結論
システナは、車載ソフトの開発、金融・公共向けの開発、法人向けIT機器とクラウドの販売を手がける中堅のIT会社だ。筆者の結論は割高で、利益の6割を稼ぐ車載ソフトの開発が技術者の時間で売る仕事で、完成車メーカーの内製化とAIエージェントの両方に挟まれることが理由だ。
次世代モビリティを含む「その他」は、車の電子化で需要が強いので、数量は今の0.74倍と人月型の中では軽めにした。金融・公共向けのIT&DXは0.68倍。法人向けの機器・クラウド販売は、直販とAIの中抜きで価格が物価に届かず、数量0.80倍・価格1.08倍とした。
中立の売上は今の0.89倍の839億円、純利益は92億円。余った現金150億円は戻り方5割で足した。資本コストは6.75%、本質価値は1,637億円に対して818億円で、差は-50%。やや悲観と悲観の確率は40%。配当性向を60%以上へ引き上げても、利益の柱が細る流れは変わらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、システナはいまの利益水準が長く続くかを問われる会社だ。
事業は分かりやすい。技術者が働き、顧客が対価を払う。再投資は少なく、稼いだ利益の多くを配当に回せる。純現金も厚い。オーナーとして持つなら、居心地の悪い会社ではない。
ただし、筆者が気にするのは堀の薄さだ。利益の6割を稼ぐモビリティは、完成車メーカー数社の発注に左右される。顧客が内製へ舵を切れば、数年で利益の土台が動く。ここが、NRIのような共同利用型システムの会社との決定的な違いだ。
経営の資本の使い方は、悪くない。借金をせず、現金を積み、最近は還元を厚くした。ただし、創業家系が3割を握る構造では、少数株主の利益がいつも優先されるとは限らない。
安全域の目で見ると、利益が過去最高の水準にある点が引っかかる。山の利益に高い倍率を掛けることはしない。10年で測ると、今の値段とほぼ釣り合う。安全域は厚くない。わかりにくい部分、つまりモビリティの利益の持続性は、確信度を下げて見ている。
何で稼ぐ会社か
システナの事業は3つのセグメントに分かれる。
ビジネスソリューションは売上356億円で、法人向けのIT機器・クラウドの販売、導入支援、ECサイトの運営などを行う。モノを扱うため売上は大きいが、利益率は8%ほどと薄い。
IT&DXサービスは売上219億円で、企業のシステム開発や運用を受ける。利益率は14%で、金融分野への依存を減らし、公共・法人へ顧客を広げている最中だ。
「その他」は売上370億円・利益93億円で、全社の利益の6割を稼ぐ。ここに次世代モビリティ事業が入る。携帯電話の開発で磨いた手法を、自動車のソフト開発に持ち込んだ事業で、国内の完成車メーカーをほぼ網羅する。2026年3月期の9カ月で、モビリティの売上は55億円、営業利益は23億円と、利益率が4割を超える。米国子会社の車載コクピット開発と、通信機器子会社を合わせて再編した。
連結の従業員は約5,900人で、単体は約4,200人だ。技術者を客先に出す契約と、成果物を納める契約が混ざる。顧客は自動車・金融・公共・一般企業と広いが、「その他」の利益への集中度は高い。
中期経営計画(2029年3月期)は、売上1,200億円・営業利益201億円を掲げる。柱は、モビリティの競争力、AI関連とストック型の拡大、人材投資の3つだ。
優良さと弱いところ
システナの強みは、技術者を集める力と、車載ソフトの開発という成長領域に早く入ったことだ。携帯電話の時代から培ったアプリ開発の経験が、SDV(ソフトウェアで性能を決める自動車)の開発で役に立っている。ROEは過去10年の中央値で21%、直近は29%と高い。
ただし、筆者はこれを強い堀とは見ない。堀とは、他社がまねできない強みのことだ。システナの売上の中心は、人の力で稼ぐ開発で、同業のTIS・SCSK・BIPROGYとも競い合う。NRIの共同利用型システムのような、顧客が乗り換えられない仕組みは持たない。モビリティも、顧客の完成車メーカーが方針を変えれば、受注は動く。
財務は堅い。自己資本比率は65%で、純現金が282億円ある。借金で成長した会社ではないので、倒産の心配はほぼない。
