結論
エルテスは、企業の内部不正とSNS上の炎上を監視し、施設・イベントの警備まで扱う企業である。筆者の結論は割高だ。内部脅威を見張るIRIには確かな強みがあるが、買収で広げた周辺事業と借入の後始末が重く、長く持つ株主に十分な安全域はない。
IRIは特定の国内市場でシェア34.5%を持ち、月次解約率も低い。大企業が情報持ち出しを検知し、調査可能な証拠を残す需要は10年後も消えないだろう。膨大な監視ログから得る行動データは、価格を守る土台になる。ただし同じ会社のSNS監視・調査報告やSESは、人の工数をAIエージェントが奪う側でもある。AIに恩恵があるから全事業が伸びると考えるのは危険だ。
2026年には旧自治体DX会社の売却を実行し、次の3年間で利益率12%以上、自己資本比率40%以上、株主還元5億円を掲げた。方向は正しい。だが、2期続けて最終赤字となった歴史と、純有利子負債が自己資本を超えた貸借対照表から、計画の全面達成を既定にはできない。5つの筋書きからみる本質価値は、基準時価総額約46億円を大きく下回る。低い評価は小型株だからではなく、10年先に利益を手元に残せるかという事業上の判断による。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、まず10年後も顧客が料金を払う理由が残るかを問う。従業員が顧客情報を持ち出す、SNS上の誤情報が企業を傷つけるという問題はなくならない。IRIは膨大なログと不正行動の履歴を持ち、企業の内部調査という責任の重い仕事を支える。低解約率もある。この部分は単なる人月商売より価値が高い。
しかしオーナー利益は、セグメント利益の合計ではない。専門家の採用、警備員の賃金、不動産在庫の仕入れ、借金の利払い、本社の管理費を支払った後に残る現金である。過去の大型減損を見る限り、買収に投じた資本が十分な利益を生んだとはまだ言えない。事業売却が進むほど売上の見栄えは悪くなるが、現金が増え、固定費が減り、追加増資を避けられるなら長期株主には好ましい。
もっとも、AIエージェントは監視結果の要約、定型の危機対応、自治体向けの開発や物件管理事務を直接代替する。会社の「AIを使う」という説明だけで、他社がその仕事を自動化する危険が消えるわけではない。監視データの実力に惹かれても、連結の収益性が事業の分かりやすさに追いつくまでは、未来の改善を前払いしてはいけない。筆者にとって現在の最大の懸念は、将来の優良企業を買うつもりが、過去の買収の損失まで引き受けてしまう点だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの芯はデジタルセキュリティである。IRIは企業内のログを常時解析し、情報の持ち出しや不自然な行動を検知する。SNS領域では企業の評判を監視し、炎上対応やAI利用のルール策定を支える。2026年2月期の同事業売上は約27億円で、連結売上の約3割を占める。内部脅威の監視は継続契約で積み上がるが、SNS対策には調査員やコンサルタントの作業が多く、同じ継続課金でも競争条件は異なる。
フィジカルセキュリティは警備員を現場に送り、AIKなどを通じて他社の警備員も全国で手配する。406人の警備員と数百社の取引先警備会社が2026年2月末の実績であり、マイガードプロは全国イベントを一括で請ける仕組みだ。人を派遣するため賃金と採用が原価を決める。警備DXのシステムは手配を速めるが、実際の警備員の仕事まで代替するものではない。
買収したSES・自治体DXとスマートシティの不動産管理も売上の大きな部分を占めた。旧DX推進事業では稼働113人月と187自治体が会社開示の数量の手掛かりになるが、2026年にJAPANDX等を売却し、残りも売る方向へ転じている。不動産事業では賃貸管理の継続収入と売買の一時収入が混在する。売上が大きくても、仲介や売買には在庫と借入が必要だ。複数事業の売上を足すだけでは、オーナーの稼ぎを見誤る。
優良さと弱いところ
一番の堀、つまり他社が容易には奪えない強みは、IRIの監視データと既存顧客との結び付きである。会社資料には年間5605億件を超えるログと1万を超える不正行動の型が示され、月次解約率は過去12か月平均で0.44%だった。ITRの定義するUEBA運用監視サービス市場でも2024年度のシェアは首位だった。この2つの実証された特徴に限り、独自データ型の防衛力を認められる。ただしログの所有・移転条件、顧客の長期単価改定実績までは開示されず、完全な独占とは言えない。
全社に同じ堀があるわけではない。SNSの報告書作成はAIで内製しやすく、警備員の派遣は地方の人材確保力と現場の責任が主役になる。不動産管理やSESも価格を上げれば競合に仕事を奪われる。連結の高いセグメント利益の多くは管理費控除前であり、2026年2月期は全社費用約6億円を引くと営業利益は約4億円にとどまった。
資本効率も厳しく見るべきだ。買収後に売上は増えたが、2025年2月期は大きな減損で純損失を出し、翌期も最終赤字だった。増分の投下資本が資本コストを超えて稼いだ証拠には乏しい。非コア売却と費用削減は正しい方向だが、経営陣は長年かけて買った事業を売り直している最中である。今後の利益率改善を、そのまま持続的な経営手腕の証明にしてはならない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
内部脅威監視は国内セキュリティ市場の中でも小さく、伸びる専門領域である。ITR調査による2024年度のUEBA運用監視サービス市場は26.4億円で、同社は34.5%、2位13.6%、3位7.6%だった。定義の狭い分野での首位は重要だが、国内サイバーセキュリティ全体の首位という意味ではない。Microsoft、CrowdStrike、Splunkを含む大手がログ監視と自動対応を統合すれば、監視ソフトを別に契約する理由が弱まる。10年先は市場の需要増加と契約ID当たり単価の低下が両立しうる。
