結論
サイボウズは、ノーコードで業務アプリを作る kintone と、グループウェアの Office・Mailwise・Garoon を月額で売る会社である。解約率は1%未満で、年払いの前受金により現金が先に入る。
筆者の結論は、会社の質は高いが、値段は大きく割高である。kintone の価値は、人が入力画面を組んで業務を載せることにある。AI エージェントが画面ごと生成し、運用まで担えば、その価値は直接削られる。成熟したグループウェアは、人口減と大手の AI 付き製品に押される。
売上の約58%を占める kintone は数量0.75倍・価格1.05倍、約21%の Office・Mailwise は0.65倍・1.0倍、約17%の Garoon は0.80倍・1.10倍に置いた。官公庁向けの Garoon は切り替えが遅く、最も縮みが小さい。中立の売上は名目で2割減り、実質では4割弱減る。資本コストは基本7.5%に寿命の上乗せ1%を足した8.5%、長期の成長率は名目0〜−1%とした。
やや悲観・悲観の確率を合わせて36%置いた総合の価値は、今の時価総額を7割ほど下回る。悲観は売上が半分以下になる筋書きで、床は純現金のうち前受金などを除いた90億円とした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の事業は「持ち続けたい」部類に入る。顧客の業務に埋め込まれ、毎月課金され、解約が少ない。借金に頼らず、前払いで現金が入る。
問題は、その強さを10年先まで割り引いて読めるかだ。堀が強いと言い切れないのが、筆者のいちばんの引っかかりである。マイクロソフトという巨人が同じ領域に抱き合わせで入っており、その上に生成AIが重なる。10年後の姿を確度高く描けない事業には、確信を下げて臨む。
オーナー利益、つまり株主のものになる利益は大きい。成長のための再投資は人件費と広告が中心で、設備投資は軽い。利益のうち半分ほどを還元し、半分を事業と現金に残しても、自己資本が小さいので資本効率は高いまま保てる。
経営者の資本の使い方は評価できる。買収に走らず、人と製品に投じる。反面、利益を伸ばさず広告と採用に回す年があり、短期の利益は読みにくい。
安全域は薄い。中立の筋書きで価値はほぼ今の時価総額に並び、慎重側の筋書きが現実になれば下値は深い。十分な余裕があるとは言えない値段だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、2025年12月期の売上374億円のうち217億円を占めるkintoneだ。顧客が自分で入力画面や台帳を作り、案件管理・日報・申請などの業務を載せる。プログラミングは要らない。使うほど社内のデータが溜まり、乗り換えにくくなる。
次がサイボウズOffice(中小向けのスケジュール・掲示板)とMailwise(メール)で、合わせて約80億円。Garoon(大企業・官公庁向けのグループウェア)が62億円だ。この3つは国内の人口減の影響を受けやすい成熟市場に近い。
売り方は、ほぼ全部がクラウドの月額課金だ。クラウド比率は92%で、残りがパッケージ版にあたる。年払いの前受けが多く、現金が先に入る。解約率は各製品とも1%未満と低い。
2024年11月にクラウドの料金体系を改め、大規模向けの「ワイドコース」(1,000ユーザー以上)を設けた。この改定が2025年の増収増益の最大の原因だ。顧客の規模別の売上は、99人以下が39%、100〜999人が34%、1,000人以上が27%。今後は中堅・大企業に注力する。
費用の中心は人件費・広告宣伝・データセンターだ。2026年は「攻めどき」として、採用・データセンター・広告を厚くする計画を出している。上期は広告宣伝が26%増、研究開発が27%増だった。人を増やす会社なので、費用は先に出て売上があとから付いてくる。愛媛のプロバスケットボールチームの運営にも関わっており、この費用が原価に入る。
優良さと弱いところ
堀は、他社がまねしにくい強み、つまり「乗り換えの面倒さ」にある。kintoneには顧客が作ったアプリとデータが蓄積される。別の製品に移すには、画面と業務の手順を作り直す必要がある。解約率が1%を切るのはその表れだ。
値決め力も試された。2024年の値上げで売上が26%伸びたが、大きな解約は出なかった。これは堀の強さの証拠だ。ただし筆者は、この堀を「強い」とは置かない。同じ領域にはマイクロソフトのPower Appsがある。グループウェアはTeamsやGoogle Workspaceと重なる。大手の抱き合わせに、サイボウズ単独で長く抗えるかは読み切れない。
資本効率は目を引く。2025年12月期のROEは約40%と高い。ただし自己資本が178億円と小さいことが効いており、数年前は赤字や1%台の年もあった。安定して稼ぐ会社になったのは最近のことだ。営業利益率の過去の山は2000年1月期の32%で、27%は同じ山に並ぶ水準である。
財務は堅い。純現金は117億円で借金に頼らない。ただし年払いの前受金が含まれるので、見かけほど自由な現金ではない。
経営は創業者の青野社長が率いる。「人が増えるほど価値が上がる」という長期の姿勢が強みで、利益を犠牲にしても投資する弱みでもある。2021〜22年は先行投資で営業利益率が3%まで下がった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のクラウド業務ソフト市場は年率10%超で伸びている。サイボウズの周りの競争は3つの層に分かれる。
