結論
エイチームホールディングスは、「引越し侍」「ナビクル」などの比較サイトから事業者へ見込客を送り、手数料を受け取る会社である。化粧品の定期通販、ゲーム、企業向け広告支援やmicroCMSも持つ。筆者の結論は「割高」だ。名の通ったサービスはあるが、10年先の送客件数と手数料を守る証拠が足りず、現在の時価総額約177億円に見合うオーナー利益を確信しにくい。
2026年7月期は売上約230億円、営業利益約11億円でも、純利益は約3.6億円にとどまった。暗号資産を使うポイント事業の時価変動が、営業利益と経常利益を逆方向に動かすため、直近の利益だけで平常時の稼ぐ力を判断できない。2027年7月期の会社予想も純利益3億円であり、2028年の中期目標との間には大きな距離がある。
引越し侍は約20年の運営歴と多数の提携業者を持ち、顧客接点には価値がある。ただし、検索エンジン経由の集客を生成AIが奪い、比較や事業者への問い合わせをエージェントが代行するなら、見込客を紹介する窓口は一つでなくなる。利益率の高い送客市場ほど競合が入札を強め、値上げできる企業とは言い切れない。
保有する現預金は下値を和らげ、増配と買い戻しにも実績がある。しかし、買収計画の規模は現在の自己資本に比べ大きく、未行使の新株予約権などによる既存株主の取り分の低下も無視できない。五つの筋書きを資本コストで割り引いた価値は約67億円、現時点の時価総額を約62%下回る。安い企業を探す立場では、収益の復元力の立証が先だと考える。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとっての魅力は、手元資金が厚く、引越しや車の買い替えという実需から手数料を得る構造にある。利用者が困った時に比較する場所を用意し、提携先に確かな見込客を渡せれば、設備を大量に持たず現金を生み出せる。引越し侍の提携網には歴史があり、競争力の種はある。ただし、これを安定的に値上げできる独占と同一視してはいけない。
最も気になるのは、継続的な利益を生む仕組みと、毎年広告費を投じなければ立ち行かない仕組みの区別である。検索広告の入札額が上がると、成果報酬単価が上がらない限り利幅は消える。AIエージェントが比較・問い合わせ・見積もり取得を肩代わりすれば、送客先企業は人間向けの比較画面に払ってきた手数料を見直すかもしれない。microCMSにも一定の切り替え負担はあるが、顧客の契約継続率が不明な段階で永続する堀として高く値付けするのは難しい。
経営が現金をどう使うかが価値を左右する。増配や買い戻しは歓迎できるが、それと並行して百億円規模の企業買収を約束すれば、良い案件にだけ投資する選別能力が試される。のれんと顧客関連資産は事業がうまくいかなければ現金に戻らない。既存株主は新株予約権による希薄化を受けるため、買収が成長に見えても一株当たりの持分が増えるとは限らない。
事業が社会から消えるとは見ていない。化粧品のリピート購入や協業ゲームが補完する道もある。それでも、現在の純利益に対して10年先のオーナー利益を確実に増やせる根拠は薄い。安全域がほとんどない状態で不確実な買収成果まで先払いするより、広告費を引いた利益と資本還元が何年も持続することを確かめたい。
何で稼ぐ会社か
収益の柱はデジタルマーケティング事業で、2026年7月期の売上は約191億円に達する。その内訳はメディア・ソリューション約162億円と、化粧品などの定期通販を担うD2C約29億円である。メディアでは引越し侍、車査定のナビクル、結婚式場のハナユメ、開発者コミュニティのQiitaなどを運営し、利用者を集めて提携先へ送る。利用者への課金ではなく、紹介や成約に応じた企業側からの支払いが核となる。
同じメディア部門でも、法人の広告運用や集客の代行は人の工数を売る仕事だ。2024年以降に加わったWCAの広告支援、Strainerの経済メディア、シグニティのPUSH ONE、microCMSのコンテンツ管理SaaS、Paddleの暗号資産ポイントアプリは稼ぎ方が異なる。これらの買収企業は2026年時点でデジタルマーケティング売上の約1割を占める。会計上は合算されるため、送客メディアと代行とソフトの個別売上を推定して分けて評価する必要がある。
D2Cの中心であるlujoは、外部工場で製造した化粧品を自社企画・自社集客で継続購入してもらう商売だ。2026年は増収増益だったが、広告費を投下して定期顧客を獲得するため、継続率と顧客獲得費を外から把握しなければ真の採算を読み違える。美容市場の伸びだけで収益が保証されるわけではない。
エンターテインメント事業の売上は約39億円で、ゲーム内アイテム課金が主体である。過去に収益を作った自社タイトルの成熟が進み、近年は運営費を削りながら他社の知的財産を使う協業案件へ移る。2026年には協業比率が約23%、自社タイトルの海外売上比率が約4割であり、かつての新作ゲーム一本で業績を伸ばす形から変わりつつある。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社が簡単に模倣できない強みは、引越し侍などに蓄積した送客の実績と提携網にある。引越し侍は2026年2月時点で提携引越会社395社、累計見積もり依頼6,759万件を公表した。事業者の選択肢が多ければ利用者は比較しやすくなり、見込客が集まれば事業者にも掲載する理由が生まれる。ナビクルも累計利用実績540万件超を公表しており、ゼロから同じ信頼を得るのは容易ではない。
