結論
アイ・エス・ビーは、組込みソフトウェアと企業・公共向けシステム開発を主力とし、入退室管理システムも手掛ける独立系IT企業である。筆者の結論は「割高」だ。財務は堅く、入退室管理には評価すべき事業資産があるが、売上の大部分を占める受託開発の稼ぎ方が、今後10年で大きく変わると考えるためである。
同社は2015年から2024年にかけて利益率を着実に改善させた。2025年12月期には不採算案件などで営業利益が23億円へ落ち込んだものの、2026年上期には営業利益率が8.3%まで戻っている。経営が掲げる2030年の売上高500億円、営業利益45億円という目標にも、過去の延長であれば一定の説得力がある。
ただし、長く持つ株主が買うのは過去の成長率ではない。ソフトウェア開発に必要な人月そのものがAIエージェントで減り、発注企業が成果物を内製できるようになれば、技術者数を増やして売上を伸ばす仕組みは弱くなる。これは景気の一時的な谷ではなく、売り物の単位が変わる危険である。
一方、建物の扉、認証装置、工事、保守契約は画面操作だけでは代替できない。アートの入退室管理システムやALLIGATEが成長すれば、グループの利益構造は改善しうる。だが現在の売上構成では、その防御力を全社の強い堀と呼ぶにはまだ早い。
5つの筋書きから計算した現在の本質価値は約194億円で、2026年10月22日の時価総額約288億円を約33%下回る。会社が衰退すると決めつけた値段ではない。開発工数が減っても残る利益と、実物のセキュリティ設備が生む利益を区別した結果である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、最初に問うべきなのは、会社が10年後も必要とされるかではなく、現在と同じ方法で利益を得られるかである。システム開発の必要性は続く。しかし、人間の技術者が費やした時間を売る方式は、開発自動化が進むほど顧客にとって魅力が薄れる。良い会社であり続けても、良い投資になるとは限らない。
これに対し、入退室管理には実体がある。建物の扉はなくならず、認証装置の設置、既存設備との接続、保守、故障時の現場対応が必要だ。更新時に同じメーカーを選ぶ動機も生まれる。ここでは技術の進歩が需要を奪うだけでなく、顔認証や非接触認証の更新需要を生む可能性がある。筆者が10年後も所有したいのは、技術者の工数ではなく、こうした顧客設備との継続的な接点である。
オーナー利益の見方も慎重にする必要がある。帳簿上の純利益が増えても、採用や教育、案件管理、買収後の統合に資金を使えば、その全額を自由に配れるわけではない。逆に、システムを少人数で運用できるようになり、自社製品の保守契約が増えれば、利益の質は大きく改善する。経営には前者から後者への転換を期待する。
自己資本比率の高さと純現金は、不採算案件が続いた時の防波堤になる。ただし、その現金が運転資金と買収資金に必要なら、株主が直ちに受け取れる金とは違う。株主還元を強める2030年の方針は評価できるが、これからの買収が資本コストを超える収益を生むかは未知数だ。
現在の評価には、この不確実性を吸収できるほどの価格差がない。事業を失うと予想しているのではない。企業の存続確率が高いことと、現在の時価総額を正当化できることを分けて判断している。
何で稼ぐ会社か
同社の事業は、大きく情報サービスとセキュリティシステムに分かれる。2025年12月期の売上370億円のうち、情報サービスが約315億円、セキュリティシステムが約55億円を占める。情報サービスの中には、車載・通信機器向けの組込み開発、製造業向けの業務開発、金融・公共・ITインフラ向けの開発、モバイル端末管理サービスがある。
モビリティ領域では、車載ソフトウェアだけでなく、Wi-SUNなどの無線通信技術や各種機器の組込み開発を請け負う。ビジネスインダストリー領域は製造業、医療、業務システム、クラウド関連の開発を担う。エンタープライズ領域では金融、公共、通信基盤などの顧客と継続的に仕事をする。どの領域も技術力は必要だが、売上の主要な単位は開発契約と投入工数である。
自社サービスのFiT SDMは、企業がスマートフォンなどを管理するMDM製品である。月額課金と継続利用は魅力だが、管理対象端末や人間の操作画面に価値が集中する部分には、AIエージェントによる管理自動化と価格競争の危険がある。情報サービス事業の中で独立して公表されるMDM・IoTの売上は約4億円であり、全社への寄与はまだ小さい。
セキュリティシステム事業には、グループ会社アートの入退室管理装置、認証機器、設置工事、更新需要がある。ALLIGATEはクラウドと認証装置を組み合わせたサービスで、契約が続けば利用料と保守収入が得られる。扉の安全を確保するためには現場の機器、設置、保守が残るため、通常の画面中心の業務ソフトとは事業の寿命が異なる。
会社は事業領域別の売上を示すが、顧客別の請求工数、開発単価、設置台数、課金扉数をすべて公開しているわけではない。本分析では、受託開発を推定有償技術者人年、MDMを契約ID年、セキュリティを設置案件と扉契約年に分ける。これらの推定数量は実績として開示された顧客数や工数ではなく、各事業の経済性を調べるための物差しである。
優良さと弱いところ
同社の長所は、積み重ねた顧客関係と堅い貸借対照表にある。2025年末の自己資本は約145億円、純現金は約90億円で、自己資本比率は67%だった。長い取引関係を持つ金融・公共顧客の案件では、業務理解、品質管理、既存システムとの接続経験が受注の助けになる。これらは新規参入企業が短期間で模倣しにくい。
しかし、取引関係が長いことと、値上げを自由に通せることは別である。情報サービスの売上は技術者の稼働に依存し、顧客が開発手法や外注比率を変更すれば請求できる工数が減る。2025年には不採算案件と先行費用が利益を押し下げた。過去の利益率改善だけを根拠に、増分投資が将来も高い利回りを生むと断言できない。
利益を守る力はセキュリティ事業の方が強い。既設の入退室管理装置では、更新工事、保守、現場対応、認証機器との互換性が乗り換えの手間になる。会社の開示でも2026年上期のセキュリティ売上は前年同期比約16%増え、既設設備の更新と認証装置の需要が確認できる。ただし、解約率5%未満、年単位の移行期間、規制に伴う継続的な値上げ実績などを裏付ける数字は確認できないため、全社を『記録の正本』型の強い堀とは扱わない。
