結論
サイバーセキュリティクラウドは、企業のウェブサイトやクラウド上の業務システムを攻撃から守る会社だ。国内クラウド型WAFで首位とされる競争力は評価するが、現在の時価総額約389億円は、10年間の利益成長を慎重に見積もった本質価値を大幅に上回ると判断する。
同社の価値を支えるのは、企業のシステムに実際に流れる通信を監視し、悪意あるアクセスを遮断する機能である。AIエージェントが普及しても、外部に公開されたシステムを攻撃から守る必要はなくならない。むしろAIが生み出す新しいアプリケーションや通信の増加は、防御対象を広げる可能性がある。AWS向けの防御ルールを世界に販売できることも、国内向けソフト会社にはない強みだ。
ただし、会社全体が同じように守られるわけではない。WAFの設定・運用を自動化するWafCharm、脆弱性情報の提供、専門家による診断や運用支援は、AIエージェント自身が担う部分が増える。防御エンジンの価値が残っても、それを人が操作・管理するための料金まで残るとは限らない。この違いを無視して、過去の高成長を全製品に延長するのは危険である。
会社は2030年に売上高200億円、営業利益40億円を目指している。2025年の売上高約51億円から大きく飛躍する計画だが、その実現には大型顧客の急増、海外販売の成功、新製品の定着、買収の成果が重なる必要がある。2026年上期のARR成長は堅調でも、既存WAF製品の伸びは会社全体の成長率を下回る。目標をそのまま長期の中心予想にはできない。
10年後の中立では売上高約79億円、営業利益約16億円を見込む。防御製品は伸びるが、運用・情報サービスでは代替圧力を織り込んだ結果である。五つの筋書きによる現在価値は、追加の株式交付による既存株主の取り分を考慮して約116億円となり、指定された現在の時価総額を約70%下回る。会社の存続や製品の必要性を疑う結論ではない。良い事業であることと、現在の値段で長く保有する価値があることは別の問題だ。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主がこの会社を評価するなら、最初に見るべきものはサイバー攻撃の増加率ではなく、攻撃から守る仕事を誰が、どの仕組みで担うかである。10年後もウェブアプリケーションは守らなければならない。しかし、その防御機能を顧客がクラウドの標準機能として買うのか、同社の独立した製品として買うのかは別の問いになる。防御ルールと攻撃情報の蓄積は価値になりうるが、運用画面の使いやすさだけでは長期の堀にならない。
同社の魅力は、すでに国内で競争力のある製品を持ち、継続課金で利益を出していることだ。2025年には営業利益率が20%を超え、営業キャッシュフローも黒字だった。資金繰りのために売上を追う段階は越えている。したがって、売上高だけで評価する赤字の新興企業とは異なり、事業の利益を起点に価値を考えられる。
一方で、真のオーナー利益を測るには研究開発費、クラウド通信費、販売費、買収資金、株式報酬を考えなければならない。攻撃の技術が変われば防御ルールを作り直し、クラウド事業者が仕様を変えれば対応が必要になる。研究開発を止めて現在の利益を配り続けられる事業ではない。これまでの高いROEが、そのまま将来の増分投資利回りになると考えることもできない。
最大の不確実性は、経営陣が防御の強みを世界に広げられるかどうかだ。AWS向けルールの海外販売は成功すれば固定費の増加を抑えながら伸ばせる。しかし、WafCharmの運用業務や診断・情報提供にはAIによる値下げ圧力が生じる。新しいAIセキュリティ製品は有望でも、金額を伴う継続販売実績が確認できない段階で将来利益に大きく加えるべきではない。
純現金が厚いことは評価する。ただし、その一部は株主から調達した資本であり、買収に使えば失われる可能性もある。少数株主が自由に引き出せる現金と同じではない。10年間保有するなら、利益の増加だけでなく、希薄化後の持分、買収後の投下資本利益率、累積の配当と自社株買いを毎年確かめたい。
企業としての将来性はあるが、株主が払う値段には安全域が必要だ。今の時価総額は、2030年の大きな成長計画が相当程度実現し、その後も高い利益を出し続けることを要求する。会社の良さは認めても、先が読めない部分に高い値段を付けないという判断が妥当である。
何で稼ぐ会社か
同社の会計上の報告セグメントは「サイバーセキュリティ事業」の一つだが、製品の役割は大きく異なる。中核の「攻撃遮断くん」は、ウェブアプリケーションファイアウォール、すなわちウェブサイトへの不正な通信を選別して遮断する仕組みをクラウドで提供する。国内企業が主な顧客で、継続課金によって収益を得る。2025年の販売実績は約16.8億円である。
「WafCharm」は、AWS、Azure、Google Cloudなどが備えるWAFの設定や防御ルールの更新を自動化する。顧客はクラウドを使い続ける限り、適切な防御設定を維持する必要がある。ただし価値の中心はWAFそのものではなく、その運用を容易にする機能だ。2025年の販売実績は約16.6億円で、同社のもう一つの収益の柱となっている。通信量に応じた課金要素もあり、純粋な利用者ID課金とは異なる。
「CSC Managed Rules for AWS WAF」は、AWS環境で実際に通信を防御するルール群を販売する。販売経路にAWS Marketplaceを使えるため、国内の営業人員だけでは届かない海外の顧客にも提供できる。ここには防御ルールの更新と攻撃情報の蓄積が価値として残る余地がある。ただし、AWS自身も防御機能を提供しているため、販売経路を握る企業が競争相手にもなる。
「SIDfm」は脆弱性情報を集め、顧客の対策判断を支援する。「CloudFastener」は専門家の運用を組み合わせたセキュリティサービスであり、「webtru」は個人情報や同意管理に関するサービスだ。加えて、診断、受託開発、導入支援などのスポット収益がある。会社が一括開示する「その他」の売上は、こうした性質の異なる製品・サービスを含んでいる。
2025年の全社売上高は約50.8億円で、攻撃遮断くんとWafCharmの合計が約33.5億円を占める。残る約17.3億円については、決算説明資料の製品別ARRと非継続収益の推移を使い、分析上の内訳を推定した。製品ごとの顧客数や年額単価が公表されていない部分は推計であり、会社が開示した会計数値と混同すべきではない。全社の利益率は2025年に約22%へ改善したが、個々の製品がどれだけ利益を稼いだかは開示されていない。
優良さと弱いところ
競争上の最大の強みは、実際の通信を防御する製品を持ち、国内で一定の地位を築いていることだ。会社資料では、攻撃遮断くんが国内クラウド型WAF市場、WafCharmがWAF運用監視サービス市場でそれぞれ売上高シェア首位とされる。金融機関や大企業を含む導入実績、AWSとの販売上の関係、100か国以上での利用実績も、製品の信頼性を示す材料である。ただし、この首位という評価は対象市場を限定した調査結果であり、世界のWAF市場で圧倒的なシェアを持つという意味ではない。
