結論
アピリッツは、企業向けのWebシステム開発、デジタル人材の派遣、ファン向けゲームの開発・運営を手掛ける会社である。筆者の結論は「割高」だ。ゲーム運営には継続収入を生む力があるものの、受託開発と人材派遣ではAIエージェントが人の作業時間そのものを減らし始めており、現在の時価総額約47億円を長期の稼ぐ力だけで正当化するのは難しい。
2026年1月期は売上高が約100億円に達した一方、営業損失約3億円、純損失約5億円に転落した。大型Web案件の採算悪化や人材派遣の不振が、規模拡大の成果を打ち消した。2027年1月期の中間決算では営業黒字に戻り、通期の営業利益予想も約4.6億円へ引き上げられたため、足元の収益改善は事実として評価する。ただし、半年の立て直しを10年間続く収益力と取り違えることはできない。
会社はVISION2030で売上高200億円、営業利益20億円を目指している。だが、利益率が高い自社製品の比率が急増したわけではなく、事業拡大のかなりの部分を採用、案件獲得、買収に依存する。開発工程の自動化と顧客企業の内製化が進めば、売上規模を追うほど価値が増えるとは限らない。
10年後の中立では、Webと派遣の数量減少を、ゲーム運営の底堅さと開発案件の採算改善が補う。会社は黒字を維持しても、純利益は2億円弱にとどまり、自己資本利益率は資本コストに届かない。強い上振れには新規ゲームの成功と高付加価値開発への転換が必要だが、確率を加えた本質価値は現在の時価総額を大幅に下回る。長く持つ株主にとっては、成長目標の大きさより、買収後も利益と現金が確実に残るかが判断の中心になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を評価するために最初に確かめたいのは、顧客が10年後にも今と同じ理由でお金を払うかである。企業がWebシステムを必要とすることは疑いにくい。しかし、その開発に何人月も必要かどうかは別問題であり、AIエージェントによって仕事の進め方そのものが変わる。必要なサービスであることと、その提供会社が今の利益を守れることは同じではない。
ゲーム運営には別の魅力がある。人気作品の運営権を維持できれば、ユーザーコミュニティ、イベント運営、過去の改善履歴が積み重なり、新規参入者には真似しにくい部分が生まれる。だが、作品自体の知的財産を所有しているとは限らず、人気の移り変わりも速い。高い利益が出た作品を、10年先まで続く永久的な収益源として評価することはできない。
真のオーナー利益は、会計上の純利益から事業を維持するための支出を考えた残りである。同社では技術者の再教育、採用、ゲームの更新、案件の品質管理に継続的な資金が必要になる。過去には売上が伸びても営業損失に転落したため、利益が出た年だけを基準に成長投資の成果を判断できない。買収先ののれんは将来の稼ぐ力への期待であって、株主がいつでも回収できる現金ではない。
10年間にわたり保有するには、開発案件の粗利が改善し、派遣の待機人員が低く保たれ、ゲームの運営契約が入れ替わりながら利益を残すという三つの条件が要る。そのうえで、余剰資本を不採算の買収ではなく株主に戻す規律が必要だ。現状には立て直しの兆しがあるが、継続的な高ROEを保証する堀はまだ見えない。十分な安全域のない値段で、その未完成の転換に高い対価を払う理由は乏しい。
何で稼ぐ会社か
Webソリューション事業は、ECサイト、企業のWebサービス、業務システムの設計・開発・運用で収入を得る。Shopifyなどを利用するEC構築や大型の受託案件があり、収益の基本単位は技術者が提供する開発工数である。2026年1月期の外部売上は約35.1億円、セグメント利益は約1.0億円だった。翌期の第2四半期単独では利益率が12.6%に回復しており、大型不採算案件の収束と案件選別による改善がうかがえる。
デジタル人材育成派遣事業では、育成した技術者を顧客に派遣し、稼働人月に応じた収入を得る。2026年1月期は売上約17.8億円に対し小幅な営業赤字となった。2027年1月期の第2四半期には稼働人月が約524人月、待機人員は13人となり、稼働率の改善が進んだ。しかし、若手技術者の需要減少と契約単価への圧力を会社側も認識しており、従来の人数拡大型の事業には構造的な逆風がある。
推しカルチャー&ゲーム事業は、既存スマートフォンゲームの運営受託、開発、ファン向けサービスなどで収益を得る。2026年1月期の売上約46.7億円は全社の半分近くを占め、セグメント利益約3.4億円は本社費を負担する前の最大の利益源である。「乃木坂的フラクタル」「UNI'S ON AIR」「けものフレンズ3」などの運営に携わり、2026年にはKAWAII LAB.関連の新作リズムゲームを進めている。ただし、主要なキャラクターや芸能人の権利を必ずしも自社で保有しておらず、作品の人気と契約更新が収益を左右する。
連結の利益を読む際には、本社費の大きさを見落とせない。2026年1月期は三事業の利益を合計すると約4.3億円あったが、本社費等の調整約7.4億円によって連結営業赤字となった。技術者数や売上を増やすだけでは株主の利益にならず、案件管理、採用費、管理部門、買収後の統合費用まで含めて利益を残す必要がある。また、ゲーム運営収入と開発人月では契約の継続性も単価の決まり方も違うため、会社全体を単なるSI企業と見るのも、ゲーム企業と見るのも適切ではない。
優良さと弱いところ
