結論
トビラシステムズは、迷惑電話や詐欺SMSを見分ける独自データベースを持つセキュリティ企業である。事業の質は高いが、現在の約170億円という時価総額には十分な安全域がなく、長期の本質価値からは割高と判断する。理由は、安定収益を生む迷惑情報フィルタと、急成長中だが競争環境が激しい法人電話サービスとでは、10年後に残る競争優位が大きく違うためだ。
最大の強みは、KDDI、ソフトバンク、NTTドコモという主要通信キャリアのサービスに、同社の迷惑情報データベースが組み込まれていることだ。警察などから得る情報、利用者から集まる判定情報、独自の調査体制が組み合わさり、データは利用を重ねるほど充実する。電話番号や詐欺URLを照合する機能は、生成AIが普及しても必要とされる可能性が高い。
ただし、そのデータベースを使う窓口まで同社が握っているわけではない。携帯電話の基本機能が高度化すれば、通信キャリアは対策アプリの組み合わせや対価を見直せる。法人向けのトビラフォン Cloudでも、電話対応、記録、要約、顧客管理をAIエージェントが直接処理する時代には、従来の利用ID数に連動する課金の持続性が問われる。
2025年10月期の売上高は約28億円、営業利益は約9億円で、ROEも24%前後と高い。2026年10月期第3四半期には法人電話事業が大きく伸び、成長の勢いは明らかだ。一方、採用、販売体制、開発への投資によって全社の利益率は圧迫されており、増収がそのまま株主利益の増加になる段階ではない。
10年後の中立的な事業規模は売上高約49億円、営業利益約13億円、純利益約9億円と考える。迷惑情報データベースは残るが、CloudのID課金には構造的な縮小圧力がかかり、Bizの成長を本社費用と再投資負担が一部相殺する。5つの筋書きの確率を反映し、資本コストで現在価値に直した評価額は約91億円となる。2026年10月22日時点の時価総額との差は約マイナス46%であり、企業そのものの優良さと、株主が支払う値段を分けて考える必要がある。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に問うべきことは、迷惑電話の判定に使うデータが10年後にも独立した価値を持つかどうかだ。この問いに対する答えは、かなりの確度で肯定的である。詐欺の手口は変わっても、相手が危険かどうかを確認しなければならない事情は残る。大量の照会から学ぶデータベース、警察との情報連携、主要通信キャリアとの関係には、時間をかけなければ作れない強みがある。
ただし、良い事業を持つことと、事業全体を高く評価できることは別である。迷惑情報を検知する技術がOSの基本機能に組み込まれれば、同社は裏側のデータ供給者として生き残っても、消費者向けの料金を決める権限は弱くなるかもしれない。通信キャリアにとって必須の情報源であり続けることと、対価を物価以上に引き上げ続けられることは、同じではない。
法人電話でも、機器を増やすために必要な営業費用と、増えた契約から長く得られる利益を分けたい。2026年時点の販売の勢いには価値がある。しかし、機器のライセンスが更新期を迎えた後にも顧客が残るのか、CloudのID数が人間の電話担当者の減少に耐えられるのかは、まだ答えが出ていない。将来の販売台数が増えるというだけでは、高い増分投下資本利益率を証明したことにならない。
2025年10月期のROE約24%は魅力的だが、今後の再投資分について同じ利回りを期待する根拠は十分ではない。営業組織の拡大や新規製品の開発は、成功すれば成長を速める一方、失敗すれば固定費として残る。特に利益率の高いセキュリティ事業から生じる現金を、より競争の激しいCloud事業へ移す際の投資効率を慎重に見たい。
経営者が今後も配当と自己株式取得を継続し、買収に規律を保つなら、株主に帰属する価値は増えていく。一方、現在の約170億円という時価総額は、既存データベースの利益に加えて、新しい法人電話事業の成功まで相応に織り込んでいる。確実性の高い利益だけを買うという観点では、事業の質に対する評価と支払う値段の間にまだ距離がある。
何で稼ぐ会社か
収益の中核は、迷惑電話番号、詐欺に使われるURL、不審なメッセージの特徴などを集め、通信キャリアや利用企業へ判定サービスとして提供する事業である。2025年10月期のセキュリティ事業売上高は約19.05億円で、全社売上の約68%を占める。携帯電話向けが中心だが、固定電話のホームゲートウェイや通信網側で迷惑電話を遮断するサービス、広告ブロックアプリの280blockerも含まれる。
携帯電話向けでは、同社のアプリがKDDI、ソフトバンク、NTTドコモのセキュリティ関連オプションに採用されている。通信キャリアとの契約は定額または契約者数・利用者数に応じた方式であり、店頭販売や通信キャリアの顧客基盤を通じて収入が入る。自らすべての消費者を獲得する必要がない反面、最終利用者との契約や料金設定の主導権は通信キャリア側に残る。
法人向けは、2025年10月期に約9億円を売り上げたソリューション事業である。トビラフォン Bizは、既存の企業電話設備につなぎ、迷惑電話・FAXの遮断、通話録音、録音告知、自動音声応答などを提供する。機器の販売に加えて、5~7年程度のライセンス利用料を前払いで受け取り、期間にわたって売上計上する仕組みが特徴だ。
トビラフォン Cloudは、電話交換機を自社設置しなくても使えるクラウド型の法人電話である。スマートフォンやパソコンから会社の番号を使い、通話の録音、文字起こし、要約、外部業務ソフトとの連携などを利用できる。収益は主として契約企業と利用IDに結び付いており、ID数が増えるほど売上が積み上がる一方、AIによる電話業務の自動化には直接さらされる。
2025年10月期末のトビラフォン Biz累計販売台数は6,273台、Cloudの課金ID数は11,195だった。2026年10月期第3四半期末にはそれぞれ8,588台、17,399IDへ増えている。新しい販売代理店の開拓や企業のカスタマーハラスメント対策需要が伸びを支えているが、台数とIDの増加だけでは契約更新後の生涯収益はまだ判断できない。
営業利益の出方には大きな差がある。2025年10月期のセキュリティ事業は約13.38億円のセグメント利益を生んだが、ソリューション事業の利益は約1.51億円にとどまった。そこから全社費用約5.91億円を差し引くため、法人電話の売上が急増しても、採用と開発に必要な費用を賄った後の株主利益が増えるまでには時間がかかる。
