結論
NTTデータイントラマートは、企業の申請・承認や業務システムを結ぶ国産基盤「intra-mart」を育ててきた会社だ。2026年10月に商号を「イントラマート」へ変更した。筆者の結論は割高である。ワークフロー市場で長く首位を守る実力は認めるが、株価が前提にしているほど将来の利益を確実には見通せない。
2026年3月期の売上高は約147億円、営業利益は約14億円で過去最高水準だった。しかし売上の約57%はコンサルティングやシステム開発などのサービス事業であり、大口の特定案件による押し上げも大きい。ソフトウェア事業ではクラウド・サブスクリプションの年間売上が20億円に育ったものの、全社の売上がすべて高継続率の利用料ではない。
最大の問題は、業務を人が画面で操作し、人がシステムを作るという二つの前提が同時に変わりうることだ。AIエージェントは申請処理を自動化し、開発・検証の必要工数を減らす。会社自身もAIと人の仕事を統制する基盤を目指しているが、新しいAI製品が既存の人月・ライセンス収入を置き換えてなお十分に利益を増やすという金額の実績は確認できない。
中立の2036年3月期は、物価上昇を含めても売上約133億円、純利益約7億円とみる。五つの筋書きと途中の還元を資本コストで割り引いた価値は約74億円となり、基準時点の時価総額約187億円を約61%下回る。首位という看板は本物だが、長く持つ株主に必要な安全域まで保証するものではない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、最初に問うのは十年後もその製品が「なくては困る仕組み」かどうかである。顧客の申請・承認の経路を一つに集め、既存の基幹システムをつなぐ機能には確かな需要がある。長年のシェア首位と多くの技術者を抱える販売網を評価し、簡単に消える製品とは考えない。
ただし所有者として欲しいのは、毎年新しい開発費と人手を増やさなくても積み上がる現金だ。現在の高い製品利益率だけでは足りず、資産計上したソフトウェアの開発費が何年後に現金として戻るかを見極めなければならない。売上の過半を占めるサービスは顧客の発注が途切れれば工数ごと減り、社内開発やAIへの置き換えが進めば受注価格も守りにくい。
会社は業務の処理をAIに任せる時代をむしろ成長機会と捉えている。だが、AIに実行権限を渡す仕組みが本当に当社の課金基盤になるのか、顧客がMicrosoftなどの既存クラウド上で同じことをするのかは、まだ勝負がついていない。自社のAIによる追加売上の実額や低解約率が開示されないうちに、従来の高成長を永久に続く利益として買うべきではない。
余剰資金と増配は下値を支えるが、預かった前受収益や開発投資を賄う資金まで自由な株主資産とは考えない。十年後の利益、そこまでの配当、さらに先の利益の寿命を別々に検討すると、会社に対する好感と現在の株価で持ちたいかどうかは違う結論になる。投資の成否は、AIへの転換を応援する気持ちではなく、十分な安全域を持てるかで決まる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは、ソフトウェア事業とサービス事業の二本立てである。ソフトウェアは「intra-mart Accel Platform」を核に、業務申請、承認、文書管理、購買などのアプリケーションとクラウドサービス「Accel-Mart」を販売する。従来の一括ライセンス、保守、年額契約、クラウド利用料が混在し、顧客の業務に入り込むほど保守・更新の機会が増える。2026年3月期は売上約63億円、セグメント営業利益約17億円だった。
サービス事業は、その基盤を顧客企業に導入するための業務改革支援、要件定義、開発、教育、運用で稼ぐ。2023年に子会社化した現イントラマート・ジェイエスピーなどが技術者を抱え、顧客や販売パートナーの案件を形にする。売上約84億円、セグメント利益約11億円だが、現場の人件費と外注費を負担し、大型案件の完了で翌期の売上が動く。二事業の利益を合計しても、共通の開発・管理費約14億円を引いて初めて全社営業利益になる。
販売網は国内外200社超の特約店に広がる。製品を売るだけでなく、販売会社が顧客に合わせて業務システムを構築できるため、自社の社員数を超えて導入先を増やせる。一方、顧客が自らAIで業務アプリケーションを作れるようになれば、導入時の開発工数と人材教育の一部は要らなくなる。製品と受託開発を一体で売る仕組みは、普及の強みであると同時に技術変化の二重の影響を受ける構造でもある。
導入先は累計1万3千社を超える。ただし累計導入数は有料の稼働契約数でも利用者ID数でもない。ソフトウェア売上を導入企業相当の年間収入に換算した数字と、サービス売上を業界の人月単価で割った推計工数を、将来の数量と価格を考えるための物差しに使う。実際の課金単価や請求工数が開示されていると誤解してはならない。