弱点は3つある。第1に、利益がモビリティに偏っていること。第2に、同業に比べて規模が小さく、大手の案件を主契約で取りにくいこと。第3に、創業家系の持ち株会社が約3割を握り、少数株主の声が経営に届きにくいことだ。M&Aの実績は海外の車載ソフトが中心で、まだ大きな失敗は表に出ていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のITサービス市場は年6%前後で伸びる。レガシーシステムの刷新、データ活用、AI実装が牽引役で、IT人材の不足から人月単価も物価を上回って上がりやすい。システナのような中堅の開発会社には、追い風の環境だ。
自動車向けは、さらに速く伸びている。SDV化で、車の価値の源がハードからソフトへ移るためだ。完成車メーカーは、ソフト人材を社内外で大量に必要としている。システナはその外部の受け皿として、受注を増やしてきた。
一方で、逆風もある。完成車メーカーが自社内にソフト子会社を持つ動きは、外部の開発会社の取り分を減らしうる。受注が後ろ倒しになる局面も、すでに出ている。
生成AIの影響は読みにくい。開発の工数が減れば、人月単価の前提が崩れる。逆に、AIで高度な案件が増え、単価が上がる可能性もある。システナはAI関連事業とストック型収益を、中期計画の柱に据えた。
競争は分散的だ。大手はNRI・SCSK・TIS、中堅はDTS・フューチャー・NSD・JBCCなどが並び、価格を決める力は緩やかに強まっている。景気後退では、新規開発の先送りで稼働率が落ちやすい。2008〜2009年のSI業界では、営業利益が3〜5割落ちた例がある。システナの利益率は、いまが過去最高の水準にある。
【AIエージェント代替】車載ソフトの需要は伸びても、外注の人月は内製化とAIで減る。システナは中立で売上が今の0.89倍とみた。
資本政策と M&A
還元は明確に厚くなる。2026年3月期の配当性向は44%だったが、2027年3月期は60%を超える予想だ。性向の目標も40%から60%以上へ引き上げた。自社株買いは直近の期でゼロである。
筆者は、この変化を前向きに評価する。ただし、過去5年は還元性向が4割前後にとどまり、純現金は10年で積み上がった。創業家系の持ち株会社が約3割を持つため、方針が戻ることはありうる。余った現金を全額、株主のものとは見ない。
業績連動型の有償ストックオプション(発行済株式の5%)も決めた。経営陣に、業績への強い動機を持たせる仕組みだ。ただし、行使されれば株数が増える。
M&Aは、海外の車載ソフト会社と通信機器会社が主な実績だ。今回の中期計画に、大型のM&Aの記載は確認できなかった。買う側としては、技術者の確保が目的になるだろう。
買われる側の可能性もゼロではない。創業家が3割を持つので、同意なしの買収は難しい。この点は、TOBで価値が出る余地が小さいことを意味する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
車載ソフトの需要は、10年単位で続く構造的な波だ。自動車は、ソフトで性能と価値が決まる時代に入った。完成車メーカーは、必要なソフト技術者を自社だけでは集められない。国内の完成車メーカーをほぼ網羅するシステナは、その外部の受け皿として、最も有利な位置にいる。
実績も裏付ける。2026年3月期の売上は前期比13%増、営業利益は27%増だった。モビリティ事業の利益率は4割を超え、全社の利益率を押し上げている。2027年3月期の第1四半期も、営業利益は14%増だ。
中期計画は、2029年3月期に売上1,200億円・営業利益201億円を掲げる。過去の計画は達成してきた実績がある。
さらに、AI関連事業とストック型収益が育てば、利益の質が上がる。ビジネスソリューションのクラウドや保守は、積み上げ型で景気に強い。
資本政策も追い風だ。配当性向の目標を60%以上へ引き上げたことで、純現金は株主に戻りやすくなる。純現金が時価総額の17%ある会社が、還元を厚くする。この組み合わせは、見えにくいが大きい。
10年後も人手不足は続き、単価は物価を上回りうる。強気の見方では、売上は10年で2倍に迫る。
慎重な見方
いまの利益は、山の水準にある。営業利益率16%台は、過去10年の中で最高だ。2015年3月期は6%だった。この利益率が10年続く前提で値段を付けるのは危うい。
利益の6割は、「その他」セグメントが稼ぐ。ここには自動車向けの開発が入る。顧客は完成車メーカーなど少数で、発注の先送りは、すでに起きている。完成車メーカーが自前のソフト部隊を強めれば、外部の取り分は減る。
