結論
ネオマーケティングは、消費者を調べ、商品開発や広告、購入後の顧客対応まで企業を支えるマーケティング支援会社である。筆者の評価は「割高」だ。顧客から生の声を集める力は残るが、その声をまとめ、分析し、広告を制作・運用する仕事にはAIエージェントという新しい競争相手が現れた。今の時価総額を支えるほどの持続的な利益と、競争から守られた料金設定力はまだ確認できない。
2025年9月期には売上が23億円を超えたのに、営業利益は約0.1億円だった。2026年9月期も9月末の修正予想は売上27.1億円、営業利益0.74億円にとどまる。純利益の予想が2.84億円へ増えたのは本社の明渡協力金という特別利益による部分が大きく、本業が急回復したことを意味しない。2026年4月に傘下へ加えたSNS運用とPRの2社は新しい顧客を連れてくるが、同時に生成AIの影響を強く受ける労働集約的な仕事も増やす。
2036年の中立像では、調査の実施件数や人手を使う広告運用を減らしつつ、品質の高い対面調査では値上げの余地が残ると考える。それでも10年間に株主へ渡る現金と将来の稼ぐ力を割り引いた値は、今の時価総額を大きく下回る。強い成長を全否定するのではない。既存の予想を幾度も下回った経営実績と、競合がAIを使って同じ成果を安く届けられる構造を前に、高い期待を先払いしないという判断だ。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、会社の価値は売上の大きさよりも、競争にさらされても残る手取りの利益で決まる。ネオマーケティングは、今も日本企業が必要とする顧客理解を提供する。しかし調査方法を知っていることと、その利益を長く守れることは違う。生活者パネルを提携先と共有し、案件単位の発注では、競合が安く出てきた時に契約を守る仕組みは弱い。
筆者がとくに慎重なのは、人を採用して売上を増やした後の稼ぎだ。2023年に営業利益3億円を超えてから、売上を大きく減らさないまま利益はほぼ消えた。将来の成長のための先行投資だったとしても、採用した人材が実際に資本コストを超える利益を生むまでは株主の取り分と見なせない。消費者面談は残るが、汎用AIが調査票の設計、レポート制作、SNSの運用を一度にこなすと、従来の人数に応じた請求単価には戻りにくい。
買収した企業が異業種の顧客をつなぎ、調査から販促までを継続して引き受ける関係になれば、稼ぐ力は改善しうる。それでも顧客継続率、値上げ成功率、買収後の利益率という三つの確認が要る。明渡協力金の一時収入で増えた預金は価値があるが、それは毎年生まれるオーナー利益ではない。配当のない会社では現金が積み上がっても株主に戻る時期は分からず、その価値を無条件に額面どおり評価しない。
時価総額との比較で安全域がほとんどない現状では、将来の調査市場の名目成長をそのまま会社の成長と取り違えるべきではない。力のある顧客接点を持つ小型企業として存続する余地は十分ある。一方、10年を通じて高い収益率を維持できると判断する材料は乏しく、成長する事業を持っていることと、今の評価が妥当であることは別の問いである。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は一社のマーケティング課題を、調査設計から実行まで請け負う仕事である。会計上は「マーケティング支援事業」の単一セグメントだが、会社は四つのサービス別売上を公表している。2025年9月期のインサイトドリブンは5.51億円、カスタマードリブンは9.98億円、デジタルマーケティング・PRは4.17億円、カスタマーサクセス・その他は3.40億円である。二つの調査サービスが売上のおよそ3分の2を占める。
インサイトドリブンでは、グループインタビューや個別面談、実際に商品を使ってもらう調査で、言葉にしにくい購買動機を探る。カスタマードリブンはネット調査や会場調査、ホームユーステストを使い、顧客の仮説を数字で確かめる。サービスの源泉は調査回答者の確保と調査設計力だが、ネットで回答を集計する工程だけなら顧客が自分でできる時代になっている。セルフ型の「リサーチDEMO!」も展開するが、独立した席課金売上は開示されていない。
デジタルマーケティング・PRでは広告表現の制作、SNS運用、広報支援、効果測定を行う。2026年4月にTikTok運用に強いエッセンスマーケティング、美容・ファッションの広報に強いPA Communicationが加わった。一方、カスタマーサクセスには電話などを通じた顧客支援や調査、外部人員を活用する作業が含まれる。これらは契約を取る人と納品する人の働く時間が原価の大きな部分を占める。
数量をつかむ手掛かりは会社が発表する顧客数と顧客単価だ。2025年の単体取引先は792社、平均取引額は280.6万円で、約22.2億円の単体売上に対応する。四サービスそれぞれの契約社数は非公表なので、取引先が複数サービスを買う重複を認めて関係社数を推定した。連結売上と単体の顧客KPIを同一視しないことが肝要である。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、一連のマーケティング仕事を小回りよくつなげられることだ。顧客が新商品について悩めば、インタビューで課題を発見し、定量調査で裏を取り、広告やPRまで進める。外注先を何社も選ぶ手間を減らし、顧客からの反復受注を生みやすい。2026年6月末までの9カ月には、主力の二つの調査サービスで前年同期を上回る売上があった。顧客が一定の価値を認めている証拠である。
ただし、これは強固な堀、つまり競合が模倣しにくい仕組みとは違う。会社が掲げる3,000万人を超える生活者パネルには提携先の会員が含まれ、全員を独占しているわけではない。年間解約率、顧客が他社に移るための期間、値上げ後の継続率、業務記録の正本として使われる比率は公表されていない。調査結果を得たい顧客は、より安いネット調査やAI支援による内製を選ぶことができる。客離れせず価格を上げられる力を、現時点で高く評価する根拠は乏しい。