SNSリスク監視の顧客は300社超と会社が示すが、業界共通の市場規模とシェアは開示されていない。アディッシュやイー・ガーディアンなどの監視・運用事業者、企業内広報部門、汎用AIエージェントが競争相手となる。2026年10月に結んだX社との直接契約は情報取得の安定に役立つが、恒久的な独占供給権や大幅値上げを保証する材料ではない。
警備業界は経済産業省が紹介する2024年の調査で約3.4兆円の売上規模だ。旧AIセキュリティ売上約22億円は全体の約0.07%であり、全国の圧倒的シェアとは言えない。他方で、多数の中小警備会社を束ねる全国手配には需要がある。警備員の高齢化と人手不足は受注単価を押し上げる半面、採用費も上げる。スマートシティの賃貸管理は国内の大きな賃貸住宅市場が需要の土台だが、同社の実際の管理戸数が非開示なので、正確なシェアは不明である。
資本政策と M&A
資本配分は、拡大から撤退へ大きく変わった。会社は過去に9社のM&Aを行ったが、2025年2月期の減損と2期連続の最終赤字は、利益を上回る価格で買う危険を示した。2026年4月にJAPANDXと子会社を売却し、残るDX関連2社の売却も進める。2026年8月末の純負債は決算期末より減ったが、経営側が目指すネットキャッシュ化は完了した事実ではない。
2027年2月期から2029年2月期の経営計画は、2029年の営業利益9億円、営業利益率12%以上、自己資本比率40%以上を目標に掲げる。売上高の独立した数値目標は置かず、利益率と財務の質を重視する。2026年6月には株主優待、配当、自社株買いを合わせた3年間の総額約5億円、総還元性向約40%、新株発行の3年間停止を明示した。株主優待は2027年2月末から半年保有を条件とする年2回のデジタルギフトで、800株以上なら年間2万円相当となる。
一方、2026年8月に約86万株分の新株予約権を消却・失効させても、約44万株分は残る。会社は残りを現時点で無償消却する予定はないと説明した。将来の行使による既存株主の取り分減少を評価に含める。株主に現金を約束したことは前進だが、借入を返し、安定した収益を得て初めて実行可能になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
IRIには、単にSNSを監視するだけの会社にはない蓄積がある。年間5605億件以上のログと膨大な不正兆候の学習履歴、月次0.44%の低解約率が組み合わされば、大企業にとって切り替えの負担は小さくない。情報持ち出しの検知には誤警報の削減と社内調査の説明可能性が要る。AIが普及すると社内データを扱う主体が増え、監視対象も変化するため、危険を検知する専門業者の価値はむしろ高まる。ITRが定義した専門市場では2位以下を引き離す首位であり、値引き競争だけで地位が崩れるとは限らない。
SNSの監視でも、X社からの直接データ取得は情報欠落の減少と迅速な警報につながる。顧客が欲しいのは報告書の量ではなく、炎上や不正行為を未然に防ぐ判断だ。監視結果を使って法務・広報と連携できれば、AIエージェントが前処理を代替しても高付加価値の契約は残る。警備では多数の協力会社を束ねる網とマイガードプロを組み合わせ、複数都市のイベントを一括受託できる。人手不足はサービス需要を消すのではなく、信頼できる手配者の価値を高める可能性がある。
さらにJAPANDX等の売却はすでに一部実行された。残りの非コア事業からも撤退し、2029年の利益率目標を達成すれば、過去のように売上を追う組織ではなくなる。3年間5億円の株主還元、追加増資停止、予約権86万株の消却は、以前より株主の持分を意識する動きだ。再編をやり切れば、買収で失った信用が時間とともに回復しうる。
慎重な見方
信頼できる監視データがあることと、そこから長く超過利益を生めることは違う。IRIは高い市場シェアを持つが、調査対象のUEBA運用監視市場は2024年度で26.4億円という小さな市場だ。Microsoftなどがエンドポイント監視に異常行動分析を組み込み、顧客企業が自社のAIエージェントで警報から報告まで処理できれば、別契約の高い単価を守れなくなる。解約率も永遠に低いとは限らない。データの蓄積は強みでも、その使い道が規制や顧客の同意に制約される可能性がある。
SNS監視はもっと厳しい。大量の投稿を抽出し要約して顧客に知らせる工程はAIの得意分野であり、報告書の量に比例する契約の価値は細る。2026年のX社との提携もデータの取得先の変更であり、エルテスだけがXの情報を独占できるとは書かれていない。警備の現場は残るが、賃金上昇、請負単価の改定遅れ、協力警備会社との競争で薄利になりやすい。不動産売買と管理は、事業に見える売上以上に在庫と資金繰りへの注意を要する。
一番の問題は経営者の資本配分だ。かつて買収で多角化した事業を減損し、今度は売却している。売却益の見通しと長期の増分利益率は、まだ実現していない。借金と残存のれんがある会社で株主優待を厚くすることが、最善の投資といえるかも分からない。営業利益が過去最高になっても純利益は赤字という状態から抜け出さなければ、10年先の事業価値より金融負担が優先される。
どちらに重みを置いたか