防御製品を乗り換える際には、正常な通信を誤って遮断しないか、既存システムとの相性に問題がないかを検証する必要がある。この作業負担は解約を抑える。一方で、世界規模の競合にはCloudflare、Akamai、F5、AWSなどが並び、技術、人材、販売力の規模では同社が不利になる場面も多い。顧客がクラウド事業者の標準機能に統合するなら、乗り換えの手間は永続的な障壁にはならない。
解約率の読み方にも注意が必要だ。2026年6月時点で攻撃遮断くんの月次MRR解約率は0.95%、WafCharmの月次顧客解約率は0.93%と公表されている。毎月約1%の減少が続くと年換算では約1割になるため、年間解約率5%未満という強固な固定化の証拠には当たらない。攻撃データの蓄積や運用実績は強みだが、値上げを繰り返しても顧客が離れなかったという長期の実績はまだ十分ではない。
資本効率はこれまで良好だった。2019年以降は黒字を維持し、営業利益率はおおむね改善してきた。2025年の自己資本比率は約76%で、純現金も約37億円ある。ただし、同年の自己資本増加には約18.5億円の株式発行による資金流入が含まれる。現金と自己資本が増えたことを、既存事業の再投資だけで生み出した成果と取り違えてはいけない。
筆者は、攻撃遮断くんとAWS向け防御ルールには通常以上の競争力を認めるが、会社全体を強い独占的な堀に守られた企業とは見ない。防御技術の更新を続ける負担が大きく、AIが運用・情報提供の料金体系を変えるためである。堀は存在するものの、10年後にどこまで広がるかはまだ検証の途中だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
サイバーセキュリティ市場の長期需要は底堅い。電子商取引、金融、行政、企業の業務システムはインターネットへの依存を深めており、システム停止や情報漏えいの損害は大きくなっている。AIエージェントによってソフトウェアの開発・利用が容易になることも、守るべきアプリケーションの数を増やしうる。企業にとって防御を完全にやめる選択肢は取りにくい。
日本ネットワークセキュリティ協会の調査では、国内WAF製品市場の2025年度予測は約453億円で、前年比約9%の成長が見込まれている。ただし、これはクラウド型WAFだけでなく、幅広いWAF製品を含む市場である。運用監視サービスや海外のAWS向けルールをそのまま合算して、サイバーセキュリティクラウドの市場シェアを計算することはできない。会社が中期計画で示す約1,000億円から約3,000億円の対象市場も、製品分野を広げる経営上の市場定義であり、現在の国内WAF市場とは区別する必要がある。
国内のクラウド型WAFでは同社が首位とされる一方、競合するCloudflare、Akamai、F5、AWSの同一定義による国内売上高とシェアは十分に開示されていない。したがって、競合各社の占有率を推測の数字で埋めることはしない。10年の成長を左右するのは、国内首位という肩書より、国内の導入企業数を増やし、世界のクラウド利用者に防御ルールを販売できるかである。
技術の変化は需要と競争の両方を生む。攻撃者がAIを使えば防御の更新頻度は上がり、高性能な防御ルールの価値は増す。しかし、防御側のAIエージェントも設定、調査、通知、修復案の作成を自動化する。顧客が運用画面を操作する回数が減れば、WafCharmや脆弱性情報サービスの一部は価格を維持しにくくなる。防御そのものを提供する製品と、防御のために人が行ってきた作業を代行する製品では、10年先の成長を別々に考えなければならない。
クラウド事業者への依存も競争の特徴だ。AWS Marketplaceは世界に販売する強力な経路だが、料金体系、掲載条件、標準機能の改善をAWSが決める。攻撃遮断くんは国内でのきめ細かな対応が武器になり、Managed Rulesは世界に販売できる。ただし、前者には国内市場の大きさによる限界があり、後者には世界的な大企業との価格競争がある。双方でシェアを伸ばせる保証はない。
同社の2030年計画は、対象市場を広げて約200億円の売上を獲得する構想だ。現在の約7,000の顧客基盤を生かす余地はあるが、年間経常収益1,000万円以上の顧客を2025年末の48社から500社超へ増やす目標は極めて高い。単なる市場成長では埋まらず、高単価製品の浸透、海外顧客の獲得、買収による補完を同時に成功させる必要がある。
資本政策と M&A
経営陣の資本配分は、製品開発と買収によって事業領域を広げる方針が中心だ。2020年にソフテックを取得し、2024年にはジェネレーティブテクノロジーを連結子会社化した。2025年にはDataSignを子会社化し、個人情報の同意管理を扱うwebtruを製品群に加えた。2025年の子会社株式取得に伴う現金支出は約3.3億円である。製品を増やして既存顧客へ売る戦略には合理性があるが、取得企業ごとの投下資本利益率は十分に開示されていない。
2025年の営業キャッシュフローは約10.0億円、投資キャッシュフローは約4.3億円の支出だった。同時に新株発行によって約18.5億円を調達している。したがって、2025年末の純現金約37億円をすべて過去の利益の蓄積と見るのは誤りだ。買収資金を確保したことは事業拡大の選択肢になる一方、既存株主には希薄化という費用が生じている。
2026年2月発表の中期経営計画は、2030年の売上高200億円、営業利益40億円、営業利益率20%を掲げる。ROEの数値目標は確認できない。株主還元については連続増配を目指し、自社株買いも必要に応じて検討する方針だが、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い総額について固定的な数字の約束はない。実際に2024年から配当を始め、2026年には自己株式取得も行っている。
2026年10月には第8回新株予約権の行使が完了し、自己株式から14万株を交付する予定が開示された。約3.06億円の資金は買収や資本業務提携に充てる方針である。発行済株式数を増やさず自己株式を交付する場合でも、流通する株式が増えるため既存株主の持分は薄まる。この影響は将来価値の既存株主の取り分に反映した。
今後の資本配分では、買収額そのものより、買収後の追加利益が資本コストを超えるかを重視する。2030年の売上目標に近づくために高値で会社を買えば、売上は伸びても1株当たりの価値は減りうる。純現金を無理に使わず、収益性が確認できない案件では還元を優先する規律が求められる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社には、一般的な業務SaaSとは違う成長機会がある。AIエージェントが普及すれば、人間が操作する管理画面の需要は減るかもしれない。しかし、エージェントが外部の情報を取得し、APIを呼び出し、企業のシステムと通信する機会は増える。その通信を守るWAFや防御ルールの需要は、AIの利用拡大とともに増える可能性が高い。