利益の長期推移はむしろ警告している。2021年と2023年には営業利益3億円前後を生んだが、採用と育成への先行投資を経て2024年と2025年はほぼ損益分岐点まで落ちた。売上が増えた事実だけでは、増分の投下資本が資本コストを超えて稼いだとは言えない。2026年4月の買収が顧客基盤と粗利益を厚くする一方、のれんと固定人件費を増やすなら、堀は広がらず投資効率だけが低下する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内市場調査は消えないが、誰が料金を取るかが変わる。日本マーケティング・リサーチ協会による2024年度の市場規模は2,725億円で、インターネット調査は847億円、従来手法の調査は2,413億円だった。ネオマーケティングの2025年度の二つの調査サービス合計15.49億円は、市場全体との単純比較で約0.57%にとどまる。対象期間と事業の範囲が一致しないため厳密なシェアではないが、業界の値段を決める立場ではないことは分かる。
競争相手にはインテージ、マクロミル、クロス・マーケティング、GMOリサーチ&AIがいる。JMRAが掲載するマクロミルの全社年商は約450億円、クロス・マーケティングは約262億円で、市場規模との参考比はそれぞれ約16.5%と9.6%になる。ただし国外売上や関連事業が混ざるため正式な国内調査シェアではない。マクロミルはネット調査で国内首位を掲げ、インテージは小売購買データなど継続蓄積するデータで差別化する。ネオマーケティングが独占データや共同利用基盤でこの差を埋めた事実はない。
広告の需要自体はデジタルへ移る。電通の推計では2025年の国内インターネット広告費は約4兆円、SNSを含むソーシャル広告費は約1.31兆円に達する。しかし広告費には媒体購入額が入り、同社が受け取る制作・運用手数料とは別物だ。広告市場が成長しても、AIが素材を制作し広告予算を自動配分すれば、代理店の工数と手数料率は下がりうる。競争相手も電通デジタル、サイバーエージェント、セプテーニや各種PR会社へ広がる。
さらにカスタマーサクセスでは自動応答と生成AIが定型の顧客対応を代替する。ヤノ経済研究所が示す国内コールセンターサービス市場は約1兆円だが、同社のその他売上すべてがその市場に属するわけではなく、正確なシェアは出せない。10年後の調査予算が名目で残っても、外注する案件数が減ると想定するのが自然だ。人が商品に触れ、本音を語る対面調査には需要が残る一方、集計・翻訳・分析・広告配信などは価格競争が深まる。
資本政策と M&A
資本配分には評価できる行動と、大きな疑問が同居する。2022年と2025年には自己株式を取得し、2025年の取締役会決議では最大5万株、0.6億円の買付枠を設けた。一方で現金配当は行っておらず、会社は利益を人員拡充と買収に優先配分してきた。2025年からの優待は9月末に500株以上を保有する株主へ年間2万円相当のデジタルギフトを贈る制度だ。受給者数は未開示だが約300人と仮定すれば、年間費用は0.06億円、10年で0.6億円になる。支出実績が確かめられるまでは概算にすぎない。
2023年公表の2024~2026年中期経営計画は、最終年度の売上40億円、営業利益5億円、ROE24.2%、顧客1,270社を目指した。2024年には売上31億円、営業利益2.5億円、ROE20.5%へ見直され、さらに2026年9月30日の通期修正予想では売上27.10億円、営業利益0.74億円となった。中計で掲げた数字と現実の隔たりは大きい。新たな配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額について継続的な数値の約束は確認できない。
2026年4月の2社買収でSNS運用とPRの専門人材を得たが、自己株式の第三者割当処分も伴い、既存株主の持分はわずかに薄まった。事業の買い足しが長期の利益率を高めるかはまだ実証されていない。大株主上位10先で約73%を保有する構造は経営の機動力を高める半面、少数株主への現金還元が後回しになる余地もある。明渡協力金は2026年と2027年に計5.5億円の特別利益が見込まれるが、本社移転の費用とその後の賃料負担を差し引いて使途を見なければならない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
人間が商品の試作品を触り、店頭で迷い、他人に本音を語る場面はAIに置き換えられない。インサイトドリブンではこの生の行動を観察でき、提携パネルを含む3,000万人規模の回答者に接触できる。顧客が調査から商品開発、PR、購入後の関係づくりへ仕事を広げれば、広告の単純制作費ではなく経営課題の解決に対価を払ってもらえる。調査設計の品質も、AI生成の回答や不正回答の増加でかえって価値が上がる可能性がある。
2025年の取引先792社という実績は小企業として無視できない販売基盤であり、2026年4月に買収した2社はTikTok運用と美容・ファッション業界の人脈を持ち込む。2026年第3四半期にはデジタル・PRが前年同期比6割増収となり、既存の調査顧客に広告まで売る形が広がり始めた。国内デジタル広告の大きな市場に対して同社の取り分は極めて小さく、巨大な業界のわずかな顧客を獲得するだけでも業績の改善余地はある。
