結論
さくらインターネットは、石狩のデータセンターを軸に、クラウド・レンタルサーバー・GPU貸しを手がける国産のインフラ企業だ。筆者の結論は、10年後の本質価値は今の時価総額を大きく下回る、つまり割高というものだ。一番の理由は、売上が伸びても利益が残りにくい事業構造にある。
稼ぎの土台は、さくらのクラウドなど従来のサービスである。ここは国産であることが武器になった。2026年3月に、国産では初めてガバメントクラウドの本番提供が始まった。官公庁や自治体の仕事が長い目で積み上がる。
伸びの主役は、生成AI向けのGPU貸しだ。ただし中身は設備産業である。サーバーを買い、数年で償却し、また次の世代を買う。前期は大口顧客が抜けて営業赤字に沈んだ。この事業は、1社の契約の有無で利益が大きく振れる。
筆者は、GPUの需要そのものは長く伸びると見る。しかし貸出単価は、新しいGPUが出るたびに下がる。売上が10年で数倍になっても、借入と償却で利益率は1割ほどに収まる。資本コストを超える稼ぎが続くかどうかが微妙な会社だ。
今の値段は、GPU事業が大きく成功する道をほぼ織り込んでいる。分かれ目は、国内の需要を国産勢の中で取り切れるかと、価格競争に耐えられるかの2点である。確率の置き方で結論が動きやすい点には注意が要る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は、事業が10年後にどう稼ぐかが読みにくい。読みにくい事業には、確信を持てない。安全域を厚く取るべきだ。
GPU貸しは、買った機材が数年で古くなる事業である。稼いだ利益の多くは、次の機材に消える。株主が自由に使える利益、つまりオーナー利益は、見かけの利益よりずっと小さい。売上が増えても、それが株主の取り分になるとは限らない。
堀も浅い。国産という立場は価値があるが、国産のGPU事業者はほかにも出てくる。貸出単価は世代交代で下がる。10年後も強いと言い切れるのは、ガバメントクラウドなど、一度入ると変えにくい官公庁の領域くらいだ。
経営は有能で、攻めの強さは本物だ。だが、攻めの会社に厚い値段を払うのは危うい。筆者が持ち続けたいのは、稼ぎが読めて資本を超える利益が残る会社である。この会社は、その条件を満たす可能性がある。ただ、今の値段はその可能性を先に払っている。
結論として、本質価値は今の値段の2割ほどと見る。楽観の筋書きでも、10年で得られる年率は資本コストに届かない。安全域はほぼ無い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は大きく2つに分かれる。1つは従来のクラウド・ホスティング事業である。さくらのクラウド、VPS、レンタルサーバー、ハウジング(顧客のサーバーを預かる事業)などで、毎月課金のストック収入が中心だ。個人や中小企業が多く、1契約あたりの金額は小さい。その分、顧客が分散している。
もう1つがGPUインフラサービスで、商品名は「高火力」だ。NVIDIA製の高性能GPUを大量に買い、時間貸しや長期の専有契約で貸し出す。物理サーバーを貸す型、仮想マシン型、コンテナ型がある。複数のGPUをまとめて使う「さくらONE」のような、大口向けの商品もある。
設備の規模は大きい。2027年度までの生成AI向け投資は約1,100億円で、すでに半分ほど済んだ。設置したB200は約1,100基と、国内でも最大級だ。2026年7月には、次世代のRubin搭載機に260億円を投じると決めた。資金は借入が中心になる。
収益の質には差がある。従来のクラウドは安定しているが、物理サーバーを貸す古い型は減っている。GPUは、大口契約が決まれば急に売上が立つ。逆に、契約が途切れれば設備だけが残る。前期は1度の契約終了で、通期予想を2度引き下げた。
国の後押しも事業の一部だ。経済産業省の補助金が設備投資を支えており、ガバメントクラウドの採択も国産という立場に結びついている。政策の追い風は、競争の薄い領域をつくる反面、補助が減れば採算が変わる。
優良さと弱いところ
事業の質は、堀(他社がまねできない強み)の幅が狭い。この点を筆者はいちばん重く見る。国産、再生可能エネルギー100%の石狩、データを国内に置ける安心感は強みである。ただ、GPU貸しの本体は、買ってきた機材を貸す商売だ。機材は誰でも買える。
値決めの力は弱い。GPUの貸出単価は、機材の世代交代と競合の増設で下がりやすい。同社も、前期に安く結んだ契約を適正な値段へ直す、と説明している。値段を自分で決められない事業は、利益が薄くなる。
経営の特徴は、攻めの強さだ。社長の田中邦裕氏は、国産クラウドを掲げ、競合が慎重な時期にGPUへ踏み込んだ。結果として、国産初のガバメントクラウド採択や国内最大級の設備を手にした。一方で、大口1社に左右される脆さも抱えた。バリュー投資の目では、読みやすさに欠ける。
