結論
コロプラは『白猫プロジェクト』『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』などを育ててきたゲーム会社である。筆者の結論は「割高」だ。時価総額約513億円に対し、10年先の事業と株主還元を確率で評価した本質価値は約315億円となり、約39%下回る。
最大の財産は『ドラゴンクエストウォーク』の開発・運営能力と、453億円に達する純現金だ。2025年9月期にはスクウェア・エニックス向け売上だけで約93億円を計上した。位置情報と強い知的財産を結び付ける技術は確かにある。しかし、同作の知的財産はコロプラ自身のものではなく、共同事業の条件に収益が左右される。
もっと気になるのは、かつての成長企業が縮小企業に変わったことだ。2016年9月期に847億円あった売上高は2025年9月期に259億円まで減った。直近では国内タイトルの四半期利用者数が前年同期比で約3割減少している。2025年9月期のゲームを含むエンターテインメント事業は赤字で、連結営業黒字は投資先株式の売却益に支えられていた。
2026年には希望退職104人を実施し、広告費も削減した。収益体質の改善は評価できるが、利用者が戻った証拠とは異なる。ゲーム事業の再成長、新作の成功、余剰現金の株主還元という三つがそろえば価値は大きく上がる。しかし、その同時実現を中立の前提にはできない。現金の厚さだけで割安と判断するのは危険である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に考えるべきことは、コロプラが10年後も利用者に選ばれる作品を作れるかである。『白猫プロジェクト』や『黒猫のウィズ』を生み出した開発力は本物だった。しかし、過去のヒット作品の寿命が長いことと、新しいヒットを繰り返し生み出せることは別の能力である。現在のゲーム本業の収益力を見る限り、その再現性は十分に証明されていない。
良い事業は、稼いだ利益を再投資することでさらに多くの利益を生み出す。コロプラはかつて驚くほど高い収益率を誇ったが、近年は資本を蓄積する一方で利益が縮小している。研究開発や買収、投資育成へ資金を投じても、株主資本の収益率が資本コストを下回るなら、その再投資は価値を増やさない。ゲーム制作に設備は多く要らなくても、人件費と新作の失敗による損失は避けられない。
現金の存在は無視できない。ゲームの長期運営が細っても、現金と投資資産には回収可能な価値が残る。ただし株主が会社に清算や大規模還元を強制できるとは限らない。事業に使われず長く眠る資金と、新作や買収で損失を生む資金を額面どおりに評価するのは慎重さを欠く。
最も魅力的な展開は、既存ゲームの利益を維持しながら新作を当て、余剰現金の還元も増やすことだ。その可能性には価値がある。しかし、実現しなければ事業価値の大部分を現金が支える会社にとどまる。長期保有の安全域は、純現金の大きさだけでなく、それを経営者がどう使うかに左右される。
何で稼ぐ会社か
事業はエンターテインメント事業と投資育成事業の二本立てである。2025年9月期の売上高は前者が232.6億円、後者が26.7億円だった。エンターテインメント事業の中心は国内スマートフォンゲームで、ユーザーがゲーム内のアイテムなどを購入すると収益が生まれる。ゲームの稼ぎは利用者数と利用者当たり課金額によって決まる。
主力の『ドラゴンクエストウォーク』はスクウェア・エニックスが企画・制作を担い、コロプラが開発する。位置情報と国民的なゲームIPを組み合わせた作品であり、長期運営されている。コロプラの決算に計上されるのは収益分配後の金額だ。2025年9月期のスクウェア・エニックス向け売上は連結売上の35.8%を占める。主要タイトルへの集中だけでなく、権利を持つ取引先への依存が大きい。
自社IPでは『白猫プロジェクト』『黒猫のウィズ』『アリス・ギア・アイギス』が長寿作品となった。一度ファンを獲得したゲームは、追加コンテンツやイベントで繰り返し課金される。ただし、運営年数が長くなるほど新鮮さを保つ費用が必要となり、利用者の自然減も避けにくい。新作『神魔狩りのツクヨミ』などで生成AIを取り込む試みはあるが、旧作の減収を埋めるほどの成功はまだ確認できない。
家庭用・PCゲームではMAGES.やエイティング、ピラミッドなどのグループ会社が自社作品と受託開発を手掛ける。『STEINS;GATE』を含む科学アドベンチャー作品の知的財産を活用できる一方、受託開発では顧客から受け取る制作費と投入する人員の差が利益となる。XRやWeb3、ライセンス、物販なども展開しているが、現時点ではゲーム本体を置き換える収益の柱とはいえない。
投資育成事業はコロプラネクストを通じて国内外の未上場企業などに投資し、IPOや株式譲渡によって利益を実現する。2025年9月期はタイミーやBitStarなどの株式売却が寄与した。2026年にはSALOWINの株式を売却している。投資先の成長を収益化できる反面、利益の計上時期は不規則であり、ゲームの継続課金と同じ安定利益としては扱えない。
優良さと弱いところ
コロプラの競争上の強みは、位置情報とゲーム体験を結び付ける開発技術である。『ドラゴンクエストウォーク』を長期に運営してきた実績は、その能力を裏付ける。また、『白猫プロジェクト』などは10年以上の歴史を持ち、既存ユーザーとの関係が残っている。ゲームに費やした時間や収集したアイテム、友人とのつながりは離脱をためらわせる要因となる。
ただし、これらは競争を遮断するほど強い堀ではない。遊ぶ人は複数のゲームを同時に利用でき、新しいヒット作品が出れば時間と課金先を移す。『ドラゴンクエストウォーク』のIPも自社所有ではない。値上げについては課金額の上昇が確認できるものの、利用者数の減少を伴っているため、価格決定力が強まったとは言い切れない。