内部不正対策の独自データ、低解約率、市場首位という証拠では強い見方に分がある。一方、持株会社全体では売却中の非コア事業が大きく、過去の減損と純負債の大きさが確実性を損なう。AI代替は数量と10年後以降の成長率に反映済みであり、確率には重ねていない。下側を41%、上側を29%としたのは、売却遅延と買収の後始末という会社固有の不確実性が残るためだ。中立で営業利益が回復しても、現在の時価総額には達しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 589 円36 億円(+ 還元の換算額還元の合計 167 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 358 円22 億円、今との差 −43.6%、 期待の年率 +2.0%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 1,536 円95 億円 | 363 円22 億円 | +199.5% | +13.3% | 209 円13 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,099 円68 億円 | 257 円16 億円 | +113.8% | +8.9% | 244 円15 億円 |
| 中立 | 30% | 679 円42 億円 | 181 円11 億円 | +35.7% | +3.5% | 258 円16 億円 |
| やや悲観 | 27% | 66 円4 億円 | 89 円6 億円 | −75.5% | −16.7% | 42 円3 億円 |
| 悲観 | 14% | 3 円0 億円 | 21 円1 億円 | −96.2% | −38.7% | 3 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 589 円36 億円 | 167 円10 億円 | +19.3% | +2.0% | 756 円47 億円 |
今の株価時価総額 634 円39 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 高収益の核が残り、再編が利益になる 利益 8 億円 · PER 11.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,536 円95 億円
非中核事業の売却が相応の現金を生み、借入の返済が進む。社内にあった重複管理業務が消え、エルテスは内部不正対策と全国警備手配に集中する。IRIは監視対象のID数を現状規模で維持し、過去の行動データを生かして異常検知の精度を磨く。X社との直接契約でSNS情報取得は安定し、危機対応や監査を含む高単価の助言が顧客企業に残る。
警備DXでは協力会社網を活用し、全国一括手配を必要とする大型顧客を獲得する。イベントと施設警備の量が増え、シフト調整業務の効率化で利益率も改善する。生成AIによる自動報告が普及しても、説明責任を伴う監視と現場警備には専門業者が残る。残った不動産管理会社も契約数を守り、少数の売買を慎重に行う。高い利益が買収損失の穴埋めでなく株主還元に向かう10年となる。
- 内部脅威検知IRI:数量 297,000(監視する従業員ID数(ID))× 価格 0.47(1ID当たり年間請求額(万円/ID・年))→ 売上 14 億円・営業利益 6 億円。独自ログ基盤の監視対象数は現状を維持し、規制対応・検知精度に見合う更新価格を獲得
- SNSリスク監視・AIガバナンス:数量 310(監視・助言契約を持つ企業数(社))× 価格 737(1社当たり年間売上(万円/社・年))→ 売上 23 億円・営業利益 9 億円。人手型のため契約件数の成長は認めず、危機対応の成果で単価を守る
- フィジカルセキュリティ・警備DX:数量 550(警備員稼働人員換算(人))× 価格 750(警備員1人・年換算の売上(万円/人・年))→ 売上 41 億円・営業利益 4 億円。全国の連携網を使いイベント・施設警備を拡大
- DX受託開発・SES(売却対象):数量 0.0(年間稼働人月(人月))× 価格 107(1人月当たり売上高(万円/人月))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。残余子会社を売却し連結外
- 自治体DX・行政サービス(売却対象):数量 0.0(自治体の年間顧客数(自治体))× 価格 704(1自治体当たり年間請求額(万円/自治体・年))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。2026年4月にJAPANDX等の売却実行済み
- 不動産管理・その他継続役務:数量 600(管理オーナー等の契約換算数(件))× 価格 268(1件当たり年間受託収入(万円/件・年))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。契約を維持して管理の高度化が進む
- スマートシティ・不動産売買:数量 4.0(大型不動産成約の年間件数換算(件))× 価格 3.23(1成約当たり売上高(億円/件))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。売買を絞りつつ選別案件で利益を得る
倍率:資本コストk=9.0%、長期名目成長g=0.5%、連結全体は強い堀でなく通常(新規投資の超過利益が半減)。2036年のROE=16.26%からRONIC=12.63%、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=11.2990倍の上限そのもの。AIエージェント代替を10年間の数量・価格とgに織り込んだため、kの寿命で二重控除しない。現金は連結で純負債なので加算せず、事業純利益に掛ける。
確率:下に寄せる全体配分の中では小さな上振れ枠とする。旧事業を高く売り、内部脅威監視の契約の質と警備配車の規模がともに改善する必要がある。