同社の競争力は、一つの圧倒的な製品ではなく、Web開発、ゲーム運営、技術者育成を組み合わせて案件を遂行する能力にある。顧客のシステムを理解した経験や既存ゲームの運営知識は、次の契約を取りやすくする。しかし、公開資料からは年間解約率5%未満、規制上不可欠な記録基盤、独占的なデータ、値上げを繰り返し通した実績といった、長期にわたり超過利益を守る堀の証拠を確認できない。優秀な技術者と顧客関係は強みだが、競合にも獲得可能である。
稼ぎの質には事業間で大きな差がある。ゲーム運営は同じ作品を長期間管理できれば、既存の開発資産や運営チームを再利用し、利益率を改善できる。一方、作品の人気が落ちればユーザー数や課金額が減り、運営終了や契約更新失敗が一度に収益を失わせる。Web開発では、2026年1月期の大型案件の赤字が示すように、見積もりを誤ると売上が伸びても利益が減る。人材派遣では、社員を抱える固定費と稼働率の差が、そのまま利益の振れになる。
資本効率の実績も慎重に見るべきだ。2024年1月期には営業利益率が7%を超え、ROEも15%台だったが、2026年1月期には営業赤字となり、自己資本は約18億円まで減った。買収と採用で事業を大きくしても、増分の投下資本利益率が安定して資本コストを上回ったとは言いにくい。利益の回復期だけを切り取って高い資本効率を恒久的な実力とみなすのは危険である。
財務は直ちに危機的という状態ではないが、余裕が大きいわけでもない。期末の純現金は約2.5億円で、現預金の大部分には借入金、運転資金、前受金などに対応する負担がある。のれんも保有しており、買収先の稼ぎが計画を下回れば減損が必要になる。総じて、堀は弱く、経営の案件選別と資本配分によって価値が大きく変わる会社である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は添付の業種資料では2025年に約7.5兆円とされる。アピリッツのWeb事業売上約35億円を単純に割るとシェアは約0.05%にすぎない。競争相手にはNTTデータ、富士通、NEC、TISなどの大手と、多数の中小開発会社がいる。EC構築ではShopifyを扱う専門会社に加え、Adobe Commerceなど別の基盤を使う事業者とも競う。この市場では大手企業の案件が多額でも、同社が独占的な地位を持つわけではない。
デジタル人材派遣の市場では、テクノプロ、オープンアップグループ、パーソル系の技術者派遣会社や中小のSES企業が競合する。矢野経済研究所が示す国内の関連IT人材サービス四市場は2024年度に約1.49兆円で、同社の派遣売上をこの広い市場に対比すると約0.12%となる。ただし、この統計は派遣だけの市場ではないため、厳密な市場シェアではない。価格は技術者の技能と契約条件に左右され、若手の定型作業ほどAI代替による単価低下を受けやすい。
国内のゲーム市場は規模が大きいが、競争はさらに厳しい。バンダイナムコの統計資料に掲載された2024年の国内ゲームアプリ市場規模は約1.75兆円である。同社ゲーム事業売上を機械的に割ると約0.27%だが、運営受託料とエンドユーザーの課金売上は同じ取引段階ではないため、実際のユーザー市場シェアを示すものではない。大手のバンダイナムコ、Cygames、DeNA、アカツキなどと比べ、同社は人気作品の権利保有よりも開発・運営の受託で競う立場にある。
10年の最大の転換はAIエージェント代替である。画面操作、実装、テスト、資料作成のかなりの部分をソフトウェアが自動実行できるようになれば、従来の人月商売は工数が減るほど請求数量を失う。AIによる開発生産性の向上は社会全体のIT需要を広げうるが、それが人月で売る事業者の売上増加になるとは限らない。顧客が成果に対価を払う仕組みへ移行できなければ、技術者不足による単価上昇だけでは数量減少を補えなくなる。
中立では国内ITサービス市場そのものは実質的に広がっても、アピリッツの請求人月と受託シェアは低下すると考える。派遣事業も人数より高度技術者の割合を重視するようになり、市場全体の成長と同社の契約数量が逆方向に動く。ゲームでは物価上昇と新作投入が市場規模を押し上げても、作品の入れ替わりによって個社の取り分は不安定なままだ。したがって、業界全体の高い成長率を同社の10年後の数量へ直接当てはめることはしない。
資本政策と M&A
会社のVISION2030は、2030年1月期に売上高200億円、営業利益20億円、営業利益率10%を目指す。社員数1,700人規模、退職率約8%、年間1~2件の中小規模M&Aも掲げている。一方、2027年1月期の最新通期予想は売上高約108億円、営業利益約4.6億円、純利益約2.2億円であり、目標までにはまだ相当の開きがある。VISION2030には、ROEの数値目標や、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額について確認できる具体的な数字の約束はない。
事業拡大には買収が繰り返し使われてきた。人材領域のY's、開発会社のクエイル、JUTJOY、ベトナムの開発拠点、2026年のEC構築会社フルバランスなど、技術者と顧客を獲得する投資が続く。フルバランスの買収では新たにのれんを計上しており、将来の利益が期待に届かなければ既存株主が損失を負う。現段階では、これらの買収が連結の増分ROICを継続的に押し上げたという証拠は不足している。
