結論
エムケイシステムは、社会保険労務士が日々使う申請・給与・労務管理システム「社労夢」を主力とする会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。大手社労士事務所に深く入り込んだ顧客基盤には価値があるが、AIエージェントによってソフトの操作そのものが不要になる危険と、過去のサービス停止から続く係争を軽く見ることはできない。
社労夢の導入数は2026年3月末に3,215社で、全国の社労士事務所への導入率は8.4%にとどまる。しかし、大手105事務所のうち49事務所が利用している。これは単なる販売力ではない。多くの顧問先の社会保険手続きや従業員情報が同社の仕組みを通るため、業務を丸ごと別製品に移す負担が大きいことを示唆する。一方、導入総数は前年からほぼ増えておらず、顧客基盤がなお勢いよく拡大しているとは言いにくい。
2026年3月期は売上高約33億円、営業利益約2.5億円となり、2期続いた営業不振から回復した。ただし、利益改善の中心はデータセンター費用や外注費などの削減である。当期純利益約2.6億円には繰延税金資産の計上による押し上げもある。これを平常時の稼ぐ力と取り違えると、10年間の利益を過大に見る。
10年後の中立では、社労夢の記録基盤は生き残るが、顧客数が緩やかに減ると見込む。CuBeの受託開発はAIによる工数削減を受け、単価上昇では数量減を補い切れない。それでも中立の10年後時価総額は約24.4億円となるが、弱い筋書きの重みと時間価値を考える必要がある。配当なども含む確率加重の現在価値は約14.9億円で、基準時価総額約16.7億円を約10%下回る。優良な顧客基盤を認めつつも、長期保有にはもう一段の安全域が欲しい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、エムケイシステムに対する第一の問いは、10年後も社労士が社労夢にお金を払い続けるかである。答えは、すべての機能ではないが、重要な部分では「続ける」だと考える。顧問先の従業員台帳、申請履歴、法改正への対応は業務の土台であり、AIが書類作成を自動化しても記録の正確さと責任の所在は必要になる。大手事務所での採用実績は、その土台を支える強みである。
ただし、堀がある部分と、堀がない部分を分けなければならない。社労夢を操作する画面やCuBeの個別開発工数には、AIが仕事を肩代わりするほど価格低下の力が働く。会社自身も「AI社労夢」の開発を進めているが、構想が発表されたことと、AIによる新収益がすでに生まれたことは違う。AIを自社の利益に変えられるまで、従来製品の単価と数量には慎重であるべきだ。
第二の問いは、利益が株主のものになるかである。ソフトウエア償却やセキュリティ対策、製品刷新に必要な投資を控除すると、自由に配れる利益は見た目ほど厚くない。さらに、過去のサービス停止から生じた損害賠償請求は、利益だけでなく信用と財務の両方に影響しうる。訴訟の帰結を断定しない代わりに、資本配分の余裕が狭くなる筋書きを十分に考える必要がある。
第三の問いは、いくらなら安全に持てるかである。今の会社には立ち直る力があり、導入済みの顧客基盤を失うと決めつける理由もない。しかし、2026年3月期の一時的な税効果を除いた稼ぐ力はまだ回復途上であり、再投資の高い利回りも確認途上だ。10年後に価値を生む可能性を認めながら、現時点では不確かな成長に高い価格を払わないという姿勢が妥当である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は社労夢事業である。社会保険労務士事務所や労働保険事務組合が、顧問先の入退社、社会保険、雇用保険、給与、年末調整などを処理するための業務ソフトを提供する。Shalomシリーズに加え、顧問先との情報共有に使う「ネットde顧問」、従業員申請に使う「Direct HR」、年末調整支援の「eNEN」などがある。月額利用料が積み上がるASPサービスは2026年3月期に約22.6億円の売上を生み、連結売上高の約7割を占めた。
この事業には二つの性格が同居する。一つは従業員情報、申請履歴、顧問先情報を保持し、法改正にも対応する業務の記録基盤という性格である。もう一つは、担当者が画面を開いて入力、照合、転記するための操作ソフトという性格だ。前者はAIが進んでも残りやすいが、後者はAIが仕事を代行するほど価値が細る。全売上を同じ強さの継続課金として扱うべきではない。
社労夢には初期設定やシステム構築、打刻機器・帳票類の販売もある。2026年3月期の会社開示では構築が約0.9億円、商品販売が約0.7億円で、ASPに比べれば小さい。構築の一部は担当者の工数に依存し、商品販売は導入先の増減に連動する。これらは月額収益ほど先を読みやすくない。
もう一つの柱が子会社ビジネスネットコーポレーションのCuBe事業である。大企業向けの人事・人財管理システムを顧客ごとに作り込む受託開発「パターンメイド」と、人事評価クラウド「GooooN」などを提供する。2026年3月期のCuBe売上はセグメント間取引を含め約8.5億円だったが、営業利益は約0.2億円にとどまる。案件ごとの工数超過や検収時期に業績が左右される、社労夢の月額収益とはかなり異なる事業である。
連結売上の約4分の3を占める社労夢が、会社の価値をほぼ決める。CuBeには既存顧客の業務理解という資産があるものの、開発人員を追加して売上を増やすだけでは高い資本効率に結びつかない。10年先には、顧客が何社残り、記録基盤にいくら払い続けるかが最も重要になる。
優良さと弱いところ
最大の強みは、大手社労士事務所の実務に深く組み込まれていることである。大手105事務所のうち49事務所が社労夢を利用し、Shalomシリーズには約80万社の登録企業情報がある。多くの顧問先を束ねる事務所ほど、申請履歴や従業員台帳を安全に移行する負担は大きい。法定手続きと顧問先情報をつなぐ共同利用基盤であり、蓄積された業務データという二つの要素が、記録基盤部分の堀を支えている。