資本の使い方は、成長優先である。最近は取締役2名と監査役1名の辞任もあった。理由は筆者には確かめられないが、投資の重さと統治の両面から目を離せない。
過去の利益水準も低い。営業利益率は、直近の10年のほとんどで1桁にとどまった。2025年3月期の2桁は例外で、補助金など特殊要因が混ざる。優良というより、成長の筋書きが決め手になる会社である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
生成AIの計算需要は、国内でも長く伸びる。国内の生成AI市場は、2028年度に1兆7,000億円を超えるという予測がある。ただ、その多くはアプリやサービスの売上で、GPUを貸す事業が取れる部分は一部にとどまる。筆者は、計算の需要は10年で数倍になると見るが、貸出単価の下落がそれを削ると考える。
競争は3層になっている。最上層はAWS、Azure、Google Cloud、Oracleなどの米国勢で、資金力と開発力が桁違いだ。国内ではKDDIやソフトバンクなどの通信大手、GMOインターネットグループ、ハイレゾなどもGPU投資を進める。さくらはその中で、国産のクラウド専業という立場だ。
ガバメントクラウドは追い風だ。これまでは米国勢の4社しか選べず、国産の採択は初めてである。官公庁の基盤は一度入ると変えにくく、稼ぎは長く続く。ただ、実際の移行は数年かけて進むため、売上への効き方は緩やかだ。
データセンターの側にも変化がある。電力と土地の確保が難しくなり、機材の調達費も上がった。サーバー価格はこの1年ほどで約3倍になったという。投資の回収に必要な貸出単価は上がるが、競合も同じ条件なので、値上げが通るとは限らない。
従来のクラウドは、国内の人口が減る中でも、行政や企業のデジタル化と国産志向で伸びる。ここは数量が実質で年6%ほど伸びる市場と見て、さくらのシェアをわずかに上げる前提を置く。
資本政策と M&A
資本政策は、借入と補助金に頼って設備を増やす形である。2023年末から、銀行団の借入を繰り返してきた。H100向けの80億円、B200向けの借入、そして今回のRubin向け260億円だ。自己資本比率は36.5%まで下がっている。
還元は、ごく小さい。配当はごく小さな増額にとどまり、自社株買いの実績もない。稼いだ現金は設備に回る。筆者は、これを間違いとは見ない。ただ、10年を通して株主に戻る額は小さい。
2025年3月期には、自己資本が約3倍に増えた。増資で株が増えており、既存の株主の取り分は薄まった。今後も設備の資金が足りなければ、同じことが起きうる。
最近は、双日が株式の1割強を売ったが、なお筆頭株主である。持ち合いや親会社が強い会社ではなく、買収を仕掛けられる余地はある。ただ、国産クラウドとして政策上の意味を持つので、外資による買収は現実的ではない。国内企業が提携や出資で関与する道は残る。
点検済み(割高の見落とし点検 2026-10-19):起点の純利益は前期の赤字と会社予想 15 億円の間で、中立 66 億円は償却終了と稼働率の上昇を根拠にし、増資の希薄化は悲観側に入れた。余った現金は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
生成AIの計算需要は、これから10年、国内でも急速に広がる。国産の計算基盤は、経済安全保障の観点から政府や大企業に選ばれ続ける。さくらはすでに国内最大級の設備を持ち、国産クラウドで唯一ガバメントクラウドにも採択された。
GPU貸しは、稼働率が上がると利益が一気に増える事業だ。設備の償却は一定なので、稼働率が上がるほど利益が伸びる。初期のH100の償却は今期中に終わる。そこからは、利益が目に見えて厚くなる。
従来のクラウドも、国産志向で伸びる。官公庁と自治体の移行が進めば、数年かけて売上が積み上がる。AIの計算と官公庁の基盤を1社で持つのは、国内ではさくらだけだ。AWSなどの米国勢とは別の市場を取れる。
価格も思うほど下がらない。サーバーの値段が約3倍に上がった今、安い値段で貸す事業者は赤字になる。供給が絞られ、貸出単価はむしろ底堅い。
これらが重なれば、10年後の売上は今の4〜5倍になり、営業利益率は15%を超える。資本コストを大きく上回る稼ぎが出て、倍率も高く付く。
慎重な見方
生成AIの計算は、需要が伸びても、供給がもっと伸びる。米国の大手が圧倒的な資金で増設を続け、国内でも通信大手が参入した。貸出単価は、新しい世代が出るたびに大きく下がる。売上が伸びても、同じ設備で稼げる金額は減る。
さくらは、1社の大口契約に大きく頼っている。前期はそれが抜けただけで、営業赤字になった。この脆さは、会社が大きくなっても消えない。設備への投資は、契約が決まる前に先に出ていく。
借入も重い。営業利益は、支払う利息の何倍にもならない。金利が上がる中で、260億円のRubinのような投資を重ねれば、利息だけで利益が消える。サーバー価格が約3倍になった局面での大型投資は、割高づかみの危険もある。