株主還元では、2022年1月期以降、配当の増額を続けてきたことは評価できる。2027年1月期予想の年間配当総額は約1.2億円で、会社予想純利益の半分を超える水準に相当する。ただし、直前期は赤字でも配当したため、長期には利益と営業キャッシュフローを超える還元を維持できない。大規模な自社株買いによって株数を継続的に減らしてきた会社でもない。
株主にとってのもう一つの論点は新株予約権である。2026年1月末の潜在株式は約40.6万株で、既存株式に対する希薄化要因となる。買収・採用・研究開発・配当が同時に現金を必要とする中、経営は売上目標を優先するより、既存事業の利益率を安定させ、投下資本に見合う利益が得られない買収を止めるべきだと考える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会社の価値を過小評価する理由はない。2026年1月期の大幅な赤字は大型Web案件の採算悪化が重なった特殊な年度であり、その後の決算では急速な改善が確認された。2027年1月期第2四半期単独のWeb事業利益率は12.6%に達し、かつての不採算案件を整理して大型案件の管理水準を上げる効果が出ている。案件を無制限に増やす経営から、利益を残せる顧客を選ぶ経営へ転換できれば、売上高を大幅に増やさなくても利益は増える。
派遣事業にも改善の余地がある。待機人員は13人まで減り、会社は派遣だけでなく受託開発との連携を強めている。AIにより定型作業の需要が縮んでも、顧客の業務を理解した上級技術者と企画・設計に携わる人材は必要とされる。短期間の開発だけでなく、企画段階から長く顧客と付き合う仕事へ移行できれば、少ない人数でも高い付加価値を得られる。
推しカルチャー&ゲーム事業は同社ならではの収益基盤である。芸能人やキャラクターのファンは、効率化された作業ではなく、作品への参加や交流の体験に対価を払う。AIがプログラムを書くようになっても、人気のある作品を継続運営するための権利関係、ファンの理解、イベント企画の重要性は消えない。KAWAII LAB.関連の新作が成功し、既存ゲームの運営受託も広がれば、利益率はさらに改善する。
買収先が持つEC構築能力、顧客基盤、技術者を既存事業と組み合わせれば、個々の会社が単独で戦うより大きな案件を獲得できる。VISION2030の目標は高いものの、継続的に採算改善が進めば、長期的には達成可能性が残る。現状の赤字や利益率の低さだけから会社の将来を断定するのは早い。
慎重な見方
直近の収益改善は、10年先の競争力の証明にはならない。会社は売上を約100億円まで成長させたにもかかわらず、2026年1月期に約3億円の営業赤字を出した。受託開発は大型案件が少数失敗するだけで利益が消え、追加の人員投入や納期の延長によって損失が膨らむ。顧客が高度な品質を要求する一方、受託会社の価格交渉力は限られており、改善したばかりの利益率が長期に定着する保証はない。
人月商売の問題は一時的な需要減少ではない。AIエージェントはコード作成、テスト、修正、資料作成を自動化するため、顧客は以前より少ない人月で同じ成果を得られる。会社側も若手人材の需要減少や単価下落を認識している。案件数が増えても必要な開発者が減り、顧客がAIを自ら使いこなせば、技術者派遣という仲介の価値自体が薄れる。成果報酬型へ転換できない限り、効率化による便益の多くは顧客に移る。
ゲーム運営にも独自の危うさがある。ユーザーの熱意を集めるのは作品や出演者であり、その権利を持つのは外部企業であることが多い。契約条件の変更、サービス終了、新作の失敗によって収益源が突然消える可能性がある。新規タイトルを取り続けるには開発費と宣伝協力が必要で、運営期間が短くなれば利益率は下がる。ファンの多さを同社固有の永久的な資産として扱うことはできない。
さらに、成長のための買収が価値を毀損する恐れがある。買収先の人員や顧客が定着しなければ売上だけが一時的に増え、のれん償却と借入金が残る。会社の自己資本はすでに大きく減少しており、借入金を差し引いた純現金も厚くない。潜在株式の希薄化もある。確実な値上げ力や規制上の参入障壁を持たない以上、売上高200億円という目標に基づいて今の株主価値を高く評価するのは危険である。
どちらに重みを置いたか
足元の黒字回復とゲーム運営の利益には説得力がある。しかし、2026年1月期の赤字転落は案件管理と資本配分の脆さを示し、派遣では若手需要の減少が実際に起きている。中立の数量にはAIエージェント代替をすでに反映し、同じ理由を資本コストや悲観確率で重ねて減点しない。それでも、買収成果の不確実性、外部IPへの依存、薄い純現金という会社固有の事情から、上側25%に対して下側44%と慎重な結果に寄せた。10年後の中立の時価総額は現在の半分にも届かず、還元を加えた確率加重の本質価値も大きく下回るため、結論は割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 613 円25 億円(+ 還元の換算額還元の合計 224 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 421 円17 億円、今との差 −57.3%、 期待の年率 −1.9%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 2,169 円88 億円 | 427 円17 億円 | +163.3% | +11.4% | 234 円9 億円 |
