結論
リビン・テクノロジーズは、不動産を売りたい人と不動産会社を結び付けるリビンマッチを中核に、住宅関連の集客サービスと業務支援ソフトを展開する会社である。筆者の結論は「割高」だ。年間26万物件の査定依頼と約2,000社の顧客網には実体があるが、その強みが10年後も高い利益を生む保証はない。
最も気になるのは、既存事業の顧客数が減り始めていることである。住生活デジタル事業の月間稼働顧客は2025年9月期第3四半期の2,240社から、2026年9月期第3四半期には1,974社へ減った。顧客当たり収益は踏みとどまっているものの、顧客基盤の縮小を放置すれば収益性は傷む。生成AIが売却相談や業者選択を代行する時代には、従来の検索流入に頼る送客の価値も変わる。
2026年4月にはシンエイとLIGコーポレーションを傘下に収め、水回り工事と不動産売買へ進出した。実際に現場で修理する仕事はAIに置き換えにくいが、買収直後の住生活リアル事業は赤字であり、デジタル事業の弱さを埋めるには時間が必要だ。買収によって事業の幅は広がった一方、資金と経営資源は分散した。
2025年9月期は営業利益5.0億円と好調だったが、2026年9月期の会社予想は2.9億円へ減る。買収費用だけでなく、既存事業の減益も重い。2026年10月には主要サイトの緊急停止も公表されており、集客経路の安定性を改めて確認する必要がある。
10年後の中立では、デジタル事業の顧客減少をリアル事業の成長が補い、営業利益は約4.0億円になると見込む。それでも資本の積み上がりによってROEは低下し、AI代替を考慮した長期の利益成長も限られる。5つの筋書きの現在価値を加重した本質価値は約20.95億円で、基準時価総額40.3億円を約48%下回る。会社が生き残る可能性と、今の株価で十分な安全域があるかは別の問題である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の立場では、まず10年後も必要な仕事と、その仕事から利益を取れる会社を分けて考える。不動産を売る人が仲介会社を探し、水道が故障した家が修理を頼む需要はなくならない。問題は、その仕事への入口をリビン・テクノロジーズが握り続けるかどうかだ。
リビンマッチには知名度と顧客網がある。年間26万物件の査定依頼を集める実績は、一から広告を出して顧客を探す地域の不動産会社に価値を提供する。しかし、検索サイトの上位表示や広告運用で得た集客力は、物理的な独占設備や法的な許認可とは違う。新しいAIの窓口が利用者をまとめてしまえば、優れた媒体でも取引の入口を失う恐れがある。
利益を再投資したときの利回りも、まだ満足できない。既存デジタル事業の高い利益率には魅力があるが、顧客数の減少を止める追加投資が必要になっている。新しいリアル事業は施工技術と拠点を持つものの、買収直後の利益はマイナスだ。買収した事業が資本コストを超える利益を生むまでは、増えた売上を株主価値の増加と同一視しない。
自己株式取得は経営者が会社の価値を意識している証拠にはなる。しかし、買い戻した後の株主が得るのは、減った株数そのものではなく、残る事業が生むオーナー利益である。利益の低迷と現金流出が続くなら、自己株式取得だけで高い評価を正当化することはできない。
筆者なら、同社を完全に理解できる事業とは分類しない。不動産売却の需要は読めても、10年後の検索流入経路やAIとの収益配分は読みにくいからだ。したがって狭い堀に高い永続成長率を与えず、悲観では買収の失敗とのれんの減損も考える。長く持てる会社へ育つ余地はあるが、現在の時価総額には十分な安全域が見当たらない。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は、住生活デジタル事業である。リビンマッチでは不動産を売りたい所有者が無料で査定を申し込み、参加する不動産会社が見込み客の紹介などに応じて料金を払う。ぬりマッチ、メタ住宅展示場、リースバック比較PROも住宅関連の利用者と事業者を結び付ける媒体であり、主な顧客は不動産仲介会社、住宅販売会社、外壁塗装会社などである。
この仕組みの価値は、不動産会社が自力では獲得しにくい売却希望者を集められることにある。会社は年間約26万物件の査定依頼を受け付け、約2,000社の住宅関連企業がサービスを利用すると説明している。顧客が見込み客を得られたときに料金が発生する成果連動型は、広告を大量に購入する余力の乏しい地域企業にも導入しやすい。ただし査定依頼は成約件数ではなく、依頼の質と実際の商談化率が顧客の継続利用を左右する。
同じデジタル事業には、SMSハンター、査定書つくるくん、管理戸数ふえるくん、買収した仲介王のクラウドシステムも含まれる。集客だけでなく、見込み客への連絡、査定書作成、顧客管理といった不動産会社の仕事を支援する。2026年には営業支援ソフトKASIKAを提供するCocoliveとの提携も始めた。ただしDXクラウド単独の売上や解約率は開示されておらず、独立した大きな収益の柱になったとまでは判断できない。
2026年4月からは、シンエイとLIGコーポレーションを連結し、住生活リアル事業を報告セグメントに加えた。シンエイは水のトラブルサポートセンターを運営し、全国25拠点と累計30万件超の施工実績を持つ。LIGコーポレーションは不動産の売買仲介や買取再販を担う。前者は現場の人手と施工品質、後者は物件の仕入れと売却までの期間が収益を決める。
2026年9月期第3四半期累計では、デジタル事業の売上高が25.78億円、セグメント利益が2.73億円だった。リアル事業は連結開始後の3か月で売上高2.50億円、セグメント損失0.41億円を計上した。さらに買収関連費用0.39億円が調整額として発生している。つまり現在は、利益を生んできたデジタル事業が弱含むなかで、新しいリアル事業を育てている段階だ。
