結論
BTMは、全国の協力会社と自社の技術者を企業の開発案件に結び付けるITサービス会社である。筆者の結論は割高だ。地方人材の調達網は有用だが、売上の約8割を占める人月型の仕事が10年後も同じ量だけ必要になるとは考えにくく、今日の株主が受け取る利益にも十分な安全域がない。
2026年3月期の売上高は約60億円まで伸びた。しかし営業利益率は1.8%、純利益は約0.7億円にとどまる。1万1,203件の協力会社等の連絡先や188人の自社エンジニアは案件を集める力を示すが、顧客が高い料金を払い続けなければならない独占権ではない。実際、取引の平均継続期間は21.8か月から17.2か月に短くなった。
10年先の中心像は、AIエージェントが設計補助、実装、検証、障害調査の工数を削り、人月の販売量が縮む一方、単価は物価に近い上昇にとどまる姿である。自社の『TracisAI』には導入事例があり、AIを売る側へ移る芽もある。ただし、独立した継続課金売上は開示されず、従来の人月売上の縮小を埋めるとまでは評価しない。
中立の2036年3月期の売上は約54億円、純利益は約0.6億円にとどまり、10年後の事業価値は今の時価総額約14億円より低い。確率と資本コストを考えれば現在価値の差はさらに開く。割安さの根拠になりそうな純現金も、協力会社への支払いと売掛金の回収をつなぐ運転資金が必要であり、少数株主に直ちに返されるとは限らない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の観点では、見たいのは売上成長よりも、残る利益とその再投資先である。BTMの営業網は全国の開発会社を紹介できる点で実用的だ。だが、営業利益率が2%前後なら、案件をいくら増やしても採用費や管理費が少し膨らむだけで株主の取り分は薄くなる。自社エンジニアや協力企業に仕事を配る機能と、顧客がどうしても手放せない独自製品は別物である。
再投資の利回りはまだ判定保留だ。買収で人員や売上を増やすことはできても、のれんを抱えてROEが下がるなら株主価値は増えない。『TracisAI』は自社の知恵を製品に変える好機だが、導入1件と年単位で解約されない継続収益を持つ事業の間には大きな距離がある。平均取引期間17.2か月という数字も、仕事の入替えが日常的な市場であることを物語る。
現金の評価にも条件が要る。帳簿上は約3.3億円の純現金があるが、月々の協力会社への支払いを止められない事業だ。事業に必要な運転資金と、株主が自由に引き出せる現金を同一視しない。大株主の持分が高く配当実績もないので、仮に現金が積み上がっても満額が株主のものになると期待するのは早い。
企業が悪いというより、予測できる利益の幅に対して支払う値段が高い。10年先に技術者ネットワークが残っても、AIで請求できる時間が減ったとき、今日のような売上成長を利益成長の根拠にはできない。確かな値決め力や資本配分の実績が見えるまでは、大きな安全域を要求する会社である。
何で稼ぐ会社か
会社の報告セグメントは『DX推進事業』の一つだけだが、稼ぎ方は二つに分かれる。ITエンジニアリングサービスは売上の約8割を占め、顧客が不足する開発要員を自社社員、外部協力会社、フリーランスから調達して提供する。主な契約は準委任で、顧客が買うのは完成した独自製品ではなく技術者が働く時間である。全国2,500社超の協力会社との取引実績を持ち、大阪、福岡などで早くから関係を築いたことが特徴だ。
残る約2割のDXソリューションサービスは、クラウド環境の設計・構築、業務システム開発、DXコンサルティング、運用保守などを請け負う。AWSやAzureの基盤からWebアプリケーションまでをつなげ、地方のラボも使って提供する。ただしこちらも準委任・請負で技術者の工数を対価に変える部分が中心で、規制上の記録を預かる基幹台帳や決済網を運営しているわけではない。両サービス別の売上額と利益は開示していないため、後掲の約48億円・約12億円という分解と単価、利益配分は推定である。
顧客は大手SI企業、ITサービス企業、成長企業など数百社に及ぶ。営業担当が案件と協力企業を集めるため、パートナーの連絡先が増えるほど候補者を探す手間は減る。しかし連絡先1件は稼働者1人でも独占契約1件でもない。11,203件をそのまま稼働人月に使わず、業界の月額料金と年間売上から実際に請求できる人月を推定する必要がある。
AI事業では、2025年に設立したBTMAIZとヘッドウォータースとの提携を基盤に、障害調査を自動化する『TracisAI』やAI導入支援を始めた。『TracisAI』にはバリューデザインへの導入事例があるが、有料契約の年額と契約数は公表されていない。これは本来の競合であるソフト開発自動化の波に対抗する取り組みだが、収益予測上はまだ小規模な選択肢である。