ただし、累計件数は継続利用者数ではなく、現在の有料紹介件数や成約率でもない。引越しは頻繁に繰り返す取引ではないため、顧客に切り替えの手間が生じにくい。広告枠の買い付けではGoogleなどに集客の入口を握られ、競合のSUUMO引越し見積もり、MOTA、カーセンサー、ゼクシィなども消費者への接点を持つ。紹介手数料の値上げ実績や高い顧客継続率の数字は確認できず、堀を強いとは判定しない。
microCMSには導入企業約1.3万社と販売協力先約100社という成長の証拠がある。しかし、無償導入と有料契約の内訳、年5%未満の解約率、規制対応による切り替え障壁などは確認できない。コンテンツの正本を保存する側面があっても、業務画面や席課金がAIエージェントに代わられないことを示す証拠が二つ以上あるとは言えない。
かつて営業利益率が二桁だった会社が近年は一桁となり、2022年7月期には営業赤字だった。資本効率が弱い時期にも多額の買収と広告投資を続けている。純現金は安全性を支えるが、それ自体は増分投資の利回りを高めない。買収企業ごとののれん償却後の利益と、広告を止めた後に残る顧客価値を検証して初めて質の改善を認められる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ネット広告市場は拡大している。電通の推計で2025年のインターネット広告費は約4.05兆円、うち媒体費は約3.31兆円で、動画やSNS向けが伸びた。一方で、エイチームが強みとする比較サイトからの成果報酬型送客は、広告市場全体と同じ速さで成長するわけではない。Googleの検索画面、生成AIの要約、事業者の自社集客に利用者が移れば、総広告費が増えても紹介サイトの取り分は減る。
引越しの基礎需要について総務省の2025年統計では市区町村間の人口移動が約519万人、中古車市場では2025年度の登録・届け出台数が約651万台だった。いずれも対象人数と台数であり、送客や見積もりの件数と同じ単位ではない。引越し侍の累計見積もり依頼6,759万件は複数社への依頼を含み得るため、そのまま引越し市場のシェアには換算できない。紹介件数や競合シェアの年次開示がないこと自体が、10年後の数量に大きな不確実性を残す。
通販には追い風がある。2025年の国内化粧品市場は矢野経済研究所推計で約2.64兆円、化粧品・医薬品のネット通販市場も約1.06兆円に達した。lujoの売上約29億円は広い化粧品通販市場の約0.3%であり、知名度が高まれば伸びる余地はある。ただし、資生堂、ファンケル、オルビスや新興D2Cとの広告入札競争、返品や解約の増加で利益は簡単に薄くなる。
ゲームは2025年の国内ゲームコンテンツ市場が約2.59兆円、モバイルに限っても1兆円を超える巨大市場だ。ただし、エイチームのゲームには海外分と協業分があり、国内全体に対する厳密なシェアは算出できない。Cygames、MIXI、ガンホー、国内外の大型IPと比べて資金力で劣り、古いゲームの自然減を新しい作品と協業利益で補えるかが焦点となる。10年先は業界の名目市場が成長しても、同社の実質利用者数は減る中立像を採用する。
資本政策と M&A
会社はFY2025~FY2028の中期経営計画で、最終年度の売上340億円、調整後EBITDA40億円、営業利益20億円を掲げている。買収投資100億円以上を目標とし、2026年までにmicroCMS、Paddle、WCA、Strainer、シグニティの5社へ計33億円を投じた。残り2年で67億円を投じる構想は、現在の自己資本に迫る大きさだ。2027年の会社業績予想には未実行買収の利益を含めていないため、目標達成は既存事業の回復と買収の両輪に依存する。
株主還元も明確だ。中計は4年間の総還元性向平均100%以上、配当と自社株買いの合計40~50億円を約束し、2025~2026年の2年間に約24億円を実行した。年間配当は2026年に増額され、2027年にも同額を見込む。500株以上の株主には年間2万円分のQUOカードを進呈し、2026年期末には株主優待引当金が約1.09億円あった。10年間の還元額には、この優待に相当する費用も含める。
ただし、2025年には大きな自己株式取得と同時に転換社債の株式化が進み、株数の純減は限られた。2026年10月に調整された行使価額は636.20円で、新株予約権と残る転換社債による潜在株式は合計およそ507万株に及ぶ。発行される場合の資本増強と同時に既存株主の取り分は減る。2026年には約10億円の借入も増え、流動性と買収の採算を両立する経営の規律が問われる。投資委員会の設置は前進だが、取得後の投下資本利益率で成果を確認したい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
比較サービスを一度でも使ったことのある人が多く、引越し侍は約400社の提携網を持つ。引越し業者や中古車買取事業者は見込客を必要としており、成約可能性の高い送客を継続して行える事業者に価値がある。一般的な情報検索はAIに取られても、実際の料金回答、見積もりの比較、条件の交渉、申し込み完了までを引き受けるサービスはなくならない。ナビクルアシストや引越し侍のスマート比較は、閲覧型のメディアから実際の取引を支える仕組みへ進む試みだ。