10年後の企業像は、不動産会社への送客だけでなく、住宅の修繕や売買を実際に引き受ける会社へ変わる可能性がある。ただし媒体の集客力をそのまま施工利益へ転換できるわけではない。集客費用、現場の人件費、材料費、クレーム対応、在庫資金が新たに必要になる。
優良さと弱いところ
同社の堀、つまり他社が容易に奪えない強みは、不動産所有者に接する機会と、地域の不動産会社との営業網にある。リビンマッチは2006年から運営され、2025年の会社委託調査では不動産査定サイトの認知率15.8%で比較対象5サイトの首位だった。複数の地域を覆う約2,000社の顧客網も、新規参入会社がすぐには再現しにくい資産である。
ただし、この堀は広いとは言えない。イエウールを運営するSpeeeは2026年の調査で月間3万人超の査定依頼利用者と2,500社超の提携会社を公表しており、リビンマッチが競争相手を圧倒しているわけではない。顧客も複数の査定サイトを併用でき、利用者はより多くの業者を紹介してくれるサービスへ移りやすい。値上げを継続しても顧客が残るという証拠や、低い解約率の数値は見つからない。
利益率が大きく振れる点も見逃せない。2020年9月期の営業利益率は約1%まで落ちた一方、2023年には約14%まで回復した。2024年には再び約6%へ低下し、2025年には約14%へ戻った。広告集客費や新規事業投資を先に負担する構造のため、売上が少し変わるだけで利益が大きく動く。過去の高ROEだけを将来の再投資利回りの証拠にはできない。
DXクラウドには、顧客データが蓄積され、仕事の手順に組み込まれる利点がある。しかし、法令対応の記録原本を独占するわけではなく、年単位の移行負担や5%未満の解約率なども確認できない。AIエージェントが査定書作成や顧客への連絡を直接実行するようになれば、操作画面そのものの価値は下がり得る。
経営面では、創業者と関連する資産管理会社が大きな株式持分を持つ。経営者が株価と事業価値に強い利害を持つことは長所だが、買収価格や新規事業投資を少数株主が牽制しにくい構造でもある。2026年の買収と自己株式取得が、将来の1株当たりオーナー利益を本当に増やすかが、資本配分の試験になる。
独自媒体のブランドと顧客網は評価するが、顧客減少とAI代替を踏まえ、10年より先にも超過利益が高い割合で残るほどの堀とは判断しない。したがって堀は弱い区分とし、再投資による超過収益が長期間そのまま続くとは見込まない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の既存住宅流通と住宅修繕は大きな市場だが、その規模をそのままリビン・テクノロジーズの売上機会と考えてはいけない。会社資料は2030年度の既存住宅流通市場を6.6兆円、リフォーム市場を7.4兆円と紹介している。また矢野経済研究所は2025年の住宅リフォーム市場を約7.5兆円と推計した。これらは不動産取引や工事の総額であり、送客会社が受け取る手数料市場とは異なる。
不動産売却の見込み客獲得では、Speeeのイエウール、NTTデータ系のHOME4U、リクルートのSUUMO、LIFULL HOME'S、すまいValueなどが競合する。Speeeが公表した2026年3月の調査ではイエウールの月間査定依頼利用者が3万人を超え、参加会社も2,500社を超える。リビンマッチの年間26万物件という数字は有力な規模だが、集計期間と定義が完全には一致しないため、これだけで全国シェアを確定することはできない。
第三者の不動産会社向け対応データでは、2026年8月の集計対象4,111件のうち、リビンマッチが752件、イエウールが1,273件、HOME4Uが689件、LIFULL HOME'Sが641件だった。この限定サンプルの構成比はそれぞれ約18%、31%、17%、16%である。ただし全国全体の取扱件数ではなく、集計対象の業者と媒体に偏りがあるため、売上シェアとしては使わない。
10年先の売却需要には二つの方向の力が働く。人口減少と世帯数の頭打ちは取引数量の逆風になるが、相続住宅や空き家の処分、老朽住宅の住み替えは売却相談を生む。持ち家の管理負担が増えれば、一括査定の必要性そのものは残る。ただし相談の窓口が検索サイトから対話型AIへ変わると、案件を最初に受け取る会社が変わり得る。
AIエージェントによる代替が最も深い問題である。利用者が不動産売却をAIに相談し、条件の合う会社の選択や見積もり依頼まで一括で任せれば、従来の比較サイトへ訪問する必要が薄れる。不動産会社側もAIで営業連絡や査定書作成を自動化できる。自社媒体が独自の成約データや地域情報をAIへ提供する立場に進めれば価値は残るが、逆にAIサービスから案件を購入する側へ回れば利益率を失う。
水回り修繕ではクラシアン、イースマイル、地域の水道工事会社などとの競争になる。工事の現場作業はAIで消えない一方、人員確保と部材費が制約になる。シンエイの全国25拠点は成長の土台だが、全国の施工市場における正確なシェアは開示されていない。リアル事業が市場を広く取れるかより、拠点当たりの施工件数と利益を増やせるかを重視する。
長期の中立では、売却相談市場が消滅するとは見ない。しかし、検索経由の送客収益は競争によって縮み、DXクラウドの操作画面の価値も下がる。リアル事業の需要は維持されるが、工事価格の上昇を人件費と材料費が吸収する。両者を合わせても、全社が物価上昇率以上の成長を長く続けられるとは考えない。
資本政策と M&A