| やや楽観 | 16% | 1,177 円48 億円 | 326 円13 億円 | +52.4% | +4.9% | 241 円10 億円 |
| 中立 | 31% | 495 円20 億円 | 247 円10 億円 | −24.7% | −3.3% | 230 円9 億円 |
| やや悲観 | 28% | 189 円8 億円 | 175 円7 億円 | −63.0% | −11.7% | 102 円4 億円 |
| 悲観 | 16% | 148 円6 億円 | 49 円2 億円 | −79.9% | −16.2% | 32 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 613 円25 億円 | 224 円9 億円 | −15.0% | −1.9% | 838 円34 億円 |
今の株価時価総額 986 円40 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 高付加価値開発への転換と新作ゲームが成功 利益 8 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,169 円88 億円
Web事業は、2027年1月期に見られた大型案件の採算改善を一時的なものに終わらせず、顧客の事業構想や設計段階から参加する企業へ変わる。顧客は開発工数ではなく完成するサービスの価値を重視し、会社は高い単価を守る。AIによる開発効率化で請求人月そのものは増えないが、複雑なシステムの品質保証と責任を担い、売上より利益を伸ばす。
派遣事業では若手の単純作業が減っても、高度な技術者が中心となり、稼働人月は現状を維持する。フルバランスなどの買収先が既存の大口顧客を持ち寄り、EC開発から運用まで継続する案件が増える。採用人数より人材一人当たりの利益を重視した結果、連結の固定費負担も軽くなる。
ゲーム事業ではKAWAII LAB.関連作品などの新作がヒットし、既存の運営案件も長く継続する。稼働する案件換算タイトル数は11に増え、版権元からの信頼とユーザー運営能力によって受託条件も改善する。国内ゲーム市場に対する売上比率はなお小さいが、成長分の一部を獲得する。会社は買収を慎重に選び、増えた利益の相当部分を還元するため、自己資本の拡大と株主の取り分を両立する。
- Webソリューション事業:数量 3,053(外部顧客向け換算請求人月/年(推計))× 価格 0.02(1換算請求人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 47 億円・営業利益 9 億円。人月数量は現状の約1.00倍。単価は1.34倍で、案件選別と高付加価値の設計仕事によって営業利益率19%を実現する。
- デジタル人材育成派遣事業:数量 2,091(外販稼働人月/年(推計))× 価格 0.01(1外販稼働人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。現状の稼働人月を守り、単価は物価並みの1.34倍。高技能者比率の上昇により利益率8%。
- 推しカルチャー&ゲーム事業:数量 11.0(年間運営案件換算タイトル数(推計))× 価格 8.50(1運営案件換算タイトル当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 94 億円・営業利益 17 億円。年間運営案件換算11タイトル、新規作品のヒットと運営契約の継続により営業利益率18%。
倍率:k=8.5%、10年より先のg_long=0%であるため、正当化PERの上限は1÷0.085=11.7647倍となる。ROEは8.2÷51.0=16.1%で資本コストを超え、弱い堀の残存割合1/3からRONICは約11.0%となるが、長期成長ゼロのためPERは11.76倍である。AI代替を別の倍率減額として二重に差し引かない。
確率:Web事業の高利益率化、待機人員の低位維持、新規ゲームの成功、買収先との統合を同時に実現する必要がある。大型案件の採算改善には実績が出始めたが、10年間連続して成果を得る確率はまだ低い。AIエージェントの実売上が金額で確認されていないため、人月数量の増加は見込まない。
やや楽観 16% ゲームが伸び、開発の採算改善が定着 利益 4 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,177 円48 億円
Web事業は大型案件の見積もりと進捗管理を改善し、不採算案件を繰り返さなくなる。顧客企業がAIを使って実装作業を減らすため請求人月は縮むが、複雑なシステム統合やECの設計案件は残り、実質単価の下落を防ぐ。会社は大量採用による売上拡大よりも粗利を確保できる案件の獲得に重点を移す。
派遣事業は一部の顧客が開発を内製化し、若手の需要が減少する。それでも、高技能者の育成とWeb事業への配置転換によって赤字を脱し、縮小した人数で利益を維持する。国内の関連人材市場は名目で拡大しても、同社が得る稼働人月の割合は以前より小さくなる。