資本効率は良い時期と悪い時期がある。2015年から2024年にかけて売上と利益が伸び、ROEも改善した一方、2025年には利益率が再び低下した。買収を伴う増収にはのれんや人材維持費も付随する。今後の増分ROICを判断するには、買収後の営業利益だけでなく、取得対価、追加採用費用、顧客離脱を含めた投下資本全体で確かめる必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は2024年に約7兆円で、2025年は約7兆5,000億円規模と見積もられる。IDC Japanの従来予測では2029年に約9兆7,000億円へ拡大する。金融・公共システムの更新、クラウド移行、老朽化した基幹システムの改修が需要を支える一方、富士通、日立製作所、NEC、NTTデータなどの大手が中心を占め、多数の中小事業者が協力会社として参加している。アイ・エス・ビーの情報サービス売上を市場と比べると約0.4%である。
市場全体が成長することと、従来の受託会社の請求工数が増えることは同じではない。AIが設計、実装、テスト、保守調査を連続して行うようになれば、顧客が以前と同じシステムをより少ない外注人月で得られる。企業は浮いた予算を新しいIT投資に回すかもしれないが、それが同社の売上になるには、時間売りから成果物・知的財産・継続運用への転換が必要である。
モビリティ領域の車載ソフトウェア市場には電動化や車両制御の高度化という成長機会がある。国内の車載ソフトウェア関連市場は調査範囲により異なるが、約6,800億円という推計もある。ただし同社のモビリティ売上には無線通信など車載以外も含むため、その数字から厳密な車載シェアを計算することはできない。組込み開発は安全性評価が必要な分だけ通常の事務ソフトより残りやすいが、人が書くコードの量には減少圧力がかかる。
セキュリティ分野では、日本のアクセス制御市場の2025年規模を約6億8,000万ドルとする調査がある。為替150円で約1,000億円に相当し、同社のセキュリティ売上55億円は単純比較で約5%に当たる。ただし市場側には機器、ソフト、サービスが含まれ、会社側には工事や更新収入も入るため、厳密なシェアではない。競合にはセコム、ALSOK、パナソニック、SECURE、海外の入退室管理機器メーカーなどがいるが、同じ定義で比較できる各社シェアは開示から確認できない。
MDM市場ではMicrosoft Intune、Jamf、SOTI、CLOMO、LANSCOPEなどが競合する。端末管理の必要性は消えないものの、人が管理画面を操作する回数が減るほど、ID当たり料金の維持は難しくなる。10年後には、ITサービスの市場規模は現在より大きくても、請求できる人月は少なく、実物の認証設備の方が相対的に価値を保つ業界構造を想定している。
資本政策と M&A
2026年2月に公表された『ISBグループ中長期経営計画2030』は、2030年12月期の売上高500億円以上、営業利益45億円以上、営業利益率9%以上、ROE14%以上を目指す。売上高と営業利益の目標にはM&Aを含めていない。従業員数を2,246人から2,850人以上へ増やし、1人当たり売上高を約1,650万円から1,760万円以上へ高める計画である。
株主還元の約束も具体的だ。配当性向50%以上、DOE4%を下限とする方針を掲げ、機動的な自己株式取得を示している。ただし、自社株買いの確約額や総還元性向の数値目標はない。2026年から2030年の資金配分計画には、株主還元約55億円以上、価値向上投資約50億円、M&A投資50億〜100億円が盛り込まれている。
この計画を読むと、純現金90億円を丸ごと余剰資産として株主価値に加えるのは適切ではない。会社は手元資金を月商約3か月分に管理する方針で、2025年の月商から計算しても約93億円になる。人件費、外注費、買収資金を支える運転資金としての意味が強い。
買収では2024年末のみなし取得となったAMBCの取得原価配分が2025年に確定し、のれん約3.6億円、顧客関連資産約4.1億円が計上された。買った技術者と顧客を維持できれば収益源になるが、買収金額だけ成長したように見える危険もある。2015年と2020年には株数が増えた時期もあり、長期株主には利益総額だけでなく持分の希薄化を監視する必要がある。
現状では過去5年間の配当性向が50%以上で安定していたわけではなく、大規模な自社株買いによる株数減少も確認できない。そのため将来の余剰現金の株主への戻り方は75%と評価する。2030年の配当目標が実績として定着すれば、この評価を引き上げる余地がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
独立系の中堅IT企業でありながら、組込み、金融、公共、クラウド、入退室管理まで事業が広がっていることは強みである。特定業界の投資が落ち込んでも別の領域で補える。2026年上期は売上高が前年同期比4%増え、営業利益は12%増えた。2025年の不採算案件の影響が和らぎ、収益性改善が実際に進んでいる。会社の2030年計画は営業利益45億円を目指しており、単なる増収だけでなく、生産性と収益性を改善する意図が明確である。
AIが開発者の仕事を効率化すれば、技術者をすべて置き換えるのではなく、少人数でより難しい案件を請けられる可能性がある。安全性が要求される車載制御、既存の金融システム、公共インフラでは、生成されたコードをそのまま利用することは難しい。顧客の業務を理解し、品質を保証し、障害に責任を持つ企業の価値は残る。プライム受注と上流工程への移行が進めば、開発時間当たりの価値も高まる。
セキュリティシステムの成長は、すでに数字になっている。2026年上期には約34億円を売り上げ、既設設備の更新と認証装置関連の需要が堅調だった。アートの設置網とALLIGATEのクラウド契約を生かせば、一度獲得した顧客から機器更新と継続利用料の両方を得られる。ここに買収資金を振り向ければ、時間売りの事業から実物と保守契約の事業へ利益構造を移せる。
純現金約90億円と高い自己資本比率も評価できる。景気悪化時に調達を急ぐ必要がなく、優れた小規模企業を買収する余力がある。2030年の配当性向50%以上という目標が実行されれば、成長の成果を株主が受け取りやすくなる。これらを考えれば、現在の売上構成から想像する以上に良い会社へ変わる余地がある。
慎重な見方
最大の問題は、受託開発の市場が縮むかどうかではない。同じ市場規模からアイ・エス・ビーが受け取る料金が縮むかどうかだ。顧客がAIエージェントを使って開発・修正・テストを内製すれば、外注先の熟練度が高くても、請求できる人数と時間が減る。技術者不足による単価上昇を期待する従来の見方は、作業に必要な技術者数そのものが減る世界では通用しない。