ただし、顧客データは顧客自身のものであり、同社だけが永久に利用できる独占資産ではない。解約率が年5%未満であるという定量的な開示や、法改正のたびに物価を超える値上げを継続できた実績も確認できない。実際、2025年3月末から2026年3月末まで導入総数はほぼ横ばいだった。公表ARPUの上昇も約3%で、顧客数の停滞を大幅な値上げで補っているわけではない。
もっと大きな弱点は、信頼が傷ついた際の損失の大きさである。2023年6月のサービス停止は顧客の業務に影響し、その後の復旧やシステム刷新が収益を圧迫した。2024年3月期の大幅赤字と翌期の赤字は、安定課金だけでは会社全体の利益を守れないことを示した。現在は黒字化し、セキュリティ体制も強化しているが、一度生じた損害の係争はなお続いている。
再投資の利回りも厳しく見る必要がある。2006年から続くASP基盤は長い営業実績を持つ一方、ソフトウエア資産の償却費が大きく、製品更新やセキュリティ投資を止められない。2026年3月期の利益改善には費用削減が効いたが、それが新たな開発投資の高い利回りを証明するわけではない。社労夢の記録基盤には部分的な堀を認めるが、CuBeの受託開発まで含む会社全体を強い堀の企業とは評価しない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
社会保険労務士向けシステムの市場は、国内SaaS市場全体よりかなり狭い。会社資料では全国の社労士事務所が約27,922あり、社労夢の導入事務所数は2,343で、事務所数ベースのシェアは8.4%である。導入総数3,215には社労士事務所以外も含まれるため、同じ分母で比べてはならない。公表ARPUと全国事務所数から単純計算した専門業務ソフトの月額利用料の潜在額は、年約180億円になる。ただし、すべての小規模事務所が同じ金額を払えるわけではなく、市場規模の推計上限に近い参考値である。
競争相手にはエフアンドエムの「オフィスステーションPro」、Cellsの「台帳」「FORROU」、日本シャルフなどがある。オフィスステーションProは2025年9月末時点で士業事務所への導入数3,486を公表している。対象となる士業の範囲や契約の定義は社労夢と完全には一致しないが、社労夢が独占的な地位にないことは明らかだ。大手事務所での社労夢の強さと、小規模事務所で競合製品が広がる余地は両立する。
需要を支えるのは、社会保険や労働保険の複雑さ、電子申請、法改正、人手不足である。顧問先企業とのデータ連携が必要な限り、給与や届出情報を保管する基盤は簡単には消えない。他方、利用者が画面を通じて行っていた入力、転記、確認、申請はAIエージェントに置き換わりうる。業務量そのものが増えても、操作する人数や購入するソフトのID数が減るという変化が起こる。
国内SaaS市場全体は2025年に約1.5兆円とされるが、その成長率を社労夢に直接当てはめるのは誤りである。同社が取る市場は社労士事務所の業務基盤であり、すでに長く使われている製品が中心だ。中立では国内事務所数を大きく増やさず、社労夢の導入母数を3,215から2,820へ減らす。残る顧客の単価は名目で上昇するが、物価3%の10年累積上昇率には届かない。競争とAIによる操作価値の低下が、名目売上の伸びを抑えると考える。
CuBeが属する個別受託開発市場は、顧客企業の人事システム更新や既存業務との接続需要が続く反面、より競争的である。大手SI企業、給与・人事パッケージの提供会社、AIを使う内製開発と競う必要がある。受注総額だけでなく、実際に必要となる人月と採算を見なければならない。10年先に同じ機能をより少ない開発工数で作れるようになれば、その便益の相当部分は顧客に移る。
資本政策と M&A
資本配分の実績は、慎重な評価を要する。社労夢のストック事業を築いたことには価値があるが、CuBe事業を加えた後の連結利益は安定した右肩上がりにはならなかった。2023年のシステム障害とその後の対応によって、2023年3月期に約15億円あった自己資本は2025年3月期に約7億円まで縮んだ。2026年3月期は約9億円に回復したが、失った資本を取り戻す途中である。
2026年3月期の営業キャッシュフローは約7.1億円と好調だった。ただし、売掛金の回収や償却費の影響を含み、毎期繰り返せるオーナー利益そのものではない。同年度には設備・ソフトへの投資と借入金の返済があり、期末現金約7.5億円に対して有利子負債は約8.4億円だった。差し引きでは約0.9億円の純負債であり、多額の余剰現金を持つ無借金企業ではない。
会社は赤字期に減配した後、2026年3月期に増配した。配当を止めず、業績の回復を株主に返したことは評価できる。しかし、自己株買いによって株数を継続的に減らしてきた実績は乏しい。直近5年間の配当性向や株数減少の実績から、今後蓄積する現金が全額株主に戻るとは判断せず、余剰現金の価値には一定の割引を加える。
確認できた公表資料では、複数年度を対象とした中期経営計画について、売上・営業利益・ROEの具体的な達成目標と、配当性向・DOE・総還元性向・自社株買い額の数字の約束はない。2027年3月期の単年度予想は売上高33億円、営業利益2.7億円、純利益約1.9億円である。株主にとっての次の課題は、AI対応への開発投資と訴訟対応の負担を吸収したうえで、安定配当を維持できるかである。MBOやTOBは将来の可能性としてはありうるが、発表済みの取引は確認できず、価値に買収プレミアムを加えていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
社労夢の大手顧客基盤は、単なるソフトの販売本数では測れない。従業員数の多い社労士事務所では、顧問先ごとの社会保険、雇用保険、労働保険、給与や従業員情報を一つの運用にまとめる必要がある。大手105事務所のうち49事務所が同社製品を使うという実績は、機能、法対応、サポートの組み合わせが実務上評価されてきた証拠だ。導入事務所が増えなくても、大規模顧客との取引が深まれば売上単価と利益率を上げられる。