ゲームでは新作が一定の支持を獲得し、既存作品の運営移管案件も増加する。事業の中心は外部IPを使った運営のため、ヒット作の利益をすべて自社に帰属させることはできないが、案件換算では9タイトルを維持する。買収した会社との連携が進み、連結の純利益は足元の回復予想を上回る。利益に応じた増配を続けても、過度な借入を増やさず自己資本を積み上げられる。
- Webソリューション事業:数量 2,655(外部顧客向け換算請求人月/年(推計))× 価格 0.01(1換算請求人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 39 億円・営業利益 7 億円。数量は現状の約0.87倍。価格は1.29倍、採算改善で利益率17%。
- デジタル人材育成派遣事業:数量 1,568(外販稼働人月/年(推計))× 価格 0.01(1外販稼働人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。稼働数量は約0.75倍。高技能者への移行で単価1.29倍、利益率5%。
- 推しカルチャー&ゲーム事業:数量 9.0(年間運営案件換算タイトル数(推計))× 価格 7.90(1運営案件換算タイトル当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 71 億円・営業利益 11 億円。運営案件換算9タイトル、単価7.9億円、利益率15%。
倍率:k=8.5%、g_long=0%から正当化PERは11.7647倍。ROEは4.45÷36.5=12.2%、弱い堀を考慮したRONICは約9.7%だが、長期成長率ゼロのため倍率は11.76倍となる。成長の成果は2036年時点の純利益に反映し、倍率には重ねない。
確率:足元のWeb事業の収益改善が続き、ゲーム運営案件も数本増えるという実行可能な上振れ。ただし、買収後の利益蓄積は未検証で、技術者派遣には構造的な数量減少が残る。
中立 31% ゲームは底堅いが、人月収入は縮小 利益 2 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 495 円20 億円
Web事業は企業のECや業務システムを作り続けるが、納品までに必要な人月が減る。AIエージェントはプログラムの実装や検証を担い、顧客は以前より小さい開発チームで同じ仕事を進める。アピリッツは企画と品質管理で一定の役割を残すものの、請求人月は現在の約7割になる。価格は名目で上がっても物価には追いつかず、国内ITサービス市場に対する売上比率は縮小する。
人材派遣はさらに厳しい。若手の定型作業が減るため、派遣需要の実質数量は現在の約65%となり、育成した人材の一部はWeb受託へ移る。残った高度な技術者の単価は上昇するが、国内の広いIT人材サービス市場に対するシェアは低下する。待機人員を増やさない規律が維持されるため、事業は小幅ながら黒字を守る。
ゲーム事業は人気作品の終了と新規契約の獲得を繰り返し、年間案件換算7タイトルを維持する。ファン向け課金市場は名目で大きくなっても、同社が持つ権利や顧客基盤は限られ、平均案件単価の上昇は物価以下となる。2027年1月期の採算改善を受けて本社費の効率化も進むが、連結の利益は大きく伸びない。買収は続いても、高い増分ROICを実証できないまま小幅な利益と還元を積み上げる10年になる。
- Webソリューション事業:数量 2,137(外部顧客向け換算請求人月/年(推計))× 価格 0.01(1換算請求人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 29 億円・営業利益 5 億円。人月は0.70倍、単価は1.20倍。大型不採算案件の再発防止で利益率16%だが、数量は縮む。
- デジタル人材育成派遣事業:数量 1,360(外販稼働人月/年(推計))× 価格 0.01(1外販稼働人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。人月は0.65倍、単価は1.20倍。高技能者中心の少人数運営で利益率3%。
- 推しカルチャー&ゲーム事業:数量 7.0(年間運営案件換算タイトル数(推計))× 価格 7.60(1運営案件換算タイトル当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 53 億円・営業利益 7 億円。案件換算7タイトルを維持。平均単価は現状の1.14倍で、2027年1月期の採算回復を踏まえ利益率13%。
倍率:ROEは1.87÷27.0=6.9%でk=8.5%を下回る。2036年までの利益水準は数量減少とゲーム収益で決まり、2036年以降の名目成長率は0%とするため、稼ぐ力の正当化PERの上限1÷k=11.7647倍をそのまま用いる。自己資本が増えるだけでは高いPBRを正当化しない。
確率:2027年1月期の黒字回復とゲーム運営の利益を認めつつ、AIエージェント代替によりWeb請求人月を0.70倍、派遣稼働人月を0.65倍にする。これはAI代替を数量へ反映した中心の見込みであり、確率と資本コストに同じ縮小を重ねていない。
やや悲観 28% 開発需要が細り、ゲーム運営の更新も鈍る 利益 1 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 189 円8 億円