既存メディアだけを見れば成長は鈍いが、買収したmicroCMSは導入企業が1.3万社を超え、販路となる提携社も100社まで増えている。継続課金が拡大すれば、広告依存度を下げられる。Paddleのポイントアプリ、WCAの法人支援、D2Cのlujoも新たな顧客基盤を作れる。ゲームは協業型への転換で新作の大型開発費を軽くでき、海外からの収益も残る。2028年計画に近い事業改善が実現し、さらに10年かけてブランドと顧客を広げれば、利益はかなり回復する。
財務は無理な借入だけに頼っておらず、現金と投資資産がある。会社は4年で40~50億円の株主還元を明言し、すでに約24億円を実行している。投資委員会が買収価格と統合後の事業計画を点検する仕組みも整えた。適切な案件を安く買い、D2Cと法人支援が継続収益になれば、現在の見かけの純利益は将来の稼ぐ力を過小評価していることになる。
慎重な見方
高い紹介手数料を生むのは、検索エンジンから利用者を安く獲得できる時だ。検索結果にAIの比較回答が出て、購入者がエージェント経由で業者へ直接申し込むようになれば、従来型メディアのアクセスも送客単価も同時に弱る。引越しは頻繁に繰り返さないので、顧客が過去の比較サイトへ戻る保証はない。提携事業者も自社サイトやMOTAなどの競合窓口へ予算を振り向けられる。検索広告の高騰は、売上より先に利益を傷つける。
法人向け広告運用は人の工数に課金する形が残り、AIエージェントが運用、制作、レポートを代替すると料金引き下げを迫られる。microCMSも多数の導入企業があるが、無料利用を含む数であり、低解約率の証拠は公開されていない。大きなゲームタイトルのヒットも近年は続かず、過去の二桁利益率を当然に取り戻せるとは言えない。2026年の営業増益には暗号資産連動の引当金戻入が含まれ、2027年の会社計画は営業利益6億円である。
買収を通じた成長には資金が必要で、残り67億円の投資計画は自己資本の規模に比べ重い。既存子会社の統合で独立性を保つことと、投資資金を上回る利益を稼ぐことは別問題だ。利益の少ない時期にも配当・株主優待を維持すれば、内部資金は減る。残存する新株予約権と転換社債が行使されれば既存株主の持分が薄まり、行使されなければ借入・償還の制約が残る。のれんの償却や減損は、買収で見込んだ事業の価値が戻らなかったことを示す。
どちらに重みを置いたか
送客ブランドとD2Cの伸びしろは評価するが、実際に生み出す利益と、その利益を既存株主が受け取れる割合の証拠では慎重な見方が勝る。下に寄せる理由は、2026年の既存メディア減収、広告入札競争の強まり、AIエージェント代替、未行使証券による希薄化、そして未実行の67億円の買収計画が重なることだ。ただしAIの数量減少は中立の販売件数と長期成長率に既に入れ、確率と資本コストに同じ理由を重ねていない。五つの確率は上側26%、中立34%、下側40%とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 438 円81 億円(+ 還元の換算額還元の合計 244 円45 億円)。 今の値に割り戻すと 362 円67 億円、今との差 −60.1%、 期待の年率 −3.4%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 1,466 円273 億円 | 402 円75 億円 | +105.7% | +8.6% | 168 円31 億円 |
| やや楽観 | 17% | 815 円152 億円 | 296 円55 億円 | +22.4% | +2.4% | 189 円35 億円 |
| 中立 | 34% | 363 円67 億円 | 275 円51 億円 | −29.8% | −4.3% | 217 円40 億円 |
| やや悲観 | 24% | 126 円23 億円 | 207 円39 億円 | −63.3% | −12.8% | 80 円15 億円 |
| 悲観 | 16% | 89 円17 億円 | 89 円17 億円 | −80.4% | −18.2% | 28 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 438 円81 億円 | 244 円45 億円 | −24.9% | −3.4% | 682 円127 億円 |
今の株価時価総額 908 円169 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% ブランド接点を取引完結まで広げる 利益 26 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,466 円273 億円
引越し侍とナビクルが利用者の入口を守り、比較結果だけでなく見積もりの取得、予約、アフターサービスまで一続きで手掛ける。提携業者から見た成約率が上がり、AIの検索要約で流入が減っても高単価の紹介を獲得できる。比較サイトの有償送客件数は今とほぼ同水準を守り、広告・紹介当たりの単価は物価3%の世界でも実質では伸びない。AIの効率化は広告運用やCMSの利用席数の増加には数えず、成熟した事業として扱う。
化粧品のlujoは商品群の拡充と定期購入の継続率改善で出荷を大きく伸ばす。ゲームは自社IPの海外需要に加えて協業比率が上がり、初期開発費を抑えながら新たな課金利用者を獲得する。2028年中計の買収投資が良い条件で実行され、microCMSとPaddleにも収益貢献が積み上がる。サービスごとの集客費と本部費の伸びを抑え、10年後に二桁営業利益率へ戻す。大型M&Aが収益を壊さず、既存株主には高い配当と買い戻しが続く筋書きだ。
