結論
ディ・アイ・システムは、業務システムの開発、ITインフラ構築、運用保守を主力とする独立系システム会社である。筆者の結論は「割高」だ。純現金を約10億円持ち、過去10年間に赤字決算がない点は評価できる。しかし、売上の約9割を占めるシステムインテグレーション事業では、人が投入した工数を対価にする契約が多く、AIエージェントの普及によって収益構造そのものが変わる可能性が高い。
同社には、簡単には見捨てられない強みもある。2013年に取得したアスリーブレインズのIT教育事業、2022年に取得したウイーズ・システムズの特権ID管理・操作ログ監査製品、そして2026年に加わったエム・アイ・シーなどの技術者集団である。とりわけ金融機関向けの操作記録や監査証跡は、AIが普及しても消えない需要だ。ただし、セキュリティ製品の売上規模はまだ小さく、全社の利益構造を変えるまでには至っていない。
会社は2028年9月期に売上高100億円、営業利益10億円を目指している。一方、2026年9月期の売上計画は79.5億円、営業利益計画は3.8億円に修正された。2026年9月期第3四半期累計でも増収ながら営業減益であり、規模の拡大が利益率改善につながるかは、まだ証明されていない。
10年先には、基幹システムの刷新や監査対応は残るものの、定型開発、インフラ設定、運用監視、初級研修の相当部分はAIに代わると見る。元請け化や自社製品の育成が進まなければ、案件数が増えても請求できる人月は減る。確率加重した現在価値は約17.6億円で、基準時価総額約27.9億円を約37%下回る。財務の強さと安い株価を混同せず、稼ぐ仕組みがどう変わるかを見極めたい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、最初の問いは、この会社が10年後も顧客から必要とされているかである。答えは、会社そのものは残る可能性が高いが、現在と同じ方法では稼げなくなる、というものだ。企業には基幹システムを動かし続ける責任がある。AIがコードを書いても、顧客の業務、障害時の対応、権限管理、監査への説明が消えるわけではない。しかし、その責任を担う仕事と、単に人を配置して作業する仕事は、別の価値として扱う必要がある。
経営陣が資本を投じる先も重要になる。技術者を増やす買収は、かつては受注能力と売上を拡大する合理的な方法だった。これからは、同じ買収によって将来の固定費を増やしてしまう危険がある。買収先の顧客関係や専門性が、取得費用と人材維持費を超える利益を生むかを確かめなければならない。
自社セキュリティ製品は小さくても観察する価値がある。監査証跡が顧客の業務と規制対応に深く結びつき、更新率が高く、価格改定を通せるようになれば、利益の質は大きく変わる。しかし現状では、そこまでの証拠は足りない。AI教育サービスにも可能性はあるが、開始したことと、継続的な利益を獲得したことは別である。
純現金の厚さは失敗を立て直す時間を与えるが、投資価値を無条件に高めるものではない。利益を留保して自己資本だけが増え、事業の稼ぐ力が細ればROEは低下する。筆者は、過去の高いROEよりも、これからの追加投資が資本コストを超えるかを重視する。現時点では価値に対する安全域が不足しており、長期保有の判断には元請け比率、自社製品の継続収益、買収後の資本効率について、さらに実績が必要だ。
何で稼ぐ会社か
会社の収益源は、大きくシステムインテグレーション事業と教育サービス・セキュリティソリューション事業に分かれる。2025年9月期の外部売上高は前者が約64.6億円、後者が約7.6億円である。利益の中心は依然としてSI事業であり、エンジニアの稼働率、受注単価、外注費、顧客との契約階層が収益性を決める。
SI事業の内訳は、業務システムの設計・開発が約32.0億円、ITインフラの設計・構築が約27.1億円、運用保守が約5.4億円である。通信、金融、流通、製造などの企業に対し、システム構築から保守までを提供する。ただし、2025年9月期の取引先業種別売上構成では情報サービス業が68.4%を占める。最終利用企業と直接契約する案件だけでなく、大手SI企業から仕事を受ける構造が大きい。2026年9月期上期の元請け比率は30.6%まで改善したが、顧客との価格交渉力にはなお制約がある。
教育事業を担うアスリーブレインズは、新入社員向けのIT研修と中堅技術者向け研修を提供する。2025年9月期の教育売上は約5.76億円で、その約77%を新卒向け研修が占める。2026年4月には生成AIを利用する研修サービス「ピジェトレ」を開始し、講師の指導とAIによる個別支援を組み合わせている。ただし、この新サービス単独の売上や継続契約数は確認できない。
セキュリティ事業では、ウイーズ・システムズの「WEEDS Trace」などを通じて、特権IDの管理、アクセスログの取得、操作記録の保存と監査を支援する。金融機関や自治体の内部統制需要に接点があり、単純な人月販売とは異なる事業である。とはいえ、2025年9月期のセキュリティ売上は約1.83億円にすぎず、ライセンス、導入作業、保守を区別した継続収益比率は開示されていない。収益の質を判断するうえでは、今後の保守更新率や導入社数の開示が重要になる。