同社の開発事業に長期の契約関係があっても、顧客が開発方法を変えれば契約内容は変わる。過去に積み上げた顧客知識は価値があるが、ソースコードを保有していることや業務を熟知していることだけでは、価格決定権を証明できない。実際、2025年には不採算案件と先行費用で営業利益率が低下した。システム開発の難易度が上がるほど、固定価格契約での工数超過も大きな損失要因になる。
経営計画は2030年に従業員を2,850人以上へ増やす方針である。足元の需要に対応するには合理的でも、2035年までに外注人月の価値が減るなら固定的な給与負担が重くなる。買収で技術者数を増やしても、労働集約型の収入を買うだけなら競争優位は強くならない。のれんや顧客関連資産が残っても、買収先の人材や顧客が失われれば価値は減る。
入退室管理は守りの強い事業だが、全社売上の約15%である。認証機器にも競争があり、セコム、ALSOK、パナソニック、SECUREなどが顧客に接する。ALLIGATEの管理画面や権限変更業務の一部はAIが自動化できるため、クラウド部分を無条件に高成長事業と扱うこともできない。
純現金が多いことは安心材料でも、会社はその現金を運転資金と買収資金に使う計画である。少数株主が清算を要求できるわけではない。今後10年で資本を利益率の低い案件や買収に投じれば、帳簿上の自己資本が増えても株主価値はそれほど増えない。
どちらに重みを置いたか
財務の強さと入退室管理の成長では肯定的な見方に説得力がある。しかし全社の収益を決める受託開発では、料金を請求する単位そのものが変わるという懸念が重い。中立でも開発工数の減少を織り込んでいるため、確率で同じAIリスクを重ねて減点することは避けた。そのうえで2025年の案件損失、人的資本の固定費化、買収資金の大きさという会社固有の実行リスクを踏まえ、やや悲観と悲観を合計40%とした。価値は現在の時価総額を約33%下回り、安全域が不足するという結論になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,411 円277 億円(+ 還元の換算額還元の合計 793 円91 億円)。 今の値に割り戻すと 1,689 円194 億円、今との差 −32.4%、 期待の年率 +2.9%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,582 円641 億円 | 1,307 円150 億円 | +175.7% | +12.2% | 551 円63 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,920 円450 億円 | 1,098 円126 億円 | +100.8% | +8.3% | 903 円104 億円 |
| 中立 | 34% | 2,306 円265 億円 | 862 円99 億円 | +26.8% | +2.8% | 1,077 円124 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,202 円138 億円 | 610 円70 億円 | −27.5% | −3.7% | 471 円54 億円 |
| 悲観 | 14% | 1,159 円133 億円 | 279 円32 億円 | −42.5% | −5.9% | 201 円23 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,411 円277 億円 | 793 円91 億円 | +28.2% | +2.9% | 3,204 円368 億円 |
今の株価時価総額 2,499 円287 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 設備型セキュリティへ収益構造が転換 利益 48 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,582 円641 億円
2030年に向けたプライム受注の強化と案件管理の改善が進む。従来の開発作業はAIで効率化されるが、顧客との要件調整、安全性検証、難度の高い組込み開発を請け負うことで、情報サービスの受注基盤を維持する。自社が顧客へ売るAIエージェントの定量的な売上実績はまだ確認できないため、開発工数自体の増加を成功の前提にはしない。
一方、入退室管理の事業が大きく伸びる。アートの設置済み顧客が非接触認証や顔認証の新機器へ更新し、ALLIGATEの継続契約も広がる。セコム、ALSOK、パナソニック、SECUREとの競争は続くが、既存の現場設備を扱えることが営業上の強みになる。2030年までの買収資金は入退室管理や保守契約を持つ企業に有効に使われ、利益率が改善する。
2035年には売上のうちセキュリティ関連が現在より大きな割合を占め、利益の柱も受託開発一辺倒ではなくなる。配当と自社株買いが計画に沿って増え、過去に積み上げた財務余力が株主にも還元される。これは技術者を増やして売上を伸ばす会社から、顧客設備と継続契約を持つ会社への転換に成功する筋書きである。
- モビリティ・組込みソフトウェア開発:数量 326(推定有償技術者人年)× 価格 0.21(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 70 億円・営業利益 7 億円。人月数量は現状の98%、単価は1.34倍。品質保証と上流工程への移行で利益率10%。
- ビジネスインダストリー向け受託開発:数量 780(推定有償技術者人年)× 価格 0.23(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 183 億円・営業利益 21 億円。請求工数は現状維持。AI利用で原価を減らし、成果物の付加価値で利益率を確保。
- エンタープライズ・金融公共向け開発:数量 630(推定有償技術者人年)× 価格 0.25(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 156 億円・営業利益 20 億円。人月数量96%、単価1.34倍。公共・金融の上流工程が収益性を支える。
- FiT SDM・MDM・IoT関連製品:数量 111,611(推定有償ID年換算)× 価格 0.00(1ID年当たり平均売上高・億円)→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。ID相当数量98%、単価1.15倍。製品運用の効率化による高利益率。