業績はこの弱さを示している。2025年9月期の自己資本は689億円と厚いが、純利益は赤字だった。過去10年のROE中央値も3.6%にとどまり、株主資本に十分な利益を生み出せていない。かつての高収益期から売上規模が大きく縮小しており、過去の成功をそのまま将来の収益力とみなすことはできない。
財務の安全性は高い。純現金は453億円、自己資本比率は91%であり、新作の失敗が直ちに資金繰り危機へつながる可能性は低い。一方、豊富な現金を使っても新しい収益の柱が育っていない。2026年の人員削減で固定費は軽くなるが、それは競争優位の拡大ではなく収益力を守るための対応でもある。堀は一部タイトルには存在するが、会社全体では弱まっていると判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ゲーム市場全体には成長余地がある。業界資料による2025年の世界ゲームコンテンツ市場は約32兆円、国内市場は約2.6兆円である。国内市場の大部分をモバイルゲームが占めるが、成熟した国内利用者数が長期に大きく増えるとは考えにくい。世界市場が成長しても、国内中心のコロプラが同じ速度で成長する保証はない。
市場で強いのは、知的財産と販売力を併せ持つ企業である。国内モバイルゲームではMIXIの『モンスターストライク』、ソニー系の『Fate/Grand Order』、バンダイナムコの『SDガンダム ジージェネレーション エターナル』、海外勢の『ラストウォー』などが競争相手となる。2025年には『Pokémon TCG Pocket』のような新しい大型作品も上位に現れた。利用時間を奪う競争は国境を越えて激しくなっている。
国内モバイル市場を約1.8兆円とすると、コロプラの2025年9月期国内ゲーム計上売上約174億円は市場の約1%に相当する。ただし、『ドラゴンクエストウォーク』は収益分配後の計上額であり、市場全体の消費額とは定義が異なる。この数字は厳密なシェアではなく、事業規模の目安である。競合各社についても同じ会計基準で比較できるシェアは十分に開示されていない。バンダイナムコは2025年上半期に国内モバイル収益約4億ドルを記録したとの民間推計があり、年間市場を単純比較すると7%前後の規模感になるが、こちらも期間と集計対象の違いに注意が要る。
10年先は市場全体の名目成長のかなりの部分が物価上昇によるものになると考える。コロプラの課題は市場の成長率より、自社タイトルの利用者減少を新作で補えるかである。家庭用・PC市場は世界で伸びる可能性があるが、大型作品では任天堂、ソニー、カプコン、バンダイナムコ、海外の有力スタジオが競う。コロプラの子会社は作品開発の経験を持つものの、世界市場での販売力はまだ小さい。
生成AIは開発費を下げる可能性がある一方、ゲームの供給量を増やし、利用者の注目を獲得する費用を高めるおそれもある。受託開発の一部はAIエージェント代替で工数自体が減る。ガチャ課金の規制、AppleやGoogleの手数料、知的財産の利用条件も収益を左右する。ゲーム市場はなくならないが、コロプラの取り分を守る競争は厳しい。
資本政策と M&A
資本配分には改善の余地が大きい。2025年9月期の純現金は453億円に達するが、営業利益は10億円で純利益は赤字だった。大きな資本を保有しながら、その資本に見合う利益を生み出せていない。余剰資金を低収益のまま抱え続ければ、株主にとっての価値は帳簿上の現金額より小さくなる。
同社は2016年にエイティング、2020年にMAGES.を買収して開発領域を広げた。投資育成ではタイミーやBitStarなどの売却で成果も得ている。しかし、買収や新規投資を重ねてもゲーム本業の売上減少は止まらなかった。今後の投資は規模の拡大より、資本コストを上回る利益を生むかを厳しく問うべきである。2026年10月にはK-POP関連事業を完全子会社CEiRLに承継させる方針を発表したが、連結業績への直接的な影響は軽微と説明している。
中期経営方針ではモバイルゲーム市場の世界上位20社を目指し、売上高1,000億円以上、営業利益500億円以上を目安としている。ただし達成期限や段階別の利益計画は示されていない。ROEの数値目標もなく、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額について固定した数字の約束はない。
株主還元は安定配当を基本とし、直近5期は年間約26億円を配当してきた。利益が小さい年にも配当を維持した点は評価できる。しかし、近年の自社株買いは乏しい。2025年9月期の上位10株主保有比率は約75%で、創業者の保有比率は約48%である。支配の集中と資本還元の実績を踏まえ、手元の余剰現金が全額少数株主へ戻るとは評価しない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
コロプラを過小評価してはいけない。世界でゲーム市場が成長し続けるなか、位置情報と有力IPを組み合わせて長寿作品を生み出してきた実績は貴重である。『ドラゴンクエストウォーク』はその代表であり、開発・運営を担える企業は限られる。既存の長寿タイトルも、競争が激しいスマートフォン市場でファンを維持する技術を示している。
2026年8月時点ではモバイルゲームに5案件、家庭用・PCゲームに9案件の開発パイプラインがある。位置情報ゲームも複数含まれる。これらの一部が成功するだけで、縮小した売上規模からの回復余地は大きい。家庭用ではMAGES.の作品や『白猫』の新しい展開があり、国内モバイルだけに頼らない事業構成への転換も進んでいる。生成AIを新しいゲーム体験に採り入れる試みも、開発力と独創性を示す材料となる。