優良さと弱いところ
最も強い堀、つまり競争相手が容易に奪えない強みは、製品を中心とした顧客と技術者の生態系にある。2025年度までワークフロー市場の金額ベースで19年連続首位を記録し、2024年度のパッケージ市場では約29%を占めた。販売店が導入技術を習得し、企業の独自の申請経路や外部システムとの連携を積み重ねてきたことは、新製品への一斉乗り換えを難しくする。
ただし、その堀を「永久に値上げできる記録の正本」と同一視できない。公開資料から年5%未満の解約率、法改正のたびの値上げ実績、規制で不可避な数年単位の移行、他社にないデータ資産といった複数の証拠は確認できなかった。AIエージェントが既存画面を使わず業務システムのAPIと直接話せば、顧客の操作席数が減り、価格を据え置くことさえ難しくなる。首位の継続と将来の価格決定力は、別の問いである。
財務は純現金約21億円、自己資本比率約53%で借金による破綻リスクが小さい。2026年3月期のROEは約16%まで改善した。ただし直近数年の営業利益率は約3〜10%を往復し、営業キャッシュフロー約9億円に対して投資キャッシュフローは約9億円の支出だった。自社開発ソフトの資産計上も厚く、会計利益が同額の自由に使える現金とは限らない。
投じた資本が資本コストを上回り続けると認めるには、買収後の顧客獲得と開発投資が、単発案件ではない利益をどれだけ増やしたかを確認する必要がある。足元の高いROEだけで増分投資利回りを推定しない。製品に堀はあるが、全社を強い堀の会社とするほどの証拠はまだ揃っていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要が消える業界ではない。日本企業は古い基幹システムや紙の承認作業を抱え、部門間のデータ連携と内部統制への投資を続ける。富士キメラ総研の調査を引用した競合の開示では、2025年度の国内ワークフロー市場は約213億円で、パッケージ約109億円とSaaS・PaaS約104億円に分かれる。2030年度までの市場全体の名目年平均成長率は7.3%、SaaS・PaaSは12.8%という予測だ。
しかし、市場が伸びることと当社の売上が同じ速さで伸びることは違う。同社は2024年度のパッケージ市場で約29%を占めたが、エイトレッドは2025年度のSaaS・PaaS市場で15.9%の首位を公表している。二つの調査区分を足して首位のシェアとすることはできない。パッケージにはシステムの更新余地がある一方、クラウドではエイトレッド、サイボウズ、Microsoft Power Automate、ServiceNowなどと競争する。中立では基盤としての需要が残っても、パッケージでの優位が緩やかに縮むとみる。
受託開発が参加する国内ITサービス市場は、IDCの定義で2024年に約7兆円、2029年には約9.7兆円への拡大予測がある。現在のサービス売上約84億円は、その広い市場の約0.1%にすぎない。NTTデータ、TIS、SCSK、富士通、NECに加え、顧客自身の内製部隊が競合する。全体の市場シェアを増やせる余地は大きいが、顧客案件を一件ずつ獲得する受託収益に、高い継続性を与えるものではない。
AIが市場の定義を変える可能性も大きい。企業が業務の実行・承認・監査証跡を管理する必要は残るが、人がボタンを押すアプリケーションと、人月に応じて請求する開発の需要は縮みうる。会社は人とAIを統制する「オーケストレーション基盤」への転換を掲げた。採用先数、AIに結びついた追加契約額、解約率を示せるまでは、既存市場の成長予測を2036年まで延長しない。
資本政策と M&A
経営陣は2026年5月公表のFY2026〜FY2028中期経営計画で、最終年度の売上高180億円、営業利益27億円、営業利益率15%以上、売上成長率年10%、保守を除くクラウド・サブスクリプションのARR成長率年30%を掲げた。FY2028は2029年3月期に当たる。製品・人材・生産性向上・M&Aに合計約50億円以上を投じる方針であり、還元は配当性向35%、総還元性向40%という数字の約束がある。
かつては保守的な自社開発とパートナー拡大が主軸だった。2023年10月にはジェイエスピーを連結子会社化し、開発人員と売上の規模を増やした。2026年3月期には売上が伸び、配当も増えたが、同時に開発資産への支出がかさみ、現金収支は思ったほど残っていない。次の50億円の投資が本当に資本コストを超えるかが、過去の売上成長以上に大切になる。