優良さと弱いところ
最も評価できるのは迷惑情報データベースの蓄積と配信網だ。日々変化する詐欺電話番号や不審なURLは、一般的なソフトを作るだけでは十分な精度で判定できない。警察からの情報提供、利用者による拒否操作、継続的なデータ照合を組み合わせる体制は、新規参入企業が短期間で再現しにくい。同社は年間約50億回の電話・SMS判定処理と約1,500万人の利用者規模を示しており、データの実利用も確認できる。
この強みは、単なる画面操作型SaaSとは違う。主要通信キャリアのサービスの一部として利用されるため、取り替える際には新しいデータの精度検証や顧客対応が必要になる。通信キャリア向け機能追加や契約更新時の単価改善実績もあり、独自データと共同利用基盤の二つが競争優位の根拠になる。ただし、年5%未満の解約率が確認されたのは全社ではなく、Cloudでも公表値は月次1%未満である。低解約率を会社全体の永久的な堀とみなしてはならない。
2025年10月期の自己資本利益率は約24%であり、稼ぐ効率は優れている。データベースの追加照会に伴う限界費用が小さく、セキュリティ事業のセグメント利益率は高い。だが、全社の高ROEには過去の小さい自己資本と前受金を利用する事業構造も影響する。今後、採用、営業、製品開発、M&Aに資本を投じた分まで同じ利回りで回収できるとは限らない。
弱点は顧客の集中である。2025年10月期の売上に占めるKDDI、ソフトバンク、NTTドコモの割合は合計約59%であり、法人電話の大口販売先であるインバースネットを含めると主要4社が約79%に達する。契約相手が大きいからこそ販路は強いが、機能の標準搭載、料金の再交渉、取扱商品の変更が利益に直結する。独自データの堀は広い一方、販売価格を最終的に決める力まで独占しているわけではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
詐欺対策の必要性は10年後も残る。特殊詐欺やフィッシングは電話、SMS、電子メール、SNSをまたいで手口を変え、金融機関や通信会社には継続的な対策が求められる。迷惑情報データベースの価値は、過去に見つけた番号の件数よりも、新しい攻撃をどれだけ早く捕捉し、誤判定を抑えて配信できるかで決まる。電話番号の照合だけに依存すれば、SNS型詐欺やAI音声による攻撃への移行で需要の中心から外れてしまう。
競合にはWhoscall、Truecallerなどの迷惑電話識別サービスや、携帯電話のOSを提供するApple、Googleがいる。特にOS側の迷惑電話対策や着信内容の確認機能は、独立した判定アプリの存在感を弱めうる。一方、通信事業者がネットワーク側で迷惑通信を遮断するには、端末の画面とは別に判定データが必要となるため、トビラシステムズにはデータ供給者として残る道がある。
国内の電話・SMS対策ソフトだけを切り出した統一的な市場規模や、競合各社の監査済みシェアは確認できない。約1,500万人の利用規模は、国内スマートフォン等の潜在的な利用基盤に対して相応の到達力を示すものの、売上シェアと同義ではない。通信キャリアの顧客基盤はすでに大きいため、今後は契約者数の純増よりも、固定電話、金融機関、法人、詐欺URL判定などへ販路を広げられるかが重要になる。
法人電話の市場では、従来型PBX・ビジネスフォンからクラウドPBXへの移行が進んでいる。富士キメラ総研の調査を引用した会社資料によれば、2023年の国内市場は従来型が約1,717億円、クラウドPBXが約289億円だった。2030年にはそれぞれ約1,580億円、約600億円と見込まれている。全体市場が大きく伸びるというより、電話設備のクラウド化で売上の取り合いが変わる市場である。
トビラフォン Bizの2025年売上は約6.5億円で、従来型電話関連市場の売上規模に対しては1%未満にすぎない。ただし、既存PBXを丸ごと売る会社とは商品範囲が違い、これは厳密な市場シェアではなく規模の比較である。Cloudも同年約2.5億円で、国内クラウドPBX市場に対する規模は1%未満と推定される。成長余地は大きいが、BIZTEL、INNOVERA、MOT/TEL、通信キャリアの法人電話サービス、Microsoft Teams Phoneなど競争相手は多い。
この市場の10年後を左右するのは、電話交換機をクラウドへ移す速度だけではない。AIが顧客の用件を理解し、必要な情報を取得し、業務システムを更新するようになれば、人が何人で電話を取るかという課金の前提が変わる。音声回線や電話番号を維持する需要は残っても、個々の担当者に割り当てるソフトの利用料には引き下げ圧力がかかる。業界の成長率をそのまま同社の利益成長率に使うべきではない。
資本政策と M&A
資本配分で評価できるのは、配当だけでなく自己株式取得も実行してきたことだ。2025年10月期には自己株式の取得に約2.93億円、配当金の支払いに約2.08億円を充てた。株主への現金還元が実際に行われているため、創業者の保有比率が高いという理由だけで、将来の余剰現金を半分しか評価しない扱いは適切でない。一方、直近5年の配当性向はおおむね35%前後であり、余剰現金の全額が株主へ戻るという実績もない。
2024年12月公表の中期経営計画2028は、2028年10月期に売上高60億円、営業利益17億円、純利益11億円、ROE22%以上を目指す。事業別の売上目標はCloud18億円、Biz12億円、通信キャリア関連20億円、新規事業10億円である。計画期間中は営業キャッシュフロー72億円を見込み、成長投資に72億円以上、株主還元に12億円以上を充て、期末流動性20億円以上を確保する構想だ。配当性向35%を基本とし、現株数換算で年間約2.1億円相当の普通配当下限を掲げている。
この計画は野心的であり、約束された利益と同じ扱いにはできない。2021年に広告ブロックアプリの280blockerを取得し、2022年にageetを関連会社化した実績がある。2026年7月にはクラウドPBXを手掛けるプロディライトと資本業務提携を結んだ。既存販路を活用できる投資には意味があるが、計画に含まれるM&Aや新規事業の利益率と投資回収期間は、まだ十分に検証できない。
