結論
U-NEXT HOLDINGS は、動画配信の U-NEXT を成長の看板に、店舗向けの BGM やシステム、法人向け通信と電力を束ねた企業グループだ。筆者の結論は、会社の質は高いが今の値段は割高、というものだ。最大の理由は、売上が伸びても営業利益率が 8% 前後と薄く、利益の伸びが売上に追いつかないことにある。
看板の U-NEXT は、国内の動画配信で 3 番手の位置を固めてきた。課金ユーザーは約 500 万人、2025 年 8 月期まで 9 期連続で最高益だ。ただし配信は番組の仕入れ代がかさむ商売で、世界の大手と同じ土俵で競うため、利益が売上ほど増えない。
もう一つの足場である店舗向けの BGM などは、毎月の契約が積み上がる堅い商売だ。人口減で店の数が減る向かい風はあるが、利益の下支えになっている。通信・エネルギーは売上の 4 割近くを占めながら、利益率は 1 桁にとどまる。
中期計画は 2030 年 8 月期に営業利益 450〜515 億円を狙う。筆者は、10 年の中立で営業利益 550 億円、純利益 310 億円あまりを見る。利益は今のほぼ 1.7 倍だが、稼いだお金の大半を会社に残すため、自己資本利益率は 19% から 10% 前後へ下がる。この水準なら倍率は 12 倍ほどで、10 年後の価値は今の時価総額を下回る。評価は割高だ。
事業の強さは本物だ。それでも、払う値段に安全域がない。ここが筆者の見立てだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で問うのは、10 年後もこの会社を持ち続けたいか、そして払う値段に安全域があるか、だ。
持ち続けたいと思う理由は、契約が積み上がる事業が土台にあることだ。店舗向けと通信は、毎月お金が入る。配信は国内 3 番手の地位がある。創業者が経営の中心にいて、資本を成長に回す姿勢も一貫している。
ためらう理由は 2 つある。1 つは、利益率の薄さだ。営業利益率は 8% 前後で、売上が伸びても利益が増える幅は小さい。もう 1 つは、稼いだお金を会社に残し続けると、自己資本利益率が 10% 近くまで下がる点だ。資本コストを 2 ポイントほど上回るだけでは、倍率は高く付けられない。
オーナー利益(株主の手元に残せる利益)で見ると、今の利益の多くは設備と買収に消える。筆者の見立てでは、10 年後の本質価値は今の時価総額を下回る。事業の質を認めても、払う値段が高い。安全域は取れない。
何で稼ぐ会社か
U-NEXT HOLDINGS は 4 つの事業と、2026 年 4 月に加わったカラオケで成り立つ。稼ぎ方はそれぞれ違う。
コンテンツ配信は、動画配信 U-NEXT と電子書籍、音楽、ライブ配信を月額で売る。2025 年 8 月期の売上は 1,284 億円、営業利益は約 96 億円だ。課金ユーザーは約 494 万人で、中期計画は毎年 25〜30 万人ずつ増やして 2030 年に 630 万人超を狙う。若者向けのスポーツパックやサッカーの配信が、ユーザーを押し上げてきた。TBS が 2023 年に事業会社の 20% を持った。
店舗・施設ソリューションは、旧 USEN の流れをくむ事業だ。飲食店やホテルに BGM、業務機器、キャッシュレスや予約の仕組みを売り、月額の契約で積み上がる。2026 年 8 月期の上半期は、売上 475 億円、営業利益 87 億円。利益額は全社で最も大きい。
通信・エネルギーは、法人向けの回線、携帯、電力を売る。売上は上半期で 899 億円と最大だが、営業利益は 70 億円にとどまる。伸び率は売上で 2 割を超え、会社の成長を引っ張っている。
金融・不動産・グローバルは決済や不動産などの小さな寄せ集めで、M&A で取り込んだ事業が赤字を出す年もある。
2026 年 4 月には、JOYSOUND を運営するエクシングの株式 70% をブラザー工業から約 178 億円で取得し、連結に加えた。店舗網と配信の会員基盤を、カラオケに重ねる狙いだ。
顧客は、動画では個人、店舗向けでは中小の店や施設、通信では法人と、事業によって大きく違う。動画配信は個人の月額、店舗は毎月の契約と、いずれも解約が少ない積み上げ型で、不況でも売上が崩れにくい。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば、成長の質は高いが、稼ぐ力はまだ薄い。
強みは 3 つある。第 1 に、毎月お金が入る契約が積み上がっていること。動画の月額、店舗の BGM、通信と電力の契約だ。景気が悪くなっても、売上が急に消えにくい。第 2 に、9 期連続で売上と営業利益が最高を更新してきた実行力だ。第 3 に、創業者の宇野康秀氏が経営の中心にいて、判断が速いこと。第三者の集計では、宇野氏の資産管理会社が発行済み株式の約半分を持つ。
弱みは、堀(他社がまねできない強み)が事業ごとにばらばらな点だ。動画配信は、Netflix や Amazon といった世界の大手と競り合う市場で、番組の仕入れ代と配信の設備投資が重い。国内 3 番手の立ち位置は守れても、値段を自分で決められるほどの強さはない。