生成AIは、技術者の人数と単価で積み上げる商売を直撃する。開発の工数が減れば、同じ成果物の対価が下がる。中堅の開発会社は、大手より単価を守る力が弱い。NRIのように顧客の基幹システムを握っているわけではない。
創業家系が約3割を持つ構造も気になる。還元を厚くすると言っても、方針は経営の裁量で変わりうる。ストックオプションの行使で、株数も増える。
さらに、中堅の技術者派遣に近い型の会社は、景気後退で稼働率が落ち、利益が3〜5割落ちる。いまの利益を基準にすれば、下振れの深さを見誤る。
どちらに重みを置いたか
強気は車載ソフトの需要の強さと純現金、配当性向の引き上げを言い、慎重は利益の柱が1本に偏ることと、内製化・AIエージェントを言う。車載は需要が強いので数量の縮みは軽めに置いたが、柱が人月である点は変わらない。確率はやや悲観と悲観を40%とし、差は-50%。強気が当たるのはAI関連売上が金額で開示された時だけだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 411 円1,471 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 176 円628 億円)。 今の値に割り戻すと 341 円1,218 億円、今との差 −25.6%、 期待の年率 +2.5%(資本コスト 6.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 680 円2,432 億円 | 229 円819 億円 | +98.6% | +7.1% | 55 円195 億円 |
| やや楽観 | 19% | 566 円2,023 億円 | 203 円727 億円 | +68.0% | +5.3% | 146 円522 億円 |
| 中立 | 35% | 490 円1,750 億円 | 188 円671 億円 | +47.9% | +4.0% | 237 円847 億円 |
| やや悲観 | 26% | 292 円1,045 億円 | 154 円552 億円 | −2.5% | −0.2% | 116 円415 億円 |
| 悲観 | 14% | 112 円402 億円 | 125 円447 億円 | −48.2% | −6.4% | 33 円119 億円 |
| 加重平均 | 100% | 411 円1,471 億円 | 176 円628 億円 | +28.2% | +2.5% | 587 円2,099 億円 |
今の株価時価総額 458 円1,637 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 車載ソフトの需要が強く、減りが小さい 利益 137 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 680 円2,432 億円
車載ソフトの外注需要が強く、AIエージェントを使った開発を成果報酬で受ける筋書き。その他(車載)は数量が今の0.96倍、IT&DXが0.88倍、機器販売が1.00倍。AIを自社の売り物にして金額が出ている開示は確かめられないので、今以上には置かない。純現金が厚く、買収の余力もある。 内訳はビジネスソリューション=数量1.00倍・価格1.16倍・利益率8.1%、IT&DXサービス=数量0.88倍・価格1.36倍・利益率14.3%、その他=数量0.96倍・価格1.34倍・利益率25.1%。 この筋書きの確率は6%。結果は、売上が今の1.22倍の1,150億円、営業利益190億円、純利益137億円、自己資本829億円、10年の還元819億円、時価総額2,131億円(PER14.66倍)。
- ビジネスソリューション:数量 1,300(従事人員(人))× 価格 3,164(1人当たり売上(万円。機器販売を含む))→ 売上 411 億円・営業利益 33 億円。数量1.00倍・価格1.16倍・営業利益率8.1%(席課金・製品販売型)
- IT&DXサービス:数量 1,414(従事人員(人))× 価格 1,860(1人当たり売上(万円))→ 売上 263 億円・営業利益 38 億円。数量0.88倍・価格1.36倍・営業利益率14.3%(人月型)
- その他(次世代モビリティ等):数量 2,886(従事人員(人))× 価格 1,649(1人当たり売上(万円))→ 売上 476 億円・営業利益 120 億円。数量0.96倍・価格1.34倍・営業利益率25.1%(人月型)