優良さと弱いところ
BTMの良さは製品の囲い込みより、人を探して結び付ける営業網にある。2026年3月末の協力会社等の連絡先は1万1,203件、営業人員は34人、自社エンジニアは188人に増えた。地方でも働ける採用網と独自研修『Newhow』は、首都圏中心の小規模SES企業より人材を集めやすくする。2027年3月期第1四半期には粗利率が16.6%へ改善し、案件採算を管理する力も示した。
一方、これは値上げの堀ではない。協力会社との連絡先は取引独占権ではなく、顧客も複数のSES会社や大手SI企業に発注できる。公表された94.2%の継続率は月次案件ベースの指標であり、年間解約率5%未満という意味ではない。平均取引継続期間が前年度の21.8か月から17.2か月へ短くなった点も、強い切替費用を裏付けない。値上げの実績や、法改正のたびに対価を上げられる独占的なデータベースの証拠は確認できない。
利益率の薄さは資本効率にも響く。売上成長率は高くても、直近の営業利益率1.8%は2024年3月期の3.7%より低い。2026年3月期のROE約9%は資本コストを辛うじて超える水準であり、買収で拡大した売上が増分の高い資本利益率を生んだという証拠にはまだならない。創業以来の営業力は評価するが、10年先に残る堀は弱いと判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のIT技術者需要は足元では強い。矢野経済研究所による2024年度のデジタル人材採用・活用支援4市場の合計は約1兆4,928億円で、翌年度も拡大が見込まれる。技術者派遣全体は2023年に約2.8兆円、うち情報処理・通信技術者は約1.5兆円という同業の開示もある。BTMの人月型売上約48億円を後者と比べれば0.3%前後にすぎないが、SESと派遣の境界が異なるため厳密な市場占有率ではない。
受託DXの背景市場については、富士キメラ総研の国内DX市場が2023年度約4兆円、2030年度約8兆円へ伸びるとの予測を会社が引用している。BTMの受託開発相当の約12億円はその0.03%ほどに相当するものの、DX市場にはソフト販売や基盤投資も入る。ソリューション部分の厳密なシェアも算出できない。テクノプロ、SHIFT、SCSK、システナ、ギークス、レバテックなどが技術者と案件を奪い合い、各社の同一範囲の人月型売上とシェアは公表されていない。BTMが10年間の伸びを市場占有率の独占的上昇に頼るのは難しい。
仮に比較対象の人月市場が実質で10年後に7割、名目単価が1.30倍となれば、参考市場1.5兆円は約1.37兆円に変わる。その場合、BTMの便宜的な人月型シェアは現在約0.32%から楽観0.47%、中立0.31%、悲観0.16%へ動く。これはSESと派遣の範囲を合わせられないため、あくまで数量予想の感応度である。
市場の拡大と人月需要の拡大は同じではない。AIエージェントがコード作成、テスト、保守、調査を自動化すると、DXへの投資総額が伸びても顧客が外部に買う人月は減り得る。高難度の設計、権限管理、セキュリティ、顧客固有の要件整理は残るが、標準作業の削減が先に進めば、単価を上げるより先に請求時間が減る。市場全体の需要数量とBTMが売れる人月を分けて考えるべき理由はここにある。
2036年までに同社が伸びる余地は、小規模な地方企業の案件やAI導入後の監査・移行管理のような難度の高い仕事にシェアを移すことだ。それでもAWS、Microsoft、国内大手SI企業や自動化製品の競争から自由ではない。中立では既存の人月型二事業をAIエージェント代替の『人月・工数で売る』型に分類し、価格は10年間の物価上昇よりやや低く、数量はそれぞれ今の7割前後に縮むと見ている。
資本政策と M&A
上場は2022年12月で、10年間の公開企業としての資本配分実績はまだない。直近ではLaniakeaのSES事業を約0.5億円で譲り受け、2025年10月にはクエスト・システム・デザインを約1.06億円で買収した。2026年3月期末ののれんは約1.12億円で、自己資本約7.25億円に対して軽くない。買った技術者が辞めず、既存営業網に乗って増分利益を生むかが投資の成否を決める。2026年8月の説明では、今後年1~2件、事業価値10億円程度までの買収も検討する方針を示した。