2026年3月にNTTデータが持株の一部を売却したため、同社の連結子会社から持分法適用関連会社へ移った。2026年10月1日には商号を「イントラマート」に変更し、中立性と独立性を前面に出した。NTTデータはなお大株主だが、同グループ本体の上場廃止と当社の上場廃止は別であり、公開買付けを決め打ちした価値を足さない。買収や資本提携は事業拡張の余地だが、AIで値崩れする受託企業を高く買えば逆効果になる。還元姿勢の改善は評価する一方、過去5年の株数大幅削減が見られないため、将来溜まる余剰資金をすべて株主に返すとは見込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
顧客の業務の複雑さは、単純なチャット型AIだけでは消えない。誰が何を承認し、例外時にどの部署へ送るかを定義する制御層は、AIエージェントが多くなるほど必要になる。ワークフロー市場で19年連続の首位を守ってきた技術と販売網が、その制御層の標準になれるなら、既存企業のシステム更新に合わせて利用は続くだろう。
1万3千社超の累計導入実績は大きな営業資産である。社内の業務ルールに沿った設定や外部システム接続を作り直すには、移行費用と障害の危険が伴う。200社超のパートナーが顧客ごとに設計した資産は、競争相手が広告宣伝を増やすだけでは奪えない。パッケージ中心だった利用がクラウドに移る際にも、既存顧客を新しい課金へつなぎ替える余地が残る。
2026年3月期にはクラウド・サブスクリプション売上が20億円に達し、そのARRは前年比32%伸びた。会社は保守を除くARRの成長率30%、営業利益27億円を2029年3月期の目標に掲げた。新基盤が顧客に受け入れられ、技術者の生産性向上も自社の利益として残れば、利益率の改善は進みうる。純現金を持ち配当政策も具体的なので、新しい商売が失敗してもすぐに資金繰りが行き詰まるとは考えにくい。
上側の筋書きでは既存顧客基盤と受託量を守り、単価が物価に近い水準まで上がる。AIを成長の理由として未実現の契約数を上乗せするのではなく、競争力を維持して収益性を高められるという評価である。
慎重な見方
十年の時間軸では、従来の画面を前提としたソフトウェアの価値そのものが変わる。AIエージェントが社内規程を読み、ERPや顧客管理のAPIを直接操作すれば、申請画面の人数課金やローコードで作る周辺画面が減る。今まで顧客が構築した資産は乗り換えの障壁だが、AIを使えば移行も安くなるため、永遠の障壁ではない。
ソフトウェアが主役のように見えても、売上の約57%はサービス事業である。プログラム作成やテストを人月で請求する仕事には、AIの生産性向上が価格と数量の両方から効く。顧客自身が開発を内製化すれば案件そのものがなくなる。新しいAI基盤の販売金額が従来の工数売上の減少を上回ったという開示はまだないため、売上高だけを見て製品型の高品質企業と扱うべきではない。
2026年3月期の一社向け売上は約26億円で全社の約18%に当たる。受託案件の受注残も減っており、直近の急成長を長期の基準にすると危うい。実際に過去には営業利益率が3%前後に落ちた期があり、2024年と2025年も利益率は5%を下回った。開発人員とソフトウェア償却の負担が残るため、顧客の開発量が減れば利益は売上以上に縮む可能性がある。
NTTデータとの関係は販売網である反面、少数株主の資本配分を保証しない。投資額50億円以上の計画が利益の源泉を切り替えられなければ、純現金も開発費や買収代金に変わる。中立で既に従来型収益の減少を見込んだとしても、単一大口顧客の離脱や競合クラウドへの乗り換えという追加の負け筋は残る。
どちらに重みを置いたか
競争力の証拠はあるが、十年後の課金の形には確かな答えがない。19年の首位と13,000社超の導入実績を認めつつ、売上過半の人月依存と大口顧客の集中をより重く見る。下側二つを合計38%、上側二つを31%としたのは、AIの減収を確率で二重に引くためではない。中立に入れた数量の減少とは別に、大型案件の消失とAI基盤移行の失敗が同時に起こる可能性を見た結果である。現在の時価総額は、上側が実現してもなお資本コストの回収が容易ではない水準にある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,628 円128 億円(+ 還元の換算額還元の合計 630 円31 億円)。 今の値に割り戻すと 1,749 円85 億円、今との差 −45.3%、 期待の年率 +0.2%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 6,155 円299 億円 | 1,131 円55 億円 | +127.7% | +9.5% | 656 円32 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,472 円217 億円 | 905 円44 億円 | +68.0% | +5.9% | 1,183 円58 億円 |
| 中立 | 31% | 2,644 円129 億円 | 720 円35 億円 | +5.1% | +0.6% | 1,043 円51 億円 |