2026年10月期には設立20周年の記念配当も公表したが、特別な還元を毎年繰り返す前提にはしない。法人電話で前払いされたライセンス料は、売上計上前に会社へ入金されるものの、将来のサービス提供義務を伴う。2025年10月期に営業キャッシュフローが大きく増えた一因も契約負債の増加である。株主に自由に渡せる現金を考える際には、将来のサービス費用、運転資金、更新投資のための余力を先に確保する必要がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
迷惑情報データベースは、ソフトウェアの画面を作るだけでは再現できない資産である。主要通信キャリアに組み込まれ、警察などからの情報提供を受け、利用者から日々の判定情報を集める仕組みは、実際に利用されるほど精度を高める。生成AIが普及しても、詐欺かどうかを判断するための独自データまで不要になるわけではない。むしろAIが電話対応を自動化するほど、裏側で信頼できるデータを参照する需要は増える余地がある。
2025年のセキュリティ事業は高い利益率を保ちながら、主要通信キャリアとの契約を維持した。キャリア向けの価格改善やSMS対策などの機能追加も行われており、データ供給元として一定の交渉力を示している。競合が同じ精度を得るには、長年の情報蓄積だけでなく、通信事業者との試験、運用、利用実績を積まなければならない。簡単に代替される業務ソフトと同列に扱うのは適切でない。
法人電話にも成長の裏付けがある。2026年10月期第3四半期末にはBizの累計販売台数が8,588台、Cloudの課金ID数が17,399へ増えた。国内の電話設備市場に対する売上規模はまだ小さく、販売代理店との連携だけでも自社のシェアを拡大できる。Bizには電話設備そのものへの接続やカスタマーハラスメント対策という現実の需要があり、AIだけで消える商品ではない。
2025年までの高ROE、純現金、株主還元実績も評価できる。2028年の中期計画が実現し、その後も新規事業の投資効率が高ければ、利益は現在の数倍になる可能性がある。会社はすでに単なる迷惑電話対策アプリの提供元から、データ、通信、法人電話管理を組み合わせる企業へ移行し始めている。独自データを中心に複数の製品を売る力が強まれば、現在の企業価値を超える展開も十分に考えられる。
慎重な見方
最も大きな問題は、独自データを持っていることと、その販売先を支配していることが違う点だ。2025年10月期の売上の約59%は主要通信キャリア3社に依存している。OSの標準機能が迷惑電話識別や着信応答を担うようになったとき、キャリアは自社アプリに組み込む機能を改めて選べる。迷惑情報データが必要であり続けても、同社へ支払う料金を引き下げる交渉余地はある。
独自データベースの価値は、過去に登録された番号の量だけでは決まらない。詐欺に使われる番号やURLが短期間で入れ替わるなら、最新の情報を獲得し続けなければ競争力は落ちる。SNS、メッセージアプリ、AI音声へ攻撃の場が移ることで、現在の判定処理件数がそのまま10年後の高収益を保証するわけではない。顧客が巨大であるほど契約条件の変化による打撃も大きい。
法人電話では、好調な台数とID数が持続的な利益を保証していない。Bizはライセンス料を前払いで受け取るため、導入が増える局面では現金収支が良くなる。だが、初期契約の満了期が訪れたとき、顧客が同じ製品を再び選ぶ保証はない。前払契約が長いことは収入の見通しを安定させる一方で、解約率の悪化が表面化するまで時間がかかるという弱さにもなる。
Cloudの課金構造はさらに危うい。AIエージェントが電話対応から顧客情報の更新まで実行すれば、人間の担当者を増やさずに業務が回る。電話番号と通話の接続機能が残っても、従来のID数で請求できる料金は縮む。会社がAI要約を提供していることは防御策だが、新しい課金売上が既存の席課金を上回る証拠にはまだならない。
中期計画では成長投資が先行し、採用と販売網の維持には継続的な費用がかかる。営業利益率が下がり、自己資本だけが増えれば、現在の高ROEを基準にした値付けは成立しなくなる。約29億円の純現金も、前受利用料に対応する履行義務を差し引けば、株主が自由に受け取れる額ではない。事業の強みは認めても、約170億円を支払うには不確実な部分が多すぎる。
どちらに重みを置いたか
迷惑情報データベースの競争優位については肯定的に評価する。警察との情報連携、独自データ、主要通信キャリアでの利用実績は、一般的な画面操作型SaaSよりも強い。ただし、それが全社の将来利益を守るとは限らない。CloudにはAIエージェント代替、Bizには複数年契約の更新と増分利益率という別の問題がある。
確率は楽観・やや楽観の合計30%に対し、やや悲観・悲観の合計37%と、下側を7ポイント厚くした。中立にもAIによるCloud数量の縮小を織り込んでいるため、悲観確率で同じ危険を過度に重ねてはいない。結論を決めるのは、企業の存続可能性よりも現在の値段だ。5つの筋書きから計算した本質価値は約91億円で、時価総額約170億円を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,437 円148 億円(+ 還元の換算額還元の合計 305 円31 億円)。 今の値に割り戻すと 948 円98 億円、今との差 −37.5%、 期待の年率 +1.5%(資本コスト 7.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 3,380 円349 億円 | 681 円70 億円 | +167.5% | +11.6% | 447 円46 億円 |
| やや楽観 | 19% | 2,475 円255 億円 | 448 円46 億円 | +92.5% | +7.5% | 555 円57 億円 |
| 中立 | 33% | 1,490 円154 億円 | 332 円34 億円 | +20.0% | +2.0% | 601 円62 億円 |
| やや悲観 | 24% | 327 円34 億円 | 128 円13 億円 | −70.0% | −12.7% | 109 円11 億円 |
| 悲観 | 13% | 189 円19 億円 | 40 円4 億円 | −84.9% | −18.2% | 30 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,437 円148 億円 | 305 円31 億円 | +14.8% | +1.5% | 1,742 円180 億円 |