- 自社比較・情報メディア:数量 162(有償送客・広告収入換算件数(万件/年、推計))× 価格 1.00(紹介・広告1件当たり平均収入(万円/件))→ 売上 162 億円・営業利益 27 億円。比較サイトの有償送客件数と1件当たり報酬
- 法人向け広告運用・集客代行:数量 540(年間有償支援契約(社年、推定))× 価格 0.03(年間契約当たり売上(億円/社年))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。工数型の運用契約数と1社当たり手数料
- microCMS・通知SaaSとポイントアプリ等:数量 2,850(有料契約・アプリ収益の契約換算数(社年、推定))× 価格 0.00(契約換算当たり年間売上(億円/社年))→ 売上 13 億円・営業利益 3 億円。AIによって変わる有料契約換算数と単価
- 化粧品D2C(lujo等):数量 81.0(化粧品の有償定期出荷(万件/年、推計))× 価格 0.85(1出荷当たり売上(万円/件))→ 売上 69 億円・営業利益 12 億円。lujo等の継続出荷量と価格
- ゲームと協業コンテンツ:数量 37.8(年間課金利用者相当(万人年、推計))× 価格 1.45(課金利用者当たり年間売上(万円/人年))→ 売上 55 億円・営業利益 9 億円。課金者相当数と年間課金額
倍率:資本コスト8.25%、弱い堀の残存割合1/3、2036年の事業ROE約16.1%、RONIC約10.9%、10年より先の名目g=1%。PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.526倍の上限そのもの。今の余剰現金12億円の税後利息0.168億円を純利益から除き、株主に戻る9億円を足す。
確率:2026年時点でメディアは減収だったため、既存集客が持続し、D2Cと協業ゲームがともに成長するには複数の成功が必要となる。AIに脆い二つの工数・席課金部分は楽観でも数量を現在以下とする。
やや楽観 17% 買収とD2Cが旧メディアの減速を補う 利益 15 億円 · PER 12.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 815 円152 億円
検索経由の比較サイトは少しずつ減るが、引越し侍とナビクルには提携業者の厚みが残る。成約率を高める機能改善で紹介手数料を幾分維持し、GoogleやAI検索への集客依存を下げられる。広告運用やCMSはAIエージェントの代替で工数・契約数が縮むものの、利用者に必要な実業務と専門的な支援は一部残る。広告費を無理に使って売上高だけを追う経営はやめ、受注単位の利益を優先する。
lujoの継続出荷が増え、ゲームではIP協業の比率が高まり、古いタイトルの下り坂を部分的に補う。microCMSの月次収益とPaddleの収益化も伸び、買収した会社を個別に自立させながら販売網を共有する。2028年の計画にやや近い水準へ営業利益を引き上げ、その後は過大な買収を避ける。既存株主への現金配当と買い戻しを続けるが、未行使証券による希薄化を完全には帳消しにできない。
- 自社比較・情報メディア:数量 149(有償送客・広告収入換算件数(万件/年、推計))× 価格 0.96(紹介・広告1件当たり平均収入(万円/件))→ 売上 142 億円・営業利益 19 億円。比較サイトの有償送客件数と1件当たり報酬
- 法人向け広告運用・集客代行:数量 468(年間有償支援契約(社年、推定))× 価格 0.03(年間契約当たり売上(億円/社年))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。工数型の運用契約数と1社当たり手数料
- microCMS・通知SaaSとポイントアプリ等:数量 2,580(有料契約・アプリ収益の契約換算数(社年、推定))× 価格 0.00(契約換算当たり年間売上(億円/社年))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。AIによって変わる有料契約換算数と単価
- 化粧品D2C(lujo等):数量 68.7(化粧品の有償定期出荷(万件/年、推計))× 価格 0.81(1出荷当たり売上(万円/件))→ 売上 56 億円・営業利益 8 億円。lujo等の継続出荷量と価格
- ゲームと協業コンテンツ:数量 32.4(年間課金利用者相当(万人年、推計))× 価格 1.37(課金利用者当たり年間売上(万円/人年))→ 売上 44 億円・営業利益 6 億円。課金者相当数と年間課金額
倍率:資本コスト8.25%、堀の残存割合1/3、事業ROE約11.3%、RONIC約9.3%、名目g=1%から正当化PER12.305倍。高い成長見込みは10年目の純利益に反映済みなので、倍率には上乗せしない。現金12億円の税後利息を引いた事業利益に倍率を掛け、戻り方75%の9億円を別計算で足す。
確率:lujoは実際にFY2026で3割増収し、microCMSの導入企業も増えているが、二つが10年持続し、広告型メディアの減速を越える保証はない。
中立 34% 既存メディアは痩せ、D2Cとゲームで踏みとどまる 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 363 円67 億円