攻撃遮断くんは国内のクラウド型WAF市場で首位とされ、国内企業が求める対応品質と製品実績を持っている。WafCharmも複数の大手クラウドに対応し、顧客の運用を支えてきた。AWS Marketplaceで提供するManaged Rulesは海外への販売障壁を下げ、限られた国内市場への依存を弱められる。会社資料による100か国以上での利用実績は、その可能性を裏付ける。
中期計画には既存顧客を活用した販売拡大の筋道がある。約7,000の顧客基盤のうち、複数製品を利用する企業を増やし、大口契約を獲得できれば顧客当たり売上は上がる。海外の金融機関や大企業に採用されれば、攻撃遮断くんだけを販売していた時期より高い収益性を実現できる。新製品の研究開発や買収も、顧客に提供する防御範囲を広げる手段となる。
2025年までの利益成長は実際に達成されてきたものであり、単なる構想ではない。純現金も厚く、既存事業から営業キャッシュフローが出ている。防御ルールの海外利用が大きく伸び、買収先を既存顧客に販売する仕組みが定着すれば、2030年計画に近づく余地はある。世界市場への展開に成功した場合、国内の小型セキュリティ会社という現在の位置付けは変わりうる。
慎重な見方
防御市場が伸びることと、その成長利益が同社の株主に帰属することは違う。Cloudflare、Akamai、AWS、Microsoftなどはセキュリティを単体製品ではなく、通信網やクラウド基盤と一緒に提供できる。顧客が標準機能へ統合すれば、同社の技術が優秀でも独立した製品に支払う料金は下がる。AWS Marketplaceは販売経路であると同時に、AWSの判断に収益を左右される依存関係でもある。
WafCharmの設定自動化は、AIエージェントが最も代替しやすい仕事の一つだ。顧客のエージェントがクラウドの設定を調べ、防御ルールを提案し、検証するようになれば、人間向けの管理画面を購入する必要は小さくなる。脆弱性情報の収集・要約、診断報告書の作成、定型的な運用支援も同様である。AIで防御の生産性が上がるほど、同社が別料金を取り続けられるとは限らない。
2030年の売上高200億円という計画にも実行上の難しさがある。2025年の売上高は約51億円であり、既存製品の伸びだけでは到達しにくい。特に年間経常収益1,000万円以上の顧客を48社から500社超へ増やす目標は大きな飛躍を要する。大型買収で売上を増やせても、取得価格や追加の株式発行によって株主価値が増えないことがある。
2025年に純現金が増えた理由には大型の株式発行が含まれる。買収と希薄化によって成長を実現するなら、企業全体の売上高ではなく既存株主1株当たりの利益が重要になる。2026年にも新株予約権の行使があった。現在の株価は、海外展開、新製品、買収が相次いで成功し、成熟後も高収益が続くという多くの条件を要求している。どれか一つが遅れるだけで、払った値段に見合わない結果になりやすい。
どちらに重みを置いたか
実際の防御機能については強気の見方を支持するが、会社全体の利益が計画どおり増えるという見方には慎重である。中立では国内WAFとAWS向けルールを成長させ、運用・情報提供のAI代替は製品別に反映した。そのうえで、AWSへの依存、海外競争、買収の実行という会社固有の不確実性が残るため、確率は上側29%、下側40%と下方に寄せた。現在の株価には安全域が乏しく、結論は割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,287 円230 億円(+ 還元の換算額還元の合計 223 円22 億円)。 今の値に割り戻すと 1,293 円130 億円、今との差 −55.1%、 期待の年率 −1.4%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 6,728 円676 億円 | 589 円59 億円 | +154.1% | +10.3% | 659 円66 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,822 円384 億円 | 383 円38 億円 | +46.0% | +4.1% | 841 円85 億円 |
| 中立 | 31% | 2,215 円223 億円 | 226 円23 億円 | −15.3% | −1.7% | 757 円76 億円 |
| やや悲観 | 25% | 688 円69 億円 | 78 円8 億円 | −73.4% | −12.9% | 192 円19 億円 |
| 悲観 | 15% | 389 円39 億円 | 29 円3 億円 | −85.5% | −17.9% | 63 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,287 円230 億円 | 223 円22 億円 | −12.8% | −1.4% | 2,510 円252 億円 |
今の株価時価総額 2,880 円290 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 防御ルールの海外展開が大きく成功 利益 41 億円 · PER 15.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6,728 円676 億円
AIを使って開発されるアプリケーションが急増し、企業はクラウド上の通信を守るための防御機能に継続して投資する。攻撃遮断くんは国内の中堅・大企業に採用を広げ、契約企業数は7,000社に到達する。国内のWAF市場で築いた首位の地位を維持しながら、これまで導入が難しかった顧客にも広がる。
より大きな成功はAWS向け防御ルールで起きる。海外の利用環境は2万6,000件に増え、AWS Marketplaceが世界的な販売経路として機能する。攻撃データの蓄積とルール更新の品質が評価され、標準機能との競争にも耐える。防御ルールは一度開発したものを多くの顧客に提供でき、研究開発費を増やしながら利益率も高められる。
運用画面、脆弱性情報、診断などはAIによる自動化で販売数量が伸びにくいが、防御製品の成長がそれを大きく上回る。DataSignなどの買収先も既存顧客への販売で利益を生み、追加の大型希薄化は生じない。新しいAIセキュリティ製品は利益予想に直接上乗せしていないため、金額を伴う販売実績が出ればさらに上振れる余地がある。営業利益は約54億円へ増え、会社は高い収益性を維持する。
- 攻撃遮断くん:数量 7,000(年平均の契約企業数・社)× 価格 0.02(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 117 億円・営業利益 34 億円。国内首位を維持し、契約数は現在の約5.2倍。単価は名目1.34倍で物価並み。
- WafCharm:数量 1,314(年平均の契約企業数・社)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 19 億円・営業利益 4 億円。AI代替で顧客数は増えず、交通量課金と付加価値で単価のみ1.15倍。