会社が示した2027年3月期の単年度計画は売上高70.01億円、営業利益1.24億円、純利益0.66億円であり、新たなM&A寄与は織り込んでいない。確認できる中期の定量資料では、複数年度の到達売上・営業利益・ROEについて公約した数値を特定できない。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額も数字の約束なしである。2026年3月期まで無配であり、配当開始時期も未定だ。
上位10株主の持分は66.53%、筆頭の資産管理会社だけで39.05%を占める。過去5年に実質株数2%以上の自社株買いや増配も確認できないため、蓄積現金が少数株主へ戻る割合は慎重にみる。新株予約権の潜在株式は143,400株で現在株数のおよそ5%にあたり、将来の取り分も薄まる。大株主による非公開化の可能性を価値の上乗せには使わない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
人材の不足と地方企業のDX投資は簡単にはなくならない。BTMは2026年3月期に過去最高の売上を更新し、協力会社等の連絡先が1万件を超えた。都市部で採れない技術者を地方から集められ、営業担当は案件と人材の双方を開拓している。取引企業数の広さと地方拠点の蓄積は、後発の小規模事業者には短期で再現しにくい。自社採用を抑えつつ外部協力会社を活用できれば、固定費を急増させず規模を維持できる。
AIの普及は外部の工数をすべて消すわけではない。大企業の既存システムには古い設計、複雑な権限、監査、個別仕様が残り、AIの出力を理解して責任を取る人が要る。BTMAIZとヘッドウォータースとの協業、AWSの障害調査を自動化する『TracisAI』の導入は、単純な下請けから高度な支援へ軸足を移す動きとして評価できる。2027年3月期第1四半期の粗利率改善は、少なくとも案件選別と原価管理が効くことを示した。
クエスト・システム・デザインの統合が成功し、同じ採用・営業の仕組みを別の企業へ移植できれば、買収は市場占有率を広げる足場にもなる。10年後に人月そのものが今と同程度で維持され、高単価の仕事が増えれば、かつての良好な営業利益率への回帰もあり得る。なお現時点の製品売上額は分からないため、AI製品の爆発的な売上を追加しなくても成立する上振れである。
慎重な見方
同社の売上が何の対価なのかを見誤ってはいけない。売上の約8割は顧客が買うエンジニアの時間であり、残る2割も開発やコンサルティングの工数が主体である。AIエージェントによって1人が何人分もの実装や検証をこなせるようになれば、DX市場の金額が増えたとしても外注する技術者の人数や時間は減り得る。『TracisAI』自身が障害調査の人的稼働を大幅に減らすと説明しており、顧客に効率化を売ることが従来の工数売上を圧迫する構図も明白だ。
データベースの1万件超は連絡先であり、他社が取引できない排他的な人材登録ではない。月次の案件継続率を年次の低解約率と読み替えることもできない。平均取引継続期間はむしろ短期化した。粗利率が改善しても営業利益率はなお薄く、固定的な営業人員、採用費、管理部門、のれん償却が残る。需要が少し減るだけで営業利益が消えやすい構造である。
今後も年1~2件の買収を進める方針なら、買収先の技術者流出や対価の払い過ぎは避けて通れない。自己資本に対するのれんの重さに加え、開示済みの新株予約権は株主の取り分を薄める。支配株主に近い持分構成で配当もない会社では、現金の蓄積そのものが利益を生まない買収へ再投資されるおそれもある。外から見える業績が増収でも、株主が実際に受け取る資本効率は劣化し得る。
どちらに重みを置いたか
直近1~2年の受注や人材調達については強い見方に根拠がある。ただし10年先の価格決定力と資本配分では慎重な見方が勝る。中立の人月数量と長期成長率にはAI代替を既に反映し、確率で同じ影響をもう一度減点していない。下側42%が上側27%を上回るのは、買収後の収益管理、薄い営業利益率、還元実績の乏しさが上振れの果実を株主に届けるか不確かだからだ。今の時価総額との隔たりは十分に大きく、割高という結論になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 358 円10 億円(+ 還元の換算額還元の合計 8 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 167 円5 億円、今との差 −65.9%、 期待の年率 −2.9%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 928 円26 億円 | 51 円1 億円 | +99.7% | +7.4% | 98 円3 億円 |