| やや悲観 | 25% | 815 円40 億円 | 370 円18 億円 | −63.0% | −10.8% | 296 円14 億円 |
| 悲観 | 13% | 514 円25 億円 | 103 円5 億円 | −80.7% | −16.0% | 80 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,628 円128 億円 | 630 円31 億円 | +1.8% | +0.2% | 3,258 円158 億円 |
今の株価時価総額 3,200 円156 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 既存基盤をAI統制層へ接続できる 利益 19 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6,155 円299 億円
会社はAIエージェントを脅威として放置せず、人とAIが共同で仕事をする際の承認権限、例外処理、監査履歴を制御する中間基盤に転換する。既存の1万3千社超の導入資産と販売店網が更新案件を支え、ワークフローのパッケージで築いた地位をAI時代の統制層へつなぎ直せる。MicrosoftやServiceNowとの競争は続くが、大企業の独自の業務ルールを理解する技術で選ばれる。
ソフトウェアの企業相当数量も受託の請求工数も、おおむね現状を維持できる。料金は前者が約15%、後者が物価相当の約34%上がり、売上は約184億円となる。製品の標準化と受託の作業効率向上により、ソフトウェア利益率は35%、サービスは18%へ改善する。これはAI新サービスの未確認売上を足した楽観ではなく、既存契約を失わず採算を改善できるという最良の組み合わせである。
買収は小さな機能補完にとどめ、無理な高値買いを避ける。2036年までの配当と自己株式取得は利益に沿って約55億円に達し、純資産も積み上がる。規模で競合に勝つのではなく、業務に組み込まれた基盤として残ることで、資本コストを上回る再投資機会を確保する。
- ソフトウェア事業:数量 13,000(年間有償導入企業相当数(社・推計。累計採用社数を基準とする売上換算の数量であり有料契約の実数ではない))× 価格 0.01(企業相当1社当たり年間売上(億円・名目。保守・クラウド・ライセンス混合))→ 売上 72 億円・営業利益 25 億円。導入企業相当13,000社×年換算収入55.58万円、製品利益率35%。物価は価格だけに反映しAIによる操作画面・席数の減少は数量に反映。
- サービス事業:数量 5,981(受託開発・導入支援の請求工数相当(人月・推計、外注相当を含む))× 価格 0.02(請求工数相当の1人月当たり売上(億円・名目))→ 売上 112 億円・営業利益 20 億円。人月相当5,981×月単価187.6万円、セグメント利益率18%。AIエージェントによる受託工数の減少は数量、物価転嫁は価格。
倍率:2036年のROE約13.0%と資本コスト7.25%から、堀の残存率は通常の1/2としRONIC=k+1/2×(ROE−k)で捉える。ただしAIエージェント代替を受け2036年以降の名目g_longを0%に制限するので、正当化PER=(1−g/RONIC)÷(k−g)=1÷7.25%=約13.79倍となる。中立〜楽観はこの上限をそのまま採用する。利益18.5億円から余剰現金9億円の税後利息相当0.126億円を除いてPERを掛け、9億円×還元係数0.75=6.75億円を足す。今や過去の市場PERでは決めない。
確率:パッケージ市場首位の既存顧客が新しい制御層を採用し、販売店の技術を活用してソフトと工数の数量を維持できる筋書き。AI新規売上の実額は未開示なので、既存数量より増える想定にはしない。
やや楽観 22% クラウド移行と既存顧客をおおむね維持 利益 13 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,472 円217 億円
既存顧客の大半がサブスクリプション契約へ移り、製品の保守・更新の継続性が高まる。会社が目指すAIの業務統制基盤は一部で有償利用を得るが、Microsoftや国内の業務クラウド製品との機能競争は激しい。顧客がAIで画面操作を減らすため、導入企業相当の数量は現在より5%ほど細る。
技術者の必要工数も約18%減るが、業務の複雑な移行や品質保証はなお専門家が担う。名目単価はインフレに近い上昇を許すものの、実質の値上げ力が大きく高まるわけではない。二事業を合わせた売上は約159億円で、共通費も増えるため営業利益は約19億円にとどまる。会社の短期計画の高い成長を十年続く速度とは扱わない。