また、AIが人手を減らすことは、社労夢を必ずしも壊さない。人間が入力していた情報をAIが取り込み、申請内容を照合し、行政に送信するようになっても、従業員台帳と履歴の保存先は必要だ。同社は2026年に「AI社労夢」の構想を示し、入退社、給与、社会保険、雇用保険、労働保険にまたがる支援機能を計画している。既存顧客がAI導入時の主要な販売先となれば、乗り換えの手間を増やしながら新しい収益を得る道もある。
2026年3月期には、データセンター費用と外注費の削減で利益率が改善した。以前の障害対応で膨らんだ費用が正常化すれば、売上が急増しなくても収益は伸びる。営業キャッシュフローも回復しており、借入返済によって財務が徐々に強くなる可能性がある。CuBeについても大企業向けの個別開発で蓄積した人事業務の知識をクラウド製品に移せれば、少ない工数で同じ顧客にサービスを届けられる。
訴訟が会社の主張に近い形で収束し、大手社労士事務所の利用が維持されれば、信用回復の効果も期待できる。長期の価値は短期間の赤字より、残存する顧客基盤の収益力によって決まる。社労夢の継続課金と法対応が利益を生み続けるなら、10年先の時価総額は現状を大きく超える余地がある。
慎重な見方
社労夢が業務に深く組み込まれていることと、10年後にも現在の料金体系で稼げることは同じではない。AIエージェントが入退社の届出、内容確認、申請、返戻書類の整理まで実行するようになれば、担当者が操作画面を使う頻度は減る。最終的な記録保存先が必要であっても、それをどの会社が提供するかは競争にさらされる。顧客企業が自社の人事システムや別の労務プラットフォームから行政手続きを直接実行するようになれば、社労士事務所向け専用ソフトの価値は細る。
競争もすでに厳しい。オフィスステーションProは3,400を超える士業事務所への導入を公表し、Cellsなども社労士の実務をよく知る製品を提供している。社労夢の導入総数は前年からほぼ横ばいであり、高いシェアの大手顧客を守るだけで新しい契約が次々増えるとは限らない。顧客にとってデータ移行が大変でも、クラウド間のデータ連携が進めばその負担は下がりうる。競争が強まれば、物価が上がっても値上げを通せない可能性がある。
財務に対する警戒も欠かせない。2023年のサービス停止が損害賠償請求につながり、2026年6月提出の有価証券報告書には約3.15億円の請求が記載されている。責任や支払額は確定していないものの、自己資本約9億円の会社には無視できない金額だ。さらに自己資本の一部はソフトウエアや税効果に支えられており、帳簿価額を現金のように扱うことはできない。
CuBeの受託開発にも構造的な難しさがある。案件が増えても、工数の読み違いや外注費の増加で利益が消える。AIが工数を削減した場合も、顧客がその分の値下げを求めれば開発会社に利益は残らない。社労夢の更新投資、セキュリティ費用、法改正対応を抱えながら、全社の利益率が再び低下する危険を考えると、黒字回復したばかりの利益を永続的なものとして高く評価するのは早い。
どちらに重みを置いたか
社労夢の記録基盤には実際の顧客実績があり、事業そのものが消える見方には与しない。一方、導入数の停滞、CuBeの低い採算、過去の障害から続く訴訟、AIによる操作機能の代替は、楽観的な成長を妨げる具体的な材料である。したがって、上側の確率32%に対して下側を39%とし、慎重な見方にやや重みを移した。AIによる数量と単価の圧力はすでに各筋書きに入れており、同じ理由で資本コストをさらに引き上げていない。算定された現在価値は基準時価総額を約10%下回るため、結論はやや割高である。評価が変わるには、AI製品の売上実績と継続課金の強さを数字で確かめる必要がある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 463 円25 億円(+ 還元の換算額還元の合計 89 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 275 円15 億円、今との差 −10.4%、 期待の年率 +6.7%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 1,065 円58 億円 | 203 円11 億円 | +312.8% | +17.3% | 139 円8 億円 |
| やや楽観 | 21% | 774 円42 億円 | 147 円8 億円 | +200.0% | +13.0% | 193 円10 億円 |
| 中立 | 29% | 450 円24 億円 | 81 円4 億円 | +73.0% | +6.2% | 154 円8 億円 |
| やや悲観 | 25% | 178 円10 億円 | 48 円3 億円 | −26.5% | −3.4% | 56 円3 億円 |
| 悲観 | 14% | 64 円4 億円 | 0 円0 億円 | −79.0% | −14.4% | 9 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 463 円25 億円 | 89 円5 億円 | +79.9% | +6.7% | 552 円30 億円 |
今の株価時価総額 307 円17 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 社労夢がAI対応の基盤として残り収益性が改善 利益 4 億円 · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,065 円58 億円
社労夢は、AIが行政手続きを実行する際にも必要な顧問先・従業員情報の保管先としての位置を守る。申請履歴と法改正対応を蓄積した既存基盤が選ばれ、社労士事務所の導入数はほぼ維持される。2026年に示されたAI社労夢の構想が既存顧客の離反を防ぎ、より広い業務への利用を促す。導入数を大きく増やすのではなく、継続率と顧客単価によって稼ぐ力を高める。