資本配分は、2026年に大きく変わった。2023年12月には不動産業界向けクラウドシステムを持つ仲介王を取得し、2026年4月には水回り修繕のシンエイと不動産売買のLIGコーポレーションを連結した。サービスの横展開から実際の施工・売買へ進む戦略には筋がある。しかし、2026年6月末にはのれん約1.90億円が計上され、新事業は初期赤字となった。買収が成功したかは、まだ利益と投下資本から確認できない。
2025年9月期の純有利子負債はマイナス約9.1億円だったが、2026年6月末は現預金約17.51億円に対して有利子負債が約14.44億円となった。短期の有価証券を加えた純現金は約4.1億円である。買収、自己株式取得、事業拡大を同時に進めた結果、以前ほど自由な現金が残っているわけではない。今後の借り換えでは金利上昇も無視できない。
株主還元では現金配当より自己株式取得と株主優待が中心である。2025年11月に決議した取得枠は最大9億円で、2026年9月の終了までに約4.25億円を使った。さらに2026年9月29日には、2027年9月までに最大4.6億円、18万4,000株を取得する新しい枠を決めた。ただし上限を実際に使い切る約束ではなく、利益が落ち込めば現金余力との兼ね合いが生じる。
株主優待は2026年の株式分割に合わせて変更され、200株以上の保有者に年2回、各7,500円分のデジタルギフトを提供する。2026年9月期第3四半期累計の株主優待関連費用は約0.13億円で、年率では約0.18億円に相当する。10年間続く場合の株主便益は約1.8億円となり、将来の各筋書きの還元に含めた。2025年9月期の配当はなく、配当性向、DOE、総還元性向の長期的な数値目標も確認できない。
確認できる開示には、売上高・利益・ROEを複数年にわたって約束した独立の中期経営計画はなく、中期の数値の約束なしと扱う。2026年9月期の会社予想は売上高40.7億円、営業利益2.9億円、純利益1.3億円であり、これを長期計画と混同しない。東証グロース市場の流通株式基準に抵触した場合は名証メイン市場への単独上場を検討するとしているが、2026年10月24日までに会社全体の上場廃止が決定したとの公表は確認できない。
創業者関連株主の持分は大きいものの、実際に相当額の自己株式取得を行っているため、余剰現金の株主への戻り方は1.0とする。今後の最大の論点は、追加買収よりも既存顧客の回復とシンエイの黒字化に資本を集中できるかである。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
リビンマッチの強みは、長年かけて築いた不動産所有者との接点と地域企業への直販網である。約2,000社の顧客を持つ企業が、外壁塗装、リースバック、住み替え、修繕へサービスを広げれば、同じ顧客へ複数の商品を提供できる。顧客獲得のための営業網を共用できるため、新サービスが当たれば増分利益率は高くなる。2026年に始めた売主取次サービスも、問い合わせの量ではなく成約可能性を重視した収益への転換として期待できる。
住生活リアル事業への進出は、インターネットの広告会社が実際の住宅サービス事業者へ変わる契機になり得る。シンエイは全国25拠点と累計30万件を超える施工実績を持つ。リビンマッチの集客力を現場の施工に接続すれば、外部の業者へ送客するだけだった収益の一部を、工事売上として取り込める。緊急修理は景気が弱くても需要が消えにくく、現場作業自体をAIで代替することも難しい。
AIは脅威だけではなく、営業の作業を減らす道具にもなる。査定書つくるくんやCocoliveとの連携により、見込み客の獲得から追客まで一体で支援する仕組みを提供できる。2026年9月には衛星データを扱うWHEREとの実証実験も始まった。まだ金額で確認できるAI新規収益はないが、独自の物件情報と地域の不動産会社の営業成果を結び付けられれば、AIサービスから選ばれる送客基盤になれる。
高い現金創出力が回復すれば、買収によって増えた借金を返しながら自己株式取得も継続できる。経営者の持株比率が高いため、企業価値の増加が自らの利益に直結する構造もある。長い目では、デジタルの集客力とリアルの現場能力を兼ね備える小型の住生活サービス企業として、今より大きな利益を上げられる可能性がある。
慎重な見方
最も重大なのは、会社が既存事業の顧客減少を認めていることだ。2026年9月期第3四半期には月間稼働顧客数が1,974社まで減り、新規顧客の獲得にも苦戦している。これが単なる営業の不調ではなく、送客媒体の相対的な競争力低下なら、広告費を増やしても以前ほど利益は戻らない。イエウール、HOME4U、SUUMOなどの競争相手は強く、顧客が他の媒体へ移ることも難しくない。
不動産会社が買っているのはソフトウェアの画面ではなく、売却見込み客との接点だ。その接点をAIエージェントが直接生み出し、複数の不動産会社に見積もりを取り、売主との連絡まで処理するようになれば、従来の一括査定媒体を通る必要は減る。SMS配信、査定書作成、顧客管理といった業務もAIが統合すれば、個別の業務ソフトに払う価格は下がりやすい。利用者が増えるという一般論だけでAIによる増収を期待することはできない。
リアル事業の買収にも危うさがある。シンエイは現場の施工能力を持つが、緊急水道修理は広告集客費が重く、作業員の品質管理やクレーム対応も必要になる。LIGコーポレーションの不動産売買では、物件価格と在庫期間によって資金が拘束される。買収直後の赤字が一過性でなければ、利益率の高かったデジタル事業の資金を、利益率の低い事業へ移したことになる。
財務にも注意が必要だ。買収と自己株式取得によって2025年9月末に比べ純現金が減り、2026年6月末の自己資本も縮小した。借入金利が上昇する環境で、新規事業の利益が低いままなら返済と事業投資が株主還元を圧迫する。2026年10月21日には主要サイトの緊急停止を公表しており、検索集客に依存した会社にとって稼働停止が長引く損失も無視できない。