- CSC Managed Rules for AWS WAF:数量 26,000(年平均の有料利用環境・件、推定)× 価格 0.00(有料利用環境1件当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 47 億円・営業利益 18 億円。AWSを通じた世界販売が成功。利用環境数は現在の約6.5倍、単価1.30倍。
- SIDfm:数量 235(年平均の契約組織数・社、推定)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。情報提供サービスはAI代替で数量横ばい、単価1.15倍。
- CloudFastener:数量 19.0(年平均の高単価契約企業数・社、推定)× 価格 0.17(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。人的運用契約数は横ばい、物価並みの単価上昇を維持。
- webtru:数量 180(年平均の契約企業数・社、推定)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。契約数横ばいで法令対応の収益を維持する上限側の筋書き。
- セキュリティ診断・受託開発・導入支援等:数量 220(年間の案件換算数・件、推定)× 価格 0.03(案件1件当たり平均売上・億円、名目)→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。案件数は横ばい、単価は物価並み。AIによる作業削減を価格上昇の範囲で吸収。
倍率:k=7.25%、2035年ROE約17.8%、通常の堀による超過利益の残存割合1/2からRONIC約12.5%とする。AI代替を加重したg_long=1.7%を使い、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限約15.6倍を採用。時価総額は余剰現金12億円に含まれる税後利息相当0.168億円を純利益から除き、余剰現金に戻り方0.75を適用して加算する。
確率:攻撃遮断くんの国内顧客拡大とAWS向け防御ルールの世界販売が同時に大きく成功する筋書き。2035年に売上約199億円となり、会社の2030年目標に5年遅れで近づく水準である。競争相手の規模と買収の実行難度から、強気の中でも低い確率にとどめた。
やや楽観 20% 国内WAFを伸ばしAWS販売も順調 利益 23 億円 · PER 15.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,822 円384 億円
国内の企業向けWAF需要は成長を続け、攻撃遮断くんは契約企業数を4,200社へ拡大する。国内首位のブランドは維持できるが、海外大手も日本向けの販売を強めるため、価格を物価以上に引き上げることは難しい。顧客数の増加が主な収益源となる。
AWS向け防御ルールでは海外利用環境が1万4,500件へ増える。AWS標準機能に取り込まれない独立した専門ルールとして評価され、既存の販売チャネルを利用して利益を積み上げる。大規模な現地営業組織を作らずに利用者を増やせることが、営業利益率を支える。
WafCharmはAIエージェントが運用業務の一部を担うため、契約数が現在をやや下回る。一方、顧客の通信量増加が従量料金を支え、大幅な売上減少には至らない。CloudFastenerなどの人的サービスも数量拡大を見込まず、利益率の改善は限定的である。買収先との相互販売は進むが、2030年の会社計画ほどの急増にはならない。営業利益は約30億円、純利益は約23億円となり、現在より大きく成長した企業になる。
- 攻撃遮断くん:数量 4,200(年平均の契約企業数・社)× 価格 0.02(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 68 億円・営業利益 19 億円。国内契約数は約3.1倍、単価は名目1.29倍。
- WafCharm:数量 1,240(年平均の契約企業数・社)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 18 億円・営業利益 4 億円。AIによる運用効率化で契約数はやや減少、単価1.15倍。
- CSC Managed Rules for AWS WAF:数量 14,500(年平均の有料利用環境・件、推定)× 価格 0.00(有料利用環境1件当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 25 億円・営業利益 9 億円。世界のAWS利用環境へ浸透、単価1.25倍。
- SIDfm:数量 210(年平均の契約組織数・社、推定)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。情報提供のAI代替で契約数は減少、単価1.15倍。
- CloudFastener:数量 19.0(年平均の高単価契約企業数・社、推定)× 価格 0.16(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。人月型運用の数量は横ばい、単価1.30倍。
- webtru:数量 172(年平均の契約企業数・社、推定)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIが設定を自動化するため契約数は微減。
- セキュリティ診断・受託開発・導入支援等:数量 200(年間の案件換算数・件、推定)× 価格 0.03(案件1件当たり平均売上・億円、名目)→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。人的案件は約1割減少、単価1.28倍。
倍率:k=7.25%、ROE約14.2%、通常の堀の残存割合1/2よりRONIC約10.7%。g_long=1.7%を用いた利益ベースの正当化PERは約15.2倍。市場のPERによる調整は行わない。余剰現金12億円の利息を事業純利益から除き、戻り方0.75で加える。
確率:会社の実績ある製品が国内外で順調に伸び、M&Aを大きな損失なく実行する場合。既存の販売経路に一定の裏付けはあるが、海外での競争優位を強く仮定するため中立より低い確率とする。
中立 31% 防御事業は成長するが運用・調査は自動化される 利益 13 億円 · PER 14.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,215 円223 億円
2035年も、ウェブサイトやAPIを攻撃から守るサービスは必要とされる。攻撃遮断くんは国内での採用を伸ばし、契約企業数は2,500社になる。国内首位の地位は維持するが、CloudflareやAWSの標準機能との競争によって、販売単価は物価の上昇ほどには増えない。顧客数を増やす力が収益拡大の中心になる。
