。
会社は大きな買収に走らず、医療ITの支援品質と技術者の能力向上に資本を配分する。売上高は約45.6億円、営業利益は約5.3億円となり、現在より高い利益率を確保する。資産を過剰に積み増さずに株主還元も続け、2036年の自己資本は約34億円となる。既存の小さな堀を維持しながら利益の出し方を改善した、実現すれば価値のある10年である。
- 請負開発・業務ソリューション:数量 950(顧客向け請負開発の年間請求可能人月数。社内技術者と外注を含む実質数量の推計)× 価格 0.01(請求可能人月当たりの売上高。億円/人月、名目)→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。実質人月は現在比0.99倍、単価は1.33倍。防災・物流・基幹刷新の高付加価値化で営業利益率12%。
- 技術者支援・準委任・派遣:数量 1,500(派遣・準委任契約の年間請求可能技術者人月数。実質数量の推計)× 価格 0.01(技術者人月当たりの平均売上高。億円/人月、名目)→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。実質人月0.96倍、単価1.33倍。単純作業の縮小を案件単価と省力化で補う。
- 医療IT・ORCA導入保守:数量 1,730(年間の医療機関サポート対象施設数。1施設を1契約単位の代理数量とする)× 価格 0.01(サポート施設1件当たりの年間総売上高。億円/施設・年、導入機器や一時売上を含む名目の混合単価)→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。ORCA市場約18,500件、支援比率約9.4%。混合単価1.15倍弱、保守運営の効率化で利益率18%。
倍率:資本コストk=7.75%、2036年の全社ROEは約10.9%、弱い堀による超過利益の残存割合は1/3でRONICは約8.8%。ただし人月事業と医療IT支援を合わせた2036年以降のg_longは名目0%なので、正当化PER=(1−0/RONIC)÷(0.0775−0)=12.903倍。事業純利益は余剰現金4.0億円の税後利息相当0.056億円を控除して評価し、現金には戻り方75%を掛ける。PERは式の上限そのものとし、過去や同業の市場倍率を使わない。
確率:2029年の中期目標を達成した後も顧客との関係を保ち、技術者の生産性と利益率を大きく改善する筋書き。ただし有償AIエージェント商品の売上実績は確認できないため、受託開発と技術者支援の実質数量は現在以下にとどめ、価格も物価上昇の範囲に抑える。
やや楽観 18% 医療ITと専門開発が下支えし利益を維持 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,247 円34 億円
企業の基幹システム刷新は続き、ソフトテックスも防災や物流の案件を受け続ける。ただし、顧客はAIを使って開発・運用の工数を減らしていく。従来のように採用人数を増やせば売上が増える状況ではなくなり、会社は技術者を難しい案件に集中させる方向へ転換する。
医療ITでは全国のORCA稼働施設が約18,100件となり、ソフトテックスの支援比率は約9.1%を保つ。新規導入や機器販売は伸び悩むが、診療報酬改定と電子カルテ連携への対応を通じて顧客を維持する。保守の遠隔化によって人件費を抑え、医療ITの利益率は現在より改善する。
大規模な買収で売上を膨らませず、案件選別と配当を重視する経営が続く。売上高は約38.9億円、営業利益は約3.7億円となり、名目売上は現在を上回る。株主還元も継続するが、現金の全額還元まで踏み込むとは考えない。事業はなお必要とされ、現在に近い稼ぐ力を10年後にも残す姿である。
- 請負開発・業務ソリューション:数量 800(顧客向け請負開発の年間請求可能人月数。社内技術者と外注を含む実質数量の推計)× 価格 0.01(請求可能人月当たりの売上高。億円/人月、名目)→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。実質人月0.83倍、単価1.31倍。専門案件の比率上昇で営業利益率10%。
- 技術者支援・準委任・派遣:数量 1,270(派遣・準委任契約の年間請求可能技術者人月数。実質数量の推計)× 価格 0.01(技術者人月当たりの平均売上高。億円/人月、名目)→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。実質人月0.81倍、単価1.30倍。主要顧客との取引は続く。