店舗向けは、取引網と保守の人員が堀になる。ただ、これは古い事業で、成長は小さい。通信と電力は価格競争が激しく、利益率が薄いままだ。
資本効率は高い。過去 10 年の自己資本利益率の中央値は 19% で、2025 年 8 月期も 19% だった。だが、これは自己資本が小さかった時期の数字で、稼いだお金を会社に残すほど下がる。
借金は軽い。純有利子負債は自己資本の約 1 割にとどまる。ただしエクシング取得で借金が増え、2026 年は支払利息が利益を押し下げた。店舗の賃借や機器のリースは、固定の約束として残る。新しいリース会計基準(2028 年 3 月期ごろから順次)で、貸借対照表の数字の形が変わる点にも注意がいる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
動画配信は伸びているが、成長の取り分は世界の大手に偏る。
国内の定額制動画配信は 2025 年に 6,000 億円を超え、前年から 1 割強の伸びだ。2030 年には 9,000 億円規模へ育つとの見方がある。Netflix と Amazon Prime Video が上位を占め、U-NEXT はシェア 17% 前後の 3 番手に入る。ただし日本の人口は減るので、市場の伸びは 1 人あたりの契約の深まりに頼る。
競争は番組の調達で決まる。日本テレビ系の Hulu、サイバーエージェントの ABEMA、DMM、Disney+ が並び、スポーツ放映権やアニメの独占配信を巡って値段が上がる。U-NEXT は TBS や韓国の CJ ENM との合弁会社(StudioMonowa)で、自前の作品づくりに踏み出した。出資比率は 9% と小さく、まだ種まきの段階だ。
店舗向けは、人口と飲食店の数に連動する成熟市場だ。店は減るが、BGM やキャッシュレスなどを 1 店に重ねて売る余地がある。数量は 10 年で 1 割ほど減ると見るが、物価の分は料金に転嫁できる。
通信と電力は、規制と価格競争の市場だ。電力は燃料の値動きで売上が振れ、利益率は薄いまま推移する。契約件数を増やすことが唯一の成長手段になる。
業界の分かれ目は、番組の調達コストを回収できるだけの有料会員が、国内で集まるかどうかだ。そこで勝てば配信の利益率は 2 桁に乗り、負ければ大手に押されて利益が出ない。
資本政策と M&A
資本政策の核は、稼いだお金の大半を会社に残し、成長に投じる方針だ。
配当性向は 1 割前後と低い(第三者の集計)。自社株買いは確認できなかった。創業者の資産管理会社が発行済み株式の約半分を持つため、株主還元より成長投資を優先する経営が続きやすい。
M&A は積極的だ。2023 年に TBS から第三者割当増資を受け、2026 年 4 月にはエクシングの株式 70% を約 178 億円で取得した。この買収で純有利子負債は増え、2026 年は支払利息が利益を押し下げている。
買う側として動く会社なので、TOB(公開買い付け)で買われる側に回る可能性は低いと見る。創業者が約半分を持つため、第三者が支配権を取れない。kabufu の推計でも 10 年以内の買収確率は約 2 割と出るが、筆者はこれより低く見る。
筆者が気にするのは、買収が収益に結びつくかどうかだ。エクシングの取得は、配信と店舗網とカラオケの重なりという筋書きは立つ。だが、買った事業の利益率は低く、のれんが重くなる恐れがある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
U-NEXT は、日本の動画配信でいちばん成長している独立系だ。課金ユーザーは約 500 万人で、毎年 25〜30 万人ずつ増やす計画を、これまで守ってきた。番組を自社で持つ動きも始まった。TBS と CJ ENM との合弁会社 StudioMonowa が、国内向けの作品を生み出す。
店舗向けの BGM と業務サービスは、毎月の契約が積み上がる堅い事業だ。通信・エネルギーは上半期に利益が 3 割近く伸びた。この 2 つが利益の土台を支え、配信への投資を自前の稼ぎで賄える。2025 年 8 月期まで 9 期連続で売上・営業利益が最高だった実績は、実行力の証拠だ。
中期計画は 2030 年に営業利益 450〜515 億円、課金ユーザー 630 万人超を掲げる。筆者はこの計画を絵空事とは見ない。配信の営業利益率が現在の 7〜8% から 15% 台へ上がれば、全社の営業利益は 800 億円を超える。
エクシングの取得で、店舗網と会員基盤にカラオケが重なる。創業者が経営の中心にいる強みで、買収の判断も速い。配信の利益率が上がり、通信が伸びる最良の筋書きでは、純利益 500 億円、自己資本利益率 13% に届く。
慎重な見方
売上は伸びているが、利益はそれほど伸びていない。2026 年 8 月期の第 2 四半期累計は、売上が 14% 増えたのに、コンテンツ配信の営業利益は前年から 0.6% 減った。店舗・施設も減収減益だ。伸びているのは利益率の薄い通信・エネルギーで、売上が増えるほど全社の利益率は薄まる。