AWS向け防御ルールは海外利用環境を8,500件に増やす。世界市場を取る機会はあるものの、AWS自身の製品改善や海外の専門企業との競争が続き、単価は物価に追いつかない。防御ルールの開発費と販売拡大に必要な費用を差し引いても、利益を稼げる事業として残る。
WafCharmの契約数は現在の約8割に減る。AIエージェントが防御設定やルール提案を行うようになり、顧客が専用の運用画面に払う料金には圧力がかかる。SIDfm、CloudFastener、webtru、診断・受託についても、それぞれ情報収集、人的作業、画面操作の自動化を数量と単価に反映する。会社が開発する新しいAIセキュリティ製品は、現時点で継続売上の金額が十分に確認できないため、成功を中心予想に織り込まない。
売上高は約79億円、営業利益は約16億円となる。事業は黒字を維持するが、2025年以降に積み上がる自己資本と買収資金に対して利益の増加は緩やかである。国内首位の防御企業として存続しても、2030年の売上高200億円計画とは大きな隔たりが残る10年になる。
- 攻撃遮断くん:数量 2,500(年平均の契約企業数・社)× 価格 0.02(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 39 億円・営業利益 10 億円。国内契約数は約1.85倍、単価1.24倍。物価を下回る値上げにとどまる。
- WafCharm:数量 1,080(年平均の契約企業数・社)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。AIエージェント代替の業務SaaS型。数量0.82倍、単価1.12倍。
- CSC Managed Rules for AWS WAF:数量 8,500(年平均の有料利用環境・件、推定)× 価格 0.00(有料利用環境1件当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 14 億円・営業利益 5 億円。世界のAWS利用環境への展開で数量約2.13倍、単価1.20倍。
- SIDfm:数量 165(年平均の契約組織数・社、推定)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の情報サービス型。数量0.70倍、単価1.12倍。
- CloudFastener:数量 14.0(年平均の高単価契約企業数・社、推定)× 価格 0.15(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月・運用型。数量0.74倍、単価1.25倍。
- webtru:数量 150(年平均の契約企業数・社、推定)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の業務SaaS型。数量0.83倍、単価1.12倍。
- セキュリティ診断・受託開発・導入支援等:数量 150(年間の案件換算数・件、推定)× 価格 0.03(案件1件当たり平均売上・億円、名目)→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月・工数型。数量0.68倍、単価1.29倍。
倍率:k=7.25%、ROE約10.1%、通常の堀の残存割合1/2からRONIC約8.7%。2035年以降の名目成長g=1.7%による正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)は約14.5倍であり上限そのものを採用。2025年の利益水準や現在の市場PERを倍率の根拠にはしない。余剰現金12億円の税後利息相当を事業利益から除き、現金の戻り方0.75を加える。
確率:国内WAFの首位とAWSでの販売実績を認め、主力防御製品には顧客数の増加を認める。一方、運用SaaS・情報サービス・人的支援にはAI代替の型どおり数量の減少を反映した。会社計画を機械的に延長しない中心シナリオである。
やや悲観 25% クラウド標準機能に押されて収益性が後退 利益 4 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 688 円69 億円
WAF市場自体は拡大するが、クラウド事業者が標準機能を強化し、独立した防御製品が追加料金を取りにくくなる。攻撃遮断くんは既存顧客をある程度維持するものの、契約企業数は1,400社程度で伸び悩む。名目価格も物価の上昇をほとんど転嫁できない。国内での首位という評価が残っても、利益を大きく増やす力は弱まる。
AWS向け防御ルールは利用環境を増やすが、競争が激しく、値下げを伴う。クラウド事業者の仕様変更や販売条件の変更にも対応費用がかかり、製品の利益率は低下する。WafCharmでは顧客がAIエージェントを使って防御設定を行い、契約数が減る。継続収益という形だけでは値段を守れない。
脆弱性情報、運用支援、受託開発でも人の作業が減り、買収先との相互販売は期待ほど進まない。研究開発費や顧客対応費は急に削れないため、売上高は現在を下回り、営業利益は約5億円へ縮む。経営陣は買収に慎重になり、株主還元も利益に応じて縮小する。純現金は残るが、資本効率の低い会社へ変化したという評価が定着する。
- 攻撃遮断くん:数量 1,400(年平均の契約企業数・社)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 18 億円・営業利益 4 億円。国内での契約数はほぼ横ばい。競合価格に引きずられ単価1.05倍。
- WafCharm:数量 920(年平均の契約企業数・社)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。設定の自動化が顧客側に普及。数量約0.70倍、単価1.05倍。
- CSC Managed Rules for AWS WAF:数量 4,800(年平均の有料利用環境・件、推定)× 価格 0.00(有料利用環境1件当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。世界の市場は伸びてもシェア獲得が鈍く、単価は微減。
- SIDfm:数量 142(年平均の契約組織数・社、推定)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIによる調査自動化で契約数が大幅に減少。
- CloudFastener:数量 11.0(年平均の高単価契約企業数・社、推定)× 価格 0.14(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人的運用の契約数は現在の約0.58倍。
- webtru:数量 126(年平均の契約企業数・社、推定)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIによる同意管理の自動設定が進み数量が減少。