財務の強さはさらに大きい。純現金453億円は時価総額513億円に近く、ゲーム開発と投資育成の両方に挑戦する余力がある。2026年の費用削減はすでに営業利益改善につながっており、赤字が恒常化すると決め付けるべきではない。投資育成事業でもタイミーやBitStarなどのEXITが実現した。ゲームの再成長と余剰現金の有効活用が進めば、現在の時価総額を大きく上回る価値を生む余地がある。
経営が高い資本効率を目指す方向へ変われば、同社は少額の開発投資から高い収益を生むゲーム企業に戻る可能性がある。過去の成功を知る企業だからこそ、再びヒットを生み出す機会を得る資格は十分にある。
慎重な見方
コロプラの問題はゲーム市場が縮小していることではない。市場が存在し続けているのに、会社自身の売上と利用者が減っていることだ。2016年9月期の売上847億円から2025年9月期の259億円への縮小は、一時的な不況では説明できない。『ドラゴンクエストウォーク』という有力作品があっても、既存ゲーム全体の衰退を止められなかった。
2025年9月期のエンターテインメント事業は営業赤字だった。連結黒字は投資先株式の売却益が支えたものであり、ゲーム事業の収益力回復を意味しない。2026年には104人が希望退職し、広告費の削減も進んだ。固定費削減による利益改善と、利用者が増えることによる利益成長は区別しなければならない。国内ゲームのQAUは直近で大きく減少しており、課金単価の上昇だけで利用者離れを補うのは難しい。
『ドラゴンクエストウォーク』にはIP保有者との収益分配という制約がある。自社IPは長寿だが、会社全体を再成長させる新作が不足している。受託開発ではAIエージェント代替が進み、従来の人員規模を維持する必要性が薄れる。新規ゲームの制作費を抑えられても、同じ技術は競合も利用できるため、長期的な堀が広がるとは限らない。
多額の現金も無条件の価値ではない。創業者の持株比率が高く、少数株主が資本配分を決められない。収益力の低い開発投資や投資育成に資金を使い続ければ、現金は時間とともに減る。毎年配当を払っていても、その額を上回る利益が生まれなければ資本は取り崩される。帳簿上の純資産をそのまま企業価値とみなすのは危うい。
どちらに重みを置いたか
事業の方向性については慎重な見方が優勢である。利用者減少と過去10年の売上縮小は、まだ反転を確認できていない。一方、純現金の厚さと長寿ゲームの存在から、すぐに事業が消えるとは考えない。
上側の確率を28%、下側を40%、中立を32%とした。下に寄せる理由は、既存作品の縮小、新作の不確実性、2026年の事業構造改革がすでに必要になっているという会社固有の事実にある。中立でも低いROEが残るため、10年後の本質価値は現時点の時価総額を下回る。資本還元が本格化するか、次の長寿ヒットが生まれるまでは、現金の多さだけで価値を高く評価できない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 295 円379 億円(+ 還元の換算額還元の合計 166 円213 億円)。 今の値に割り戻すと 245 円315 億円、今との差 −35.0%、 期待の年率 +2.5%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 907 円1,166 億円 | 272 円350 億円 | +212.7% | +14.3% | 106 円136 億円 |
| やや楽観 | 19% | 419 円539 億円 | 218 円280 億円 | +69.0% | +6.7% | 121 円156 億円 |
| 中立 | 32% | 220 円282 億円 | 179 円230 億円 | +5.7% | +0.7% | 128 円164 億円 |
| やや悲観 | 25% | 172 円221 億円 | 124 円160 億円 | −21.5% | −3.0% | 74 円95 億円 |
| 悲観 | 15% | 137 円176 億円 | 78 円100 億円 | −43.1% | −6.5% | 32 円41 億円 |
| 加重平均 | 100% | 295 円379 億円 | 166 円213 億円 | +22.3% | +2.5% | 461 円593 億円 |
今の株価時価総額 377 円485 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 位置情報ゲームの次のヒットをつかむ 利益 85 億円 · PER 12.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 907 円1,166 億円
コロプラは位置情報技術と有力なIPを組み合わせ、新たな長寿ゲームを世界市場で成功させる。『ドラゴンクエストウォーク』の運営実績が次の大型IPとの協業につながり、国内だけでなく海外でも利用者を獲得する。既存作品の減収を新作が補い、会社全体の四半期延べ利用者数は再び増加へ転じる。
家庭用・PCではMAGES.などの作品が海外にも販路を広げ、自社作品の販売本数が増える。受託開発はAIによる効率化を進め、少ない人数で高付加価値の案件を受ける。投資育成でも新しい大型EXITが生まれ、事業投資の回収力が高まる。
新作の利益が開発費を十分に上回るようになり、ゲーム事業の営業利益率はかつての高収益企業に近づく。成功作品からの継続課金が増え、価格よりも作品の魅力で利用者を引き止められる。年間利益の拡大に合わせて配当と自社株買いも増やし、豊富な資本を株主に返す会社へ変わる。
- 国内モバイルゲーム:数量 15.0(国内ゲームQAUの年間四半期延べ人数(百万人・四半期))× 価格 2,550(QAU当たり四半期ARPU(円))→ 売上 383 億円・営業利益 96 億円。国内外の新作ヒットで利用者を回復。ARPUは現在比約1.56倍で、物価上昇に加えて有力IPの課金単価改善を見込む。