- 入退室管理装置・工事・更新:数量 998(標準導入案件換算・件)× 価格 0.12(標準導入案件1件当たり売上高・億円)→ 売上 116 億円・営業利益 22 億円。物理設備の設置・更新案件が1.75倍、単価1.45倍。競争力の改善を含む。
- ALLIGATE・入退室管理の継続契約:数量 11,083(課金扉・継続契約年換算)× 価格 0.00(扉契約1年当たり平均売上高・億円)→ 売上 28 億円・営業利益 10 億円。課金扉契約相当数2.10倍。現場機器との接続価値により継続利用が拡大。
倍率:資本コストk7.75%、2035年ROE約19.7%、普通の堀として超過ROEの残存割合50%からRONIC約13.7%。長期名目成長率g0.5%を使う正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)の約13.29倍を採用する。AIによる長期変化はgに反映しており、別途倍率を恣意的に割り引かない。資本は事業と買収に投じられ、別建ての余剰現金は加算しない。
確率:AIで開発者の生産性を高めながら既存の受託売上を守り、入退室管理では新規設置と継続契約の両方を拡大する複合的な成功が必要である。実現可能性はあるが、現時点でAIエージェントの自社販売による金額付き受注実績を確認できないため、受託開発の数量が増え続ける想定にはしない。
やや楽観 18% 高付加価値開発と入退室管理で収益を維持 利益 34 億円 · PER 13.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,920 円450 億円
開発作業の自動化によって従来型の外注人月は減るが、会社は顧客への直接提案、上流設計、品質保証の役割を広げる。金融・公共の既存顧客との関係は維持され、ビジネスインダストリーではクラウドや医療関連の仕事を確保する。人数に比例して売上が増える時代ではなくなるが、顧客から受け取る案件単価はある程度守られる。
入退室管理は現場設備の更新が続き、ALLIGATEのクラウド契約も増える。既設顧客から継続して収入を得る仕組みが整うことで、グループ利益率は改善する。経営が掲げるM&Aは主に顧客基盤や技術の補完に使われ、大きなのれん減損を生じさせずに済む。
2035年の売上は現在を上回るが、成長の中心は人月の増加ではなく単価と事業構成の改善である。配当性向50%以上の方針も実績に近づき、利益の過半を株主へ返す体制が定着する。十分良い10年ではあるが、セキュリティの市場全体を支配するほどの堀までは形成されない。
- モビリティ・組込みソフトウェア開発:数量 289(推定有償技術者人年)× 価格 0.21(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 61 億円・営業利益 5 億円。有償人年87%、単価1.32倍。車載・無線の高度な検証需要は残る。
- ビジネスインダストリー向け受託開発:数量 702(推定有償技術者人年)× 価格 0.23(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 162 億円・営業利益 15 億円。有償人年90%、単価1.32倍。品質・上流化による収益改善を見込む。
- エンタープライズ・金融公共向け開発:数量 590(推定有償技術者人年)× 価格 0.25(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 146 億円・営業利益 15 億円。有償人年90%、単価1.34倍。金融・公共の既存顧客と上流受注が残る。
- FiT SDM・MDM・IoT関連製品:数量 102,500(推定有償ID年換算)× 価格 0.00(1ID年当たり平均売上高・億円)→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。有償ID換算90%、単価1.15倍。競争下でも製品収益を維持。
- 入退室管理装置・工事・更新:数量 798(標準導入案件換算・件)× 価格 0.11(標準導入案件1件当たり売上高・億円)→ 売上 88 億円・営業利益 14 億円。導入・更新案件1.40倍、単価1.37倍。更新市場で徐々にシェアを獲得。
- ALLIGATE・入退室管理の継続契約:数量 8,444(課金扉・継続契約年換算)× 価格 0.00(扉契約1年当たり平均売上高・億円)→ 売上 20 億円・営業利益 6 億円。課金扉契約換算1.60倍、単価1.31倍。継続利用が利益を支える。
倍率:2035年ROE約14.7%、k7.75%、普通の堀としてRONIC約11.2%。g_long0.5%で正当化PERは約13.18倍となる。受託部分の長期的な人月縮小はgと数量に織り込み、さらに技術寿命や倍率で重複して引かない。別建て余剰現金はゼロとする。
確率:開発人月には一定の減少が生じるが、金融・公共の上流工程への移行と入退室管理の着実な拡大が利益を補う筋書きである。2030年計画の施策と2026年上期の回復には裏付けがある一方、受託開発の請求工数を完全に維持するほどの価格決定力は認めない。
中立 34% 人月は縮むが、セキュリティで利益を補う 利益 20 億円 · PER 13.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,306 円265 億円
国内のIT投資額は名目では伸びるが、ソフトウェア開発の請求工数は減少する。既存システムの修正や検証の一部を顧客企業がAIエージェントで処理し、アイ・エス・ビーが従来請け負っていた作業が発注されなくなる。金融・公共分野は慎重な検証が必要なため比較的残りやすいが、それでも技術者数と人月単価の掛け算だけで成長することは難しい。
会社は2030年までに売上500億円を目指すが、その後も従来の人月売上が増え続けるとは考えない。既存顧客との取引を保ちながら、人員を再配置し、利益率の低い案件を抑える。2025年の不採算案件の反省から採算管理が改善し、情報サービスの営業利益率は過去の最良期に近づく。
セキュリティではアートの設備更新とALLIGATEの継続契約が成長する。現場で必要な認証機器を軸に顧客が残り、売上構成は現在より良くなる。しかし国内の大手警備会社や機器メーカーとの競争は強く、価格とシェアの上昇には限度がある。