業務アプリ作成(ノーコード・ローコード)では、kintoneが利用経験で首位に挙がる調査がある(2025年、16.8%)。追う側はマイクロソフトのPower Appsで、導入予定の調査ではほぼ並ぶ。海外のBubbleやAdaloも勢いがある。
グループウェアでは、日本ではサイボウズ、ネオジャパン、マイクロソフト、グーグルが争う。Officeは中小で強いが、人口減とTeamsの普及で数量は伸びない。Garoonは官公庁・大企業で堅いが、単価で勝負する領域だ。
最大の構造変化は生成AIである。kintoneにとっては、社内データに答える機能で単価を上げる好機になる。一方で、画面を作らずAIが業務を直接回す時代が来れば、アプリ作成ツールそのものの出番が減る。10年では本命の脅威とみる。
景気への強さは高い。企業は情報共有の道具を簡単には止めない。解約率が低いのも、景気で月額契約がぶれにくいからだ。不況期には新規の契約が遅れ、広告費と人件費だけが残って利益率が落ちる。
追い風は、人手不足の解消に業務のデジタル化が欠かせないこと、自治体のシステム標準化だ。導入自治体は約460まで増えた。需要の中身は、人が減るなかで同じ仕事を少ない人数で回すための道具である。
資本政策と M&A
還元は抑えめから厚くなる途中にある。2025年12月期の期末配当は総額約18億円。純利益の2割台で、利益の大半は事業と現金に回っている。2026年は自己株式の取得も決めた(決算短信に注記があるが、規模は確認できていない)。
現金は純現金117億円、時価総額の約8%で、余った現金として分けるほど厚くない。年払いの前受金を抱えるためだ。
M&Aは小型が中心で、大型の買収で価値を壊した歴史はない。愛媛のバスケットボールチームへの経営参画は、本業とは別の地域貢献に近い。金額は小さい。
株主は、資産管理会社や個人の上位株主が合わせて3割強を持ち、従業員持株会が5%、リコーが4%弱だ。支配株主はおらず、買収を受ける可能性はゼロではない。時価総額1,500億円と手頃な大きさで、大手IT企業が欲しがる題材でもある。ただし上位株主の保有が厚く、友好的でなければ成立しにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
kintoneは、これから伸びる市場の真ん中にいる。国内3.9万社まで増え、東証プライムの約半数が使う。次の10年で中堅・大企業の本格導入が進めば、契約企業数は9万社を超えてよい。
2024年の値上げで解約が出なかったことが、値決め力の証明だ。AI機能を上位プランに載せ、大口向けのワイドコースを広げれば、1社あたりの売上は物価の上昇を超えて伸びる。
生成AIは追い風である。kintoneには顧客の業務データが溜まっており、AIが答えを返す土台として最適だ。パートナー各社のプラグインも増え、周りの仲間も厚い。ほかの会社が簡単にまねできる所ではない。
グループウェアも悪くない。Garoonは自治体の標準化の波に乗れる。導入自治体は1年で約80増えた。
人を採り、データセンターを強化し、広告を打つ。この先行投資は、今が攻め時だという経営判断だ。利益率が一時的に下がっても、契約の積み上げが先で回収される。
財務は無借金で、株主還元の余力が大きい。経営は短期の利益より長い成長を優先してきた。この積み上げは、10年で見れば利益の質をさらに高める。今の値段は、まだ伸びしろを織り込んでいない。
慎重な見方
2025年の利益は、値上げの一発で跳ね上がった数字だ。青野社長も「この成長が続くとは限らない」と認めている。2026年の営業利益計画は4%増で、売上の伸び12.7%を大きく下回る。投資を増やせば利益率は下がる。
成長の源である契約企業数は、中小の人口減と競争で頭打ちになりやすい。残る伸びしろは中堅・大企業だが、そこはマイクロソフトのPower Appsとローコード基盤の専業各社が手強い。抱き合わせで値引きされれば、単価が崩れる。
生成AIは、むしろ脅威になり得る。業務の画面を人が作る時代が終わり、AIが直接データを扱うようになれば、アプリ作成ツールという道具の価値が下がる。Officeの掲示板やスケジュールも、AIが要約し調整する世界では出番が減る。
Office・Mailwiseは人口減とTeams・Google Workspaceの普及で、契約数が減っていく成熟市場だ。Garoonも官公庁の入札では価格で争う。
利益率の読みも甘い。過去の営業利益率は10年で1〜27%と大きく動いた。この会社の経営は、利益より成長に資本を投じる性格で、市況が悪い年に一気に利益率が落ちる。
今の値段は、この27%の利益率と成長が続くことを前提にしているように見える。それが崩れた時の下値は深い。
AI エージェントが業務アプリを自動で作って運用する世界では、画面を組む道具に払う理由が薄れる。人を増やす計画で先に出た費用が残れば、利益は一気に消える。
AI エージェントが業務アプリを自動で作って運用する世界では、画面を組む道具に払う理由が薄れる。人を増やす計画で先に出た費用が残れば、利益は一気に消える。
どちらに重みを置いたか