ジェイエスピーなど既存子会社は案件の採算管理を改善し、無理な大型買収はしない。顧客をつなぎ留める力は残るが、新しいAI層で独占的な課金権を得たわけでもない。累計の配当・自己株取得は約44億円となり、売上成長より株主還元と利益率の維持が価値の中心になる。
- ソフトウェア事業:数量 12,350(年間有償導入企業相当数(社・推計。累計採用社数を基準とする売上換算の数量であり有料契約の実数ではない))× 価格 0.01(企業相当1社当たり年間売上(億円・名目。保守・クラウド・ライセンス混合))→ 売上 68 億円・営業利益 22 億円。導入企業相当12,350社×年換算収入55.10万円、製品利益率32%。物価は価格だけに反映しAIによる操作画面・席数の減少は数量に反映。
- サービス事業:数量 4,904(受託開発・導入支援の請求工数相当(人月・推計、外注相当を含む))× 価格 0.02(請求工数相当の1人月当たり売上(億円・名目))→ 売上 91 億円・営業利益 15 億円。人月相当4,904×月単価184.8万円、セグメント利益率17%。AIエージェントによる受託工数の減少は数量、物価転嫁は価格。
倍率:2036年のROE約10.3%と資本コスト7.25%から、堀の残存率は通常の1/2としRONIC=k+1/2×(ROE−k)で捉える。ただしAIエージェント代替を受け2036年以降の名目g_longを0%に制限するので、正当化PER=(1−g/RONIC)÷(k−g)=1÷7.25%=約13.79倍となる。中立〜楽観はこの上限をそのまま採用する。利益12.9億円から余剰現金9億円の税後利息相当0.126億円を除いてPERを掛け、9億円×還元係数0.75=6.75億円を足す。今や過去の市場PERでは決めない。
確率:クラウド転換が進み、市場首位の既存パートナーが維持されるが、席数と案件工数は緩やかに減る筋書き。値上げ余地は限られるため、顧客の取引密度で収益を支える。
中立 31% 人月と操作画面が縮み、基盤は残る 利益 7 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,644 円129 億円
業務を統制するソフトウェア基盤は必要とされ続ける。しかし、AIエージェントが申請画面に代わって操作し、ユーザー企業が業務アプリケーションを内製する割合も増える。エイトレッドなどのクラウド専業やMicrosoftの既存契約との競争で、パッケージ市場での強さをそのままクラウドの単価に転嫁できない。
ソフトウェアの売上換算数量は約13%減り、名目単価は10%しか上がらない。受託・教育は従来の人月が約33%減るが、残る高度な案件の単価は30%上がる。両事業の売上は合わせて約133億円となる。ソフトウェアの利益率は継続課金の効率化で28%、サービスは選別受注で16%を保っても、製品開発と管理部門の固定費が残り、全社営業利益は約11億円に縮む。
2029年3月期までの中期計画が部分的に実現する可能性は否定しない。ただし2026年の大口案件と新規導入ブームを2036年まで延長せず、製品とサービスの成熟を別々に考える。純利益は約7億円で、配当と小規模な自社株取得の累計は約35億円になる。資本が積もる一方でROEは低下し、新規投資による超過利益を永久に維持できるとは評価しない。
- ソフトウェア事業:数量 11,310(年間有償導入企業相当数(社・推計。累計採用社数を基準とする売上換算の数量であり有料契約の実数ではない))× 価格 0.01(企業相当1社当たり年間売上(億円・名目。保守・クラウド・ライセンス混合))→ 売上 60 億円・営業利益 17 億円。導入企業相当11,310社×年換算収入53.16万円、製品利益率28%。物価は価格だけに反映しAIによる操作画面・席数の減少は数量に反映。
- サービス事業:数量 4,007(受託開発・導入支援の請求工数相当(人月・推計、外注相当を含む))× 価格 0.02(請求工数相当の1人月当たり売上(億円・名目))→ 売上 73 億円・営業利益 12 億円。人月相当4,007×月単価182万円、セグメント利益率16%。AIエージェントによる受託工数の減少は数量、物価転嫁は価格。
倍率:2036年のROE約6.2%は資本コスト7.25%以下となるため、十年より先の超過利益を評価しない。AIエージェント代替を受け2036年以降の名目g_longは0%なので、正当化PERの上限は1÷7.25%=約13.79倍となる。中立は上限そのものとし、今や過去の市場PERによる任意の割引を重ねない。利益7.1億円から余剰現金9億円の税後利息相当0.126億円を除いてPERを掛け、9億円×還元係数0.75=6.75億円を足す。
確率:ソフトウェアの利用企業相当数量は87%、サービスの工数は67%まで落ちる一方、名目単価の上昇とクラウド移行で一部を補う。競合のAIプラットフォームに席数を奪われるが基盤の利用は続くとみる。