動画配信は、世界の大手が資金力で圧倒する市場だ。Netflix は自前の作品に数千億円を投じ、Amazon は通販の会員基盤にまとめて載せる。U-NEXT が放映権や独占配信の権利を取り合えば、番組の仕入れ代は上がる。配信の利益率が 10% を超えるのは容易ではない。
稼いだお金を会社に残し続けるため、自己資本利益率は 19% から 10% 近くへ下がる。2026 年は純利益が増えず、支払利息も増えた。エクシングの取得で借金が増え、買った事業の利益率も低い。
創業者の資産管理会社が約半分を持つため、少数株主が経営を正す力は弱い。株主還元が薄いまま、成長投資に使われ続ける。こうした理由から、今の値段は、利益が 2 倍近くになる前提を先に織り込んでいる。外れれば値は大きく動く。
どちらに重みを置いたか
事業の質は高いが、利益の厚みと資本効率が足りない。強気の見方は、成長の筋書きとして十分に成り立つ。だが、10 年後の利益が 1.7 倍になっても、残す利益が多いと自己資本利益率が下がり、倍率が高く付かない。この点は慎重な見方のほうが強い。確率は、やや悲観と悲観の合計をやや厚く置いた。楽観は 12%、やや楽観は 22%、中立は 30%、やや悲観は 24%、悲観は 12% とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 3,231 円5,829 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 193 円348 億円)。 今の値に割り戻すと 1,628 円2,937 億円、今との差 −13.1%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 5,900 円1.06 兆円 | 277 円500 億円 | +229.6% | +12.7% | 741 円1,337 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,495 円8,108 億円 | 233 円420 億円 | +152.3% | +9.7% | 1,040 円1,876 億円 |
| 中立 | 30% | 3,521 円6,351 億円 | 211 円380 億円 | +99.1% | +7.1% | 1,120 円2,019 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,857 円3,350 億円 | 161 円290 億円 | +7.7% | +0.7% | 484 円874 億円 |
| 悲観 | 12% | 271 円488 億円 | 55 円100 億円 | −82.6% | −16.0% | 39 円71 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,231 円5,829 億円 | 193 円348 億円 | +82.7% | +6.2% | 3,424 円6,177 億円 |
今の株価時価総額 1,874 円3,380 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 配信の利益率が 16% に乗り、通信が伸びる最良の筋書き 利益 499 億円 · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 5,900 円1.06 兆円
課金ユーザーは 700 万人まで伸び、TBS・CJ ENM との共同制作が当たって、番組の仕入れ代を自前の作品で抑えられる。配信の営業利益率は 16% へ上がる。店舗向けは BGM と決済の抱き合わせ販売が効き、利益率が 19% に上がる。
通信・エネルギーは契約件数を 1.35 倍に増やし、営業利益率も 8.5% に改善する。エクシングの取得が店舗網と重なり、カラオケも黒字を厚くする。
全社の営業利益は 880 億円、純利益は 500 億円に迫る。稼いだお金を成長投資に回し続けても、自己資本利益率は 13% を保つ。10 年たっても、国内の動画配信の主要プレーヤーとして残る。
- コンテンツ配信(U-NEXT):数量 701(課金ユーザー数(万人))× 価格 3.55(1 人あたり年間売上(万円。月額・都度課金・書籍などの合計))→ 売上 2,490 億円・営業利益 398 億円。営業利益率 16.0%
- 店舗・施設ソリューション(USEN):数量 18.0(取引店舗・施設数(万件・推定))× 価格 77(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 1,378 億円・営業利益 262 億円。営業利益率 19.0%
- 通信・エネルギー:数量 203(契約件数(万件・推定))× 価格 13(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 2,714 億円・営業利益 231 億円。営業利益率 8.5%
- 金融・不動産・グローバル:数量 66.0(取扱件数(万件・推定))× 価格 6.03(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 398 億円・営業利益 60 億円。営業利益率 15.0%