優良さと弱いところ
同社の第一の長所は財務規律である。2025年9月期の自己資本は約16.4億円、純現金は約10.2億円に達する。ITサービス企業でありながら大きな負債に依存せず、2016年9月期以降の開示実績では毎期営業黒字を確保している。景気後退時に受注が減っても、直ちに資金繰りの問題へ発展する可能性は比較的小さい。
第二の長所は人材育成を自社グループに抱えることだ。研修会社を持つことで、新入社員を採用して技術者に育て、顧客案件へ投入する仕組みを築いている。営業、開発、運用保守、研修を組み合わせて顧客に提供できることも、中小規模の単一業務受託会社より有利な点である。
しかし、強い経済的な堀があるとは判断しない。2025年9月期のSI事業は売上総利益率が約19%で、全社営業利益率は約5%にとどまる。顧客が他社へ発注を切り替えることを防ぐ独占的な技術や、大規模な共同利用基盤は確認できない。元請け比率の改善は前進だが、それだけで価格を自由に決められる会社にはならない。AIによる開発工数の削減は、元請け企業や最終顧客にも交渉材料を与える。
WEEDS Traceの操作記録・監査証跡には、長期に残る需要がある。ただし、解約率5%未満、移行に年単位を要する実績、法改正に伴う継続的な値上げ、独自データの蓄積といった堀の証拠は二つ以上確認できなかった。したがって、全社を強い堀の企業として扱わない。過去のROEは高いが、小さな自己資本を背景とする面があり、利益を留保した後も同じ資本効率が維持されるとは限らない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は、企業のシステム刷新、クラウド移行、データ活用、セキュリティ対策によって拡大してきた。IDCの2026年公表値を紹介する資料では、2025年の国内市場は約7兆5,663億円であり、2030年には10兆円を超える見通しである。2025年9月期の同社SI売上をこの市場と比べると約0.085%に相当する。ただし、事業領域の定義が完全には一致しないため、厳密な市場シェアではない。
競争相手には、NTTデータ、富士通、NECなどの大手に加え、システナ、TDCソフト、クロスキャット、クレスコなど多数の独立系・専門系企業がある。大手は顧客との直接契約、基幹システムの長期運用、開発標準、営業網に強みを持つ。同社は中小規模の案件対応力と技術者供給で競う立場だ。競合の比較可能な国内受託開発シェアは統一基準で公表されておらず、個別のシェアを断定できない。
市場全体のIT支出が増えても、人月型企業の売上が同じように増えるとは限らない。AIエージェントが設計書、コード、テスト、監視、問い合わせ処理を代行すれば、顧客は同じ成果に必要な工数を減らせる。支出はAI基盤、データ管理、高度な統合、責任を伴う監査へ移り、従来の作業量による請求は細る。中立では同社の実質請求工数が10年間で約3分の2になると考える。
企業向け研修市場は、矢野経済研究所によれば2025年度約6,075億円で、同社教育売上の単純比率は約0.095%である。インソースやトレノケートなどとの競争に加え、AI講師による低価格化が進む可能性がある。特権ID管理市場はITRの2024年度予測で約155.7億円とされ、2025年の同社セキュリティ売上をすべてこの市場とみなしても約1.2%にすぎない。実際にはログ管理なども含むため、この比率は市場定義の異なる参考値である。競合にはCyberArk、BeyondTrustなどがあり、AIによる自動化と監査規制の強化が同時に進む。市場需要の強さだけで、同社のシェア拡大まで約束されるわけではない。
資本政策と M&A
経営陣は事業拡大と人材投資を優先しながら、安定配当を続けてきた。2022年9月期から2025年9月期まで増配が続き、2026年9月期も増配予定である。配当方針は連結配当性向30~35%であり、2026年9月期の計画値は31.8%、DOEは4.6%の見込みだ。DOEについて独立した将来目標の数値は確認できず、総還元性向や自社株買いの年間金額にも明確な数値の約束はない。
中期経営計画の2026年9月期目標は、2025年11月の修正を経て売上高79.52億円、営業利益3.81億円、営業利益率4.8%となった。2028年9月期の「Vision2028」は売上高100億円、営業利益10億円、営業利益率10%を目指す。売上総利益率の改善と販管費率の低下が達成の条件であり、ROEの数値目標は確認できない。この計画を10年間の利益成長の保証とは扱わない。
M&Aでは2013年のアスリーブレインズ、2021年のステップコム、2022年のウイーズ・システムズ取得に続き、2026年1月にはエム・アイ・シーを約2.26億円の取得関連総額で子会社化した。2026年5月にはクエストコンサルティングもグループに加わった。教育、セキュリティ、地域の技術者確保という方向性は理解できるが、取得した人員を増やすだけではAI時代の投資利回りは保証されない。