やや楽観 18% 監視サービスの粘りと警備の拡大 利益 6 億円 · PER 11.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,099 円68 億円
デジタルリスクは大手企業の情報持ち出し対策に定着し、蓄積したログと検知技術が既存顧客の更新を支える。IRIの分析IDは一時的に増えても、10年後には自動化・ID課金の再設計で現状をやや下回る。売上の成長は契約当たりの付加価値と新しい調査メニューが主役になる。SNS監視はX社との直接契約を生かし、より深いリスク分析と個別対応を売ることで単価を保つ。
フィジカルセキュリティでは警備員の採用と協力会社の配車網が効き、案件数が増える。非コアDX会社の売却で売上の見栄えは一度落ちるが、利益率は改善する。スマートシティは不動産管理を継続し、物件売買の量を追い過ぎない。2029年に掲げる営業利益率の改善が完全ではないにせよ着実に進み、借入依存が薄れる10年を想定する。
- 内部脅威検知IRI:数量 285,000(監視する従業員ID数(ID))× 価格 0.46(1ID当たり年間請求額(万円/ID・年))→ 売上 13 億円・営業利益 6 億円。一時増加しても10年後はAIによる管理ID縮小を織り込み、単価は物価以下
- SNSリスク監視・AIガバナンス:数量 270(監視・助言契約を持つ企業数(社))× 価格 715(1社当たり年間売上(万円/社・年))→ 売上 19 億円・営業利益 7 億円。個別対応とX直接契約のメリットで更新を維持
- フィジカルセキュリティ・警備DX:数量 500(警備員稼働人員換算(人))× 価格 728(警備員1人・年換算の売上(万円/人・年))→ 売上 36 億円・営業利益 3 億円。警備員と外部手配網の実需を取り込む
- DX受託開発・SES(売却対象):数量 0.0(年間稼働人月(人月))× 価格 107(1人月当たり売上高(万円/人月))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。残余会社の売却完了
- 自治体DX・行政サービス(売却対象):数量 0.0(自治体の年間顧客数(自治体))× 価格 704(1自治体当たり年間請求額(万円/自治体・年))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。連結除外済み
- 不動産管理・その他継続役務:数量 540(管理オーナー等の契約換算数(件))× 価格 268(1件当たり年間受託収入(万円/件・年))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。一部解約しつつ現場管理の実需が残る
- スマートシティ・不動産売買:数量 4.0(大型不動産成約の年間件数換算(件))× 価格 3.14(1成約当たり売上高(億円/件))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。大型売買案件が順調に成立
倍率:資本コストk=9.0%、長期名目成長g=0.5%、連結全体は強い堀でなく通常(新規投資の超過利益が半減)。2036年のROE=12.96%からRONIC=10.98%、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=11.2290倍の上限そのもの。AIエージェント代替を10年間の数量・価格とgに織り込んだため、kの寿命で二重控除しない。現金は連結で純負債なので加算せず、事業純利益に掛ける。
確率:デジタルセキュリティの継続課金には根拠があるものの、警備員不足とAIエージェントによる監視・報告の自動化が同時に進むため、実現可能性を楽観ほどには見ない。
中立 30% コアの堀は部分的に残るが、人手業務の単価は伸び悩む 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 679 円42 億円
エルテスは数年かけて買収で広げた事業を整理し、セキュリティ中心の会社に戻る。IRIでは企業の不正防止や証拠保全という必要性が続く。対象ID数は現状よりやや減るが、監視データの蓄積と低い解約率を根拠に、急激な顧客離反は避けられる。SNS監視とAIガバナンス助言は顧客の自社エージェントに一部を奪われ、人手で分析し報告する契約数が減る。
警備の現場では人員配置と事故時の責任を外部の専門業者に任せる需要が残る。全国手配サービスの数量は緩やかに増えるが、人手不足による賃金上昇で高い利益率にはならない。SESや自治体DXは売却して連結収益から消え、不動産管理は事務作業の効率化競争で縮む。共通費の削減で営業利益は維持・改善しても、買収前のような無借金の高収益企業には簡単には戻らない。
- 内部脅威検知IRI:数量 267,300(監視する従業員ID数(ID))× 価格 0.44(1ID当たり年間請求額(万円/ID・年))→ 売上 12 億円・営業利益 5 億円。独自DB・低解約率の型。ID0.90倍、年額1.25倍
- SNSリスク監視・AIガバナンス:数量 211(監視・助言契約を持つ企業数(社))× 価格 671(1社当たり年間売上(万円/社・年))→ 売上 14 億円・営業利益 5 億円。AIエージェント代替の人月・分析報告型。契約0.68倍、単価1.22倍
- フィジカルセキュリティ・警備DX:数量 455(警備員稼働人員換算(人))× 価格 717(警備員1人・年換算の売上(万円/人・年))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。現場の体として数量1.12倍、賃金連動の単価1.31倍