オフィスステーションProやCellsとの競争は続くが、大手社労士事務所では情報移行の負担が壁になる。開発の共通化とデータセンター費用の効率化が定着し、社労夢ASPの利益率は大幅に改善する。CuBeは案件採算の管理を強化し、受託開発の工数が減っても個別業務の高度な実装で利益を確保する。ただし、AIによる受託工数の縮小は避けられず、楽観でも現在を上回る開発工数は見込まない。
訴訟は会社の支払能力を大きく損なわない形で収束し、セキュリティへの信頼も回復する。配当と余剰現金の蓄積が進み、自己資本は増える。新しい大型買収に頼らず既存の社労夢基盤を磨き込むことが、株主価値を高める10年となる。
- 社労夢・ASP継続課金:数量 3,200(Shalomシリーズ導入契約社数(社、期末値を年間契約数量の代理変数に使用))× 価格 79(契約1社当たりの推定月間ASP売上(千円、名目))→ 売上 30 億円・営業利益 5 億円。契約数量は現在とほぼ同数で、AIによる数量拡大は仮定しない。記録基盤の維持と上位契約で月額単価が1.34倍、営業利益率18%。
- 社労夢・初期構築とシステム商品:数量 3,050(Shalomシリーズ導入契約社数(社、初期構築・商品需要の母数))× 価格 65(導入契約1社当たり年間関連売上(千円、構築・商品販売を平均した推定値))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。構築工数は減るが、実物商品と高付加価値の設定業務は残り、複合単価が上昇する。
- CuBe・個別受託開発:数量 510(年間請負開発工数(人月、外注を含む推定))× 価格 1.60(開発工数1人月当たり売上(百万円、名目、推定))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。AIによる工数縮小を織り込みつつ、難度の高い人事システム案件を選び採算8%を確保する。
- CuBe・人事評価クラウド:数量 160(推定有料契約法人(社))× 価格 34(契約法人1社当たり推定月額売上(千円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。席数相当の数量は増やさず、上位プランと運営効率化によって小さな利益を確保する。
倍率:資本コストk=8.0%、10年後ROE=4.17÷27.4=15.2%、通常の堀の残存割合1/2による増分投下資本利益率RONICは約11.6%。AIエージェント代替を織り込んだ10年後以降の名目成長率g_long=0.5%から、正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)の上限約12.76倍をそのまま使う。余剰現金8億円について税後利息相当1.4%を純利益から除き、株主への戻り方0.75を掛けた6億円を別に加える。2026年時点の市場PERは根拠に用いない。
確率:大手社労士事務所での導入実績と登録データの蓄積には確かな価値があるが、AI製品の増収金額はまだ確認できない。既存契約をほぼ維持しながらASPの採算を大きく改善するには、開発、価格、信頼回復がすべて順調に進む必要があり、実現確率は11%とした。
やや楽観 21% 大手顧客を守りながら着実に利益率を改善 利益 3 億円 · PER 12.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 774 円42 億円
社労夢の記録基盤は顧客の実務に残り、法改正対応とデータ保存が継続課金の理由となる。AIによる入力やチェックの自動化は進み、利用者の操作時間は減るが、既存の顧問先情報と行政手続きとの接続は価値を保つ。オフィスステーションProなどに小規模顧客の一部を奪われるものの、大手事務所との関係を維持することで契約総数の低下は小幅にとどまる。
AI社労夢の機能は既存プランの解約防止と一部の上位プランへの移行に役立つ。新しいAI関連売上の急増は想定せず、月額単価は物価の累積上昇より低い範囲で増える。データセンターの運営効率化とソフト開発の共通化が進むため、ASPの利益率は現在より改善する。CuBeの受託開発は工数が縮むが、案件選別と手戻り削減で赤字案件を抑える。
訴訟は財務に重大な傷を残さない形で進み、借入金は利益と資金回収によって徐々に縮小する。株主還元を無理なく続けられるようになり、蓄積した資本の一部が余剰現金として残る。高成長企業にはならないが、社労夢を中心に安定した中小型ソフト企業として利益を積み上げる10年になる。
- 社労夢・ASP継続課金:数量 3,100(Shalomシリーズ導入契約社数(社、期末値を年間契約数量の代理変数に使用))× 価格 74(契約1社当たりの推定月間ASP売上(千円、名目))→ 売上 28 億円・営業利益 4 億円。顧客数は約4%減。業務記録の必要性が残り、単価は現在の1.26倍、営業利益率14.5%。
- 社労夢・初期構築とシステム商品:数量 3,000(Shalomシリーズ導入契約社数(社、初期構築・商品需要の母数))× 価格 61(導入契約1社当たり年間関連売上(千円、構築・商品販売を平均した推定値))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。人手による設定作業は減るが、物品販売と複雑な初期対応が残る。
- CuBe・個別受託開発:数量 500(年間請負開発工数(人月、外注を含む推定))× 価格 1.56(開発工数1人月当たり売上(百万円、名目、推定))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。工数は現在の約77%に縮小し、単価改善と案件選別で利益を残す。
- CuBe・人事評価クラウド:数量 155(推定有料契約法人(社))× 価格 33(契約法人1社当たり推定月額売上(千円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。席相当の利用量は小幅減少、単価は約1.12倍でAIの価格圧力を反映する。