株主優待は100株以上の株主を対象とするQUOカードで、2026年春時点の株主数などから年間費用を約0.02~0.03億円と推計した。10年間の還元額にはこの負担も含める。余剰現金については、増配実績はあるものの配当性向が5割に達しておらず、買収にも資金を使うことから、株主に戻る価値を帳簿額の75%と見る。発表済みのTOB・MBO・上場廃止予定は確認できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の基幹システム刷新は簡単には終わらない。老朽化した基盤、複雑な業務ルール、複数ベンダーの製品が混在する企業システムでは、AIを導入しても最終的な設計責任と運用責任を担う会社が必要になる。ディ・アイ・システムには開発、インフラ、運用、教育を一体で提供できる体制があり、顧客との関係を深化させれば、単なる技術者供給からより高付加価値な仕事へ移る余地がある。
2026年9月期上期に元請け比率が30.6%へ改善したことは、直接顧客を開拓する方針が一定の成果を上げている証拠だ。アスリーブレインズの研修ノウハウは、自社の人材育成にも使える。エム・アイ・シーの取得により西日本での営業と技術者配置が充実し、地域企業の案件を広く取り込む機会も増える。
さらに、セキュリティ製品のWEEDS Traceは金融機関の特権ID管理や監査証跡に対応している。AIエージェントが企業システムを操作する時代には、人間だけでなく機械の権限や行動も記録する必要が生じる。製品の機能拡張が成功すれば、小さいながらも人月型とは異なる利益源を育てられる。
会社は2028年に営業利益10億円を目指し、人材投資や自社製品開発を進めている。計画どおりの利益率を直ちに期待することはできないが、AIを使って開発原価を削減し、元請け比率を高め、不要になった間接費を抑えられれば、数量減少に耐えながら利益を増やす道がある。純現金を持つ財務と増配実績は、変革期の経営にとって支えとなる。
慎重な見方
売上の大半が、今後もっとも経済性を変えられやすい工数型の仕事に依存している。顧客企業がAIエージェントによって設計、開発、テスト、運用監視を少人数で実行できるようになれば、必要な技術者数だけでなく、外注会社に支払う総額も減る。効率が上がった分を顧客と分け合える元請け会社はまだよいが、二次請け以下は値下げ圧力を受けやすい。
同社は2025年9月期に売上の68.4%を情報サービス業の顧客から得ている。実際の最終利用企業が同社を直接選び、強い乗り換え費用を負う案件ばかりではない。元請け比率が改善しても、全売上の約7割はなお元請け以外である。自社製品のセキュリティ売上は小さく、全社を継続課金型企業と評価する根拠は乏しい。
2026年9月期の計画修正と第3四半期累計の営業減益も気になる。社員の待遇改善、本社移転、拠点整備、買収費用、社内システム投資は必要な支出かもしれないが、利益率が上がる前に費用が増えている。今後さらに人月需要が減少すれば、過去に増やした人員と事務所が収益を圧迫する。
研修事業も安全ではない。企業の教育投資は伸びても、基礎的なプログラミング研修や反復的な質疑応答はAI講師が代替できる。新しい教育プラットフォームは自社サービスの付加価値を高める可能性がある一方、既存の集合研修単価を引き下げるきっかけにもなる。
買収による事業拡大も、技術者を増やすことだけを目的にすれば危うい。取得時に計上したのれんや顧客関連資産は、収益力が低下しても現金として回収できるわけではない。財務が健全だからといって帳簿上の自己資本をそのまま本質価値の床にしてはならない。
どちらに重みを置いたか
財務の健全性、増配実績、研修とセキュリティを持つ事業構成では前向きな見方に説得力がある。しかし、売上約9割を占めるSI事業の工数依存と、元請け比率の低さは長期の収益構造を大きく左右する。中立には既にAI代替による工数縮小を反映し、確率で同じ損失を重ねていない。一方、買収の失敗や顧客の内製化が加わる下振れも独立した可能性として残るため、上側30%に対し下側38%とやや慎重に寄せた。現在価値は基準時価総額を約37%下回り、割高との判断が優勢である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 914 円27 億円(+ 還元の換算額還元の合計 250 円7 億円)。 今の値に割り戻すと 606 円18 億円、今との差 −32.5%、 期待の年率 +3.0%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 2,509 円73 億円 | 499 円15 億円 | +235.3% | +14.6% | 271 円8 億円 |
| やや楽観 | 21% | 1,320 円38 億円 | 330 円10 億円 | +84.0% | +7.1% | 347 円10 億円 |
| 中立 | 32% | 814 円24 億円 | 246 円7 億円 | +18.2% | +1.9% | 339 円10 億円 |
| やや悲観 | 25% | 416 円12 億円 | 186 円5 億円 | −32.9% | −4.5% | 150 円4 億円 |
| 悲観 | 13% | 355 円10 億円 | 86 円3 億円 | −50.8% | −7.5% | 57 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 914 円27 億円 | 250 円7 億円 | +29.8% | +3.0% | 1,164 円34 億円 |