株式の流通量が小さく、創業者関連株主が強い議決権を持つことも少数株主には両面がある。事業が不調でも買収や資本政策を外部株主が止めにくい。経営者の判断が正しければ大きな利益を得られるが、そうでなければ高い資本効率を失ったまま長期間資金を拘束される恐れがある。
どちらに重みを置いたか
不動産売却の送客網には競争上の価値があり、現場作業を行うシンエイの取得も長期の生存力を高める可能性がある。ただし、既存デジタル事業の顧客数が実際に減少していることと、新しいリアル事業が赤字から始まったことを重く見る。AIの影響は中立の数量・単価と10年より先の成長率に反映し、確率で同じ損失を何度も数えない。そのうえで、買収の収益化と送客市場の競争に不確実性が残るため、楽観側27%に対して悲観側を42%へ寄せた。どちらの主張にも根拠はあるが、現在の値段を正当化するには複数の改善が同時に必要であり、慎重な評価が勝る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,458 円35 億円(+ 還元の換算額還元の合計 450 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 963 円23 億円、今との差 −42.2%、 期待の年率 +1.6%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,311 円78 億円 | 928 円22 億円 | +154.6% | +11.4% | 339 円8 億円 |
| やや楽観 | 19% | 2,504 円59 億円 | 675 円16 億円 | +90.9% | +7.6% | 604 円14 億円 |
| 中立 | 31% | 1,581 円37 億円 | 506 円12 億円 | +25.3% | +2.6% | 647 円15 億円 |
| やや悲観 | 26% | 559 円13 億円 | 295 円7 億円 | −48.7% | −7.6% | 222 円5 億円 |
| 悲観 | 16% | 515 円12 億円 | 84 円2 億円 | −64.0% | −10.3% | 96 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,458 円35 億円 | 450 円11 億円 | +14.6% | +1.6% | 1,908 円45 億円 |
今の株価時価総額 1,665 円39 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% デジタルの競争力回復とリアル事業の全国展開 利益 6 億円 · PER 12.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,311 円78 億円
リビンマッチは査定依頼の質を高め、成約可能性の高い見込み客を不動産会社へ渡す媒体へ変わる。売主取次サービスの精度が向上し、離れていた不動産会社の利用が回復する。顧客数は過去の高水準に近いところまで戻り、成果報酬の単価も物価上昇に見合う水準を保つ。
シンエイはリビンマッチの営業網と協力し、施工拠点を全国へ広げる。緊急の水道修理だけでなく、設備更新やリフォームへの継続受注が増える。LIGコーポレーションも不動産売買の在庫管理を改善し、売上の拡大に見合う利益を残す。追加の小規模買収は行うものの、採算の悪い事業を抱え込まない。
AIエージェントに案件の入口を奪われないよう、地域企業の対応実績や施工可能地域を使って独自の送客価値を保つ。ただしAIを新規の売上成長源として過大評価しない。会社が投資を続けてきたDXクラウドも、操作画面を売るだけでなく、実際の業務を完了させるサービスへ変わる。
施工拠点数と拠点当たり売上がともに伸び、リアル事業の営業利益率は高まる。デジタル事業も高い収益性を回復し、全社営業利益は約9.25億円となる。株主還元を続けながらROEは高い水準を保ち、既存株主が事業拡大の成果を受け取れる10年になる。
- 住生活デジタル事業:数量 2,160(月間平均稼働クライアント数(社、実質))× 価格 0.00(クライアント1社当たり月間売上(億円、名目))→ 売上 47 億円・営業利益 7 億円。稼働顧客2,160社×月額18万円×12か月。数量は2025年比約1.0倍にとどめ、料金とサービス構成改善で売上増を図る。
- 住生活リアル事業:数量 45.0(全国の年間稼働施工拠点数(拠点。LIGの不動産売買は単価側に含む代理指標))× 価格 0.64(施工拠点1か所当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 29 億円・営業利益 3 億円。45拠点×年商0.64億円。拠点を増やし、工事単価と施工効率を改善する。
倍率:資本コスト8.25%、事業ROE約18.2%、堀の超過利益残存割合1/3からRONICは約11.6%。長期成長率gは1.0%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)から約12.60倍となり、楽観の上限そのものを適用する。AIによる成長加速を倍率に上乗せしない。
確率:既存顧客数の減少が止まり、買収した施工事業の拠点拡大と利益改善が同時に成功する必要がある。さらにAI検索による中抜きにも耐えなければならないため、実現可能だが低確率とする。AIによる新規収益の実績金額が確認できないため、デジタル顧客数を2025年の実績以上には増やさない。
やや楽観 19% 既存顧客の減少が止まり、施工事業が利益の柱へ成長 利益 4 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,504 円59 億円