結果として2035年の売上は2025年と大きく変わらないが、収益性は改善する。株主還元は2030年計画を踏まえて利益の半分強を配る一方、大規模な買収が追加利益を生むことは確実視しない。強い衰退でも高成長でもない、事業の中身が徐々に入れ替わる10年となる。
- モビリティ・組込みソフトウェア開発:数量 239(推定有償技術者人年)× 価格 0.21(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 50 億円・営業利益 3 億円。人月数量72%、単価1.30倍。検証・実装工数は減るが高難度業務は残る。
- ビジネスインダストリー向け受託開発:数量 483(推定有償技術者人年)× 価格 0.22(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 108 億円・営業利益 7 億円。人月数量62%、単価1.28倍。汎用開発とテストの自動化が最も重い。
- エンタープライズ・金融公共向け開発:数量 459(推定有償技術者人年)× 価格 0.24(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 110 億円・営業利益 8 億円。人月数量70%、単価1.30倍。金融・公共の複雑なシステムが下支え。
- FiT SDM・MDM・IoT関連製品:数量 91,111(推定有償ID年換算)× 価格 0.00(1ID年当たり平均売上高・億円)→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。ID相当数量80%、単価1.10倍。管理画面の自動化と価格競争を反映。
- 入退室管理装置・工事・更新:数量 667(標準導入案件換算・件)× 価格 0.11(標準導入案件1件当たり売上高・億円)→ 売上 72 億円・営業利益 10 億円。設置・更新案件1.17倍、単価1.34倍。現場工事と認証設備は残る。
- ALLIGATE・入退室管理の継続契約:数量 7,019(課金扉・継続契約年換算)× 価格 0.00(扉契約1年当たり平均売上高・億円)→ 売上 16 億円・営業利益 4 億円。課金扉契約相当数1.33倍、単価1.25倍。画面より実物設備の継続利用を評価。
倍率:中立売上約359億円、営業利益約32億円、純利益約20億円。2035年ROEは約9.0%でk7.75%をやや上回る。超過ROEの残存割合50%からRONIC約8.4%、長期g0.5%とすると正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)は約12.97倍となる。長期のAI代替は数量とgに含め、追加の倍率減額はしない。余剰現金の別建て加算はしない。
確率:AIによる受託開発の工数削減を中心に据える。モビリティの数量72%、ビジネスインダストリー62%、エンタープライズ70%は、人月・工数型に定められた中立数量0.55〜0.75倍の範囲にある。セキュリティは実物設備の更新を取り込むが、会社全体の強い値決め力を前提にしない。下に寄せる理由:2025年の案件損失、計画上の大規模採用とM&A資金配分が、事業構造の転換を難しくするため。
やや悲観 26% 顧客内製化が進み、設置工事だけが踏みとどまる 利益 6 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,202 円138 億円
金融・公共の長期顧客は残るが、通常の開発案件では顧客の内製化と競合のAI活用が先行する。契約を維持するために価格条件を譲り、従来より多くの技術者を稼働させることができなくなる。会社が採用した人材を高付加価値業務へ移すのにも時間がかかり、人件費と教育費が重荷になる。
2025年の不採算案件のような原価超過を完全には防げない。買収で獲得した顧客も、買収後の組織統合や人材流出によって一部を失う。情報サービス全体では売上が減少し、営業利益率も低い水準に戻る。新たなAI対応商品の開発は続くが、受託売上の減少を補えるだけの金額にはならない。
セキュリティでは既設装置の更新需要が残る。しかしセコム、ALSOK、SECUREなどの競争で新規設置のシェアを取れず、導入件数は現在を下回る。ALLIGATEの契約は維持するものの、管理機能の自動化によって単価上昇は限定的になる。
2035年には利益が大きく縮み、資本コストを下回る収益力となる。株主還元を続けても2030年の目標水準を維持する余力は弱い。事業は存続するが、稼ぐ力より売却可能な資産に重きを置いて評価される状態である。
- モビリティ・組込みソフトウェア開発:数量 166(推定有償技術者人年)× 価格 0.20(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 33 億円・営業利益 1 億円。人月数量50%、単価1.23倍。顧客の内製化と受注競争で利益率低下。
- ビジネスインダストリー向け受託開発:数量 351(推定有償技術者人年)× 価格 0.20(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 71 億円・営業利益 2 億円。人月数量45%、単価1.15倍。案件採算を守れない。
- エンタープライズ・金融公共向け開発:数量 361(推定有償技術者人年)× 価格 0.22(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 80 億円・営業利益 2 億円。人月数量55%、単価1.20倍。既存顧客は残るが請求工数減少。
- FiT SDM・MDM・IoT関連製品:数量 76,306(推定有償ID年換算)× 価格 0.00(1ID年当たり平均売上高・億円)→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。ID相当数量67%、単価1.04倍。競争で収益性低下。
- 入退室管理装置・工事・更新:数量 508(標準導入案件換算・件)× 価格 0.10(標準導入案件1件当たり売上高・億円)→ 売上 52 億円・営業利益 4 億円。設置・更新案件89%、単価1.27倍。顧客シェアを失う。
- ALLIGATE・入退室管理の継続契約:数量 5,278(課金扉・継続契約年換算)× 価格 0.00(扉契約1年当たり平均売上高・億円)→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。契約相当数は現状維持、単価1.12倍。継続保守は残る。