- 業務用カラオケ(エクシング):数量 15.0(設置ルーム数(万室・推定))× 価格 42(1 室あたり年間売上(万円))→ 売上 630 億円・営業利益 63 億円。営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 499 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.3 倍。全体の PER 19.26 倍、時価総額 9,613 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の大手を相手に、毎年 25〜30 万人を増やし続けるのは簡単ではない。実現すれば強いが、連続成功の確度は高くない。
やや楽観 22% 中期計画どおり配信が育ち、利益率も少しずつ上がる 利益 390 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 4,495 円8,108 億円
課金ユーザーは 650 万人で、中期計画の 630 万人超をわずかに上回る。配信の営業利益率は 13% へ上がる。店舗向けは数量が 3% 減るが、値上げで利益率を 17.5% に保つ。
通信・エネルギーは件数を 1.25 倍に増やすが、営業利益率は 8% にとどまる。金融・不動産・海外は小さいまま、黒字を積み上げる。エクシングも黒字を維持する。
全社の営業利益は 690 億円、純利益は 390 億円になる。自己資本利益率は 11% に下がるが、資本コストを 3 ポイントほど上回る。10 年かけて利益が今の 2 倍強になる、成長がほぼ計画どおりに進む 10 年だ。国内の動画配信で 3 番手の地位は揺るがず、店舗向けと通信の積み上げが配信の投資を支える。
- コンテンツ配信(U-NEXT):数量 652(課金ユーザー数(万人))× 価格 3.46(1 人あたり年間売上(万円。月額・都度課金・書籍などの合計))→ 売上 2,254 億円・営業利益 293 億円。営業利益率 13.0%
- 店舗・施設ソリューション(USEN):数量 17.5(取引店舗・施設数(万件・推定))× 価格 74(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 1,299 億円・営業利益 227 億円。営業利益率 17.5%
- 通信・エネルギー:数量 188(契約件数(万件・推定))× 価格 13(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 2,512 億円・営業利益 201 億円。営業利益率 8.0%
- 金融・不動産・グローバル:数量 57.0(取扱件数(万件・推定))× 価格 6.03(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 344 億円・営業利益 45 億円。営業利益率 13.0%
- 業務用カラオケ(エクシング):数量 14.6(設置ルーム数(万室・推定))× 価格 41(1 室あたり年間売上(万円))→ 売上 598 億円・営業利益 51 億円。営業利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 390 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍。全体の PER 18.49 倍、時価総額 7,213 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の延長線上の想定で、これまでの実績にいちばん近い筋書き。配信の利益率の改善は、一部が実現する前提。
中立 30% 成長は続くが、利益率が薄いまま 10 年が過ぎる 利益 312 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 3,521 円6,351 億円
課金ユーザーは 590 万人まで増える。中期計画の 630 万人には届かない。1 人あたり売上は、世界の大手との競争で物価の伸びに届かない。営業利益率は 10.5% にとどまる。
店舗向けは、店の数が減って数量が 5% 落ちるが、値上げで売上は保つ。通信・エネルギーは契約件数が 15% 増える一方、利益率は 7.5% のままだ。
全社の営業利益は 550 億円、純利益は 310 億円になる。売上は 6,400 億円で、中期計画の 2030 年の売上目標より少し大きい。稼いだお金の大半を会社に残すので、自己資本利益率は 10% に下がり、資本コストをわずかに上回る水準に落ち着く。
- コンテンツ配信(U-NEXT):数量 593(課金ユーザー数(万人))× 価格 3.38(1 人あたり年間売上(万円。月額・都度課金・書籍などの合計))→ 売上 2,003 億円・営業利益 210 億円。営業利益率 10.5%