リビンマッチでは新規顧客を獲得する営業活動が改善し、顧客数の減少が止まる。売却相談に加えて住み替えやリフォームを提案することで、不動産会社にとって利用する理由が増える。広告費は上昇するものの、実際に成約へつながる見込み客を優先して送ることで顧客当たり収益を保つ。
DXクラウドではAIによる査定書作成や追客の自動化が進み、従来の画面操作型ソフトの価格は伸びにくくなる。一方、送客媒体そのものは残り、住宅所有者に特化した専門サイトとして一定の利用を維持する。AI検索に流入を奪われる部分と、住宅の売却需要が続く部分が釣り合う。
シンエイは既存拠点の稼働率を改善し、工事依頼の少ない地域から多い地域へ人員を移す。LIGコーポレーションは物件の仕入れと販売を慎重に管理し、在庫を抱えすぎない。追加の買収は小規模にとどめ、買収した事業の黒字化を優先する。
リアル事業の拠点数が増え、営業利益率も安定するため、全社営業利益は約6.65億円になる。純利益の増加は株主への還元余力を回復させるが、長期にわたり高い成長率を維持する独占的企業にはならない。
- 住生活デジタル事業:数量 2,050(月間平均稼働クライアント数(社、実質))× 価格 0.00(クライアント1社当たり月間売上(億円、名目))→ 売上 42 億円・営業利益 5 億円。稼働顧客2,050社×月額17万円×12か月。顧客の回復は限定的で、単価も全面的な物価転嫁には届かない。
- 住生活リアル事業:数量 37.0(全国の年間稼働施工拠点数(拠点。LIGの不動産売買は単価側に含む代理指標))× 価格 0.58(施工拠点1か所当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。37拠点×年商約0.58億円。買収後の統合が進み、施工事業が安定黒字化する。
倍率:資本コスト8.25%、ROE約14.7%、超過利益残存割合1/3、RONIC約10.4%。10年より先の名目成長率1.0%から正当化PERは約12.47倍。現在の市場PERや同業倍率からは決めず、正当化倍率の上限をそのまま用いる。
確率:既存顧客数をおおむね現在水準に戻すことと、買収した施工事業を着実に拡張することは可能性がある。ただし両方の実績がまだ十分ではないため、楽観よりは高いが中心には置かない。
中立 31% デジタルは縮小、リアルの成長で全社利益を維持 利益 3 億円 · PER 12.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,581 円37 億円
不動産売却の相談は、人口減少や住宅の相続・住み替えが重なるため一定の数量を保つ。ただし相談の入口は検索サイトだけではなくなり、対話型AIや不動産会社の直接集客へ分散する。リビンマッチは専門性と既存顧客網を守るものの、月間稼働顧客数は2025年の水準まで戻らない。
顧客当たり売上はサービス内容の改善と物価上昇で緩やかに増えるが、価格競争やAIによる業務の自動化が上昇を抑える。DXクラウドの一部は顧客の仕事を支える道具として残るものの、査定書作成や連絡作業だけを提供する商品の価格は下がりやすい。広告集客費と人件費の負担が続き、デジタル事業の利益率は2025年の好調時より低い水準になる。
シンエイの施工拠点は緩やかに増え、水回りの緊急修理と設備更新の需要を取り込む。LIGコーポレーションは不動産売買の拡大より在庫回転を優先する。工事の利益率は黒字へ転換するが、材料費と施工人員の確保が制約になり、高収益企業とはならない。
全社ではデジタル事業が約34.9億円、リアル事業が約15.4億円の売上を生み、営業利益は約4.0億円となる。純利益は約2.54億円で、自己資本を積み上げた結果、ROEは過去の中央値を下回る。事業は存続するが、株主のために高い再投資利回りを長期継続する会社にはならない。
- 住生活デジタル事業:数量 1,850(月間平均稼働クライアント数(社、実質))× 価格 0.00(クライアント1社当たり月間売上(億円、名目))→ 売上 35 億円・営業利益 3 億円。稼働顧客1,850社×月額15.7万円×12か月。2025年の顧客数比約0.85倍、単価約1.14倍。広告媒体と業務SaaSのAI代替を反映する。
- 住生活リアル事業:数量 30.0(全国の年間稼働施工拠点数(拠点。LIGの不動産売買は単価側に含む代理指標))× 価格 0.51(施工拠点1か所当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。30拠点×年商約0.51億円。施工拠点数は20%増加、拠点当たり単価は約1.29倍で物価3%の10年間累積1.34倍をやや下回る。
倍率:資本コスト8.25%、ROE約11.0%、超過利益残存割合1/3からRONICは約9.18%。長期成長率gを1.0%とすると正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)は約12.29倍。AI代替は10年の顧客数と単価、g_longに反映済みであり、倍率を恣意的にさらに引き下げない。
確率:下に寄せる理由:2026年にデジタル事業の顧客減少と減益が確認され、買収したリアル事業も赤字で始まった。デジタルの数量縮小を既に中立に織り込んでいるので、同じAI代替の理由で悲観確率をさらに過大に増やさない。既存媒体が一定の需要を残し、現場施工事業が徐々に黒字化する筋書きを中心とする。
やや悲観 26% 査定サイトの競争力低下と施工事業の低採算 利益 1 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 559 円13 億円