今の株価時価総額 897 円26 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 元請け化と原価改革が成功 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,509 円73 億円
基幹システム刷新とセキュリティ統制の需要が続く中、同社は元請け契約を着実に増やす。単純な開発作業はAIに代替されるが、顧客との要件調整、複数システムの統合、業務停止を防ぐ運用設計など、責任を伴う案件へ人材を移せるようになる。請求工数は現在よりわずかに減るものの、付加価値の高い仕事が増え、物価上昇に近い単価改定も維持する。
研修事業では新入社員教育と高度なAI活用研修が併存する。ピジェトレは講師を置き換えるだけでなく、研修の質を高め、社内運営費の抑制にも役立つ。ただし、AI製品の金額付きの販売実績が確認できないため、AIを理由に現在を超える受講数量の拡大は見込まない。
セキュリティ製品は金融機関の特権ID管理と監査ログ需要を着実に取り込む。エム・アイ・シーなどの買収先は地域案件の獲得に寄与し、取得費用を超える収益を生み出す。間接部門の効率化も進み、10年後の営業利益率は約8%まで改善する。会社の利益目標そのものを恒久的に達成するわけではないが、人月依存からの部分的な脱却に成功する10年となる。
- システムインテグレーション:数量 660(請求可能技術者換算の年間人年(社内技術者と協力会社の実働工数を含む推定))× 価格 0.13(請求人年当たりの年間売上(億円・名目))→ 売上 83 億円・営業利益 20 億円。実質請求工数は現状の0.971倍、年間単価は1.32倍。元請け化と生産性改善により粗利益相当の寄与率24%。
- IT教育・研修サービス:数量 1,235(年間研修受講者換算数(人・推定))× 価格 0.01(受講者換算1人当たりの研修売上(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。受講者換算0.95倍、単価1.30倍。AI補助による講師配置効率改善を見込むが、数量は現状を超えない。
- 特権ID管理・操作ログ監査セキュリティ:数量 150(年間導入先換算の契約数(社・年、推定))× 価格 0.01(年間導入先換算1件当たりの製品・導入・保守売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。導入先換算数量は現状維持、単価1.15倍。保守の効率化で寄与率が改善する。
倍率:k7.75%、長期名目成長率g0%。弱い堀の残存率3分の1と10年後ROE約13.0%からRONICを求めるが、gが0%なので正当化PERは1÷k=12.90倍。AI代替リスクは数量とgに反映済みで、倍率をさらに手で減額しない。余剰現金4億円の税後利息0.056億円を利益から除き、現金の75%に当たる3億円を加算する。
確率:既存顧客の直接契約化、業務の高度化、AIを使った原価削減、研修・セキュリティの収益拡大が同時に成功する筋書き。会社の目標実現には複数の改革が必要であり、現時点の開示では高確率にできない。
やや楽観 21% 工数減少を高付加価値化で補う 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,320 円38 億円
企業のIT投資は底堅いが、AIの普及によって開発工程の標準化が進む。既存の業務アプリケーション開発とインフラ構築では、従来と同じ人数を投入する必要がなくなる。同社は請求工数を減らしながら、設計責任や上流工程に重点を移すことで仕事を守る。
元請け案件は増えるものの、大手SI企業やクラウドベンダーとの競争は続く。価格の改定はかなり進むが、AIによる効率化の利益は顧客にも還元される。教育事業では、対面の実践研修が残る一方、基礎教育の一部がAI教材に代替される。セキュリティでは操作記録と権限管理の必要性が維持される。
買収先の地域顧客網と既存の営業網を活用し、重大な買収失敗は回避する。ただし、取得した技術者の人数をそのまま売上成長に結び付けることはできない。人員配置と間接費の見直しに成功し、営業利益率は約5%となる。純利益は現状をやや上回るものの、自己資本が積み上がるため、ROEは以前の高水準へ戻らない。
- システムインテグレーション:数量 570(請求可能技術者換算の年間人年(社内技術者と協力会社の実働工数を含む推定))× 価格 0.12(請求人年当たりの年間売上(億円・名目))→ 売上 70 億円・営業利益 16 億円。実質請求工数0.838倍、単価1.30倍。直接取引の増加と外注管理の改善で粗利益相当寄与率22.5%。
- IT教育・研修サービス:数量 1,105(年間研修受講者換算数(人・推定))× 価格 0.01(受講者換算1人当たりの研修売上(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。受講者換算0.85倍、価格1.27倍。実践指導と専門研修を残す。