- 医療IT・ORCA導入保守:数量 1,650(年間の医療機関サポート対象施設数。1施設を1契約単位の代理数量とする)× 価格 0.01(サポート施設1件当たりの年間総売上高。億円/施設・年、導入機器や一時売上を含む名目の混合単価)→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。ORCA市場約18,100件、支援比率約9.1%。混合単価は1.12倍。
倍率:2036年のROEは約8.6%でk=7.75%をやや超え、弱い堀のRONICは約8.0%。AIエージェント代替を踏まえた長期名目成長率g_longは0%なので、正当化PERは1÷k=12.903倍。全社純利益2.621億円から余剰現金3.5億円の税後利息相当0.049億円を除いた事業純利益を評価し、余剰現金には75%の戻り方を適用する。
確率:医療ITの顧客基盤が緩やかな縮小にとどまり、開発受託では単価上昇がAIによる数量減をかなり補える場合。既存顧客の信頼関係と無借金の財務があるため、十分に考えられる上振れとみる。
中立 30% 人月の減少を医療ITが一部補う 利益 1 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,403 円19 億円
IT投資そのものはなくならない。防災や物流、企業の基幹システムには引き続き更新需要がある。しかし、顧客がAIを使って開発や検査の大半を効率化するため、従来の工数単位で外部に発注する量は減る。ソフトテックスは主要取引先との関係を維持するが、新しい契約では従来ほど多くの技術者を配置できなくなる。
医療ITの顧客は比較的長く残る。全国のORCA稼働施設が約17,500件になり、同社は約1,530件を支援する。保守や制度改正の仕事は続くものの、操作支援の一部は自動化され、新規導入時の機器売上も減る。医療ITの売上は現在に近い水準を保ちながら、全社での構成比を高める。
2029年の中期目標を達成する局面があっても、その後の事業環境まで保証するものではない。人員採用を抑え、技術者の再教育を進める必要がある。売上高は約31.8億円、営業利益は約2.1億円、純利益は約1.4億円となる。配当を続けながら自己資本は積み上がるが、稼ぐ力は現在より弱くなる。倒産からは遠い一方、株主にとって高い複利成長を期待できる事業ではなくなる。
- 請負開発・業務ソリューション:数量 625(顧客向け請負開発の年間請求可能人月数。社内技術者と外注を含む実質数量の推計)× 価格 0.01(請求可能人月当たりの売上高。億円/人月、名目)→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。実質人月0.651倍、単価1.31倍。AIエージェントが仕様作成・実装・検査の工数を削減。
- 技術者支援・準委任・派遣:数量 975(派遣・準委任契約の年間請求可能技術者人月数。実質数量の推計)× 価格 0.01(技術者人月当たりの平均売上高。億円/人月、名目)→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。実質人月0.625倍、単価1.30倍。派遣・準委任の稼働縮小と顧客内製化を反映。
- 医療IT・ORCA導入保守:数量 1,530(年間の医療機関サポート対象施設数。1施設を1契約単位の代理数量とする)× 価格 0.01(サポート施設1件当たりの年間総売上高。億円/施設・年、導入機器や一時売上を含む名目の混合単価)→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。ORCA市場約17,500件、支援比率約8.7%。件数0.881倍、混合単価1.13倍。
倍率:2036年のROEは1.438÷26.6で約5.4%となり、資本コスト7.75%を下回る。ROEがk以下なので、伸びを価値に加算せず、正当化PERの上限1÷k=12.903倍を用いる。さらにAIエージェント代替を理由とするg_long=0%も一致する。事業純利益は1.438−3.0×1.4%=1.396億円、余剰現金の回収価値は3.0×0.75=2.25億円。現在の市場PERや同業倍率は用いない。