解約の少なさと前受金の現金では強気の見方が優勢だが、kintone の価値の中心である入力画面づくりを AI エージェントが肩代わりする筋書きでは慎重な見方が重い。席に課金する売り方は、画面が飛ばされる世界で数量も価格も保ちにくい。資本コストは基本7.5%に寿命の上乗せ1%を足して8.5%とし、長期の成長率は名目0〜−1%。やや悲観・悲観を合わせて36%の重みを置いた総合は、今の時価総額を7割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,486 円670 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 685 円309 億円)。 今の値に割り戻すと 1,221 円550 億円、今との差 −62.5%、 期待の年率 −4.0%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,500 円1,127 億円 | 801 円361 億円 | +1.4% | +0.1% | 264 円119 億円 |
| やや楽観 | 19% | 2,097 円945 億円 | 758 円342 億円 | −12.3% | −1.3% | 543 円244 億円 |
| 中立 | 37% | 1,764 円795 億円 | 715 円322 億円 | −23.8% | −2.7% | 918 円413 億円 |
| やや悲観 | 24% | 878 円396 億円 | 641 円289 億円 | −53.3% | −7.3% | 365 円164 億円 |
| 悲観 | 12% | 200 円90 億円 | 488 円220 億円 | −78.9% | −14.4% | 83 円37 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,486 円670 億円 | 685 円309 億円 | −33.3% | −4.0% | 2,171 円978 億円 |
今の株価時価総額 3,255 円1,467 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% kintone が AI 時代の業務基盤として生き残る 利益 68 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,500 円1,127 億円
大規模向けのワイドコースで1,000人以上の顧客が増え、AI エージェントが業務アプリの下書きを作っても、データが溜まった kintone は動かしにくい。kintone の数量は今の0.86倍、価格は1.11倍まで上がる。売上は今より4%ほど減るにとどまり、営業利益は100億円近くを保つ。ただし AI エージェントを自社の売り物にして売上を出している開示は無く、楽観でも数量は1.0倍以下とみる。解約率が1%未満という強みは、この筋書きでは生きる。 最も大きい「kintone」は、数量が今の0.86倍、価格が1.11倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.96倍(実質0.71倍)、純利益は68億円になる。
- kintone(業務アプリ作成):数量 35,360(契約企業数(社・国内外))× 価格 0.01(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 208 億円・営業利益 67 億円。数量0.86倍・価格1.11倍・営業利益率32%(AI エージェント代替の型:席課金)
- サイボウズOffice・Mailwise(中小向け):数量 62,040(導入企業数(社・Office累計))× 価格 0.00(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 63 億円・営業利益 18 億円。数量0.75倍・価格1.06倍・営業利益率29%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Garoon(大企業・官公庁向け):数量 7,728(導入企業数(社))× 価格 0.01(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 67 億円・営業利益 20 億円。数量0.92倍・価格1.17倍・営業利益率30%(AI エージェント代替の型:席課金)
- その他(スポーツ運営ほか):数量 1,590(サービス口数(推定))× 価格 0.01(1口あたり売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 −1 億円。数量1.00倍・価格1.27倍・営業利益率-6%(AI エージェント代替の型:現場の体)
倍率:事業の純利益 68 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 35.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.5%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 940 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:楽観でも数量は1.0倍以下。AI エージェントを自社の売り物にして売上を出している開示(金額)が無いので、2025年のような高成長は続けない。