倍率:k=8.0%、ROE=3.0÷25.5=11.8%、通常の堀の残存割合1/2からRONIC=約9.88%。g_long=0.5%を用いた正当化PERは約12.66倍。余剰現金7億円に対応する税後利息0.098億円を全社純利益から外し、余剰現金の75%である5.25億円を足す。利益の質はRONICとkで扱ったため、上限から恣意的に割り引かない。
確率:社労夢の大手顧客への浸透と費用削減の実績は上振れの根拠となる。ただし導入総数が停滞しているため、今後10年間も契約を増やし続けるより、既存顧客の維持と収益改善が進む場合として21%を配分した。
中立 29% 社労夢の記録基盤は残るがAIが数量と単価を抑える 利益 2 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 450 円24 億円
10年後も社労夢は、社労士事務所が顧問先の人事労務情報を保管し、法定手続きを管理する基盤として使われている。しかし、入力、転記、確認、書類作成の多くはAIが担当する。事務所は少ない人員でより多くの顧問先を扱えるようになり、ソフトの操作頻度や必要な契約構成が変わる。競合製品への切り替えと小規模事務所の統合も重なり、Shalomシリーズの導入数は3,215から2,820へ減少する。
顧客数は減るが、記録管理と法改正対応には引き続き対価が支払われる。月額の実質単価には下押しが働くため、名目単価の上昇は10年間の物価上昇率を下回る。2026年に進めているAI社労夢の開発は既存基盤を守る手段になるが、開示された構想以上の新規収益は見込まない。データセンター費用の効率化は定着するものの、セキュリティ・法改正・製品更新に必要な投資も続き、ASPの営業利益率は現在から小幅な改善にとどまる。
CuBeはAIによる開発工数の削減で受託数量を現在の約65%まで減らす。契約単価は名目で上がるものの、工数減の影響は残る。人事評価クラウドでも操作席数に相当する需要が減る。結果として連結売上は現在とほぼ同じ規模にとどまり、営業利益は約2.7億円となる。配当を維持しつつ、更新投資と借入返済に資金を充てる10年である。
- 社労夢・ASP継続課金:数量 2,820(Shalomシリーズ導入契約社数(社、期末値を年間契約数量の代理変数に使用))× 価格 69(契約1社当たりの推定月間ASP売上(千円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。数量は現在の0.877倍で記録基盤型の0.85~1.00倍に入る。単価は1.18倍で物価上昇1.34倍を下回る。
- 社労夢・初期構築とシステム商品:数量 2,733(Shalomシリーズ導入契約社数(社、初期構築・商品需要の母数))× 価格 58(導入契約1社当たり年間関連売上(千円、構築・商品販売を平均した推定値))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。構築工数の縮小と物品需要の残存を合成した数量0.85倍。人的構築部分は約0.70倍、物品部分はほぼ維持とみる。
- CuBe・個別受託開発:数量 425(年間請負開発工数(人月、外注を含む推定))× 価格 1.54(開発工数1人月当たり売上(百万円、名目、推定))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で工数0.653倍。単価1.283倍は物価10年分の1.34倍以内。
- CuBe・人事評価クラウド:数量 130(推定有料契約法人(社))× 価格 32(契約法人1社当たり推定月額売上(千円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。操作画面型SaaSとして数量0.813倍、単価1.098倍。既存利用者の業務自動化を反映する。
倍率:k=8.0%、2036年の全社ROE=1.72÷20.2=8.51%。通常の堀の残存割合1/2を用いるとRONIC=約8.26%となる。AIエージェント代替を反映したg_long=0.5%から正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)=約12.53倍とする。10年間の留保利益から更新投資や運転資金・返済に充てる分を除き、余剰現金として5億円が残ると推定する。その税後利息0.07億円を純利益から外し、戻り方0.75を掛けた3.75億円を足すと時価総額は約24.42億円。現在のPERや同業の市場倍率には依存しない。
確率:社労夢の既存顧客基盤は失われないが、導入総数の停滞と競合の拡大、AIによる人月・操作画面の代替を踏まえる。業界の実質数量が急伸しない中心的な筋書きに29%を割り当てた。
やや悲観 25% 大手顧客は残るが価格競争と開発採算が悪化 利益 1 億円 · PER 11.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 178 円10 億円
社労夢の導入数は、競合製品への乗り換えと社労士事務所の統合で減少する。大手事務所では業務情報を保持する基盤が残るが、小規模事務所ではクラウド間の移行が簡単になり、専用ソフトを使い続ける理由が弱まる。AIによる申請・照合の自動化が広がり、会社は継続契約を維持するために値上げを抑える。契約社数は2,350まで減少し、ASP売上は約18.2億円となる。
セキュリティと法改正への対応費用は売上ほど減らない。人員やクラウド運営費の固定的な部分が残るため、ASPの利益率は低下する。CuBeでは大企業がAIによって開発工数を削減し、受託単価の交渉力も強める。難度の低い案件は社内開発や大手クラウドに置き換わり、受託開発は赤字になる。クラウドサービスの規模も十分には拡大しない。