一度育てたコンサルタントは同じ顧客へ複数の案件を提供できるので、採用費用が一巡すれば利益率は戻りうる。2021年には営業利益率16%台を示した実績があり、高付加価値面談の値上げと自動化による生産性改善が両立すれば、今の低利益率は恒久的ではない。明渡協力金という一時資金も新しい商品開発や買収後の統合を支える。会社の既存の顧客基盤と事業横断の営業力を最大限に活かせるなら、低い出発点から再びまとまった営業利益を生む可能性は残る。
慎重な見方
人が調査を受けることは残っても、調査を企画し、結果を文章にまとめ、示唆を作る仕事はAIエージェントが急速に安くする。顧客企業が社内のデータと外部調査パネルをAIにつなげば、調査会社へ発注する案件そのものが減る。価格を自分で決められるほど独占的なデータも、年間解約率が低いという数値も公表されていない。契約ごとの発注である以上、別の会社へ移る費用は高くない。
2025年の連結営業利益は約0.1億円にとどまり、2026年も9月末には通期営業利益予想が下げられた。営業利益3億円超を稼いだ過去に戻ると期待するなら、採用費用を回収できたという実証が必要である。中計の売上40億円、営業利益5億円という約束は大幅な未達見込みになった。取引先が増えても、一社当たりの仕事にかかる人件費が下がらなければ株主の手取りは増えない。
買収したSNS運用とPR会社は流行する媒体に深く依存する。広告表現の生成、投稿管理、効果測定をAIが引き受ければ、請負工数を積み上げて請求する商売には値下げ圧力がかかる。特別利益の明渡協力金は現金をもたらすが、移転先の家賃や買収への再投資で消える可能性があり、毎年繰り返せる利益ではない。経営の支配力が高く無配が続く構造では、少数株主が余剰現金を還元させることも難しい。顧客を持ちながら利益を生まない会社へ変わることが、長期所有者にとって最も重い失敗である。
どちらに重みを置いたか
市場が求める顧客理解と実地調査には残存価値があり、買収したSNS・PRの販路も軽視しない。ただし、2024~2025年の利益率低下と繰り返す計画未達は、堀や増分資本収益率の強さを立証していない。AI代替による調査・制作工数の縮小は中立の数量と長期成長率にすでに織り込み、確率で再び罰してはいない。やや悲観と悲観を合わせて39%としたのは、AIだけでなく買収統合、固定人件費、現金の使途という会社固有の実行リスクがあるためだ。割引後の価値は時価総額を大きく下回るという結論が優勢である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 536 円13 億円(+ 還元の換算額還元の合計 38 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 268 円7 億円、今との差 −79.7%、 期待の年率 −8.2%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 1,560 円39 億円 | 101 円3 億円 | +25.8% | +2.4% | 183 円5 億円 |
| やや楽観 | 17% | 915 円23 億円 | 65 円2 億円 | −25.8% | −3.0% | 167 円4 億円 |
| 中立 | 33% | 446 円11 億円 | 36 円1 億円 | −63.4% | −9.8% | 159 円4 億円 |
| やや悲観 | 25% | 157 円4 億円 | 14 円0 億円 | −87.0% | −18.9% | 43 円1 億円 |
| 悲観 | 14% | 157 円4 億円 | 6 円0 億円 | −87.6% | −19.1% | 23 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 536 円13 億円 | 38 円1 億円 | −56.5% | −8.2% | 574 円14 億円 |
今の株価時価総額 1,320 円33 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 質の高い実地調査を起点に利益率が回復 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,560 円39 億円
消費者が実際に商品を使う様子や深いインタビューを必要とする企業が残り、調査の品質を重視する顧客から継続して受注できる。対面調査の単価は物価に沿って上がり、定量調査も不正回答を見抜く運用品質で競争力を保つ。AIは調査の集計やレポート作成の人手を減らす一方、会社は顧客が支払う価値の高い設計や観察へ人員を振り向ける。
2026年の買収で加わったTikTok運用と美容・ファッションPRの専門チームは、既存顧客への提案で成果を上げる。ただし広告運用の請負件数は現状を超えず、業界でAIによる工数削減が進むため手数料もほぼ横ばいとする。買収子会社ののれん減損は起こらず、採用投資が効率化につながり営業利益率は過去の好調期へ近づく。
この場合でも大量の市場シェア獲得を前提にしていない。企業が顧客理解そのものに対価を払う形へ進み、生活者の生の反応と戦略立案の質で差別化できるという、実行の成功が連続する筋書きである。自己株買いが再開され、移転に伴う特別利益の余りも事業を支える現金として残る。
- インサイトドリブン(定性調査):数量 167(年間サービス利用社・契約関係数(社相当、重複含む。非公表推計))× 価格 0.04(利用社・契約関係1件当たり年間売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。現在の契約相当数の0.98倍、単価1.34倍。実地調査の価値を残す。
- カスタマードリブン(定量調査):数量 391(年間サービス利用社・契約関係数(社相当、重複含む。非公表推計))× 価格 0.03(利用社・契約関係1件当たり年間売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。現在の契約相当数の0.93倍、単価1.31倍。ネット調査のAI内製化。