倍率:ROE約3%が資本コスト7.75%を下回り、成長投資は価値を増やせない。悲観側では2035年まで積み上がる帳簿資本に高い倍率を付けない。現在自己資本145.2億円に対するPBR0.95倍で137.94億円とし、無形資産を控除した保守的な資産の床133億円を上回る。これは過去の株価やPBRの安値ではなく、現在の資産と低下した稼ぐ力による判断である。
確率:2025年に確認された案件損失と、2030年計画の人員増加による固定費負担を重く見る。AI代替そのものは中立の数量に既に含まれているため、ここでは顧客の内製化への対応遅れ、粗利の低い案件の残存、設備更新シェアの低下を追加の下振れ要因とする。
悲観 14% 人月商売が壊れ、買収資産も傷む 利益 −5 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,159 円133 億円
AIエージェントによる開発の自動化が予想以上に速く進み、企業の内製化も拡大する。アイ・エス・ビーの開発技術そのものが消えるわけではないが、人月で請求できる仕事は大幅に減る。顧客は成果物や結果に対する支払いへ移行し、会社は従来の人員配置と料金体系を維持できなくなる。
売上が縮む中でも正社員の給与、研修、オフィス、システム管理の費用はすぐには消えない。価格競争で受注した案件の採算が悪化し、情報サービスの主要領域は営業赤字となる。買収先の顧客離脱や技術の陳腐化によってのれんなどの減損も必要になる。2030年の売上・利益・ROE目標は達成できず、株主還元方針の維持より事業の立て直しが優先される。
セキュリティ分野でも、既設設備の更新自体は続くが、新規導入で競合に劣後する。ALLIGATEの管理画面に関わる収入は自動化圧力を受け、ハードウェア保守の収益だけが細く残る。グループ全体では営業赤字となり、会社としての強い堀は形成できない。
それでも2025年末には自己資本145億円と純現金約90億円が存在する。倒産を前提としない悲観の評価では、稼ぐ力をゼロ以下に切り下げても、実体のない資産を除いた売却可能な純資産の参考額は残す。既存株主は大きな損失を被るが、事業の失敗と資産価値の完全な消滅を混同しない筋書きである。
- モビリティ・組込みソフトウェア開発:数量 116(推定有償技術者人年)× 価格 0.17(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 20 億円・営業利益 −1 億円。人月数量35%、単価1.08倍。人員の固定費を吸収できない。
- ビジネスインダストリー向け受託開発:数量 249(推定有償技術者人年)× 価格 0.18(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 46 億円・営業利益 −1 億円。人月数量32%、単価1.05倍。汎用開発の受注が大幅に消える。
- エンタープライズ・金融公共向け開発:数量 243(推定有償技術者人年)× 価格 0.20(有償技術者1人年当たり売上高・億円)→ 売上 49 億円・営業利益 −1 億円。人月数量37%、単価1.10倍。公共・金融でも契約の抜本見直し。
- FiT SDM・MDM・IoT関連製品:数量 51,250(推定有償ID年換算)× 価格 0.00(1ID年当たり平均売上高・億円)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。ID相当数量45%、単価0.92倍。管理画面の価値が失われる。
- 入退室管理装置・工事・更新:数量 371(標準導入案件換算・件)× 価格 0.09(標準導入案件1件当たり売上高・億円)→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。設置・更新案件65%、単価1.15倍。競合に設備更新シェアを奪われる。
- ALLIGATE・入退室管理の継続契約:数量 4,222(課金扉・継続契約年換算)× 価格 0.00(扉契約1年当たり平均売上高・億円)→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。契約相当数80%、単価0.98倍。最低限の保守収入だけ残る。
倍率:営業赤字で稼ぐ力から正のPER価値を求めない。現在自己資本145.2億円から無形固定資産約7.7億円とその他資産の回収価値への保守的な調整約4.5億円を控除した約133億円を、倒産を前提としない売却可能資産の床として採用する。現在自己資本に対する倍率は約0.916倍。2035年に蓄積した帳簿自己資本160億円へこの倍率を掛けることはしない。
確率:受託開発が構造的に負け、買収で取得した顧客と人材の収益価値も失う複合的な失敗を想定する。過去には2011年に営業赤字を経験しており、絶対に起きないとは言えない。ただし純現金と既設の入退室管理設備があるため、破綻に近い極端な資産毀損までは中心の悲観に含めない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
モビリティ・組込みソフトウェア開発
車載、無線通信、移動端末などの組込みソフトウェア開発。主な収益は顧客企業向けの開発・検証契約であり、AI代替分類では人月・工数型に該当する。
| 数量推定有償技術者人年 | 価格有償技術者1人年当たり売上高・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 333 | 0.16 | 53 | 2 |
| 10 年後 中立 | 239 | 0.21 | 50 | 3 |
取り方:2025年決算説明資料のモビリティ領域売上53.20億円を使用。会社はこの領域の人月と契約単価を開示していない。1人年当たり売上1,600万円を仮定すると、有償工数は332.5人年となる。会社の2025年正社員1人当たり売上約1,650万円を単価推定の参考にしたが、全社値と領域別値は同一ではない。営業利益2.20億円は情報サービス事業全体の営業利益から推定配分したもので、領域別の開示値ではない。国内車載ソフトウェア市場約6,800億円は市場規模の参考にとどめる。モビリティ売上には車載以外も含まれるため、単純に割って車載シェアとはしない。
ビジネスインダストリー向け受託開発