- DX受託開発・SES(売却対象):数量 0.0(年間稼働人月(人月))× 価格 107(1人月当たり売上高(万円/人月))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売却完了で連結対象外。人月型の事業拡大を残さない
- 自治体DX・行政サービス(売却対象):数量 0.0(自治体の年間顧客数(自治体))× 価格 704(1自治体当たり年間請求額(万円/自治体・年))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。実行済みカーブアウト、2036年売上ゼロ
- 不動産管理・その他継続役務:数量 438(管理オーナー等の契約換算数(件))× 価格 268(1件当たり年間受託収入(万円/件・年))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替のBPO型。受託口数0.73倍、請求額1.34倍
- スマートシティ・不動産売買:数量 3.0(大型不動産成約の年間件数換算(件))× 価格 3.02(1成約当たり売上高(億円/件))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。大型案件年3件換算、値上がりは原価上昇と相殺
倍率:資本コストk=9.0%、長期名目成長g=0.5%、連結全体は強い堀でなく通常(新規投資の超過利益が半減)。2036年のROE=9.39%からRONIC=9.20%、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=11.1251倍の上限そのもの。AIエージェント代替を10年間の数量・価格とgに織り込んだため、kの寿命で二重控除しない。現金は連結で純負債なので加算せず、事業純利益に掛ける。
確率:中心の見立てとし、IRIの低解約率・独自データは評価する。ただし受託型の監視と物件管理の仕事量を過去の売上成長から外挿せず、2026年以降の組織再編による固定費削減だけを具体的な改善要因とする。
やや悲観 27% 売却の後も収益の薄さが残る 利益 0 億円 · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 66 円4 億円
新規のIRI契約が伸びず、既存企業は監視対象の範囲を狭める。低解約率は足場になるが、Microsoftなどの横断セキュリティ製品やAI運用支援の大手との価格競争が強まる。X社との提携によるSNS投稿データの取得も競争力の決め手にならず、監視契約の更新額が減る。大口顧客で予算を失うと、専門担当者の固定費が重くなる。
フィジカルセキュリティは大型イベントの発注が減り、派遣元の警備員確保にも苦戦する。売却予定のSES子会社が一部残り、短納期の開発受託を安く請けるため赤字を出す。スマートシティの不動産管理は省力化が進まず、空室や売買停滞の影響を受ける。業務量が落ちても最低限の持株会社費用は残り、利益はわずかになる。高い利回りの再投資先が見つからず、追加買収を控えることが傷を広げない条件となる。
- 内部脅威検知IRI:数量 225,000(監視する従業員ID数(ID))× 価格 0.39(1ID当たり年間請求額(万円/ID・年))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。ID縮小と値上げ不発で採算が悪化
- SNSリスク監視・AIガバナンス:数量 160(監視・助言契約を持つ企業数(社))× 価格 621(1社当たり年間売上(万円/社・年))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。エージェント内製化と大口契約の失注
- フィジカルセキュリティ・警備DX:数量 400(警備員稼働人員換算(人))× 価格 684(警備員1人・年換算の売上(万円/人・年))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。採用難と低採算案件への偏り
- DX受託開発・SES(売却対象):数量 300(年間稼働人月(人月))× 価格 92(1人月当たり売上高(万円/人月))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。売却できない部分に300人月の赤字稼働が残る
- 自治体DX・行政サービス(売却対象):数量 0.0(自治体の年間顧客数(自治体))× 価格 704(1自治体当たり年間請求額(万円/自治体・年))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売却済みで連結除外のまま
- 不動産管理・その他継続役務:数量 360(管理オーナー等の契約換算数(件))× 価格 250(1件当たり年間受託収入(万円/件・年))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。管理契約減少で採算低下
- スマートシティ・不動産売買:数量 2.0(大型不動産成約の年間件数換算(件))× 価格 2.77(1成約当たり売上高(億円/件))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。買い手不足で年2件にとどまる
倍率:2036年ROE1.12%はk9.0%を下回るため成長に超過価値がなく、上限1/k=11.11倍。固定費と競争劣位が残る側の稼ぐ力をPER9.0倍で評価し、純利益0.30億×9.0=2.70億円。足元株価や過去PBRは使わない。純現金なし、換金資産の税後価値の床0億円を上回る。