Web事業は既存顧客の更新案件を維持するものの、大口顧客が開発を内製化し、新規システムの設計から実装までを少人数で済ませるようになる。大型案件の一部は競合の専門会社へ移り、単価を引き上げても請求人月の減少を補いきれない。損失案件を抑える管理体制は一定の効果を上げるが、稼働の空白期間が増え、Web事業の利益は細る。
人材派遣では若手を中心とする仕事の減少が続き、稼働人月は現在の約55%になる。固定給を負担する社員と顧客先で稼働する社員のずれが再び拡大し、事業は小幅赤字へ戻る。高技能者への転換にも教育費がかかり、少数の優良顧客に依存する比率が高まる。広いIT人材市場が成長しても、同社のシェアは縮む。
ゲーム事業は複数の既存タイトルが終了し、新作もすべては成功しない。年間案件換算は6タイトルへ減少し、運営売上は現在より少なくなる。それでも運営経験のある作品は利益を残し、ゲーム部門がグループ全体を下支えする。本社機能を縮小し配当も減らすが、連結利益は小さく、買収資産の収益低下が純資産の積み上がりを抑える。株主に戻る価値は限定的である。
- Webソリューション事業:数量 1,771(外部顧客向け換算請求人月/年(推計))× 価格 0.01(1換算請求人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 22 億円・営業利益 3 億円。数量は0.58倍、価格は1.09倍。工数減と顧客内製化が重なり利益率14%。
- デジタル人材育成派遣事業:数量 1,150(外販稼働人月/年(推計))× 価格 0.01(1外販稼働人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。数量は約0.55倍、価格は1.15倍。待機人員負担により営業赤字。
- 推しカルチャー&ゲーム事業:数量 6.0(年間運営案件換算タイトル数(推計))× 価格 7.20(1運営案件換算タイトル当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 43 億円・営業利益 6 億円。運営案件換算6タイトル。利益率の比較的高い既存案件を残し、利益率14%。
倍率:2036年のROEは0.8÷21.0=3.8%で、資本コスト8.5%を大きく下回る。利益が成長しない場合の稼ぐ力の上限は0.8÷0.085=9.41億円。案件更新と買収の不確実性が残るためPER10.5倍とし、時価総額8.4億円を得る。これは稼ぐ力の上限と別途見積もる売却可能資産の床6億円の双方に整合する。
確率:下に寄せる理由:大型Web案件の損失が現実に起き、派遣事業でも待機人員増加と単価下落を経験した。AIによる人月削減は中立数量に反映済みで、ここでは追加の案件管理失敗、ゲーム更新の不調、買収先の収益低下という別の実行リスクを主因にする。
悲観 16% 人月型事業が崩れ、主要ゲーム契約も失う 利益 −2 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 148 円6 億円
2036年までに顧客のシステム開発はAIエージェントと社内の少人数チームが主体となり、外部企業に大量の実装工数を発注する慣行が大きく変わる。アピリッツは設計や保守の一部を請け負い続けるが、主要顧客を競合へ奪われ、人月数量は現状の半分以下になる。価格交渉でも不利になり、Web事業は赤字となる。
人材派遣では若手の配属先が不足し、待機費用と教育費が売上に対して重くなる。稼働人月は現在の約3分の1まで減り、事業を大きく縮小しても黒字化しない。過去に買収した人材事業の収益基盤は弱まり、のれんの減損や事業整理費用が発生する。
ゲーム事業では人気作品の運営権を失い、新作も十分なユーザーを獲得できない。案件換算4タイトルの規模に落ち込み、残る作品は利益を出しても、本社費と他事業の損失を補いきれない。会社は人員整理と買収停止に追い込まれ、配当も大幅に縮小する。10年間に発生する赤字や減損で自己資本は現在から減少し、かつての優良な事業基盤を失う。
この筋書きでは事業の利益に恒久的な価値を付けない。顧客から回収できる債権、預金、返還可能な保証金などの売却可能資産を負債の控除後で見るが、のれんは価値に数えない。支配株主が直ちに清算する保証はないため、資産床を超えるプレミアムも認めない。
- Webソリューション事業:数量 1,400(外部顧客向け換算請求人月/年(推計))× 価格 0.01(1換算請求人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。人月数量は0.46倍、単価は0.80倍。競争と顧客内製化で営業赤字。
- デジタル人材育成派遣事業:数量 700(外販稼働人月/年(推計))× 価格 0.01(1外販稼働人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 −1 億円。稼働人月は0.33倍、単価は約0.94倍。待機人員と整理費用で利益率マイナス10%。
- 推しカルチャー&ゲーム事業:数量 4.0(年間運営案件換算タイトル数(推計))× 価格 6.00(1運営案件換算タイトル当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。主要契約終了により案件換算4タイトル。残存作品の運営利益率12%。