引越し侍やナビクルのブランドは残るが、比較を人が一つずつ閲覧する機会は減り、AIエージェント経由の直接照会が増える。提携業者へ送る有償案件は10年間で22%減り、紹介収入の単価も名目では上がるが物価上昇に届かない。広告制作・運用は自動化の普及で契約量が35%縮み、ヘッドレスCMSや通知SaaSも画面や席の利用を減らす圧力を受ける。これは実際に収益が消えるという想定であって、利益倍率でも再び同じ理由を引かない。
D2Cはlujoの出荷件数を着実に増やすが、広告費やOEM製造費も上がるため利幅の回復は緩やかだ。ゲームは古いタイトルの課金者が減り、IP協業が減収を和らげる。M&Aは一部の利益を補うが、買収総額だけをそのまま営業利益へ変えられない。10年後の売上は名目でも現在を下回り、全社の営業利益率は一桁にとどまる。純現金を維持しつつ増配を続ければ財務は持つが、かつての二桁営業利益率を回復した会社としては評価しない。
- 自社比較・情報メディア:数量 129(有償送客・広告収入換算件数(万件/年、推計))× 価格 0.90(紹介・広告1件当たり平均収入(万円/件))→ 売上 115 億円・営業利益 13 億円。比較サイトの有償送客件数と1件当たり報酬
- 法人向け広告運用・集客代行:数量 390(年間有償支援契約(社年、推定))× 価格 0.03(年間契約当たり売上(億円/社年))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。工数型の運用契約数と1社当たり手数料
- microCMS・通知SaaSとポイントアプリ等:数量 2,400(有料契約・アプリ収益の契約換算数(社年、推定))× 価格 0.00(契約換算当たり年間売上(億円/社年))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。AIによって変わる有料契約換算数と単価
- 化粧品D2C(lujo等):数量 59.9(化粧品の有償定期出荷(万件/年、推計))× 価格 0.77(1出荷当たり売上(万円/件))→ 売上 46 億円・営業利益 5 億円。lujo等の継続出荷量と価格
- ゲームと協業コンテンツ:数量 25.2(年間課金利用者相当(万人年、推計))× 価格 1.29(課金利用者当たり年間売上(万円/人年))→ 売上 32 億円・営業利益 4 億円。課金者相当数と年間課金額
倍率:中立の純利益6.5億円のうち余剰現金12億円の税後利息0.168億円を除いた事業純利益6.332億円を、余剰現金を外した自己資本92.5億円で割るとROE約6.8%でk8.25%に届かない。成長の価値を認めず正当化PERの上限1÷k=12.121倍をそのまま用い、現金の株主還元見込9億円を加える。
確率:中立ではAIエージェント代替を媒体送客件数・運用契約・SaaS契約の減少に直接反映した。下に寄せる理由:2026年に既存メディア売上が減り、2027年営業利益予想も6億円にとどまるうえ、買収残額67億円と潜在株式の成否が未確定である。
やや悲観 24% 広告媒体の強みが衰え、資本の稼ぐ力が落ちる 利益 2 億円 · PER 10.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 126 円23 億円
検索からの送客が続けて減り、引越し侍やナビクルの提携業者も複数の窓口を使い分ける。AIアシスタントに比較・申し込みを委ねる消費者が増え、媒体の名前を知っていても訪問しなくなる。工数で売る広告運用はAIツールの普及によって支援契約がほぼ半減し、SaaSの有料契約も縮む。会社は不採算の比較ページや受託案件を撤退し、売上高より現金を守る方針に転じる。
lujoの定期通販は一定の顧客が残るが、新規獲得の広告費が重い。ゲームの古いタイトルは課金利用者が半減し、協業で固定費を抑える。売上が縮むため本部の人員も削り、名目の共通費を現在より減らす必要がある。会社が買収した先の成長は期待を下回り、のれん償却後の利益が薄い。配当と株主優待は当初は続くが、収益が回復しなければ縮小を迫られる。事業は黒字で存続するものの、自己資本の利回りは資本コストに大幅に届かない。
- 自社比較・情報メディア:数量 99.0(有償送客・広告収入換算件数(万件/年、推計))× 価格 0.83(紹介・広告1件当たり平均収入(万円/件))→ 売上 82 億円・営業利益 7 億円。比較サイトの有償送客件数と1件当たり報酬
- 法人向け広告運用・集客代行:数量 330(年間有償支援契約(社年、推定))× 価格 0.03(年間契約当たり売上(億円/社年))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。工数型の運用契約数と1社当たり手数料
- microCMS・通知SaaSとポイントアプリ等:数量 1,890(有料契約・アプリ収益の契約換算数(社年、推定))× 価格 0.00(契約換算当たり年間売上(億円/社年))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。AIによって変わる有料契約換算数と単価
- 化粧品D2C(lujo等):数量 49.1(化粧品の有償定期出荷(万件/年、推計))× 価格 0.72(1出荷当たり売上(万円/件))→ 売上 35 億円・営業利益 3 億円。lujo等の継続出荷量と価格