やや楽観 19% 成熟製品が縮み、kintone が下支え 利益 57 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,097 円945 億円
kintone の席は今の0.80倍ほど、価格は1.08倍。Office や Mailwise は人口減と大手の AI 付き製品に押されて数量0.70倍まで縮む。Garoon は官公庁の更新が続いて踏みとどまる。売上は今より1割弱減り、営業利益は80億円前後。筆者は、解約が少なく前受金で現金が先に入る質の高さは認めるが、この筋書きでも、成長の前提で付いた今の値段は支えきれないとみる。 最も大きい「kintone」は、数量が今の0.80倍、価格が1.08倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.87倍(実質0.65倍)、純利益は57億円になる。 営業利益は81億円で、今の101億円の80%に当たる。
- kintone(業務アプリ作成):数量 32,900(契約企業数(社・国内外))× 価格 0.01(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 188 億円・営業利益 57 億円。数量0.80倍・価格1.08倍・営業利益率30%(AI エージェント代替の型:席課金)
- サイボウズOffice・Mailwise(中小向け):数量 57,730(導入企業数(社・Office累計))× 価格 0.00(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 57 億円・営業利益 15 億円。数量0.70倍・価格1.03倍・営業利益率27%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Garoon(大企業・官公庁向け):数量 7,190(導入企業数(社))× 価格 0.01(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 60 億円・営業利益 17 億円。数量0.86倍・価格1.13倍・営業利益率28%(AI エージェント代替の型:席課金)
- その他(スポーツ運営ほか):数量 1,590(サービス口数(推定))× 価格 0.01(1口あたり売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 −2 億円。数量1.00倍・価格1.24倍・営業利益率-8%(AI エージェント代替の型:現場の体)
倍率:事業の純利益 57 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 29.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 18.4%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 780 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:1,000人以上の大口で席が増えて、kintone の減りが小さい筋書き。開示が無いので数量は1.0倍以下に抑えた。
中立 37% 中立:売上は名目で2割減、営業利益は3分の2 利益 47 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,764 円795 億円
kintone の席は0.75倍に縮み、価格は物価に届かず1.05倍。AI エージェントが入力画面や台帳を自動で作り、人が画面を組む価値が薄れる。Office・Mailwise は0.65倍、Garoon は0.80倍。売上は名目で2割減り、実質では4割弱減る。営業利益率は2割台前半に落ち、営業利益は70億円弱。還元は利益に合わせて小さくなる。新しく投じるお金の稼ぎは名目の成長が小さいので先で薄れる。 最も大きい「kintone」は、数量が今の0.75倍、価格が1.05倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.79倍(実質0.59倍)、純利益は47億円になる。 営業利益は67億円で、今の101億円の66%に当たる。
- kintone(業務アプリ作成):数量 30,750(契約企業数(社・国内外))× 価格 0.01(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 171 億円・営業利益 48 億円。数量0.75倍・価格1.05倍・営業利益率28%(AI エージェント代替の型:席課金)