会社は社労夢の基幹機能を維持するために投資を続けるが、余剰資金は限定的になる。係争対応や追加の情報セキュリティ投資も、収益の回復を遅らせる。借入返済を優先して配当の余力が縮み、自己資本は大きく増えない。事業は存続するものの、資本コストを上回るROEを安定して稼げない会社へ変わる筋書きである。
- 社労夢・ASP継続課金:数量 2,350(Shalomシリーズ導入契約社数(社、期末値を年間契約数量の代理変数に使用))× 価格 65(契約1社当たりの推定月間ASP売上(千円、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。導入数は約27%減、名目単価は1.10倍にとどまる。固定費負担から利益率7.5%。
- 社労夢・初期構築とシステム商品:数量 2,360(Shalomシリーズ導入契約社数(社、初期構築・商品需要の母数))× 価格 53(導入契約1社当たり年間関連売上(千円、構築・商品販売を平均した推定値))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。初期設定業務をAIが代替し、物品販売だけでは採算を支えられない。
- CuBe・個別受託開発:数量 400(年間請負開発工数(人月、外注を含む推定))× 価格 1.47(開発工数1人月当たり売上(百万円、名目、推定))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。受託工数0.615倍。価格引き上げは物価未満で、外注・追加開発負担が残る。
- CuBe・人事評価クラウド:数量 115(推定有料契約法人(社))× 価格 31(契約法人1社当たり推定月額売上(千円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。契約相当数量が28%減り、月額単価の上昇も小さい。
倍率:2036年のROE=0.77÷12.5=6.16%はk=8.0%を下回り、成長に再投資しても株主価値を増やしにくい。利益の価値の上限は1÷k=12.5倍である。価格競争による採算低下と追加更新投資を考えてPER11.6倍とし、過去の市場倍率は使わない。余剰現金1.2億円の税後利息0.0168億円を純利益から除き、戻り方0.75による0.9億円を加える。稼ぐ力による上限約10.3億円、換金可能資産の床約3.5億円の範囲である。
確率:社労夢の基盤自体が消えなくても、AIによるソフト統合、競合の浸透、工数価格の低下が同時に起きうる。2024年・2025年の利益悪化で費用固定性も確認されているため、中立より弱いケースに25%を配分した。
悲観 14% AIによる代替と信用失墜で記録基盤も侵食される 利益 −1 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 64 円4 億円
社労夢が守ってきた記録基盤の優位が崩れる。社労士事務所は顧問先企業の人事クラウドから直接データを取得し、AIエージェントが行政手続きまで実行するようになる。専用ソフトの操作画面は不要になり、顧問先の情報を別のサービスへ移すための仕組みも整う。オフィスステーションPro、Cellsなどの競合が大手事務所にも浸透し、Shalomシリーズの導入数は1,700まで減る。
会社はサービスを維持するために価格を抑えるが、顧客の減少を止められない。法改正対応、セキュリティ、クラウド運営に必要な費用が残るため、社労夢の営業利益はほぼ消える。CuBeでは受託工数が大幅に減少し、残る案件も価格競争と手戻り費用で赤字になる。GooooNなどのクラウドサービスも競争の中で縮小し、連結売上は約17億円に落ちる。
過去のサービス停止に関連する係争や追加の信用回復費用は、資金繰りの余裕を奪う。会社は新しい買収を行うより事業の縮小と負債管理を迫られ、配当を停止する。複数年の損失と無形資産の減損によって自己資本は減少する。ただし、即時倒産や全資産の無価値化を中心に想定するのではなく、現在の換金可能な資産に相当する約3.5億円を、少数株主の回収価値に関する厳しい下限として残す。
- 社労夢・ASP継続課金:数量 1,700(Shalomシリーズ導入契約社数(社、期末値を年間契約数量の代理変数に使用))× 価格 59(契約1社当たりの推定月間ASP売上(千円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。契約数は現在の約53%まで縮小。価格もほぼ据え置かれ、固定費により利益率が1.8%まで低下する。
- 社労夢・初期構築とシステム商品:数量 1,500(Shalomシリーズ導入契約社数(社、初期構築・商品需要の母数))× 価格 51(導入契約1社当たり年間関連売上(千円、構築・商品販売を平均した推定値))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。構築作業の代替と関連機器の販売減少により赤字化する。
- CuBe・個別受託開発:数量 300(年間請負開発工数(人月、外注を含む推定))× 価格 1.25(開発工数1人月当たり売上(百万円、名目、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 −1 億円。AIによる工数削減と内製化で数量は現在の約46%へ縮小し、固定人件費と不採算案件で赤字が続く。
- CuBe・人事評価クラウド:数量 90.0(推定有料契約法人(社))× 価格 29(契約法人1社当たり推定月額売上(千円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。操作画面型クラウドの利用が大きく減少し、売上は現在の約56%まで縮小する。
倍率:恒常的な赤字のためPERは使わない。2026年3月末の親会社持分約9.02億円から、売却価値に乏しいソフトウエア約4.18億円、のれん約0.19億円、繰延税金資産約0.67億円、回収・処分費用約0.47億円を差し引いた換金可能資産の推計約3.5億円を床とする。これは10年間に積み上がった大きな将来自己資本に床のPBRを掛けたものではない。損失と減損を織り込んだ自己資本3.5億円にPBR1.0倍を適用し、余剰現金は認めない。