リビンマッチでは、検索から訪問する売却希望者が減り、他の査定サイトや不動産会社の直接集客に案件を奪われる。月間稼働顧客数は1,500社まで減少する。顧客当たり売上は一定程度維持するものの、成約可能性の高い案件を十分に供給できず、新しい料金を導入しても既存顧客の離脱を防ぎきれない。
AIエージェントが売主の条件を理解し、近隣の不動産会社へ直接問い合わせる機会が増える。査定書作成やSMS配信も汎用AIと競合し、個別のDXクラウドを使う必要性が薄れる。営業費用を抑えるため新サービスの開発を縮小するが、技術と顧客基盤の衰退を止められない。
水回り修繕には需要が残るが、施工人員の確保が難しくなり、材料費と移動費が上がる。シンエイは拠点数を維持するものの、拠点当たり売上が期待ほど伸びず、営業利益率は低い。LIGコーポレーションでは物件の回転が遅れ、売買在庫に資金が拘束される。買収の一部について減損や事業整理の必要性が生じる。
全社営業利益は約1.1億円に低下し、純利益は0.66億円にとどまる。経営は現金の保全を優先し、自己株式取得の規模を縮小する。会社は存続するが、以前の高いROEと成長企業としての評価は失われる。
- 住生活デジタル事業:数量 1,500(月間平均稼働クライアント数(社、実質))× 価格 0.00(クライアント1社当たり月間売上(億円、名目))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。稼働顧客1,500社×月額14.5万円×12か月。新規獲得の不調とAIによる送客経路の変化で顧客数が約3割縮む。
- 住生活リアル事業:数量 25.0(全国の年間稼働施工拠点数(拠点。LIGの不動産売買は単価側に含む代理指標))× 価格 0.43(施工拠点1か所当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。25拠点×年商0.43億円。施工体制を維持するが利益率は低く、物価転嫁も十分に進まない。
倍率:10年後のROE約4.3%は資本コスト8.25%に届かず、純利益0.66億円を資本コストで割った稼ぐ力の価値は約8.0億円にとどまる。そこで2026年6月末の純資産14.11億円から換金価値の乏しいのれん約1.90億円を控除した約12.21億円を、売れる資産の概算床とする。2025年9月期の自己資本17.2億円に対するPBR約0.71倍はこの床を表現するための係数であり、過去の市場PBRや利益回復への期待を根拠にしない。稼ぐ力と資産床の大きい方を上回る時価総額は認めない。
確率:下に寄せる理由:既存顧客の減少が数四半期続いており、2026年の買収後も利益改善が確認できていない。AIによる仲介業務の効率化や検索流入減少が競争を一段と激しくする可能性を考慮する。ただしデジタルと現場事業の両方が同時に完全に崩壊するとは想定しない。
悲観 16% AIによる送客の中抜きと買収失敗で収益基盤が縮小 利益 0 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 515 円12 億円
不動産売却の相談は残るが、AIエージェントが条件に合う不動産会社を直接選び、査定依頼や商談予約まで処理するようになる。利用者は従来の査定比較サイトを訪問せず、不動産会社もAIによる直接集客を利用する。リビンマッチの年間査定依頼は大きく減り、稼働顧客数は約1,050社まで低下する。
仲介王やその他のDXクラウドも、汎用AIと不動産会社の内製システムに機能を奪われる。サイトの知名度は残っても、顧客が高い料金を払う理由にはならない。既存媒体の維持管理や営業担当者の費用が重く、売上の減少に合わせて費用を十分に削れない。
シンエイでは工事単価の引き上げが競争で進まず、材料費と人件費が収益を圧迫する。不採算地域から撤退し、拠点数は20まで縮小する。LIGコーポレーションの買取再販では売却に時間がかかり、損失を計上する。買収ののれんを減損し、一部事業の撤退や売却によって資金を回収する。
全社売上は事業拡大後の年率規模から半分前後へ縮み、営業損益は小幅な赤字となる。株主還元は優待を中心に最小限となり、追加の自己株式取得は止まる。10年後の事業価値は稼ぐ力より換金可能な資産に支えられ、高い成長企業としての評価は完全に失われる。
- 住生活デジタル事業:数量 1,050(月間平均稼働クライアント数(社、実質))× 価格 0.00(クライアント1社当たり月間売上(億円、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。稼働顧客1,050社×月額13万円×12か月。顧客数は2025年の半分以下となり、単価も低下する。
- 住生活リアル事業:数量 20.0(全国の年間稼働施工拠点数(拠点。LIGの不動産売買は単価側に含む代理指標))× 価格 0.30(施工拠点1か所当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。20拠点×年商0.30億円。不採算拠点を閉鎖し、工事・不動産売買ともに価格競争と固定費負担で赤字になる。
倍率:継続的な利益がほぼなくなり、PERによる永続価値は認めない。2026年6月末の純資産14.11億円からのれん1.90億円を控除した実体純資産約12.21億円を床とする。2025年9月期自己資本17.2億円に対する0.71倍が約12.21億円に一致する。減損後の資産売却に要する時間や事業整理の費用があるため、追加のプレミアムは認めない。過去の市場PBRを根拠にしていない。