今の株価時価総額 1,518 円157 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 独自データの販路拡大と法人電話の収益化が両立 利益 20 億円 · PER 16.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,380 円349 億円
迷惑情報データベースが、通信キャリア向けの付加サービスを超え、金融機関、法人の電話システム、詐欺URL判定などへ広がる。警察からの情報提供と大規模な判定実績によって検知精度を維持し、主要通信キャリアとの契約でも価格改善を実現する。電話番号に加えて詐欺の文面やURLを照合する需要を取り込むことで、利用基盤の縮小を防ぎ、セキュリティ事業が引き続き高い利益率を保つ。
トビラフォン Bizは、販売代理店に加え、電話設備メーカーや通信事業者との組み込み販売が拡大する。カスタマーハラスメント対策として録音・録音告知の需要が定着し、更新時にもライセンス料を確保できる。累計販売台数は3万台を超え、機器販売と継続利用料の両方が利益を生む。
Cloudでは音声AIが多くの電話業務を引き受け、利用ID自体は減る。しかし、残った契約で通話管理や顧客データとの連携が必要とされるため、売上の崩壊は避けられる。買収や提携で得た販路も機能し、本社費用の増加を十分に吸収する。
10年後には営業利益が約29億円、純利益が約20億円に達する。高い利益を生むデータベース事業に法人電話の収益化が加わり、投じた資本の利回りが引き続き資本コストを大きく上回る筋書きである。
- セキュリティ事業:迷惑情報データベース:数量 21,000,000(月間利用者規模を基にした判定サービスの到達利用者数(人、実質))× 価格 170(到達利用者1人当たりの年間認識売上(円、固定電話・周辺サービスを含む実効単価))→ 売上 36 億円・営業利益 26 億円。独自データの外販拡大で利用基盤が1.40倍、実効単価は1.34倍。セグメント利益率72%。
- ソリューション事業:トビラフォン Biz:数量 34,000(トビラフォン Bizの累計販売台数(台、稼働基盤の代理指標))× 価格 157,000(累計販売1台当たりの年間認識売上(円、機器・ライセンス収益を平準化した実効単価))→ 売上 53 億円・営業利益 16 億円。累計販売基盤3.4万台、実効売上単価15.7万円。更新成功と販路拡大で利益率30%。
- ソリューション事業:トビラフォン Cloud:数量 10,970(契約中の課金ID数(ID、実質))× 価格 25,500(課金ID1件当たりの年間認識売上(円、基本料金・付加機能を含む実効単価))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替を強気でも織り込み、ID数は2025年比0.98倍、単価は1.14倍。
倍率:資本コストk=7.0%、10年後ROE=20.3÷95.95=21.16%。普通の堀として増分超過利益の残存割合を1/2とし、RONIC=7.0%+0.5×(21.16%−7.0%)=14.08%。AIエージェント代替を反映した長期名目成長率g=1.5%から、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約16.24倍。余剰現金10億円の税後受取利息約0.14億円を事業利益から除外し、帳簿価額に戻り方0.75を掛けた7.5億円を別に足す。中立以上の倍率を恣意的に削らず、式の上限を使う。
確率:警察・通信キャリアとのデータ連携を広げながら、Bizが法人の電話管理・カスタマーハラスメント対策の標準的な機器になる筋書き。2026年の販売増加は好材料だが、10年間の販売網拡大、契約更新成功、利益率改善が重なる必要があり、確率は11%にとどめた。AIによるCloudの席数減少は強気でも残し、AIを理由にCloudの数量を2025年水準以上へ増やさない。
やや楽観 19% Bizの販路拡大が進み、データ事業の高収益も維持 利益 15 億円 · PER 15.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,475 円255 億円
迷惑情報データベースは通信キャリア向けの基盤として定着し、固定電話、金融機関、法人向けへ提供先が広がる。OS標準機能との競争で一部の利用者を失うが、通信網での判定に使えるデータを持つことで、契約更新に成功する。利用基盤と単価はともに緩やかに増え、セキュリティ事業は高い利益率を維持する。
トビラフォン Bizの販売代理店網が拡大し、機器の累計販売台数は2万台を超える。カスタマーハラスメント対策や通話録音の必要性が続き、最初の販売時に獲得した顧客も一定割合で更新する。競争が増すため一台当たりの利益は強気の筋書きほど伸びないが、営業基盤が整い、販売費の回収が進む。
CloudはAIによる電話業務の自動化でID数の増加が止まり、時間とともに徐々に減る。それでも企業の電話番号管理や接続機能は残り、利用単価をある程度維持できる。新規事業の成功は限定的で、買収による大きな利益の上乗せも見込まない。
売上高は約69億円、営業利益は約21億円となる。成長投資を吸収して株主利益は増えるが、増分投下資本利益率は既存データベースほど高くない。
- セキュリティ事業:迷惑情報データベース:数量 18,500,000(月間利用者規模を基にした判定サービスの到達利用者数(人、実質))× 価格 165(到達利用者1人当たりの年間認識売上(円、固定電話・周辺サービスを含む実効単価))→ 売上 31 億円・営業利益 22 億円。利用基盤1.23倍、実効単価1.30倍。通信キャリア契約の維持とデータ外販の拡大。
- ソリューション事業:トビラフォン Biz:数量 24,500(トビラフォン Bizの累計販売台数(台、稼働基盤の代理指標))× 価格 148,000(累計販売1台当たりの年間認識売上(円、機器・ライセンス収益を平準化した実効単価))→ 売上 36 億円・営業利益 10 億円。累計販売2.45万台、実効単価14.8万円。更新率と販売効率が改善。