倍率:事業の純利益 135 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 43.3% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 25.0%、10 年より先の名目の伸び g -0.1% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 14.66 倍、時価総額 2,131 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AIを自社の売り物にした金額の開示は無く、楽観でも数量は今以下。車載需要を映して6%。
やや楽観 19% 車載の開発が続き、一部が成果報酬へ 利益 109 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 566 円2,023 億円
車載の開発需要が続き、一部は成果報酬へ移る。車載は数量0.83倍・価格1.29倍、IT&DXは数量0.76倍、機器販売は数量0.90倍。技術者の数は緩やかに減り、単価は物価並みに上がる。 内訳はビジネスソリューション=数量0.90倍・価格1.11倍・利益率7.7%、IT&DXサービス=数量0.76倍・価格1.31倍・利益率13.6%、その他=数量0.83倍・価格1.29倍・利益率24.0%。 この筋書きの確率は19%。結果は、売上が今の1.02倍の968億円、営業利益152億円、純利益109億円、自己資本781億円、10年の還元727億円、時価総額1,722億円(PER14.66倍)。
- ビジネスソリューション:数量 1,165(従事人員(人))× 価格 3,046(1人当たり売上(万円。機器販売を含む))→ 売上 355 億円・営業利益 27 億円。数量0.90倍・価格1.11倍・営業利益率7.7%(席課金・製品販売型)
- IT&DXサービス:数量 1,219(従事人員(人))× 価格 1,791(1人当たり売上(万円))→ 売上 218 億円・営業利益 30 億円。数量0.76倍・価格1.31倍・営業利益率13.6%(人月型)
- その他(次世代モビリティ等):数量 2,486(従事人員(人))× 価格 1,587(1人当たり売上(万円))→ 売上 395 億円・営業利益 95 億円。数量0.83倍・価格1.29倍・営業利益率24.0%(人月型)
倍率:事業の純利益 107 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 40.4% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 23.6%、10 年より先の名目の伸び g -0.1% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 14.66 倍、時価総額 1,722 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車載の開発需要が続く筋書き。19%。
中立 35% 車載は残るが内製化とAIで縮み、再販が細る 利益 92 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 490 円1,750 億円
車載ソフトの外注は完成車メーカーの内製化とAIエージェントで細り、技術者の数が減る。車載は数量0.74倍・価格1.25倍、利益率は23.3%に下がる。機器販売は数量0.80倍、価格1.08倍と取り分が薄くなる。 内訳はビジネスソリューション=数量0.80倍・価格1.08倍・利益率7.5%、IT&DXサービス=数量0.68倍・価格1.27倍・利益率13.2%、その他=数量0.74倍・価格1.25倍・利益率23.3%。 この筋書きの確率は35%。結果は、売上が今の0.89倍の839億円、営業利益128億円、純利益92億円、自己資本750億円、10年の還元671億円、時価総額1,469億円(PER14.67倍)。
- ビジネスソリューション:数量 1,040(従事人員(人))× 価格 2,957(1人当たり売上(万円。機器販売を含む))→ 売上 308 億円・営業利益 23 億円。数量0.80倍・価格1.08倍・営業利益率7.5%(席課金・製品販売型)