- デジタルマーケティング・PR:数量 149(年間利用社・広告/PR運用契約数(社・契約相当、非公表推計))× 価格 0.03(年間広告・PR運用契約1件当たり会社計上売上(億円、広告費全体とは別))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。現在の契約相当数の0.99倍、単価1.00倍。AI広告運用で手数料低下。
- カスタマーサクセス・その他:数量 99.0(年間受託顧客・継続作業契約数(社相当、非公表推計))× 価格 0.04(契約1件当たり年間業務委託報酬(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。現在の契約相当数の0.90倍、単価1.32倍。業務・顧客対応の自動化。
倍率:AIエージェント代替後の長期名目g=0%、k=8.25%。RONIC=k+堀の残存比率1/3×(事業ROE−k)だが、g=0のため正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=1/k=12.12倍。市場のPERは参照しない。全社純利益から余剰現金4.0億円の税後利息年1.4%を除いた事業利益にPERを掛け、余剰現金の75%を加える。一時的な本社明渡協力金の税引後残額のうち事業に使わなかった額は2036年の余剰現金に反映し、純利益を二重に増やさない。
確率:2026年4月の2社買収が広い顧客へ波及し、対面調査の高品質を値上げに結びつけ、人員の生産性が過去の最高期へ戻るという条件がいくつも必要なため11%。AI商品単独の売上開示がないので数量が現状を超える想定にはしない。
やや楽観 17% 調査の信頼性と買収先の販路が一定の成果 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 915 円23 億円
ネット調査と実地調査の一部は顧客企業が自動化するが、回答者を正しく選び、生の購買理由を聞き出す業務は外注が続く。インサイトドリブンでは単価の上昇が件数減少を補う。カスタマードリブンも調査品質の見直しで一社当たりの取引を保つが、単純な集計の案件は減る。
デジタルマーケティング・PRには2026年買収先の知見が残る。美容・ファッション業界の顧客を紹介し合い、調査と販促の一括提案で受注を守る。SNSの媒体仕様の変化には対応するが、広告の運用工数はAIに置き換わるため、広告サービス単独の料金は物価並みに上げられない。カスタマーサクセスも人的対応を残しつつ案件数を減らす。
採用したコンサルタントが顧客へ複数サービスを提供できるようになり、共通費を薄くする。営業利益率は十分な高水準ではないが、2025年のほぼ利益が出ない状態から回復する。資本政策は不定期の自社株買いと優待が中心で、現金配当は大きく増えない。
- インサイトドリブン(定性調査):数量 145(年間サービス利用社・契約関係数(社相当、重複含む。非公表推計))× 価格 0.04(利用社・契約関係1件当たり年間売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。現在の契約相当数の0.85倍、単価1.32倍。実地調査の価値を残す。
- カスタマードリブン(定量調査):数量 328(年間サービス利用社・契約関係数(社相当、重複含む。非公表推計))× 価格 0.03(利用社・契約関係1件当たり年間売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。現在の契約相当数の0.78倍、単価1.23倍。ネット調査のAI内製化。
- デジタルマーケティング・PR:数量 131(年間利用社・広告/PR運用契約数(社・契約相当、非公表推計))× 価格 0.03(年間広告・PR運用契約1件当たり会社計上売上(億円、広告費全体とは別))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。現在の契約相当数の0.87倍、単価0.96倍。AI広告運用で手数料低下。
- カスタマーサクセス・その他:数量 88.0(年間受託顧客・継続作業契約数(社相当、非公表推計))× 価格 0.04(契約1件当たり年間業務委託報酬(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。現在の契約相当数の0.80倍、単価1.24倍。業務・顧客対応の自動化。
倍率:AIエージェント代替後の長期名目g=0%、k=8.25%。RONIC=k+堀の残存比率1/3×(事業ROE−k)だが、g=0のため正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=1/k=12.12倍。市場のPERは参照しない。全社純利益から余剰現金3.6億円の税後利息年1.4%を除いた事業利益にPERを掛け、余剰現金の75%を加える。一時的な本社明渡協力金の税引後残額のうち事業に使わなかった額は2036年の余剰現金に反映し、純利益を二重に増やさない。
確率:質の高い調査に一定の需要が残り、新規買収2社と既存リサーチ顧客の組み合わせが実務的に成果を出す可能性を評価。ただし内製化と工数単価圧力は強気でも残すため17%。
中立 33% 調査は残るがAIが受注工数を減らす 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 446 円11 億円