- 家庭用・PCゲームの自社作品:数量 12.0(年間発売・販売作品換算数(本))× 価格 7.50(作品当たり平均売上(億円))→ 売上 90 億円・営業利益 16 億円。年12作品換算。海外販売と自社IPの展開で作品当たり売上が伸びる。
- 家庭用・PCゲームの受託開発:数量 18.0(年間受託案件換算数(件))× 価格 1.68(案件当たり平均受託収入(億円))→ 売上 30 億円・営業利益 3 億円。AIエージェント代替を織り込み、案件数量は現在以下。高付加価値案件へ移行する。
- IP・ライセンス・物販・XR・Web3等:数量 50.0(年間のライセンス・イベント・サービス案件換算数(件))× 価格 1.00(案件当たり平均収入(億円))→ 売上 50 億円・営業利益 6 億円。新しいIPの物販、イベント、XRサービスが収益化する。
- 投資育成事業:数量 3.0(年間の大型EXIT案件換算数(件))× 価格 10(EXIT案件当たり売却収入(億円))→ 売上 30 億円・営業利益 8 億円。大型EXITが定期的に発生し、投資元本回収後の利益率も改善する。
倍率:資本コストk=8.25%、事業のROEは約13.3%。弱い堀の持続割合1/3を適用したRONICは約9.94%。長期成長率g=1.5%から、正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)は約12.58倍となる。余剰現金290億円の税後利息相当4.06億円を純利益から外し、残りに正当化PERを適用。現金は戻り方0.5を掛けて145億円を加える。
確率:過去の白猫プロジェクトやドラゴンクエストウォークに匹敵する新しいヒットを複数回生む筋書きである。自社IPと有力他社IPの双方で成功する必要があり、実現時の価値は大きいが、現在の新作実績から成功確率は限定的とした。
やや楽観 19% 新作が既存作品の衰退を補う 利益 37 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 419 円539 億円
『ドラゴンクエストウォーク』の収益が緩やかに低下しても、新しい位置情報ゲームや自社IPの作品が利用者を補う。大きな世界的ヒットには届かないが、国内ゲーム会社として安定した新作供給を取り戻す。過去のような極端な高収益ではなく、収益力のある中堅ゲーム会社へ立て直される。
MAGES.の科学アドベンチャー作品や『白猫』の家庭用展開が販売先を広げる。ゲーム制作のAI活用により開発費の一部を抑えられ、発売作品数も増える。ただし受託開発ではAIエージェント代替が進み、案件数の増加は見込まない。
投資育成のEXITは続くものの、大型案件が毎年続くとは期待しない。固定費改革の成果が定着し、広告費や外注費を抑えながら営業利益を生み出す。経営が配当を維持し、利益の一部を成長投資に回すことで、資本の厚さと事業の収益力が釣り合い始める。
- 国内モバイルゲーム:数量 10.0(国内ゲームQAUの年間四半期延べ人数(百万人・四半期))× 価格 2,300(QAU当たり四半期ARPU(円))→ 売上 230 億円・営業利益 39 億円。新作が旧作の減少を補う。ARPUは名目で上昇するが楽観ほどの単価改善はない。
- 家庭用・PCゲームの自社作品:数量 8.0(年間発売・販売作品換算数(本))× 価格 6.20(作品当たり平均売上(億円))→ 売上 50 億円・営業利益 6 億円。年間8作品換算で、海外販売と既存IPの多面展開が進む。
- 家庭用・PCゲームの受託開発:数量 17.0(年間受託案件換算数(件))× 価格 1.68(案件当たり平均受託収入(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替で案件数は現在の85%に減るが、効率化で利益率は改善する。
- IP・ライセンス・物販・XR・Web3等:数量 35.0(年間のライセンス・イベント・サービス案件換算数(件))× 価格 0.85(案件当たり平均収入(億円))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。IP関連のイベント、物販とXRの収益が伸びる。
- 投資育成事業:数量 2.0(年間の大型EXIT案件換算数(件))× 価格 9.00(EXIT案件当たり売却収入(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 4 億円。年2件程度のEXIT。2025年の大型売却より収益は小さい。
倍率:ROEは約6.1%で資本コスト8.25%を下回る。超過収益を長期に生む段階ではないため、正当化PERの上限は1/k=12.12倍。純利益37.4億円から余剰現金260億円の税後利息3.64億円を除き、事業利益に倍率を適用する。現金の評価130億円を加える。
確率:複数ある新作開発案件の一部が成功し、既存タイトルの減収を補う展開である。過去の開発力とIP協業の実績から可能性は十分あるが、海外での継続的な成功までを当然視しない。
中立 32% 既存IPが細る中で新作と家庭用が補完 利益 17 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 220 円282 億円
『ドラゴンクエストウォーク』は一定の利用者を保つものの、運営年数の経過と新しい競合作品の登場で収益が徐々に減る。『白猫プロジェクト』や『黒猫のウィズ』も熱心なファンが残るが、利用者数の減少は止まらない。新作は断続的に発売されるものの、大型の長寿作品を安定して生み出す段階には至らない。
国内ゲームの年間四半期延べ利用者は約680万人となる。課金単価は物価並みに上がるが、ユーザーの減少を完全には埋められない。家庭用・PCゲームは自社作品の発売を増やす一方、受託制作ではAIエージェントによる作業の置き換えが進み、案件換算数量が縮小する。