ガバメントクラウドは、期待ほど稼ぎにならない。官公庁の仕事は価格が厳しく、移行も遅い。米国勢4社が先に入っており、国産のさくらが取れる範囲は限られる。
取締役の辞任が続くなど、統治にも不安が残る。構造的に負ける道は、決して低い確率ではない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方の中心は、需要の伸びと国産という立場だ。慎重な見方の中心は、貸出単価の下落と投資の重さである。需要が伸びること自体は両方が認めており、争点は、伸びた分が株主の利益になるかどうかだ。
筆者は、慎重な見方の方が強いと判断した。理由は、前期の営業赤字が示すように、1社の契約で利益が大きく振れること、設備が数年で古くなること、借入で資本を調達していることの3つだ。同じ理由は資本コストにも入れたので、確率は二重に厚くせず、悲観とやや悲観の合計を全体の 3 割台半ばに置いた。
一方で、強気の見方も無視はできない。ガバメントクラウドの採択と、国内最大級の設備は本物である。楽観とやや楽観に合わせて 3 割強を置いた。中立も 3 割強とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,048 円820 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 66 円27 億円)。 今の値に割り戻すと 950 円380 億円、今との差 −67.2%、 期待の年率 −3.1%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,198 円2,081 億円 | 150 円60 億円 | +84.7% | +6.3% | 535 円214 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,407 円1,364 億円 | 112 円45 億円 | +21.6% | +2.0% | 774 円310 億円 |
| 中立 | 32% | 2,045 円819 億円 | 62 円25 億円 | −27.2% | −3.1% | 674 円270 億円 |
| やや悲観 | 22% | 390 円156 億円 | 30 円12 億円 | −85.5% | −17.6% | 92 円37 億円 |
| 悲観 | 14% | 275 円110 億円 | 0 円0 億円 | −90.5% | −21.0% | 38 円15 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,048 円820 億円 | 66 円27 億円 | −27.0% | −3.1% | 2,114 円846 億円 |
今の株価時価総額 2,895 円1,159 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 国産AI基盤の中心になる 利益 146 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 5,198 円2,081 億円
生成AIの計算需要が国内で大きく広がり、さくらは国内最大級の設備で需要を取りきる。大口顧客が複数に増え、稼働率は高く保たれる。初期のH100の償却が終わり、利益が一段と厚くなる。
ガバメントクラウドの採択を足がかりに、官公庁・自治体の基盤が数年かけて積み上がる。従来のクラウドも、国産志向でシェアが上がる。
新世代機の調達費が重い中でも、貸出単価は底堅い。売上は今の4〜5倍に近づき、営業利益率は15%台に乗る。資本コストを大きく上回る稼ぎが続き、倍率も高めに付く。ただし設備を買い続ける必要は残り、還元は小さいままだ。
- GPUインフラサービス(高火力):数量 75.0(稼働するGPU(H100換算・千台))× 価格 118(H100換算1台の年間売上(万円))→ 売上 885 億円・営業利益 142 億円。H100換算75千台×年118万円、営業利益率16%
- クラウド・ホスティング・ハウジング・その他:数量 97.0(稼働サーバー換算(千台))× 価格 80(サーバー1台あたり年売上(万円))→ 売上 780 億円・営業利益 109 億円。サーバー換算97.0千台×年80.4万円、営業利益率14%
倍率:事業の純利益 146 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.3 倍、時価総額 2,081 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要が最大に伸び、国産勢の中で取り切る筋書き。連続して当たる必要があるので、確率は 1 割に置いた。