- セキュリティ診断・受託開発・導入支援等:数量 121(年間の案件換算数・件、推定)× 価格 0.03(案件1件当たり平均売上・億円、名目)→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。案件数は現在の約0.55倍。固定的な人件費を賄えない。
倍率:ROE約4.0%はk=7.25%を下回る。資本コストを超えない投資では利益成長を高く評価できず、稼ぐ力の上限1÷k=13.79倍を下回る10.5倍とする。防御製品の独立価格を維持しにくくなる構造的な弱さを反映。余剰現金は不況・事業投資による消費を考えて9億円とし、戻り方0.75を適用する。
確率:AWSや海外の総合セキュリティ企業が防御機能を標準化し、同社の単価と新規獲得を圧迫する場合。AIによる運用作業の減少はすでに中立数量へ入れており、確率を追加で下げる主因にはしていない。独立製品としての価格競争と買収成果の不足を下振れの理由とする。
悲観 15% 独立防御製品の堀を失い収益が赤字化 利益 −1 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 389 円39 億円
ウェブアプリケーションの防御需要はなくならないが、その需要の多くをクラウド基盤や大手セキュリティ企業が取り込む。攻撃遮断くんは国内企業の一部に残るものの、契約企業数は800社まで減る。価格も据え置かれ、国内首位という地位は過去のものとなる。防御ルールの更新に必要な開発費は残り、売上高の減少ほど費用を削れない。
AWS向け防御ルールでは標準ルールとの競争に敗れ、利用環境数は3,000件へ減少する。AWSの販売条件変更が重なると、国内から世界へ売るという成長の仕組みも弱まる。WafCharmは顧客側のAIエージェントによる運用に置き換わり、契約企業数が現在の約半分になる。
SIDfm、CloudFastener、webtru、受託業務では、調査、設定、報告、運用の定型的な作業がAIに置き換わる。買収した事業も十分な利益を生まず、人員と研究開発の固定費が残る。売上高は約28億円へ減り、営業赤字に転落する。事業の一部を整理し、新規投資を抑えるが、株主還元は限定的となる。
それでも、2025年末に確認できる純現金は約37億円であり、直ちに資金繰りが破綻する筋書きではない。将来の稼ぐ力に高い値段は付けず、現時点の純現金と売却可能性を慎重に評価した資産価値を中心に考える。会社が買収によって現金を大きく失えば、この床も見直す必要がある。
- 攻撃遮断くん:数量 800(年平均の契約企業数・社)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。独立WAFとしての地位を失い、契約数は現在の約0.59倍。単価は据え置き。
- WafCharm:数量 700(年平均の契約企業数・社)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。AIエージェントとクラウド標準機能に代替され、数量約0.53倍。
- CSC Managed Rules for AWS WAF:数量 3,000(年平均の有料利用環境・件、推定)× 価格 0.00(有料利用環境1件当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。AWS標準ルールとの競争に敗れ数量減少、単価0.95倍。
- SIDfm:数量 90.0(年平均の契約組織数・社、推定)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。情報提供のAI代替が進み、契約数は現在の約0.38倍。
- CloudFastener:数量 9.0(年平均の高単価契約企業数・社、推定)× 価格 0.12(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人月型運用サービスの採算が悪化。
- webtru:数量 100(年平均の契約企業数・社、推定)× 価格 0.01(契約1社当たり年額売上・億円、名目)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。同意管理の画面・設定が代替され、赤字が残る。
- セキュリティ診断・受託開発・導入支援等:数量 100(年間の案件換算数・件、推定)× 価格 0.03(案件1件当たり平均売上・億円、名目)→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。受託・診断の案件数は現在の約0.45倍、専門人員の固定費を吸収できない。
倍率:2035年に営業赤字となり、継続利益にPERを掛けて評価できない。現在の自己資本44.1億円に対する資産評価0.9倍として39.69億円とする。将来の留保利益を積み上げた2035年自己資本78.1億円に0.9倍を掛けることはしない。2025年末の純現金37.1億円を床に使い、のれんなど換金不確かな資産の価値は床に含めない。
確率:AWSやCloudflareなどの標準防御サービスへの統合が進み、同社の独立製品としての存在感が低下する。買収の失敗や価格競争も重なり、営業損失が発生する構造的な負け筋である。倒産を前提にはせず、確認できる純現金を資産価値の床に使う。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
攻撃遮断くん
ウェブサイトやAPIへの実際の不正通信を遮断する国内向けクラウド型WAF。主たる価値は防御の実行と更新であり、操作画面中心の業務SaaSとは区別する。
| 数量年平均の契約企業数・社 | 価格契約1社当たり年額売上・億円、名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,348 | 0.01 | 17 | 5 |
| 10 年後 中立 | 2,500 | 0.02 | 39 | 10 |
取り方:2025年有価証券報告書の攻撃遮断くん販売実績1,683,449千円をそのまま使用した。利用企業数は2026年6月末1,369社などの開示を手掛かりに2025年の年平均を1,348社と推定し、売上高を割って平均年額約125万円を算出した。2026年6月の月次MRR解約率は0.95%。国内クラウド型WAFの売上高順位は首位とされるが、同一定義の競合別金額がなく正確なシェア率は不明。営業利益は製品別未開示のため全社利益を分析用に配賦した推定値。
WafCharm
AWS、Azure、Google CloudのWAF設定・防御ルール運用を自動化するサービス。通信量に応じた料金もあるが、運用操作の自動化部分にはAIエージェント代替が作用する。
| 数量年平均の契約企業数・社 | 価格契約1社当たり年額売上・億円、名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,314 | 0.01 | 17 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,080 | 0.01 | 15 | 3 |