確率:人月・工数型に指定された10年の中立数量0.55~0.75倍に従い、請負開発は0.65倍、技術者支援は0.625倍とする。医療ITの支援施設は0.88倍、混合単価は1.13倍。下に寄せる理由:顧客集中、第三者が所有するORCA基盤への依存、低い研究開発投資、営業現金収入の弱さがあり、中立より下の事業再編リスクも相応に大きい。
やや悲観 26% 主要顧客の工数削減が利益を圧迫 利益 0 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 973 円8 億円
大手のシステム会社がAIによる開発効率化を進め、外部の技術者を以前ほど必要としなくなる。ソフトテックスは既存顧客の保守や難しい開発案件を残すが、発注量の減少を十分に補えない。採用を抑えても固定的な人件費、教育費、事務所費用が残るため、売上の減少以上に営業利益が縮む。
医療ITではORCAを使う施設の一部が他のクラウドサービスへ移行する。全国のORCA稼働施設は約16,500件、同社の支援比率は約7.6%となる。長く付き合った顧客の保守は残るが、新規導入や機器販売が減り、混合単価にも値下げ圧力が及ぶ。認定サポート事業所であることは一定の信頼につながるものの、競合から顧客を完全に守ることはできない。
売上高は約25.1億円、営業利益は約0.6億円まで低下する。配当は縮小し、会社は現金を使いながら事業を建て直す。事業としては黒字を保つが、従来の高ROE企業としての姿は失われる。残存利益を資本コストで評価した金額より、回収可能な現金と資産の価値を重視する筋書きである。
- 請負開発・業務ソリューション:数量 530(顧客向け請負開発の年間請求可能人月数。社内技術者と外注を含む実質数量の推計)× 価格 0.01(請求可能人月当たりの売上高。億円/人月、名目)→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。実質人月0.55倍。競争で単価上昇が物価に届かず、営業利益率3.5%。
- 技術者支援・準委任・派遣:数量 890(派遣・準委任契約の年間請求可能技術者人月数。実質数量の推計)× 価格 0.01(技術者人月当たりの平均売上高。億円/人月、名目)→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。実質人月0.57倍。主要顧客の外部発注削減が直撃。
- 医療IT・ORCA導入保守:数量 1,260(年間の医療機関サポート対象施設数。1施設を1契約単位の代理数量とする)× 価格 0.01(サポート施設1件当たりの年間総売上高。億円/施設・年、導入機器や一時売上を含む名目の混合単価)→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。ORCA市場約16,500件、同社支援比率約7.6%。導入売上減少で利益率8%。
倍率:2036年の純利益0.447億円は資本コスト7.75%で資本化すると約5.77億円であり、余剰現金2.0億円の回収価値と税後利息調整を加えても約6.9億円にとどまる。一方、現預金・売掛債権等の税後回収額から優先債務を除いた床は8.2億円であるため、こちらを採用する。PBR0.5942倍は2026年3月期の自己資本13.8億円に対する比率であり、2036年までに積み上げた23.6億円を分母にして床を膨らませていない。市場の過去のPBRを根拠にしない。
確率:大口SIerの開発内製化や契約見直しにより受託開発・技術者支援の稼働が落ち、医療ITの導入案件も鈍化する。全社売上の73%が人月に依存しているため、小さな稼働率低下が利益を大きく減らす。
悲観 15% 人月商売が構造的に負け、現金を消費 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 771 円6 億円
受託開発と技術者支援の仕事の形が根本的に変わる。顧客企業がAIエージェントを使ってシステムの修正、検査、運用を内製化し、大手SIerも下請けへの発注を大幅に削減する。ソフトテックスは一部の保守や現場対応を残すが、従来の技術者数を維持できなくなる。採用と教育に投じてきた資本の収益性が下がり、事業縮小の費用も発生する。
医療ITでは、ORCAのクラウド化と医療機関の統合が進む。全国のORCA稼働施設は約15,500件となり、同社の支援対象は約1,030件へ減る。診療報酬請求そのものは必要とされ続けるが、操作支援や端末の初期設定を外部業者へ頼む場面が減る。既存の顧客関係が残っても、支援の対価を十分には受け取れない。