- IT&DXサービス:数量 1,088(従事人員(人))× 価格 1,739(1人当たり売上(万円))→ 売上 189 億円・営業利益 25 億円。数量0.68倍・価格1.27倍・営業利益率13.2%(人月型)
- その他(次世代モビリティ等):数量 2,220(従事人員(人))× 価格 1,541(1人当たり売上(万円))→ 売上 342 億円・営業利益 80 億円。数量0.74倍・価格1.25倍・営業利益率23.3%(人月型)
倍率:事業の純利益 90 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 34.5% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 20.6%、10 年より先の名目の伸び g -0.1% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 14.67 倍、時価総額 1,469 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車載が残りつつ内製化とAIで縮む中心の筋書き。35%。
やや悲観 26% 完成車メーカーの内製化で外注が減る 利益 56 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 292 円1,045 億円
完成車メーカーが車載ソフトをAIエージェントで内製し、受託の数量と単価が同時に下がる。車載の数量は0.63倍まで減り、利益率は17.4%に落ちる。機器販売もクラウド直販に奪われ、全体の利益が大きく削られる。 内訳はビジネスソリューション=数量0.68倍・価格1.03倍・利益率5.6%、IT&DXサービス=数量0.58倍・価格1.21倍・利益率10.0%、その他=数量0.63倍・価格1.19倍・利益率17.4%。 この筋書きの確率は26%。結果は、売上が今の0.72倍の677億円、営業利益77億円、純利益56億円、自己資本688億円、10年の還元552億円、時価総額869億円(PER13.97倍)。
- ビジネスソリューション:数量 884(従事人員(人))× 価格 2,809(1人当たり売上(万円。機器販売を含む))→ 売上 248 億円・営業利益 14 億円。数量0.68倍・価格1.03倍・営業利益率5.6%(席課金・製品販売型)
- IT&DXサービス:数量 925(従事人員(人))× 価格 1,652(1人当たり売上(万円))→ 売上 153 億円・営業利益 15 億円。数量0.58倍・価格1.21倍・営業利益率9.9%(人月型)
- その他(次世代モビリティ等):数量 1,887(従事人員(人))× 価格 1,464(1人当たり売上(万円))→ 売上 276 億円・営業利益 48 億円。数量0.63倍・価格1.19倍・営業利益率17.5%(人月型)
倍率:10年より先の名目の伸びg-0.10%(人月は0%・席は0〜−1%。実質の縮みは10年の数量に入れ済み)で、利益を全部株主に分ける形の正当化PER=1÷(k−g)=1÷(8.8%+0.10%)=13.97倍(事業のROE9.4%、RONICは使わない)。余った現金は(純利益−帳簿額×1.4%)×PERに、戻り方0.5掛けの現金を足す。AIエージェント代替はgと別に数量・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:完成車メーカーの内製化の筋書き。26%。
悲観 14% 車載の外注が崩れ、利益の柱が失われる 利益 24 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 112 円402 億円
車載ソフトの外注が大きく減り、利益の柱が崩れる。AIエージェントが開発を置き換え、売上は今の半分前後に縮む。創業家系の持ち株が多く、少数株主に戻る還元も抑えられる。余った現金は戻り方5割で見ている。 内訳はビジネスソリューション=数量0.52倍・価格0.95倍・利益率3.4%、IT&DXサービス=数量0.44倍・価格1.12倍・利益率5.9%、その他=数量0.48倍・価格1.10倍・利益率10.5%。 この筋書きの確率は14%。結果は、売上が今の0.51倍の480億円、営業利益33億円、純利益24億円、自己資本633億円、10年の還元447億円、時価総額402億円(PER14.42倍)。