取り方:2025年有価証券報告書のWafCharm販売実績1,663,073千円を使用した。2026年6月末の利用企業1,297社と2025年のARR推移を基に、2025年の年平均1,314社を分析用に推定。平均年額は約127万円で、公開されている複数の月額プランと矛盾しない。2026年6月時点の月次顧客解約率は0.93%。運用画面・設定支援が価値の中心となる部分はAIエージェント代替の『席課金・画面中心SaaS』型に準じて中立数量を現在の0.82倍、単価を1.12倍とした。売上に含まれる通信量連動部分はこの慎重な置き方の上振れ要因。利益は推定配賦。
CSC Managed Rules for AWS WAF
AWS WAFに適用する防御ルールを世界の利用者に提供する。通信を守る実行機能そのものに対価が発生するため、画面操作や人月販売とは異なる。
| 数量年平均の有料利用環境・件、推定 | 価格有料利用環境1件当たり年額売上・億円、名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,982 | 0.00 | 6 | 2 |
| 10 年後 中立 | 8,500 | 0.00 | 14 | 5 |
取り方:会社が開示する2025年の四半期末ARRはおおむね635、593、640、749百万円で、平均は約654百万円となる。攻撃遮断くん・WafCharm以外の継続売上約11.76億円を、Managed Rules、SIDfm、CloudFastener、webtruの四半期平均ARR構成比で配賦した。契約環境数は会社が公表していないため、世界のAWS Marketplaceで販売する低単価ルール製品の想定平均単価約14万円から約3,982件と推計。実際の課金単位と完全に一致する数量ではない。競合はAWS標準ルールやCloudflare等の独自防御で、市場シェアは開示不足により算定できない。利益は推定配賦。
SIDfm
脆弱性情報の収集・整理・対策判断を支援するサービス。情報提供や調査作業の一部はAIエージェントによって直接代替される。
| 数量年平均の契約組織数・社、推定 | 価格契約1社当たり年額売上・億円、名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 235 | 0.01 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 165 | 0.01 | 2 | 0 |
取り方:2025年の四半期末ARR約269、274、288、289百万円の平均280百万円を、その他継続売上の製品別配賦に用いた。販売実績の個別開示はないため売上2.39億円、約235契約、年額約102万円はいずれも分析上の推定である。公表された契約実数やSIDfm単独の市場シェアではない。脆弱性情報の収集・要約はAIエージェント代替の『情報・調査サービス』型とし、中立数量を現在の0.70倍、単価を1.12倍とした。利益は推定配賦。
CloudFastener
クラウド環境のセキュリティ対策を専門家の継続運用と組み合わせて提供する高単価サービス。作業工数の自動化が収益構造を変えうる。
| 数量年平均の高単価契約企業数・社、推定 | 価格契約1社当たり年額売上・億円、名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 19.0 | 0.12 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 14.0 | 0.15 | 2 | 0 |
取り方:2025年の四半期末ARRは約174、250、327、344百万円と成長し、平均約274百万円である。その他継続売上から売上約2.34億円を分析用に配賦した。個別の顧客数は非開示であり、年額1,200万円程度の高単価契約を想定して約19社と推定した。人的な運用・設定・検証を含むため、AIエージェント代替の『人月・工数で売るサービス』型とし、中立数量を現在の0.74倍、単価を1.25倍とした。高額契約数の増加余地はあるが、売上単価を維持できるかは別問題である。利益は推定配賦。
webtru
企業サイトの同意管理や個人情報の取扱いに関するサービス。法令対応の必要性は残るが、設定・操作をAIエージェントが担う可能性がある。
| 数量年平均の契約企業数・社、推定 | 価格契約1社当たり年額売上・億円、名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 180 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 150 | 0.01 | 1 | 0 |
取り方:2025年2月のDataSign子会社化後、四半期末ARRとして約155、163、172、184百万円が開示されている。平均約169百万円のARR構成比でその他継続売上を配賦し、売上約1.44億円とした。年平均180契約、平均年額約80万円は開示契約数ではなく推定。法令対応サービスであっても、年5%未満の解約率、年単位の移行障壁、法改正のたびの値上げ実績といった『記録の正本』型の証拠が二つ以上確認できないため、AI代替の『業務SaaS・画面中心』型とし、中立数量0.83倍、単価1.12倍を採用した。利益は推定配賦。
セキュリティ診断・受託開発・導入支援等
診断、開発、設定、調査、専門家による個別案件などの非継続売上。人的作業の一部をAIが代替する。
| 数量年間の案件換算数・件、推定 | 価格案件1件当たり平均売上・億円、名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 220 | 0.03 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 150 | 0.03 | 5 | 0 |
取り方:2025年の四半期別の非継続収益を約120、127、135、175百万円として合計約5.57億円を求めた。案件数は非開示なので、案件当たり売上を約250万円と仮定した220件換算であり、実際の受注件数を示さない。2025年の全社売上50.8億円から有報開示の攻撃遮断くん16.83449億円、WafCharm16.63073億円、非継続収益5.57億円を除いた約11.76億円を、残る四つの継続製品に配賦した。人月・工数に依存する部分の中立数量は現在の0.68倍、単価は物価上昇の範囲内の1.29倍とした。利益は推定配賦。
リスクと懸念
AI エージェント代替
攻撃を遮断するWAFそのものはAIが普及しても必要だが、その設定、脆弱性情報の収集、分析、運用報告、同意管理の操作、受託開発にはAIエージェントが入り込む。WafCharm、SIDfm、CloudFastener、webtru、診断・受託の中立数量には製品別の縮小を反映した。AIで開発効率が上がるというだけでは、その利益を顧客から徴収できるとは限らない。
クラウド基盤事業者による機能の標準化