- ゲームと協業コンテンツ:数量 18.7(年間課金利用者相当(万人年、推計))× 価格 1.20(課金利用者当たり年間売上(万円/人年))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。課金者相当数と年間課金額
倍率:低ROEなのでPER上限1÷8.25%=12.12倍。送客の優位が失われた状態では、それ以下の10.6倍の稼ぐ力で評価する。やや悲観では余剰現金12億円の75%に当たる9億円が残り、その税後利息0.126億円を利益から除き、戻り方75%の6.75億円を加える。清算床20億円より上であり稼ぐ力の上限も超えない。
確率:下に寄せる理由:2026年に自社の一部メディアが広告競争で減収減益となったことと、AIによる代替はすでに始まっていること。買収したアプリや法人支援が収益を十分に補えない場合を想定する。
悲観 16% 比較メディアの中抜きと買収損失が重なる 利益 −5 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 89 円17 億円
生成AIとプラットフォーム側の予約機能が実際の申込先となり、検索して比較サイトを見る習慣が大きく後退する。引越し侍とナビクルはブランドを残しても有料送客件数が現在の4割程度に縮み、紹介単価も名目で下落する。広告運用やCMSの契約・利用席はAIエージェントに置き換わる。機能更新を続けても代理店と広告主が価格交渉を強めるため、売上の減少を止められない。
D2Cの顧客獲得費は高止まりし、通販の量も減る。協業への移行が遅れたゲームでは旧作が急速に細り、会社全体の売上高は約98億円まで落ちる。人員と本社費を大きく削減しても赤字が残り、買収の失敗分として2026年時点ののれん約18億円と顧客関連資産の一部を減損する。配当や優待を減額して現金を温存し、事業の成長ではなく換金可能な資産が株主価値を支える状態になる。旧来の高収益企業としての評価は完全に失われる。
- 自社比較・情報メディア:数量 69.3(有償送客・広告収入換算件数(万件/年、推計))× 価格 0.72(紹介・広告1件当たり平均収入(万円/件))→ 売上 50 億円・営業利益 1 億円。比較サイトの有償送客件数と1件当たり報酬
- 法人向け広告運用・集客代行:数量 252(年間有償支援契約(社年、推定))× 価格 0.03(年間契約当たり売上(億円/社年))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。工数型の運用契約数と1社当たり手数料
- microCMS・通知SaaSとポイントアプリ等:数量 1,440(有料契約・アプリ収益の契約換算数(社年、推定))× 価格 0.00(契約換算当たり年間売上(億円/社年))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。AIによって変わる有料契約換算数と単価
- 化粧品D2C(lujo等):数量 35.4(化粧品の有償定期出荷(万件/年、推計))× 価格 0.64(1出荷当たり売上(万円/件))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。lujo等の継続出荷量と価格
- ゲームと協業コンテンツ:数量 12.6(年間課金利用者相当(万人年、推計))× 価格 1.11(課金利用者当たり年間売上(万円/人年))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。課金者相当数と年間課金額
倍率:純利益が赤字でありPERではなく傷んだ資産と換金価値で見る。2026年現在の自己資本86.76億円から、10年の収益悪化・還元・のれん等の減損を経た2036年自己資本70億円の0.30倍に当たる21億円。今の自己資本に対しては約0.24倍で、現在より大きな自己資本に谷のPBRを掛けない。純現金・売れる資産の税後20億円の床をわずかに上回る。
確率:AIによる直接比較が普及し、広告運用とCMSが代替されるだけでなく、買収対象の収益も見込みを下回る複合損失。2026年現在の現預金はあるため法的破綻は前提にしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自社比較・情報メディア
引越し侍、ナビクル、ハナユメ、Qiitaなど。閲覧・見積もりを契約企業の有償送客・広告収入に換える。
| 数量有償送客・広告収入換算件数(万件/年、推計) | 価格紹介・広告1件当たり平均収入(万円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 165 | 0.80 | 132 | 13 |
| 10 年後 中立 | 129 | 0.90 | 115 | 13 |
取り方:FY2026公式メディア・ソリューション売上161.92億円から法人運用18億円、ソフト等12億円の推定分を分けた残差131.92億円。引越し侍は2026年2月時点で累計見積もり6,759万件、提携395社、2025年頃のナビクル累計利用540万件超。公式の有料送客件数は非開示なので165万件×実効収入約7,995円と置く。累計見積もりは複数業者分を含むため直接割らず、毎年の送客実件数・競合市場シェアは推定であり確認できない。市場は2025年移動519万人と中古車年651万台を参考にするが単位が異なり比率は実シェアではない。AIエージェント代替分類は自社の媒体・マッチング型で、中立数量0.78倍、単価1.12倍。