- 店舗・施設ソリューション(USEN):数量 17.1(取引店舗・施設数(万件・推定))× 価格 73(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 1,253 億円・営業利益 213 億円。営業利益率 17.0%
- 通信・エネルギー:数量 173(契約件数(万件・推定))× 価格 13(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 2,312 億円・営業利益 173 億円。営業利益率 7.5%
- 金融・不動産・グローバル:数量 48.0(取扱件数(万件・推定))× 価格 6.03(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 289 億円・営業利益 35 億円。営業利益率 12.0%
- 業務用カラオケ(エクシング):数量 14.3(設置ルーム数(万室・推定))× 価格 40(1 室あたり年間売上(万円))→ 売上 573 億円・営業利益 43 億円。営業利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 312 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.78 倍、時価総額 5,546 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの中立(配信が育つが国内の市場成長は緩やか、店舗は縮む)をこの会社の構造に当てた。最も重みを置く筋書き。
やや悲観 24% 配信の仕入れ代が上がり続け、利益率が上がらない 利益 195 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 1,857 円3,350 億円
世界の大手が国内向けの制作を厚くし、放映権の値段が上がる。課金ユーザーは 520 万人どまりで、値上げもしにくい。配信の営業利益率は 7.5% で足踏みする。
店舗向けは、店の減少が早まり数量が 12% 落ち、値上げも 1.25 倍にとどまる。通信・エネルギーは価格競争で利益率が 6.5% まで下がる。エクシングの取得も重荷になり、買収のはずの利益が 5.5% で止まる。
全社の営業利益は 350 億円、純利益は 195 億円。10 年かけても今の利益とほとんど変わらない。自己資本利益率は 7.5% と資本コストを割る。
- コンテンツ配信(U-NEXT):数量 519(課金ユーザー数(万人))× 価格 3.17(1 人あたり年間売上(万円。月額・都度課金・書籍などの合計))→ 売上 1,645 億円・営業利益 123 億円。営業利益率 7.5%
- 店舗・施設ソリューション(USEN):数量 15.8(取引店舗・施設数(万件・推定))× 価格 68(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 1,083 億円・営業利益 162 億円。営業利益率 15.0%
- 通信・エネルギー:数量 158(契約件数(万件・推定))× 価格 13(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 2,048 億円・営業利益 133 億円。営業利益率 6.5%
- 金融・不動産・グローバル:数量 39.0(取扱件数(万件・推定))× 価格 5.63(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 219 億円・営業利益 18 億円。営業利益率 8.0%
- 業務用カラオケ(エクシング):数量 12.8(設置ルーム数(万室・推定))× 価格 38(1 室あたり年間売上(万円))→ 売上 478 億円・営業利益 26 億円。営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 195 億円・事業の ROE 7.5%。ROE が k 8.0% 以下なので、ためた利益は額面に満たない価値で、PER は 1÷k=12.5 倍まで。上限は事業 195 億円×12.5 倍=2,434 億円。成長と堀の持ちを低く見るので、上限を下回らせる。やや悲観は上限の 9.0 割に置き、全体の PER は 14.38 倍。
確率:業種ノートが挙げる、配信での国内勢の伸び悩みと大手の資金力を、この会社に当てた。2025 年 8 月期の最高益のあとに、利益が伸びない年が続く姿。
悲観 12% 配信が大手に押され、利益が出なくなる構造的な負け 利益 32 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 271 円488 億円
世界の大手が国内の番組を囲い込み、U-NEXT は放映権の競争に負ける。課金ユーザーは 400 万人に減り、値上げもできない。配信の営業利益率は 2% まで落ちる。
店舗向けは、店の減少が加速して数量が 25% 落ち、値上げも利かない。通信・エネルギーは値下げ競争で利益率が 4.5% になる。エクシングも設置室数が減って、利益がほとんど出ない。