やや悲観 25% 大口案件終了と競争激化で利益が細る 利益 2 億円 · PER 11.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 815 円40 億円
AIエージェントへの移行が顧客の予想より速く進み、社内の業務承認は既存画面を通らずに処理される場面が増える。会社は統制基盤の機能を拡充するが、MicrosoftやServiceNowの一体型サービスが標準になる企業も多い。既存の販売店網は残るものの、新たなライセンスと大型開発案件を補いきれない。
ソフトウェアの企業相当数量は現在の4分の3、受託工数は約半分になる。名目単価はそれぞれ5%、27%上がっても、顧客ごとの年間支払額は減る。売上は約104億円となり、受託の技術者を削減しても固定的な製品開発費を賄う余裕が減る。営業利益は約3億円、純利益は約2億円に落ち込み、資本効率は低下する。
2023年に買収した事業も大口顧客の減収から逃れられず、買収の相乗効果は小さい。配当方針は維持するが、利益に応じて還元額を縮小する。十年間の株主還元は約18億円で、価値は将来の高成長より残った稼ぐ力と利用可能な現金に近づく。
- ソフトウェア事業:数量 9,750(年間有償導入企業相当数(社・推計。累計採用社数を基準とする売上換算の数量であり有料契約の実数ではない))× 価格 0.01(企業相当1社当たり年間売上(億円・名目。保守・クラウド・ライセンス混合))→ 売上 49 億円・営業利益 11 億円。導入企業相当9,750社×年換算収入50.75万円、製品利益率23%。物価は価格だけに反映しAIによる操作画面・席数の減少は数量に反映。
- サービス事業:数量 3,050(受託開発・導入支援の請求工数相当(人月・推計、外注相当を含む))× 価格 0.02(請求工数相当の1人月当たり売上(億円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 6 億円。人月相当3,050×月単価177.8万円、セグメント利益率11%。AIエージェントによる受託工数の減少は数量、物価転嫁は価格。
倍率:2036年のROEは約2.1%で資本コスト7.25%を下回る。事業が弱り、将来の余剰投資を成長価値と見なせないため、稼ぐ力1÷k=13.79倍を上限とするが、やや悲観の低採算と固定費から11.5倍にとどめる。現金9億円のうちやや悲観で使い込む25%を控え、残る6.75億円の税後利息0.0945億円を利益から除外して倍率を掛け、残る現金×戻り方0.75=5.0625億円を足す。
確率:大口顧客の次期案件を埋められず受託工数が大幅に減る。パッケージから競合クラウドへの乗り換えも早まり、管理費削減では利益減少を補いきれない。
悲観 13% 制御基盤の地位を失い、赤字が残る 利益 −4 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 514 円25 億円
顧客の仕事の入口が、専用画面ではなくAIエージェントと基幹システムの標準APIに移る。製品の設定資産は一定期間残るが、新規導入や大きな更新の際には海外クラウドと社内開発に切り替わる。2026年の売上を押し上げた大口顧客からの開発案件も途絶え、業務の再設計を請け負う専門家だけが残る。
ソフトウェアの数量は55%、サービスの工数は40%に縮む。売上は約73億円まで落ち、値段を上げても失った数量を補えない。技術者削減と研究開発の絞り込みでも共通の固定費は消えず、営業赤字が約4億円残る。製品ソフトと買収で生まれた無形資産には約12億円の減損が必要となり、利益剰余金が傷む。
この筋書きでは利益に高い倍率を掛けない。現金同等物、定期預金、売却できる金融資産をもとに下値を考え、のれんや自社開発ソフトの帳簿価額は回収可能資産に含めない。前受契約の履行負担が残るので清算価値を保証するものでもない。初期に支払う配当約5億円以外は還元を止め、財務の持久力を使って残る顧客を支える。
- ソフトウェア事業:数量 7,150(年間有償導入企業相当数(社・推計。累計採用社数を基準とする売上換算の数量であり有料契約の実数ではない))× 価格 0.00(企業相当1社当たり年間売上(億円・名目。保守・クラウド・ライセンス混合))→ 売上 34 億円・営業利益 5 億円。導入企業相当7,150社×年換算収入47.85万円、製品利益率15%。物価は価格だけに反映しAIによる操作画面・席数の減少は数量に反映。
- サービス事業:数量 2,392(受託開発・導入支援の請求工数相当(人月・推計、外注相当を含む))× 価格 0.02(請求工数相当の1人月当たり売上(億円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 1 億円。人月相当2,392×月単価163.8万円、セグメント利益率3%。AIエージェントによる受託工数の減少は数量、物価転嫁は価格。