法人向け広告運用・集客代行
WCAなどの広告運用・制作・法人売上向上支援を、人の作業と成果報酬で売る部分。
| 数量年間有償支援契約(社年、推定) | 価格年間契約当たり売上(億円/社年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 600 | 0.03 | 18 | 2 |
| 10 年後 中立 | 390 | 0.03 | 12 | 1 |
取り方:FY2026メディア161.92億円の内数を会社未開示につき推計18億円として分離。年間600社年×1契約300万円で説明する仮定であり実契約数・単価とも非開示。日本の2025年ネット広告費4.05兆円・媒体費3.31兆円(電通)に比べ市場シェアは小さいが、媒体の総広告費と同社純手数料売上の定義は異なるので割算の正確な市場シェアは不明。AIエージェント代替分類は広告制作・運用および人月型で、中立契約数量0.65倍、単価1.02倍。
microCMS・通知SaaSとポイントアプリ等
microCMS、PUSH ONE、Strainer、Paddleなど、継続課金とアプリ広告・送客の新規買収部分。
| 数量有料契約・アプリ収益の契約換算数(社年、推定) | 価格契約換算当たり年間売上(億円/社年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 3,000 | 0.00 | 12 | 3 |
| 10 年後 中立 | 2,400 | 0.00 | 10 | 2 |
取り方:FY2026デジタルマーケティング部門191.38億円の約1割は買収5社の売上である。ただし社別開示がないので、microCMS・PUSH ONE等とPaddle等をまとめた12億円を、年40万円の契約換算3000社年に置いた推計。microCMSの導入企業約1.3万社は無償も含むため有料契約数ではない。国内ヘッドレスCMSの公的シェアは不明。AIエージェント代替分類は主に画面・ID依存SaaS(Paddleの自社アプリは独立の例外)で、中立契約0.80倍、単価1.08倍と保守的に置く。法規制や低解約率の堀2証拠がないため記録の正本型にはしない。
化粧品D2C(lujo等)
化粧品ブランドlujoなどの定期購入。企画・販促・顧客管理を自社で担いOEM工場で生産。
| 数量化粧品の有償定期出荷(万件/年、推計) | 価格1出荷当たり売上(万円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 49.1 | 0.60 | 29 | 2 |
| 10 年後 中立 | 59.9 | 0.77 | 46 | 5 |
取り方:FY2026短信のD2C売上29.46億円、部門利益1.86億円が開示値。出荷件数と平均単価は非開示であり、49.1万出荷×6000円の逆算を出発点にする。矢野経済の2025年度国内化粧品市場2.64兆円、経産省2025年化粧品・医薬品ネット通販約1.06兆円に対し単純売上割合は約0.28%。商品が化粧品以外も含まれ、比較は概算。AIエージェント代替の人月・席・広告運用ではなく物販型で、中立数量1.22倍、単価1.28倍とし、広告コストの上昇は利益率に反映する。
ゲームと協業コンテンツ
自社スマートフォンゲームのアイテム課金と、他社IPとの協業によるゲーム制作・運営。
| 数量年間課金利用者相当(万人年、推計) | 価格課金利用者当たり年間売上(万円/人年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 36.0 | 1.07 | 39 | 3 |
| 10 年後 中立 | 25.2 | 1.29 | 32 | 4 |
取り方:FY2026短信のゲーム売上38.58億円、部門利益3.09億円が開示値。実課金者数・ARPPUは非開示のため36万人年×年約1.07万円に換算した仮定。自社作品の海外売上比率は約4割、協業比率約22.6%。国内ゲームコンテンツ市場は2025年2.59兆円(KADOKAWA)だが海外売上を含むため正確な国内シェアは算出できない。AIエージェント代替の人月・席課金型には原則該当せず、既存作品の自然減と協業シェアの伸びで数量を決める。
リスクと懸念
AIエージェント代替と送客の中抜き
比較サイトで人が検索し、複数ページを読み、業者へ見積もりを依頼する工程がAIに代替されると、引越し侍やナビクルが取れる有償送客は減る。工数契約の広告制作・運用は自動化が進み、microCMSなどの画面操作型SaaSは有料ID数と単価に圧力を受ける。中立の数量と10年より先のgに織り込み、同じ理由で資本コストや寿命をさらに悪化させない。
検索広告費と提携先の交渉力
利用者を集める費用はGoogle、Meta、競合比較サイトの入札次第で上がる。一方、引越し業者や中古車買取業者が一件の紹介に払う上限は成約後の粗利益で決まる。売上が伸びても集客費が先に伸びるなら、利益率は改善しない。リード数と広告費率、送客後の成約率を開示していない部分が大きく、決算だけでは見えにくい。
買収100億円計画とのれんの減損
中計期間のM&A投資目標100億円のうち2026年までの実行は33億円であり、残り67億円を2年間で投じる計画だ。対象企業の売上だけを取り込んでも、のれん償却と統合費用を引いた増分利益が資本コストを下回れば株主価値は減る。microCMSやPaddleが好調でも、社別の投下資本利益率と自由現金収支を継続して確認する必要がある。