| やや楽観 | 17% | 614 円17 億円 | 17 円0 億円 | +28.7% | +2.6% | 107 円3 億円 |
| 中立 | 31% | 333 円9 億円 | 0 円0 億円 | −32.0% | −3.8% | 103 円3 億円 |
| やや悲観 | 26% | 151 円4 億円 | 0 円0 億円 | −69.1% | −11.1% | 39 円1 億円 |
| 悲観 | 16% | 113 円3 億円 | 0 円0 億円 | −76.9% | −13.6% | 18 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 358 円10 億円 | 8 円0 億円 | −25.4% | −2.9% | 366 円10 億円 |
今の株価時価総額 490 円14 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 供給網を保ち、高付加価値案件へ移る 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 928 円26 億円
地方の協力会社との関係が一段と厚くなり、顧客がAIを導入した後の複雑な要件定義、セキュリティ、運用管理でBTMが選ばれ続ける。標準コードを書くための人月は減るが、実際の請求人月はより難度の高い仕事への入替えで全体として維持される。業界の需給ひっ迫と物価上昇に見合う単価改定も続く。
『Newhow』による育成とBTMAIZのAI導入支援が技術者1人の付加価値を高める。クエスト・システム・デザインを統合した採用・営業ノウハウが他の小規模買収でも機能し、案件採算の管理が定着する。粗利の改善に伴って営業利益率は過去の良好期程度まで回復し、売上が大幅に増えなくても利益は拡大する。
『TracisAI』は顧客との関係を深めるが、現時点で有料契約の売上額が示されない以上、独立した巨大な新収益源とは扱わない。蓄積現金の一部は少額の配当や自社株買いとして戻り、新株予約権がすべて行使されるほど評価が高くなる。優良な小型ITサービス会社として踏みとどまる姿だが、独占的なソフト会社へ生まれ変わる前提までは含めない。
- ITエンジニアリングサービス:数量 5,680(顧客に請求する稼働人月/年(自社・協力会社の合計、推定))× 価格 0.01(請求人月1件当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 65 億円・営業利益 2 億円。人月1.00倍×単価1.34倍。AI代替を高難度作業への入替えで補う上限のケース。
- DXソリューションサービス:数量 1,212(請負・準委任業務の換算稼働人月/年(推定))× 価格 0.01(換算人月1件当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。換算人月1.00倍×単価1.34倍。AI開発の効率化が原価率を下げるが別建ての製品売上は加算しない。
倍率:2036年ROE約10.8%、k8.25%、弱い堀の増分RONIC約9.1%。AI代替型の2036年以降の名目g_longは0%で、正当化PER=(1−0/RONIC)/(0.0825−0)=12.12倍。10年累積純利益約12.50億円+予約権払込約0.45億円−還元1.50億円により、自己資本は7.25億円から約18.70億円へ増える。
確率:地方拠点と外部協力会社の営業網を保ったまま、AI時代にも人月の需要をほぼ維持し、2024年3月期並みの営業利益率に戻す必要がある。連続した案件選別と買収統合の成功が必要なので、上振れでも確率は抑える。
やや楽観 17% 高難度案件が人月減少を部分的に埋める 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 614 円17 億円
標準化しやすい開発の人月はAIエージェントが削るが、大企業のレガシーシステム、認証、セキュリティ、クラウド移行の仕事が比較的残る。BTMは外部協力会社を選別し、高スキルの技術者を安定供給する。顧客に認められる単価上昇はおおむね物価分にとどまり、請求人月全体は1割強減る。
『TracisAI』とBTMAIZの受注経験を既存顧客への提案に使い、仕事の質を変えることで粗利率を守る。クエスト・システム・デザインの統合が進み、追加の小規模買収も過度な負債を負わずに進める。営業人員と管理部門の費用を吸収し、営業利益率は最近の水準より改善する。