倍率:競争に敗れ2036年は営業赤字となるため、利益倍率で評価しない。PBR0.425倍は現在の自己資本58.8億円に掛け、将来の積み上げ純資産44億円は分母にしない。20.67億円の現金同等物、2.69億円の短期定期預金、投資有価証券1.84億円の税後概算1.29億円を合計した売却可能資産の床24.65億円をわずかに上回る25億円とする。のれん約1.58億円や自己開発ソフト資産約17億円は床から除外。貸借対照表の現預金23.36億円に定期預金を二重加算しない。前受金履行と運転費用で実現価値は下振れしうる。
確率:大口案件の終了に加えて主力の申請基盤がAIエージェントと海外クラウドに代替される複合事象を想定する。開発ソフトの減損が発生して利益率は構造的に赤字へ転じる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ソフトウェア事業
業務プロセス基盤intra-martと関連業務アプリケーションのライセンス、保守、年額利用権、クラウドサービス。
| 数量年間有償導入企業相当数(社・推計。累計採用社数を基準とする売上換算の数量であり有料契約の実数ではない) | 価格企業相当1社当たり年間売上(億円・名目。保守・クラウド・ライセンス混合) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13,000 | 0.00 | 63 | 17 |
| 10 年後 中立 | 11,310 | 0.01 | 60 | 17 |
取り方:2026年3月期有価証券報告書の外部売上62.83033億円、セグメント利益16.65804億円と会社発表の累計導入13,000社超を用い、62.83億円÷13,000社=年約48.3万円/導入企業相当を算出。13,000社は累計であって有償契約実数ではないため、収益換算の数量としてのみ扱い、実測ARPAとは称しない。製品内訳はクラウド・サブスクリプション売上20億円と、それ以外の保守・買い切り等約43億円だが、個々の課金ID数や継続率は非開示。AIエージェント代替の分類は席課金・操作画面型を全体の近似とする。値上げ実績・5%未満の解約率・独自データの蓄積など正本型の証拠が2つ確認できないため、正本型のgは使わない。数量は基準から2036年中立0.87倍、単価は1.10倍とし、既存のワークフロー需要は残るがAIが操作人数と画面需要を削る。売上の1〜2割の誤差以上に、実数非開示そのものの不確実性が大きい。
サービス事業
自社基盤導入に関連するコンサルティング、受託開発、教育・技術研修。子会社ジェイエスピー等を含む。
| 数量受託開発・導入支援の請求工数相当(人月・推計、外注相当を含む) | 価格請求工数相当の1人月当たり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,981 | 0.01 | 84 | 11 |
| 10 年後 中立 | 4,007 | 0.02 | 73 | 12 |
取り方:2026年3月期の外部売上83.73755億円とセグメント利益11.13580億円を使用。日本情報システム・ユーザー協会「ソフトウェア・メトリクス調査2025」のパッケージ利用開発の加重平均144万円/人月(39件、外注費ベース)を外部尺度とし、教育・運用などの混在を踏まえて140万円/人月と仮定。83.74億円÷0.014億円=約5,981人月に換算した。連結サービス人員314人×12月=3,768人月との超過分はパートナー外注・単価差・案件売上を含むため、工数の実測値ではない。国内ITサービス市場はIDCベースで2024年7.02兆円、2029年9.66兆円見込み。売上84億円は7〜8兆円市場の約0.1%。AIエージェント代替は人月・工数型で、中立2036年数量0.67倍、単価1.30倍。成果報酬への大規模転換の売上証拠がないため、特例の上積みはしない。
リスクと懸念
AIエージェント代替
人が画面を操作するワークフローと、人が時間をかけて作るシステムの両方がAIに置き換わりうる。中立でもソフトウェアの収益換算数量を13%、サービス工数を33%減らしたうえで、長期成長率をゼロとする。AI基盤の追加契約額が明示されなければ、この損失を自社AIの成長で相殺したと見なさない。
大口案件と受注残の反動
2026年3月期は関東電気保安協会向けだけで約26億円と全社売上の17.7%を占めた。案件が完了すると技術者の稼働率が急に落ちる。サービス受注残の大幅減少は、単なる売上成長率だけでは見えない翌年度の不安であり、顧客別受注の分散が進むかを追う必要がある。
クラウド企業との競争と値上げ限界