やや楽観 22% GPUが育ち、官公庁も積み上がる 利益 101 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 3,407 円1,364 億円
GPUの需要は続き、大口契約も増える。ただし新世代機が出るたびに貸出単価は下がり、利益率は楽観ほどには上がらない。
ガバメントクラウドの案件は少しずつ増え、従来のクラウドは市場並み以上に伸びる。国産の立場で、官公庁・自治体の移行を継続的に取る。
設備投資は借入で賄い、償却と利息を吸収できる稼働率を保つ。営業利益率は1割台前半に乗り、売上は今の3〜4倍になる。ROEは資本コストを上回るが、堀が深いとまでは言えない。M&Aは大きく起きず、提携や出資で資金を補う形が続く。国産クラウドとしての政策上の意味が、競争の薄い領域をつくってくれる。
- GPUインフラサービス(高火力):数量 60.0(稼働するGPU(H100換算・千台))× 価格 110(H100換算1台の年間売上(万円))→ 売上 660 億円・営業利益 92 億円。H100換算60千台×年110万円、営業利益率14%
- クラウド・ホスティング・ハウジング・その他:数量 88.4(稼働サーバー換算(千台))× 価格 79(サーバー1台あたり年売上(万円))→ 売上 699 億円・営業利益 84 億円。サーバー換算88.4千台×年79.1万円、営業利益率12%
倍率:事業の純利益 100 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.57 倍、時価総額 1,364 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の見方の一部が当たり、慎重な見方も一部が当たる筋書き。GPU の需要と官公庁の基盤は実在するので、2 割強を置く。
中立 32% 売上は伸びるが、利益は薄いまま 利益 66 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 2,045 円819 億円
GPUの需要は伸びるが、貸出単価は世代交代で下がり、売上は設備の増加に見合って伸びる程度にとどまる。大口契約の入れ替わりで、利益はたびたび振れる。
従来のクラウドは、年6%ほどの実質成長を市場並みに取る。値段は、物価の上昇を性能向上による値下がりが相殺し、10年で1.15倍にとどまる。ガバメントクラウドは緩やかに寄与するが、価格は厳しい。
10年後の売上は今の3倍ほどになる。営業利益率は1割強で、借入と利息が利益を削る。自己資本は積み上がるが、稼ぐ力が資本コストにわずかに届かない。株主にとっては、成長の割に実りが小さい10年になる。GPUの貸出単価は、H100換算で今の4割ほどまで下がる。年に1割弱ずつ下がる計算だが、新世代機は同じ設備で多くの演算ができるので、台数の側が10倍以上に増える。この積み上げで、GPU事業の売上は500億円近くに達する。
- GPUインフラサービス(高火力):数量 46.0(稼働するGPU(H100換算・千台))× 価格 105(H100換算1台の年間売上(万円))→ 売上 483 億円・営業利益 58 億円。H100換算46千台×年105万円、営業利益率12%
- クラウド・ホスティング・ハウジング・その他:数量 80.0(稼働サーバー換算(千台))× 価格 77(サーバー1台あたり年売上(万円))→ 売上 617 億円・営業利益 62 億円。サーバー換算80.0千台×年77.1万円、営業利益率10%
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.44 倍、時価総額 819 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2 つの見方の落としどころで、利益は伸びるが資本コストをぎりぎり超える程度。中心として 3 割強に置いた。
やや悲観 22% 単価下落と投資負担で、伸びが利益にならない 利益 25 億円 · PER 6.3 倍 · 株価時価総額 390 円156 億円
GPUの貸出単価は、米国勢と国内の通信大手の増設で大きく下がる。同社の設備は増えるが、稼働率が上がらず、償却と利息が利益を圧迫する。
従来のクラウドは、価格競争で単価が伸びにくくなる。官公庁の基盤も取れる範囲は限られ、期待ほどの売上にならない。
売上は今の2倍に届くが、営業利益率は6%ほどにとどまり、利益は小さい。借入の負担は残り、ROEは資本コストを大きく下回る。資本を広げるほど価値が減る状態に近づく。大口顧客の入れ替わりが2度、3度と起き、そのたびに設備が一時的に余る。増資で資金を集める場面もあり、既存の株主の取り分は薄まる。