投資育成では少数のEXITが続くものの、2025年のような大きな売却益は毎年生じない。2026年の人員削減と広告費の見直しによる固定費改革は定着する。営業利益は回復しても自己資本に比べれば小さく、ROEは資本コストを下回る。配当は現金を使いながら維持するが、大規模な自社株買いは実施されず、余剰資本の多さが残る。
- 国内モバイルゲーム:数量 6.8(国内ゲームQAUの年間四半期延べ人数(百万人・四半期))× 価格 2,185(QAU当たり四半期ARPU(円))→ 売上 149 億円・営業利益 14 億円。QAUは2025年比約36%減。ARPUは物価3%を反映し10年で約1.34倍。
- 家庭用・PCゲームの自社作品:数量 6.0(年間発売・販売作品換算数(本))× 価格 5.36(作品当たり平均売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。家庭用・PCの自社作品が増えるが、大型ヒットの常態化は見込まない。
- 家庭用・PCゲームの受託開発:数量 13.0(年間受託案件換算数(件))× 価格 1.68(案件当たり平均受託収入(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替により案件換算数量は現在の65%、価格は物価に沿う1.34倍。
- IP・ライセンス・物販・XR・Web3等:数量 28.0(年間のライセンス・イベント・サービス案件換算数(件))× 価格 0.77(案件当たり平均収入(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。ライセンス・物販は残るが、XRやWeb3の収益化は限定的。
- 投資育成事業:数量 2.0(年間の大型EXIT案件換算数(件))× 価格 7.50(EXIT案件当たり売却収入(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。年2件のEXIT換算。大型の上場益を恒常利益にしない。
倍率:中立のROEは約3.1%で資本コスト8.25%を大きく下回る。再投資による超過利益を見込まず、PER上限は1/k=12.12倍とする。純利益17.3億円には金利上昇による金融収益が含まれるため、余剰現金220億円の税後利息3.08億円を差し引いた事業利益を用いる。現金価値110億円を加算する。
確率:国内ゲームQAUの減少、既存タイトルの長期運営、新作5案件の開発パイプライン、2026年の費用削減を組み合わせた中心的な見通しである。大型ヒットも事業消滅も前提とせず、収益力が低いまま事業を継続する可能性を重く見た。
やや悲観 25% 既存タイトルの減収を新作が補えない 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 172 円221 億円
『ドラゴンクエストウォーク』の利用者が想定より早く減少し、スクウェア・エニックスとの協業収益が縮む。自社の長寿タイトルも課金者の減少を止められない。新作は発売されるが、既存ゲームから流出する利用者を奪い返すほどの支持を得られない。
家庭用・PCでは自社タイトルの販売規模が小さく、開発費を十分に回収できない作品が増える。受託開発は生成AIやAIエージェントによって工数が削減され、従来の制作単価を維持しても受注量が減る。外部顧客の内製化も進み、子会社の稼働率が低下する。
投資育成では売却先が見つかりにくくなり、投資先の評価損が発生する。固定費をさらに削っても売上の減少に追い付かず、ゲーム本業は赤字となる。金融収益が営業損失を補うが、資本は減少する。配当は現金残高を見ながら段階的に縮小され、会社は規模の小さなゲーム事業と投資資産を抱える企業になる。
- 国内モバイルゲーム:数量 4.6(国内ゲームQAUの年間四半期延べ人数(百万人・四半期))× 価格 1,850(QAU当たり四半期ARPU(円))→ 売上 85 億円・営業利益 −4 億円。QAUは2025年比約57%減。課金単価は物価を下回る伸びにとどまる。
- 家庭用・PCゲームの自社作品:数量 3.0(年間発売・販売作品換算数(本))× 価格 5.10(作品当たり平均売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 −1 億円。開発費回収が難しくなり、発売作品数も減少する。
- 家庭用・PCゲームの受託開発:数量 10.0(年間受託案件換算数(件))× 価格 1.55(案件当たり平均受託収入(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替と顧客内製化で数量が半減する。
- IP・ライセンス・物販・XR・Web3等:数量 20.0(年間のライセンス・イベント・サービス案件換算数(件))× 価格 0.70(案件当たり平均収入(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 −1 億円。新規サービスの利用が広がらず、固定的な開発・運営費が残る。
- 投資育成事業:数量 1.0(年間の大型EXIT案件換算数(件))× 価格 5.00(EXIT案件当たり売却収入(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 −1 億円。EXITは少数となり、保有案件の評価損が利益を圧迫する。
倍率:事業の収益力だけでは企業価値の下支えを十分に説明できないため、現在の自己資本689.3億円を基準とする資産評価を用いる。10年間の累計利益をほぼゼロ、還元160億円と見込んだ後の現金と投資資産を考慮する。現金残額約300億円のうち株主への帰属を半分程度と見て、さらに回収可能な投資資産約55億円を加えた床を約205億円とする。PBR0.32倍による約221億円はこの床を上回る。将来自己資本を床の倍率の分母には用いない。