消費者の実際の反応を確かめるための調査は10年後も必要だ。対面の個別面談や商品使用テストには人と現場が必要で、その部分は選ばれ続ける。一方、アンケートの設計、集計、レポート作成には汎用AIが浸透し、顧客が社内で完結する案件が増える。調査市場の名目規模が拡大しても、外部へ発注される調査の実質件数は減る。
デジタルマーケティング・PRではAIエージェントが広告素材の生成、投稿管理、施策の実績報告を処理する。2026年に買収したSNS・PRの2社は顧客をもたらすが、増えた売上が恒久的な利益率改善につながるとは限らない。顧客サクセスの定型作業も自動化され、人的対応が必要な案件へ絞られる。
コンサルタント採用の先行費用は徐々に回収するものの、AIで単価と案件数が圧迫されるため、以前の営業利益率13~16%へは戻らない。本社明渡協力金という一時的な現金は税と移転費用に一部使われ、残りは営業・買収の安全資金になる。株主には優待と小規模な自己株買いが続くが、恒久的な配当政策はまだない。長期ROEは資本コストを下回る。
- インサイトドリブン(定性調査):数量 128(年間サービス利用社・契約関係数(社相当、重複含む。非公表推計))× 価格 0.04(利用社・契約関係1件当たり年間売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。現在の契約相当数の0.75倍、単価1.30倍。実地調査の価値を残す。
- カスタマードリブン(定量調査):数量 252(年間サービス利用社・契約関係数(社相当、重複含む。非公表推計))× 価格 0.03(利用社・契約関係1件当たり年間売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。現在の契約相当数の0.60倍、単価1.14倍。ネット調査のAI内製化。
- デジタルマーケティング・PR:数量 90.0(年間利用社・広告/PR運用契約数(社・契約相当、非公表推計))× 価格 0.03(年間広告・PR運用契約1件当たり会社計上売上(億円、広告費全体とは別))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。現在の契約相当数の0.60倍、単価0.90倍。AI広告運用で手数料低下。
- カスタマーサクセス・その他:数量 62.7(年間受託顧客・継続作業契約数(社相当、非公表推計))× 価格 0.04(契約1件当たり年間業務委託報酬(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。現在の契約相当数の0.57倍、単価1.17倍。業務・顧客対応の自動化。
倍率:AIエージェント代替後の長期名目g=0%、k=8.25%。RONIC=k+堀の残存比率1/3×(事業ROE−k)だが、g=0のため正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=1/k=12.12倍。市場のPERは参照しない。全社純利益から余剰現金3.2億円の税後利息年1.4%を除いた事業利益にPERを掛け、余剰現金の75%を加える。一時的な本社明渡協力金の税引後残額のうち事業に使わなかった額は2036年の余剰現金に反映し、純利益を二重に増やさない。
確率:2025年のサービス別売上、2026年3Qの既存リサーチの堅調さと中計未達・薄い営業利益を同時に反映。AIエージェント代替で人月型の数量を0.55~0.75倍、広告の単価を物価以下にする中立を最も厚くした。下に寄せる理由:買収2社の利益貢献が未検証で、固定人件費が受注減の時に残るからであり、AIの同じ縮小を確率に重ねるためではない。
やや悲観 25% 受注減と固定人件費で収益力が細る 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 157 円4 億円
顧客企業は自分たちのAIエージェントへアンケートデータを取り込み、調査票の作成から基本集計までを内製する。実地調査だけは残るものの、発注数は大きく減り、仕事を取るために値上げ幅を抑える。競合のインテージやマクロミルは大きなデータ基盤と営業網を武器に、少ない予算を奪い合う市場で相対的に有利になる。
2026年買収先のPR・SNS運用は顧客網を少し広げるが、広告制作の手数料は競争で下がる。カスタマーサクセスも顧客の自動応答化が進み、人手の契約を失う。採用したコンサルタントの配置転換と共通費削減が受注減に追いつかず、利益はごく薄くなる。新規採用や大型買収は止まり、既存の人材による顧客維持が最優先となる。
配当を始められるほどの余裕はなく、株主優待を縮小して固定費を守る。特別利益で受け取った本社明渡協力金の一部は移転、新賃料、事業維持費に使われる。10年後の純資産が一定残っても事業の資本収益率は低く、帳簿の純資産を額面どおり回収できるとは限らない。
- インサイトドリブン(定性調査):数量 90.1(年間サービス利用社・契約関係数(社相当、重複含む。非公表推計))× 価格 0.04(利用社・契約関係1件当たり年間売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。現在の契約相当数の0.53倍、単価1.16倍。実地調査の価値を残す。
- カスタマードリブン(定量調査):数量 206(年間サービス利用社・契約関係数(社相当、重複含む。非公表推計))× 価格 0.03(利用社・契約関係1件当たり年間売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。現在の契約相当数の0.49倍、単価1.06倍。ネット調査のAI内製化。