- GPUインフラサービス(高火力):数量 26.0(稼働するGPU(H100換算・千台))× 価格 87(H100換算1台の年間売上(万円))→ 売上 226 億円・営業利益 14 億円。H100換算26千台×年87万円、営業利益率6%
- クラウド・ホスティング・ハウジング・その他:数量 72.5(稼働サーバー換算(千台))× 価格 70(サーバー1台あたり年売上(万円))→ 売上 510 億円・営業利益 36 億円。サーバー換算72.5千台×年70.4万円、営業利益率7%
倍率:事業の純利益25億円・事業のROE5.1%。ROEがk8.5%以下なので、PERは1÷k=10.5倍まで。上限は259億円。単価下落と借入の負担で稼ぎが薄く、上限の6割に置き、時価総額156億円、PER6.3倍。
確率:単価下落と投資の重さが利益を削る道は、前期の実績が示すとおり現実的。ただし大口顧客への偏り・設備の陳腐化・借入の重さは資本コスト(寿命・循環・借金で合計 +1.5%)にすでに入れたので、確率の上乗せは他社並みの 2 割強にとどめた。
悲観 14% 構造的に負け、設備だけが残る 利益 −15 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 275 円110 億円
GPU貸しは、供給過剰で貸出単価が大きく下がり、大口顧客も離れる。同社は、先に買った設備の償却と利息を払い続け、GPU事業は営業赤字になる。老朽化した設備は減損され、自己資本も削られる。
従来のクラウドは、価格競争と顧客の流出で成長が止まり、売上は今の水準を少し上回る程度で止まる。ガバメントクラウドも、期待したほどの実りにならない。
事業全体で、稼ぐ力は大きく損なわれる。残るのは、石狩のデータセンターや従来の安定した契約と、売れる設備の価値が中心である。もう優良な成長企業ではなくなっている。経営の選択肢も狭まり、設備の追加投資は止まる。還元はなく、事業の売却や他社との再編が現実の議題になる。
- GPUインフラサービス(高火力):数量 8.0(稼働するGPU(H100換算・千台))× 価格 74(H100換算1台の年間売上(万円))→ 売上 59 億円・営業利益 −5 億円。H100換算8千台×年74万円、営業利益率-8%
- クラウド・ホスティング・ハウジング・その他:数量 40.3(稼働サーバー換算(千台))× 価格 64(サーバー1台あたり年売上(万円))→ 売上 257 億円・営業利益 8 億円。サーバー換算40.3千台×年63.7万円、営業利益率3%
倍率:EV(時価総額+純有利子負債)÷営業利益でも見たが50倍超と高く、赤字に近い筋書きなので利益の倍率は使わない。赤字で稼ぐ力では測れないため、床で置く。純現金+売れる資産の税後を110億円とし、帳簿の自己資本(減損後161億円)に対する倍率は0.68倍。
確率:大口離れと単価下落が重なり、投資が回収できない筋書き。前期の営業赤字は実績としてあるが、同じ理由は資本コストにも入れてあるので、二重に数えず他社並みの 1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
GPUインフラサービス(高火力)
生成AI向けのGPUサーバーを時間貸し・専有契約で提供する事業。H100・B200、今後はRubinを石狩に設置して貸す。
| 数量稼働するGPU(H100換算・千台) | 価格H100換算1台の年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.2 | 263 | 85 | −29 |
| 10 年後 中立 | 46.0 | 105 | 483 | 58 |
取り方:売上は2025年7月の下方修正後のGPU売上予想85億円を前期実績の目安に置いた(実績は未確認)。H100換算1台の貸出は、1時間2ドル×8,760時間×150円で年約263万円とし、売上85億円をこれで割って稼働台数約3,200台(B200約1,100基を含む年平均)と推定した。10年後の貸出単価は、GPUの世代が上がるたびに同じ演算能力の値段が下がるため、物価3%の世界でも名目で今の約0.4倍(年約9%の下落)と置く(H100換算なので、新世代機の単価は台数側に入れる)。営業利益は、全社が約-4億円で、従来のクラウドが黒字なので、GPU事業は償却が重く約-29億円と推定した(セグメント別の開示は無い)。
クラウド・ホスティング・ハウジング・その他
さくらのクラウド、VPS、レンタルサーバー、ハウジング、ガバメントクラウド、物理基盤サービスなど、従来の月額課金の事業。
| 数量稼働サーバー換算(千台) | 価格サーバー1台あたり年売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 67 | 268 | 25 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 77 | 617 | 62 |