確率:2025年9月期までの売上縮小、2026年のQAU減少、希望退職の実施という実際の状況が延長する筋書きである。下に寄せる理由:長期の売上減少がすでに起きており、利益回復の中心が利用者増加ではなく費用削減であるため、回復失敗の確率をやや高くした。
悲観 15% ゲームの競争力を失い現金も減る 利益 −8 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 137 円176 億円
『ドラゴンクエストウォーク』の収益が大きく減る。新しい位置情報ゲームは競合の『Pokémon GO』や『モンスターハンターNow』などとの差別化に失敗し、世界市場でも支持を得られない。長寿の自社タイトルは熱心な利用者を残すものの、企業全体を支える収益規模ではなくなる。
制作費を回収できない新作が続き、ゲーム開発事業の優良さは失われる。家庭用作品の販売量が減り、受託制作もAIエージェント代替と顧客の内製化で案件が減る。XRやWeb3の投資も十分な顧客を獲得できず、サービスの縮小や撤退を繰り返す。
投資育成では一部の保有株式の価値が失われ、大型EXITも生まれない。営業赤字が長期化し、配当を減らしても現金が流出する。会社は事業規模を大幅に縮小するが、借入が小さいため倒産には直結しない。最終的な価値の中心はゲームの利益ではなく、取り崩されずに残った現金と処分できる投資資産になる。少数株主にその全額が戻るとは想定しない。
- 国内モバイルゲーム:数量 2.5(国内ゲームQAUの年間四半期延べ人数(百万人・四半期))× 価格 1,450(QAU当たり四半期ARPU(円))→ 売上 36 億円・営業利益 −5 億円。主力作品の衰退が進み、QAUは現在の約4分の1まで減少する。課金単価にも値下げ圧力が及ぶ。
- 家庭用・PCゲームの自社作品:数量 1.0(年間発売・販売作品換算数(本))× 価格 3.00(作品当たり平均売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 −1 億円。自社作品は小規模な発売に限られ、開発費を回収できない。
- 家庭用・PCゲームの受託開発:数量 6.0(年間受託案件換算数(件))× 価格 1.30(案件当たり平均受託収入(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 −1 億円。AIエージェント代替と発注企業の内製化で案件換算数量が70%減る。
- IP・ライセンス・物販・XR・Web3等:数量 10.0(年間のライセンス・イベント・サービス案件換算数(件))× 価格 0.50(案件当たり平均収入(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 −1 億円。新領域の多くから撤退し、わずかなライセンス収入が残る。
- 投資育成事業:数量 1.0(年間の大型EXIT案件換算数(件))× 価格 3.00(EXIT案件当たり売却収入(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 −3 億円。少額のEXITしかできず、残る投資先の損失負担が続く。
倍率:継続的な営業損失で収益価値が低下しているため、現在の自己資本689.3億円を基準に売却可能資産の価値を検討する。10年間の累計損失を約150億円、累計還元を100億円、投資資産等の減損を別途約39億円とすることで将来自己資本は約400億円となる。純現金の取り崩し後に残る流動性と投資資産の回収価値を合わせた床は約165億円。PBR0.255倍の約176億円はこの床を上回り、過去の市場PBRは根拠としていない。
確率:既存IPの衰退、新作不振、他社IP契約の条件悪化、投資損失が重なる構造的な負け筋である。単一タイトルへの依存、利用者減少と資本効率の低さが確認できるため、財務が健全でも無視できない確率とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内モバイルゲーム
ドラゴンクエストウォーク、白猫プロジェクト、黒猫のウィズ、アリス・ギア・アイギスなど。国内ゲーム利用者数と四半期当たり課金額が収益を決める。
| 数量国内ゲームQAUの年間四半期延べ人数(百万人・四半期) | 価格QAU当たり四半期ARPU(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 10.7 | 1,630 | 174 | 6 |
| 10 年後 中立 | 6.8 | 2,185 | 149 | 14 |
取り方:2026年9月期第3四半期決算説明資料35ページの国内QAUとARPUから積算。2025年9月期の四半期QAUは275.8万人、290.4万人、256.0万人、247.9万人で合計1,070.1万人・四半期。各四半期のARPUは1,378円、1,843円、1,379円、1,921円で、QAU加重平均は約1,630円。両者を掛けると約174.45億円となる。QAUは課金者だけでなく所定条件でゲームを起動した利用者数である。ドラゴンクエストウォークの売上は収益分配後の純額計上。営業利益6億円は会社がモバイル単独で開示しないため推定配賦であり、エンターテインメント事業全体の営業損失1.8億円に合うよう他の事業費用も配賦した。2026年9月期第3四半期のQAUは182.6万人、ARPUは1,786円で、利用者減少が進んでいる。国内モバイル市場は約1.8兆円で、当社計上売上はその約1%の規模だが、収益認識の違いから厳密なシェアではない。市場資料:https://www.lab-kadokawa.com/release/detail.php?id=0388
家庭用・PCゲームの自社作品