人月を増やすことだけを成長と見なす経営姿勢から一歩進み、採算の良い案件を選んで受ける姿が定着する。後半の数年に限って控えめな株主還元も実現する。もっとも製品売上の独立した金額は確認できず、巨大なストック型収益への転換を前提にしないため、10年後の利益には上限が残る。
- ITエンジニアリングサービス:数量 4,885(顧客に請求する稼働人月/年(自社・協力会社の合計、推定))× 価格 0.01(請求人月1件当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 55 億円・営業利益 1 億円。人月0.86倍×単価1.33倍。残る高難度の案件で粗利を確保する。
- DXソリューションサービス:数量 1,067(請負・準委任業務の換算稼働人月/年(推定))× 価格 0.01(換算人月1件当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。換算人月0.88倍×単価1.33倍。開発生産性とAWS案件で収益性が上がる。
倍率:2036年ROE約8.0%でk8.25%を下回り、10年超は成長を評価しない。名目g_long0%を用いる正当化PERの上限1/k=12.12倍をそのまま採用する。累積純利益約9.01億円+予約権払込約0.14億円−還元0.50億円として自己資本15.90億円につながる。
確率:2027年3月期第1四半期の粗利率改善と買収先の営業統合は上振れの根拠になる。しかし請求時間が減る環境で2割未満の数量減にとどめ、利益率改善を持続させるには相応の実行力がいる。
中立 31% 市場は伸びても人月請求は縮む 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 333 円9 億円
2027年3月期には人材の増強で増収が続く。しかし、その後は生成AIから自律的なAIエージェントへの移行が進み、単純なコード作成、試験、一次調査の外注時間が縮んでいく。全国に連絡網を持つBTMは高難度の案件を一定程度確保するが、量の減少までは埋められない。10年間でITエンジニアリングの人月は約3割、受託DXの換算人月も約3割減る。
契約単価は人件費と物価の上昇で名目では増える。ただし顧客自身がAIで作業をこなせるため、物価上昇を超える値上げ力は乏しい。『TracisAI』などの新サービスは関係先への提案に役立つが、独立製品としての収益規模を確認するまで、既存事業を置き換えるほどの利益は数えない。
既存顧客との関係は残るものの、平均取引期間が短く、協力会社への支払いと営業組織の維持費が収益を圧迫する。買収は一部の人材と案件を補うが、すべてが高い投下資本利益率につながるとは限らない。資本は無配のまま積み上がり、ROEは低下する。会社自体は存続しても、長く保有する株主には控えめな稼ぎしか残らない。
- ITエンジニアリングサービス:数量 3,862(顧客に請求する稼働人月/年(自社・協力会社の合計、推定))× 価格 0.01(請求人月1件当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。人月0.68倍×単価1.30倍。AIエージェントの工数圧縮を数量に一度だけ反映。
- DXソリューションサービス:数量 873(請負・準委任業務の換算稼働人月/年(推定))× 価格 0.01(換算人月1件当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。換算人月0.72倍×単価1.30倍。請負開発も時間を換算した価値が縮む。
倍率:2036年ROEは0.63÷13.50=4.67%と資本コスト8.25%を下回る。10年より先も人月市場の名目成長は0%なので、成長の価値を付けない稼ぐ力の上限PER=1/0.0825=12.12倍。自己資本は現在約7.25億円+10年累積純利益約6.11億円+第1回新株予約権払込約0.14億円、配当・自社株買い0円で約13.50億円。
確率:近い将来の会社計画は増収だが、10年後の数量を過去の伸びから外挿できない。下に寄せる理由:薄い営業利益率と買収後の人員定着の不確実性が上振れの利益を削りやすい。AIの工数削減自体は既に数量とg_longへ織り込んでいる。
やや悲観 26% 受託の縮小と費用硬直化が同時に進む 利益 0 億円 · PER 11.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 151 円4 億円
生成AIを導入した顧客が開発要員の発注人数を段階的に減らし、外部協力会社はより大きな取引先や直接契約へ移る。BTMもセキュリティやクラウド移行など専門性の高い案件を残すが、請求人月の減少は中立より深くなる。物価が上がっても値段の交渉力が弱く、単価上昇は物価の一部にとどまる。