取り方:全社売上353億円からGPU85億円を引いた268億円。契約の数量は開示が無いので、稼働サーバー換算で約4万台、1台あたり年67万円と推定した(サーバー台数は仮の単位で、確かな出典は無い)。10年の数量は、国内クラウド・DC市場が実質で年6%ほど伸び(10年で約1.8倍)、さくらがシェアを少し上げる(約1.1倍)として約2倍まで、値段は性能向上による値下がりと物価が相殺して約1.15倍までと置いた。営業利益は、全社約-4億円からGPUの約-29億円を引いた約25億円(営業利益率9%台)と推定した。
リスクと懸念
大口顧客への依存
GPU事業の売上は、数社の大口契約に大きく偏る。2025年7月には大型案件の終了でGPU売上の予想を158億円から85億円へ下げた。1社が抜けると設備が余り、償却だけが残る。分散が進まない限り、利益の振れは続く。
貸出単価の下落
GPUの貸出単価は、新世代の登場と競合の増設で下がりやすい。同社は前期に安く結んだ契約の是正を進めるが、再び競争で下がれば計画が崩れる。売上が伸びても利益が増えない最大の原因になる。
投資の重さと借入
2027年度までの生成AI向け投資は約1,100億円で、2026年7月にはさらに260億円を決めた。資金は借入が中心で、金利が上がると負担が増える。営業利益が利息を何倍も上回る状態には、まだ届いていない。
機材の陳腐化と調達コスト
GPUは数年で古くなり、次の世代を買い直す必要がある。サーバー価格が約3倍に上がった局面では、投資の回収に必要な単価も上がる。割高な時期に買って、後で単価が下がれば、減損の危険もある。
ガバメントクラウドの実入り
国産初の採択は強みだが、価格は厳しく、移行は数年かけて進む。米国勢4社が先に入っており、売上に効くまでに時間がかかる。開発費の資産計上で利益が良く見える点にも注意が要る。
統治と資金調達
取締役2名と監査役1名が辞任した。理由は確かめられていない。筆頭株主の双日が株を一部売ったこともあり、資本政策が変わる可能性がある。設備資金が足りなければ、過去のような増資で既存の株主が薄まる。
今後の分かれ目
- GPUの大口顧客が複数、長期契約で入る
- 利益の振れが小さくなり、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。稼働率の上昇で償却を吸収できる。
- GPUの貸出単価が新世代の登場後も維持される
- 投資の回収が早まり、利益率は想定を上回る。逆に下がれば、やや悲観の筋書きに近づく。
- ガバメントクラウドで大型の官公庁案件が決まる
- 従来のクラウドの数量が上振れし、利益の質も安定する。国産の立場が数字に表れる。
- 260億円のRubin投資に見合う契約が決まらない
- 設備が先行して余り、償却と利息が利益を圧迫する。悲観側の確率を上げる。
- 増資や大きな借入で資金を調達する
- 既存の株主の取り分が薄まるか、利息が増える。1株あたりの価値は下がる。
- 経営陣の辞任や統治の問題が続く
- 投資判断や契約獲得に影響が出うる。悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- GPUインフラサービスの売上と稼働率、大口顧客の数
- GPUの貸出単価の動きと、新世代機の調達価格
- ガバメントクラウドの採択案件と移行の進み方
- 借入残高と営業利益の対利息比率、増資の有無
- 取締役などの異動と、主要株主の持ち株の変化
倍率と資本コストの決め方
GPU貸しとそれ以外のクラウドに分け、数量×価格で10年を積んだ。倍率は、事業のROEと資本コスト8.5%から出した式の上限に対する位置で置いた。今のPERや同業の倍率、過去の谷の倍率は見ていない。今の株価が2倍になっても半分になっても、この数字は動かない。純有利子負債は時価総額の4%で、余った現金は立てていない。店舗型のリースは重くないので、リースの約束は筋書きに入れていない。新リース会計基準で形が変わる点は、10年後の数字を今と同じ形にそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.78→14.3 倍・やや楽観 PER 10.53→13.57 倍・中立 PER 10.53→12.44 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の調整+2.0%を足して9.5%。同じ領域のIIJ(7.2%)やメルカリ(8.2%)より、借入と陳腐化の重さの分だけ高い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 8.50%。