- ソリューション事業:トビラフォン Cloud:数量 10,076(契約中の課金ID数(ID、実質))× 価格 24,900(課金ID1件当たりの年間認識売上(円、基本料金・付加機能を含む実効単価))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AI代替によりID数は2025年比0.90倍、価格は1.12倍。
倍率:k=7.0%、10年後ROE=14.6÷88.0=16.59%、超過利益の残存割合1/2からRONIC=11.80%。長期成長率g=1.5%を用い、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約15.87倍。余剰現金の利息約0.14億円を除く事業純利益に適用し、別途余剰現金評価7.5億円を加算する。
確率:2026年のBiz販売台数増と通信事業者との協業はすでに確認できるが、そのまま10年間継続する保証はない。販路の拡大は成功する一方、競争と人件費上昇が利益率を一部抑える筋書きに19%を配分する。Cloudの数量は2025年比0.90倍にとどめ、AIによる席課金への圧力を残す。
中立 33% 独自データは残るが、法人電話の利益率は成熟水準へ 利益 9 億円 · PER 15.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,490 円154 億円
10年後も迷惑情報データベースは主要通信キャリアに使われる。新しい詐欺手口への対応で継続投資は必要だが、警察との情報連携と利用者から得られる情報が精度を支え、供給元としての地位は保たれる。スマートフォンの基本機能が進歩するため利用者数は大きく増えず、売上の拡大は契約更新時の値上げと固定電話・法人向けデータ利用の増加による。
トビラフォン Bizは、2026年に確認された販売増加を起点に、電話設備の更新やカスタマーハラスメント対策の需要を取り込む。国内の電話設備市場そのものは大きく増えないが、自社の商品規模はまだ小さく、販路拡大によって累計販売台数は約1万7,500台まで増える。ただし、更新の際には他社製品との比較が起こり、営業費用と製品改良費が利益を圧迫する。
Cloudは、2026年までに積み上がった契約がそのまま10年先の安定利益になるとは考えない。電話の受付、用件整理、通話記録、顧客情報の更新をAIエージェントが引き受け、従来の担当者ごとの利用ID数が減る。電話番号や回線連携は必要でも、ID課金による利益成長は止まる。
全社の売上高は約49億円、営業利益は約13億円となる。2025年と比べれば利益額は増えるが、採用と製品開発への投資によって自己資本が積み上がり、ROEは約12%に低下する。既存事業の強みを失わずに成長するものの、新規投資の利益率が過去の高水準へ戻らない10年間である。
- セキュリティ事業:迷惑情報データベース:数量 15,000,000(月間利用者規模を基にした判定サービスの到達利用者数(人、実質))× 価格 156(到達利用者1人当たりの年間認識売上(円、固定電話・周辺サービスを含む実効単価))→ 売上 23 億円・営業利益 16 億円。独自データ型として数量は2025年比1.00倍、価格1.23倍。通信キャリアの交渉力を考慮。
- ソリューション事業:トビラフォン Biz:数量 17,500(トビラフォン Bizの累計販売台数(台、稼働基盤の代理指標))× 価格 135,000(累計販売1台当たりの年間認識売上(円、機器・ライセンス収益を平準化した実効単価))→ 売上 24 億円・営業利益 6 億円。累計販売基盤1.75万台、実効単価13.5万円。販路拡大と更新競争が併存。
- ソリューション事業:トビラフォン Cloud:数量 8,956(契約中の課金ID数(ID、実質))× 価格 24,500(課金ID1件当たりの年間認識売上(円、基本料金・付加機能を含む実効単価))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替型。ID数2025年比0.80倍、価格1.10倍、利益率10%。
倍率:k=7.0%、ROE=8.7÷72.95=11.93%、超過利益の残存割合1/2からRONIC=9.46%。AIエージェント代替を踏まえた全社の長期名目成長率g=1.5%を適用すると、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=15.30倍となる。事業純利益は余剰現金10億円の税後利息約0.14億円を除いた8.56億円であり、これに15.30倍を適用した約130.97億円へ、余剰現金の回収評価7.50億円を加算する。2025年の約24%という高ROEを永久には維持できないとする根拠は、投資資本の増加と法人電話の競争激化である。
確率:通信キャリアに組み込まれた独自データには高い継続性がある一方、CloudはAIエージェント代替の影響を強く受ける。Bizは市場全体の大幅成長でなく、まだ小さい自社シェアの拡大によって数量を伸ばす。2028年中期計画の目標達成を当然とはせず、2035年までに販路競争と人件費上昇が利益成長を抑える中心的な筋書きとして33%を配分する。
やや悲観 24% OS標準機能とAI電話対応が顧客獲得を阻む 利益 2 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 327 円34 億円
携帯電話の基本機能が迷惑電話の識別や着信内容の確認を担うようになり、主要通信キャリアはセキュリティ関連オプションの構成を見直す。独自の迷惑情報データベース自体は引き続き使われるが、利用料の引き下げと提供範囲の縮小が進む。固定電話向けの対策は残っても、国内の固定電話利用は減少し、売上全体を支えるほどには伸びない。
トビラフォン Bizでは、新規販売を支えてきた代理店が他社の電話管理サービスも積極的に扱う。ライセンス満了時に機器を含む再契約を選ばない顧客が増え、累計販売台数は増えても一台当たりの売上が低下する。カスタマーハラスメント対策の需要は残るが、録音や自動応答は競合製品でも利用できるようになる。
Cloudでは、電話業務をAIが代行し、担当者数に基づく利用IDの必要性が薄れる。2026年までの急速な契約拡大は一時的なものとなり、後半には解約と単価引き下げが優勢となる。残る電話番号や回線の管理機能だけでは、販売費と開発費を十分に賄えない。