確率:下に寄せる理由:過去の9社買収、減損、2026年2月期の純負債19億円と自己資本18億円という財務構造から、売却が予定どおり進まない会社固有の危険を重く見る。AI縮小分は数量に反映済み。
悲観 14% 技術代替と失敗した多角化が重なる 利益 −5 億円 · PBR 0.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3 円0 億円
競争の中心が、ログ収集・異常検知・調査報告をまとめて実行する汎用AIエージェントと大手セキュリティ基盤へ移る。IRIが持つ学習用データの価値は残るが、顧客の利用ログは他社にも蓄積し、独自技術の優位が狭まる。分析するID数はほぼ半減し、価格改定も進まない。SNS上の危機対応は顧客が自社で実施するようになり、監視契約の大半が失われる。
警備DXは協力会社の囲い込みに失敗し、大型案件を低い利幅で受託する。施設での警備員配置自体は消えないが、買収して得た人員を維持できなくなる。さらに売却できなかった開発子会社の赤字、不動産関連の評価損、借入の返済負担が重なる。経営陣は追加増資の回避を最優先し、株主還元は既存優待の一部に限られる。会社が消滅すると決め付けるのではなく、普通株主に残る事業価値がほぼ消える筋書きだ。
- 内部脅威検知IRI:数量 148,500(監視する従業員ID数(ID))× 価格 0.35(1ID当たり年間請求額(万円/ID・年))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。高いシェアを失い、ID数半減。標準化したログ分析に置換
- SNSリスク監視・AIガバナンス:数量 90.0(監視・助言契約を持つ企業数(社))× 価格 550(1社当たり年間売上(万円/社・年))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。顧客の内製化と価格破壊で相談業務が崩れる
- フィジカルセキュリティ・警備DX:数量 300(警備員稼働人員換算(人))× 価格 602(警備員1人・年換算の売上(万円/人・年))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。全国配車優位を失い、人員流出と赤字受注
- DX受託開発・SES(売却対象):数量 450(年間稼働人月(人月))× 価格 88(1人月当たり売上高(万円/人月))→ 売上 4 億円・営業利益 −1 億円。高額売却できず450人月分の低採算開発が残る
- 自治体DX・行政サービス(売却対象):数量 0.0(自治体の年間顧客数(自治体))× 価格 704(1自治体当たり年間請求額(万円/自治体・年))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売却済みで連結除外のまま
- 不動産管理・その他継続役務:数量 240(管理オーナー等の契約換算数(件))× 価格 216(1件当たり年間受託収入(万円/件・年))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。問い合わせや管理事務の内製・自動化で大きく縮む
- スマートシティ・不動産売買:数量 1.0(大型不動産成約の年間件数換算(件))× 価格 2.17(1成約当たり売上高(億円/件))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。高金利と在庫損で売却1件、収支赤字
倍率:2036年の純利益がマイナス4.8億円と赤字のため、正の純利益にPERを掛ける方法は使えない。事業の継続的な収益価値はほぼ失われ、負債全額を控除した換金可能資産にも残余価値がない。ただし法的倒産や清算を確定させる筋書きではなく、IRIの独自データ、警備の取引先網、将来の事業再建や事業売却によって普通株式にごく小さな価値が残る可能性を認める。そこでPBRを正の0.01倍とし、2026年2月期の自己資本18.2億円に掛けた0.182億円を残余の株主価値とする。2036年の自己資本9.9億円や過去の市場PBRを床の基準には使わない。売れる資産の税後価値0億円も下回らない。
確率:下に寄せる理由:AIによる報告業務の自動化に加え、過去の減損実績、のれんの多さ、現金より大きい借入、子会社を高く売れない危険が重なる構造的敗北を想定する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
内部脅威検知IRI
企業の操作ログ・通信ログを解析し、従業員や外部協力者の不正兆候を監視する継続契約。
| 数量監視する従業員ID数(ID) | 価格1ID当たり年間請求額(万円/ID・年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 297,000 | 0.35 | 10 | 4 |
| 10 年後 中立 | 267,300 | 0.44 | 12 | 5 |
取り方:2026年2月末の29.7万IDは会社開示。2025年12月の会社資料が2026/02期IRI売上約10.40億円を見込むため、これを部門推計額とし、1ID年約3502円と逆算した。部門の最終実売上は独立開示されず推定値。ITR調査の2024年度UEBA運用監視市場26.4億円×同社34.5%=9.11億円とも概ね整合。AIエージェント代替:独自DB型(2016年から蓄積した年間5605億件以上のログと1万超の挙動パターン、過去12か月平均月次解約率0.44%)と認め、中立ID0.90倍、価格1.25倍。
SNSリスク監視・AIガバナンス
SNS投稿の監視、炎上予兆の検知、危機対応・情報戦対応・生成AI利用のガバナンス助言を提供する。