ワークフローのパッケージ部門で首位でも、クラウド部門ではエイトレッドが上位に立つ。MicrosoftやServiceNowの業務自動化製品は既存契約に機能を追加でき、価格面でも有利だ。AIが手作業の席数を減らすため、物価が年3%上がってもライセンスの単価を同じだけ引き上げられるとは限らない。
資産計上した自社ソフトと現金創出
開発費の資産計上により、会計上の営業利益と現金収支に開きが生じる。2026年3月期は営業キャッシュフロー約9億円に対し投資支出も約9億円だった。製品更新で売上が続かなければ、資産の償却や減損がROEを下げ、配当原資や新たな研究開発の余力を削る。
買収とグループ取引の資本配分
2023年のジェイエスピー子会社化でサービス事業が大きくなった。今後の50億円超の成長投資に買収も含まれるため、売上を買うだけで資本コストを超える利益が残らない危険がある。NTTデータ系の大株主がいることは営業面の強みだが、少数株主への全額還元や公開買付けを保証するものではない。
規制・セキュリティとAI統制の責任
AIが取引や承認を代行すると、誤った権限付与、個人情報の流出、監査証跡の欠落が重大な事故になる。規制対応の需要が新しい事業機会になる反面、制御基盤側が事故の責任を問われれば導入や更新が止まる。監査や法令に必要な機能を持つことと、顧客が長期に高い利用料を払い続けることは分けて判断する。
今後の分かれ目
- クラウド・サブスクリプション売上とAI関連の有償契約額が個別に開示され、利用企業数と単価が3年間とも伸びたら
- AIが既存の操作画面を置き換えるだけでなく、同社の統制基盤が課金先を獲得している証拠となる。まずソフトウェアの数量と単価を見直し、正本型の堀は解約率など別の裏付けを待って判断する。
- 保守を除いたARRの成長率が会社目標の年30%から継続的に一桁へ落ち、製品全体の売上も減り始めたら
- 既存顧客が新しい課金形態に移る勢いを失ったと考える。中立のソフトウェア数量をやや悲観側に近づけ、価格転嫁力も点検する。
- 関東電気保安協会向け売上の減少を埋める新規案件がなく、サービス受注残がさらに半減したら
- 直近の売上規模は持続不能となる。サービスの工数をやや悲観以下へ動かし、技術者の稼働率低下による利益率悪化を加える。
- 2029年3月期までに売上180億円、営業利益27億円を達成し、なおかつ営業キャッシュフローから製品投資を引いた現金が安定して積み上がったら
- 中期計画の達成が一時的な大型案件でないことを確認できる。2036年の純利益と累計還元の見積もりを引き上げ、増分投資利回りの改善を評価する。
- 解約率年5%未満と、規制・監査を伴う乗り換えに複数年要する実例の両方が公開されたら
- ソフトウェア事業の一部を単なる操作画面から記録の正本型へ移す根拠が生まれる。その部分に限って2036年以降の名目成長率を引き上げる余地がある。
- 50億円以上の投資が進む一方で償却・減損が増え、営業利益に対する自由現金の割合が改善しなかったら
- 利益の再投資は価値を増やしていない可能性が高まる。買収上振れは認めず、余剰現金の戻り方と還元額を保守的に見直す。
見ておくもの
- 四半期のソフトウェア・サービス別売上とセグメント利益、および全社費用の推移
- 保守を除くARRの増加率・クラウドとサブスクリプションの実売上・有償稼働顧客数
- AI統制基盤の有償導入件数、追加売上額、利用者IDの減少と解約率
- サービス受注高・受注残・主要顧客別売上構成と技術者稼働率
- 開発ソフトウェア資産・償却費・減損額、営業CFから開発投資を控除した現金
- 2029年3月期の180億円・27億円目標と配当性向35%・総還元性向40%の達成
倍率と資本コストの決め方
時価総額187億円は最後に比較し、2036年の価値は二事業の数量・単価・利益率から独立に推計した。累計導入1万3千社は有償契約数ではなく売上換算数量であり、受託工数もJUASの外部単価による推計である。物価3%は数量に混ぜず価格に含めた。
AIエージェント代替は中立の数量・価格とg_long=名目0%で反映し、資本コストの寿命やPERで重ね引きしない。資本コスト7.25%とg=0%による中立PER13.79倍は正当化式の上限であり、過去や同業の株価には依存しない。悲観は流動資産の床を使い、のれん・開発ソフトを換金価値としない。
余剰現金は前受金・開発投資を控え9億円、株主への戻り方は0.75とする。新リース基準導入後も賃料を営業費用に含めた現行比較にそろえる。株価だけが倍や半分になっても価値の前提は動かさない。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の基準7.5%から、純現金の健全性により0.25ポイント引く。
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