- サイボウズOffice・Mailwise(中小向け):数量 53,950(導入企業数(社・Office累計))× 価格 0.00(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 52 億円・営業利益 13 億円。数量0.65倍・価格1.00倍・営業利益率25%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Garoon(大企業・官公庁向け):数量 6,720(導入企業数(社))× 価格 0.01(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 55 億円・営業利益 14 億円。数量0.80倍・価格1.10倍・営業利益率26%(AI エージェント代替の型:席課金)
- その他(スポーツ運営ほか):数量 1,590(サービス口数(推定))× 価格 0.01(1口あたり売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 −2 億円。数量1.00倍・価格1.20倍・営業利益率-10%(AI エージェント代替の型:現場の体)
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.7%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 647 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:kintone の席が緩やかに縮み、中小向けグループウェアは人口減で縮むという、最も重みを置く筋書き。
やや悲観 24% AI エージェントが業務アプリを組み立て、席が減る 利益 25 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 878 円396 億円
AI エージェントを標準で備えた大手の業務基盤が、中堅・大企業にも入り込む。kintone の席は0.62倍、価格は1.0倍を割る。Office と Mailwise は価格競争で0.53倍。人を増やす計画で先に出る費用が重く、営業利益率は1割台後半に落ちる。売上は今より3割以上減って営業利益は40億円弱。解約率が上がり、年払いの前受金で先に入る現金の強みも細る。 最も大きい「kintone」は、数量が今の0.62倍、価格が1.00倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.62倍(実質0.46倍)、純利益は25億円になる。 営業利益は36億円で、今の101億円の36%に当たる。
- kintone(業務アプリ作成):数量 25,220(契約企業数(社・国内外))× 価格 0.01(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 133 億円・営業利益 28 億円。数量0.61倍・価格1.00倍・営業利益率21%(AI エージェント代替の型:席課金)
- サイボウズOffice・Mailwise(中小向け):数量 44,240(導入企業数(社・Office累計))× 価格 0.00(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 40 億円・営業利益 7 億円。数量0.53倍・価格0.95倍・営業利益率18%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Garoon(大企業・官公庁向け):数量 5,510(導入企業数(社))× 価格 0.01(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 8 億円。数量0.66倍・価格1.04倍・営業利益率19%(AI エージェント代替の型:席課金)
- その他(スポーツ運営ほか):数量 1,304(サービス口数(推定))× 価格 0.01(1口あたり売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 −3 億円。数量0.82倍・価格1.14倍・営業利益率-17%(AI エージェント代替の型:現場の体)
倍率:事業の純利益 25 億円(現金の税後利息を除く)・事業の ROE 6.8%。AI エージェント代替でkintone・Office・Garoon の席(ID)課金が AI エージェントに置き換わり、数量が縮み価格も物価に届かない(席・画面を前提にした型)とみて。長期の成長率 g を名目 -1.0% と置き、RONIC = k 7.25% + 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 8.5%、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 11.8 倍。上限の 8.5 割に置き、事業 25 億円 × 12.36 倍 + 余った現金 0 億円(戻り方込み)で時価総額 313 億円、全体の PER に直して 12.36 倍。
確率:ノーコードで入力画面を作る価値そのものを、AI エージェントが肩代わりしやすい。実現しやすいと見て2割台半ばに置いた。
悲観 12% AI エージェントが業務画面を丸ごと置き換え、売上は3割 利益 3 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 200 円90 億円