地方ラボと『Newhow』の強みは消えないものの、顧客の人月購入が減る市場では、技術者を育てる速度と案件の供給が釣り合わなくなる。クエスト・システム・デザインの統合も人員の獲得ほどには増分利益を生まない。売上が減る局面でも販売管理、教育、システム管理の費用が残り、営業利益は細る。
会社は残存する事業を守るため買収を絞り、資金を運転資本に回して生き残る。大きな株主還元は始まらない。利益は小さくプラスで保てるが、資本コストを大きく下回るROEでは、帳簿上の自己資本を満額の株主価値とは見なせない。純現金を損なわない範囲での低い稼ぐ力が評価の中心になる。
- ITエンジニアリングサービス:数量 2,954(顧客に請求する稼働人月/年(自社・協力会社の合計、推定))× 価格 0.01(請求人月1件当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 29 億円・営業利益 0 億円。人月0.52倍×単価1.16倍。顧客内製化と調達先の変更で稼働を失う。
- DXソリューションサービス:数量 727(請負・準委任業務の換算稼働人月/年(推定))× 価格 0.01(換算人月1件当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。換算人月0.60倍×単価1.13倍。契約案件の採算管理は続くが固定費負担が重い。
倍率:ROE約2.7%<k8.25%なので上限は稼ぐ力0.30億円÷0.0825=約3.64億円。受注の継続が弱いため、床3.3億円との間の3.45億円(PER11.5倍)を採る。現在の自己資本約7.25億円+累積純利益約3.61億円+予約権払込約0.14億円−還元0=11.0億円。
確率:営業利益率の薄さは販売量の縮小に弱い。協力会社の関係が残っても顧客が発注を減らす際、営業組織・管理部門と買収先の統合費が先に減るとは限らないため、十分な重みを与える。
悲観 16% 人月市場で競争力を失い、純現金の床に近づく 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 113 円3 億円
人月で買う仕事の市場が縮む中、BTMは協力会社との関係維持にも失敗し、大手SI企業や顧客との直接取引へ案件が移る。設計と要件整理の仕事は残るが、これを担う少数の熟練者だけでは既存営業組織を支えられない。請求人月は主力で4割、受託DXでも5割の水準になり、売上全体は現状の半分弱へ減る。
単価の上昇も限定的で、研修したエンジニアが離職し、複雑な案件ほど大手に取られる。買収先ののれん減損や採用の失敗が生じる。基礎的な売上総利益が営業・管理部門の費用を賄えず、最終年度は営業赤字になる。新しい人月の需要が回復しても、顧客接点の再構築には時間を要する。
経営は新たな大型投資を止め、残る契約の回収と人員の整理を進める。10年の前半に稼いだ利益は後半の損失にほぼ消され、株主還元も行われない。現金が直ちに株主へ分配されるとは考えないものの、実質的に事業価値が失われた場合に残る純現金相当が悲観価値を支える。上場廃止や倒産を決め打ちした筋書きではない。
- ITエンジニアリングサービス:数量 2,272(顧客に請求する稼働人月/年(自社・協力会社の合計、推定))× 価格 0.01(請求人月1件当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。人月0.40倍×単価1.12倍。営業網が毀損し、固定費吸収不足で赤字。
- DXソリューションサービス:数量 606(請負・準委任業務の換算稼働人月/年(推定))× 価格 0.01(換算人月1件当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。換算人月0.50倍×単価1.10倍。個別案件の利益がほぼ消える。
倍率:2036年最終損益は赤字で継続利益の正当化PERを適用できない。床は現時点の純現金約3.3億円、自己資本の基準は今の7.25億円に近い7.20億円を使い、PBR約0.45833×7.20億円=3.30億円とする。前半の小幅黒字と後半の連続損失・のれん減損を含む10年累積純損益約−0.19億円、予約権払込約0.14億円、還元0で期末自己資本約7.20億円と整合する。
確率:仕事の自動化に加えて買収した技術者の流出、案件獲得力の低下、固定費の削減遅れが重なる場合である。破綻を既定にはしないが、企業価値の大部分が現金の回収可能額へ縮む危険を無視しない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ITエンジニアリングサービス