確率:AI検索と直接マッチングの普及、既存顧客の大幅離脱、施工事業の採算悪化が重なる構造的な敗北を考える。デジタル売上が現在の半分程度へ落ちるには複数の競争上の失敗が必要だが、現在の顧客減少と買収の赤字を見れば無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住生活デジタル事業
リビンマッチなどの成果報酬型マッチング媒体と、不動産会社向けDXクラウドを含む。中心となる収益の単位は月間稼働顧客数と、顧客当たり月額収益である。
| 数量月間平均稼働クライアント数(社、実質) | 価格クライアント1社当たり月間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 2,166 | 0.00 | 36 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1,850 | 0.00 | 35 | 3 |
取り方:2025年9月期の四半期別月間稼働顧客数は2,073、2,127、2,240、2,223社で、単純平均は約2,166社。会社開示の顧客当たり月間営業収益は各四半期13万円台を中心に推移する。全社売上35.9億円を月間稼働顧客数と12か月で照合すると、月額約13.82万円に相当する。四半期KPIからの直接積算との差約2%は、サービス構成や集計対象の差と考える。2026年9月期第3四半期は顧客数1,974社、ARPU139,264円であり、顧客数の減少は実績として確認できる。決算資料:https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20260814/20260812518437.pdf 。AI代替の型は、主力の自社媒体が『自社の媒体・プラットフォームの広告枠、成果報酬』、仲介王などのDXクラウドが『席課金・操作画面中心の業務SaaS』である。両者の売上内訳は非開示であり、根拠のない比率の配賦は行わない。中立では媒体の検索流入低下とSaaSの席数減少を合わせ、顧客数を現在の約0.85倍、単価を約1.14倍とする。記録の正本の型に必要な低解約率や移行負担の証拠は2つ確認できない。
住生活リアル事業
シンエイの水回り緊急修理・リフォームと、LIGコーポレーションの不動産仲介・買取再販。現場の施工拠点と拠点当たりの売上を数量・価格の代理指標とする。
| 数量全国の年間稼働施工拠点数(拠点。LIGの不動産売買は単価側に含む代理指標) | 価格施工拠点1か所当たり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09年率換算 | 25.0 | 0.40 | 10 | −2 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 0.51 | 15 | 1 |
取り方:2026年4月から6月までの住生活リアル事業の開示売上は2.49681億円、セグメント損失は0.4091億円。連結開始後3か月を4倍して年間売上約9.99億円、年間損失約1.64億円の初期稼働水準を作った。シンエイの全国25拠点は会社資料31ページで確認できるため、1拠点当たり年間売上は約0.40億円となる。これは正式な年間会社予想ではなく、施工件数・工事単価が未開示であるための代理指標である。LIGの不動産売買もセグメントに含まれるので、1拠点当たり売上は純粋な施工単価ではない。今後の売上は施工拠点数×拠点当たり年間収益で積み、材料費・作業員費・不動産在庫負担を利益率で扱う。会社資料:https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20260814/20260812518437.pdf 。AI代替の型は『現場の体を使う施工』に該当し、物理的な修理作業自体は直接代替されない。事務、受付、見積もり、広告運用にはAI代替の余地がある。
リスクと懸念
AIエージェント代替による送客の中抜き
利用者が不動産売却をAIに相談し、会社選択、査定依頼、商談日程の設定まで任せるようになれば、一括査定サイトに訪問する必要が薄れる。デジタル事業の自社媒体は検索流入を失い、DXクラウドは画面操作を前提とした仕事が減る。顧客数と単価の両方が縮む危険があるため、中立では数量の減少と物価以下の単価上昇を織り込んだ。
リビンマッチの顧客減少
2026年9月期第3四半期の稼働顧客は1,974社で、前年同四半期の2,240社から減少した。営業費用をかけて新規顧客を集めても継続率が悪ければ、売上と利益率は同時に下がる。会社が説明する約2,000社の顧客網は規模の強みだが、その数が減っているという事実は堀の縮小を示す重要な兆候である。
買収事業の収益化と資金拘束
2026年4月に取得したシンエイとLIGコーポレーションは、初回の連結3か月で赤字を計上した。施工事業では人材と材料の確保、不動産売買では在庫資金と物件価格の変動が収益を左右する。既存媒体の利益を低採算の買収事業に投入し続ければ、全社売上が増えても株主のオーナー利益は増えない。
純現金の減少と金利上昇
2025年9月期の純現金は約9.1億円だったが、2026年6月末は短期有価証券を含めても約4.1億円となった。買収資金と自己株式取得の影響が大きい。借入金を新しい金利で借り換えれば支払利息は増え、工事や不動産在庫のための運転資金も必要になる。財務の余裕は過去の純現金残高だけで判断できない。
サイト停止と情報セキュリティ
2026年10月21日、会社は外部から公表されたソフトウェア情報を受け、安全確認のためコーポレートサイト、リビンマッチ、ぬりマッチなどの緊急停止を公表した。同日時点の告知では顧客情報への影響は確認されていない。停止が長期化したり再発したりすれば、集客件数の減少と顧客離脱につながる。障害の原因と復旧状況を継続確認する必要がある。