売上高は約17.4億円と現在の半分弱になる。固定費を削減しきれず、営業損失は約0.6億円に達する。配当は早い段階で抑制され、余剰現金は事業の維持と撤退費用に使われる。大型買収で立て直そうとしても、高い買収価格と事業統合費用が負担になりうる。財務の余裕があるため即座の倒産までは想定しないが、会社の評価の中心は利益ではなく、負債を返したあとに売却・回収できる資産へ移る。
- 請負開発・業務ソリューション:数量 380(顧客向け請負開発の年間請求可能人月数。社内技術者と外注を含む実質数量の推計)× 価格 0.01(請求可能人月当たりの売上高。億円/人月、名目)→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。実質人月0.40倍、価格上昇は限定的。固定的な技術者費用が利益を圧迫。
- 技術者支援・準委任・派遣:数量 650(派遣・準委任契約の年間請求可能技術者人月数。実質数量の推計)× 価格 0.01(技術者人月当たりの平均売上高。億円/人月、名目)→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。実質人月0.42倍。顧客の内製化と契約終了が続く。
- 医療IT・ORCA導入保守:数量 1,030(年間の医療機関サポート対象施設数。1施設を1契約単位の代理数量とする)× 価格 0.01(サポート施設1件当たりの年間総売上高。億円/施設・年、導入機器や一時売上を含む名目の混合単価)→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。ORCA市場約15,500件、支援比率約6.6%。現場保守は残るが導入収益が失われる。
倍率:2036年の営業損益と純損益が赤字であり、赤字に正のPERを掛けて価値を出すことはできない。税効果によって損失が自動的に70%へ縮むとも仮定しない。残存現預金、売掛債権の回収可能額、換価可能な備品等から優先債務を差し引いた6.5億円を床とする。現在の自己資本13.8億円に対して約0.471倍の参考PBRに相当するが、これは清算可能資産から出た結果であり過去のPBRを用いた値付けではない。
確率:大口顧客が開発工程の多くをAIや内製に切り替え、医療ITでも基盤提供者と大手医事システム企業が顧客接点を奪う複合的な失敗。人月の売上が現在の半分前後となり、収益は赤字化する。現在の純現金があるため倒産を当然視はしないが、長年の資産消費を伴う。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
請負開発・業務ソリューション
モダナイズ、防災、物流、メディア、クラウドなどのシステムを請け負って開発する。契約には成果物と工数の要素があり、技術者の作業量に売上が結び付く。
| 数量顧客向け請負開発の年間請求可能人月数。社内技術者と外注を含む実質数量の推計 | 価格請求可能人月当たりの売上高。億円/人月、名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 960 | 0.01 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 625 | 0.01 | 9 | 1 |
取り方:有報の請負開発売上構成比28.7%と全社売上36.396億円から約10.45億円を算出。数量・平均単価は非開示なので、ソフトウェア開発部門の従業員約250人を基礎に、技術者支援と合わせた年間請求可能人月を2,520人月、請負開発の担当を960人月と推定した。単価は売上÷960人月で約109万円/人月。会社が公表した人月単価ではない。営業利益は事業別非開示のため8.6%の分析上の利益率を割り当て、本社共通費は将来シナリオのadjust_okuで控除する。AIエージェント代替の型は人月・工数で売るSI受託とする。
技術者支援・準委任・派遣
JBCCなどの大手SIerや一般企業に技術者を提供し、開発、運用、保守、インフラ構築を支援する。人材の稼働と契約単価が収益の基礎になる。
| 数量派遣・準委任契約の年間請求可能技術者人月数。実質数量の推計 | 価格技術者人月当たりの平均売上高。億円/人月、名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,560 | 0.01 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 975 | 0.01 | 13 | 1 |