AWS、Cloudflare、Akamai、F5などは、クラウドや通信基盤の周辺機能として防御を提供できる。同社の独立した製品が追加料金に見合う性能を示せなくなると、シェアだけでなく価格も下がる。特にAWS Marketplaceでの海外拡大は販売経路をAWSに依存するため、ルールの仕様変更や販売条件改定が収益を左右する。
2030年計画と実績の隔たり
会社が掲げる2030年の売上高200億円、営業利益40億円は、2025年の規模からの大きな飛躍を必要とする。高単価顧客数を48社から500社超へ増やす目標にも実行上の不確実性がある。市場が伸びても既存製品の販売だけでは埋まらず、新製品、海外展開、買収の成果が重ならない場合には計画を下回る。
買収と株式希薄化
2025年の資金調達によって自己資本が増え、2026年10月にも自己株式を交付する新株予約権の行使が完了した。買収で売上が増えても、取得価格が高かったり、株式交付が繰り返されたりすれば既存株主の持分当たり利益は伸びない。買収先との相互販売や増分ROICが資本コストを超えるかを継続して確かめる必要がある。
価格決定力の未検証
国内クラウド型WAFでの首位と月次1%弱の解約率は競争力の証拠ではあるが、長年にわたり物価以上の値上げを顧客に受け入れさせた実績は十分に確認できない。2026年第3四半期からの価格改定は重要な試金石であり、改定後のARPUだけでなく契約数と解約率を合わせて見る必要がある。
攻撃技術の変化と防御の失敗
新しい脆弱性、AIを使った攻撃、APIの不正利用、クラウド設定の変更などに対応し続けるには研究開発費がかかる。重大な誤検知や攻撃の見逃しが起きれば、単なる一時的な費用負担ではなく、顧客からの信頼を損ねる可能性がある。導入企業が防御製品を乗り換える負担は、こうした信頼の喪失によって一気に小さくなる。
現金を利益と混同する危険
2025年末の純現金約37億円は財務の支えになるが、同年には株式発行による約18.5億円の調達があった。純現金の増加を本業のフリーキャッシュフローだけの成果と解釈してはいけない。現金が買収に投じられれば、保有現金の価値は取得事業の収益力に置き換わるため、買収後の利益と同じ現金を二重に評価しないことが重要である。
今後の分かれ目
- 攻撃遮断くんの契約企業数が継続して増え、価格改定後も解約率が悪化しなかったら
- 国内WAFの値決め力を上方修正する。中立の契約数と単価を見直し、継続的に物価以上の値上げができる証拠となるか確認する。
- Managed Rulesの海外ARRが継続的に年率20%以上成長し、利益率も維持されたら
- AWS向け防御ルールの世界販売が成長の柱になったと判断し、中立からやや楽観への確率を移す。AWS標準機能との競争に対して独立した価格決定力があるかも合わせて確認する。
- WafCharmの顧客数が減少する一方で通信量課金が増え、ARRを維持したら
- AIエージェントによる画面操作の代替を織り込んでも、トラフィックに連動する収益が残る証拠となる。WafCharmの数量減少と単価上昇の前提を見直す。
- 新しいAIセキュリティ製品について継続売上の金額と顧客数が開示されたら
- 初めてその売上を新規の成長源として明示的に組み込む。単なる提供開始や実証実験では、AI代替リスクを打ち消す収益の証拠とみなさない。
- 買収が続くのに1株当たり利益や営業キャッシュフローが伸びなくなったら
- 買収による増分投資利回りが資本コストに届かない可能性を重く見る。大型顧客数よりも、希薄化後の株主利益と買収先の現金創出力を優先して確認する。
- 2030年目標に近づくほど大型顧客と海外収益の比率が高まり、営業利益率20%以上を維持したら
- 現在の中立を保守的すぎる可能性として再評価する。ただし売上増加のうち買収と既存事業の寄与を分け、必要だった株式発行や取得資金を差し引いて考える。
見ておくもの
- 攻撃遮断くんの契約企業数、ARR、月次MRR解約率と実現単価
- WafCharmの契約企業数、通信量連動収益、ARR、月次顧客解約率
- CSC Managed Rules for AWS WAFのARR成長率と海外売上比率
- 2026年第3四半期以降に適用する価格改定の実際の効果
- ARR1,000万円以上の顧客数と2030年500社超という目標への進捗
- AI MONBANなどAIセキュリティ新製品の有償ARRと継続顧客数
- M&Aの取得額、買収後の営業利益、営業キャッシュフロー、株式希薄化
- AWS Marketplace経由の販売条件とAWS標準防御機能の変更
- 営業利益率と研究開発費、通信費、人件費の推移
- 現金及び預金、純有利子負債、配当、自社株買いの実績
倍率と資本コストの決め方
2025年の売上高約50.8億円を起点に、会社が開示した攻撃遮断くんとWafCharmの販売実績を固定し、残る製品は四半期ARRと非継続売上から推計した。各筋書きでは契約・利用環境・案件数という実質数量と、名目の年額単価を別々に変化させた。AIエージェント代替は運用SaaS、情報、人的サービスの数量・単価と全社のg_longに反映し、資本コストの寿命には重ねていない。楽観から中立のPERはROE、RONIC、k、gの正当化式の上限を使用し、現在や過去の市場PERを参照していない。10年後の時価総額と10年間の累積還元をk=7.25%で現在価値に割り引くと、希薄化考慮前の確率加重価値は約118億円、2026年10月交付予定の株式による既存株主の取り分を考慮すると約116億円となる。指定資料の現在時価総額約389億円との差は約−70%。日本基準の新リース会計適用後も、営業費用に賃料を含む現在と整合する利益の形で比較する。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。10年国債3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%から、厚い純現金による0.25%を差し引いた。世界競争、買収失敗、AI代替は数量・利益率・確率に反映し、資本コストへの恣意的な上乗せは行わない。
同じ業種(情報・通信業)の AI 分析
読んだ資料
- サイバーセキュリティクラウド 2025年12月期有価証券報告書:製品別販売実績、キャッシュフロー、M&A
- サイバーセキュリティクラウド 中期経営計画・事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2026年2月13日)
- サイバーセキュリティクラウド 2026年12月期第2四半期決算説明資料(2026年8月14日):製品別ARR、利用企業数、解約率
- 日本ネットワークセキュリティ協会 2024年度国内情報セキュリティ市場調査報告書:2025年度WAF市場予測
- サイバーセキュリティクラウドによる2026年中期経営計画の説明:市場規模、2030年目標、株主還元方針
- サイバーセキュリティクラウド 第8回新株予約権の大量行使・行使完了に関する2026年10月16日開示