準委任・一部派遣を通じて、企業のシステム開発に自社・協力会社・フリーランスの技術者を提供する。売上構成は会社説明の約8割である。
| 数量顧客に請求する稼働人月/年(自社・協力会社の合計、推定) | 価格請求人月1件当たり売上(億円/人月、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,680 | 0.01 | 48 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3,862 | 0.01 | 43 | 1 |
取り方:会社2026年3月期の売上60.4億円×会社開示『約8割』=48.28億円。会社は案件人月と請求単価を非開示。Qasicaの2026年9月・流通要員約17万件の相場中央値68万円/月(https://qasica.com/column/ses-unit-price-2026)を外部調達単価の参考にし、顧客向けは仲介・管理の粗利を含む85万円/人月と仮定すると年5,680人月(月平均473人)となる。従業員技術者188人と協力会社への依存、年間営業網11,203連絡先との桁を照合したが、人月の実績値ではない。営業利益0.80億円は全社営業利益1.08億円をサービス別に割り付けた推定で、未配賦本社費0.14億円は別扱い。市場規模はソフト系技術者派遣約1.5兆円を参考にするとシェア約0.3%の規模感だがSESと統計範囲が違う。AIエージェント代替の型は『人月・工数』であり、中立数量10年0.68倍、単価1.30倍。
DXソリューションサービス
クラウド導入、業務システム・Webアプリ開発、DXコンサルと運用保守。準委任・請負が中心であり、AI関連の開発支援も含む。
| 数量請負・準委任業務の換算稼働人月/年(推定) | 価格換算人月1件当たり売上(億円/人月、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,212 | 0.01 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 873 | 0.01 | 11 | 0 |
取り方:会社が示す売上構成『約2割』から60.4億円×20%=12.12億円。プロジェクト件数と契約総額は非開示なので、コンサル・クラウド構築の難度を勘案した100万円/換算人月を仮定し、年1,212人月(月平均101人相当)と置く。プロジェクト総額を人月に換算しており実契約件数とは異なる。DX市場約4兆円(2023年度)との単純比は約0.03%だが、ソフト製品等を含むため厳密なシェアではない。営業利益0.42億円は全社からの推定配賦で実績値ではない。『TracisAI』には導入例がある一方、有料契約売上額は未開示であり、別の高成長製品売上を上乗せしない。AI代替は『人月・工数』型に分類し、中立数量0.72倍・単価1.30倍で、記録の正本の2証拠はない。
リスクと懸念
AIエージェント代替で人月が減る
両サービスとも顧客へ人的作業を販売する割合が高い。AIによって実装、単体試験、文書化、障害の初動調査が自動化されれば、DX投資が増えてもBTMに発注する時間数は減る。『TracisAI』は効率化に対応する好材料だが、独立した有料売上額が確認できるまでは、既存の人月の減少を補うものとして数えない。
協力会社データベースの堀は薄い
1万1,203件は連絡可能なアカウント数であり、排他契約を持つ技術者数ではない。顧客は大手SI企業や直接雇用へ発注先を変えられ、同社は価格で選ばれない力を証明できていない。月次の案件継続率94.2%は年次の低解約率とは違い、顧客との平均取引期間17.2か月も乗換費用が長く続くことを保証しない。
M&Aの増分収益が資本コストに届かない
Laniakeaの事業譲受やクエスト・システム・デザイン買収で販売可能な人月は増やせる。しかし企業価値10億円規模までの買収も視野に入る中、買収先技術者の退職、価格の払い過ぎ、のれん償却と減損が利益を侵食しかねない。売上の増加と買収に投じた資本の収益率は別々に見なければならない。
薄い利益率と資金繰りの組み合わせ
2026年3月期の営業利益率は1.8%にすぎない。外部協力会社への支払いが先行し売掛金の回収が遅れる場合、帳簿上の純現金はすぐに使える余剰ではなくなる。人件費と営業・管理費は売上が減っても急には下がらず、金利上昇時には借入の借換え負担も増す。継続赤字にならなくても投下資本の利回りは落ち得る。