確率:2023年のサービス停止とその後の係争は、信頼が傷ついた場合の損失が現実になりうることを示した。AIと競合製品による乗り換えが同時に進み、社労夢の優位まで失う構造的敗北は中心的ではないが無視できず、14%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
社労夢・ASP継続課金
Shalomシリーズ、ネットde顧問、関連する電子申請・労務管理サービスなどの月額利用収益。記録・法対応の基盤と、人が操作する画面を併せ持つ。
| 数量Shalomシリーズ導入契約社数(社、期末値を年間契約数量の代理変数に使用) | 価格契約1社当たりの推定月間ASP売上(千円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,215 | 59 | 23 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2,820 | 69 | 23 | 2 |
取り方:2026年5月8日の会社決算説明資料で、ASPサービス売上2,264百万円、Shalomシリーズ導入数3,215社を確認した。2,264百万円÷3,215社÷12か月から月額約58.69千円を逆算した推定平均単価であり、実際の定価や個別契約単価ではない。会社の公表ARPUは53.8千円で差がある。期末導入数を年間平均契約数の代わりに用いたこと、契約期間や付帯サービスの計上範囲が異なる可能性があるため、この差を明示して使う。数量は契約社数、価格は月間売上、rev_factorは千円を億円に換算して12か月を掛ける係数である。営業利益は社労夢セグメント利益約2.21億円を社内推定でASPとその他に配分したもので、会社が公表したサービス別営業利益ではない。AI代替の型は、共同利用の申請基盤と顧問先情報の蓄積については『記録の正本』、操作画面・入力支援部分については『画面中心の業務SaaS』とする。
社労夢・初期構築とシステム商品
初期設定、関連するシステム構築、打刻機器や給与帳票などの販売。人的作業に依存する部分と物品販売が混在する。
| 数量Shalomシリーズ導入契約社数(社、初期構築・商品需要の母数) | 価格導入契約1社当たり年間関連売上(千円、構築・商品販売を平均した推定値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,215 | 48 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,733 | 58 | 2 | 0 |
取り方:決算説明資料の社労夢事業ではシステム構築87百万円、システム商品販売67百万円、合計154百万円が開示されている。より正確な売上と整合させるため、連結に含まれる社労夢事業の年間売上2,419,327千円からASP売上2,264百万円を差し引いた1.54757億円を使用する。導入数3,215社で割った約48.14千円は年間の需要母数当たり金額であり、すべての顧客が毎年構築を発注する意味ではない。構築作業はAIエージェント代替による工数減の対象、打刻機器などは実物商品の数量として扱う。営業利益はセグメントの合計から売上に応じて配分した推定値である。
CuBe・個別受託開発
大企業向け人事・人財管理システムの個別開発、導入、改修、保守を行う。請負金額と投入工数の差が利益を決める。
| 数量年間請負開発工数(人月、外注を含む推定) | 価格開発工数1人月当たり売上(百万円、名目、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 651 | 1.20 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 425 | 1.54 | 7 | 0 |
取り方:会社の2026年3月期説明資料ではCuBe事業の受託開発売上790百万円、クラウド売上57百万円だが、両者の合計847百万円にはセグメント間取引が含まれる。連結に算入されるCuBe売上約836.94百万円を、開示された790対57の比率で按分し、受託開発を約780.62百万円と推定した。工数と契約単価の直接開示はない。国内の大企業向け受託開発で外注や高技能者を含む平均単価を月120万円と仮定し、約651人月を逆算した。業界単価は契約範囲により大きく異なるため推定値であり、会社の実際の契約工数ではない。営業利益はCuBeのセグメント利益約0.17億円を売上で配分した。AIエージェント代替の型は明確に『人月・工数で売る』である。
CuBe・人事評価クラウド
GooooNなど、人事評価や人財管理をクラウドで提供する。利用企業数と月額利用料金が収益の源泉となる。
| 数量推定有料契約法人(社) | 価格契約法人1社当たり推定月額売上(千円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 160 | 29 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 130 | 32 | 1 | 0 |
取り方:CuBeの開示クラウド売上57百万円を、セグメント間取引の調整後に約56.32百万円と推定した。契約法人の実数と平均単価は開示されていない。GooooNの公表する低価格帯の月額料金を下限の参考にし、複数人利用・上位契約が混在する平均約29.3千円と仮定して約160法人を逆算した。これは収益分解のための仮定であり、実際の契約法人数を示すものではない。AIエージェント代替の型は『席課金・操作画面中心の業務SaaS』であり、中立の10年間は契約法人相当数量と実質単価の両方に圧力を見込む。
リスクと懸念
AIエージェント代替