全社売上高は約30億円にとどまり、営業利益は約2.5億円へ縮む。採用した人員と販売体制をすぐには減らせず、セキュリティ事業から生じる利益も全社費用に吸収される。株主還元は縮小するが、前受金による資金繰りと財務基盤があるため、直ちに事業継続が困難になるわけではない。
- セキュリティ事業:迷惑情報データベース:数量 12,500,000(月間利用者規模を基にした判定サービスの到達利用者数(人、実質))× 価格 140(到達利用者1人当たりの年間認識売上(円、固定電話・周辺サービスを含む実効単価))→ 売上 18 億円・営業利益 10 億円。利用基盤2025年比0.83倍。OS機能との競争、キャリア更新価格の引き下げ。
- ソリューション事業:トビラフォン Biz:数量 9,500(トビラフォン Bizの累計販売台数(台、稼働基盤の代理指標))× 価格 115,000(累計販売1台当たりの年間認識売上(円、機器・ライセンス収益を平準化した実効単価))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。販売台数の増加が鈍り、ライセンス更新と単価の維持に苦戦する。
- ソリューション事業:トビラフォン Cloud:数量 7,836(契約中の課金ID数(ID、実質))× 価格 22,600(課金ID1件当たりの年間認識売上(円、基本料金・付加機能を含む実効単価))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AI代替でID数2025年比0.70倍。収益規模が販管費と開発費を賄えない。
倍率:10年後ROE=1.62÷49.9=3.25%で資本コスト7%を下回るため、成長による超過利益を評価しない。稼ぐ力から計算する倍率上限1÷k=14.29倍に対し、契約更新後の利益不安定性を踏まえ12.0倍を採用する。やや悲観では余剰現金10億円の75%が残るとし、税後利息約0.105億円を利益から除き、残存現金7.5億円に回収係数0.75を掛けた5.625億円を別に評価する。
確率:Apple・Googleの着信対策機能の高度化、CloudのID課金へのAI代替、Bizの契約更新難が同時に一部進む筋書き。既存の通信キャリア契約がすべて失われるとは考えないが、製品販売の拡大に合わせて積み上げた固定費が下がりにくい。この会社に固有の販売先集中とライセンス更新リスクを重視して24%とする。
悲観 13% 迷惑情報の収益モデルが壊れ、法人電話も縮小 利益 −3 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 189 円19 億円
主要通信キャリアが迷惑電話や不審SMSの識別をOS標準機能と通信網内の別システムへ統合し、トビラシステムズへの外部委託を大幅に縮小する。独自データベースは存在するものの、利用量が減れば新しい詐欺手口を把握する速度も落ちる。大規模な判定実績という強みが弱まり、代替サービスとの競争で実効単価も下がる。
同時に、詐欺の主戦場がSNSや生成AIによる偽装へ移り、従来の番号判定に対する対価が低下する。警察との情報連携や一部法人向けの判定業務は残るが、かつての高収益な通信キャリア向け事業には戻らない。
トビラフォン Bizでは、販売済み機器の契約満了後に更新が進まず、販路の縮小が始まる。機器や電話交換の機能は別のサービスへ統合され、累計販売台数を収益につなげられなくなる。CloudはAIが電話受付や記録を引き受け、利用ID数が大きく減少する。買収した周辺サービスやソフトウェアにも減損が生じる。
10年後の売上高は約13億円まで減り、営業損失は約4億円となる。早い時期の利益が後半の損失をある程度補うが、経営は成長投資を止め、事業の縮小と再構築を迫られる。株主にとって残る価値は高い利益率ではなく、負債と前受契約を差し引いた資産と、わずかに残る事業基盤に依存する。
- セキュリティ事業:迷惑情報データベース:数量 8,000,000(月間利用者規模を基にした判定サービスの到達利用者数(人、実質))× 価格 112(到達利用者1人当たりの年間認識売上(円、固定電話・周辺サービスを含む実効単価))→ 売上 9 億円・営業利益 4 億円。主要通信キャリアでの取扱縮小により利用基盤0.53倍、実効単価0.88倍。
- ソリューション事業:トビラフォン Biz:数量 4,000(トビラフォン Bizの累計販売台数(台、稼働基盤の代理指標))× 価格 80,000(累計販売1台当たりの年間認識売上(円、機器・ライセンス収益を平準化した実効単価))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。更新失敗と販売網縮小により認識売上が減少。固定費負担で赤字化。
- ソリューション事業:トビラフォン Cloud:数量 5,038(契約中の課金ID数(ID、実質))× 価格 18,000(課金ID1件当たりの年間認識売上(円、基本料金・付加機能を含む実効単価))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替が進み、ID数は2025年比0.45倍、実効単価0.81倍。
倍率:2035年時点は赤字であり、永久成長を前提にしたPERを使わない。2025年10月期の自己資本約25.95億円を基準とし、将来の収益力喪失、無形資産の減損、リストラ費用を考慮してPBR0.75倍とする。10年間の早期利益と後期損失がおおむね相殺し、還元後の自己資本は現状近くにとどまる想定。悲観の売却可能資産の床15億円も上回る。過去の市場PBRの底値を倍率の根拠にしていない。
確率:独立した迷惑電話対策アプリがOSと通信キャリアの標準機能に代替され、法人電話の機器販売とID課金も構造的に縮小する複合的な敗北を想定する。主要キャリアとの契約、独自データの蓄積が一度に無価値になる可能性は高くないが、少数顧客への集中によって失う時は急速に失うため13%を配分した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
セキュリティ事業:迷惑情報データベース
通信キャリアのスマートフォン・固定電話向けに迷惑電話、SMS、詐欺URLなどの判定データを供給する。280blockerなど小規模な周辺サービスを含む。