- ビジネスソリューション:数量 676(従事人員(人))× 価格 2,602(1人当たり売上(万円。機器販売を含む))→ 売上 176 億円・営業利益 6 億円。数量0.52倍・価格0.95倍・営業利益率3.4%(席課金・製品販売型)
- IT&DXサービス:数量 707(従事人員(人))× 価格 1,530(1人当たり売上(万円))→ 売上 108 億円・営業利益 6 億円。数量0.44倍・価格1.12倍・営業利益率6.0%(人月型)
- その他(次世代モビリティ等):数量 1,443(従事人員(人))× 価格 1,356(1人当たり売上(万円))→ 売上 196 億円・営業利益 21 億円。数量0.48倍・価格1.10倍・営業利益率10.5%(人月型)
倍率:10年より先の名目の伸びg-0.10%(人月は0%・席は0〜−1%。実質の縮みは10年の数量に入れ済み)で、利益を全部株主に分ける形の正当化PER=1÷(k−g)=1÷(8.8%+0.10%)=14.42倍(事業のROE4.1%、RONICは使わない)。余った現金は(純利益−帳簿額×1.4%)×PERに、戻り方0.5掛けの現金を足す。AIエージェント代替はgと別に数量・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:利益の柱の車載が崩れる筋書き。14%、合わせて40%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ビジネスソリューション
法人向けのIT機器・クラウドの販売、導入支援、ECサイト運営。
| 数量従事人員(人) | 価格1人当たり売上(万円。機器販売を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,300 | 2,738 | 356 | 30 |
| 10 年後 中立 | 1,040 | 2,957 | 308 | 23 |
取り方:セグメント売上356億円・利益29.6億円は開示。人員は開示がなく、連結従業員約5,900人のうち、機器販売を含み1人当たり売上が大きいこの部門を約1,300人と推定し、売上を割って1人当たり売上を出した。 【AIエージェント代替の見直し】ビジネスソリューション(売上356億円、38%)はIT機器・クラウドの販売で、席・製品販売型。直販とAIの中抜きで中立の価格は1.08倍、数量0.80倍。
IT&DXサービス
企業・金融・公共向けのシステム開発、運用、DX支援。
| 数量従事人員(人) | 価格1人当たり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,600 | 1,369 | 219 | 32 |
| 10 年後 中立 | 1,088 | 1,739 | 189 | 25 |
取り方:セグメント売上219億円・利益31.5億円は開示。人員は推定1,600人(開発・運用の技術者が中心)で、売上を割って1人当たり売上を出した。 【AIエージェント代替の見直し】IT&DXサービス(売上219億円、23%)は金融・公共向けの開発と運用で人月型。中立で数量0.68倍・価格1.27倍。
その他(次世代モビリティ等)
次世代モビリティ(車載ソフト・通信機器)を含む、上の2つ以外の事業の合計。
| 数量従事人員(人) | 価格1人当たり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 1,233 | 370 | 93 |
| 10 年後 中立 | 2,220 | 1,541 | 342 | 80 |
取り方:セグメント売上370億円・利益92.6億円は開示(3セグメントの利益合計が全社の営業利益153.7億円に一致)。人員は推定3,000人(連結約5,900人の残り)で、売上を割って1人当たり売上を出した。内訳の開示は薄い。 【AIエージェント代替の見直し】その他(売上370億円、39%、利益の6割)は車載ソフトなど。人月型だが車の電子化で需要が強いので、中立で数量0.74倍・価格1.25倍と軽めに置いた。
リスクと懸念
AIエージェント代替(車載の人月と機器の再販)
システナの利益の6割を稼ぐ車載ソフトは、技術者の時間で売る仕事で、完成車メーカーの内製化とAIエージェントの両方で数量が減る恐れがある。機器の再販も直販とAIの中抜きで取り分が薄くなる。中立の売上は今の0.89倍、悲観では0.51倍とした。