取り方:有報の技術者支援44.3%を全社売上36.396億円に掛けて約16.12億円とした。内訳はSIer向け派遣7.2%、準委任17.3%、直接顧客向け派遣2.8%、準委任17.0%。契約人数・単価の直接開示はないため、請負開発と合わせて年間2,520人月のうち1,560人月を技術者支援に配分し、平均約103万円/人月を逆算した。約250人のソフトウェア開発部門従業員のうち年間平均210人相当が請求対象となる計算であり、実数ではない。営業利益率7.4%も推定。AIエージェント代替の型は事務系人月・工数とする。
医療IT・ORCA導入保守
日医標準レセプトソフトORCAの導入、保守、機器提供、電子カルテ連携を医療機関に提供する。継続支援だけでなく新規導入や機器販売も含まれる。
| 数量年間の医療機関サポート対象施設数。1施設を1契約単位の代理数量とする | 価格サポート施設1件当たりの年間総売上高。億円/施設・年、導入機器や一時売上を含む名目の混合単価 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,736 | 0.01 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,530 | 0.01 | 10 | 1 |
取り方:会社の2026年3月期決算説明資料でORCA導入件数1,736件を確認。有報の医療IT売上は9.830億円で、1件当たり約56.6万円/年となる。この単価は月額保守料ではなく、機器や新規導入を含む混合単価である。医療ITの売上認識は一時点5.319億円、一定期間4.511億円で、継続型の比率は約45.9%。営業利益率13%はセグメント利益非開示のための推計。ORCAの全国稼働施設18,404件に対する同社支援件数の比は参考値で約9.4%であり、医療IT市場全体のシェアではない。独占的な記録の正本の証拠が2つ以上確認できないため、AIエージェント代替の型は操作支援・業務ソフト周辺サービスに準じて保守的に扱う。
リスクと懸念
AIエージェント代替
請負開発28.7%と技術者支援44.3%は、人が作業する時間を売上に換える部分が大きい。AIが仕様作成、実装、検査、運用を担えば、顧客のIT予算が増えても外注人月は減りうる。中立では実質数量をそれぞれ約0.65倍、0.63倍とし、2036年以降の名目成長率も0%に抑えた。会社が自社のAIエージェント製品で有償売上を得た証拠が確認できれば、再評価の余地がある。
医療ITの堀の取り違え
ORCAの導入実績と認定は価値があるが、ORCAの権利を独占しているわけではない。全国の認定事業者、医事システムを持つ大手企業、クラウド基盤の提供者が競争相手となる。保守継続率、契約更新単価、法令改正時の価格改定実績が公開されなければ、現場で築いた信頼を高い永久成長率に結び付けることはできない。
大口顧客と稼働率
2026年3月期にはJBCC向けが売上の14.2%を占めた。大口顧客が一部の開発を内製化したり、AIによって外部人員の必要数を減らしたりすると、同社の稼働率と単価がともに悪化する。人件費と教育費は短期間では減らせず、売上が数%減っただけでも営業利益への影響が大きくなりうる。
会計利益と現金収入の乖離
2026年3月期は純利益約2.1億円に対して営業活動による現金収入が約0.15億円にとどまった。売掛金・契約資産が増加しており、利益が実際に回収されるまでには時間がかかる。大型案件の検収が遅れたり、取引先の支払条件が不利になったりすると、帳簿上の黒字を維持しても余剰現金が減る可能性がある。
採用・固定費と研究開発の不足
2029年3月期の計画は従業員400人を目指しているが、AIによって売上を生む工数が減る場合、増員は固定費負担になりうる。2026年3月期の研究開発費は約0.10億円で、独自製品への転換が進んでいるとはまだ言えない。人員を増やすことと、追加投資から資本コストを超える利益を得ることを分けて検証する必要がある。
株式数・希薄化と資本配分
2026年4月の上場時には106,100株の自己株式が処分された。その後の発行済株式912,200株から再びこの106,100株を差し引くと、時価総額を過少に算出するおそれがある。37,000株の潜在株式も残る。さらに余剰現金の全額還元に関する数値目標はなく、買収や新規事業へ投じた資金が低収益に終わるリスクもある。