| 数量月間利用者規模を基にした判定サービスの到達利用者数(人、実質) | 価格到達利用者1人当たりの年間認識売上(円、固定電話・周辺サービスを含む実効単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 15,000,000 | 127 | 19 | 13 |
| 10 年後 中立 | 15,000,000 | 156 | 23 | 16 |
取り方:2025年10月期有価証券報告書のセキュリティ事業売上1,905,409千円、セグメント利益1,337,863千円を使用。数量は中期経営計画で示された利用規模約1,500万人を代理変数として採用し、売上を除して1人当たり年約127円の実効単価を求めた。これは利用者への直接請求単価ではない。固定電話向けや280blockerも売上に含むため、通信キャリア各社の真の契約単価、固定電話の契約数、市場シェアを示すものではない。通信キャリアの具体的な支払条件は非開示であり、この制約を10年予測の不確実性に織り込む。数量の中立値は独自データ型の範囲内で現状の1.00倍、価格は1.23倍とし、物価上昇と更新時の価格交渉力を区別した。
ソリューション事業:トビラフォン Biz
既存の法人電話設備に接続する機器と、迷惑電話遮断、通話録音、自動応答などの利用ライセンスを提供する。
| 数量トビラフォン Bizの累計販売台数(台、稼働基盤の代理指標) | 価格累計販売1台当たりの年間認識売上(円、機器・ライセンス収益を平準化した実効単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 6,273 | 103,619 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 17,500 | 135,000 | 24 | 6 |
取り方:会社説明資料の2025年10月期末累計販売6,273台を数量の基準とした。ソリューション事業売上約9.00億円のうちBizは会社の製品別説明から約6.50億円と推定し、累計1台当たり年約10.36万円の実効売上に換算した。台数は累計出荷であり全台が現在も稼働する保証はなく、実効単価も製品の販売価格ではない。ソリューション全体の公表セグメント利益1.51449億円のうち1.20億円をBizに配分するのは分析上の仮定であり、会社が公表した製品別利益ではない。5~7年の前払契約を期間按分で認識するため、売上と入金時点を混同しない。将来は解約・交換・更新失敗が累計台数当たりの認識売上に反映される。物理的な電話設備との接続価値は残るため、画面・ID課金型SaaSのAI数量減少率を機械的に全体へ適用しない。
ソリューション事業:トビラフォン Cloud
スマートフォンやパソコンで利用するクラウドPBX。電話番号、通話、録音、文字起こし、要約、外部ソフト連携を提供するID課金型サービス。
| 数量契約中の課金ID数(ID、実質) | 価格課金ID1件当たりの年間認識売上(円、基本料金・付加機能を含む実効単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 11,195 | 22,327 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8,956 | 24,500 | 2 | 0 |
取り方:2025年10月期末の課金ID数11,195を用いる。会社開示のソリューション事業売上8.99956億円からBizの推定6.50億円を差し引き、Cloud約2.50億円とする。年末ID数で年間売上を割ったため、求めた年約2.23万円は公表の標準料金や厳密なARPUではない。2026年10月期第3四半期末の課金ID数17,399への増加も確認しているが、2025年度基準の数量を後から書き換えていない。製品別利益は非開示のため、ソリューション全体のセグメント利益からBiz推定分を差し引いた0.31449億円をCloudに配分した。AIエージェント代替に該当する席・ID課金型として、中立の10年後数量は2025年比0.80倍、実効価格は1.10倍に制限する。
リスクと懸念
AIエージェント代替によるCloudのID課金縮小
電話の受付、録音内容の確認、要約、顧客情報の入力をAIが一連の作業として処理するようになると、人間の担当者に割り当てるCloudの利用ID数が減る。標準の電話番号や回線管理は残っても、従来の利用人数に連動した成長は続かない。会社はAI要約などを提供しているが、それが既存のID課金減少を補う規模で売上計上されているという開示は確認できない。
通信キャリアへの販売集中と契約交渉力
KDDI、ソフトバンク、NTTドコモの3社で2025年10月期売上の約59%を占める。自社で利用者を集めなくても広くサービスを届けられる半面、キャリア側の料金改定や取扱商品の変更が収益に直結する。主要な販売先を1社失うだけでも、セキュリティ事業の固定費を短期間で十分に削れず、全社利益が大きく縮む可能性がある。
OS標準機能による迷惑電話対策の置き換え
AppleやGoogleが迷惑電話やSMSの判定を標準機能として高度化すれば、通信キャリアは独立した対策アプリへの支払いを抑えられる。独自データベースをOSや通信網へ供給する道は残るが、その際の単価や契約範囲が現在より有利になるとは限らない。電話番号からSNSや偽装音声へ詐欺の手段が移ることも、既存データの経済的価値を低下させうる。
Bizの前払利用料と再契約の不確実性
トビラフォン Bizでは、複数年分のライセンス利用料を前払いで受け取り、期間に応じて売上計上する。契約負債が増える間は現金収支が良く見えるが、更新時に顧客が離れれば次の入金は発生しない。2021~2022年の販売分は2027~2028年ごろにライセンス満了期を迎えるため、実際の再契約率と更新単価を見なければ、現在の現金残高をそのまま永久的な余剰資産とは評価できない。
成長投資による増分資本効率の低下
中期経営計画は販売体制、人員、開発、新規事業、M&Aへ大きく投資する内容である。既存のデータベース事業は少ない追加費用で利益を伸ばせるが、法人電話では代理店手数料、営業担当者、開発者などの費用が先に発生する。売上が伸びても利益率が回復しない場合、投資した資本が株主の要求利回りを満たせず、高ROE企業という評価が徐々に失われる。