モビリティ利益への集中
利益の6割を稼ぐ「その他」には、自動車向けの開発が入る。モビリティの利益率は、2026年3月期の9カ月で4割を超えた。完成車メーカー数社の発注が動けば、全社の利益が大きく振れる。受注の後ろ倒しは、すでに起きている。
完成車メーカーの内製化
SDVの開発では、完成車メーカーが自社内にソフト部隊を置く動きがある。外部の開発会社は、人材不足の間は必要とされるが、内製が進めば取り分が減る。システナは、国内の主要な完成車メーカーをほぼ網羅するため、方針転換の影響は広く及ぶ。
景気後退時の稼働率低下
新規開発は、景気後退で先送りされやすい。技術者派遣型の契約は、稼働率が落ちると、利益が早く減る。2008〜2009年のSI業界では、営業利益が3〜5割落ちた例がある。いまの利益率は過去最高の水準にある。
創業家系の持ち株と少数株主
創業家系の資産管理会社が約3割を持ち、取締役会にも創業家の名前があるとされる。還元方針の変更や、会社の資金の使い方は、経営の裁量に左右される。方針が戻れば、純現金は株主に戻らない。
ストックオプションと株数の増加
業績連動型の有償ストックオプションは、発行済株式の5%に相当する。行使されれば、株数が増え、1株当たりの価値が薄まる。本分析では時価総額で測るため、増資や行使の増加分は、筋書きの時価総額に含める必要がある。
機器販売の薄い利益率
ビジネスソリューションは、IT機器とクラウドの販売を含み、利益率は8%台と薄い。売上の大きさに比べて、利益への貢献は小さい。メーカー側の販売方針や価格競争の変化で、利益率が一段と下がる恐れがある。
今後の分かれ目
- 2027年3月期以降も、モビリティの営業利益が20%以上の成長を保てたら
- やや楽観・楽観側に重みを移してよい。ただし、完成車メーカーの発注が複数年続くかを、受注の開示で確かめる。
- 大手の完成車メーカーが、SDV開発の内製化や外注の削減を打ち出したら
- やや悲観・悲観側に重みを移す。モビリティの高い利益率は、顧客の方針で崩れる。
- 配当性向60%以上が実際に守られ、自社株買いも加わったら
- 純現金の戻り方への確信が上がる。戻り方を0.5から引き上げて見直す。
- 生成AIで人月単価が下がり、売上の伸びを技術者数の増加が上回らなくなったら
- 悲観側の確率を上げ、技術者数×単価の積み上げの前提を見直す。
- 技術者の稼働率が下がり、営業利益率が13%を割ったら
- 景気後退や価格競争が効いている。やや悲観側へ重みを移す。
- AI関連事業やストック型収益の売上が、中期計画の想定を超えて積み上がったら
- 利益の質が変わる。中立の利益率の前提を、上方修正して見直す。
- 車載ソフトの外注額が金額つきで増え続け、AI活用の成果報酬が開示されたら
- 楽観の数量を今より上で見直す。
- 主要な完成車メーカーが車載ソフトの内製化を発表したら
- やや悲観と悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- モビリティ事業の売上・営業利益の四半期の推移と、完成車メーカーの受注の時期
- 配当性向60%以上の維持と、自社株買いの有無
- 技術者数と1人当たり売上(単価)の伸び、稼働率
- AI関連事業・ストック型収益の売上の開示
- 「その他」セグメントの利益の内訳の開示
- 車載ソフト関連の受注額と技術者数、機器販売の粗利率
倍率と資本コストの決め方
倍率は10年先の名目の伸びg=−0.1%の式 1÷(k−g) で出し、過去のPERや同業の値付けは使っていない。kは基本7.5%に循環+0.25%・寿命+1.0%(人月の下限)を足した8.75%。AI代替は数量に主に入れ、確率とgで重ねなかった。余った現金150億円は戻り方0.5で足した。今の株価との差は狙っていない。リース会計の形は今と同じ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.3→14.66 倍・やや楽観 PER 11.3→14.66 倍・中立 PER 11.3→14.67 倍・やや悲観 PER 11.3→13.97 倍・悲観 PER 11.3→14.42 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。