社労夢の記録基盤は残りうるが、入力、照合、申請、返戻書類の整理など、画面操作による価値はAIエージェントが置き換えうる。CuBeの受託開発は人月で売る部分が大きく、工数の縮小が直接売上を減らす。人事評価クラウドにも席課金の縮小圧力がある。AI社労夢の構想は防御策になるが、収益化の金額が確認できるまでは成長材料として過大評価しない。
過去のサービス停止に関連する訴訟
2026年6月提出の有価証券報告書は、2023年6月のサービス停止に関連し、期末時点で原告92名、請求額合計約3.15億円の係争を開示した。その後1名の訴えが取り下げられたが、残る係争の金銭的影響は合理的に見積もれないとされる。請求額がそのまま損失になると断定しない一方、自己資本約9億円の会社にとって重要な不確実性である。
情報セキュリティと顧客信用
労務管理ソフトには従業員情報や社会保険関連データが集まる。障害や情報漏えいが起きれば、顧客にとっての被害は通常の業務ソフト以上に大きくなりうる。2023年のサービス停止後に対策を進め、認証取得やセキュリティ体制の強化も開示しているが、再発防止の投資は継続的に必要である。信頼回復が不十分なら新規導入や更新にも影響する。
社労士向け専用ソフトの競争激化
オフィスステーションPro、Cellsなどの競合は、社労士業務の電子申請や顧問先との情報連携を広げている。社労夢は大手事務所で強いが、全国の事務所数ベースでは8.4%のシェアにとどまる。顧客が新しいクラウドへ段階的に移行できるようになると、既存システムからの乗り換え費用は下がる。契約数と実質単価が同時に低下する可能性がある。
CuBeの受託開発採算
CuBeは約8億円規模の売上があるものの、2026年3月期のセグメント営業利益は約0.2億円にすぎない。案件ごとの工数超過や外注費の増加で、売上が伸びても利益が残らないことがある。AIで開発工数が減れば効率化できるが、顧客に値下げを求められれば恩恵は限定される。受注残高だけでなく、検収後の実現利益率を追う必要がある。
自己資本の質と借入条件
2026年3月末の親会社持分に相当する自己資本約9億円に対し、ソフトウエア資産約4.18億円、のれん約0.19億円、繰延税金資産約0.67億円がある。これらを現金同様の清算価値とは扱えない。また、一部借入金には財務制限条項があり、営業不振が再発すれば資金調達の自由度が下がりうる。借入返済の進捗とソフト資産の回収可能性を併せて確認する必要がある。
今後の分かれ目
- Shalomシリーズの導入数が3,215社前後を維持し、大手社労士事務所での採用が続き、解約率も年5%未満と開示されたら
- 記録基盤の堀が定量的に裏付けられる。社労夢の中立数量と残存率を見直し、やや楽観側の確率を増やす。
- AI社労夢について、実際の有料契約数、追加売上高、顧客の継続率改善が公表されたら
- AIを守りの機能だけでなく収益源として評価できる。ASPの月額単価と利益率を上方修正するが、受託開発の工数減少とは分けて考える。
- 係争について賠償額や引当金が具体化し、自己資本に対する負担が大きいと分かったら
- 損失の時期と金額を自己資本の道筋に入れ、配当の余力を減らす。特に床となる換金可能資産の額も再点検する。
- CuBeの受注残高が減少し、案件の採算悪化によって2期連続で営業赤字となったら
- 人月受託開発の数量と利益率を下方修正し、やや悲観・悲観側の確率を引き上げる。事業再編や撤退の可能性も検討する。
- 社労夢ASP売上が減り始める一方、IDC経費・ソフトウエア償却費・セキュリティ費用が高止まりしたら
- 固定費負担によって利益率が急低下するため、中立より弱い筋書きに寄せる。費用削減の一巡後に何が利益を生むかを確認する。
- 会社が配当性向や総還元性向の具体的な目標を掲げ、自社株買いを継続的に実施したら
- 蓄積した余剰現金が株主に戻る確度を引き上げ、excess_cash_returnを0.75から1.0へ見直す余地がある。利益成長と株主への現金還元は別々に評価する。
見ておくもの
- Shalomシリーズの導入総数、社労士事務所への導入数、大手事務所への浸透率の推移
- 社労夢ASPの月額継続売上、ARPU、ARPA、解約率
- AI社労夢の有料利用社数、追加売上高、既存契約への組み込み状況
- 社労夢事業の営業利益率とIDC経費、ソフトウエア償却費、セキュリティ関連費用
- CuBeの受注高・受注残高・工数超過案件・セグメント営業利益
- 2023年のサービス停止に関連する訴訟の進捗、賠償額、引当金の計上
- 借入金残高、財務制限条項、ソフトウエア投資、営業キャッシュフローと実際の配当・自社株買い
倍率と資本コストの決め方
財務の起点は添付factsの2026年3月期実績、株価と株数は2026年10月22日の基準値を用いた。社労夢は開示された導入3,215社とASP売上22.64億円から契約当たり売上を推定し、CuBeは受託売上から人月を推定した。物価3%は価格にのみ入れ、実質数量と二重に数えていない。AIエージェント代替は中立の数量・価格と10年より先のg_longに反映し、資本コストの寿命加算では重ねなかった。PERはk=8.0%、ROE、RONIC、g_longから導き、現在の市場倍率には寄せていない。2036年の自己資本は各筋書きで期首約9.02億円と10年間の累積純利益・還元が整合するようにした。余剰現金は更新投資と返済を考慮した現金相当額を各筋書きに明示し、利息と資産価値を二重計上しない。悲観の床には無形資産と税効果を含めず、現在の自己資本から換金困難分を控除した。2028年3月期からの新リース会計による貸借対照表の表示変更は、将来の稼ぐ力が増えたとは解釈せず、家賃を費用に含む現行基準と比較可能な形で評価した。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、値決め力の弱さ0.5%を加える。2024年・2025年の赤字は重大だが、直近では営業黒字に回復し、純負債も縮小しているため、事業が傾いた会社への特別な上乗せは適用しない。訴訟・情報セキュリティ・AIによる競争の不確実性は筋書きと確率で扱う。