MAGES.の科学アドベンチャー作品、白猫IPの家庭用展開など。発売作品の本数と作品当たり販売収益で稼ぐ。
| 数量年間発売・販売作品換算数(本) | 価格作品当たり平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 4.0 | 4.00 | 16 | −3 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 5.36 | 32 | 2 |
取り方:会社が開示する家庭用・PCゲーム売上は自社作品と受託開発の合算である。2025年9月期の四半期資料と2026年9月期第3四半期資料の売上推移から家庭用・PC全体を年間約41億円と推定し、そのうち自社作品を16億円とした。年間4作品相当、平均4億円は売上からの推計で、発売本数の確定開示ではない。2026年8月時点で家庭用・PCの開発パイプラインは9件と開示されているが、案件がすべて同じ年度に発売されるわけではない。営業損益も内訳非開示のため推定である。
家庭用・PCゲームの受託開発
エイティングやピラミッドなどの受託制作。発注企業から受け取る開発対価と開発人員・外注費との差が利益となる。
| 数量年間受託案件換算数(件) | 価格案件当たり平均受託収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 20.0 | 1.25 | 25 | 1 |
| 10 年後 中立 | 13.0 | 1.68 | 22 | 1 |
取り方:家庭用・PC売上約41億円のうち受託開発を25億円と推定する。受託と自社販売の内訳、受託件数、単価は会社が開示していない。子会社の受託開発事業の存在と、決算説明資料で受託開発が自社パイプラインの件数から除外されることを確認し、年間20案件換算、平均1.25億円とした仮定である。契約件数そのものが確認できたわけではない。AIエージェント代替の対象はこの人月・工数型の部分であり、中立の案件換算数量は現在の65%、価格は物価相当の1.34倍を上限とする。
IP・ライセンス・物販・XR・Web3等
ゲームIPのライセンス、グッズ、イベント、位置情報サービス、XRやWeb3関連事業など。案件・イベント数と収益単価で稼ぐ。
| 数量年間のライセンス・イベント・サービス案件換算数(件) | 価格案件当たり平均収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 30.0 | 0.57 | 17 | −5 |
| 10 年後 中立 | 28.0 | 0.77 | 22 | 0 |
取り方:エンターテインメント事業232.64億円から国内モバイル約174.45億円、家庭用・PC約41億円を引いた17.19億円を、ライセンス、物販、XR、Web3等の残額と推定した。案件数は非開示のため30件換算、平均0.573億円とした。2026年9月期第3四半期資料ではWeb3、ライセンス・XR等を売上区分として確認できる。XR制作の人手作業にはAIエージェント代替を考慮するが、実物イベント・物販は同じ割合で減らさず、事業全体の数量に反映した。
投資育成事業
国内外の未上場企業などに投資し、IPO、株式譲渡、その他のEXITで収益を実現する。売却件数と一件当たり売却収入が売上を決める。
| 数量年間の大型EXIT案件換算数(件) | 価格EXIT案件当たり売却収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 2.0 | 13 | 27 | 12 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 7.50 | 15 | 2 |
取り方:2025年9月期の有価証券報告書による投資育成売上26.68億円、営業利益11.80億円を使用する。タイミー、BitStarなどの売却が寄与しているが、売却先ごとの収入は非開示である。大型EXITを年2件に換算し、平均13.34億円とした推定単位であり、実際の売却件数や単価を意味しない。2026年6月末の営業投資有価証券残高は約88億円。今後の売却額は元本の回収を含むため、売却額全体を利益として扱わない。国内スタートアップ市場の年間資金調達額は約7,600億円だが、新規投資額と既存株式の売却収入は定義が違い、この比較から市場シェアは求められない。市場資料:https://initial.inc/articles/japan-startup-finance-2025
リスクと懸念
ドラゴンクエストウォークへの依存
2025年9月期のスクウェア・エニックス向け売上は連結売上の35.8%を占めた。ドラゴンクエストウォークが長く運営されることは強みだが、コロプラはIPの所有者ではない。ユーザーの減少、開発・運営契約の変更、収益分配条件の悪化が同時に発生すれば、会社の収益力は大きく低下する。契約の詳細な収益条件は開示されていないため、そのリスクを小さいとは評価できない。
国内ゲーム利用者の構造的な減少
2025年9月期の国内QAUは年間四半期延べ約1,070万人だったが、2026年9月期第3四半期には単四半期で約183万人まで減った。新作を出しても既存タイトルの利用者減少が続けば、販売促進費を抑えて利益を確保する状態から抜け出せない。ARPUの上昇が一部の熱心な利用者への依存を強めている場合、残る利用者が離れた際の影響はさらに大きくなる。
AIエージェント代替と生成AIによる競争激化
エイティングなどの受託開発では、人月や制作工数の一部がAIエージェントに置き換わる。発注企業が開発の一部を内製化すれば、従来の案件規模と単価を維持しにくくなる。中立では受託案件換算数量を10年で現在の65%とした。自社ゲームは直接エージェントに置き換わるサービスではないが、生成AIによって新作の供給が増え、利用者を獲得する競争が激しくなる。