AI エージェントが業務アプリを自動で作って運用し、画面と席に払う理由が薄れる。kintone の席は今の3分の1、Office も Garoon も半分以下に縮む。売上は今の3割、営業利益はほぼゼロ。無借金で純現金があるので、株主の取り分の床は前受金を返す分などを除いた90億円ほど残る。稼ぐ力ではなく、この資産の厚さが悲観の値段を決める。 最も大きい「kintone」は、数量が今の0.34倍、価格が0.89倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.30倍(実質0.23倍)、純利益は3億円になる。 営業利益は5億円で、今の101億円の5%に当たる。
- kintone(業務アプリ作成):数量 13,840(契約企業数(社・国内外))× 価格 0.00(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 65 億円・営業利益 5 億円。数量0.34倍・価格0.89倍・営業利益率8%(AI エージェント代替の型:席課金)
- サイボウズOffice・Mailwise(中小向け):数量 24,280(導入企業数(社・Office累計))× 価格 0.00(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。数量0.29倍・価格0.85倍・営業利益率5%(AI エージェント代替の型:席課金)
- Garoon(大企業・官公庁向け):数量 3,024(導入企業数(社))× 価格 0.01(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。数量0.36倍・価格0.94倍・営業利益率6%(AI エージェント代替の型:席課金)
- その他(スポーツ運営ほか):数量 716(サービス口数(推定))× 価格 0.01(1口あたり売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量0.45倍・価格1.02倍・営業利益率-5%(AI エージェント代替の型:現場の体)
倍率:悲観は売上が 10 年で半分以下になる筋書き。純現金+売れる資産の税後 90 億円(純現金117億円のうち、年払いの前受金を返す分と運転資金を除いた売れる現金。含み)を床として、今の自己資本 178 億円に対する PBR 0.51 倍で時価総額 90 億円とした。AI エージェント代替で業務アプリの画面と席が使われなくなり、売上が半分以下に縮む。稼ぐ力そのものが崩れる筋書きなので、事業の利益には値を付けない。
確率:AI エージェントが業務アプリを自動で作り運用し、席課金が半分以下になる筋書き。やや悲観と合わせて3割台後半にとどめた(中立の数量・価格に縮みを入れたので、確率では重ねない)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
kintone(業務アプリ作成)
顧客が自分で業務の画面と台帳を作れるクラウド。使うほどデータが溜まり、乗り換えにくい。
| 数量契約企業数(社・国内外) | 価格1社あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 41,000 | 0.01 | 217 | 69 |
| 10 年後 中立 | 30,750 | 0.01 | 171 | 48 |
取り方:2025年12月期の売上216.9億円を契約企業数41,000社(国内外・決算説明会)で割った。1社あたり約53万円。営業利益は非開示のため、規模の大きい製品として32%と推定。 数量は実物(契約企業数。年 5% で 6.6 万社)。単価は物価並みの 1.34 倍。 型は席(ID)課金の業務SaaS。ノーコードで入力画面を作るのが価値の中心なので、AI エージェントが画面ごと生成・代替する影響が最も大きい。数量0.75倍・価格1.05倍と置いた。売上の約58%がこの型。
サイボウズOffice・Mailwise(中小向け)
中小企業向けのスケジュール・掲示板と、メールのクラウド。成熟した市場。
| 数量導入企業数(社・Office累計) | 価格1社あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 83,000 | 0.00 | 79 | 24 |
| 10 年後 中立 | 53,950 | 0.00 | 52 | 13 |
取り方:Officeの売上68.3億円とMailwise 11.1億円の合計を、Officeの国内累計導入83,000社で割った(累計は実際の契約より多い目安)。1社あたり約9.6万円。営業利益率は推定30%。 型は席課金。低価格のグループウェアで、MS・Google の AI 付き製品との競争と人口減が重なり数量0.65倍・価格1.0倍と置いた。売上の約21%がこの型。
Garoon(大企業・官公庁向け)
大企業と官公庁・自治体向けのグループウェア。
| 数量導入企業数(社) | 価格1社あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8,400 | 0.01 | 62 | 19 |
| 10 年後 中立 | 6,720 | 0.01 | 55 | 14 |