| 数量監視・助言契約を持つ企業数(社) | 価格1社当たり年間売上(万円/社・年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 310 | 550 | 17 | 6 |
| 10 年後 中立 | 211 | 671 | 14 | 5 |
取り方:デジタルセキュリティ実売上27.44億円からIRI推計10.40億円を差し引いて17.04億円。会社資料はSNSリスク対策の顧客が300社超と述べる。310社を契約母数の概算とし、1社年約550万円の請求額とした。案件の単価分布、AIガバナンス提供額は非開示。AIエージェント代替:分析報告・人的監視・コンサル工数型と判断。中立案件数0.68倍、1契約単価1.22倍で、規模成長やAIによる大幅値上げを織り込まない。
フィジカルセキュリティ・警備DX
施設・イベントなどで実際の警備員を配置し、AIK Orderやマイガードプロで全国の委託先を手配する。
| 数量警備員稼働人員換算(人) | 価格警備員1人・年換算の売上(万円/人・年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 406 | 547 | 22 | 0 |
| 10 年後 中立 | 455 | 717 | 33 | 2 |
取り方:2026年2月末の警備員数406人、取引する警備会社382社が会社開示。旧AIセキュリティセグメント売上22.22億円を406人で割った換算単価約547万円/人年。外注警備員手配・システム利用料も含むため純粋な従業員労務単価ではない。現場人員はAI代替の人月・SaaS縮小表の対象外、ただし事務手配はエージェントへ移り、利益率と受注手数料の引下げ圧力に反映。
DX受託開発・SES(売却対象)
企業向けの技術者常駐とラボ型開発。JAPANDXなどの売却後に残る子会社の処分が課題となる。
| 数量年間稼働人月(人月) | 価格1人月当たり売上高(万円/人月) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1,356 | 80 | 11 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 107 | 0 | 0 |
取り方:2026年2月末のSES月間稼働113人月×12=1356人月を会社開示から作成。業界の一般的な開発者派遣・受託単価を月80万円と仮定して10.848億円と推計し、残額は自治体DXへ割当。請求単価は同社が公表しておらず仮定。AIエージェント代替:人月型で中立継続なら0.55~0.75倍、価格は1.34倍以下だが、本評価は2026年に進行する売却完遂を中立とし2036年は連結外の0人月。売却失敗側のみ人月を残す。
自治体DX・行政サービス(売却対象)
自治体向けDX-Pandoなど窓口・申請・住民向け業務の開発と運用を担ってきた。
| 数量自治体の年間顧客数(自治体) | 価格1自治体当たり年間請求額(万円/自治体・年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 187 | 525 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 704 | 0 | 0 |
取り方:会社開示の取引自治体数187を使用。旧DX推進事業売上20.67億円からSES推定10.848億円を引いた9.822億円を配賦し、年約525万円/自治体と推計。自治体ごとの額は開示されていないため、単価は概算。AIエージェント代替:公的機関向け受託・操作画面型で、事業を継続するなら工数の長期減少対象。ただし2026年4月にJAPANDXと子会社の売却が成立し、2036年は5筋書きとも連結対象外。
不動産管理・その他継続役務
賃貸・施設等の管理、修繕手配、利用者対応を受託し継続報酬を受け取る。
| 数量管理オーナー等の契約換算数(件) | 価格1件当たり年間受託収入(万円/件・年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 600 | 200 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 438 | 268 | 12 | 1 |
取り方:2026年2月末のスマートシティ事業MRR100.1百万円は開示値で、年換算12.012億円。契約数が未開示のため、管理物件単位でなく複数戸のオーナー等の管理契約を月約16.7万円と仮定して600件換算、年200.2万円とした。実契約件数ではない点が重要。AIエージェント代替:事務・問い合わせのBPO型部分が相応にあるため、中立継続契約を0.73倍、年単価を1.34倍と厳しく評価。建物での現場作業は残る。
スマートシティ・不動産売買
賃貸用不動産の売却や仲介・再販に伴う非継続の取引収益。
| 数量大型不動産成約の年間件数換算(件) | 価格1成約当たり売上高(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 3.0 | 2.41 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 3.02 | 9 | 0 |
取り方:会社は2026年2月期第4四半期の不動産売買3件を公表。旧スマートシティ総売上20.52億円のうち、経常管理収入12.012億円を控除し、旧セグメント間取引の調整1.27億円を保守的に売買側から除いた外部売上7.238億円を、年間大型案件3件相当に換算した。第3四半期にも不動産売却があり、正確な年間成約件数・単価ではない。実需に伴う不動産取引としてAIエージェント代替の工数・席型には該当せず、金利上昇と物件価格の変動で減速させた。