余剰現金の資本配分
純現金453億円は時価総額の約88%に相当する。しかし、直近のROEは低く、余剰資本が十分な収益を生んでいない。創業者の株式保有比率が高いため、少数株主が現金の配分を直接決めることはできない。大型の買収、新しいゲーム開発、投資育成で資本を失えば、純現金による下支えも弱まる。配当と自社株買いによる実際の還元が、企業価値評価の大きな分かれ目となる。
投資育成利益の再現性と資産価値
2025年9月期の連結黒字を支えた投資育成事業の利益は、投資先株式の売却による影響が大きい。市場環境が悪化すればEXITの延期、売却価格の低下、保有株式の減損が起きる。営業投資有価証券を現金同等物として評価することはできない。また、投資先の売却益を利益として評価し、同じ投資資産を余剰現金にも加える二重計上を避ける必要がある。
課金規制・プラットフォーム依存・知的財産
国内外の課金規制や未成年者保護の強化は、ゲーム内課金額を引き下げる可能性がある。AppleとGoogleの決済条件が変われば、販売利益やユーザー獲得の採算も変わる。さらに、ゲームの操作方法や技術の利用に関する知的財産の問題も重要である。コロプラは過去に任天堂との白猫プロジェクト関連特許訴訟で和解した経緯があり、新しい技術を使う際の法的な確認を軽視できない。
人員削減による開発能力の低下
2026年の希望退職者は104人となった。固定費を減らすことは当面の利益改善に役立つが、優秀な開発者が流出すれば長期的な新作創出力を損なう。外注費を削減しても、それによって発売遅延や品質低下が生じれば、将来の利用者数をさらに減らす。短期利益率の改善だけで改革を成功と評価せず、発売作品の品質、ヒット率、長期運営への影響を確認する必要がある。
今後の分かれ目
- 国内ゲームQAUが四半期230万人以上に回復し、それが4四半期続いたら
- 新作が既存作品の利用者減少を補う証拠となる。中立のモバイル数量を上方修正し、やや楽観の確率を引き上げる。
- スクウェア・エニックス向け売上の減少が継続し、他のタイトルが補えなかったら
- ドラゴンクエストウォーク依存の収益基盤が崩れる。中立の営業利益を下げ、やや悲観と悲観の比重を高める。
- 新作の位置情報ゲームが国内外で長期ヒットとなり、複数年の継続課金を確認できたら
- 位置情報技術を再び事業の堀として評価できる。利用者数、利益率、長期成長率を見直し、楽観側の価値を引き上げる。
- 余剰資本から大規模な自社株買いまたは増配が実施されたら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.5から0.75または1.0へ見直す。事業の成長がなくても本質価値の改善要因となる。
- 投資育成事業で大型EXITが連続したら
- 投資先売却益の一過性と継続性を区別したうえで年間利益を見直す。ただし投資元本の回収を営業利益と混同しない。
- 家庭用・PC受託開発の売上が大きく落ち、開発人員の稼働率も下がったら
- AIエージェント代替と顧客内製化の影響が想定以上に進んだと判断する。受託事業の案件数量と利益率を引き下げ、悲観側へ重みを移す。
- 2026年の費用削減後もゲーム事業が継続して営業黒字を確保したら
- 固定費改革の持続性を評価する。ただしQAUが減少したままなら高い長期成長率を与えず、利益率の改善だけを反映する。
見ておくもの
- 国内ゲームQAUとARPUの四半期推移。特にQAUの減少が止まるか
- ドラゴンクエストウォークの売上推移とスクウェア・エニックス向け売上比率
- モバイルゲーム開発5案件、家庭用・PC開発9案件の発売状況とヒット率
- エンターテインメント事業の営業利益率と、広告宣伝費・人件費削減後の持続性
- 家庭用・PCの自社作品と受託開発の売上構成、受託案件数と開発稼働率
- 投資育成事業のEXIT件数、営業投資有価証券残高、減損と売却利益
- 現金及び預金、純現金残高、配当総額、自社株買いの実績
- 創業者の持株比率と資本政策、DOEや総還元性向の数値目標の新設
- 有力IPとの新規提携、海外向け位置情報ゲームの展開、CEiRLの収益化
- ゲーム開発への生成AI導入が原価率と品質に与える影響
倍率と資本コストの決め方
本質価値は現在の時価総額513億円から逆算していない。2025年9月期の国内ゲームQAUとARPU、家庭用・PCの開発案件、ライセンス等、投資育成のEXITを分け、数量と価格から10年後の売上と利益を求めた。モバイル利用者の減少は数量側へ、物価3%は原則として価格側へ反映した。受託開発にはAIエージェント代替を明示的に織り込み、数量と長期成長率で評価した。資本コストは8.25%、弱い堀の持続割合は1/3とし、利益が資本コストに届かない中立ではPERを1/kの12.12倍とした。余剰現金350億円は事業利益から金利収益を分離して評価し、株主への戻り方0.5を適用した。悲観は過去のPBRではなく、将来の現金残高と売却可能資産を床とした。2025年の減価償却費は約2.3億円であり、10年後も既存設備の償却に一律1.34倍を掛けない。設備更新分の償却費が加わる一方、開発設備への投資資金は現金から流出する。新リース会計基準による表示変更が起きても、価値は従来と同じ賃借費用を含む損益構造で比較する。10年先の期待本質価値は約315億円、現時点の時価総額との差は約-38.6%であり、判定は割高となる。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、事業の質の調整+0.75%を加えた8.25%とする。純現金が豊富なため経営存続の危機を想定した追加上乗せは設けない。ガンホーに近い資本コストとするが、カプコンやコナミより高いのは、独自IPの継続的な収益化と値決め力が弱いためである。