- デジタルマーケティング・PR:数量 78.0(年間利用社・広告/PR運用契約数(社・契約相当、非公表推計))× 価格 0.02(年間広告・PR運用契約1件当たり会社計上売上(億円、広告費全体とは別))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。現在の契約相当数の0.52倍、単価0.80倍。AI広告運用で手数料低下。
- カスタマーサクセス・その他:数量 57.2(年間受託顧客・継続作業契約数(社相当、非公表推計))× 価格 0.03(契約1件当たり年間業務委託報酬(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。現在の契約相当数の0.52倍、単価1.10倍。業務・顧客対応の自動化。
倍率:2036年の自己資本簿価を回収できるだけの利益力はない。事業の純利益は資本コスト8.25%に届かず、やや悲観では余剰現金2.0億円の税後利息0.028億円を控除した事業利益0.122億円に、正当化PERの上限12.12倍を掛けても約1.48億円。余剰現金に戻り方75%を掛けた1.50億円を加えても稼ぐ力からの評価は約2.98億円にとどまる。そこで2025年の純現金に基づく税後換金可能資産の床3.9億円を採用する。PBR約0.494倍はその資産価値を2025年の自己資本7.9億円で割った表示上の比率であり、過去の株価やPBRから推定したものではない。
確率:2024~2025年の利益急落と2026年の計画修正を踏まえ、売上の規模より利益が先に消える事業構造に25%。顧客の予算削減や買収統合の遅れが追加で重なる条件を見込む。
悲観 14% 顧客のAI内製化が進み、買収資産も傷む 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 157 円4 億円
AIエージェントが調査設計、広告制作、集計分析、SNS投稿からカスタマーサポートまで一貫して担うようになり、顧客は従来の外注案件を大きく減らす。実際の生活者に会う対面調査だけは残るが、強い値上げ力はなく、会社全体の売上は現在の半分近くまで落ち込む。調査パネルの一部は提携先と共有されているため、安い代替サービスに顧客を引き留められない。
買収したSNS運用とPR会社はサービスの差別化を失い、のれんの減損や人員整理の費用が生じる。従来の営業拠点を維持する負担が重く、広告・カスタマーサクセスでは赤字の案件が残る。コンサルタント採用を止めても、それまでの再投資から高い収益は得られない。経営は利益還元より手元資金の保全と借入返済を優先する。
明渡協力金を受け取っても、その資金の大半は移転費用や事業再建、失敗した買収に使われる。事業そのものの稼ぐ力には価値を認めず、2025年時点の純現金を最低限の資産的な床とする。ただし仮に預り金や契約上の支払い義務がこれを大きく上回ることが判明すれば、この床も見直す必要がある。
- インサイトドリブン(定性調査):数量 73.1(年間サービス利用社・契約関係数(社相当、重複含む。非公表推計))× 価格 0.04(利用社・契約関係1件当たり年間売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。現在の契約相当数の0.43倍、単価1.10倍。実地調査の価値を残す。
- カスタマードリブン(定量調査):数量 185(年間サービス利用社・契約関係数(社相当、重複含む。非公表推計))× 価格 0.02(利用社・契約関係1件当たり年間売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。現在の契約相当数の0.44倍、単価0.95倍。ネット調査のAI内製化。
- デジタルマーケティング・PR:数量 64.5(年間利用社・広告/PR運用契約数(社・契約相当、非公表推計))× 価格 0.02(年間広告・PR運用契約1件当たり会社計上売上(億円、広告費全体とは別))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。現在の契約相当数の0.43倍、単価0.76倍。AI広告運用で手数料低下。
- カスタマーサクセス・その他:数量 48.4(年間受託顧客・継続作業契約数(社相当、非公表推計))× 価格 0.03(契約1件当たり年間業務委託報酬(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。現在の契約相当数の0.44倍、単価1.07倍。業務・顧客対応の自動化。
倍率:慢性的な赤字のため事業の利益から正の価値を見込まない。2025年の現預金約10.2億円から有利子負債約6.3億円を控除し、売掛金等と営業負債・清算関連費用を相殺した税後換金可能資産の床3.9億円を採用する。PBR約0.494倍は床3.9億円を2025年の自己資本7.9億円で割った表示上の比率であり、過去の市場PBRや2036年の帳簿純資産を根拠にしていない。
確率:仕事の過半が失われ、PR買収のれんの減損と慢性的赤字が同時に起こる構造的な敗北を14%とした。現金は簿価ののれんではなく売却可能資産として最低限評価するが、事業の利益価値は認めない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
インサイトドリブン(定性調査)
消費者への対面・オンラインインタビュー、グループ面談、行動観察を通じて商品開発・ブランド戦略を支援する。
| 数量年間サービス利用社・契約関係数(社相当、重複含む。非公表推計) | 価格利用社・契約関係1件当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 170 | 0.03 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 128 | 0.04 | 5 | 1 |