新株予約権と少数株主への還元不足
期末時点の未行使新株予約権は143,400株で、既存株式数と比べ約5%の潜在希薄化がある。大株主上位10人・法人の持分は66.53%に達し、無配が続いている。経営者が利益を買収や内部留保へ投じ続けても、少数株主が同額の価値を回収できるとは限らない。
採用難、契約責任、外部クラウド依存
優秀な技術者ほど競争が激しく、退職や育成の遅れは単価と稼働率を同時に押し下げる。請負案件では納期遅延、障害、情報漏えいが追加費用や損害賠償を招き得る。AWSやAzureに依拠した構築・運用支援は、顧客の内製化やクラウド各社の自動化機能拡充によって仲介余地を削られる。
今後の分かれ目
- 『TracisAI』やBTMAIZの独立した有料売上、継続契約数、年間解約率が開示され、利益貢献まで確認できたら
- 未実証としている製品収益を人月事業から切り分ける。契約基盤に固有データや切替費用が確認できれば、その部分だけAI代替の型と長期成長率を再評価する。単なる導入事例の追加だけでは上方修正しない。
- ITエンジニアリングの実請求人月がAI導入後も2年以上横ばいで、粗利率も改善し続けたら
- AIによる中立の数量減少の深さを見直し、やや楽観以上の筋書きの重みを高める。単価だけの上昇や買収による人員増と区別して判断する。
- 粗利率の改善が続いて営業利益率が3%台で定着し、買収先を含む投下資本利益率が資本コストを超えたら
- 会社の採算管理が構造的に改善した証拠になる。中立の利益率と買収後の現金創出を引き上げ、将来の株主価値を再計算する。
- 協力会社の案件継続期間がさらに短くなり、売上の増加が買収だけで説明されるようになったら
- 顧客から見たサービスの代替可能性が高まったと判断する。既存事業の数量と粗利の両方を引き下げ、やや悲観と悲観の確率を見直す。
- 経営が明確な配当性向・DOEまたは買戻額を公表し、実際に資金を株主へ返したら
- 現金の株主への戻り方を現在の慎重な評価から見直す。自己資本の伸びと還元の累計も変更するが、単なる方針表明だけでは戻り方の係数を上げない。
- 現預金に比べ借入が増え、買収のれんに減損兆候が現れたら
- 純現金による悲観時の床を再点検し、買収で買った利益の質を下方修正する。資本不足や継続企業の前提への注記が出た場合には分析継続の適否自体を確認する。
見ておくもの
- ITエンジニアリングサービスの実稼働人月・平均請求単価・外部協力会社の稼働比率の新規開示
- 自社エンジニア数、営業人員数、パートナー連絡先アカウント数と実契約率の関係
- 案件の月次継続率94.2%と平均取引継続期間17.2か月のその後の変化
- 売上総利益率15.4%と2027年3月期第1四半期16.6%との継続性、営業利益率の推移
- TracisAIの有料契約数、平均契約単価、年次継続率、独立した売上・利益
- クエスト・システム・デザインなどの買収金額・のれん・買収後の営業利益と現金回収
- 純現金、運転資金、発行済株式・自己株式、新株予約権の行使状況、配当・自社株買いの実績
倍率と資本コストの決め方
株価と現在株数2,816,842株は添付factsの2026年10月22日基準を固定し、2026年3月期の売上60.4億円、純利益0.7億円、自己資本7.25億円を出発点にした。2027年3月期第1四半期の改善を長期の成長率と取り違えていない。売上の分割は開示された約8割・約2割を基礎に、SES市場の外部単価相場を利用して人月を推定したため、実請求データが出れば改定が必要である。
10年の物価上昇は人月単価にだけ入れ、数量には入れない。両事業のAIエージェント代替は中立の数量減少と2036年後の名目g_long0%へ入れ、資本コストの寿命や確率で同じ損失を重ねていない。資本コスト8.25%と長期成長率から正当化PERを導いたため、現在の株価や同業の市場PERに寄せていない。
悲観は今の純現金約3.3億円を床とし、帳簿上ののれん約1.12億円は売れる資産へ算入しない。弱い事業の自己資本を10年分積んで床のPBRを掛けることも避けた。潜在株式の行使を会社全体の価値へ事前に掛けず、既存株主の取り分で最後に調整する。2027年以降の新リース会計による表示変更は家賃の経済的負担を軽くしないため、全期間で同じ営業費用の考えにそろえた。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、循環、値決め力、純現金の合計+0.75%を加える。個別の買収失敗とAIによる人月減少は数量・利益とシナリオで扱う。