- 特権ID管理・操作ログ監査セキュリティ:数量 142(年間導入先換算の契約数(社・年、推定))× 価格 0.01(年間導入先換算1件当たりの製品・導入・保守売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。導入先換算0.947倍、価格1.14倍。競争下でも一定の継続利用を保つ。
倍率:k7.75%、g_long0%なので正当化PERの上限は12.90倍。10年後ROEは約8.3%で資本コストをわずかに上回るが、成長の持続性は評価せず長期名目成長率0%を優先する。余剰現金4億円の利息税後0.056億円を利益から除き、株主への戻り方75%で3億円を加える。
確率:元請け比率の改善と研修・セキュリティの蓄積は実績があるため、工数減少を単価と原価改善で一部補う可能性は十分にある。ただし全面的な収益構造転換までは見込まない。
中立 32% AIで請求工数が減り、利益は縮小 利益 2 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 814 円24 億円
10年後も企業はシステム開発と保守を必要とする。ただし、必要とするのは現在と同じ量の技術者の時間ではない。AIエージェントが設計、コード生成、テスト、障害調査、運用定型作業を担い、顧客企業は外注工数を段階的に減らす。同社の請求可能工数は現在の約3分の2に縮小する。
人材不足と物価上昇を背景に、単価は名目で上昇する。しかし、顧客はAIの効率化による費用削減を求めるため、物価上昇率を完全には転嫁できない。元請け比率は改善するが、情報サービス業向けの受託構造から完全には脱却しない。教育事業では新卒向け研修の市場が残るものの、基礎科目はAI講師が浸透し、受講者換算の数量は減る。セキュリティは監査対応の需要が支えになるが、会社全体の成長エンジンになるほど大きくはない。
経営陣は技術者の採用を抑え、退職による自然減と社内自動化によって固定費を調整する。過去の買収先は一定の顧客関係を維持するが、取得した人員だけで追加利益を生み続けるわけではない。利益率は約4%を確保するものの、純利益は2025年より減少する。配当を続けても自己資本が増えるため、ROEは資本コストを下回る10年となる。
- システムインテグレーション:数量 455(請求可能技術者換算の年間人年(社内技術者と協力会社の実働工数を含む推定))× 価格 0.12(請求人年当たりの年間売上(億円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 12 億円。実質請求工数0.669倍、名目単価1.24倍。顧客との価格分配で物価1.34倍に届かず、AIによる社内原価削減で寄与率22%を維持。
- IT教育・研修サービス:数量 910(年間研修受講者換算数(人・推定))× 価格 0.01(受講者換算1人当たりの研修売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。受講者換算0.70倍、単価1.18倍。基礎研修のAI代替と実践研修の継続が共存する。
- 特権ID管理・操作ログ監査セキュリティ:数量 128(年間導入先換算の契約数(社・年、推定))× 価格 0.01(年間導入先換算1件当たりの製品・導入・保守売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。導入先換算0.853倍、単価1.10倍。規制需要は残るが大手競合への移行も進む。
倍率:2036年のROEは約5.5%でk7.75%を下回る。資本コスト未満の再投資には超過価値を認めず、g_long0%で稼ぐ力の上限1÷k=12.90倍を使用する。利益と自己資本には2036年までの工数減少と利益留保を反映済み。余剰現金4億円の税後利息0.056億円を利益から除き、3億円を資産価値として加える。
確率:国内ITサービス需要は残るものの、同社の売上の約9割が人月型で、元請け比率もまだ低い。AIによる工数削減と、顧客側の価格交渉力の強まりを最も自然な中心経路とする。
やや悲観 25% 二次請けの縮小が収益を圧迫 利益 1 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 416 円12 億円
顧客企業はAI開発環境を導入し、従来は外注していたプログラミング、テスト、インフラ設定を内製化する。大手SI企業は必要な協力会社を絞り、単価だけでなく請求可能な工数そのものを削減する。同社は既存顧客の一部を維持するものの、元請け化が想定ほど進まず、請求工数がほぼ半分になる。
研修事業ではAI講師の普及により、標準的な新入社員教育の価格競争が強まる。専門研修や実践指導は残るが、受講者換算数量は現在の半分に縮小する。セキュリティではWEEDS Traceの一定の契約が継続するものの、大手セキュリティ企業の統合製品が普及し、単独製品の採用機会が減る。
経営陣は人員採用を大幅に抑え、事務所の統合と外注費削減によって固定費を圧縮する。2026年の買収で得た人材と顧客網も、期待した増益効果には届かない。営業利益は残るが、売上規模が減ったため会社全体の利益は低下する。配当は利益に合わせて縮小し、余剰現金の一部は再編費用や顧客維持のために使われる。