新規事業・買収における資本配分
2021年の280blocker取得や2026年のプロディライトとの提携は既存の販売網と相性が良いが、過去の買収・提携だけから将来の大型投資の成功率は判断できない。新規事業へ資金を移しても顧客獲得単価が高止まりすれば、蓄積した現金は十分な株主利益を生まない。買収価格、取得後の継続収益、のれんの回収可能性を継続して確認する必要がある。
現金残高と株主に帰属する資産価値の違い
有利子負債を差し引いた現金が厚いことは財務上の強みである。しかし、預金には複数年ライセンスの前受金が含まれ、将来のサービス提供費用や開発投資を賄う役割もある。さらに創業者の保有比率が高いため、余剰資金の全額を少数株主が直ちに受け取れるわけではない。配当や自己株式取得の実績を評価しつつ、資産価値への加算は保守的にする。
今後の分かれ目
- 主要通信キャリア3社との契約が維持され、迷惑情報データベースの利用料が更新時にも上がったら
- 独自データの価格決定力が実証されたと判断し、セキュリティ事業の実効単価と長期成長率を再検討する。CloudのAI代替とは分けて、データ事業の価値を上方修正する。
- 2027~2028年に満了する初期のBizライセンスで高い再契約率が確認されたら
- 累計販売台数を将来の継続売上につなげられる証拠となる。更新単価と再契約時の追加獲得費用を確認し、Bizの数量と利益率の中立見通しを引き上げる。
- Cloudの課金ID数が増えても売上総利益と営業利益が伸びなくなったら
- AI代替や販売費負担によって、利用IDの増加が株主利益につながっていない可能性を重視する。Cloudの数量と実効価格を引き下げ、やや悲観側への移行を検討する。
- 会社のAI電話対応機能が独立した課金収入を生み、その金額と継続率が開示されたら
- AIを単なる代替要因だけでなく新しい収益源として評価する余地が生まれる。既存IDの置き換えによる減収と新サービスの増収を相殺せず、別々に数量と価格を見積もり直す。
- 2028年10月期の売上高60億円・営業利益17億円・ROE22%以上という目標に近づいたら
- 中期計画の実行力を評価する。ただし、2035年まで同じ成長率が続くことを意味しないため、新規投資の回収率とCloudの利用者構造を確認したうえで10年の筋書きを変更する。
- 契約負債の増加が止まる一方で営業キャッシュフローが大きく減少したら
- 過去の現金創出に前受利用料がどれほど寄与していたかを再評価する。更新入金が細り始めた場合は余剰現金と株主還元の想定を引き下げ、悲観側の資産の床も再点検する。
- 主要通信キャリアのいずれかで迷惑情報フィルタの採用が終了、または大きく縮小したら
- データベースの堀そのものと販売経路の堀を分けて評価し直す。失われる契約売上と固定費削減可能額を確認し、セキュリティ事業の数量、利益率、悲観確率を下方修正する。
見ておくもの
- KDDI・ソフトバンク・NTTドコモとの契約更新、提供サービス、利用料改定の動向
- 迷惑情報データベースの実利用者数、判定処理数、詐欺URL・SMS判定の提供範囲
- セキュリティ事業の売上成長率とセグメント利益率
- トビラフォン Bizの累計販売台数だけでなく、契約満了時の再契約率、更新単価、前受利用料残高
- トビラフォン Cloudの課金ID数、実効単価、月次解約率、ID以外のAI関連課金売上
- ソリューション事業の売上成長に対する利益増加額と本社費用の増加額
- 2028年10月期の中期計画目標に対する売上高、営業利益、純利益、ROEの進捗
- 営業キャッシュフローから契約負債増加の影響を除いた現金創出力
- 配当性向、自己株式取得の実施額、発行済株式数から自己株式を除いた株数の推移
- Apple・Google・通信キャリアによる迷惑電話判定やAI通話対応の標準機能化
- M&A・資本業務提携に投じた金額と、取得後に確認できる売上・利益・継続収益
倍率と資本コストの決め方
2026年10月22日時点の株価1,650円、株数10,311,100株から時価総額約170.13億円を確認したが、セグメントの数量・価格・利益率を決める際には現在の株価を使っていない。2025年10月期の売上は、セキュリティ19.05409億円とソリューション8.99956億円の合計28.05365億円で公表実績に一致する。公表セグメント利益13.37863億円と1.51449億円から全社費用5.90568億円を差し引くと営業利益8.98744億円となる。ソリューション内のBizとCloudの利益配分は推計であり、その不確実性は明示した。
数量は利用者数、販売台数、課金ID数という実物の指標を採用し、価格を別に置いた。AIエージェント代替はCloudの数量・単価と10年より先の成長率に入れ、資本コストの寿命項目には重ねていない。倍率はROE、増分超過利益の残存割合、資本コスト、長期成長率から決め、現在や過去、同業他社のPERを根拠にしていない。
10年間に受け取る配当・自己株式取得は期中平均時点、10年後の時価総額は10年後時点として割り引く。各筋書きの時価総額の加重平均は約135.81億円、10年間の還元額の加重平均は約31.48億円である。資本コスト7%による現在価値は合計約91.48億円、現在の時価総額との差は約マイナス46.2%となる。中立の10年後時価総額は約138.47億円であり、これも現在の時価総額に届かない。前受金を含む現金を全額上乗せせず、悲観の約19.46億円は売却可能資産の床15億円以上にあることを確認した。
2027年4月以後に始まる年度からの新リース会計基準では、事務所などの賃借に係る貸借対照表の表示が変わりうる。ここでは賃借料を営業費用に含める現在の利益の考え方にそろえ、会計表示の変更だけによる価値の増加を認めていない。現在保有する資産の減価償却を物価上昇率で機械的に増やさず、将来更新するソフトや設備の費用は各筋書きの利益率に反映した。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%から、事業の安定性と純現金を反映したqualityのマイナス0.5ポイントを差し引く。個別の技術転換、販売先集中、M&A実行リスクは確率と利益の筋書きに入れ、資本コストには上乗せしない。