株主還元と上場市場の流動性
2026年9月に新たな最大4.6億円の自己株式取得枠を設定したが、継続的な利益の裏付けがない買い戻しは現金を消費する。さらに会社は、取得によって東証グロース市場の流通株式基準に抵触する可能性を公表し、名証メイン市場への単独上場も選択肢としている。会社全体の上場廃止は決定していないものの、売買の流動性が下がる可能性はある。
創業者支配と資本配分
創業者と関連資産管理会社の持分が大きく、外部株主が買収や資本政策に強く影響することは難しい。経営判断が長期的に正しければ利害が一致する反面、収益力の低い事業を追加で取得した場合は、少数株主が損失を負担する。買収時の価格、のれん、投資後の利益率、撤退判断の速さを継続して評価する。
今後の分かれ目
- 月間稼働顧客数が2,100社を回復し、ARPUも14万円以上で複数四半期安定したら
- リビンマッチの競争力回復が数字で確認できるため、中立の顧客数と利益率を引き上げる。やや楽観の確率も高めるが、AIを新たな売上成長源とするには受注や売上金額の確認を別途必要とする。
- 月間稼働顧客数が1,700社を下回り、ARPUも前年同期比で低下したら
- 数量と価格の同時悪化と判断し、やや悲観の顧客数前提を中心へ近づける。広告集客費が下がらなければ利益率の悪化も併せて織り込む。
- 住生活リアル事業が継続的な営業黒字となり、拠点当たりの売上と利益率がともに改善したら
- 2026年の買収は株主に利益をもたらす可能性が高まる。施工拠点の拡大と利益率の持続性を確認したうえで、リアル事業の中立売上と営業利益を引き上げる。
- シンエイやLIGコーポレーションの減損、追加借入、不動産在庫の長期滞留が確認されたら
- 買収事業の再投資利回りが資本コストを下回る兆候として、悲観側の確率を高める。純現金と売却可能資産の床も改めて測り直す。
- AIによる査定・送客サービスについて、既存媒体を代替する規模の受注または新規売上が開示されたら
- 実際の金額、顧客数、継続率を確認してからAIによる利益の増加を評価する。提携発表や実証実験だけでは楽観の数量を増やさず、売上化が確認された部分に限定して上方修正する。
- 2026年10月の主要サービス停止が長期化し、顧客への送客再開が遅れたら
- 一時的な広告機会損失だけでなく、顧客離脱とブランド毀損を考慮する。復旧後の月間稼働顧客数とARPUを確認し、中立またはやや悲観の利益率を修正する。
- 自己株式取得の拡大によって財務余力が低下し、東証グロース市場から名証単独上場へ移行する方針が正式決定したら
- 事業価値そのものと少数株主の流動性を分けて考える。自己株式取得による残存株主の取り分の増加は評価するが、運転資金の不足や追加借入が必要なら資本政策の利益を慎重に見直す。
見ておくもの
- リビンマッチを中心とする月間稼働顧客数とクライアント当たり月間営業収益
- 住生活デジタル事業の売上高、セグメント利益率、新規顧客獲得状況
- 不動産査定依頼件数と売主取次サービスの商談化・成約率
- 住生活リアル事業の売上高、セグメント営業利益、施工拠点数
- シンエイの施工人員、工事件数、1拠点当たり売上と利益
- LIGコーポレーションの販売用不動産残高と在庫回転
- 借入金残高、現預金、投資有価証券、のれん、自己株式取得額
- AI関連サービスの実際の売上・受注額と、外部AIからの送客量
- 2026年10月のサービス停止からの復旧状況と顧客への影響
- 東証グロース市場の上場維持基準と名証単独上場に関する追加開示
倍率と資本コストの決め方
数量の出発点は、デジタル事業では会社が開示する月間稼働顧客数とARPU、リアル事業では2026年6月末の25施工拠点と初回連結3か月の売上である。両事業の売上は数量と単価から独立して積み上げ、営業利益率も過去の好調期に自動的に戻さない。リアル事業の拠点当たり年商はLIGの不動産売買を含む代理指標であり、施工件数と工事単価が別途開示されれば置き換える。
資本コストは8.25%、堀は弱い、10年より先の名目成長率は1.0%とした。楽観から中立までのPERは正当化PERの式とRONICから決まり、中立で12.29倍となる。現在・過去・同業の市場PERは使用していない。AIによる縮小は10年の数量・単価とg_longに反映し、寿命や倍率で追加の恣意的な割引をしていない。
2026年の自己株式取得が既に反映された発行済株式数をbasisに使用し、過去に買った株を将来還元へ二重計上しない。自己資本は2026年6月末を更新起点とし、悲観の資産床では約1.90億円ののれんを控除した。株主優待は損益上の費用であると同時に保有株主への経済的便益でもあるため、依頼の定義どおり還元へ含めた。
2027年4月以後に始まる年度から適用される新リース会計によって、事務所や施工拠点の使用権資産・リース負債が貸借対照表に載る可能性がある。10年の営業利益率は現行の賃借費用を含む形で比較し、会計表示の変更を利益の改善とはみなさない。
基準時価総額は40.30億円、確率加重した10年後時価総額は約30.43億円、10年間の加重還元は約10.66億円である。8.25%で10年後の価値と期間内還元を割り引くと現在価値は約20.95億円となり、乖離率は約-48.0%で「割高」となる。これは先に設定した数量、単価、利益率、資本コスト、倍率、確率の帰結であり、現在の市場価格に合わせる調整はしていない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本資本コスト7.5%に品質調整+0.75%を加えた8.25%。βや小型株プレミアムは使わない。個別の買収失敗・サイバー障害は将来利益と確率で扱い、資本コストに追加しない。