- システムインテグレーション:数量 360(請求可能技術者換算の年間人年(社内技術者と協力会社の実働工数を含む推定))× 価格 0.11(請求人年当たりの年間売上(億円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 8 億円。請求工数0.529倍、単価1.13倍。元請け化が伸びず、粗利益相当の寄与率19.5%。
- IT教育・研修サービス:数量 650(年間研修受講者換算数(人・推定))× 価格 0.00(受講者換算1人当たりの研修売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。受講者換算0.50倍、単価1.12倍。標準研修のAI代替で稼働率が低下。
- 特権ID管理・操作ログ監査セキュリティ:数量 108(年間導入先換算の契約数(社・年、推定))× 価格 0.01(年間導入先換算1件当たりの製品・導入・保守売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。導入先換算0.72倍、価格1.05倍。大手統合製品による契約喪失が進む。
倍率:ROE約3.4%はk7.75%を下回り、長期の成長価値を認めない。事業の純利益から稼ぐ力を測る上限1÷k=12.90倍より低い10.5倍を使用する。元請け案件の競争負けと縮小再編の持続を含む悲観側の評価であり、市場の過去倍率は使わない。現金は3億円に減少し、利息控除後の事業利益に倍率を掛け、現金の75%である2.25億円を加える。
確率:AIエージェント代替だけでなく、大手SI企業による協力会社の集約と顧客の内製化が進む場合を想定する。売上の約7割が元請け以外という構造から、十分に起こり得る下振れである。
悲観 13% 人月商売が構造的に崩れる 利益 0 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 355 円10 億円
AIエージェントによる開発と運用の自動化が予想以上に進み、顧客企業は工数型の外注を大幅に削減する。大手SI企業は少数の高度な協力会社との契約に集中し、同社の受注領域の多くが汎用品化する。請求可能工数は現在の半分を下回り、単価も物価の上昇ほどは伸ばせない。
教育事業ではAI講師による個別学習が標準となり、従来の集合研修が大きく縮小する。ピジェトレのような新しい研修サービスも競合との差別化に失敗し、既存の講師を抱える体制が重荷となる。セキュリティ製品は監査ログ需要そのものがなくなるわけではないが、CyberArkなどの大手統合製品やクラウド標準機能に顧客が移り、単独製品としての採用が減る。
エム・アイ・シーなどの買収で拡大した事業基盤を十分に活用できず、のれんの減損や再編費用が発生する。拠点統合と人員削減を進めても売上減少に追い付かず、営業赤字に転じる。過去に蓄積した現金は一定程度残るが、事業の成長を再び期待する状況にはない。株主への還元は過去の黒字期間に限られ、末期には停止する。10年後の価値は稼ぐ力ではなく、現在の純現金を中心とした売却可能資産が主な支えになる。
- システムインテグレーション:数量 300(請求可能技術者換算の年間人年(社内技術者と協力会社の実働工数を含む推定))× 価格 0.10(請求人年当たりの年間売上(億円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 5 億円。請求工数0.441倍、単価1.04倍。人月型の優位が崩れ、粗利益相当の寄与率17%。
- IT教育・研修サービス:数量 520(年間研修受講者換算数(人・推定))× 価格 0.00(受講者換算1人当たりの研修売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。受講者換算0.40倍、単価1.03倍。基礎研修の大半が代替される。
- 特権ID管理・操作ログ監査セキュリティ:数量 90.0(年間導入先換算の契約数(社・年、推定))× 価格 0.01(年間導入先換算1件当たりの製品・導入・保守売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。導入先換算0.60倍、価格据え置き。顧客が大手統合製品へ移る。
倍率:営業赤字で事業の持続利益を正当化PERで評価できないため、稼ぐ力ではなく現在の純現金を中心とする資産床で測る。PBR0.63倍は2036年の積み上がった自己資本24.35億円ではなく、起点の2025年9月期自己資本16.4億円に適用する。16.4億円×0.63=10.33億円で、別途推定した売却可能資産の床10.2億円を下回らない。現金価値の二重加算は行わない。
確率:AI代替に顧客内製化、受託単価の競争、買収の不振が重なる複合的な筋書きである。過去の黒字継続と厚い純現金から倒産確率を中心には置かないが、事業構造が大きく変わる可能性は無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