全社の営業利益は 85 億円、純利益は 30 億円。配信への投資を、店舗向けと通信の稼ぎで賄うことができなくなる。ただし店舗向けと通信は、毎月の契約網が残り、事業としては売れる。
- コンテンツ配信(U-NEXT):数量 400(課金ユーザー数(万人))× 価格 2.60(1 人あたり年間売上(万円。月額・都度課金・書籍などの合計))→ 売上 1,040 億円・営業利益 21 億円。営業利益率 2.0%
- 店舗・施設ソリューション(USEN):数量 13.5(取引店舗・施設数(万件・推定))× 価格 60(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 812 億円・営業利益 89 億円。営業利益率 11.0%
- 通信・エネルギー:数量 135(契約件数(万件・推定))× 価格 12(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 1,620 億円・営業利益 73 億円。営業利益率 4.5%
- 金融・不動産・グローバル:数量 30.0(取扱件数(万件・推定))× 価格 4.95(1 件あたり年間売上(万円))→ 売上 148 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
- 業務用カラオケ(エクシング):数量 10.5(設置ルーム数(万室・推定))× 価格 33(1 室あたり年間売上(万円))→ 売上 346 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 2.0%
倍率:悲観は構造的に配信が負ける筋書きで、事業の純利益 32 億円は資本コスト 8.0% で割っても約 400 億円にとどまる。一方、店舗・施設ソリューションと通信の契約網は、毎月の契約が残る事業として売れる。その売却価値(営業利益の合計 160 億円強を税引き後に直して数倍)は約 500 億円。稼ぐ力より大きいこの 500 億円(今の自己資本 976 億円の 0.5 倍)を床に置いた。
確率:世界の大手が国内に本格投資し、番組の調達で負ける構造的な負けを置いた。一度始まると 10 年で後戻りしにくく、低いが無視できない確率。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンテンツ配信(U-NEXT)
動画配信 U-NEXT を中心に、電子書籍・音楽・ライブなどを月額で届ける。TBS が事業会社の 20% を持つ。
| 数量課金ユーザー数(万人) | 価格1 人あたり年間売上(万円。月額・都度課金・書籍などの合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 494 | 2.60 | 1,284 | 96 |
| 10 年後 中立 | 593 | 3.38 | 2,003 | 210 |
取り方:2025/08 期の課金ユーザー 494 万人と、セグメント売上 1,284 億円・営業利益約 96 億円(会社開示)から 1 人あたり売上を逆算した。中期計画は毎年 25〜30 万人の純増を掲げる。
店舗・施設ソリューション(USEN)
飲食店・小売・ホテル・病院などへ、BGM(店内音楽)、業務用機器、キャッシュレスや予約の仕組みを売る。
| 数量取引店舗・施設数(万件・推定) | 価格1 件あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 18.0 | 55 | 985 | 178 |
| 10 年後 中立 | 17.1 | 73 | 1,253 | 213 |
取り方:通期のセグメント数値は未確認。2026/08 期の第 2 四半期累計(売上 475・営業利益 87 億円)と前年同期比から通期を推定し、取引件数は筆者の推定で置いた。
通信・エネルギー
法人向け回線・携帯・電力の取次と小売。売上は大きいが利益率は薄い。
| 数量契約件数(万件・推定) | 価格1 件あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 150 | 10 | 1,500 | 116 |
| 10 年後 中立 | 173 | 13 | 2,312 | 173 |
取り方:通期のセグメント数値は未確認。第 2 四半期累計(売上 899・営業利益 70 億円、前年同期比で 22% 増・29% 増)から通期を推定した。契約件数は推定。
金融・不動産・グローバル
決済(キャッシュレス)、不動産、海外事業の寄せ集め。M&A で取り込んだ事業が多い。
| 数量取扱件数(万件・推定) | 価格1 件あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 30.0 | 4.50 | 135 | 18 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 6.03 | 289 | 35 |