製造業・医療・クラウド・業務システムなどの開発、保守、組込み。売上の中心は人月・工数であり、AIエージェントによる開発作業の圧縮を直接受ける。
| 数量推定有償技術者人年 | 価格有償技術者1人年当たり売上高・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 780 | 0.18 | 136 | 6 |
| 10 年後 中立 | 483 | 0.22 | 108 | 7 |
取り方:2025年ビジネスインダストリー領域の公表売上136.44億円を、仮定した1人年当たり売上1,750万円で除して約780人年と推定した。平均単価は高付加価値案件と協力会社利用を含む請求額の換算値であり、実際の社員給与や契約単価ではない。領域別営業利益6億円は推定配分。国内ITサービス市場を2025年約7.5兆円とすれば、同領域の売上は市場の約0.18%に相当する。ただし市場統計と同社売上の対象範囲は完全には一致しない。
エンタープライズ・金融公共向け開発
金融、公共、通信・ITインフラ向けシステム開発と運用関連業務。顧客の業務知識とシステム接続の経験は価値があるが、開発受託の中心部分は人月・工数型に分類する。
| 数量推定有償技術者人年 | 価格有償技術者1人年当たり売上高・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 656 | 0.19 | 121 | 7 |
| 10 年後 中立 | 459 | 0.24 | 110 | 8 |
取り方:2025年のエンタープライズ領域売上121.34億円を、金融・公共の複雑な業務を扱うことによる相対的な単価差を想定し、1人年1,850万円で換算した。約656人年は開示された技術者数ではない。営業利益6.50億円は情報サービス全体の営業利益との整合を保つための推定配分。国内ITサービス市場約7.5兆円との単純比較は約0.16%で、ビジネスインダストリーと同じ市場を重複して数えた別個の市場シェアではない。低解約率や共同利用基盤の証拠が不足するため、記録の正本型として扱わない。
FiT SDM・MDM・IoT関連製品
端末管理ソフトと関連する自社製品・サービス。主なAI代替分類は席・ID課金および操作画面中心の業務ソフトであり、管理業務の自動化が課金単位を圧縮しうる。
| 数量推定有償ID年換算 | 価格1ID年当たり平均売上高・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 113,889 | 0.00 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 91,111 | 0.00 | 4 | 0 |
取り方:会社が公表した情報サービス事業のMDM・IoT関連領域売上4.10億円を使用。FiT SDMはソフトバンクの販売案内で月額300円からの料金例があり、年額3,600円を換算単価とすると約11.4万ID年になる。これは製品の実際の契約ID数ではなく、他のIoT製品・初期費用を含む領域売上を同じ単位に置き換えた参考値である。営業利益0.47億円も推定。国内MDM市場を約900億円とする調査との比較では領域全体でも約0.5%未満だが、対象製品が異なるため正確なFiT SDMのシェアではない。価格参考:https://www.softbank.jp/business/service/mobile/solution/partner/fitsdm
入退室管理装置・工事・更新
アートの入退室管理システム、認証機器、導入工事、現場保守・設備更新。現場の機器が価値の中心で、AI代替分類では物理的な設備・現場対応型に該当する。
| 数量標準導入案件換算・件 | 価格標準導入案件1件当たり売上高・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 570 | 0.08 | 46 | 5 |
| 10 年後 中立 | 667 | 0.11 | 72 | 10 |
取り方:2025年のセキュリティシステム事業売上55.12億円から、クラウド・継続利用相当として推定した9.50億円を除いた45.62億円を物理設備・工事・更新の参考売上とした。会社は両者の売上内訳、設置台数、平均案件金額を開示していない。標準案件800万円を仮定した570件は実績件数ではない。営業利益5.40億円も事業全体の営業利益7.60億円から推定配分した。日本のアクセス制御市場2025年約6.76億ドル、為替150円で約1,014億円を比較市場とすると、この推定物理部分は約4.5%に相当する。市場統計の範囲が異なるため厳密なシェアではない。市場参考:https://www.imarcgroup.com/report/ja/japan-access-control-market
ALLIGATE・入退室管理の継続契約
入退室管理のクラウド接続、継続利用、認証機器に付随する保守。契約の管理画面にはAI自動化リスクがあるが、扉と認証装置の実物が残るため、純粋な席課金SaaSとは区別する。
| 数量課金扉・継続契約年換算 | 価格扉契約1年当たり平均売上高・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5,278 | 0.00 | 10 | 2 |
| 10 年後 中立 | 7,019 | 0.00 | 16 | 4 |
取り方:セキュリティ事業全体55.12億円のうち、継続契約・クラウド・保守に相当する売上を9.50億円と暫定推定した。実際の継続契約売上と課金扉数は会社から独立して開示されていない。ALLIGATEの公開料金例には扉当たり月額1万2,000円や1万6,500円のプランがあり、年間18万円を平均換算単価として約5,278扉契約年とした。これは実際のALLIGATE契約件数ではなく、他の保守契約を含む売上換算値である。営業利益2.20億円は推定。公式価格参考:https://alligate.me/lp/20230302/
リスクと懸念
AIエージェント代替による人月収入の縮小
受託開発は人が設計、実装、検証、保守に費やした時間を主な売上の単位としている。AIエージェントがそれらを一連の業務として実行すれば、顧客が必要とする開発工数は減る。市場全体のIT投資が伸びても、同社の有償人年は縮小しうる。中立の数量にはすでにこのリスクを織り込んでおり、倍率と資本コストへ同じ理由を重ねていない。
不採算案件と人件費の固定化