システムインテグレーション
業務アプリケーション開発、ITインフラの設計・構築、運用保守。顧客企業や大手SI企業から受託する技術者の作業が収益の中心である。
| 数量請求可能技術者換算の年間人年(社内技術者と協力会社の実働工数を含む推定) | 価格請求人年当たりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 680 | 0.10 | 65 | 12 |
| 10 年後 中立 | 455 | 0.12 | 54 | 12 |
取り方:2025年9月期の外部売上64.63億円は有報のセグメント情報による。会社資料では業務アプリケーション32.0億円、インフラ27.1億円、運用保守約5.4億円。SI事業従業員672人と2026年上期の協力会社技術者185人を参考に、営業・非稼働時間・時点差を調整した請求人年680を推定し、売上を割って年間約950万円とした。実際の請求人年と平均請求単価は非開示であり、独立した実績値ではない。利益12.48億円は売上総利益相当で、全社販管費は別途調整する。AIエージェント代替の型は『人月・工数型』で、中立数量は680人年から455人年への0.669倍、価格は1.24倍、g_longは0%。国内ITサービス市場はIDC公表値で2025年約7兆5,663億円。同社の単純売上比率は約0.085%で、元請け比率30.6%や情報サービス業向け売上68.4%を考慮すると、シェア拡大を当然視できない。2025年9月期のセグメント別のれん約0.44億円は悲観時の売却可能資産には算入しない。
IT教育・研修サービス
新入社員向けIT基礎・プログラミング研修、中堅技術者の専門研修、AI活用研修などを提供する。
| 数量年間研修受講者換算数(人・推定) | 価格受講者換算1人当たりの研修売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1,300 | 0.00 | 6 | 2 |
| 10 年後 中立 | 910 | 0.01 | 5 | 1 |
取り方:会社の2026年5月決算説明資料にある2025年9月期の新卒向け研修4.44億円、中堅向け研修1.32億円を合算した。受講者数は会社非開示であるため、新卒向け約1,000人、中堅向け約300人、合計1,300人と仮定し、平均売上約44.3万円を逆算した。受講者数と単価は推定であり実数と混同しない。売上総利益相当の寄与額1.6億円は教育・セキュリティ合計の粗利益を事業内容から推定配分した値である。AIエージェント代替の型は『講師の工数で売る研修』であり、中立数量0.70倍、価格1.18倍、g_longは0%とする。矢野経済研究所の2025年度企業向け研修市場6,075億円に対する売上比率は約0.095%。研修需要が伸びてもAI講師への代替で対人研修の数量が減る想定とした。
特権ID管理・操作ログ監査セキュリティ
WEEDS Traceなどの自社製品による特権ID管理、アクセス記録、操作ログ監査、関連する導入と保守。
| 数量年間導入先換算の契約数(社・年、推定) | 価格年間導入先換算1件当たりの製品・導入・保守売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 150 | 0.01 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 128 | 0.01 | 2 | 1 |
取り方:2026年5月会社説明資料の2025年9月期セキュリティ売上約1.83億円を使用した。導入社数、ライセンス数、平均契約額、解約率は非開示。年間導入先換算150件と年間平均約122万円は売上を説明するための仮定であり、実際の導入企業数を示すものではない。売上総利益相当の寄与額0.63億円は教育との推定配分である。ITRの特権ID管理市場は2024年度予測155.7億円だが、同社売上にはログ管理と導入作業も含まれるため、その市場シェアは厳密には算定不能。監査ログは規制対応の正本になり得る一方、低解約率・年単位の移行・法改正時の値上げ・独自データのうち二つ以上の開示証拠がない。このため『操作画面・ライセンス課金型に準じる』保守的な型とし、中立数量0.853倍、価格1.10倍、長期成長0%とする。2025年9月期の教育・セキュリティセグメントののれん約1.12億円は悲観時の資産床に含めない。
リスクと懸念
AIエージェント代替
最大のリスクは開発・運用・研修の請求可能な人月が縮むことだ。会社全体の売上の大半は工数型SIであり、顧客はAIによる効率化を理由に契約工数の削減を求められる。単価を引き上げても数量減少を補えない可能性がある。中立の数量と長期成長率にこの影響を反映しており、kの寿命には重ねていない。
元請け比率と顧客交渉力
2026年9月期上期の元請け比率は30.6%まで改善したが、まだ直接契約以外の取引が多数を占める。大手SI企業が協力会社を集約すると、同社が最終顧客に必要とされていても受注が減る可能性がある。元請け比率が上がるだけでなく、請負案件の粗利益率が改善するかを確認する必要がある。
人件費と稼働率の不一致