取り方:通期のセグメント数値は未確認。第 2 四半期累計(売上 90・営業利益 12 億円)から推定した。小さなセグメントで、件数は推定。数量は実物(取扱件数。推定)で、取り込んだ決済・不動産・海外の事業の積み上げによる。名目の市場の伸びは置いておらず、物価は 1 件あたり売上の 1.34 倍だけで見ている。
業務用カラオケ(エクシング)
JOYSOUND を運営する。ブラザー工業から 2026/04 に株式の 70% を取得し、連結に入れた。
| 数量設置ルーム数(万室・推定) | 価格1 室あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 15.0 | 30 | 450 | 30 |
| 10 年後 中立 | 14.3 | 40 | 573 | 43 |
取り方:エクシングの売上・利益は開示を確認できなかった。取得価額(70% で 175 億円)から見た規模感として、売上約 450 億円・営業利益約 30 億円をフルに連結した場合の推定で置いた(2025/08 期の連結には入っていない)。
リスクと懸念
配信の利益率が上がらない
2026 年 8 月期の上半期は、配信の売上が 13% 増えたのに営業利益は 0.6% 減った。番組の仕入れ代と配信の設備投資が重く、会員が増えても利益が増えにくい構造がある。
世界の大手との競争
Netflix や Amazon は資金力が大きく、国内向けの制作にも投資を広げている。U-NEXT が放映権や独占配信を取り合えば、仕入れ代はさらに上がる。
利益率の薄い事業の比重
通信・エネルギーは売上の 4 割近くを占めながら利益率は 1 桁だ。売上が伸びるほど全社の利益率は薄まり、電力は燃料価格で売上が振れる。
M&A ののれんと借金
エクシングの取得(約 178 億円)で純有利子負債が増え、2026 年は支払利息が利益を押し下げた。買った事業の利益率は低く、のれんの減損が出れば自己資本を傷める。
創業者支配によるガバナンス
創業者の資産管理会社が発行済み株式の約半分を持つ(第三者の集計)。少数株主が経営を正す力は弱く、配当性向が 1 割前後と低いままだ。
店舗数の減少
店舗・施設ソリューションは飲食店やホテルの数に連動する。人口減で店が減れば、数量が落ちる。2026 年 8 月期の上半期も減収減益だった。
今後の分かれ目
- 配信の営業利益率が 2 期続けて 10% を超えたら
- 楽観・やや楽観側に確率を移す。仕入れ代を会員の増加で吸収できている証拠になる。
- 課金ユーザーの純増が年 20 万人を下回ったら
- 中期計画の 630 万人は届かないとみて、中立から悲観側に確率を移す。
- StudioMonowa の作品が国内で当たり、自前の番組の比重が上がったら
- 仕入れ代の圧力が和らぐとみて、配信の利益率の前提を上げる。
- エクシングの営業利益率が 5% を下回ったら
- 買収の価値を見直し、のれんの減損リスクを織り込んで、やや悲観側の確率を上げる。
- 配当性向の引き上げや自社株買いが発表されたら
- 自己資本利益率が下がりにくくなり、倍率の前提を上げられる。
- 世界の大手が国内の放映権を相次いで囲い込んだら
- 配信が構造的に負ける悲観の筋書きに重みを移す。
見ておくもの
- コンテンツ配信の営業利益率と課金ユーザーの純増(中期計画 年 25〜30 万人)
- StudioMonowa の最初の作品と、自前の番組の比率
- エクシングの売上・営業利益と取得後ののれんの額
- 通信・エネルギーの営業利益率と電力の燃料費の動き
- 純有利子負債と支払利息、配当性向の変化
倍率と資本コストの決め方
5 つのセグメント(配信・店舗・通信・金融不動産・カラオケ)を数量×価格で積んだ。倍率は式の上限(正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k 8.0%、堀は並みで残る割合 1/2)に対する位置で置いた。楽観は上限の 9.5 割、やや楽観 9 割、中立 8.5 割、やや悲観は ROE が k を下回るため 1÷k の 9 割。悲観は事業の売却価値を床にした。今の PER や同業の倍率、谷の倍率は見ていない。店舗・機器のリースは今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえて置き、新リース会計基準で数字の形が変わる点は 10 年後の数字に反映していない。エクシングは 2025/08 期の連結に入っていないため、売上約 450 億円・営業利益約 30 億円の推定で追加し、全セグメントの通期数値も上半期から推定した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.63→19.26 倍・やや楽観 PER 13.22→18.49 倍・中立 PER 11.88→17.78 倍・やや悲観 PER 11.25→14.38 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。