取り方:2025年決算説明資料のサービス別売上551百万円。顧客数792社・平均280.6万円は単体全社KPIで、サービス別社数は非公表。対面調査の比較的高い案件単価を想定して利用社・契約関係170件と仮定し、実売上5.51億円÷170=約324万円を単価にした。170は開示実績ではない。市場対照はJMRAの既存調査694億円で、5.51÷694=約0.79%は手法の範囲が異なる参考値にすぎない。AIエージェント代替は調査設計・分析の人月型だが実地面談は残るため中立の数量は現状の0.75倍、単価は1.30倍。セグメント利益は未開示で0.24億円は原価・共通費用を仮配賦した分析推定。
カスタマードリブン(定量調査)
ネットアンケート、会場調査、ホームユーステスト、集計・分析を受託する主力の情報サービス。
| 数量年間サービス利用社・契約関係数(社相当、重複含む。非公表推計) | 価格利用社・契約関係1件当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 420 | 0.02 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 252 | 0.03 | 7 | 1 |
取り方:2025年開示のサービス売上998百万円。全社単体792取引先から複数サービス併用を認めて420関係と仮置きし、9.98億円÷420=約238万円を単価に設定。契約数は開示ではなく推定。JMRAのインターネット調査市場847億円に対する見かけ比率1.18%は、同社の会場・商品使用調査も含むため正式なシェアではない。ネット調査の集計・分析やセルフサービス型リサーチDEMO!にはAI代替と内製化が直撃する。独立したSaaS席課金売上は公表されないので、その分を架空の別事業として加算しない。中立数量0.60倍、単価1.14倍。推定営業利益0.46億円は共通費配賦前で会社開示値ではない。
デジタルマーケティング・PR
広告素材・コンテンツ制作、SNS運用、販促戦略、広報支援。2026年から買収子会社2社が寄与する。
| 数量年間利用社・広告/PR運用契約数(社・契約相当、非公表推計) | 価格年間広告・PR運用契約1件当たり会社計上売上(億円、広告費全体とは別) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 150 | 0.03 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 0.03 | 2 | 0 |
取り方:2025年開示のデジタルマーケティング・PR売上417百万円。契約数非公開のため、150の広告・PR契約相当として1契約約278万円を逆算。2026年4月のエッセンスマーケティング、PA Communication買収後、2026年3Q累計は484百万円へ前年同期比60.4%増だが、これは2025年度の起点に混ぜず筋書きで獲得余地と統合リスクに反映する。国内広告市場の媒体費約4兆円を手数料収入の分母にして厳密シェアを偽らない。AIエージェントによる広告制作・運用代替型で中立数量0.60倍、価格0.90倍、物価上昇は手数料に転嫁できない。営業利益推定0.10億円は非開示仮配賦。
カスタマーサクセス・その他
電話・メールによる顧客満足度支援、リサーチ関連事務、クラウドソーシングを使う業務など。
| 数量年間受託顧客・継続作業契約数(社相当、非公表推計) | 価格契約1件当たり年間業務委託報酬(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 110 | 0.03 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 62.7 | 0.04 | 2 | 0 |
取り方:2025年開示のサービス売上340百万円から110契約相当、1契約約309万円を仮定した。契約数、サービス別利益は未公表。2026年3Q累計は225百万円で前年同期比15.9%減、会社はスポット案件減少と説明。事務・顧客対応・BPOの人月型AI代替と自動応答を中立数量0.57倍に反映し、人件費は物価上昇するがサービス単価は1.17倍にとどめた。全社の2025年度営業利益0.10億円と4サービスの推定営業利益合計0.70億円との差0.60億円は本社共通費用として扱う。
リスクと懸念
AIエージェント代替による受託案件の消失
調査票の作成、集計、レポート、インサイト整理、SNS投稿、広告運用、顧客対応はAIが独立して遂行する方向へ進む。顧客企業が同じ成果を社内で安く得るなら、外注単価だけでなく発注件数も減少する。人が参加する実地調査には残る価値があるが、売上の大部分を将来も人月として請求できる保証はない。
採用費・共通費が減収時に残る
2025年の売上総利益は10億円超だったのに、営業利益は約0.1億円しか残らなかった。営業コンサルタントの採用・育成は回収まで時間がかかり、顧客の案件が減っても人件費とオフィスの賃料はすぐに下げられない。2026年は本社移転を予定するため、賃貸借契約の新しい固定費も点検する必要がある。
M&Aののれんと株主の持分希薄化
2026年4月にSNS運用とPRの2社を買収した。売上の増加が買収由来でも連結利益が厚くならなければ、買収対価と統合費用に見合う利益率は上がらない。自己株式処分や将来の増資も既存株主の取り分を薄めうる。景気悪化時ののれん減損は自己資本を削り、資本配分の失敗を確定させる。
生活者パネルの独自性と調査品質
提携先を含む約3,075万人規模の回答者に接触できることは強みだが、独占的な顧客データと同義ではない。生成AIによる回答文の自動生成、調査謝礼目当ての不正、同一回答者の過剰利用が増えると、安価な大量回答の価値は落ちる。厳格な本人確認や実地調査への追加投資が利益を圧迫する。