潜在株式の行使と希薄化
第9回新株予約権と残余CBの株式化で約507万株の増加余地がある。全行使の単純計算では既存株主の会社価値に対する取り分は約78.6%となり、10年後の会社時価総額と還元額をその割合で持ち分換算する。会社にはワラントの払込現金が入るが、その資金を高値のM&Aで消費すれば一株当たりの価値は増えない。
暗号資産関連の会計と利用者への約束
Paddleのポイントを暗号資産へ交換できる仕組みでは、暗号資産価格の下落が販売促進引当金戻入として営業利益を押し上げる一方、資産の評価損として経常利益を下げた。2026年はこの影響が大きく、営業利益が増えたことを収益性改善の証拠と直結させられない。保有暗号資産の流動性と利用者へ払うポイント負債も、資産の床で慎重に処理する。
D2Cの継続率とゲームの旧作減衰
lujoは定期通販で2026年に増収したが、獲得単価、継続率、返品率が悪化すると成長の費用が先に出る。ゲームでは既存タイトルの売上減少を協業IPで補う計画だが、配信プラットフォームの手数料やIP保有者との利益配分もある。どちらも製品需要が実在する一方、現在の販売量を永続させる保証はない。
高い還元方針と資金需要の食い違い
総還元性向100%以上、年間の配当維持、株主優待の継続は既存株主に親しみやすい政策だ。しかし2027年の会社予想純利益3億円に対して配当だけで約5億円を要する。買収投資に資金を回す間に配当や優待を維持しようとすると、手元資金を減らすか、新たな借入・株式発行に依存することになる。
今後の分かれ目
- 引越し侍とナビクルの有料送客件数、単価、成約率が継続開示され、複数年にわたり件数の減少を価格改善で上回ったら
- メディアの価格交渉力を検証し、AI中抜きの数量下落を緩める。利益率と堀の再判定には、流入経路別の獲得費まで確かめる。
- microCMSの有料契約数・年次解約率が明らかになり、解約率5%未満と年単位の移行障壁の双方が確認できたら
- SaaSの一部に記録の正本型の堀を認め、契約数・価格と長期成長率を修正する。それまでは単なる導入企業数の増加を高い倍率の根拠にしない。
- 2028年7月期の営業利益20億円・調整後EBITDA40億円が、買収会計上の一時益を除き達成されたら
- 買収収益の質を検証して中立の営業利益を引き上げる。純利益とキャッシュフローの増加が見えなければ、EBITDA目標の達成だけでは評価を変えない。
- 新株予約権とCBが行使され、既存株主比率の見込みが変わったら
- 潜在株式数と払込・償還額を更新する。発行済株数と希薄化を二度計算せず、株主取り分の係数と資本増強額を同時に直す。
- D2Cの顧客獲得費対生涯粗利益が改善し、定期出荷が2年以上増えたら
- D2Cの数量見通しと粗利から販管費を引いた利益率を引き上げる。化粧品市場の拡大だけでは値決め力は認めない。
- 暗号資産評価損益や販促引当戻入を除いた営業利益が再び赤字になったら
- 資産床の比重を増やし、買収額と配当・優待を資金繰りから再評価する。名目の営業増益が見えても品質の改善とは見なさない。
見ておくもの
- メディア・ソリューションの有償紹介件数、成約率、顧客一件当たり獲得費と紹介単価
- 引越し侍の提携引越会社数、ナビクルの見積利用件数、検索・AI経由の流入構成
- lujoの定期出荷数量、継続顧客の解約率、通販広告費率
- microCMSの有料顧客数・MRR・解約率、PUSH ONEおよびPaddleの買収後利益
- エンタメ既存タイトル売上、協業案件比率、海外売上比率
- 中計2028年の売上340億円・営業利益20億円・調整後EBITDA40億円とM&A投資100億円の進捗
- 転換社債7.5億円の転換、9回新株予約権388.8万株の行使、持分比率
- 優待費用・配当総額・自己株式数の実質変動と税引後フリーキャッシュフロー
- AI直接比較・予約機能の拡大とGoogle検索経由の媒介コスト
倍率と資本コストの決め方
評価対象の営業実績は、添付factsの2025年7月期に加えて2026年9月公表の最新2026年7月期決算で更新した。株価950円と18586116株だけは指定のbasisをそのまま使い、現時点時価総額176.57億円との比較は最後に行った。メディア・ソリューション161.92億円は非開示の内部構成を明示的な推定で分け、AIエージェント代替を法人広告運用・SaaSの数量と長期名目成長率に反映した。倍率は市場のPERやPBRを使わず、資本コスト8.25%、g_long1%、弱い堀で残存超過利益1/3のRONIC式から計算した。中立はROEが資本コスト以下のためPER上限1÷k=12.121倍、悲観は税後換金資産約20億円の床。2026年残存潜在株式が全行使されたときの取り分0.7858を最後に考慮した。2027年4月以後開始年度からの新リース会計適用は表示上の負債を増やしても、家賃費用を織り込む稼ぐ力の評価を自動的には増やさない。概算で10年末価値と還元の現在価値は約66.6億円となり、今より約62%低く、結論は割高である。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に、実績の大きな利益変動と検索広告に対する値決め力の弱さを加え、厚い純現金分を控除して8.25%。個別の買収・暗号資産リスクは確率と筋書きで扱い、追加の困窮プレミアムは課さない。