リスクと懸念
AI エージェント代替
SNS監視、調査報告、AIガバナンスの助言、SES、物件管理事務はAIエージェントが直接行える仕事が多い。IRIは低解約率と独自ログで相対的に守られるが、既存のID課金や監視の契約範囲は縮みうる。中立の数量減少を既に織り込み、資本コストで同じ危険をさらに加点していない。
売却・資本配分の実行
過去9社のM&A、のれんの減損、多角化の巻き戻しが続く。2026年のJAPANDX売却は進展だが、残る会社の売却価格、残存債務、本社費の削減が不透明だ。過去の投資を元に戻すだけでは価値は増えず、売却後に増分ROICが9%を超えるかを見る必要がある。
借入と無形資産の薄い床
2026年2月期末は純有利子負債19億円、自己資本約18億円で、財務の余裕は薄かった。2026年8月末の債務圧縮は好材料だが、のれん約12億円は売却時に簿価どおり回収できない。清算を想定した保守的な資産回収額は総負債を下回り、悲観側で帳簿の純資産を株主価値の床にできない。
SNS情報源と価格決定力
X社との2026年10月の直接契約は情報取得の安定を改善するが、同社の利用規約、データ提供価格、競合への提供条件に依存する。API利用料が上がる一方で顧客が自社で監視できるようになると、売上の継続性は高くても営業利益が削られる。契約継続率と契約当たり売上を分けて追う。
警備の人手不足と売上の質
警備員が不足し高齢化する中、全国で案件を受けられても原価としての賃金は上がる。警備員人員換算の売上が増えても、外注比率が上がると利益率が下がる可能性がある。AIKの手配網は武器だが、セコム、ALSOK、地域警備会社から案件を恒常的に奪える保証はない。
株主還元の約束と予約権
新たな3年間5億円の還元方針と増資停止は前進だが、利益と現金が伴わなければ実行額は小さくなる。2026年8月に86万株の潜在株式を解消した一方、グロースパートナーズ投資組合などに約44万株の予約権が残る。強気・中立では行使時の既存株主の持分低下も加味した。
今後の分かれ目
- IRIの分析ID数が2029年2月期の45万ID目標を達成し、解約率が月0.44%以下で保たれたら
- IRIの数量減少見通しを見直す。顧客が契約を切り替えにくい実証が増えた分だけ、中立の利益と長期の成長余地を上げる。
- AIガバナンスの有償導入が2029年までに200社を超え、契約売上の内訳も公表されたら
- 人月型から成果・独自データ型への移行を検証し、実収益が確認できた部分に限りAIエージェントで伸びる筋書きを採り入れる。
- 残るDX子会社の売却が完了し、純有利子負債がゼロ以下になったら
- 財務の耐久力を評価し直す。売却代金が返済に使われ、関連する本社費も削減されたなら、悲観の床と中立の純利益を改める。
- 2029年2月期に営業利益9億円・営業利益率12%以上・自己資本比率40%以上を同時に達成したら
- 固定費削減と継続事業の資本効率改善が確認されたとして、利益率の上側を中心に再評価する。非経常の売却益だけでは達成とみなさない。
- フィジカルセキュリティが2期連続で営業利益率5%を超え、全国手配契約が増えたら
- 現場要員と配車網を同時に維持できるとみて、警備の利益率前提と楽観側の重みを上げる。
- 追加の大型減損・新株発行、またはIRIの継続契約数の明確な減少が起きたら
- 過去のM&Aの資本回収失敗や独自データの堀の侵食として、やや悲観・悲観側に移す。優待を増やした事実だけでは埋め合わせにしない。
見ておくもの
- IRI分析ID数(2026/02末29.7万、2026/08末29.3万)と月次解約率、ARRの推移
- デジタルセキュリティの調整後利益率と全社管理費の削減額
- 旧DX子会社の売却条件・連結除外と売却後の純有利子負債
- 全国警備会社ネットワークの案件数・警備員数・フィジカル警備粗利率
- 2029年2月期の営業利益9億円、利益率12%、自己資本比率40%
- 2029年までの総額5億円の還元実績、残存約44万株予約権の行使と自己株買い
倍率と資本コストの決め方
今の株価747円、株数618万3257株から時価総額約46.19億円を機械的に算出しただけで、売上・利益率・確率の入力には使っていない。国内の専門市場や実際のID、取引企業、警備員、稼働人月を数量側に置き、物価は価格側だけに反映した。公表のないSRの実単価、管理受託件数、売買単価は仮定であり、IRが未公表の単位を事実のように装っていない。中立の人月・監視型はAIエージェント代替の縮小、IRI独自データ型は低解約率を踏まえた縮小に分けた。PERは株価や同業の市場倍率ではなく、k9.0%、g0.5%、長期再投資利回りの式で決めた。悲観ではのれん・繰延税金資産を売れる資産と数えず、実際の負債全額を控除した。赤字の悲観でも、法的倒産を確定させない限り残存事業に再建の可能性があるため、今の自己資本に対するPBR0.01倍の正の価値を残した。2027年4月以降開始年度の新リース会計基準による表示の変更は事業価値の増加とはみなさず、家賃は現金費用として保った。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%+株式リスクプレミアム4.5%の7.5%を基礎とし、利益の振れ+0.5%と過去の借金負担+1.0%から9.0%とする。個別のM&A失敗や希薄化リスクはシナリオ・既存株主の取り分で扱い、資本コストには上乗せしない。事業は営業黒字で直近中間決算に継続企業の前提に関する注記がないため、事業存続の危機としてのextraは0%。