今後の分かれ目
- ORCAの支援施設数が1,900件を超え、かつ保守・継続収益の比率が60%以上へ上昇したら
- 医療ITの実質数量と利益率を上方修正できる。ただし同社独自の解約率や値上げ実績も確認し、記録の正本に準じる強い堀を持つかを別に判断する。
- 受託開発と技術者支援の人月当たり単価が上昇し、稼働率を維持したまま営業利益が増えたら
- AI代替を価格転嫁や社内効率化で補う力の証拠となる。中立の人月数量と営業利益率を上方修正するが、単価上昇が契約内容の変更による見かけ上の数字ではないかを確かめる。
- 自社のAIエージェント製品について有償契約数と売上高が開示されたら
- 単なるAI利用による社内効率化と、AIを新しい商品として売る事業を区別する。継続売上の金額が確認できた部分だけ、楽観・やや楽観の数量前提と長期成長率を見直す。
- JBCC向け売上が大幅に減少するか、ソフトウェア開発の受注残高が連続して前年割れになったら
- 稼働率の低下と本社費の負担増を反映し、やや悲観・悲観の確率を高める。新しい顧客で減少分を実際に補えているかを確認する。
- 営業キャッシュフローが純利益に近い水準で複数年続き、配当性向50%以上などの方針が公表されたら
- 余剰現金が少数株主へ戻る確実性が高まる。実際の支払いを確認したうえでexcess_cash_returnを0.75から1.0へ見直す。
- 最新の発行済株式数と自己株式数が確認され、上場後の流通株式数が912,200株と確定したら
- 添付の806,100株を用いたbasisを訂正する。同じ企業価値でも現在の時価総額が大きくなるため、割安・割高判定を改める。潜在株式37,000株との二重計上にも注意する。
見ておくもの
- 請負開発28.7%、技術者支援44.3%、医療IT27.0%という売上構成の変化
- ソフトウェア開発サービスの受注高・受注残高・主要案件の検収状況
- JBCC向け売上比率と上位顧客の内製化・発注方針
- 請求可能人月、技術者の稼働率、契約単価の開示と変化
- ORCAサポート対象施設数、全国ORCA稼働施設数、同社の支援比率
- 医療IT売上のうち一時点売上と一定期間にわたる売上の比率
- AIエージェントの自社製品売上と解約率、実際の値上げ実績
- 営業キャッシュフロー、売掛金・契約資産、現預金の推移
- 2029年3月期の売上高45億円と経常利益率10%の達成状況
- 配当性向、自社株買い、上場後の正味株式数、新株予約権の行使
倍率と資本コストの決め方
企業価値は現在の株価や同業のPERから逆算していない。有報の事業別売上構成から請負開発・技術者支援・医療ITを分け、実質の人月数または支援施設数と名目単価を別々に想定した。AIエージェント代替を反映した中立の人月数量は0.65倍と0.625倍、医療ITは0.881倍である。2036年以降の名目成長率は0%、資本コストは7.75%で、楽観から中立のPERは正当化式の12.903倍を用いた。現金は必要運転資金を除く余剰分だけを別に足し、戻り方は75%とした。悲観側は市場の過去のPBRではなく、実際に回収できる現金・債権から債務を除いた床で評価した。
最重要の未解決点は株数である。添付のbasisは806,100株だが、2026年3月期有価証券報告書では、同年4月に106,100株の自己株式を処分し、提出日現在の発行済株式数は912,200株と記載されている。処分済みの自己株式をもう一度差し引く計算は適切でない可能性が高い。本JSONは依頼に従い添付のbasisをそのまま使用したため、評価額約12.7億円と時価総額約18.0億円の差は約マイナス29%となる。912,200株を基準にすれば時価総額は約20.3億円、差は約マイナス38%で「割高」に変わる。2026年4月の株式処分による自己資本・現金の増加も、添付の2026年3月期財務数字とは基準日が異なる。したがって、実際の投資判断や機械処理に使用する前に株数と期首自己資本を修正する必要がある。事務所賃借に関する新リース会計基準の表示変更は、事業の稼ぐ力へ重ねて負債控除しない。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本資本コスト7.5%に、事業の値決め力と純現金から求めたquality+0.25%を加えた。個別の顧客集中やガバナンスは資本コストへさらに加算せず、筋書きと確率で扱う。