倍率:2036年時点の純利益が赤字のためPERを使わない。構造的な事業縮小と期間中の累積赤字・減損により自己資本が8億円まで減った場合に限り、その0.75倍の6億円を価値とする。これは現在の自己資本17.8億円や過去の市場PBRを床としたものではなく、負債を全額引いた税後換金可能資産6億円と一致する資産処分価値である。
確率:下に寄せる理由:ゲーム収益の比率が高いにもかかわらず主要IPは外部に依存し、大型案件の採算悪化と買収後の管理負担もすでに表面化した。AI代替による中心数量の縮小とは別に、運営契約の終了と大型買収失敗が重なる構造的な敗北を想定する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
Webソリューション事業
ECサイト、Webサービス、業務システムの設計・開発・保守を受託する。AIエージェント代替の分類は「人月・工数で売るSI受託」であり、解約率や規制対応による強い堀の証拠がないため「記録の正本」には分類しない。
| 数量外部顧客向け換算請求人月/年(推計) | 価格1換算請求人月当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 3,053 | 0.01 | 35 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2,137 | 0.01 | 29 | 5 |
取り方:2026年1月期有価証券報告書の外部売上35.104億円、セグメント利益0.982億円、同部門従業員369人を起点にした推計。369人×12か月×約69%の外販換算稼働率で約3053人月とし、平均売上を月115万円とした。実際の請求人月と時間単価は会社非開示であり、保守・成果物納品・子会社売上を人月に換算した代理指標である。2036年中立の数量は現状の0.70倍、単価は1.20倍。人月削減の効果が値上がりを上回るとのAIエージェント代替の決まりに従う。セグメント数字は2026年1月期のEDINET開示に基づく。
デジタル人材育成派遣事業
育成したIT技術者の派遣および顧客先での開発支援を行う。AIエージェント代替の分類は「人月・工数で売る派遣・SES」であり、顧客業務の法的な記録基盤を自社で保有する事業ではない。
| 数量外販稼働人月/年(推計) | 価格1外販稼働人月当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 2,091 | 0.01 | 18 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,360 | 0.01 | 14 | 0 |
取り方:2026年1月期有価証券報告書の外部売上17.777億円、部門従業員205人から、205人×12か月×約85%稼働=約2091人月と推計し、売上単価を月85万円とした。独立した確認材料として、2027年1月期第2四半期の会社説明資料に四半期稼働524人月という数量指標があり、年率換算約2096人月でおおむね整合する。ただし前年の厳密な実稼働人数は開示されていない。中立の数量は0.65倍、単価は1.20倍。AI代替、若手需要の減少、派遣から受託への移管を反映する。
推しカルチャー&ゲーム事業
スマートフォンゲームの開発・運営、ファン向けサービス、運営関連人材の提供から収益を得る。主体となる作品運営収入は人月・席課金のAI代替類型に直接は当たらないが、部門内の派遣・運営作業部分には人月代替リスクがある。
| 数量年間運営案件換算タイトル数(推計) | 価格1運営案件換算タイトル当たり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 7.0 | 6.67 | 47 | 3 |
| 10 年後 中立 | 7.0 | 7.60 | 53 | 7 |
取り方:2026年1月期有価証券報告書の外部売上46.671億円、セグメント利益3.416億円を使用。数量は2027年1月期第2四半期の説明資料にある運営パイプライン7タイトルを代理指標にし、2026年1月期の売上を7案件で割った年6.667億円を案件換算単価とした。新規開発中タイトルも含むため、2026年1月期に7タイトルが通年稼働したという意味ではない。実際の課金ユーザー数、作品別売上、運営手数料率は非開示。直近四半期の内訳ではゲーム運営が収入の約87%、関連人材サービスが約12%を占めるため、人材部分にAI代替の数量縮小を反映する。中立のタイトル数は7案件換算で横ばいとし、単価上昇を物価より低い約1.14倍に抑える。
リスクと懸念
AIエージェント代替による人月売上の縮小
Webソリューションと派遣では、技術者の人数と稼働時間が従来の売上の土台だった。AIエージェントが実装、検証、保守の作業を減らせば、必要な人材を確保できても請求人月は縮む。会社側も若手技術者の需要と単価に変化が起きていることを示している。中立の数量にはすでに減少を反映しているが、成果報酬への移行に失敗すれば採算がさらに悪化する。
大型受託案件の採算悪化
2026年1月期にはWeb事業の大型不採算案件が連結赤字の主因の一つとなった。開発の見積もりが甘い場合、仕様変更、納期遅延、品質不良への対応で人件費が膨らむ。高採算案件を増やす方針が実現しても、個別の大型案件に利益が集中すれば同じ問題が再発しうる。受注額ではなく完了案件の粗利益と損失引当金を見る必要がある。
ゲームの外部IPと契約更新