2025年には不採算案件などが利益を押し下げた。会社は2030年に向けて人員を大きく増やす計画であるため、採用した技術者の稼働率と請求単価が重要になる。人件費は契約が終了しても直ちには減らず、工数見積もりの誤りや固定価格案件の損失が数四半期続けば、2026年上期に回復した利益率も維持できなくなる。
セキュリティシステムの競争と製品陳腐化
入退室管理には現場設備という強みがあるが、競合も認証技術とクラウド連携を進化させている。セコム、ALSOK、パナソニック、SECUREなどが既存顧客の更新契約を獲得すれば、装置販売だけでなくその後の保守収入も失う。ALLIGATEの管理操作に関わる料金は自動化の影響を受けるため、クラウド契約すべてを強い独占的収益と見なせない。
M&Aによる資本効率の悪化
会社は2030年までに50億〜100億円規模のM&A投資を検討している。これは2025年末自己資本の相当部分に当たる。買収によって技術者数や顧客数を増やしても、AIで人月収入が減る領域を高値で買えば、のれん、顧客関連資産、統合費用が株主価値を削る。買収後の増分営業利益だけでなく、取得金額に対する税後収益を追う必要がある。
見かけの純現金と実際の資金拘束
純現金約90億円は時価総額の約3割に当たり、一見すると大きな安全余裕に見える。しかし会社は月商3か月分を手元資金として維持する方針で、人件費と外注費を支える運転資金でもある。買収に使う予定の現金は株主が直ちに受け取れる余剰金と異なり、買収失敗時には帳簿の価値が毀損する可能性がある。
既存顧客への依存と顧客の内製化
金融、公共、製造業の既存顧客との長い関係は受注の強みだが、同時に売上の構造的な依存でもある。顧客がクラウド標準機能を利用し、AIで運用・開発を内製し、外注契約を成果物中心に変えると、既存の取引関係を維持しても請求額が減る。市場における同社の規模は大手ITサービス企業より小さく、顧客側の条件変更を覆す力は限られる。
株主還元目標の実行と持分の希薄化
2030年の配当性向50%以上とDOE4%下限は従来より踏み込んだ約束だが、収益が悪化した場合に両方を守れるとは限らない。自社株買いの確約額もない。2015年と2020年には株数が増えた時期があり、今後も資金調達を伴う買収などで既存株主の取り分が薄まる危険を無視できない。株主還元の額と発行済み株数の両方を監視する必要がある。
今後の分かれ目
- 2027年以降も情報サービス事業の売上と粗利益が増え、技術者1人当たり営業利益が2030年目標の160万円を超えて定着したら
- AIによる工数圧縮を価格と生産性で補えている可能性が高まる。受託開発の中立数量と営業利益率を上方修正し、やや楽観側の確率を高める。ただし売上の増加が買収による社員数増加だけでないことを確認する。
- 情報サービスの売上は増えても受注工数、稼働率、1人当たり売上が低下し始めたら
- 人月商売の構造変化が始まった兆候として扱う。AI関連案件の受注が増えているという説明だけでは埋め合わせとみなさず、ビジネスインダストリーとエンタープライズの数量を下げ、やや悲観側の確率を見直す。
- セキュリティシステム事業の売上が継続的に二桁成長し、ALLIGATEの契約扉数と解約率が数値開示されたら
- 物理設備と継続課金による堀の強さを再評価する。解約率が低く、機器更新でも継続利用される実績が確認できれば、セキュリティ部分の長期成長率と利益率を引き上げられる。
- 2030年の売上高500億円、営業利益45億円、ROE14%以上の目標が、M&Aに頼らず達成されたら
- 人員増加と利益率改善を両立できた事実として評価する。ただし2030年時点の目標達成だけで2035年以降の人月需要が守られたと考えず、成果報酬や自社製品からの売上比率を追加で確認する。
- 50億円を超える買収が行われ、その後2年間で取得先の営業利益とキャッシュフローが計画を下回ったら
- 買収による成長を一旦停止して評価し、投下資本利益率と無形資産の回収可能性を厳しく見る。買収額を純現金から控除し、既存株主への還元余力の低下も織り込む。
- 配当性向50%以上とDOE4%下限が複数年維持され、自己株式取得によって発行済み株数も減少したら
- 将来余剰現金の株主への戻り方を75%から100%へ引き上げる余地が生まれる。買収と還元の両立が確認できれば、経営者の資本配分の評価も改善する。
見ておくもの
- 情報サービス事業の売上高、営業利益率、不採算案件の発生額
- モビリティ、ビジネスインダストリー、エンタープライズの事業領域別売上
- 技術者数、1人当たり売上高、1人当たり営業利益、稼働率と受注単価
- セキュリティシステム事業の売上高と利益率、既設設備更新案件の動向
- ALLIGATEの契約扉数、継続利用率、解約率、実際の月額単価の開示
- FiT SDMの実際の課金ID数と単価、AIエージェント製品の金額付き受注実績
- 2030年の売上高500億円、営業利益45億円、ROE14%以上の進捗
- M&Aの取得額、取得先の利益、のれん・顧客関連資産の残高と減損
- 配当性向50%以上、DOE4%下限の実行状況、自己株式取得額と株数
- 手元現金約3か月分の維持状況と、買収・設備投資・株主還元への実際の資金配分
倍率と資本コストの決め方
評価の起点は現在の株価や過去のPERではなく、2025年の領域別売上と2026年上期の実態である。会社が非開示としている人月、単価、設置案件、課金扉数は、公開料金と市場規模を参考に推定値として明示した。物価3%は価格に入れ、数量は実質で扱った。受託開発へのAIエージェント代替は中立の数量と10年より先のg_longのみに反映し、資本コストの寿命部分や確率で同じ理由を重複計上していない。楽観から中立の倍率はk、g、RONICによる正当化PERから決め、現在または同業の市場倍率に合わせていない。2035年までの配当・買戻しは別に現在価値へ割り引き、運転資金と買収に必要な純現金は二重加算していない。日本の新リース会計基準による表示変更も、営業費用とリース負債を二重に計上する理由にはしない。5つの筋書きの加重現在価値は約194億円、2026年10月22日基準の時価総額約288億円との差は約マイナス33%であり、結論は「割高」と整合する。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%を基本に、会社固有の値決め力と財務状態による品質調整0.25%を加えた。事業の実行リスクや買収失敗の危険を追加の資本コストにせず、利益率と5つの筋書きで表現する。