取り方:Garoonの売上62.1億円を国内導入8,400社で割った。1社あたり約74万円。営業利益率は推定30%。 型は席課金。大企業・官公庁向けで切り替えは遅いため、数量0.80倍・価格1.10倍と置いた。売上の約17%がこの型。
その他(スポーツ運営ほか)
愛媛のプロバスケットボールチームの運営、有償サービスなど。
| 数量サービス口数(推定) | 価格1口あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,590 | 0.01 | 16 | −5 |
| 10 年後 中立 | 1,590 | 0.01 | 19 | −2 |
取り方:売上374.3億円から4製品の合計を引いた約15.9億円。内訳は開示がなく、口数は推定の置き方。スポーツ運営費などで赤字と推定。 スポーツ運営ほか。AI エージェントの影響は小さいので今の置き方のまま(小さな赤字を続ける)。
リスクと懸念
AI エージェントによる業務アプリ作成と画面操作の置き換え
kintone の価値は、人が入力画面や台帳を組み立てることにある。AI エージェントが画面ごと生成し運用まで担えば、席に課金する売り方は数量も価格も保てない。Office・Mailwise は大手の AI 付き製品に押される。売上の約58%は kintone、約21%は中小向け、約17%は大企業向けで、10年の売上は名目で2割減、実質で4割弱減とみた。
今の利益率が値上げの一発で押し上がっている
2024年11月の価格改定で営業利益は2倍になった。青野社長自身が、この成長が続くとは限らないと述べている。2026年の営業利益計画は4%増にとどまり、値上げ後の利益率がどこに落ち着くかで、価値の読みが大きく動く。
マイクロソフトの抱き合わせ
Power AppsはTeams・Microsoft 365と一緒に売られる。ノーコードの業務アプリ作成でも、導入予定の調査でkintoneとほぼ並ぶ。大手が値引きで入ってくれば、kintoneの単価と新規の契約が同時に崩れる。
成熟市場に近い製品の比重
Office・Mailwiseは約80億円、Garoonは62億円で、合わせて売上の4割近い。人口減とTeamsなどの普及で、契約数は伸びず、単価の上げ余地だけが頼りの領域だ。
先行投資が利益率を押し下げる
2026年は採用・データセンター・広告を加速する。上期は広告宣伝が26%増、研究開発が27%増だった。契約の積み上げで回収できなければ、利益率は2021〜22年のように大きく落ちる。
株主構成と買収の可能性
上位株主の保有が厚く、時価総額も1,500億円と手頃だ。友好的な再編や大手の買収提案は起こりうるが、起これば経営の自主性が変わる。逆に、大株主の売却が出れば需給の重さになる。
人件費と採用難
国内のIT人材不足で人件費は物価を超えて上がりやすい。人を採って伸ばす会社なので、費用の増え方が売上の伸びを上回ると、利益率が目に見えて落ちる。
今後の分かれ目
- 2026年の営業利益が計画の4%増を大きく上回ったら
- 値上げ後の利益率が思ったより高く落ち着くとみて、楽観とやや楽観の確率を上げる。
- kintoneの契約企業数の増え方が年5%を切ったら
- 中堅・大企業の開拓が競争に阻まれているとみて、やや悲観側に確率を移す。
- 解約率が1%を超えて上がり始めたら
- 堀が薄れ始めたサイン。悲観の筋書きの確率を上げ、単価の読みを見直す。
- マイクロソフトが業務アプリ作成を大幅に値引きして売り始めたら
- 単価の見通しを物価並みから下げ、やや悲観の重みを増やす。
- 大株主の売却や友好的な再編の発表が出たら
- 資本政策とガバナンスの前提を見直す。価値は事業で決まるので、価格への反応だけで判断しない。
- kintone に組み込んだ AI エージェント機能が、金額で開示できる売上や受注として積み上がったら
- 楽観・やや楽観の数量を1.0倍超に直し、確率を上げて見直す。開示が無い間は楽観も数量1.0倍以下にとどめる。
見ておくもの
- kintoneの契約企業数と1社あたり売上(決算説明会資料)
- 解約率(各製品、1%未満を保てるか)
- 営業利益率(25%台を保てるか)
- 中堅・大企業向けの売上比率(99人以下が39%)
- AI機能の有料化と単価への効き方
- 広告宣伝費・研究開発費の伸び
倍率と資本コストの決め方
kintone・Office/Mailwise・Garoon・その他に分け、AI エージェント代替の型(席課金)で数量・価格・利益率を置いた。倍率は式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k7.25%、g名目0〜−1%)に対する位置で置き、楽観〜中立は上限の9.5割、やや悲観は8.5割。悲観は稼ぐ力ではなく純現金+売れる資産の床。今の株価や過去・同業の倍率は見ていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.18→13.79 倍・やや楽観 PER 11.18→13.79 倍・中立 PER 11.18→13.79 倍・やや悲観 PER 10→12.36 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。