ゲーム事業は売上の約半分を占め、利益を支える重要な柱である。ただし、ファンを集める芸能人やキャラクターの権利は必ずしも自社に帰属しない。版権元との契約条件変更、人気作品のサービス終了、新規タイトルの失敗が起きると、技術的な運営能力が残っていても売上を失う。作品数だけでなく、作品別の継続期間と採算を追う必要がある。
M&Aの資本効率とのれん減損
中小規模の買収を毎年続ける戦略では、個別の買収価格が小さくても合計の投資額は膨らむ。取得した技術者が退職したり、顧客が離れたりすれば、期待した収益を回収できず、のれんの減損や借入返済が既存株主の負担となる。連結売上や社員数の拡大だけでは買収の成功を判定できない。買収前後の現金収支と増分ROICが資本コストを超えるかが重要である。
薄い純現金と固定費の負担
2026年1月期末の現預金は約21億円あるが、借入金を控除した純現金は約2.5億円にすぎない。給与、外注費、オフィス賃料は受注の減少と同じ速さでは下がらず、ゲーム事業の前受金や契約負債も自由に使える余剰資金ではない。金利が上がる局面では借入金の借り換え負担も無視できない。新リース会計基準で将来の貸借対照表上の表示が変わっても、固定の支払義務そのものは変わらない。
潜在株式による既存株主の希薄化
2026年1月末の新株予約権による潜在株式は約40.6万株で、現在の株式数に対して小さくない規模である。事業が成長しても株式数が増えれば、既存株主が受け取る利益と価値の取り分は減る。従業員への株式報酬が定着と企業価値の増大につながるなら合理的だが、希薄化に見合う増分利益が得られるかを検証する必要がある。
今後の分かれ目
- Web事業の四半期営業利益率が12%以上で継続し、大型案件の追加損失が発生しなければ
- 案件管理改善を一過性ではないものと判断し、やや楽観の確率を引き上げる。受注高よりも検収済み案件の粗利益、外注費、損失引当金の減少を優先して確認する。
- 派遣事業の稼働人月が増えず、待機人員が再び大幅に増えたら
- 人材派遣の縮小が想定より深いと判断し、やや悲観・悲観の利益率を下方修正する。人員配置転換の実行と、稼働人月当たり売上を合わせて確認する。
- AI関連の製品・エージェントサービスが金額付きで継続売上として開示されたら
- 人月売上と区別して新たな収益を評価する。契約件数、解約率、成果報酬、独自データの蓄積が確認できれば、その部分だけAI代替類型と長期成長率の見直しを検討する。
- KAWAII LAB.関連の新作が成功し、複数タイトルの運営継続契約が更新されたら
- ゲーム事業の案件換算タイトル数と利益率の上振れを評価する。ただし、作品の権利保有や利益配分条件が不明なまま永久的な高成長を仮定しない。
- 買収したフルバランス等の営業利益と営業キャッシュフローが継続的に増えたら
- 買収資金に対する実際の回収力を検証したうえで、追加の買収による成長を上側シナリオへ反映する。単なる連結売上の増加だけでは価値を引き上げない。
- 営業キャッシュフローの赤字が続き、借入増加や新株発行が配当を支える構図になったら
- 配当の持続可能性と既存株主の取り分を引き下げる。現金残高ではなく純有利子負債、運転資金、潜在株式の行使状況を中心に評価し直す。
見ておくもの
- Webソリューション事業の四半期売上、利益率、検収済み大型案件の採算と受注損失引当金
- デジタル人材育成派遣の四半期稼働人月、待機人数、単価、Web事業への人員移管
- ゲーム運営パイプラインの実稼働タイトル数、サービス終了数、新規タイトルの立ち上がりと継続契約
- AIエージェント製品・成果報酬型案件の実売上、契約継続率、顧客による開発内製化
- 年間配当総額、営業キャッシュフロー、純有利子負債、買収対価、のれん残高
- ストックオプションの残存個数、行使条件、実際の希薄化株数
- VISION2030の売上高200億円・営業利益20億円に対する実績と増分ROIC
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や市場PERから10年後の倍率を逆算していない。Web受託と派遣はAIエージェント代替の数量基準を適用し、ゲームは運営タイトル換算という別の数量で積み上げた。資本コストは8.5%、長期成長率は0%で、楽観から中立の正当化PERは11.76倍となる。悲観は過去のPBRではなく、のれんと繰延税金資産を除いた税後換金可能資産約6億円を床とした。還元は期間の累計で別に評価し、ストックオプションの希薄化を既存株主の取り分に反映する。指定された株価と株数による現在の時価総額は46.73億円である。2026年7月末の最新短信では発行済株式4220262株から自己株式150000株を引いた4070262株となり、添付基準とは約0.6%の差があるが、評価基準の株数は依頼指定の4046000株に固定した。新リース基準の表示変更は利益価値を機械的に増やす要因とはしない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3%、株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、利益変動0.5ポイントと弱い値決め力0.5ポイントを加えた8.5%。2027年1月期に黒字回復が進んでおり、恒常的な赤字企業としての追加上乗せはしない。買収失敗やゲーム終了など個別の危険は数量、利益率、確率に反映する。