広告・PR市場の競争と媒体依存
ソーシャル広告の総予算が増えても、運用手数料率は安い自動化ツールとの競争で下がりうる。買収したSNS事業はTikTokなど特定媒体の仕様変更や規制、アルゴリズム変更の影響を受けやすい。電通系やサイバーエージェントなど大型競合がAIと専用データに投資する中で、小規模な人手運用業者の価格交渉力は弱い。
無配・集中持株による資本配分の不確実性
2025年度まで配当はなく、上位10株主の保有比率は約73%に達する。2022年と2025年の自社株買いは評価できるが、継続的な総還元方針や現金を返す数値目標はない。明渡協力金から生まれる一時的な余裕が、株主還元ではなく採算未確認の買収や人材先行投資に再投入される可能性を考える。
中期計画と一時利益への誤認
2023年の中計は2026年度に売上40億円・営業利益5億円を目指したが、2026年9月末の会社予想は売上27.10億円・営業利益0.74億円へ乖離した。純利益見込み2.84億円に含まれる本社明渡協力金は反復する営業収益ではない。これを恒久的な稼ぐ力として評価すると、投資判断を大きく誤る。
今後の分かれ目
- 新規のAIモデレーター型調査やChatGPT広告運用の実際の年間受注売上が開示され、2027年以降も増え続けるなら
- AIを自社の売り物へ転換した証拠となる。対象サービスだけ数量の上限を引き上げ、独立した利益と顧客継続率を確認して中立・楽観の利益率を修正する。
- 単体顧客数が年900社を超え、平均取引額300万円超が複数年続くなら
- 売上を取引社数と単価の双方で積み上げられた証拠として、二つの調査サービスの数量縮小を緩和する。ただし外注原価と人件費も確認する。
- 連結営業利益率が2027年以降8%以上となり、特別利益抜きで3年間維持されるなら
- 採用の再投資回収と買収後の収益改善が数字で確認できるため、営業利益率の中立前提を引き上げ、ROEと正当化倍率を再算定する。
- AI導入の顧客内製化で定量調査の受注件数が2年以上連続で2桁減ったら
- カスタマードリブンの数量を悲観側へ寄せる。実地面談の受注、単価、原価率が支えになるかを別に見極める。
- 2026年買収2社ののれん減損または追加の株式対価買収が明らかになったら
- 利益の減損と既存株主の取り分低下を切り分けて再計算する。買収売上の増加だけで価値を引き上げず、投下資本に対する税後利益を見る。
- 本社明渡協力金の税引後資金が自社株買いか配当として実際に支払われたら
- 余剰現金の少数株主への戻り方を0.75から1.0へ近づける。移転関連費用を差し引いた実際の純額を用い、特別利益を営業利益と混同しない。
- 回答者の不正対策・独自の継続データで解約率5%未満と値上げ継続が数値開示されたら
- 該当する調査サービスに限り堀を再評価する。会社全体を一律に強いデータ基盤と認定せず、顧客が年単位で乗り換えにくいことも確認する。
見ておくもの
- サービス別四半期売上と、2026年4月買収2社を除いた既存事業の増減率
- 単体の顧客数・顧客単価・マーケティングコンサルタント人数と一人当たり売上
- 2026年9月期通期決算の営業利益0.74億円達成と2027年度の営業利益率
- AIモデレーター・ChatGPT広告・リサーチDEMO!の有料利用売上、案件数、解約率
- 本社明渡協力金の実際の受領額と納税・移転費用・新家賃、資金使途
- 2025年と2022年の自社株買いに続く株式消却・配当政策の変化
- 買収2社の連結利益・のれん・有利子負債・自己株式処分による株数変化
倍率と資本コストの決め方
数量は、連結の四つのサービス別売上をサービス利用社・契約関係数という実物の単位へ変え、全社単体の取引先792社、平均取引額280.6万円との整合を確かめた。非公開の領域別関係数と利益は推定と明記し、物価3%は案件単価にのみ反映した。2036年以降はAIエージェント代替で名目成長0%とし、資本コスト8.25%とは別に重複して減点していない。楽観から中立までのPERは、gが0%なら正当化式から1÷8.25%=12.12倍となる。悲観側の資産価値は簿価ののれんを床に含めず、最新実績の純現金約3.9億円を基準に検算した。現在の株価や同業PERから将来の倍率を逆算していない。新リース会計基準で将来の貸借対照表に載る使用権資産と負債は、家賃の二重計上を避けるため事業価値計算を現行の費用処理の形で統一する。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基準7.5%に事業の循環・価格決定力・純現金・寿命の四要素合計+0.75%を加えた8.25%。企業規模やβの上乗せを使わず、買収実行やAI代替を別途kへ重ねない。
同じ業種(情報・通信業)の AI 分析
読んだ資料
- ネオマーケティング 2025年9月期決算説明資料(サービス別売上、取引先数、株主優待)
- ネオマーケティング 2026年9月期第3四半期決算説明資料(顧客KPI、買収、業績進捗)
- ネオマーケティング 中期経営計画2024~2026(2023年公表、利益目標・ROE)
- ネオマーケティング 特別損益計上と通期連結業績予想修正(2026年9月30日)
- 日本マーケティング・リサーチ協会 第50回経営業務実態調査(2024年度市場規模)
- 日本マーケティング・リサーチ協会 売上情報一覧(大手調査会社との比較)
- 電通 2025年日本の広告費(2026年3月公表)
- フィスコ企業調査レポート 2025年12月18日(2024年中期計画の下方修正)
- J-LiC 2025年9月期主要株主情報(有価証券報告書の掲載値)