社員の待遇改善、採用、教育、拠点整備は先行して費用を生む。需要が想定より早く縮小すると、給与と事務所費用を同じ速度で減らすことができない。AIで開発生産性が改善しても、顧客への値下げと社員の雇用維持が重なれば、会社の利益に十分残らないおそれがある。
M&Aの投資利回りと減損
2026年のエム・アイ・シーなどの買収は営業網と人材を広げるが、買収した会社の顧客や技術が長期的に維持できるかは別問題である。2026年6月末ののれんは約2.82億円に増えている。取得費用を超える追加利益が生まれなければ、減損によって自己資本と株主価値が損なわれる。
研修サービスの価格競争
集合研修と講師による反復的な説明はAI講師が代替しやすい。ピジェトレは対抗策となるが、競合も同様のサービスを提供できるため、AI活用そのものは参入障壁にならない。受講者数、研修単価、顧客の継続利用が伸びず、製品開発費だけが増える可能性がある。
セキュリティ製品の競争と規制
特権ID管理や操作ログ監査は金融規制と内部統制に支えられるが、大手の統合セキュリティ製品やクラウド標準機能との競争がある。WEEDS Traceの導入企業数、解約率、値上げ実績が開示されていないため、現在の製品の存在だけで長期の独占的な収益力を認めることはできない。
今後の分かれ目
- 元請け比率が50%を超え、同時にSI事業の売上総利益率が継続的に改善したら
- 単なる工数供給から設計・業務統合の責任を担う案件への移行が進んだと評価する。中立の請求工数の減少幅と粗利益率を見直し、やや楽観側の確率を増やす。
- AI導入が進んでも、開発とインフラ構築の受注残高・請求工数が複数年維持されたら
- 顧客がAI効率化を追加案件の発注に使っている可能性が高まる。人月型の数量減少前提を緩める。ただし、同じ工数を維持できていることと、10年より先の高成長を正当化できることは区別する。
- WEEDS Traceなどの継続契約比率、解約率、値上げ実績が公開され、規制対応による乗り換え障壁が確認できたら
- セキュリティ部分だけを記録の正本型へ再分類する。導入先数量と価格の前提を修正し、全社の長期成長率にどれだけ反映できるかを売上構成比から再評価する。
- ピジェトレの有償導入社数、継続契約数、年間売上が開示され、既存研修の減少を補う規模に成長したら
- AIを自社の売り物にする実績として評価する。教育事業の数量上限を再検討し、研修の提供形態が変わることによる粗利益率改善も確認する。
- 買収先の売上だけ増え、営業利益・営業キャッシュフロー・ROEが改善しなかったら
- 取得資本の再投資利回りが低いと判断し、強気シナリオの利益率を引き下げる。のれん減損の可能性を再評価し、悲観側の確率を高める。
- 配当性向が50%以上へ引き上げられるか、大規模な自社株買いが継続的に実施されたら
- 余剰現金が株主に戻る確度を見直し、excess_cash_returnを0.75から1.0へ引き上げることを検討する。利益成長とは分け、配当・買い戻し後の自己資本とROEも整合させる。
見ておくもの
- システムインテグレーション事業の元請け比率と、受託案件の売上総利益率
- 開発、ITインフラ、運用保守の売上内訳と受注残高の推移
- 従業員数、協力会社技術者数、技術者稼働率、実際の請求単価の変化
- 2028年9月期の売上高100億円・営業利益10億円に向けた進捗と計画修正
- ピジェトレの有償契約数と教育事業の受講者数・単価
- WEEDS Traceの導入社数、更新率、製品・保守売上の内訳
- 買収先別の売上、利益、のれん償却・減損、営業キャッシュフロー
- 純現金残高と配当性向、自社株買い実績
- 国内企業のAIエージェント導入に伴う外注開発・運用工数の変化
倍率と資本コストの決め方
評価の起点には2025年9月期の売上、利益、自己資本、純現金と、2026年10月22日の株価・株数を用いた。先にSI、教育、セキュリティを請求人年、受講者換算数、導入先換算数と名目単価に分け、AIエージェント代替を数量と長期成長率へ反映した。業績が成長した過去10年をそのまま2036年へ延長していない。倍率はk7.75%、g_long0%、弱い堀に基づく正当化PERを使い、現在や過去の市場PERから決めていない。悲観は2036年に積み上がる自己資本へ床倍率を掛けず、現在の純現金を中心とする資産で測った。2025年9月期ののれん約1.56億円は現金化できないとして床から除き、2026年の買収に伴う増加分にも同じ考え方を適用した。自己資本は各筋書きで起点16.4億円に期間純利益を積み、累計還元を差し引いている。新リース会計基準による使用権資産と負債の両建ては収益力そのものを増やさないため、2036年の利益は従来と比較可能な費用認識で評価した。最後に現在の時価総額と照合した結果、確率加重現在価値約17.6億円は約27.9億円を約37%下回る。計算結果が割高を示すため結論も割高とした。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、循環0%、値決め力+0.5%、純現金-0.25%、寿命0%を加算する。βと時価総額による規模の上乗せは使わず、AIエージェント代替による数量の減少もkには重ねない。